説明

レンズ駆動装置

【課題】永久磁石を使用しない、安価で小型なレンズ駆動装置を提供すること。
【解決手段】レンズアセンブリをレンズの光軸(O)方向に沿って移動可能に支持するレンズ駆動装置(10)は、光軸(O)方向の下側に配置されたアクチュエータ・ベース(12)と、このアクチュエータ・ベースより上方に配置され、レンズアセンブリを保持するための筒状部(140)を有する、強磁性体から成るレンズホルダ(14)と、このレンズホルダに筒状部の外周囲に位置するように固定されたリング状の駆動コイル(16)と、この駆動コイルから離間し、且つ駆動コイルを間に挟んでレンズホルダと対向するように、レンズホルダを覆うヨーク(20)と、レンズホルダを光軸方向に沿って案内する案内手段(22;122a)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ駆動装置に関し、特に、レンズアセンブリ(レンズバレル)を保持するレンズホルダ(可動部)を、レンズの光軸方向に移動可能なレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ付携帯電話機には携帯型小型カメラが搭載されている。この携帯型小型カメラには、オートフォーカス用レンズ駆動装置が用いられる。従来から、種々のオートフォーカス用レンズ駆動装置が提案されている。このようなレンズ駆動装置に使用される駆動源(駆動方法)として、ボイス・コイル・モータ(VCM)を使用したVCM方式が知られている。
【0003】
従来のVCM方式のレンズ駆動装置では、駆動源(駆動部)として、駆動コイルと、ヨークおよび永久磁石(マグネット)から構成される磁気回路とを備えている。レンズ駆動装置は、アクチュエータとも呼ばれる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
詳述すると、従来のVCM方式のレンズ駆動装置では、レンズアセンブリ(レンズバレル)をインフィニティー(無限大)ポジションからマクロポジションまでVCMにより無段階に駆動している。通常、駆動コイルは、レンズアセンブリ(レンズバレル)を保持するレンズホルダに固定される。そのような構造の場合、VCM方式のレンズ駆動装置は、ムービングコイル方式となる。ムービングコイル方式のレンズ駆動装置では、フレミングの左手の法則に基づく力(ローレンツ力)によりレンズホルダを駆動しており、永久磁石による磁界とその磁界中にある駆動コイルに電流を流すことにより発生する磁界との関係(相互作用)により、レンズホルダがレンズの光軸方向に移動する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−271878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような、従来のVCM方式のレンズ駆動装置では、磁気回路として、永久磁石(マグネット)を必須の構成要素として含んでいる。
【0007】
周知のように、永久磁石(マグネット)は、その組成物としてレアメタルを含んでいるので、磁気回路が高価となる。また、従来のVCM方式のレンズ駆動装置では、永久磁石(マグネット)を必要とするので、小型化することが困難である。
【0008】
一方、近年のレンズ駆動装置の小型化に伴い、従来のVCM方式のレンズ駆動装置での推力が小さくなってきている。
【0009】
したがって、本発明の課題は、永久磁石を使用しない、安価で小型なレンズ駆動装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様によるレンズ駆動装置(10;10A;10B)は、レンズアセンブリ(11)をレンズの光軸(O)方向に沿って移動可能に支持するレンズ駆動装置であって、光軸(O)方向の下側に配置されたアクチュエータ・ベース(12)と、このアクチュエータ・ベースより上方に配置され、レンズアセンブリ(11)を保持するための筒状部(140;140A)を有する、強磁性体から成るレンズホルダ(14;14’;14A)と、このレンズホルダに筒状部の外周囲に位置するように固定されたリング状の駆動コイル(16;16A)と、この駆動コイルから離間し、且つ駆動コイルを間に挟んでレンズホルダと対向するように、レンズホルダを覆うヨーク(20)と、レンズホルダを光軸(O)方向に沿って案内する案内手段(22;122a)と、を備える。
【0012】
