説明

レンチキュラレンズシート記録媒体及び画像記録装置

【課題】簡易な手段により同一平面状のレンチキュラー部材上に同時に複数の3次元立体画像、又は複数変化(コマ送り動画)画像及び通常の画像を生成するインクジェット記録方法及びその装置を提供する。特に、レンチキュラ部材に複数の画像を直接記録を行う場合のインクジェット記録方法(位置合わせ手段、印字手段、処理方法)等を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の異なった領域に、複数の異なった画像をセンサ等で各領域の特徴情報と位置情報から正確に位置合わせし、それぞれの領域で独立に最適な画像処理を施すことで、レンチキュラ部材に直接、又は間接的に記録を行い、3次元立体画像、又は複数変化(コマ送り動画)画像、又は通常の画像を並列に複数同時に生成することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像形成装置に関し、より詳しくはレンチキュラ方式やパララックス・バリア方式等メガネを使用せずに立体画像または、動画の形成を行う立体画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メガネを使用せずに立体画像形成し立体画像の表示を行う方式としては、レンチキュラレンズシートを使用して立体画像表示を行うレンチキュラー方式やパララックス・バリアと称されるスリットを使用して立体画像表示を行うパララックス・バリア方式が広く知られており、これらの方式を使用した立体画像プリントや立体画像表示装置等が知られている。
【0003】
前記レンチキュラ方式については、1970年頃から盛んに研究され、例えば、非特許文献1が記述されている。
【0004】
又、パララックス・バリア方式については、例えば非特許文献2に開示されている。
【0005】
従来、玩具や宣伝広告用にレンチキュラレンズを応用した動画像表示パネルが利用されている。これは複数の画像を同一面に表示するためのもので、観察者の見る方向によって第1(CC)の画像が見えたり、第2(D)の画像が見えたりするものである。その構造は、表面に多数のシリンドリカルレンズ(断面蒲鉾型(;半円筒型)の2次曲面レンズ)を形成した板状のレンズ(レンチキュラレンズ)の裏面に特殊な方法で原画を配置したものから構成されている。
【0006】
そして、レンチキュラレンズのピッチ、即ち個々のシリンドリカルレンズの幅内にCとDとの画像を短冊状(ストライプ状)に切断したものを交互に配置し、観察者がレンチキュラレンズを見る角度によってC又はDの何れかの画像が眼に入射して、あたかもCからDへと画像が動いた(変化した)かのように見せるようになっている。これらの画像は記号や文字のように形状的な連続性のないものを使用しても良く、ゴルフのスイングのように連続する動画的なものを使用しても良い。又、画像も2種類だけでなく3種類以上(最大8種類程度)画像を合成して順次表現することも可能である。
【0007】
この動画像に関しては、人間の左右の眼の存在が邪魔であり、一般的にはレンチキュラレンズの母線方向(レンズの形成状況)は、横方向で認識するのが普通である(縦方向では動画像が混ざって見えてしまい変化が曖昧になるからである)。
【0008】
更に、上記立体画像形成装置では簡易に作成可能なように色々な工夫がなされている。
【0009】
例えば、簡易な画像形成方法として、特許文献1に作成装置が提案されている。又、一番難しいいレンチキュラレンズと画像のピッチ・位置合わせに関しては、特許文献2に光センサを利用した方式が提案され、特許文献3にインクジェットの吐出タイミング制御が提案されている。
【0010】
更に、レンチキュラレンズをシート状にしたものの裏面に直接記録を行う方式についての提案も多数ある(特許文献4,5)。
【0011】
【非特許文献1】Oplus E誌1993年11月号(pp100 104 )
【非特許文献2】S.H.Kaplan“Theory of Parallax Barriers”、J.SMPTE ,Vol .59、No7 、pp11〜21(1952)
【特許文献1】特開平10−293266号公報
【特許文献2】特開平6−340099号公報
【特許文献3】特開平9−015766号公報
【特許文献4】特開平6−209400号公報
