説明

レーザ変位計

【課題】簡易な構成で距離を測定可能なレーザ変位計を提供する。
【解決手段】レーザ光を出射する光源部11、出射光の光束径を拡張し、拡張後の出射光が反射手段30で反射された反射光を集光する光束径変更部14、反射光を受光する受光部16、出射光と反射光を用い、反射手段30までの距離を算出する算出部18、その距離の変位を検出する変位検出部21、検出された変位に関する出力を行う変位出力部22、拡張前の出射光と、光束径変更部14からの反射光との一方を透過させ、他方を反射させることによって、光源部11からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部14に透過または反射させ、光束径変更部14からの反射光を、中心領域の外側の領域である外側領域を介して受光部16に反射または透過させる反射部17aを備え、光束径変更部14は、反射光に対する有効口径が出射光の光束径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて反射手段までの距離を測定し、その距離の変化を検出するレーザ変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ変位計では、レーザ光の光束経路中に雨滴や雪、霧、土埃、植生等の障害物が存在すると、出射光や反射光の強度が減衰し、精度の低下を招いていた。このため、レーザ光を強くするなどの対応がなされたが、人体の安全上の問題もあったため、最近では、レーザ光を拡散させることにより、障害物の影響度合いを軽減した拡散式のレーザ変位計が開発されている。
【0003】
この拡散式のレーザ変位計の光学手段においては、レーザ光を反射手段に向かって出射する光学系と、反射手段で反射された反射光を受光する光学系をそれぞれ別に設けた二眼式と、光学手段の一部を共有する一眼式とが知られている。一眼式のレーザ変位計では、出射した出射光の光軸と、反射光を受光する光軸とを共有することができ、レンズ部品の共有に応じた低価格化を実現可能である。しかしながら、レーザ光を出射する光源と、反射光を受光する受光部とが異なることから、最終的には光路を分離する分離手段が必要となる。この分離手段として、例えば、ハーフミラーや、4分の1波長板と偏向プリズム等が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−156330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハーフミラーを用いる従来のレーザ変位計では、ハーフミラーの透過率及び反射率がそれぞれ50%となるため、そのハーフミラーを介することによって、受光される反射光の光量が、出射されるレーザ光の4分の1以下に減少し、測定精度の低下を招いたり、障害物による影響を受けやすくなったりしていた。また、4分の1波長板と偏向プリズム等を用いる従来のレーザ変位計では、受光光量の減少は低減できるが、光学系の高精度化や高価格化が課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、出射光と反射光とが同じ光学系を通過すると共に、簡易な構成でありながら、レーザ光の減衰を少なくすることができるレーザ変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるレーザ変位計は、レーザ光を出射する光源部と、光源部から出射されたレーザ光である出射光の光束径を拡張し、拡張後の出射光が反射手段で反射された反射光を集光する光束径変更部と、反射光を受光する受光部と、出射光と反射光とを用いて、反射手段までの距離を算出する算出部と、算出部が算出した距離を蓄積する蓄積部と、蓄積部が蓄積した距離を用いて、前記反射手段までの距離の変位を検出する変位検出部と、変位検出部が検出した変位に関する出力を行う変位出力部と、光源部から出射された拡張前の出射光と、光束径変更部からの反射光との一方を透過させ、他方を反射させることによって、光源部からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部に透過または反射させ、光束径変更部からの反射光を、中心領域の外側の領域である外側領域を介して受光部に反射または透過させる反射部と、を備え、光束径変更部は、反射光に対する有効口径が出射光の光束径より大きい、ものである。
このような構成により、ハーフミラーやプリズムを用いないで出射光と反射光とを分離することができ、中心領域と外側領域との比を適切に設定することによって、レーザ光の減衰を少なくすることができる。また、プリズムを用いた場合よりも、簡易な構成とすることができうる。
【0008】
また、本発明によるレーザ変位計では、前記光束径変更部は、拡張前の出射光を発散させる発散レンズと、前記発散レンズを通過した出射光を収束させる収束レンズと、を有し、前記発散レンズ及び前記収束レンズは、焦点距離の異なる2個のレンズが同心に形成された輪帯レンズであり、前記発散レンズ及び前記収束レンズの中心部を用いた倍率は、前記発散レンズ及び前記収束レンズの外周部を用いた倍率よりも大きくてもよい。
このような構成により、光束径変更部の中心領域による反射光の減衰割合をより低減させることができる。
【0009】
また、本発明によるレーザ変位計では、反射部は、光源部からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部に透過させ、光束径変更部からの反射光を、外側領域を介して受光部に反射させてもよい。
また、本発明によるレーザ変位計では、反射部は、中心領域に出射光が通過する孔を有し、外側領域に鏡面が設けられてもよい。
また、本発明によるレーザ変位計では、反射部は、光源部からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部に反射させ、光束径変更部からの反射光を、外側領域を介して受光部に透過させてもよい。