上記本発明に係るレンズ駆動装置(10;10A;10B)において、アクチュエータ・ベース(12)とヨーク(20)とによって筺体(24)が構成されてよい。レンズホルダ(14;14’;14A)は、その上端で半径方向外側へ突出するフランジ(142)を持ち、ヨーク(20)は、駆動コイル(16;16A)の周囲に配置された外筒部(202)と、この外筒部の上端で外筒部の内側へ延出するリング状端部(204)とを備え、フランジ(142)とリング状端部(204)とが対向していることが好ましい。上記案内手段は、レンズホルダ(14;14’;14A)と筺体(12,20)との間に配置された弾性部材(22)を含んでよい。この弾性部材(22)は、レンズホルダ(14;14’;14A)を径方向に位置決めした状態でレンズホルダ(14;14’;14A)を光軸(O)方向にのみ変位可能に支持する。弾性部材は、例えば、レンズホルダの筒状部の上側に設けられた板バネ(22)から構成されてよい。アクチュエータ・ベース(12)は、リング状のベース部(122)と、このベース部の四隅で上方へ突出する4つのベース突出部(124)とを有してよい。この場合、板バネ(22)は、レンズホルダのフランジ(142)に取り付けられるリング部(222)と、4つのベース突起部(124)の上端にそれぞれ取り付けられる4つの端部(224)と、リング部と4つの端部との間に橋架された4本の腕部(226)とから構成される。レンズ駆動装置(10A)は、レンズホルダ(14)の下方に配置された複数本のコイル渡り線(26)を更にしてよい。
【0013】
また、上記本発明に係るレンズ駆動装置(10;10A;10B)において、ヨーク(20)の外筒部(202)は四角筒状をしていてよい。ヨーク(20)の外筒部(202)は、その四隅の下端部に4つの開口部(202a)を持ってよい。この場合、レンズホルダ(14’)の筒状部(140)は、4つの開口部に対応する位置にそれぞれ開口(140a)を持つことが好ましい。
【0014】
さらに、上記本発明に係るレンズ駆動装置(10;10A;10B)において、ヨーク(20)は磁化されていてよい。レンズ駆動装置(10;10A)において、レンズホルダ(14;14’)の筒状部(140)は円筒状をしており、駆動コイル(16)は円筒状をしていてよい。レンズ駆動装置(10B)において、レンズホルダ(14A)の筒状部(140A)が八角筒状をしており、駆動コイル(16A)は八角筒状をしていてよい。
【0015】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、レンズホルダを強磁性体で構成し、そのレンズホルダの筒状部の外周囲に駆動コイルを設けたので、永久磁石を使用しない、安価で小型なレンズ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるレンズ駆動装置の外観を斜め前方上方から観た斜視図である。
【図2】図1に示したレンズ駆動装置からヨークを省いて、斜め前方上方から観た斜視図である。
【図3】図1に示したレンズ駆動装置を、斜め前方上方から観た分解斜視図である。
【図4】図1に示したレンズ駆動装置において、駆動コイルに通電していない状態を示す部分斜視断面図である。
【図5】図1に示したレンズ駆動装置において、一対の電極を介して駆動コイルに最大電流で通電したときの状態を示す部分斜視断面図である。
【図6】図1に示したレンズ駆動装置の第1の動作モードでの電流−ストローク特性を示す図である。
【図7】図1に示したレンズ駆動装置の第2の動作モードでの電流−ストロークカーブを示す特性図である。
【図8】図1乃至図3に示したレンズ駆動装置の第1の変形例に使用されるレンズホルダを示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係るレンズ駆動装置を、ヨークを省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態によるレンズ駆動装置を、ヨークを省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10について説明する。図1はレンズ駆動装置10の外観を前方上方から観た斜視図である。図2はレンズ駆動装置10を、ヨーク20を省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。図3はレンズ駆動装置10を斜め上方から観た分解斜視図である。
【0020】
ここでは、図1乃至図3に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図1乃至図3に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。そして、図1乃至図3に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。
【0021】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0022】
図示のレンズ駆動装置10は、光軸Oを通り、かつ前後方向Xおよび上下方向Zによって規定される(に延在する)平面に対して、実質的に(後述する板バネ22を除き)面対称の構造を有する。
【0023】
図示のレンズ駆動装置10は、例えば、オートフォーカス可能なカメラ付き携帯電話機に備えられる。レンズ駆動装置10は、可動レンズであるオートフォーカスレンズを内蔵するレンズアセンブリ(レンズバレル)11(図4および図5参照)を含む。レンズ駆動装置10は、レンズアセンブリ11を光軸O方向にのみ移動させるためのものである。したがって、光軸Oは駆動軸である。レンズ駆動装置10はアクチュエータとも呼ばれる。
