説明

レンズ鏡筒

【課題】外径を大きくすることなく簡易な構成で視野の広角化に対応可能なレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】本発明のレンズ鏡筒は、繰り出し状態と沈胴状態とを切り替え可能であって、第1群レンズを保持する第1保持枠と、前記第1保持枠に対して前後方向に相対的に移動可能なバリア部と、前記バリア部を前記第1保持枠に対して相対的に後方に付勢する付勢部材と、前記繰り出し状態から前記沈胴状態に切り替わる場合に前記第1保持枠に対して相対的に前方向に移動して前記バリア部を前方に押圧する押圧部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端の開口部を開閉するバリア部を有し、非使用時に全長を短縮可能な沈胴式のレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
スチルカメラやビデオカメラのレンズ鏡筒内に配設されたレンズやフィルタ等の光学系部材の前面を損傷や汚れから保護するために、先端の開口部を開閉するバリア部を有するレンズ鏡筒が知られている。バリア部を有するレンズ鏡筒は、例えば特開2004−258646号公報及び特開2009−265517号公報に開示されている。
【0003】
バリア部を有するレンズ鏡筒において、光学系部材の視野を広角にする場合には、光学系部材の前方側に配置されたバリア部によるケラレを防ぐために、バリア部が開閉する開口部の開口径を大きくするか、バリア部をレンズの最前面に近づける必要がある。しかし、バリア部が開閉する開口径を大きくすると、バリア部の外径も大きくなってしまい、レンズ鏡筒の小型化を阻害してしまう。また、バリア部をレンズの最前面に近づけると開口部を遮蔽する際にバリア部がレンズと干渉してしまう。
【0004】
そこで、特開2004−258646号公報及び特開2009−265517号公報には、レンズ鏡筒の使用時にはバリア部を光学系部材の前面に近づけてケラレの発生を防ぎ、非使用時である沈胴時にはバリア部を光学系部材の前面から遠ざけることによってバリア部とレンズとの干渉を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−258646号公報
【特許文献2】特開2009−265517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2004−258646号公報及び特開2009−265517号公報に開示されている技術では、バリア部を光学系部材の前面に対して前後方向に移動可能とするための構成が複雑である。
【0007】
例えば、特開2004−258646号公報に開示された技術では、バリア部を保持する部材を、最前部のレンズを保持する保持枠の外周に設けられた別の枠部材とすることによって、最前部のレンズとバリア部との距離を変化させる。このため、特開2004−258646号公報に開示された技術では、バリア部を保持する枠が増えた分、レンズ鏡筒の外径が大きくなってしまう。なお、特開2004−258646号公報に開示された技術において、レンズ鏡筒を小径化しようとすれば、枠部材が増えた分、各枠部材を薄肉化しなければならず、落下による衝撃等の外力に対する強度が低下してしまう。
【0008】
また例えば、特開2009−265517号公報に開示されている技術では、従来1つであった最前部のレンズを保持する保持枠を2つの部材によって構成することによって、最前部のレンズとバリア部との距離を変化させる。このため、特開2009−265517号公報に開示されている技術では、最前部のレンズの位置決めを不安定にする要素が増えてしまう。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、外径を大きくすることなく簡易な構成で視野を広角化することが可能なレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の光学系部材を所定の位置に保持する繰り出し状態と、前記繰り出し状態よりも長さを短縮した沈胴状態と、を切り替え可能であり、基台部と、前記複数の光学系部材のうちの、少なくとも最も前方に位置する第1光学系部材を保持し、前記基台部に対して相対的に前後方向に移動可能な第1保持枠と、前記第1光学系部材の前方に配設され、開口部を有し、前記繰り出し状態においては前記開口部を開放して第1光学系部材の最前面を前方に露出させ、前記沈胴状態においては前記開口部を遮蔽して第1光学系部材の最前部を被覆するバリア部と、を有してなるレンズ鏡筒において、前記バリア部は、前記第1保持枠に対して固定された所定の移動範囲内において、前記第1保持枠に対して前後方向に相対的に移動可能に配設されており、前記バリア部を前記第1保持枠に対して相対的に後方に向かって付勢する付勢部材と、前記繰り出し状態である場合には前記バリア部と離間しており、前記繰り出し状態から前記沈胴状態に切り替わる場合には前記第1保持枠に対して相対的に前方向に移動して前記バリア部に当接する押圧部と、を具備し、前記バリア部は、前記繰り出し状態においては、前記付勢部材の付勢力によって前記所定の移動範囲の後方側に位置し、前記沈胴状態においては、前記押圧部との当接によって前記所定の移動範囲の前方側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外形を大きくすることなく簡易な構成で視野の広角化に対応可能なレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】繰り出し状態にあるレンズ鏡筒の断面図である。
【図2】沈胴状態にあるレンズ鏡筒の断面図である。