また、本発明によるレーザ変位計では、反射部は、中心領域に出射光を反射する鏡面が設けられ、外側領域が光束径変更部からの反射光を透過させる透過部材で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレーザ変位計によれば、ハーフミラーやプリズムを用いないで出射光と反射光とを分離することができ、また、レーザ光の減衰を少なくすることができうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1によるレーザ変位計の構成を示す図
【図2】同実施の形態における反射部について説明するための図
【図3】同実施の形態によるレーザ変位計の動作を示すフローチャート
【図4】同実施の形態によるレーザ変位計の他の構成を示す図
【図5】同実施の形態における反射部の他の一例について説明するための図
【図6】同実施の形態によるレーザ変位計の他の構成を示す図
【図7】同実施の形態による光束径変更部の他の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるレーザ変位計について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるレーザ変位計について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるレーザ変位計は、出射光と反射光とが同じ光学系を通過するものであり、反射部によって、出射光と反射光との一方を透過させ、他方を反射させるものである。
【0014】
図1は、本実施の形態によるレーザ変位計1の構成を示す図である。本実施の形態によるレーザ変位計1は、光源部11と、光束径変更部14と、レンズ15と、受光部16と、反射部17aと、算出部18と、蓄積部19と、記憶部20と、変位検出部21と、変位出力部22とを備える。
【0015】
光源部11は、レーザ光を出射する。光源部11は、例えば、レーザダイオードによってレーザ光を生成し、出射してもよい。そのレーザ光の波長は問わない。そのレーザ光は、例えば、650nm程度の波長の赤色レーザ光であってもよく、あるいは、その他の波長のレーザ光であってもよい。光源部11から出射されるレーザ光の直径は、約2mm程度であってもよく、あるいは、その他の直径であってもよい。但し、光源部11からのレーザ光の直径は、小さい方が好適である。後述する孔31の直径を小さくできるからである。
【0016】
光束径変更部14は、光源部11から出射されたレーザ光である出射光を、反射部17aの中心領域を介して受け取り、その出射光の光束径を拡張する。また、光束径変更部14は、拡張後の出射光が反射手段30で反射された反射光を反射部17aに集光する。反射光を集光するとは、反射光の光束径を縮小することである。その集光の際に、光束径変更部14は、反射光を反射部17aの中心領域より広い領域に集光するものとする。すなわち、光束径変更部14は、反射光に対する有効口径が、光束径変更部14を通過する出射光の光束径より大きいものである。例えば、レンズ13の位置において、反射光に対するレンズ13の有効口径は、レンズ13を通過する出射光の光束径よりも大きいものとなる。その結果、反射部17aの位置において、出射光の光束径よりも、反射光の光束径の方が大きくなるようにすることができる。なお、このように、反射部17aの位置において、出射光は光束径が小さく、反射光は光束径が大きくなるようにするため、例えば、レンズ12,13が、出射光をレンズの中心付近のみを用いて拡張し、反射光をレンズの全体を用いて集光するように、レンズ12,13の大きさ、焦点距離、レンズ間の距離等を設定してもよい。また、光束径変更部14から出射された出射光が、反射手段30に近づくにつれて直径が拡張されるような拡がり角を持つように、光束径変更部14の光学系を調整してもよく、あるいは、光束径変更部14から出射された出射光が平行光となるように光束径変更部14の光学系を調整してもよい。
【0017】
ここで、反射手段30は、入射角度にかかわらず入射光と反射光とが同じ方向となる再帰反射板であってもよく、あるいは、再帰反射板でない反射板(例えば、ミラー等)であってもよい。反射手段30が再帰反射板である場合には、例えば、コーナーキューブ・ミラーやコーナーキューブ・プリズムを用いてものであってもよく、微細なガラスビーズを用いたものであってもよい。また、反射手段30の反射面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。なお、反射手段30が再帰反射板である場合には、出射光と反射光とがほぼ同じ光路を通ることになり、反射部17aにおける出射光と反射光の光束径が同じになるとも考えられる。しかしながら、レーザ光はコヒーレントな光であるものの、拡がり角が完全に0ではない。また、再帰反射板であっても、出射光と反射光との方向が厳密に同じではなく、製造誤差等に応じて、多少の違いが生じてしまう。さらに、通常、レーザ変位計1から反射手段30までの距離は、50mや100mなどのように、比較的長い距離である。その結果、たとえ反射手段30が再帰反射板であったとしても、出射光よりも反射光の方が、光束径が大きくなることになる。
【0018】
本実施の形態では、光束径変更部14は、発散レンズであるレンズ12と、収束レンズであるレンズ13とを備え、両者によって出射光の直径を拡張し、反射光の直径を縮小する。すなわち、光束径変更部14は、いわゆるビームエキスパンダである。出射光に対しては、レンズ12が拡張前の出射光を発散させ、レンズ13が、レンズ12を通過した出射光を収束させることになる。すなわち、レンズ12によって出射光の拡がり角が増大され、レンズ13によって出射光の拡がり角が減少される。一方、反射光に対しては、レンズ13が集光前の反射光を収束させ、レンズ12が、レンズ13を通過した反射光を発散させることになる。すなわち、レンズ13によって反射光の拡がり角が減少され、レンズ12によって反射光の拡がり角が増大される。なお、ここでは、レンズ12,13として、発散レンズである平凹レンズと、収束レンズである平凸レンズとを用いた場合について示しているが、それ以外のレンズの組み合わせによって、出射光の光束径を拡張し、反射光の光束径を縮小するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0019】