【0024】
レンズ駆動装置10は、Z軸方向(光軸O方向)の下側(後側)に配置されたアクチュエータ・ベース12を有する。このアクチュエータ・ベース12の下部(後部)には、図示はしないが、センサ基板に配置された撮像素子が搭載される。この撮像素子は、レンズアセンブリにより結像された被写体像を撮像して電気信号に変換する。撮像素子は、例えば、CCD(charge coupled device)型イメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。したがって、レンズ駆動装置10と、センサ基板と、撮像素子との組み合わせによって、カメラモジュールが構成される。
【0025】
レンズ駆動装置10は、レンズアセンブリ(レンズバレル)11を保持するための筒状部140を有するレンズホルダ14と、このレンズホルダ14に筒状部140の周囲に固定された駆動コイル16と、この駆動コイル16から離間し、且つ駆動コイル16と対向して配置されたヨーク20と、レンズホルダ14の筒状部140の光軸O方向上端に後述するように設けられた板バネ22とを備える。
【0026】
図示のレンズ駆動装置10において、レンズホルダ14は鉄系金属等の強磁性体から構成されている。
【0027】
従って、本第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10では、強磁性体から成るレンズホルダ14とヨーク20とによって磁気回路が構成されている。磁気回路(14,20)と駆動コイル16との組み合わせによって、ムービングコイル方式の駆動部が構成される。
【0028】
従来のレンズ駆動装置では、永久磁石とヨークとによって磁気回路が構成されていた。これに対して、本第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10では、強磁性体から成るレンズホルダ14とヨーク20とによって磁気回路が構成されている。すなわち、レンズホルダ14の外周に巻き回された駆動コイル16に電流を流すことによって、レンズホルダ14が電磁石として働く。本第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10では、磁気回路として永久磁石を備えていないので、安価で小型になるという利点がある。
【0029】
アクチュエータ・ベース12は、リング状のベース部122と、ベース部122の四隅で上下方向Zの上方へ突出する4本のベース突出部124とを有する。4本のベース突出部124は、それぞれ、その上端で上方へ突出するベース突起124aを持つ。また、ベース部122は、その前方部分に、一対の電極36を挿設するための一対の挿入孔(図示せず)を持つ。ベース部122は、その中央部に円形開口部122aを持つ。
【0030】
尚、一対の電極36は、駆動コイル16に電力を供給するためのものである。一対の電極36の各々は、図3に示されるように、L字形状をしている。
【0031】
アクチュエータ・ベース12とヨーク20とによって筺体24が構成される。板バネ22は、レンズホルダ14と筺体24との間に配置された弾性部材として働く。すなわち、板バネ(弾性部材)22は、レンズホルダ14を位置決めした状態でレンズホルダ14を光軸O方向にのみ変位可能に支持する。
【0032】
レンズホルダ14の下端部141は、アクチュエータ・ベース12のベース部122の円形開口部122aに遊嵌される。すなわち、レンズホルダ14の筒状部140の外径は、ベース部122の円形開口部122aの直径よりも僅かに小さい。その結果、レンズホルダ14の下端部141は、アクチュエータ・ベース12のベース部122の円形開口部122aとクリアランスを持って対向する。したがって、板バネ(弾性部材)22と、アクチュエータ・ベース12のベース部122の円形開口部122aとの組み合わせは、レンズホルダ14を光軸O方向に沿って案内する案内手段として働く。
【0033】
尚、板バネ22は上側板バネとも呼ばれる。また、前述したように、実際の使用状況においては、Z軸方向(光軸O方向)の上方向が前方向、Z軸方向(光軸O方向)の下方向が後方向となる。したがって、上側板バネ22は前側スプリングとも呼ばれる。
【0034】
上側板バネ(前側スプリング)22は、例えば、ステンレス鋼やベリリウム銅などの金属製からなる。そして、上側板バネ(前側スプリング)22は、所定の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により製造される。尚、プレス加工よりもエッチング加工の方が好ましい。その理由は、エッチング加工では、板バネに残留応力が残らないからである。
【0035】