【図3】開放状態のバリア部を前方から見た図である。
【図4】遮蔽状態のバリア部を前方から見た図である。
【図5】開放状態のバリア部を後方から見た図である。
【図6】遮蔽状態のバリア部を後方から見た図である。
【図7】繰り出し状態にあるレンズ鏡筒の断面図の部分拡大図である。
【図8】沈胴状態にあるレンズ鏡筒の断面図の部分拡大図である。
【図9】繰り出し状態にある第2の実施形態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図10】沈胴状態にある第2の実施形態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図11】第2の実施形態における、第1保持枠とバリア部との係合の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態のレンズ鏡筒1は、スチルカメラ及びビデオカメラ等の撮像装置に適用されるものであって、レンズ等からなる光学系部材を保持する複数の枠部材を具備して構成されている。また、レンズ鏡筒1は、非撮影時におけるレンズ鏡筒1の光学系部材の光軸に沿う方向についての長さを、撮影時における長さよりも短くすることができるように、光軸に沿う方向に伸縮可能に構成されている。このようなレンズ鏡筒1の形態は、一般に沈胴式のレンズ鏡筒と称される。
【0015】
以下の説明においては、レンズ鏡筒1における撮影光学系部材の光軸を符号Oで表すものとする。この光軸Oに沿う方向において被写体側(物体側)を前方とし、レンズ鏡筒を構成する各枠部材が、前方に向かう際の方向を繰り出し方向というものとする。一方、光軸Oに沿う方向において結像側(像側)を後方とし、各枠部材が後方に向かう際の方向を繰り込み方向というものとする。当該レンズ鏡筒における各構成部材の回転方向は、前方側から見た回転方向で表わすものとする。
【0016】
図1は、繰り出し状態(撮影時)のレンズ鏡筒1の断面図を示している。また、図2は、沈胴状態(非撮影時)のレンズ鏡筒1の断面図を示している。レンズ鏡筒1は、第1群レンズ21、第2群レンズ22、第3群レンズ23及び第4群レンズ24からなる光学系部材を保持するように構成されている。なお、レンズ鏡筒1に配設される光学系部材は、レンズに限られるものではなく、NDフィルタやローパスフィルタ等の光学フィルタ、及びプリズム等を含む形態であってもよい。
【0017】
レンズ鏡筒1は、第1群レンズ21、第2群レンズ22、第3群レンズ23及び第4群レンズ24をそれぞれ保持し移動可能な枠部材である、第1保持枠11、第2保持枠12、第3保持枠13及び第4保持枠14を具備して構成されている。第1保持枠11、第2保持枠12、第3保持枠13及び第4保持枠14は、基台部である固定枠2に対して光軸O方向に相対的に進退移動可能である。また、レンズ鏡筒1は、図示しない電動モータの駆動力によって光軸O周りに回転しながら光軸O方向に進退移動する回転枠4及びカム枠5と、光軸O周りの回転を規制された状態で光軸O方向に進退移動する移動枠3及びガイド枠6と、を具備して構成されている。また、レンズ鏡筒1は、前方の端部に、バリア部30を具備して構成されている。
【0018】
基台部である固定枠2は、レンズ鏡筒1を撮像装置に固定するために、例えば撮像装置の筐体に固定される部材である。固定枠2は、略筒形状の部材であって、光軸Oを中心軸とした円筒面である内周面にカム溝2aが彫設されている。カム溝2aは、光軸Oに対して斜行するような所定のカムプロファイルを有して設けられている。固定枠2の外周部には、図示しない電動モータが固定されている。また、本実施形態では一例として、固定枠2の後方には、保持板27を介して例えばCCD又はCMOSセンサと称される形態の撮像素子26が固定されている。撮像素子26は、光軸Oに対して受光面が直交するように固定されている。なお、撮像素子26は、撮像素子26を光軸Oに対して移動可能に保持するいわゆる像ブレ補正機構を介して固定枠2に固定される形態であってもよい。
【0019】
回転枠4は、固定枠2の内側に収まる略円筒形状の枠部材である。回転枠4は、固定枠2の内周部において、光軸O周りに回転可能かつ、光軸Oに沿って進退可能に配設されている。回転枠4の外周部には、固定枠2のカム溝2aに摺動可能に係合するカムフォロアが設けられている。移動枠3は、回転枠4の内側に収まる略円筒形状の枠部材である。移動枠3は、回転枠4の内周部に、光軸O周りの回動が規制された状態で配設されている。移動枠3の内周面には、カム溝3aが彫設されている。カム溝3aは、所定のカムプロファイルを有して設けられている。
【0020】
回転枠4は、電動モータの駆動力によって、固定枠2に対して相対的に光軸O周りに回転駆動される。回転枠4は、カムフォロアと固定枠2のカム溝2aとの係合によって、光軸O周りの回転に伴って光軸Oに沿って進退移動する。
【0021】
カム枠5は、移動枠3の内側に収まる略円筒形状の枠部材である。カム枠5は、移動枠3の内周部において、光軸O周りに回転可能かつ、光軸Oに沿って進退可能に配設されている。カム枠5の外周部には、移動枠3のカム溝3aに摺動可能に係合するカムフォロアが設けられている。
【0022】
カム枠5の内周面には、カム溝5a及び5bと、図示しないレンズ退避用カム溝が彫設されている。また、カム枠5の外周面には、カム溝5cが彫設されている。カム溝5a、5b及び5cとレンズ退避用カム溝は、それぞれ所定のカムプロファイルを有して設けられている。
【0023】
カム枠5は、電動モータの駆動力によって、回転枠3と共に移動枠3に対して相対的に光軸O周りに回転駆動される。カム枠5は、カムフォロアと移動枠3のカム溝3aとの係合によって、光軸O周りの回転に伴って光軸Oに沿って進退移動する。
【0024】