【特許文献5】特開平9−102968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の装置では同一画面上に複数の異なった領域に複数の異なった表示をする方法や立体画像と動画を同時に形成する方法に関しての記述はなく、又、同一画面上での複数の異なった画像の位置合わせ技術の開示、並びにそれぞれの画像に独立に最適な処理を実施する方法に関しては何の記述もなく、我々が検討した結果、複数の立体画像・動画を同一画面上に形成することが非常に困難であるという問題点がある。
【0013】
又、立体画像と動画像を同一画像上で同時に認識させるためのレンズの方向と見る方向の課題がある。
【0014】
更に、簡易な記録装置で色々な画像を、高度な立体画像・動画像に簡単に変換できないという問題もあった。
【0015】
又、レンチキュラレンズシート中に通常の画像・文字を入れようとすると文字が分裂してしたり、画像がボケてしまうため非常に醜いという欠点も持っていた。
【0016】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、通常の文字・画像を混在させながら立体画像や動画像をを複数同時に配置することが可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記問題を解決するため、本発明は、少なくとも複数の略半円柱状レンズ部(α)が所定のピッチ(β)で配列されたレンチキュラレンズ領域;Aと複数の略半円柱状レンズ部(α’)が所定のピッチ(β’)で配列されたレンチキュラレンズ領域;B’(但し、α≦α’、β≦β’)の2種類以上のレンチキュラレンズ群を有したレンチキュラレンズシートであって、前記レンチキュラレンズシートの裏面に略透明なインクジェット記録層を有し、少なくとも、前記レンチキュラレンズ領域の1つ以上は、前記レンチキュラレンズの母線(ピッチと鉛直方向)方向が90度(直角)異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の異なった領域に、複数の異なった画像をセンサで正確に位置合わせし、それぞれの領域で独立に最適な画像処理を施すことで、レンチキュラ部材に直接、又は間接的に記録を行い、3次元立体画像、又は複数変化(コマ送り動画)画像、平面画像を複数同時に生成することを可能とする。従って、通常の文字・画像を混在させながら立体画像や動画像をを複数同時に配置することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係るインクジェット記録装置の概略的構成を説明するためのもので、図1は制御構成を示すブロック図、図2はインクジェット記録装置の主要部を示す外観斜視図、図3は図2の矢印A方向より観たキャリッジ外観図である。
【0021】
図1において、1はインクジェット記録装置全体を示す。本発明に係るインクジェット記録装置1は、記録手段(インクジェットヘッド)9及びインクタンクと搭載するキャリッジ21と、被記録媒体(レンチキュラープリント媒体)としてのレンチキュラーシート20を搬送する搬送手段(レンチキュラーシートを搬送する際の駆動力を発生するシート送りモータ3及び該モータの駆動制御を行うモータ駆動回路4)と、これらを含む装置全体を制御するための制御手段(CPU形態のコントローラ)2とを具備する。そして、複数の吐出口からインク滴を吐出させるインクジェットヘッド9をレンチキュラーシート20の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)にシリアルスキャンさせ、一方で非記録時にレンチキュラーシート20を記録幅に等しい量で間欠搬送するものである。
【0022】
本実施の形態では、図に示すように、キャリッジモータ5の駆動力によって走査されるキャリッジの位置がリニアセンサ7によって検出される。又、シートピッチセンサ8によって、レンチキュラーシート20のシリンドリカルレンズのピッチを上記キャリッジの走査に伴なって検出する。このシートピッチセンサ8の検出出力に基づいて後述のようなプリント位置(吐出位置)の決定を行うことができる。
【0023】
インクジェットヘッド9は、ホストコンピュータ11からインターフェース12を介して入力される画像データに基づいてヘッド駆動部10によって駆動される。即ち、入力画像データに基づいてキャリッジ1の走査に伴ってレンチキュラーシート上にインクジェットヘッド9からインクを吐出し、所定のディジタル画像をプリントする。
