説明

レンズ駆動装置

【課題】駆動機構に歯車を含むレンズ駆動装置において、歯車のガタツキ等を防止する。
【解決手段】可動レンズ枠30,40、光軸に平行な第1軸S1線回りに回動自在に支持され可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材80、カム部材を回転駆動する駆動機構Mを備え、駆動機構Mは、モータ120、モータに直結され第2軸S2線回りに回動する第1ウォームギヤ130、第1ウォームギヤに噛合する第1ウォームホイール140a及び第2ウォームギヤ140bを一体的に有し第1軸線及び第2軸線に対して垂直な第3軸線S3回りに回動自在に支持された二段歯車140、第2ウォームギヤに噛合すると共にカム部材と一体的に回転する第2ウォームホイール150、第1軸線及び第3軸線に対して所定の角度をなす方向において二段歯車とカム部材に同時に付勢力を及ぼす付勢機構160,170を含む。これによれば、歯車のガタツキ等を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの光軸に平行な軸線回りに回転して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材を備えたレンズ駆動装置に関し、特に、カム部材に回転力を及ぼすための歯車を含む駆動機構を備えたレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ駆動装置としては、部品を収容する筐体、筐体の前壁及び後壁に開けられた開口部に固定された2つの固定レンズ群、筐体内において光軸方向に移動自在に配列された2つの可動レンズ群、2つの可動レンズ群に対して光軸方向にカム作用を及ぼすべく光軸と平行な軸線回りに回動自在にかつその軸線方向に移動自在に支持された円筒状のカム部材、カム部材に回転駆動力を及ぼすべく光軸と平行な軸線回りに回動自在に支持された複数(6つ以上)の歯平歯車からなる歯車列、歯車列の一つの歯車と一体的に回転するように形成されたウォームホイール(はすば歯車)、ウォームホイールに噛合するべく光軸に垂直な方向に伸長する軸線回りに回動するウォームギヤ(ねじ歯車)、ウォームギヤを直結して回転駆動力を及ぼすモータ、2つの可動レンズ群をお互いに引き寄せてカム部材のカム面に当接させる引っ張りバネ、カム部材をその軸線方向の一方向に向けて付勢するべく第1可動レンズ群を押圧する押圧バネ等を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
【0003】
しかしながら、このレンズ駆動装置においては、カム部材のスラスト方向(軸線方向)のガタ寄せは行われているものの、複数の歯車がそれぞれスラスト方向(軸線方向)においてガタを生じ得る構成となっており、それ故に、駆動時における歯車のガタ付き及びそれに伴う騒音等を招く虞がある。
また、駆動機構として複数(6つ以上)の平歯車を用いており、又、モータの回転軸及びウォームギヤの軸線方向が光軸に対して垂直な方向に伸長する配置関係にあるため、駆動機構を集約して配置することが困難であり、装置の小型化及び薄型化には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−276242号公報
【特許文献2】特開2006−276241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、部品点数の削減等を図りつつ、可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材のガタツキを防止すると共にその駆動機構に含まれる歯車のガタツキを防止して、それに伴う騒音等を低減ないし防止でき、可動レンズ枠を高精度に移動させて位置決めでき、装置全体としての小型化及び薄型化等を図れるレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ駆動装置は、筐体と、筐体内に配置されて光軸方向に移動自在に支持された少なくとも一つの可動レンズ枠と、筐体内に配置されて光軸に平行な第1軸線回りに回動自在に支持されると共に可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材と、カム部材を回転駆動する駆動機構とを備えたレンズ駆動装置であって、上記駆動機構は、筐体に固定されたモータと、モータに直結されて第2軸線回りに回動する第1ウォームギヤと、第1ウォームギヤに噛合する第1ウォームホイール及び第2ウォームギヤを一体的に有すると共に第1軸線及び第2軸線に対して垂直な第3軸線回りに回動自在に支持された二段歯車と、第2ウォームギヤに噛合すると共にカム部材と一体的に回転する第2ウォームホイールと、第1軸線及び第3軸線に対して所定の角度をなす方向において二段歯車とカム部材に同時に付勢力を及ぼす付勢機構とを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、モータが回転すると、第1ウォームギヤ→第1ウォームホイール→第2ウォームギヤ→第2ウォームホイールを介して、カム部材が回転駆動され、可動レンズ枠がカム部材によりカム作用を受けて光軸方向に移動させられる。