ガイド枠6は、移動枠3の内側に収まる略円筒形状の枠部材である。ガイド枠6は、光軸O周りの回動が規制された状態で、カム枠5とともに光軸Oに沿って進退移動する。
【0025】
第1保持枠11は、レンズ鏡筒1が保持する複数の光学系部材のうちの最も前方に位置する第1光学系部材である第1群レンズ21を、光軸O上に保持する略円筒形状の枠部材である。第1保持枠11は、ガイド枠6の内側に収まり、かつカム枠5の外側に所定の隙間を有して嵌合している。第1保持枠11は、ガイド枠6によって光軸O周りの回転を規制され、かつカム枠5に対して相対的に光軸Oに沿って進退移動可能に配設されている。すなわち、第1保持枠11は、基台部である固定枠2に対して、光軸Oに沿って相対的に前後方向に進退移動可能である。
【0026】
図7及び図8の断面の拡大図に示すように、第1保持枠11には、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合に、後述するバリア部30の背面と当接する当接部11aが設けられている。
【0027】
第1保持枠11の内周面には、カム枠5のカム溝5cに摺動可能に係合するカムフォロアが設けられている。第1保持枠11は、光軸O周りの回転を規制されていることから、カムフォロアとカム枠5のカム溝5cとの係合によって、カム枠5の回転に伴って光軸Oに沿って進退移動する。
【0028】
第1保持枠11の前方側の端部には、キャップ部51が固定されている。キャップ部51は、第1保持枠11の前方側の端部の外周に嵌合する円筒形状部51aと、円筒形状部51aの前方側端部において径方向内側に向かって設けられたフランジ部51bと、フランジ部51bに設けられ光軸Oを略中心とした円形の開口部51cと、を有して構成されている。
【0029】
キャップ部51は、接着剤、ネジ止め又はしまり嵌め等によって第1保持枠11に固定されている。本実施形態では、フランジ部51bの背面と、第1保持枠11の前方端との間に所定の幅の隙間が設けられている。すなわち、この隙間の部分において、キャップ部51の円筒形状部51aの内周面が、レンズ鏡筒1の径方向内側に向かって露出している。
【0030】
そして、キャップ部51の背面と第1保持枠11の前方端との間には、詳しくは後述するバリア部30が配設されている。バリア部30は、キャップ部51の円筒形状部51aの内周面に所定の隙間を有して嵌合している。バリア部30は、キャップ部51の背面と第1保持枠11の前方端との間に設けられた隙間内において、光軸Oに沿って進退移動可能に配設されている。
【0031】
なお、キャップ部51は、第1保持枠11と一体に形成される構成であってもよい。この場合には、バリア部30は、第1保持枠11の内部であって、かつ第1群レンズ21よりも前方側において、光軸Oに沿って進退移動可能に配設される。
【0032】
また本実施形態では、バリア部30は、詳しくは後述する付勢部材50によって、第1保持枠11に対して相対的に後方に向かって移動する方向に付勢されている。
【0033】
第2保持枠12は、第2群レンズ22を第1群レンズ21よりも後方において光軸O上に保持し、カム枠5内にカム枠5の前方から収まる形状を有する枠部材である。第2保持枠12は、光軸O周りの回転を規制され、かつカム枠5に対して相対的に光軸Oに沿って進退移動可能に配設されている。
【0034】
第2保持枠12の外周部には、カム枠5のカム溝5aに摺動可能に係合するカムフォロアが設けられている。第2保持枠12は、光軸O周りの回転を規制されていることから、カムフォロアとカム枠5のカム溝5aとの係合によって、カム枠5の回転に伴って光軸Oに沿って進退移動する。
【0035】
第3保持枠13は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合に、第3群レンズ23を第2群レンズ23よりも後方において光軸O上に保持する枠部材である。図2に示すように、第3保持枠13は、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合に、光軸O上から退避するように配設されている。このように、本実施形態のレンズ鏡筒1は、沈胴状態において第3保持枠13を光軸O上から退避させることにより、沈胴状態時において、第2保持枠12と第4保持枠14との光軸O方向の距離を短縮することができ、沈胴状態におけるレンズ鏡筒1の長さを短縮することができる。第3保持枠13は、直進枠7によって揺動可能に保持されている。
【0036】
直進枠7は、カム枠5内にカム枠5の後方から収まる形状を有する略円筒形状の枠部材である。直進枠7は、光軸O周りの回転を規制され、かつカム枠5に対して相対的に光軸Oに沿って進退移動可能に配設されている。すなわち、直進枠7は、第1光学系部材保持枠である第1保持枠11に対して、光軸Oに沿って相対的に前後方向に進退移動可能である。
【0037】
図7及び図8の断面の拡大図に示すように、直進枠7の前方側の端部には、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合に、後述するバリア部30の背面を相対的に前方に向かって押圧するための押圧部7aが設けられている。押圧部7aは、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、バリア部30と離間している。
【0038】
直進枠7の外周面には、カム枠5のカム溝5bに摺動可能に係合するカムフォロアが設けられている。直進枠7は、光軸O周りの回転を規制されていることから、カムフォロアとカム枠5のカム溝5bとの係合によって、カム枠5の回転に伴って光軸Oに沿って進退移動する。第3保持枠13は、この直進枠7の進退移動に伴って、光軸Oに沿って進退移動する。