【0024】
本実施の形態のインクジェットヘッドは、電気熱変換素子をエネルギー発生手段として用いる。従って、駆動電気パルス信号により1対1の対応で液路のインク内に気泡を発生させることができ、又、即時且つ適切に気泡の成長・収縮を行わせることができるので、特に応答性の優れたインク滴吐出が達成できる。又、インクジェットヘッドのコンパクト化も容易であり、且つ、最近の半導体分野における技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術の長所を十二分に活用でき、高密度実装化が容易で、製造コストも安価なことから有利である。
【0025】
本例のインクジェット記録装置1で用いられる画像データは、ホスト装置としてのホストコンピュータ11上で合成されたデータであり、このデータはインタフェース12を介してコントローラ2に送られる。このコントローラ2に送られたデータは、後述のように相互に視差を有した画像を合成したものであり、コントローラ2にこれに所定の画像処理を施して吐出用データを生成し、所定のメモリ(不図示)に一旦格納する。
【0026】
図2に示すように、上述のキャリッジ21は、2本のガイド軸26,27と摺動可能に係合する。キャリッジ21の一部は、上記ガイド軸26及び27と平行でほぼ同一の範囲にプーリ5a,5cによって張られたベルトと接続し、これによりキャリッジモータ5の駆動力が伝達されてガイド軸26,27に沿った移動(主走査)が可能となる。
【0027】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、カラー記録対応のもので、複数色のインクジェットヘッドにより吐出されるインク液滴の重ね合わせることによりカラー画像を形成する。従って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3原色又はこれら3原色にブラック(B)を含めた4色に対応する4種類のインクジェットヘッド及びインクカートリッジを搭載する。
【0028】
即ち、本実施の形態では、キャリッジ21上に、インクジェットヘッドとインクタンクとが一体となったインクジェットカートリッジ22,23,24及び25が装着されている。これらカートリッジは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクに対応して設けられるものであり、キャリッジ21に対して着脱自在に装着される。
【0029】
キャリッジ21の一部に設けられるリニアセンサ7は、ガイド軸26,27と平行に延在するリニアスケール7aと摺動可能に係合する。これにより、キャリッジ21の走査位置を検出することができる。尚、この検出のための構成は公知のものを用いることができ、例えば磁気的或は光学的な検出とすることができる。
【0030】
一方、シートピッチセンサ8は、キャリッジ21のインクジェットヘッドの走査領域に対向するように設けられる。これにより、後述のようにレンチキュラーシートと各シリンドリカルレンズのピッチを検出することができる。
【0031】
図3において、9B,9C,9M及び9Yはインクジェットヘッドであり、それぞれ一体に設けられるインクタンクからブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクの供給を受け、レンチキュラーシート20(図2参照)に対してインクを吐出し、そのシート上にインクドットを形成する。
【0032】
以上示した本実施の形態のインクジェット記録装置において、キャリッジ21は、レンチキュラーシート20の各レンチキュラーレンズ(シリンドリカルレンズ)の長手方向、即ちレンチキュラーレンズの母線方向(図2の矢印B方向)に対して直交する方向に走査し、各インクジェットヘッドによりプリントを行う。これにより、後述されるようにレンチキュラーレンズの母線方向に走査してプリントする方法に対して、レンチキュラーレンズのピッチを検出する手段としてのセンサ8を有効に用いることができ、プリント位置の精度を容易に向上させることができる。
【0033】
図8は以上のようにしてプリントされたレンチキュラーシート上の画像の立体視について説明するための説明図である。
【0034】