レンズ15は、反射光を受光部16に集光する平凸レンズである。なお、反射光は、反射部17aによって反射されたものである。また、その反射光を受光部16に集光できるのであれば、レンズ15は、平凸レンズ以外のものであってもよい。
【0020】
受光部16は、反射光を受光する。この受光部16は、光を検出できるものであればよく、例えば、フォトダイオードやフォトトランジスタ等であってもよい。
【0021】
反射部17aは、光源部11から出射された拡張前の出射光と、光束径変更部14からの反射光との一方を透過させ、他方を反射させるものである。そのようにすることで、反射部17aは、光源部11からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部14に透過(または反射)させ、光束径変更部14からの反射光を、中心領域の外側の領域である外側領域を介して受光部16に反射(または透過)させることになる。ここで、反射部17aが出射光と反射光との一方を透過させ、他方を反射させるとは、出射光については、そのすべてが透過または反射されることを意味し、反射光については、その大部分(外側領域に入射する部分)が反射または透過されることを意味する。なお、本実施の形態では、図1で示されるように、反射部17aが、光源部11からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部14に透過させ、光束径変更部14からの反射光を、外側領域を介して受光部16に反射させる場合について説明する。すなわち、出射光は、反射部17aの中心領域を透過して光束径変更部14に入射することになる。また、反射光は、反射部17aの外側領域で反射され、レンズ15を介して受光部16に入射することになる。逆の場合、すなわち、光源部11からの出射光が、中心領域を介して光束径変更部14に反射され、光束径変更部14からの反射光が、外側領域を介して受光部16に透過される場合については、図4を用いて後述する。ここで、透過とは、ガラスや透明度の高い樹脂等の透過部材を光が通過することであってもよく、あるいは、そのような固体の媒体のないところ(例えば、空気中、真空中等)を光が通過することであってもよい。また、反射部17aは、通常、光源部11を出射したレーザ光の光路に対して、約45度の角度を有するように設けられている。また、反射部17aの直径は、光束径変更部14が集光する反射光の直径と同程度か、それよりも大きいことが好適である。
【0022】
本実施の形態では、図2(a)で示されるように、反射部17aの中心領域に出射光が通過する孔31が設けられているものとする。孔31は、貫通孔である。その中心領域の孔31の大きさは、その孔31を通過するレーザ光が反射部17aにあたらない範囲で、できるだけ小さいことが好適である。例えば、孔31の大きさは、光源部11を出射したレーザ光の直径より少し大きい程度であってもよい。なお、図2で示されるように、孔31は円形であってもよく、あるいは、円形でなくてもよい。図1で示されるように、反射部17aは、出射光に対して45度ほど傾いているため、出射光と同じ方向から見て円となる孔31を設けた場合には、その孔31は、反射部17aの正面方向から見たときに楕円形状となる。例えば、その楕円の長軸の方向の長さである長径は、(レーザ光の直径)×21/2より少し大きい程度になり、その楕円の短軸の方向の長さである短径は、レーザ光の直径より少し大きい程度となる。なお、孔31の形状と同様に、反射部17aの外形も、円形状ではなく楕円形状であってもよい。また、孔31は、反射光の光軸方向から見て円になるように設けられてもよく、あるいは、反射部17aに正対する方向から見て円になるように設けられてもよい。また、反射部17aの中心領域の孔31より外側である外側領域には、鏡面32が設けられている。鏡面32は、例えば、銀やアルミニウム等の反射率の高い金属をガラスや透明樹脂等にメッキ(例えば、電気メッキ、化学メッキ、蒸着等)したものであってもよく、あるいは、反射率の高い金属の板そのものや、反射率の高い金属の膜を別の板に貼着したものであってもよい。
【0023】
なお、この反射部17aは、中心領域に孔31が設けられているのではなく、中心領域に透過部材が存在してもよい。例えば、図2(b)、図2(c)で示されるように、反射部17aは、円板状のガラスや透明度の高い樹脂である透過部材34の中心領域以外である外側領域に、鏡面33を設けたものであってもよい。図2(c)は、図2(b)で示される反射部17aの中心を通る断面図である。鏡面33は、前述のように、反射率の高い金属を透過部材34にメッキしたものであってもよく、反射率の高い金属の板や膜を透過部材34に貼着したものであってもよい。また、反射部17aのレーザ光の入射面、すなわち、光源部11側の面に、鏡面33が設けられてもよく、あるいは、その反対側に鏡面33が設けられてもよい。このような場合であっても、中心領域を出射光が透過することができ、また、外側領域で反射光を反射することができる。なお、本実施の形態では、反射部17aが、中心領域に孔31が設けられたものである場合について主に説明する。
【0024】