【0039】
直進枠7は、第3保持枠13の他に、第3保持枠13の後方にシャッターユニット25を保持している。シャッターユニット25は、撮影光路を開閉するためのシャッター機能と、撮影光量の調整を行うための絞り機能を有して構成されている。
【0040】
第4保持枠14は、第4群レンズ24をシャッターユニット25よりも後方において光軸O上に保持する枠部材である。第4保持枠14は、光軸O周りの回転が規制された状態で光軸Oに沿って進退可能に配設されている。第4群レンズ枠14は、回転枠4を回転駆動する電動モータとは異なるアクチュエータによって、光軸Oに沿う方向に移動するように構成されている。第4群レンズ24は、いわゆるフォーカシングレンズであって、光学系部材の合焦距離を変化させる場合に、第4保持枠14は光軸Oに沿って進退駆動される。
【0041】
第1保持枠11の前方側の端部には、バリア部30が設けられている。バリア部30は、第1群レンズ21よりも前方に配設されている。バリア部30は、光軸Oが通る開口部、及び該開口部内に進退可能な1つ又は複数の遮蔽部材を具備して構成されている。
【0042】
バリア部30は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、開口部内から遮蔽部材を退避させて第1群レンズ21の前面を露出させる開放状態となり、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、開口部内に遮蔽部材を進出させて第1群レンズ21の前面を覆う遮蔽状態となる。
【0043】
バリア部30の遮蔽部材の数や、遮蔽部材を駆動する機構は特に限定されるものではない。なお、バリア部30の遮蔽部材を駆動する機構は公知の技術であることから、以下では概略的な説明にとどめるものとする。本実施形態では一例として、バリア部30は、基台部31、駆動部32、一対の内側遮蔽部材33、及び一対の外側遮蔽部材34を具備して主に構成されている。
【0044】
図3は、開放状態のバリア部30を前方から見た図であり、図4は、遮蔽状態のバリア部30を前方から見た図である。また、図5は、開放状態のバリア部30を後方から見た図であり、図6は、遮蔽状態のバリア部30を後方から見た図である。
【0045】
基台部31は、中央部に光軸Oを略中心とした貫通孔である開口部31aが形成されている。基台部31は、後述する駆動部32、一対の内側遮蔽部材33、及び一対の外側遮蔽部材34を保持する構成を有している。なお、図示する本実施形態において、基台部31に形成された開口部31aは略矩形状であるが、開口部31aの形状は円形状や多角形状であってもよい。
【0046】
基台部31は、第1保持枠11に対して光軸O周りの相対的な回転を規制され、かつ第1保持枠11に対して光軸Oに沿って相対的に進退移動可能に配設されている。
【0047】
本実施形態では、基台部31は略円板形状を有している。基台部31は、キャップ部51の円筒形状部51aの内側に、光軸Oに沿って進退移動可能なように、所定の隙間を有して嵌合している。
【0048】
基台部31には、外周部の一部を切り欠いた形状の回り止め係合部36が設けられている。回り止め係合部36は、円筒形状部51aの内周面に光軸Oに略平行に設けられた図示しない凸条部と係合する。回り止め係合部36が凸条部と係合することにより、基台部31の第1保持枠11に対する光軸O周りの相対的な回転が規制される。
【0049】
基台部31の前面側には、付勢部材保持部35が設けられている。付勢部材保持部35は、後述する付勢部材50を基台部31に対して所定の位置に保持するためのものである。本実施形態では一例として、付勢部材保持部35は、光軸Oに沿って前方に突出する円柱形状を有している。本実施形態では、一対の付勢部材保持部35が、基台部31の外周部近傍に配設されている。一対の付勢部材保持部35は、略円板形状である基台部31の外周部近傍において、周方向に略等間隔に配置されている。すなわち、一対の付勢部材保持部35は、光軸O方向から見た場合に、互いに光軸Oを対称点とした点対称の位置関係となるように配設されている。
【0050】
また、基台部31の背面側には、光軸Oに沿って後方に突出する一対の支持軸部37が設けられている。支持軸部37は、後述する一対の内側遮蔽部材33及び一対の外側遮蔽部材34を回動可能に支持するためのものである。本実施形態では、支持軸部37は、光軸Oに平行な軸を中心軸とした略円柱形状を有する。
【0051】
また、一対の支持軸部37は、光軸O方向から見た場合に開口部31aの周囲において、互いの中心を結んだ線分の中点が、光軸Oと略一致するように配設されている。言い換えれば、一対の支持軸部37は、光軸O方向から見た場合に、互いに光軸Oを対称点とした点対称の位置関係となるように配設されている。また、基台部31の背面側には、後述する駆動部32を支持する図示しない支持部が設けられている。
【0052】
遮蔽部材である一対の内側遮蔽部材33及び一対の外側遮蔽部材34は、それぞれ光軸Oに略直交する平板形状部を有する羽根状の部材である。一対の内側遮蔽部材33及び一対の外側遮蔽部材34は、基台部31に対して移動可能であって、光軸O方向から見た場合に、それぞれが有する4つの平板形状部が基台部31の開口部31a内に進退することによって、開口部31aを開閉するためのものである。本実施形態においては、一対の内側遮蔽部材33及び一対の外側遮蔽部材34は、合成樹脂からなる。
【0053】
一対の内側遮蔽部材33は、バリア部30の遮蔽状態において、開口部31aの略中央部に進出する。一方、一対の外側遮蔽部材34は、バリア部30の遮蔽状態において、内側遮蔽部材33よりも外側を塞ぐように開口部31aに進出する。
【0054】