人間が物体或は映像を奥行きのある立体像として認識するには右眼と左眼に視差を与える必要がある。
【0035】
図8において、50Rは観察者の右眼、50Lは観察者の左眼、51はレンチキュラーシート、52a,52b,52c及び52dはレンチキュラーシート51に記録された像(ドット)である。レンチキュラー方式では、図8に示すように、右眼50Rと左眼50Lに入る像はレンチキュラーシート51で分離された像のそれぞれ像52c及び52bであり、この2像に所定の視差を設ければ立体視できることになる。
【0036】
立体視は右眼用と左眼用のそれぞれ1像ずつの計2像あれば実現できるが、2像では立体視領域が狭く、ほぼ同じ大きさの逆立体視領域が隣接して存在することになる。このような欠点を解消するために2像以上の多像化(本実施の形態では4像)が行われ、一般にその像数が多い程、立体視領域が広がりかつ逆立体視領域が狭くなることが知られている。
【0037】
次に、本実施の形態の原画像合成及びプリント動作の手順について説明する。
【0038】
[ホストコンピュータ11による画像処理]
レンチキュラー立体視になるように短冊・合成等画像処理を行う。
【0039】
[ホストコンピュータ11から本例インクジェット記録装置へのデータの供給]
ホストコンピュータ11で生成された合成画像は、圧縮又は非圧縮データの状態で送られる。これに対してインクジェット記録装置側で所定の画像処理を行うが、階調表現として面積階調法を用いる。この際、面積階調の階調マトリックスをレンチキュラーレンズの母線方向を長手方向とする長方形に取ることでレンチキュラーの多像化を図ることができる。又、レンチキュラーレンズのn本単位でストライプ状の階調マトリックスを構成することでも多像化を図ることができる。
【0040】
[レンチキュラーシートの供給]
手差し或はオートシートフィーダによって本実施の形態のインクジェット記録装置へのレンチキュラーシートが供給される。
【0041】
[プリント]
図2に示したように、本実施の形態のインクジェット記録装置は所謂シリアルプリンタの形態を有するものである。即ち、図2において上記供給されたレンチキュラーシートは、インクジェットヘッド9と対向する位置にシート搬送手段(不図示)によって搬送され、キャリッジ21の1走査毎にインクジェットヘッド9からインクを吐出して1ライン分(1走査分)のプリントがなされるとともに、この1ライン幅分のシート搬送が行われる。
【0042】
この間に、上述したように、シートピッチセンサ8によってレンチキュラーシート20のレンチキュラーレンズのピッチ(シートピッチ)が検出されるとともにリニアセンサ7によってキャリッジ位置、即ちインクジェットヘッド9の位置も検出される。このシートピッチとインクジェットヘッドの位置情報に基づきコントローラ2によってインクジェットヘッド9のインク吐出タイミングが制御される。尚、これまでの説明から明らかなようにこのシートピッチセンサはインクジェットヘッドの走査において先行方向に設ける。
【0043】
キャリッジ1の走査毎に以上の動作を繰り返すことにより、レンチキュラーシート20のプリントを行う。
【0044】
[レンチキュラーシートの排出]
レンチキュラーシートを搬送手段(不図示)を用いて装置外へ排出する。
【0045】
尚、上記実施形態ではシリアルタイプのインクジェット記録装置を用いてレンチキュラーシートにプリントを行う例を示したが、所謂フルラインタイプ、即ち、搬送されるシートの幅に対応した範囲に亘ってインク吐出口を備えたインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置によっても上述と同様のプリントは可能である。この場合、レンチキュラーシートは、そのレンズの母線方向と直交する方向に搬送され、この搬送の際にシートピッチを検出する構成とすることができる。
【0046】
又、上記実施の形態としては、レンチキュラープリント媒体としてシート状のものを用いたが、これが連続紙如きものであっても良いことは勿論である。
【0047】
図8は本発明で用いられている面積階調手段を説明する説明図である。
【0048】
レンチキュラーレンズ1ピッチ分に相当する画像のマトリックスパターンは、X方向(レンチキュラーレンズの径方向)が8画素、Y方向(レンチキュラーレンズの母線方向)が8画素から成る。即ち、図中、XLはレンチキュラーレンズ1ピッチ分の幅で、YLはレンチキュラーレンズの母線方向の1つのマトリックスパターンの寸法であり、この例では4像のため、幅XLの間に4像が2×8ドットずつ記録される。