図1および図3に示されるように、ヨーク20は四角筒状をしている。すなわち、ヨーク20は、実質的に四角筒形状の外筒部202と、この外筒部202の上端で、外筒部の内側へ延出する四角形のリング状端部204とから構成される。
【0036】
ヨーク20の外筒部202は、その四隅の下端部に、4つの開口部202aを持つ。
【0037】
レンズホルダ14は、その上端で半径方向外側へ突出するフランジ142を持つ。このフランジ142とリング状端部204とが対向している。レンズホルダ14の筒状部140は、円筒状をしている。
【0038】
一方、駆動コイル16も、円筒状をしている。駆動コイル16は、レンズホルダ14の筒状部140の外壁面に接着されている。
【0039】
前述したように、板バネ22はレンズホルダ14における光軸O方向の上端側に配置される。
【0040】
板バネ22は、レンズホルダ14のフランジ142に後述のようにして取り付けられるリング部222と、後述するように筺体24の四隅に取り付けられる4つの端部224とを有する。リング部222と4つの端部224との間には、4本の腕部226が橋架されている。各腕部226は、内周側端部222と外周側端部224とを繋いでいる。
【0041】
板バネ22のリング部222は、レンズホルダ14のフランジ142に固定される。詳述すると、フランジ142は、筺体24の四隅近傍で、下方へ突出する4つのホルダ突起部(図示せず)を持つ。板バネ22のリング222は、これら4つのホルダ突起部がそれぞれ挿入される4つのバネ穴222aを持つ。
【0042】
一方、板バネ22の4つの端部224は、それぞれ、アクチュエータ・ベース12の4本のベース突出部124に固定される。詳述すると、板バネ22の4つの端部224は、それぞれ、4本のベース突出部124の4つのベース突起124aが嵌入される4つの端部穴224aを持つ。
【0043】
図4及び図5に示されるように、レンズホルダ14の筒状部140の内周壁にレンズアセンブリ(レンズバレル)11が収容され、接着剤などによって互いに接合される。
【0044】
上記レンズ駆動装置(アクチュエータ)10において、レンズアセンブリ11を保持するレンズホルダ14と駆動コイル16との組み合わせは、中央部に配置された柱状の可動部(11,14,16)として働く。また、ヨーク20およびアクチュエータ・ベース12の組み合わせは、可動部(11,14,16)の周囲に配置された筒状の固定部(20、12)として働く。
【0045】
次に、図1乃至図3に加えて図4乃至図7をも参照して、レンズ駆動装置10の動作について説明する。図示のレンズ駆動装置10は、2つの異なるモードで動作することが可能である。第1の動作モードは、2つの位置の間での切替のみをサポートする動作モードである。第2の動作モードは、オートフォーカス(AF)動作をも行える動作モードである。
【0046】
最初に、図1乃至図6を参照して、第1の動作モードについて説明し、その後に、図1乃至図5および図7を参照して、第2の動作モードについて動作する。
【0047】
図4は、駆動コイル16に通電していない状態を示すレンズ駆動装置10の部分斜視断面図であり、図5は、一対の電極36を介して駆動コイル16に最大電流で通電したときの状態を示すレンズ駆動装置10の部分斜視断面図である。
【0048】
図4に示されるように、駆動コイル16に通電していない場合、レンズホルダ14は、そのフランジ142がヨーク20のリング状端部204から離間した位置にあって、板バネ22によって支持された状態にある。この離間した位置は、レンズ駆動装置10の「無限大(INF)ポジション」と呼ばれる。
【0049】
一方、図5に示されるように、一対の電極36を介して駆動コイル16に所定の電流値(以下、「規定電流値」と呼ぶ)以上の電流で通電した場合、レンズホルダ14が電磁石となるので、板バネ22の下向きの付勢力に打ち勝つ電磁力によって、レンズホルダ14のフランジ142とヨーク20のリング状端部204とが磁気的に吸引して互いに当接する状態となる。この当接している状態の位置は、レンズ駆動装置10の「マクロポジション」と呼ばれる。尚、このとき、上記電磁石による磁界と駆動コイル16に流れる電流による磁界との相互作用によって、フレミングの左手の法則に基づく力(ローレンツ力)も働いていることに注意されたい。したがって、上記電磁力とローレンツ力とが、板バネ22の下向きの付勢力に打ち勝つことによって、レンズホルダ14のフランジ142をヨーク20のリング状端部204に当接させることができる。
【0050】
図6は、レンズ駆動装置10の電流−ストローク特性を示す図である。図6において、横軸は駆動コイル16に流した電流(mA)を示し、縦軸はレンズホルダ14の移動距離(ストローク)(μm)を示す。ここで、0μmとは、駆動コイル16に電流を流さずに、レンズホルダ14が板バネ22によって支持された状態の位置(無限大(INF)ポジション)を示している。図6の例においては、規定電流値は70mAであることが分かる。
【0051】