算出部18は、出射光と反射光とを用いて、反射手段30までの距離を算出する。算出部18は、レーザ光が光源部11を出射してから、受光部16で受光されるまでの時間Δtを測定する。そして、そのΔtを用いて、光源部11から反射手段30までの距離Lを、L=(c×Δt)/2と算出することができる。ここで、cは、大気中の光速である。また、この距離Lのことを基線長と呼ぶこともある。また、基線長でなく、別の位置からの距離を測定したい場合には、基線長の距離Lに対して、適宜、補正量を加算または減算してもよい。基線長は、通常、2m程度から、200m程度までである。なお、基線長は、10m程度から100m程度であってもよい。また、算出部18は、その時間Δtを、例えば、レーザ光の位相を用いて算出してもよく、レーザ光の出射タイミングから受光タイミングまでの時間を測定することによって算出してもよく、あるいは、その他の方法によって算出してもよい。この算出部18による距離の算出方法については、例えば、前述の特許文献1や、次の文献等を参照されたい。
文献:納谷宏、溝上雅宏、浅利晋一郎、増成友宏、清水則一、前田寛之、「拡散レーザ変位計の開発とその実用性の検証」、日本地すべり学会誌、Vol.44、No.6、p339−348、2008年
【0025】
また、算出部18は、例えば、常時、距離を測定するものであってもよく、または、定期的(例えば、1分ごと、5分ごと、10分ごとや、1時間ごと、6時間ごと、12時間ごと、24時間ごとなど)に、もしくは、不定期(例えば、何らかのイベントの発生の検知に応じたタイミングなど)に距離を測定するものであってもよい。定期的に距離を測定する場合には、算出部18は、例えば、図示しない時計部や計時部を用いて、測定を行うタイミングであるかどうかを判断してもよい。また、1回の測定におけるレーザ光の出射時間は、例えば、4秒以下であってもよく、1秒以下であってもよい。また、算出部18は、距離の算出において、複数回、距離を算出し、それを平均したものを最終的な距離としてもよい。このようにすることで、距離の誤差を低減させることができうる。また、算出部18は、光源部11を駆動してレーザ光を出射させる制御手段や、受光部16からの受光に応じた出力信号に対して、増幅や波形整形、ピークホールドなどを行う信号処理手段、クロック等を用いて時間を計測する計時手段等を備えていてもよい。
【0026】
蓄積部19は、算出部18が算出した距離を記憶部20に蓄積する。
記憶部20では、算出部18によって算出された距離が記憶される。その距離は、前述のように、蓄積部19によって蓄積される。記憶部20は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現されうる。また、記憶部20での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、あるいは、長期的な記憶でもよい。
【0027】
変位検出部21は、蓄積部19が記憶部20に蓄積した距離を用いて、反射手段30までの距離の変化を検出する。その検出は、例えば、前回に算出された距離と、今回に算出された距離との差があらかじめ決められているしきい値を超えたことであってもよく、以前に算出された距離の平均と、今回に算出された距離との差があらかじめ決められているしきい値を超えたことであってもよく、あるいは、基準として算出された距離と、今回に算出された距離との差があらかじめ決められているしきい値を超えたことであってもよい。その基準として算出された距離は、1回目に算出された距離であってもよい。
【0028】
変位出力部22は、変位検出部21が算出された距離の変化を検出した場合に、その変位に関する出力を行う。その出力は、例えば、変位量の出力であってもよく、変位が検出された旨の出力や、変位が検出された警告の出力であってもよく、その他の変位に関する出力であってもよい。また、この出力は、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、警告灯の点灯でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、サイレンによる警告音の出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、変位出力部22は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、変位出力部22は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。本実施の形態では、変位出力部22が、変位が検出された旨と、変位量とを送信する場合について説明する。
【0029】
なお、レーザ変位計1の各構成要素は、例えば、防塵防水仕様であり、温度変化にも強い筐体の内部に設けられてもよい。そのようなレーザ変位計1であれば、野外における長期間にわたる距離の測定に使用することができうる。また、その筐体は、例えば、防振加工がなされていてもよい。
【0030】
次に、レーザ変位計1の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)算出部18は、距離を算出するタイミングであるかどうか判断する。そして、距離を算出するタイミングである場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、距離を算出するタイミングとなるまでステップS101の処理を繰り返す。なお、算出部18は、前述のように、例えば、定期的に距離を算出するタイミングであると判断してもよく、あるいは、その他のイベントの発生等に応じて、距離を算出するタイミングであると判断してもよい。
【0031】
(ステップS102)算出部18は、パルス状のレーザ光を出射するように、光源部11を制御する。その結果、光源部11からレーザ光が出射される。そして、そのレーザ光は、反射部17aの中心領域の孔31を介して光束径変更部14に入射され、レンズ12,13によって光束径が拡張されて反射手段30に照射される。反射手段30からの反射光は、光束径変更部14のレンズ13,12によって反射部17aの鏡面32に集光される。そして、その鏡面32で反射された反射光がレンズ15を介して集光され、受光部16で受光される。
【0032】
(ステップS103)算出部18は、レーザ光に関する時間Δtを測定し、それを用いて反射手段30までの距離Lを算出する。