【0049】
図9は図8の画像のマトリックスパターンに占める1つの像のマトリックスパターンを示す。レンチキュラーレンズの母線方向が8ドットで、その直交方向が2ドットである。従って、16階調を表現することができる。
【0050】
面積階調表現法を実施する際、原画像の階調値と記録される画像の階調値との誤差を補正する必要がある。そのため、この実施形態では誤差分散法を用いる。
【0051】
図10は誤差分散法について本実施形態の誤差伝播の様子を示した説明図であり、図中のLDはレンチキュラーレンズの母線方向を示している。原画像中のある画素P(x,y)における誤差Exyの分散はY方向(レンチキュラーレンズの母線方向)のみ行われる。この実施形態では、Y方向に沿って配列された画素PA,PB,PC及びPDの画素に対して行われる。又、距離による重み付け(即ち、誤差の分散比)がなされ、距離が遠くなる程重み付けが小さくなる。
【0052】
以上のように、画像或は信号処理が行われ、インクジェットヘッドの吐出の制御が行われる。これまで、インクの有無で記録する2値記録について説明してきたが、インクの量を制御できる多値記録を用いても、ほぼ同様となる。
【0053】
次に、本発明の特徴である複数のレンチキュラレンズ領域を有した記録シートから各領域の特性情報を取得する部分を説明する。
【0054】
本実施の形態では、図4に示すレンチキュラレンズシートS01を用いて記録を行う。
(1)領域情報の取得(基本的には各領域の位置情報)
A領域(3D画像を当て嵌める領域);
レンチキュラレンズシートの各座標を原点O(0,0)、X(X1,0)、Y(Y1,0)、XY(X1,Y1)を四隅とした場合。3Dの画像を当て嵌める斜線部の領域Aの位置情報は図4から、f1(x1,y1)、f2(x2,y2)、f3(x3,y3)、f4(x4,y4)によって決まる。それ以外の領域Bは、動画像を当て嵌めるための領域である。これらの位置情報を取得する方法としては、本実施形態では、記録ヘッド部100のキャリッジ200の横に搭載されたオンキャリッジスキャナ300によって読み出される。位置情報を正確に読み出すために、領域Aと領域Bの境界部(一点破線部分)を微分処理等でエッジ検出処理を行い、各領域の特徴位置情報を取得する。本実施形態では、一般的なエッジ検出処理を用いたが、領域A,Bの境界を正確に検出し、位置合わせが行えれば良く、その処理方法に特徴を見出すものではなく公知の方法を用いれば良い。本実施形態では、各位置情報は次のように判読され、
X=100mm、Y=140mm、x1=20mm、y1=20mm、x2=80mm、y2=20mm、x 3=20mm、y3=120mm、x4=80mm、y4=120mm、X’=60mm、Y’=100mmとなった。
(2)領域特性の取得(レンズのピッチ特性:レンズの方向、レンズのピッチ、レンズの厚み等)
次に、各領域の位置情報を正確に読み取った後、又は、読み取り最中に、各領域の特徴抽出を行う。特徴抽出は、その位置情報を起点にレンズのピッチ情報;Lp(A)、Lp(B)、レンズの向き情報;Langle (A)、Langle(B)(目視方向から見て、レンズの方向が縦方向か(立体画像に最適)、横方向か(動画像に最適)を判定する)、レンズの厚み情報;Lt1(A),Lt2(B)等を検出する。
【0055】
本実施の形態では、上記レンチキュラレンズシートから得られた情報は、領域Aは、レンズの方向が縦方向で立体画像用領域として登録され、レンズのピッチは約0.4mm、レンズの厚みは約1.4mm、領域Bは、レンズの方向が横方向で動画像用領域として登録され、レンズのピッチは約0.4mm、レンズの厚みは約1.4mmと推定された。
(3)領域判定処理(立体画像、動画像、通常の画像かの判別)
そして、上記8(2)の領域特性の取得結果を基準情報として持ち、ホストからユーザーが各種画像を各領域に嵌め込む作業中に各領域に入れる最適な画像の判定を実施し、処理方法の選択(立体画像、動画像、通常の画像のうちどれか)を自動で表示し、ユーザーに選択させる。
【0056】
本実施の形態では、領域Aは立体画像用領域として、領域Bは動画像領域として最適であると判定した。
(4)フィッティング処理(サイズ合わせ)