図6から明らかように、駆動コイル16に、規定電流値以上の電流、例えば80mAの電流を流すことにより、レンズホルダ14を120μm移動させて、レンズ駆動装置10をマクロポジションにさせることができることが分かる。一方、レンズ駆動装置10を無限大(INF)ポジションに復帰させるには、駆動コイル16に流す電流を遮断すれば良いことが分かる。
【0052】
このように、一対の電極36を介して駆動コイル16に通電するか否かによって、レンズホルダ14(レンズアセンブリ12)を、2つの位置(無限大(INF)ポジションとマクロポジション)の間で光軸O方向に沿って移動させることができることが分かる。
【0053】
尚、図6は、レンズホルダ14の位置を、無限大(INF)ポジションとマクロポジションとの2つの位置の間で切り替える、第1の動作モードでの動作を説明するための図である。したがって、この第1の動作モードにおいては、中間動作挙動(0μm〜120μm)を問題としていない。
【0054】
次に、第2の動作モードについて説明する。
【0055】
第2の動作モードにおいては、レンズ駆動装置10のヨーク20を予め磁化させておく。図示の例では、ヨーク20のリング状端部204がN極に、ヨーク20の下端部がS極となるように、ヨーク20を磁化させている。
【0056】
図7はレンズ駆動装置10の電流−ストロークカーブを示す特性図である。図7において、横軸は駆動コイル16に流した電流(mA)を示し、縦軸はレンズホルダ14の移動距離(ストローク)(μm)を示す。ここで、0μmとは、駆動コイル16に電流を流さずに、レンズホルダ14が板バネ22によって支持された状態の位置(無限大(INF)ポジション)を示している。
【0057】
図7に示す例では、レンズホルダ14のストロークが0μm〜60μmの間をレンズ駆動装置10のAF動作範囲として使用可能である。また、レンズ駆動装置10のマクロポジションは、レンズホルダ14の移動距離(ストローク)が140μmだけ移動した位置とする。
【0058】
尚、ここでは、レンズホルダ14のフランジ142がS極に、レンズホルダ14の下端部141がN極に磁化されるように、駆動コイル16に流す電流の方向を「正方向」と呼ぶことにする。すなわち、正方向とは、レンズ駆動装置10を上面側から平面視したときに、光軸Oを中心として時計回りに駆動コイル16に電流を流す方向である。一方、逆に、レンズホルダ14のフランジ142がN極に、レンズホルダ14の下端部141がS極に磁化されるように、駆動コイル16に流す電流の方向を「逆方向」と呼ぶことにする。すなわち、逆方向とは、レンズ駆動装置10を上面側から平面視したときに、光軸Oを中心として反時計回り駆動コイル16に電流を流す方向である。
【0059】
図7から明らかなように、駆動コイル16に正方向(時計回り)に流す電流が0mAから70mAまでの範囲では、レンズホルダ14のストロークが、0μmから60μmまで、なだらかな曲線で推移することが分かる。したがって、駆動コイル16に流す電流値を0mAと70mAとの間で制御することによって、レンズホルダ14を0μm(無限大(INF)ポジション)から60μmまでの間で、無段階にオートフォーカス制御駆動できることが分かる。
【0060】
前述したように、レンズ駆動装置10のマクロポジションが、レンズホルダ14のストロークが140μmとなる位置であるので、駆動コイル16に正方向(時計回り)に80mAの電流を流したとする。図7から、この80mAの電流値では、レンズホルダ14のストロークが140μmを超えることが分かる。したがって、上述した電磁力とローレンツ力とにより、板バネ22の下方向の付勢力に抗して、レンズホルダ14のフランジ142がヨーク20のリング状端部204に当接し、保持される。
【0061】
この状態で、駆動コイル16に流した電流を遮断し、電流値を0mAとする。前述したように、ヨーク20は、そのリング状端部204がN極に、その下端部がS極となるように、磁化されているので、レンズホルダ14のフランジ142はヨーク20のリング状端部204に当接した状態に維持される。
【0062】
この状態から、レンズ駆動装置10を無限大(INF)ポジション(レンズホルダ14のストロークが0μm)に戻すためには、駆動コイル16に逆方向(反時計回り)の電流を流せばよい。何故なら、駆動コイル16に逆方向(反時計回り)の電流を流すと、レンズホルダ14のフランジ142がN極に磁化されるので、N極に磁化されているヨーク20のリング状端部204と磁気的に反発するからである。その後、駆動コイル16に流す電流を0mAとする。
【0063】
これにより、レンズ駆動装置10が無限大(INF)ポジションにリセット(復帰)される。
【0064】
尚、マクロポジションとは、被写体として二次元バーコード等の識別子を撮像するための接写位置であって、カメラのレンズから二次元バーコート(被写体)までの位置(焦点距離)が例えば10cm程度の位置に相当する。一方、無限大(INF)ポジションとは、被写体が実質的に無限大の位置にあるものを撮像するための無限遠位置であって、カメラのレンズから被写体までの位置(焦点距離)が無限大∞の位置に相当する。そして、レンズホルダ14のストロークが60μmの位置とは、カメラのレンズから被写体までの距離(焦点距離)が例えば60cm程度の位置に相当する。