ここで、駆動機構に含まれる歯車列としては、2つのウォームギヤ及び2つのウォームホイールだけであるため、充分な減速比を確保しつつも、部品点数の削減による構造の簡略化、装置の小型化等を達成することができ、又、付勢機構により、カム部材のスラスト方向(第1軸線方向)のガタ寄せが行われると同時に二段歯車のスラスト方向(第3軸線方向)のガタ寄せが行われ、それに伴って、第2ウォームギヤと第2ウォームホイールとの間のガタ寄せ及び第1ウォームギヤと第1ウォームホイールとの間のガタ寄せが行われるため、構造の簡素化を達成しつつ、駆動機構が作動する際の歯車のガタツキ及びそれに伴う騒音(ガタツキ音)等を防止することができる。
【0007】
上記構成において、カム部材は、第1軸線を画定すると共に筐体に固定された支持シャフトに回動自在に支持され、二段歯車は、第3軸線を画定すると共にその一端が筐体側に回動自在に支持された回転軸を一体的に有し、付勢機構は、回転軸の他端部を回動自在に支持すると共に支持シャフトに対して摺動自在に嵌め込まれて第2ウォームホイール及び第2ウォームギヤの一端面に当接する押圧部材と、押圧部材と筐体との間に掛止された引っ張りバネとを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、カム部材及び第2ウォームホイールは支持シャフトにより回動自在に支持され、二段歯車(第1ウォームホイール及び第2ウォームギヤ)はその回転軸を介して筐体側(筐体又は筐体に固定された部材)と押圧部材により回動自在に支持され、この状態において、押圧部材が引っ張りバネにより引っ張られることで、押圧部材の一部が第2ウォームホイールの一端面を押圧することによりカム部材のスラスト方向(第1軸線方向)におけるガタ寄せが行われると共に、押圧部材の一部が第2ウォームギヤの一端面を押圧することにより二段歯車及びそれに噛合する歯車(第1ウォームギヤ及び第2ウォームホイール)との間のガタ寄せが行われる。
このように、付勢機構として、押圧部材と引っ張りバネを採用するため、構造を簡素化でき、それ故に、装置全体の小型化、又、ガタツキを防止しつつカム部材を高精度に回転させることにより、可動レンズ枠を所望の位置に高精度に移動させることができる。
【0008】
上記構成において、押圧部材は、回転軸の他端部を挿入するべく光軸に平行な方向に伸長する長孔を有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、押圧部材の長孔に(二段歯車の)回転軸の他端部が挿入されて支持されているため、その長孔の範囲内において回転軸の他端部が可動となっており、二段歯車(の第1ウォームホイール)と第1ウォームギヤとの間及び二段歯車(の第2ウォームギヤ)と第2ウォームホイールとの間の噛合関係において、歯同士の食い付きやロッキングを防止してガタ寄せを行いつつも最適な噛合状態を保持することができる。
【0009】
上記構成において、モータ及び第1ウォームギヤを一体的に保持すると共に筐体に対して着脱自在に固定されるホルダを含み、ホルダは、回転軸の一端部を回動自在に挿入する円孔を有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、モータ及び第1ウォームギヤが保持されるホルダ(の円孔)に対して、二段歯車の回転軸の一端部が回動自在に支持されるため、ホルダを基準として、第1ウォームギヤと第1ウォームホイールとの相対的な位置決めを高精度に行うことができ、それ故に、ガタツキを防止しつつ駆動力を円滑に伝達させることができる。
【0010】
上記構成において、第1ウォームギヤの第2軸線は、光軸と平行に配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、第1ウォームギヤの第2軸線が光軸と平行に配置されることで、カム部材の軸線とも平行に配置されることになり、駆動機構を構成する部品を筐体内に集約して配置することができ、特に、光軸に垂直な方向における装置の薄型化を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成をなすレンズ駆動装置によれば、構造の簡素化、部品点数の削減等を達成しつつ、可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材のガタツキ及びその駆動機構に含まれる歯車のガタツキを防止でき、それ故にガタツキ音等を低減ないし防止でき、又、可動レンズ枠を高精度に移動させて位置決めでき、装置全体としての小型化及び薄型化等を達成できるレンズ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレンズ駆動装置の一部(カバー)を取り除いて内部を露出させた外観斜視図である。