なお、一対の内側遮蔽部材33は同一の形状を有するものであり、光軸O方向から見た場合に、互いに光軸Oを対称点とした点対称の位置関係となるように対向して配設されている。また同様に、一対の外側遮蔽部材34は、同一の形状を有するものであり、光軸O方向から見た場合に、互いに光軸Oを対称点とした点対称の位置関係となるように対向して配設されている。
【0055】
内側遮蔽部材33は、基端部において支持軸部37に外嵌し、支持軸部37周りに回動する。外側遮蔽部材34も同様に、基端部において支持軸部37に外嵌し、支持軸部37周りに回動する。外側遮蔽部材34は、内側遮蔽部材33よりも基台部31側に配設される。すなわち、外側遮蔽部材34は、内側遮蔽部材33よりも前方に配設されている。
【0056】
外側遮蔽部材34には、同一の支持軸部37によって支持された内側遮蔽部材33の回動に連動して回動するように、内側遮蔽部材33に係合する図示しない係合部が設けられている。外側遮蔽部材34は、内側遮蔽部材33が開放状態から遮蔽状態へ移動した場合に、内側遮蔽部材33との係合によって、内側遮蔽部材33に従って遮蔽状態へと移動する。また、外側遮蔽部材34は、内側遮蔽部材33が遮蔽状態から開放状態へ移動した場合に、内側遮蔽部材33との係合によって、内側遮蔽部材33に従って開放状態へと移動する。
【0057】
図5及び図6に示すように、駆動部32は、略円板状の部材であって、中央部に光軸Oを略中心とした開口部32aが形成されている。駆動部32は、基台部31の背面側であって、かつ内側遮蔽部材33よりも背面側において、基台部31に対して光軸Oを略中心として回動可能に支持されている。
【0058】
駆動部32は、内側遮蔽部33と係合しており、基台部31に対して回動することによって、内側遮蔽部33を遮蔽状態又は開放状態へ駆動するためのものである。駆動部32は、一端が基台部31に係止され他端が駆動部32に係止された引っ張りコイルバネ38によって、光軸Oに沿ってバリア部30を背面側から見た場合に、基台部31に対して時計回りに回動する方向に付勢されている。また、図示しないが、駆動部32の背面側には、傾斜カムが後方に突出して設けられている。
【0059】
レンズ鏡筒1の沈胴状態である場合には、駆動部32は、傾斜カムがレンズ鏡筒1を構成する部材と係合することによって、光軸Oに沿ってバリア部30を背面側から見た場合に、基台部31に対して反時計回りに回動する。また、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、傾斜カムの係合が解け、引っ張りコイルバネ38の付勢力によって、駆動部32は、光軸Oに沿ってバリア部30を背面側から見た場合に、基台部31に対して時計回りに回動する。
【0060】
本実施形態のバリア部30には、一端が駆動部32に係止され他端が内側遮蔽部33に係止された引っ張りコイルバネ39が設けられている。図6に示すように、光軸Oに沿って背面側から見て、駆動部32が基台部31に対して時計方向に回動した場合には、駆動部32と内側遮光部材33との図示しない箇所での係合によって、内側遮蔽部材33が開放状態へ駆動される。このとき、外側遮蔽部材34も内側遮蔽部材33との係合によって開放状態へ駆動されることは上述した通りである。
【0061】
図5に示すように、光軸Oに沿って背面側から見て、駆動部32が基台部31に対して反時計方向に回動した場合には、引っ張りコイルバネ39の付勢力によって、内側遮蔽部材33が遮蔽状態へ駆動される。このとき、外側遮蔽部材34も、内側遮蔽部材33との係合によって遮蔽状態へ駆動される。
【0062】
以上のように、バリア部30は、レンズ鏡筒1の繰り出し状態及び沈胴状態の切り替わりに応じて、内側遮蔽部材33及び外側遮蔽部材34を第1群レンズ21の前面から退避させる開放状態と、内側遮蔽部材33及び外側遮蔽部材34を第1群レンズ21に進出させる遮蔽状態を切り替えることが可能な構成を有している。
【0063】
本実施形態において、バリア部30の基台部31は、第1保持枠11に対して、光軸O周りの相対的な回転を規制され、かつ第1保持枠11に対して光軸Oに沿って相対的に進退移動可能に配設されている。ここで、バリア部30を構成する、内側遮蔽部材33、外側遮蔽部材34及び駆動部32は、基台部31によって支持されているものであることから、本実施形態のレンズ鏡筒1では、バリア部30全体が、第1保持枠11に対して、光軸O周りの相対的な回転が規制された状態で、光軸Oに沿って前後方向に相対的に進退移動可能に配設されていることになる。
【0064】
図7及び図8に示すように、本実施形態のレンズ鏡筒1には、バリア部30を、第1保持枠11に対して相対的に後方に向かって移動する方向に付勢する付勢部材50が配設されている。
【0065】
本実施形態では一例として、付勢部材50は、弾性を有する部材であって、第1保持枠11の前方端部に設けられたフランジ部51bの背面と、バリア部30の基台部31の前面との間に配設されている。より具体的には、付勢部材50は圧縮コイルバネであって、バリア部30の基台部31の前面に設けられた付勢部材保持部35によって位置決めされて保持されている。
【0066】
圧縮コイルバネである付勢部材50は、フランジ部51bの背面と、基台部31の前面との間に、隙間のない状態で挟持されており、常にバリア部30を、第1保持枠11に対して相対的に後方に向かって付勢する付勢力を生じる。なお、付勢部材50は、圧縮コイルバネに限らず、例えば板バネであってもよいし、また例えばゴム等の弾性を有する部材であってもよい。
【0067】