【0033】
(ステップS104)算出部18は、距離の算出を繰り返すかどうか判断する。そして、繰り返す場合には、ステップS102に戻り、そうでない場合には、それまでに算出した距離の平均を算出してステップS105に進む。なお、算出部18は、例えば、あらかじめ決められた回数(例えば、4回や5回であってもよい)だけ距離の算出が行われた場合には、繰り返さないと判断し、距離の算出の回数がその決められた回数に満たない場合には、繰り返すと判断してもよい。
【0034】
(ステップS105)蓄積部19は、算出部18が算出した距離を記憶部20に蓄積する。なお、この蓄積対象の距離は、繰り返し算出された距離の平均である。
【0035】
(ステップS106)変位検出部21は、最新に蓄積された距離と、それまでに蓄積された距離とを用いて、距離に変化があるかどうか判断する。そして、変化がある場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、1回目に距離を算出した際には、比較対象の距離が存在せず、距離の変化の有無を判断できないため、ステップS101に戻ってもよい。
【0036】
(ステップS107)変位出力部22は、変位検出部21が検出した変位に関する出力を行う。そして、ステップS101に戻る。
なお、図3のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。また、図3のフローチャートにおいて、距離の測定を繰り返さない場合には、ステップS103からステップS105に進んでもよい。
【0037】
次に、本実施の形態によるレーザ変位計1の動作について、具体例を用いて説明する。
この具体例では、レーザ変位計1と、反射手段30とが、河川を挟んだ両岸に設置されており、特に反射手段30が山の上の方に設置されているものとする。なお、反射手段30が設置される場所は、通常、山崩れなどが予測される場所である。したがって、レーザ変位計1により、山崩れの前兆として発生する少量の地滑りを検出することができ、防災に役立てることができる。また、この具体例において、変位出力部22は、変位に関する情報を、あらかじめ決められた防災拠点のサーバに送信するものとする。また、この具体例において、1時間ごと(正時ごと)に距離の測定が行われ、1回の測定で4回の距離の算出が行われ、それらが平均されるものとする。
【0038】
ある日の午前1時になったとする。すると、算出部18は、測定を開始すると判断し(ステップS101)、光源部11を制御し、レーザ光を出射させる。この具体例において、光源部11は、1mW以下のクラス2レーザ製品であるとする。また、この具体例において、レンズ12は、直径が20mmであり、レンズ13は、有効口径が48mmであるとする。そして、出射されたレーザ光は、例えば、直径が約4mm程度であるが、レンズ12,13によって13mm程度に拡張され、100m離れた反射手段30の位置で、直径が約20cmのレーザ光となる。レーザ光の反射光は、レンズ13,12を介して、直径が約14mm程度の平行光線に絞られ、反射部17aで反射されて、レンズ15を介して受光部16に集光される。そして、その反射光が受光部16で受光されると(ステップS102)、算出部18は、それを用いて、レーザ光の往復時間Δt1を算出する。算出部18は、前述の式に時間Δt1を代入し、反射手段30までの距離L1を算出して図示しない記録媒体で一時的に記憶する(ステップS103)。また、算出部18は、あと3回、その距離の算出を繰り返し、距離L2,L3,L4を算出して、図示しない記録媒体に蓄積し、距離L1〜L4の平均である平均距離AL50(=(L1+L2+L3+L4)/4)を算出して蓄積部19に渡す(ステップS102〜S104)。蓄積部19は、その距離AL50を、その時点の日時に対応付けて記憶部20に蓄積する(ステップS105)。なお、レーザ光の光路に雨滴や植生等の障害物が存在しない場合であって、基線長が50m程度である場合には、測定誤差は±0.2mm程度となる。
【0039】
変位検出部21は、新しい距離AL50が蓄積されたことを検知すると、記憶部20で記憶されている最も古い日時に対応する距離AL1と、新しい距離AL50との差の絶対値を算出する。その差の絶対値がAD50であるとする。すると、変位検出部21は、あらかじめ図示しない記録媒体で記憶されているしきい値Tを読み出し、AD50がTを超えているかどうか判断する。この場合には、超えていなかったとする。すると、変位検出部21は、変位がないと判断し、変位に関する出力は行われない(ステップS106)。
【0040】
なお、新しい距離AL50と、最も古い距離AL1との差AD50がしきい値Tを超えていたとする。すると、変位検出部21は、その旨と、距離の差AD50を変位出力部22に渡す。そして、変位検出部21は、変位が検出された旨と、その変位AD50とを、あらかじめ決められた送信先に送信する(ステップS107)。それを受信した図示しないサーバでは、その受信に応じて、適宜、その地域に山崩れの警報を発令したり、山の見回りに行ったりすることができる。このようにして、山崩れを事前に検知することができ、例えば、事故を防止したり、安全を確保したりすることができうる。
【0041】
ここで、本実施の形態によるレーザ変位計1の方が、前述の特許文献1におけるハーフミラーを用いたレーザ変位計よりもレーザ光の減衰が少なくなる場合の条件について説明する。なお、説明を簡単にするため、出射されたレーザ光に対して、特許文献1によるレーザ変位計が反射手段からの反射光を受光する割合と、本実施の形態によるレーザ変位計1が反射手段30からの反射光を受光する割合とは一緒であるとする。また、その反射光の光軸方向から見た、反射部17aの孔31の半径がrであり、反射光(反射部17aで反射される直前の反射光である)の半径がrであるとする。すると、特許文献1の場合には、2回、ハーフミラーを介することによって、レーザ光の強度が(1/2)=1/4に減衰することになる。一方、本実施の形態によるレーザ変位計1の場合には、孔31の部分については反射がなされないため、レーザ光の強度が(r−r)/rに減衰することになる。したがって、