【図2】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の内部を示す側面図である。
【図4】図1に示すレンズ駆動装置の内部を示す正面図である。
【図5】図1に示すレンズ駆動装置に含まれる駆動機構の一部を示す分解斜視図である。
【図6】図1に示すレンズ駆動装置に含まれる駆動機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
このレンズ駆動装置は、図1ないし図4に示すように、筐体としての本体ケース10及びカバー20、第1可動レンズ枠30、第2可動レンズ枠40、第1可動レンズ枠30を光軸L方向にガイドする第1ガイドシャフト50、第2可動レンズ枠40を光軸L方向にガイドする第2ガイドシャフト60、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40が光軸L回りに回転するのを規制する回転規制シャフト70、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40に対して光軸L方向にカム作用を及ぼすカム部材80、カム部材80を光軸Lに平行な第1軸線S1回りに回動自在に支持する支持シャフト90、第1可動レンズ枠30と第2可動レンズ枠40とを互いに引き寄せるように付勢する付勢バネ100、カム部材80を回転駆動する駆動機構M等を備えている。
【0014】
駆動機構Mは、図2、図5及び図6に示すように、ホルダ110を介して本体ケース10に固定されたモータ120、モータ120に直結されて第2軸線S2回りに回動する第1ウォームギヤ130、第1ウォームギヤ130に噛合する第1ウォームホイール140a及び第2ウォームギヤ140b並びに回転軸140cを一体的に有すると共に第1軸線S1及び第2軸線S2に対して垂直な第3軸線S3回りに回動自在に支持された二段歯車140、第2ウォームギヤ140bに噛合すると共にカム部材80と一体的に回転する第2ウォームホイール150、第1軸線S1及び第3軸線S3に対して所定の角度をなす方向において二段歯車140、カム部材80及び第2ウォームホイール150に同時に付勢力を及ぼす付勢機構としての押圧部材160及び引っ張りバネ170等を備えている。
【0015】
本体ケース10は、図1ないし図3に示すように、光軸L方向の前方壁11において、開口部11a、嵌合孔11b,11c,11d,11eを有し、光軸L方向の後方壁12において、開口部12a、嵌合孔12b,12c,12d,12e,スラスト受け面12fを有し、光軸Lに垂直な方向の側壁13において、ホルダ110を固定する固定部13aを有し、光軸Lに垂直な方向の上壁14において、引っ張りバネ170の他端部172を掛止する掛止片14aを有する。
開口部11aには、図1及び図2に示すように、レンズG1が固定されている。
開口部12aには、図1及び図2に示すように、レンズG4が固定されている。
カバー20は、図1及び図4に示すように、本体ケース10の開口を塞ぐように、本体ケース10に対してネジ(不図示)等を用いて着脱自在に形成されている。
【0016】
第1可動レンズ枠30は、図2及び図4に示すように、レンズG2を保持する環状保持部31、環状保持部31と一体的に形成され第1ガイドシャフト50に摺動自在に連結される円筒連結部32、円筒連結部32に一体的に形成されてカム部材80の第1カム部81に接触する第1フォロワ33、環状保持部31の一部に形成されて回転規制シャフト70に摺動自在に連結されるU字連結部34、環状保持部31から突出して形成されて付勢バネ100の一端部を掛止する掛止片35等を備えている。
そして、第1可動レンズ枠30は、円筒連結部32が第1ガイドシャフト50に摺動自在に外嵌されることで光軸L方向に往復動自在にガイドされ、U字連結部34が回転規制シャフト70に摺動自在に外嵌されることで光軸L回りの回転が規制され、第1フォロワ33がカム部材80の第1カム部81に接触してカム作用を受けることで光軸L方向に往復駆動されるようになっている。
【0017】