上述したように、基台部31には、一対の付勢部材保持部35が周方向に略等間隔に設けられていることから、レンズ鏡筒1には一対の付勢部材50が配設されている。なお、付勢部材30の数や配設位置は特に限定されるものではないが、付勢部材30は複数であって、周方向に略等間隔に配設されることが好ましい。このように、付勢部材30を周方向に略等間隔に配設することによって、付勢力を偏り無くバリア部30に加えることができる。
【0068】
以上に説明した本実施形態において、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、付勢部材50によって後方に向かって付勢されたバリア部30は、第1保持枠11に設けられた当接部11aに当接することによって、位置決めがなされる。
【0069】
具体的には、図7に示すように、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、バリア部30は、圧縮コイルバネである付勢部材50の付勢力によって、駆動部32の背面が第1保持枠11の前方側端部に設けられた当接部11aに突き当てられる。なお、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合に、バリア部30が開口部31aを開放する開放状態であることは上述した通りである。
【0070】
すなわち、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、バリア部30は、第1光学系部材である第1群レンズ21の最前面を前方に露出させるように開口部31aを開放した開放状態であり、かつバリア部30は、付勢部材50の付勢力によって第1保持枠11の当接部11aに突き当てられて第1群レンズ21の前面に近接した状態となる。
【0071】
一方、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、付勢部材50によって後方に向かって付勢されたバリア部30は、第1保持枠11に対して相対的に前方に移動するレンズ鏡筒1の構成部材に設けられた押圧部に当接することによって、第1保持枠11に対して相対的に前方に向かって移動し、第1保持枠11から離間した状態で位置決めがなされる。
【0072】
具体的には、図8に示すように、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、直進枠7が、第1保持枠11に対して相対的に前方に移動する。そして、バリア部30は、直進枠7の前方側端部に設けられた押圧部7aにより押圧され、第1保持枠11に対して相対的に前方に移動し、第1保持枠11の当接部11aから前方に向かって離間する。このとき、圧縮コイルバネである付勢部材50は圧縮される。なお、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合に、バリア部30が開口部31aを遮蔽する遮蔽状態であることは上述した通りである。
【0073】
すなわち、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、バリア部30は、第1光学系部材である第1群レンズ21の最前面を被覆するように開口部31aを遮蔽した遮蔽状態であり、かつバリア部30は、直進枠7に設けられた押圧部7aに押圧されて第1群レンズ21の前面から相対的に前方に離間した状態となる。
【0074】
なお、本実施形態では、押圧部は直進枠7に設けられているが、押圧部が設けられる部材は直進枠7に限られるものではない。押圧部は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態から沈胴状態に切り替わる場合に第1保持枠11に対して相対的に前方向に移動する部材に設けることができる。例えば、押圧部は、第2保持枠12やガイド枠6等に設けられてもよいし、基台部である固定枠2に設けられてもよい。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態のレンズ鏡筒1は、繰り出し状態及び長さを短縮した沈胴状態を切り替え可能であって、最前部にバリア部30を有する。バリア部30は、第1群レンズ21を保持する第1保持枠11に対して固定された所定の移動範囲内において、第1保持枠11に対して相対的に前後方向に移動可能であって、かつ付勢部材50によって、第1保持枠11に対して相対的に後方に移動する方向に付勢されている。そして、バリア部30は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、付勢部材50の付勢力によって移動範囲の後方側に位置して第1群レンズ21の前面に近接し、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、直進枠7に設けられた押圧部7aに押圧されて第1群レンズ21の前面から相対的に前方に離間した状態となる。
【0076】
したがって、本実施形態のレンズ鏡筒1は、繰り出し状態である場合には、バリア部30が第1群レンズ21の前面に近接するため、開口部31aの内径やバリア部30の外径を大きくすることなく、第1群レンズ21に入射する光の角度を広角化することができる。また、本実施形態のレンズ鏡筒1は、沈胴状態である場合には、バリア部30が第1群レンズ21の前面から前方に向かって離間するため、バリア部30が第1群レンズ21と干渉することがない。
【0077】
そして本実施形態では、バリア部30は、第1群レンズ21を保持する第1保持枠11(及びキャップ部51)によって、第1群レンズ21に対して前後方向に相対的に移動可能に支持される。このため、バリア部30を支持するための部材を第1保持枠11の他にさらに設ける必要がなく、レンズ鏡筒1の外径が大きくなってしまうことがない。また、第1群レンズ21は、従来と同様に単一の第1保持枠11によって保持されているため、本実施形態のレンズ鏡筒1における第1群レンズ21の位置決め精度は、従来と同等である。