その後、(1)の位置情報から各領域のサイズを計算し(例えば、領域Aのサイズは、横方向;X’=x2−x1(x4−x3、etc )、縦方向;Y’=y3−y1(y4−y2、etc )となる)不図示のアプリケーションにより選択された入力画像のサイズから前記領域に収まるようにフィッティング処理(拡大・縮小・補完等)を行う。
【0057】
本実施の形態では、入力画像として、立体画像用の入力解像度;300ppi、サイズ;100×160mm、動画像用の入力解像度;150ppi、サイズ;100×160mmであった。各サイズの補完処理はリニア補完処理を用いて行った。補完方法は本発明の特徴ではなく公知の方法を用いれば良い。
(5)特殊処理(立体画像合成処理・動画像合成処理)
ここでは、詳細な処理方法は割愛するが、一般的な複数の入力画像から短冊状に分割処理しそれを合成して記録すれば良く、公知の立体画像合成方法、動画像合成を方法を用いれば良い。
【0058】
図5に本実施の形態の簡単なフローチャートを示す。
【0059】
シーケンスの簡単な説明をする。
【0060】
S1では、シートのサイズ検出を行う。そして、S2で所定のアルゴリズムにより領域の数が幾つ存在するかの判定を行う。S3ではS2で判定された個々の領域それぞれの位置情報を取得する。そして、S4では、S3で得られた位置情報をもとに個々の領域のサイズを計算する。S5では更に各領域ごとに特徴がある場合には特徴の抽出を行う。そして、S6では、今までに得られたサイズ情報、個々の領域のサイズや特徴等から最適な画像種類を判定する。
【0061】
S7で入力された画像データを各領域へのサイズに変換する処理を行い、S8において各領域ごとへの振分け処理を行うが、本実施の形態では、ユーザーに選択させるようにしている。そして、S9の立体画像合成処理、S10の動画像合成処理、S11通常画像処理を個別に処理し、S12で各画像を合成する処理を行い、S13にて印刷に至る。
【0062】
本発明では、記録ヘッドを搭載したキャリッジに付随する光学センサによって、予め、スキャナによってレンチキュラレンズシートの特性を読み取って、複数のレンチキュラレンズ領域を検出しておいても構わない。又、ドライバーなどのユーザーIFの部分でメディアの選択個所において、レンチキュラレンズの種類をしてすることで予めシートの領域情報を取得し、それに基づいて各領域に最適な独立処理を施しても構わない。
【0063】
光学センサは、高価なスキャナである必要はなく、形成する立体画像・動画像のコマ数等の位置合わせに必要な要求精度等に応じて選択すれば良い。又、光学センサではなく、スイッチ等のメカニカルなセンサや他の方法で上記領域を検出しても良いことは言うまでもない。
【0064】
<実施の形態2>
本実施の形態では、図6に示すレンチキュラレンズシートS02を用いて記録を行う。この実施形態の特徴は、一枚のシート中に4つの領域が分割されており、立体画像領域;1、動画像領域;2、通常画像領域1(文字情報等を入れる領域)が同時に形成可能にしている。
(1)領域情報の取得(基本的には各領域の位置情報)
A領域(3D画像を当て嵌めるる領域);
レンチキュラレンズシートの各座標を原点O(0,0)、X(X1,0)、Y(Y1,0)、XY(X1,Y1)を四隅とした場合。3Dの画像を当てはめる斜線部1の領域Aの位置情報は図6から、fa1’(xa1’,ya1’)、fa2’(xa2’,ya2’)、fa3’(xa3’,ya3’)、fa4’(xa4’,ya4’)によって決まる。領域B,Cは、動画像を当て嵌めるため斜線部2,3で各領域の位置情報は図6から、B領域はfb1’(xb1’,yb1’)、fb2’(xb2’,yb2’)、fb3’(xb3’,yb3’)、fb4’(xb4’,yb4’)、C領域はfc1’(xc1’,yc1’)、fc2’(xc2’,yc2’)、fc3’(xc3’,yc3’)、fc4’(x4’,yc4’)である。その他の領域Dは、通常画像を当て嵌めるための領域(レンチキュラレンズの無いスルー処理領域)である。
(2)領域特性の取得(レンズのピッチ特性:レンズの方向、レンズのピッチ、レンズの厚み等)