(r−r)/r>1/4 ・・・(式1)
であれば、本実施の形態によるレーザ変位計1の場合の方が、特許文献1の場合よりもレーザ光の減衰が少ないことになる。上記(式1)は、
<(31/2/2)×r≒0.866×r
となる。したがって、孔31の直径が反射光の直径に対して0.8倍程度といったように大きいものであっても、ハーフミラーを用いた従来例に対してレーザ光の減衰をより少ないものとすることができることになる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によるレーザ変位計1によれば、出射光と反射光とが同じ光学系を通過する拡散レーザを用いた距離測定において、プリズム等を用いないため、簡易な構成とすることができる。また、ハーフミラーを用いた場合には、レーザ光がハーフミラーを2回通過するだけで、レーザ光の強度が4分の1に減衰してしまうが、本実施の形態によるレーザ変位計1では、ハーフミラーを用いないため、そのような減衰もない。なお、反射光のうち、反射部17aの中心領域に対応する部分は反射されないため、その分だけ反射光の光量が減ることになるが、上述したような条件を満たすようにすることで、ハーフミラーを用いた場合よりもレーザ光の減衰を抑えることができうる。このように、レーザ光の減衰を抑えることができるため、レーザ光の出力を低くすることが可能となる。その結果、低電力のレーザ変位計1を提供することができるようになる。レーザ変位計1は、僻地においてバッテリーで駆動されることもあるため、省電力となることによって、メンテナンスの期間を長くすることができるなどのメリットが得られる。また、出射されるレーザ光のパワーを低くすることができるため、例えば、出射光や反射光の光路に人間や動物が浸入した場合であっても、レーザ光による影響を低減することができるようになる。
【0043】
また、本実施の形態によるレーザ変位計1は、出射光と反射光とが同じ光学系を通過するものであるため、両者が異なる光学系を通過するものに比べて、製造コストを低減させることができ、また、照準合わせを容易にすることができるメリットがある。また、レーザ変位計1は、例えば、−20℃から50℃程度の過酷な環境で使用されることもあるが、そのような場合に、温度変化に応じて部材に膨張、収縮の変化が生じたとしても、出射光と反射光とが同じ光学系を通過するため、両者が異なる光学系を通過する場合よりも誤差が小さくなりうる。
【0044】
なお、本実施の形態では、反射部17aが、光源部11からの出射光を透過させ、反射光を反射させる場合について説明したが、図4で示されるレーザ変位計1のように、反射部17aに代えて、光源部11からの出射光を、中心領域を介して光束径変更部14に反射させ、光束径変更部14からの反射光を、中心領域の外側の領域である外側領域を介して受光部16に透過させる反射部17bを備えるようにしてもよい。この場合には、光源部11を出射したレーザ光が反射部17bにおいて約45度、進行方向が変更されて光束径変更部14に入射され、光束径変更部14からの反射光は直進して受光部16で受光されることになる。なお、図5(a)で示されるように、反射部17bは、外側領域が光束径変更部14からの反射光を透過させる、ガラスや透明度の高い樹脂等の透過部材41で構成され、中心領域に出射光を反射する鏡面42が設けられたものであってもよい。鏡面42は、前述の鏡面32と同様に、透過部材41にメッキされたものであってもよく、あるいは、透過部材41に貼着されたものであってもよい。図5(b)は、図5(a)で示される反射部17bの中心を通る断面図である。ここでは、反射率の高い金属板である鏡面42が、透過部材41の光源部11側の面に設けられているものとする(図4参照)。なお、この場合でも、光源部11やレンズ15、受光部16の位置関係が異なり、反射部17bにおいて出射光が反射され、反射光が透過すること以外、前述のレーザ変位計1と同様であり、その説明を省略する。また、鏡面42は、透過部材41の光源部11と反対側の面に設けられてもよい。また、反射部17bは、図5(c)で示されるように、外側領域において透過部材41が存在しなくてもよい。その場合には、反射部17bは、枠44と、中心領域の鏡面43を支持する1以上の支持部45a〜45cとを備えてもよい。なお、支持部45a〜45cのそれぞれは、少なくとも一部が枠44に固定されているものとする。また、支持部45a〜45cは、反射光に対する障害物となるため、反射光の光軸方向に対する断面積ができるだけ小さいことが好適である。また、図5(c)では、反射部17bが3個の支持部45a〜45cを有する場合について示しているが,そうでなくてもよい。反射部17bは、1個の支持部を有してもよく、2個の支持部を有してもよく、あるいは、4個以上の支持部を有してもよい。図5(c)で示される反射部17bであっても、中心領域の鏡面43において、光源部11からの出射光が光束径変更部14に反射され、光束径変更部14からの反射光が、外側領域を介して受光部16に通過することになる。なお、鏡面42,43が楕円形状であってもよく、透過部材41、枠44の外形が楕円形状であってもよいことは、反射部17aの場合と同様である。
【0045】
また、本実施の形態によるレーザ変位計1が、反射部17aや、反射部17bを用いて距離を測定する場合に、反射部17aにおいてレーザ光が透過する中心領域の大きさや、反射部17bにおいてレーザ光が反射される中心領域の大きさは、小さい方が好適である。したがって、それらの中心領域の大きさは、光源部11を出射したレーザ光が鏡面32,33にあたったり、鏡面42,43から外れたりしない範囲の最も小さい大きさであってもよい。なお、誤差程度ずれたとしてもレーザ光が鏡面32,33にあたったり、鏡面42,43から外れたりしないようになっていることが好適である。なお、図4,図5で示されるレーザ変位計1の場合には、鏡面42,43が、レーザ光よりも小さくてもよい。その場合でも、光源部11を出射したレーザ光の一部が光束径変更部14に入射されなくなるだけであり、距離の測定に大きな悪影響を与えることはないからである。