【0065】
したがって、本第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10は、焦点距離(レンズから被写体までの距離)が約10cmと、約60cm〜無限大の間の範囲とをカバーすることができる。その結果、実際のカメラの使用状況を考慮すると、ほとんど全ての範囲をカバーできていることが分かる。
【0066】
以上の説明から明らかなように、レンズ駆動装置10を、第1の動作モード又は第2の動作モードのいずれかで動作させることができる。
【0067】
[第1の変形例]
図8を参照して、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例について説明する。図8は、図1乃至図3に示したレンズ駆動装置10の第1の変形例に使用されるレンズホルダ14’を示す斜視図である。レンズホルダ14’以外の構成は、図1乃至図3に示したレンズ駆動装置10と同様である。
【0068】
図3に示されるように、ヨーク20の外筒部202は、その四隅の下端部に、4つの開口部202aを持っている。従って、ヨーク20の4つの開口部202aは、フレミングの左手法則に基づくローレンツ力が作用しない部分である。
【0069】
そこで、図8に示したレンズホルダ14’の筒状部140は、このヨーク20の4つの開口部202aに対応する位置に、それぞれ、4つの開口140aを持っている。
【0070】
これにより、レンズホルダ14’の軽量化を図ることができる。
【0071】
[第2の変形例]
図9を参照して、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係るレンズ駆動装置10Aについて説明する。図9は、レンズ駆動装置10Aを、ヨーク20を省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【0072】
図示のレンズ駆動装置10Aは、図1乃至図3に示したレンズ駆動装置10と、駆動コイル16の両端と一対の電極36との間の接続するコイル渡り線の構成(配線の仕方)が相違する点を除いて、同様の構成を有する。
【0073】
すなわち、レンズ駆動装置10では、図示はしていないが、コイル渡り線を使用して、通常の仕方で(何ら工夫をすることなく)、駆動コイル16の両端と一対の電極36との間の接続している。
【0074】
これに対して、図9に示したレンズ駆動装置10Aにおいては、コイル渡り線26を、レンズホルダ14の下方に配置している。詳述すると、4本のコイル渡り線26を、バイファイラー巻で、駆動コイル16の下端より均等に引き出し端子(電極)36にはんだ付けする。
【0075】
このような構成のコイル渡り線は、下側板バネと同様の働きを奏することができる。
【0076】
[第2の実施の形態]
図10を参照して、本発明の第2の実施の形態によるレンズ駆動装置10Bについて説明する。図10はレンズ駆動装置10Bを、ヨーク20を省いた状態で、斜め前方上方から観た斜視図である。
【0077】
図示のレンズ駆動装置10Bは、後述するように、レンズホルダおよび駆動コイルの構成(形状)が相違する点を除いて、図1乃至図3に示した第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10と同様の構成を有する。したがって、レンズホルダおよび駆動コイルに、それぞれ、14Aおよび16Aの参照符号を付してある。
【0078】
第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10では、図2及び図3に示されるように、レンズホルダ14の筒状部140は円筒状をしており、駆動コイル16も円筒状をしている。駆動コイル16は、レンズホルダ14の筒状部140の外壁面に接着される。
【0079】
これに対して、第2の実施の形態によるレンズ駆動装置10Bでは、図10に示されるように、レンズホルダ14Aの筒状部140Aは八角筒状をしており、駆動コイル16Aも八角筒状をしている。駆動コイル16Aは、レンズホルダ14Aの筒状部140Aの外壁面に接着される。
【0080】
レンズホルダ14Aおよび駆動コイル16Aを八角筒状とすることにより、円筒状のレンズホルダ14および駆動コイル16と比較して、面積を広くすることができる。その結果、第1の実施の形態に比較して、上述した電磁力やローレンツ力を大きくすることができる。
【0081】