次に、実施の形態1と同様に各領域の位置情報を正確に読み取った後、又は、読み取り最中に、各領域の特徴抽出を行う。特徴抽出は、その位置情報を起点にレンズのピッチ情報;Lp(A),Lp(B),Lp(C),Lp(D)、レンズの向き情報;Langle (A)、Langle (B)、Langle(C)、Langle (D)(目視方向から見て、レンズの方向が縦方向か(立体画像に最適)、横方向か(動画像に最適)、通常画像か(通常処理;スルー)を判定する)、レンズの厚み情報;Lt1(A),Lt2(B),Lt3(C)、Lt4(D)等を検出する。
【0065】
本実施の形態では、上記レンチキュラレンズシートから得られた情報は、領域A,Cは、レンズの方向が縦方向で立体画像用領域として登録され、領域Bは、レンズの方向が横方向で動画像用領域として登録され、その他の領域Dは、レンチキュラレンズの無い領域と判定された。
(3)領域判定処理(立体画像、動画像、通常の画像か)
そして、上記(2)の領域特性の取得結果を基準情報として持ち、ホストからユーザーが各種画像を各領域に嵌め込む作業中に各領域に入れる最適な画像の判定を実施し、処理方法の選択(立体画像か、動画像か、通常の画像か)を自動で表示し、ユーザーに選択させる。
【0066】
本実施の形態では、領域A,Cは立体画像用領域として、領域Bは動画像領域、領域Dは通常画像領域として最適であると判定した。
(4)フィッティング処理(サイズ合わせ)
この項目は実施の形態1と同様に処理すれば良いので説明を省略する。
(5)特殊処理(立体画像合成処理・動画像合成処理・通常処理)
ここでは、詳細な処理方法は割愛するが、一般的な複数の入力画像から短冊状に分割処理しそれを合成して記録すれば良く、公知の立体画像合成方法、動画像合成を方法を用いれば良い。
【0067】
これらの処理を施して、インクジェットプリンタで出力された画像は立体画像と動画像と通常画像が1枚のシートの中に混在しており、従来、それぞれ最適化したものを部分的に張り合わせて作成する必要があったが、本発明により、簡単に低コストで複数の立体画像・動画像・通常画像が混在した画像が同時に形成でき、画像の表現に厚みを増し、今までにないアピール力の強い視覚特性効果が発揮される。
【0068】
本実施の形態では、複数の混在した立体画像でレンズピッチの異なったシートでの説明はしなかったが、レンズピッチや厚み等、シート中に複数の異なった表現が可能なレンチキュラレンズを混在させて、それぞれに立体感の異なる表現や動画のコマ数を変えることで従来できなかった混在画像によるアート的な表現能力を提供できることは言うまでもない。
【0069】
<その他の実施形態>
専用光沢メディアに印刷後、トンボマークを利用してレンチキュラレンズと位置合わせを行う方式。
【0070】
本実施の形態では、レンチキュラレンズに直接印刷する方法に関して述べてきたが、レンチキュラレンズシートと記録媒体を別に形成して、後で張り合わせる方法に関しても同様に適用できることは言うまでもない。この場合は、レンチキュラレンズシートと画像の位置合わせが問題となるが、印刷技術と同様に記録媒体に複数の混在画像を形成するときに画像中の複数箇所にトンボマーク等を記録することで印刷時の位置ずれや斜行等が発生しても、張り合わせ時に位置合わせを簡単にすることが容易に可能である。この場合は予め、レンチキュラレンズシートの位置情報・特性情報等を入力しておくか、事前にスキャナー等で読み取るか、指定されたタイプのシートを用いることで情報が確定していれば、その情報に基づいて、印刷・レイアウト処理時に容易に対応可能であることは言うまでもない。
【0071】
本実施の形態では、レンチキュラレンズシートは1枚の中に複数の異なった特性を持ったレンズを同時に形成しているが、複数の異なったレンチキュラレンズを嵌め込んで1枚のシート状にしたものでも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の主要部を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示したキャリッジ及びこれに搭載されるインクジェット記録ヘッドの外観立面図である。
【図4】本発明の実施の形態1のレンチキュラレンズシートの図である。
【図5】本発明の実施の形態1の処理フローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2のレンチキュラレンズシートの図である。
【図7】本発明に適用されるレンチキュラシートを用いた場合の立体視を説明するための図である。
【図8】本発明に適用される面積階調法を説明するための表図である。