【0046】
また、本実施の形態において、算出部18がレーザ光の出射時から受光時までの時間Δtを測定する際に、レーザ光が出射したタイミングを受光によって検出する場合には、レーザ変位計1は、図6で示されるように、出射光の一部を反射するハーフミラー51と、ハーフミラー51で反射された出射光を受光する出射光用受光部52とをさらに備えてもよい。そして、算出部18は、出射光用受光部52が出射光を受光したタイミング、あるいは、そのタイミングを、レーザ光が光源部11から出射光用受光部52に到達するまでの時間だけ補正したタイミングを用いて、時間Δtを測定してもよい。なお、図4で示されるレーザ変位計1において、ハーフミラー51や出射光用受光部52を備えるようにしてもよいことは言うまでもない。また、出射光用受光部52を用いた時間Δtの測定は、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0047】
また、本実施の形態において、光束径変更部14は、輪帯レンズを用いて出射光や反射光に関する倍率を異ならしめてもよい。ここで、輪帯レンズとは、焦点距離の異なる2個のレンズが同心に形成されたレンズである。その場合には、図7で示されるように、光束径変更部14の有するレンズ12は、焦点距離が−f11である中心部と、焦点距離が−f21である外周部とを有する発散レンズである。また、光束径変更部14の有するレンズ13は、焦点距離がf12である中心部と、焦点距離がf22である外周部とを有する収束レンズである。なお、レンズ12,13の中心部の焦点を、図7における位置Fに一致させることにより、光束径変更部14は、平行光である出射光を平行光に拡張させることになる。また、レンズ12,13の外周部の焦点を、図7における位置Fに一致させることにより、光束径変更部14は、平行光である反射光を平行光に収束させることになる。ここで、光束径変更部14に入射される出射光の光束径をdとし、光束径変更部14から出射される出射光の光束径をdとし、光束径変更部14に入射される反射光の光束径をdとし、光束径変更部14から出射される反射光の光束径をdとすると、拡大される出射光の倍率、及び、縮小される反射光の倍率は、次のようになる。なお、拡大される出射光の倍率は、レンズ12,13の中心部を用いた光束径の倍率であり、縮小される反射光の倍率は、レンズ12,13の外周部を用いた光束径の倍率である。それらの倍率は、レンズ12側から見たときの倍率である。そのため、反射光の光束径の縮小率は、反射光の倍率の逆数となる。
拡大される出射光の倍率M=f12/f11=d/d
縮小される反射光の倍率M=f22/f21=d/d
【0048】
この出射光の倍率M、すなわち、レンズ12,13の中心部を用いた倍率が、反射光の倍率M、すなわち、レンズ12,13の外周部を用いた倍率よりも大きくなるようにレンズ12,13を設計、配置することにより、出射光は光束径が大きくなるように拡張され、その拡張と比較して、反射光はそれほど収束されないことになる。したがって、反射部17aで反射される割合を多くすることができ、レーザ光の減衰をより低減させることができるようになる。ここで、反射光のうち、孔31を通過することによって失われる割合を計算すると、
/d=(d/M/(d/M
=(M/M×(d/d
となる。但し、孔31の光軸から見た直径がdであると近似している。上記の式から、出射光の倍率Mが、反射光の倍率Mよりも大きくなるほど、反射光が孔31で失われる割合が少なくなることが分かる。また、光束径変更部14を出射する出射光の直径(d)に対して、反射光が入射する光束径変更部14の光学有効口径(d)が大きいほど、反射光が孔31で失われる割合が少なくなることが分かる。具体的には、M=Mであり、反射光が入射する光束径変更部14の光学有効口径(d)が、光束径変更部14を出射する出射光の直径(d)の2倍以上であるとすると、反射光が孔31で失われる割合が1/4以下となる。したがって、その場合には、受光量の損失割合を、ハーフミラーを用いた従来例における受光光量の損失割合「3/4」よりも格段に少なくすることができる。(M/M)が1未満である場合には、さらに、受光光量の損失が少なくなる。なお、レンズ12の中心部(焦点距離が−f11の領域)を通過した出射光は、レンズ13の中心部(焦点距離がf12の領域)を通過し、レンズ13の外周部(焦点距離がf22の領域)を通過した反射光は、レンズ12の外周部(焦点距離が−f21の領域)を通過するように、レンズ12,13が設計、配置されることが好適である。また、図7では、反射部17aを用いた場合について説明したが、反射部17bの場合にも同様である。
【0049】
また、本実施の形態では、受光部16がフォトダイオード等である場合について説明したが、そうでなくてもよい。受光部16は、CCDやCMOSのようなイメージセンサであってもよい。その場合には、受光部16によって、受光量のみでなく、受光像をも取得することができる。したがって、例えば、その受光像を用いて、光学系の角度等の微調整を行ったり、より細かい受光を行ったりすることが可能となりうる。
【0050】
また、本実施の形態では、各レンズ等が正対している場合について説明したが、そうでなくてもよい。各レンズ等を少しずつ傾けることによって、出射光と反射光との通過する位置を少しずらすようにしてもよい。なお、このようなことは従来から行われていることであり、その詳細な説明を省略する。
【0051】
また、本実施の形態によるレーザ変位計1では、少量ではあるが反射光が光源部11の方に透過または反射されることになる。したがって、光源部11と、反射部17a、17bとの間に、光アイソレータをさらに設け、光源部11から出射されたレーザ光のみが反射部17a、17bに到達し、反射部17a、17bからの反射光であるレーザ光は、光源部11に到達しないようにしてもよい。その光アイソレータは、例えば、偏光依存型のものであってもよく、あるいは、偏光無依存型のものであってもよい。