第2可動レンズ枠40は、図2及び図4に示すように、レンズG3を保持する筒状保持部41、筒状保持部41と一体的に形成され第2ガイドシャフト60に摺動自在に連結される円筒連結部42、円筒連結部42に一体的に形成されてカム部材80の第2カム部82に接触する第2フォロワ43、筒状保持部41の一部に形成されて回転規制シャフト70に摺動自在に連結されるU字連結部44、円筒連結部42から突出して形成されて付勢バネ100の他端部を掛止する掛止片45等を備えている。
そして、第2可動レンズ枠40は、円筒連結部42が第2ガイドシャフト60に摺動自在に外嵌されることで光軸L方向に往復動自在にガイドされ、U字連結部44が回転規制シャフト70に摺動自在に外嵌されることで光軸L回りの回転が規制され、第2フォロワ43がカム部材80の第2カム部82に接触してカム作用を受けることで光軸L方向に往復駆動されるようになっている。
【0018】
第1ガイドシャフト50は、円形断面をなすと共に光軸Lと平行な方向に伸長するように形成され、その両端部が本体ケース10の嵌合孔11b,12bに嵌合されて、第1可動レンズ枠30を光軸L方向にガイドするようになっている。
第2ガイドシャフト60は、円形断面をなすと共に光軸Lと平行な方向に伸長するように形成され、その両端部が本体ケース10の嵌合孔11c,12cに嵌合されて、第2可動レンズ枠40を光軸L方向にガイドするようになっている。
回転規制シャフト70は、円形断面をなすと共に光軸Lと平行な方向に伸長するように形成され、その両端部が本体ケース10の嵌合孔11d,12dに嵌合されて、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40の光軸L回りの回転を規制するようになっている。
支持シャフト90は、円形断面をなすと共に光軸Lと平行な第1軸線S1の方向に伸長するように形成され、その両端部が本体ケース10の嵌合孔11e,12eに嵌合されて、カム部材80(及び第2ウォームホイール150)を回動自在に支持すると共にその第1軸線S1方向に移動自在に支持するようになっている。
【0019】
カム部材80は、図2ないし図6に示すように、支持シャフト90が摺動自在に挿入される貫通孔80aを有する略円柱状に形成されており、第1可動レンズ枠30の第1フォロワ33に接触して光軸L方向にカム作用を及ぼす第1カム部81、第2可動レンズ枠40の第2フォロワ43に接触して光軸L方向にカム作用を及ぼす第2カム部82、第1軸線S1方向(スラスト方向)において後方壁12のスラスト受け面12fに当接する当接面83等を備えている。
そして、カム部材80は、その貫通孔80aに通された支持シャフト90により回動自在に支持されると共に当接面83がスラスト受け面12fに当接することでスラスト方向(光軸L方向の後方へ)の移動が規制され、駆動機構Mにより回転駆動されることにより、第1カム部81のカムプロフィルに応じて第1可動レンズ枠30を光軸L方向に移動させると共に第2カム部82のカムプロフィルに応じて第2可動レンズ枠40を光軸L方向に移動させるようになっている。
【0020】
付勢バネ100は、図2に示すように、コイル状の引張りバネであり、その一端部が第1可動レンズ枠30の掛止片35に掛止され、その他端部が第2可動レンズ枠40の掛止片45に掛止されて、光軸L方向において第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40を互いに近づけるような付勢力を及ぼし、第1フォロワ33を第1カム部81に常時接触させかつ第2フォロワ43を第2カム部82に常時接触させるように作用している。
【0021】
ホルダ110は、図2、図4ないし図6に示すように、本体ケース10に固定される固定部111、モータ120を固定するフランジ部112、第1ウォームギヤ130の先端部を回動自在に保持するフランジ部113、二段歯車140の回転軸140cの一端部140c´を挿入して回動自在に支持する円孔114等を備えている。
そして、ホルダ110は、モータ120及びモータ120に直結された第1ウォームギヤ130を保持して本体ケース10に固定された状態で、第1ウォームギヤ130の第2軸線S2を光軸Lと平行な方向に方向付けるようになっている。
【0022】
モータ120は、ステップモータであり、図4ないし図6に示すように、ホルダ110のフランジ部112に固定され、ホルダ110を介して本体ケース10の側壁13に固定されるようになっている。
第1ウォームギヤ130は、図5及び図6に示すように、モータ120に直結されると共にその先端部がフランジ部113に保持されて、光軸Lと平行な第2軸線S2回りに回動自在に支持されている。