【0078】
このように、本実施形態によれば、外径を大きくすることなく、簡易な構成でバリア部30を、第1群レンズ21の前面に対して相対的に前後方向に移動させることができ、光学系部材の視野の広角化を実現することができる。
【0079】
また、本実施形態では、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合に、バリア部30は、付勢部材50の付勢力によって第1保持枠11に設けられた当接部11aに突き当てられた状態で位置決めされる。このため、本実施形態では、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合において、バリア部30を第1群レンズ21に対して正確に位置決めすることができる。レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合における、バリア部30と第1群レンズ21との位置決めが正確であれば、開口部31aの開口径を最小限の大きさとすることができるため、バリア部30の外径を小さくすることができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、上述した第1の実施形態に比して、主に第1保持枠及びバリア部の係合の形態と付勢部材の形態が異なる。したがって、以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0081】
図9及び図10に示すように、本実施形態のバリア部40は、第1保持枠11の外周に所定の隙間を有して嵌合する円筒形状部41を具備して構成されている。円筒形状部41は、第1保持枠11に対して、光軸O周りの相対的な回転を規制された状態で、前後方向に相対的に進退移動可能に配設されている。
【0082】
円筒形状部41の先端側端部には、基台部31が接着剤、ネジ止め又はしまり嵌め等によって固定されている。したがって、本実施形態のバリア部40は、図11に示すように、第1保持枠11に対して前後方向に相対的に移動可能である。
【0083】
なお、図示しないが、円筒形状部41又は基台部31には、第1保持枠11と係合することによって、バリア部40の第1保持枠11に対する相対的な前方への移動可能範囲を規制する抜け止め部が設けられている。
【0084】
本実施形態の付勢部材60は、引っ張りコイルバネであって、一端が基台部31の背面に設けられた付勢部材係止部42に係止され、他端が第1保持枠11の内周に設けられた付勢部材係止部11bに係止されている。付勢部材60には張力が与えられており、バリア部40を、常に第1保持枠11に対して相対的に後方に向かって移動する方向に付勢する付勢力を発生する。
【0085】
なお、付勢部材40の数や配設位置は特に限定されるものではないが、付勢部材40は複数であって、周方向に略等間隔に配設されることが好ましい。本実施形態では一例として、一対の付勢部材40が、光軸O方向から見た場合に、互いに光軸Oを対称点とした点対称の位置関係となるように配設されている。また、付勢部材40は、引っ張りコイルバネに限られるものではなく、ゴム等の弾性部材であってもよい。
【0086】
本実施形態では、ガイド枠6の内周部に、押圧部6aが設けられている。押圧部6aは、ガイド枠6の内周面から径方向内側に突出する凸形状部である。押圧部6aは、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合に、バリア部40の円筒形状部41の後方側端部に当接し、バリア部40が第1保持枠11に対して相対的に前方に移動する様に押圧する。押圧部6aは、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、バリア部40の円筒形状部41とは離間している。
【0087】
なお、本実施形態では、押圧部はガイド枠6に設けられているが、押圧部が設けられる部材はガイド枠6に限られるものではない。押圧部は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態から沈胴状態に切り替わる場合に第1保持枠11に対して相対的に前方向に移動する部材に設けることができる。例えば、押圧部は、移動枠3や基台部である固定枠2に設けられてもよい。
【0088】
以上に説明した本実施形態において、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、バリア部40は、引っ張りコイルバネである付勢部材60の付勢力によって、駆動部32の背面が第1保持枠11の前方側端部に設けられた当接部11aに突き当てられる。
【0089】
一方、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、ガイド枠6が、第1保持枠11に対して相対的に前方に移動する。そして、バリア部40は、ガイド枠6の内周部に設けられた押圧部6aにより押圧され、第1保持枠11に対して相対的に前方に移動し、第1保持枠11の当接部11aから前方に向かって離間する。
【0090】
すなわち、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、バリア部40は、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合には、付勢部材60の付勢力によって移動範囲の後方側に位置して第1群レンズ21の前面に近接し、レンズ鏡筒1が沈胴状態である場合には、ガイド枠6に設けられた押圧部6aに押圧されて第1群レンズ21の前面から相対的に前方に離間した状態となる。
【0091】