以上、本発明についてその好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明の精神を逸脱しない範囲内で、種々の変形が当業者によって可能であるのは明らかである。例えば、上述した実施の形態では、レンズホルダおよび駆動コイルの外形として、円筒状や八角筒状のものについてのみ示しているが、レンズホルダおよび駆動コイルの外形はこれらに限定されない。レンズホルダおよび駆動コイルは、例えば、四角筒状などの他の形状のものを使用してもよい。また、上述した第1の実施の形態では、レンズ駆動装置を第2の動作モードで動作させるために、ヨークのみを磁化しているが、ヨークとレンズホルダの両方を磁化しても良いし、レンズホルダのみを磁化しても良い。
【符号の説明】
【0082】
10、10A、10B レンズ駆動装置(アクチュエータ)
11 レンズアセンブリ(レンズバレル)
12 アクチュエータ・ベース
122 ベース部
122a 円形開口部
124 ベース突出部
124a ベース突起
14、14’、14A 強磁性体から成るレンズホルダ
140、140A 筒状部
140a 開口
141 下端部
142 フランジ
16、16A 駆動コイル
20 ヨーク
202 外筒部
202a 開口部
204 リング状端部
22 板バネ(弾性部材)
222 リング部
222a バネ穴
224 端部
224a 端部穴
226 腕部
24 筺体
26 コイル渡り線
36 電極
O 光軸(駆動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズアセンブリをレンズの光軸方向に沿って移動可能に支持するレンズ駆動装置であって、
前記光軸方向の下側に配置されたアクチュエータ・ベースと、
該アクチュエータ・ベースより上方に配置され、前記レンズアセンブリを保持するための筒状部を有する、強磁性体から成るレンズホルダと、
該レンズホルダに前記筒状部の外周囲に位置するように固定されたリング状の駆動コイルと、
該駆動コイルから離間し、且つ前記駆動コイルを間に挟んで前記レンズホルダと対向するように、前記レンズホルダを覆うヨークと、
前記レンズホルダを前記光軸方向に沿って案内する案内手段と、
を備える、レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記アクチュエータ・ベースと前記ヨークとによって筺体が構成される、請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記レンズホルダは、その上端で半径方向外側へ突出するフランジを持ち、
前記ヨークは、前記駆動コイルの周囲に配置された外筒部と、該外筒部の上端で前記外筒部の内側へ延出するリング状端部とを備え、
前記フランジと前記リング状端部とが対向している、請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記案内手段は、前記レンズホルダと前記筺体との間に配置された弾性部材を含み、該弾性部材は、前記レンズホルダを径方向に位置決めした状態で前記レンズホルダを前記光軸方向にのみ変位可能に支持する、請求項2又は3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記レンズホルダの筒状部の上側に設けられた板バネから構成される、請求項4に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記アクチュエータ・ベースは、リング状のベース部と、該ベース部の四隅で上方へ突出する4つのベース突出部とを有し、
前記板バネは、前記レンズホルダの前記フランジに取り付けられるリング部と、前記4つのベース突起部の上端にそれぞれ取り付けられる4つの端部と、前記リング部と前記4つの端部との間に橋架された4本の腕部とから構成される、
請求項5に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記レンズホルダの下方に配置された複数本のコイル渡り線を更にする、請求項5又は6に記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記ヨークの前記外筒部は四角筒状をしている、請求項3乃至7のいずれか1つに記載のレンズ駆動装置。
【請求項9】
前記ヨークの前記外筒部は、その四隅の下端部に4つの開口部を持ち、
前記レンズホルダの前記筒状部は、前記4つの開口部に対応する位置にそれぞれ開口を持つ、請求項8に記載のレンズ駆動装置。
【請求項10】
前記ヨークは磁化されている、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のレンズ駆動装置。
【請求項11】
前記レンズホルダの前記筒状部が円筒状をしており、
前記駆動コイルは円筒状をしている、請求項1乃至10のいずれか1つに記載のレンズ駆動装置。
【請求項12】
前記レンズホルダの前記筒状部が八角筒状をしており、
前記駆動コイルは八角筒状をしている、請求項1乃至10のいずれか1つに記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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