【0052】
また、本実施の形態による図1,図4,図6では、反射部17a、17bが、光源部11を出射したレーザ光の光路に対して、約45度の角度を有するように設けられている場合について示しているが、そうでなくてもよい。反射部17a、17bが、光源部11を出射したレーザ光の光路に対して、約45度以外の角度を有する場合であっても、それに応じてレンズ15と受光部16、あるいは、光源部11を適切に配置することによって、上記説明と同様のレーザ変位計1を実現することが可能である。
【0053】
また、本実施の形態では、レーザ変位計1が、受光部16に集光するためのレンズ15を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、反射部17aの鏡面32,33が凹面鏡になっており、受光部16に集光できる場合や、反射部17bの透過部材41が凸レンズになっており、受光部16に集光できる場合、あるいは、受光部16が広い範囲のレーザ光を受光できる場合などには、レーザ変位計1がレンズ15を備えていなくてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、算出部18が繰り返し算出した距離の平均を算出する場合について説明したが、そうでなくてもよい。算出部18は、距離の平均を算出するのではなく、1回算出した距離を反射手段30までの距離としてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、算出したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0059】
また、上記実施の形態において、レーザ変位計1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
【0060】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0061】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上より、本発明によるレーザ変位計によれば、レーザ光の減衰の少ない距離の測定を、簡易な構成によって実現できるという効果が得られ、例えば、反射手段までの距離を測定することによって地形の変動を監視する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザ変位計
11 光源部
12、13、15 レンズ
14 光束径変更部
16 受光部
17a、17b 反射部
18 算出部
19 蓄積部
20 記憶部
21 変位検出部
22 変位出力部
30 反射手段
51 ハーフミラー
52 出射光用受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源部と、
前記光源部から出射されたレーザ光である出射光の光束径を拡張し、当該拡張後の出射光が反射手段で反射された反射光を集光する光束径変更部と、
前記反射光を受光する受光部と、
前記出射光と前記反射光とを用いて、前記反射手段までの距離を算出する算出部と、
前記算出部が算出した距離を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部が蓄積した距離を用いて、前記反射手段までの距離の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部が検出した変位に関する出力を行う変位出力部と、
前記光源部から出射された拡張前の出射光と、前記光束径変更部からの反射光との一方を透過させ、他方を反射させることによって、前記光源部からの出射光を、中心領域を介して前記光束径変更部に透過または反射させ、前記光束径変更部からの反射光を、前記中心領域の外側の領域である外側領域を介して前記受光部に反射または透過させる反射部と、を備え、
前記光束径変更部は、前記反射光に対する有効口径が前記出射光の光束径より大きいものである、レーザ変位計。
【請求項2】
前記光束径変更部は、
拡張前の出射光を発散させる発散レンズと、
前記発散レンズを通過した出射光を収束させる収束レンズと、を有し、
前記発散レンズ及び前記収束レンズは、焦点距離の異なる2個のレンズが同心に形成された輪帯レンズであり、
前記発散レンズ及び前記収束レンズの中心部を用いた倍率は、前記発散レンズ及び前記収束レンズの外周部を用いた倍率よりも大きい、請求項1記載のレーザ変位計。
【請求項3】
前記反射部は、前記光源部からの出射光を、前記中心領域を介して前記光束径変更部に透過させ、前記光束径変更部からの反射光を、前記外側領域を介して前記受光部に反射させる、請求項1または請求項2記載のレーザ変位計。
【請求項4】
前記反射部は、前記中心領域に前記出射光が通過する孔を有し、前記外側領域に鏡面が設けられている、請求項3記載のレーザ変位計。
【請求項5】
前記反射部は、前記光源部からの出射光を、前記中心領域を介して前記光束径変更部に反射させ、前記光束径変更部からの反射光を、前記外側領域を介して前記受光部に透過させる、請求項1または請求項2記載のレーザ変位計。
【請求項6】
前記反射部は、前記中心領域に前記出射光を反射する鏡面が設けられ、前記外側領域が前記光束径変更部からの反射光を透過させる透過部材で構成されている、請求項5記載のレーザ変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247255(P2012−247255A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118096(P2011−118096)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】