したがって、本実施形態のレンズ鏡筒1は、繰り出し状態である場合には、バリア部40が第1群レンズ21の前面に近接するため、開口部31aの内径やバリア部40の外径を大きくすることなく、第1群レンズ21に入射する光の角度を広角化することができる。また、本実施形態のレンズ鏡筒1は、沈胴状態である場合には、バリア部40が第1群レンズ21の前面から前方に向かって離間するため、バリア部40が第1群レンズ21と干渉することがない。
【0092】
そして本実施形態では、バリア部40は、第1群レンズ21を保持する第1保持枠11によって、第1群レンズ21に対して前後方向に相対的に移動可能に支持される。このため、バリア部40を支持するための枠部材を第1保持枠11の他にさらに設ける必要がなく、レンズ鏡筒1の外径が大きくなってしまうことがない。また、第1群レンズ21は、従来と同様に単一の第1保持枠11によって保持されているため、本実施形態のレンズ鏡筒1における第1群レンズ21の位置決め精度は、従来と同等である。
【0093】
このように、本実施形態によれば、外径を大きくすることなく、簡易な構成でバリア部40を、第1群レンズ21の前面に対して相対的に前後方向に移動させることができ、光学系部材の視野の広角化を実現することができる。
【0094】
また、本実施形態では、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合に、バリア部40は、付勢部材60の付勢力によって第1保持枠11に設けられた当接部11aに突き当てられた状態で位置決めされる。このため、本実施形態では、レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合において、バリア部40を第1群レンズ21に対して正確に位置決めすることができる。レンズ鏡筒1が繰り出し状態である場合における、バリア部40と第1群レンズ21との位置決めが正確であれば、開口部31aの開口径を最小限の大きさとすることができるため、バリア部40の外径を小さくすることができる。
【0095】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うレンズ鏡筒もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係るレンズ鏡筒は、スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置用のものに限らず、望遠鏡や双眼鏡等の光学機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 レンズ鏡筒、
2 固定枠(基台部)、
3 移動枠、
4 回転枠、
5 カム枠、
6 ガイド枠、
6a 押圧部、
7 直進枠、
7a 押圧部、
11 第1保持枠、
11a 当接部、
11b 付勢部材係止部、
12 第2保持枠、
13 第3保持枠、
14 第4保持枠、
21 第1群レンズ(第1光学系部材)、
22 第2群レンズ、
23 第3群レンズ、
24 第4群レンズ、
25 シャッターユニット、
26 撮像素子、
27 保持板、
30 バリア部、
31 基台部、
31a 開口部、
32 駆動部、
32a 開口部、
33 内側遮蔽部材、
34 外側遮蔽部材、
35 付勢部材保持部、
36 回り止め係合部、
37 支持軸部、
38 引っ張りコイルバネ、
39 引っ張りコイルバネ、
40 バリア部、
41 円筒形状部、
42 付勢部材係止部、
50 付勢部材、
51 キャップ部、
51a 円筒形状部、
51b フランジ部、
51c 開口部、
60 付勢部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学系部材を所定の位置に保持する繰り出し状態と、前記繰り出し状態よりも長さを短縮した沈胴状態と、を切り替え可能であり、
基台部と、
前記複数の光学系部材のうちの、少なくとも最も前方に位置する第1光学系部材を保持し、前記基台部に対して相対的に前後方向に移動可能な第1保持枠と、
前記第1光学系部材の前方に配設され、開口部を有し、前記繰り出し状態においては前記開口部を開放して第1光学系部材の最前面を前方に露出させ、前記沈胴状態においては前記開口部を遮蔽して第1光学系部材の最前部を被覆するバリア部と、
を有してなるレンズ鏡筒において、
前記バリア部は、前記第1保持枠に対して固定された所定の移動範囲内において、前記第1保持枠に対して前後方向に相対的に移動可能に配設されており、
前記バリア部を前記第1保持枠に対して相対的に後方に向かって付勢する付勢部材と、
前記繰り出し状態である場合には前記バリア部と離間しており、前記繰り出し状態から前記沈胴状態に切り替わる場合には前記第1保持枠に対して相対的に前方向に移動して前記バリア部に当接する押圧部と、
を具備し、
前記バリア部は、前記繰り出し状態においては、前記付勢部材の付勢力によって前記所定の移動範囲の後方側に位置し、前記沈胴状態においては、前記押圧部との当接によって前記所定の移動範囲の前方側に位置する
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記繰り出し状態においては、前記バリア部は、前記付勢部材の付勢力によって前記第1保持枠に設けられた当接部に突き当てられることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−203135(P2012−203135A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66483(P2011−66483)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】