【図9】本発明に適用される面積階調法を説明するための表図である。
【図10】本発明に適用される誤差分散法を説明するための表図である。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェット記録装置
2 コントローラ
3 シート送りモータ
4 モータ駆動回路
5 キャリッジモータ
6 モータ駆動回路
7 リニアセンサ
8 シートピッチセンサ
9 インクジェットヘッド
9B,9C,9M,9Y
10 ヘッド駆動部
11 ホストコンピュータ
12 インターフェース
20 レンチキュラーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数の略半円柱状レンズ部(α)が所定のピッチ(β)で配列されたレンチキュラレンズ領域;Aと複数の略半円柱状レンズ部(α’)が所定のピッチ(β’)で配列されたレンチキュラレンズ領域;Bの2種類以上のレンチキュラレンズ群を有したレンチキュラレンズシートと、前記レンチキュラレンズシートの裏面に略透明なインクジェット記録層とを有することを特徴とするレンチキュラレンズシート記録媒体。
【請求項2】
少なくとも複数の略半円柱状レンズ部(α)が所定のピッチ(β)で配列されたレンチキュラレンズ領域;Aと複数の略半円柱状レンズ部(α’)が所定のピッチ(β’)で配列されたレンチキュラレンズ領域;B’(但し、α≦α’、β≦β’)の2種類以上のレンチキュラレンズ群を有したレンチキュラレンズシートであって、前記レンチキュラレンズシートの裏面に略透明なインクジェット記録層を有し、少なくとも、前記レンチキュラレンズ領域の1つ以上は、前記レンチキュラレンズの母線(ピッチと鉛直方向)方向が90度(直角)異なっていることを特徴とするレンチキュラレンズシート記録媒体。
【請求項3】
少なくとも複数の略半円柱状レンズ部(α)が所定のピッチ(β)で配列されたレンチキュラレンズ領域;Aと複数の略半円柱状レンズ部(α’)が所定のピッチ(β’)で配列されたレンチキュラレンズ領域;B’(但し、α≦α’、β≦β’)と平面領域;Cから成る2種類以上のレンチキュラレンズ群を有したレンチキュラレンズシートであって、前記レンチキュラレンズシートの裏面に略透明なインクジェット記録層を有し、少なくとも、前記レンチキュラレンズ領域の1つ以上は、前記レンチキュラレンズの母線(ピッチと鉛直方向)方向が90度(直角)異なっていることを特徴とするレンチキュラレンズシート記録媒体。
【請求項4】
請求項1又は2記載のレンチキュラレンズシートを搬送するための手段と、請求項1又は2記載の複数の異なったレンチキュラレンズ領域(A,B,B’,…)と平面領域Cの特徴を判定する手段(ピッチ情報、位置情報、サイズ情報、レンズの向き情報等)を有し、前記判定手段より得た情報を基に各領域に画像を形成するための最適な処理を行う処理手段を有し、その処理手段から得た情報を記録信号に変換する変換手段を有し、変換手段から得た情報を記録する記録手段を有したことを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
上記特徴を判定する手段は、光学センサであることを特徴とする請求項4記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記光学センサは、レンズ付CCD(オンキャリッジスキャナ)であることを特徴とする請求項5記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記記録手段は、インクジェット記録方式であること特徴とする請求項4記載の画像記録装置。
【請求項8】
上記処理手段において、各レンチキュラレンズ領域のレンズの母線方向が縦方向で画像を見る領域の場合は、立体画像を割り振り、横方向で見る領域の場合は動画を割り振るように自動割り付け処理することを特徴とする請求項4記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−276678(P2006−276678A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98265(P2005−98265)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】