ここで、図2に示すように、第1ウォームギヤ130の第2軸線S2は、光軸Lと平行に配置されているため、カム部材80の第1軸線S1とも平行に配置されることになり、駆動機構Mを構成する部品を筐体(本体ケース10)内に集約して配置することができ、特に、光軸Lに垂直な方向における装置の薄型化を達成することができる。
【0023】
二段歯車140は、図2ないし図6に示すように、第1ウォームギヤ130と噛合する第1ウォームホイール140a、第2ウォームホイール150と噛合する第2ウォームギヤ140b、第3軸線S3を画定すると共に第1ウォームホイール140a及び第2ウォームギヤ140bを同軸(第3軸線S3)上にて一体的に回転させる回転軸140cを備えている。
ここで、第3軸線S3は、組み付けられた状態において、カム部材80の回転中心である第1軸線S1及び第1ウォームギヤ130の回転中心である第2軸線S2に対して略垂直な方向に伸長するように方向付けられている。
そして、二段歯車140は、回転軸140cの一端部140c´がホルダ110の円孔114に挿入され、かつ、回転軸140cの他端部140c´´が押圧部材160の長孔162に挿入されて、第3軸線S3回りに回動自在に支持されるようになっている。
【0024】
第2ウォームホイール150は、図3ないし図6に示すように、二段歯車140の第2ウォームギヤ140bと噛合するものであり、支持シャフト90が通される貫通孔150a、押圧部材60が当接する一端面151を備え、一端面151の反対側の面がカム部材80の端面に固定されて、支持シャフト90によりカム部材80と一体的に回動自在に支持されると共に支持シャフト90の軸線方向(第1軸線S1方向)にカム部材80と一体的に移動自在に支持されている。
【0025】
押圧部材160は、図3ないし図6に示すように、略L字状に形成されており、その一端側において支持シャフト90に摺動自在に連結される円筒連結部161、その略中央領域において二段歯車140の回転軸140cの他端部140c´´を回動自在に挿入する長孔162、長孔162の周りに形成されて第2ウォームギヤ140bの一端面140b´を受けるスラスト受け面163、その他端側において引っ張りバネ170の一端部171を掛止する掛止片164等を備えている。
円筒連結部161は、支持シャフト90に通された状態で、その後方端面161aが第2ウォームホイール150の一端面151に摺動自在に当接するように形成されている。
長孔162は、光軸Lに平行な方向に伸長するように形成されており、二段歯車140の回転軸140cの他端部140c´´を摺動自在に密接させつつその伸長方向(第1軸線S1と平行な方向)に可動に支持するように形成されている。
【0026】
そして、押圧部材160は、円筒連結部161が支持シャフト90に外嵌され、長孔162に二段歯車140の回転軸140cの他端部140c´´が挿入され、掛止片164に引っ張りバネ170の一端部171が掛止されて付勢されることにより、円筒連結部161の後方端面161aが第2ウォームホイール150の一端面151に当接して、第2ウォームホイール150及びカム部材80を第1軸線S1方向の後方に向けて押圧すると共に、スラスト受け面163が第2ウォームギヤ140bの一端面140b´に当接して、二段歯車140を第3軸線S3方向のホルダ110側に向けて押圧するようになっている。
また、押圧部材160の長孔162の範囲内において回転軸140cの他端部140c´´が可動となっているため、二段歯車140(の第1ウォームホイール140a)と第1ウォームギヤ130との間及び二段歯車140(の第2ウォームギヤ140b)と第2ウォームホイール150との間の噛合関係において、歯同士の食い付きやロッキングを防止してガタ寄せを行いつつも最適な噛合状態を保持できるようになっている。
【0027】
引っ張りバネ170は、図2、図3、図5、図6に示すように、コイル状の引張りバネであり、その一端部171が押圧部材160の掛止片164に掛止され、その他端部172が本体ケース10の上壁14に設けられた掛止片14aに掛止されるようになっている。
そして、引っ張りバネ170は、図6に示すような平面視にて、第1軸線S1に対して所定角度θをなしかつ第3軸線S3に対して所定角度(π/2−θ)をなす方向に張設され、すなわち、第1軸線S1及び第3軸線S3に対して所定の角度をなす方向において、二段歯車140及びカム部材80(及び第2ウォームホイール150)に同時に付勢力を及ぼすようになっている。
【0028】
すなわち、上記付勢機構(押圧部材160及び引っ張りバネ170)によれば、カム部材80のスラスト方向(第1軸線S1方向)のガタ寄せが行われると同時に二段歯車140のスラスト方向(第3軸線S3方向)のガタ寄せが行われ、それに伴って、第2ウォームギヤ140bと第2ウォームホイール150との間のガタ寄せ及び第1ウォームギヤ130と第1ウォームホイール140aとの間のガタ寄せが行われるため、構造の簡素化を達成しつつ、駆動機構Mが作動する際の歯車のガタツキ及びそれに伴う騒音(ガタツキ音)等を防止することができる。
また、付勢機構として、押圧部材160と引っ張りバネ170を採用するため、構造を簡素化でき、それ故に、装置全体の小型化、又、ガタツキを防止しつつカム部材80を高精度に回転させることにより、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40を所望の位置に高精度に移動させることができる。
【0029】
上記構成の装置によれば、駆動機構Mに含まれる歯車列としては、2つのウォームギヤ(第1ウォームギヤ130及び第2ウォームギヤ140b)及び2つのウォームホイール(第1ウォームホイール140a及び第2ウォームホイール150)だけであるため、充分な減速比を確保しつつも、部品点数の削減による構造の簡略化、装置の小型化等を達成することができる。
さらに、モータ120及び第1ウォームギヤ130が保持されるホルダ110(の円孔114)に対して、二段歯車140の回転軸140cの一端部140c´が回動自在に支持されるため、ホルダ110を基準として、第1ウォームギヤ130と第1ウォームホイール140aとの相対的な位置決めを高精度に行うことができ、それ故に、ガタツキを防止しつつ駆動力を円滑に伝達させることができる。
【0030】
次に、レンズ駆動装置の動作について簡単に説明する。
先ず、所定の制御信号に基づいて、モータ120が一方向に回転すると、第1ウォームギヤ130→第1ウォームホイール140a→第2ウォームギヤ140b→第2ウォームホイール150を介して、カム部材80が一方向に回転駆動され、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40がそれぞれ第1カム部81及び第2カム部82によるカム作用を受けてズーム動作及びフォーカス動作を行うべく光軸方向に移動させられ、一方、モータ120が他方向に回転すると、同様に、第1ウォームギヤ130→第1ウォームホイール140a→第2ウォームギヤ140b→第2ウォームホイール150を介して、カム部材80が他方向に回転駆動され、第1可動レンズ枠30及び第2可動レンズ枠40がそれぞれ第1カム部81及び第2カム部82による逆向きのカム作用を受けて光軸方向に移動させられる。
【0031】
ここで、駆動機構Mによる動作中において、付勢機構(押圧部材160及び引っ張りバネ170)により、カム部材80のスラスト方向(第1軸線S1方向)のガタ寄せが行われると同時に二段歯車140のスラスト方向(第3軸線S3方向)のガタ寄せが行われ、それに伴って、第2ウォームギヤ140bと第2ウォームホイール150との間のガタ寄せ及び第1ウォームギヤ130と第1ウォームホイール140aとの間のガタ寄せが行われるため、構造の簡素化を達成しつつ、歯車のガタツキ及びそれに伴う騒音(ガタツキ音)等を防止することができる。
【0032】
上記実施形態においては、カム部材として光軸Lと平行な第1軸線S1回りに回転する円柱状のカム部材80を示したが、これに限定されるものではなく、光軸Lを中心として回転する円筒状のカム部材を用いた構成においても、本発明の駆動機構を適用することができる。
上記実施形態においては、カム部材により駆動される可動レンズ枠として二つの可動レンズ枠30,40を採用した構成を示したが、これに限定されるものではなく、カム部材により一つの可動レンズ枠が駆動される構成又は3つ以上の可動レンズ枠が駆動される構成において、本発明の駆動機構を適用してもよい。
【0033】
上記実施形態においては、付勢機構として、押圧部材160及び引っ張りバネ170を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、カム部材の軸線及び二段歯車の軸線に対して所定の角度をなす方向においてカム部材及び二段歯車に同時に付勢力を及ぼすものであれば、その他の構成をなす付勢機構を採用することができる。
上記実施形態においては、ホルダ110を介してモータ120を本体ケース10に固定した場合を示したが、これに限定されるものではなく、モータ120を直接本体ケース10に固定すると共に、二段歯車140の回転軸140cの一端部140c´を本体ケース10により回動自在に支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上述べたように、本発明のレンズ駆動装置は、構造の簡素化、部品点数の削減等を達成しつつ、可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材のガタツキ及びその駆動機構に含まれる歯車のガタツキを防止でき、それ故にガタツキ音等を低減ないし防止でき、又、可動レンズ枠を高精度に移動させて位置決めでき、装置全体としての小型化及び薄型化等を達成できるため、小型化等が要求されるカメラのレンズを駆動するレンズ駆動装置に適用できるのは勿論のこと、その他のレンズを駆動する必要のある光学ユニットにおいても有用である。
【符号の説明】
【0035】
L 光軸
G1,G2,G3,G4 レンズ
10 本体ケース(筐体)
11 前方壁
11a 開口部
11b,11c,11d,11e 嵌合孔
12 後方壁
12a 開口部
12b,12c,12d,12e 嵌合孔
12f スラスト受け面
13 側壁
13a 固定部
14 上壁
14a 掛止片
20 カバー(筐体)
30 第1可動レンズ枠
31 環状保持部
32 円筒連結部
33 第1フォロワ
34 U字連結部
35 掛止片
40 第2可動レンズ枠
41 筒状保持部
42 円筒連結部
43 第2フォロワ
44 U字連結部
45 掛止片
50 第1ガイドシャフト
60 第2ガイドシャフト
70 回転規制シャフト
80 カム部材
80a 貫通孔
81 第1カム部
82 第2カム部
83 当接面
90 支持シャフト
S1 第1軸線
100 付勢バネ
M 駆動機構
110 ホルダ
111 固定部
112 フランジ部
113 フランジ部
114 円孔
120 モータ
130 第1ウォームギヤ
S2 第2軸線
140 二段歯車
140a 第1ウォームホイール
140b 第2ウォームギヤ
140b´ 一端面
140c 回転軸
140c´ 一端部
140c´´ 他端部
S3 第3軸線
140c´ 一端部
140c´´ 他端部
150 第2ウォームホイール
150a 貫通孔
151 一端面
160 押圧部材
161 円筒連結部
161a 後方端面
162 長孔
163 スラスト受け面
164 掛止片
170 引っ張りバネ
171 一端部
172 他端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に配置されて光軸方向に移動自在に支持された少なくとも一つの可動レンズ枠と、前記筐体内に配置されて光軸に平行な第1軸線回りに回動自在に支持されると共に前記可動レンズ枠に対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム部材と、前記カム部材を回転駆動する駆動機構と、を備えたレンズ駆動装置であって、
前記駆動機構は、前記筐体に固定されたモータと、前記モータに直結されて第2軸線回りに回動する第1ウォームギヤと、前記第1ウォームギヤに噛合する第1ウォームホイール及び第2ウォームギヤを一体的に有すると共に前記第1軸線及び第2軸線に対して垂直な第3軸線回りに回動自在に支持された二段歯車と、前記第2ウォームギヤに噛合すると共に前記カム部材と一体的に回転する第2ウォームホイールと、前記第1軸線及び第3軸線に対して所定の角度をなす方向において前記二段歯車と前記カム部材に同時に付勢力を及ぼす付勢機構とを含む、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記カム部材は、前記第1軸線を画定すると共に前記筐体に固定された支持シャフトに回動自在に支持され、
前記二段歯車は、前記第3軸線を画定すると共にその一端が前記筐体側に回動自在に支持された回転軸を一体的に有し、
前記付勢機構は、前記支持シャフトに対して摺動自在に嵌め込まれて前記第2ウォームホイール及び第2ウォームギヤの一端面に当接すると共に前記回転軸の他端部を回動自在に支持する押圧部材と、前記押圧部材と前記筐体との間に掛止された引っ張りバネとを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記回転軸の他端部を挿入するべく光軸に平行な方向に伸長する長孔を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記モータ及び第1ウォームギヤを一体的に保持すると共に前記筐体に対して着脱自在に固定されるホルダを含み、
前記ホルダは、前記回転軸の一端部を回動自在に挿入する円孔を有する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記第1ウォームギヤの第2軸線は、光軸と平行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のレンズ駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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