説明

レーザ発生装置

【課題】ファイバアンプ出力光による光学部品の損傷を回避するとともに、ファイバアンプ出力光の異常検知後における迅速な復帰が可能なレーザ発生装置を提供する。
【解決手段】複数のレーザダイオードに対して給電する電源ユニット5と、第1レーザダイオードからの第1励起光に基づいてシード光を出力するシード光源ユニット1と、第2レーザダイオードからの第2励起光と第3レーザダイオードからの第3励起光とにより励起されたエネルギーをシード光に付与して増幅して、レーザ光を出力するファイバアンプユニット3と、シード光を遮光するビーム遮蔽ユニット2と、電源ユニット5とビーム遮蔽ユニット2とを制御する制御ユニット6と、ファイバアンプユニット3の出力レーザ光の強度を検知して異常の有無を判断するビームモニタユニット7とを備え、異常と判断された場合には、制御ユニット6は、ビーム遮蔽ユニット2を制御してシード光を遮光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバアンプにより増幅されたレーザ光を励起光として波長変換を行うレーザ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファイバアンプは、レーザダイオード(LD)等の励起光源により出力された励起光により励起されたエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを入力されたレーザ光に付与して増幅することができるため、レーザ発生装置に広く利用されている。例えば、OPO(光パラメトリック発振)を用いて波長変換により赤外光を発生させる場合に、ファイバアンプは、KTP(KTiOPO)やZGP(ZnGeP)等の非線形光学結晶を有する波長変換ユニットの前段に設けられ、シード光源により入力されたNd:YAGレーザ等の固体レーザ光を波長変換に適した強度に増幅して出力する。
【0003】
このファイバアンプがコア径の太いマルチモードファイバである場合に、ファイバ入射光軸の変動やファイバの機械的な変位により、ファイバ出力光のモードが変動して局所的に強度が強くなることがある。このような場合において、ファイバアンプにより出力されたレーザ光は、ファイバアンプの後段以降にある光学部品(例えば波長変換ユニットが有する非線形光学結晶)に対して損傷を与える可能性がある。したがって、従来のレーザ発生装置は、光学部品に対する損傷が生じた結果、レーザ発振が不可能となるため改修作業が必要になるという問題点を有する。
【0004】
特許文献1には、患部上で治療に適したビーム特性の治療用レーザ光を照射することができるとともに、スポットサイズの変倍を簡便な構成で行うことの可能な眼科用レーザ治療装置が記載されている。この眼科用レーザ治療装置は、患者眼の患部を治療するためのレーザ光を出射するレーザ光源と、該レーザ光源を出射したレーザ光を患者眼の患部に照射するデリバリ光学系とを備えている。また、デリバリ光学系は、レーザ光源の出射端面におけるレーザ光のビームプロファイルを患部上で均一化又は周辺に比べて中央の強度が低いビームプロファイルに成形するとともに、患者眼の患部上で異なるスポットサイズに成形する複数の回折光学素子と、該複数の回折光学素子を選択的に光路上に切換え配置する切換手段とを備えている。したがって、この眼科用レーザ治療装置によれば、目的に応じてビームプロファイルを適切に成形し、患部上で治療に適したビーム特性の治療用レーザ光を照射することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、突発的な入射光軸の変動やファイバの機械的な変位に対応可能なものではない。また、特許文献1に記載の発明は、眼科用レーザという限定された目的に特化した発明であり、患部に照射する眼科用レーザを生成するために非常にデリケートなビームプロファイル成形を行うものである。したがって、単にファイバアンプの後段に設けられた非線形光学結晶に対する損傷を回避するためであるならば、特許文献1に記載のデリバリ光学系のような複数の回折光学素子及びその選択手段までは不要であり、レーザ光の出力を停止するだけで十分な場合もある。
【0006】
ファイバアンプ出力光の強度が局所的に強くなることによる光学部品の損傷等を回避するために、自動的にファイバアンプの励起電力を停止あるいは低下させる方法も提案されている。図3は、従来のレーザ発生装置の構成例を示すブロック図である。従来のレーザ発生装置は、図3に示すように、シード光源ユニット1、ファイバアンプユニット3、波長変換ユニット4、電源ユニット5、制御ユニット6、励起光伝送用ファイバ10,11,12、検知ユニット19、及びビームサンプラー20により構成されている。
【0007】
電源ユニット5は、レーザダイオードに対して電力を供給してレーザダイオードを駆動させ、励起光伝送用ファイバ10,11,12の各々に対して励起光を出力する。
【0008】
制御ユニット6は、電源ユニット5による電力供給を制御することにより、励起光伝送用ファイバ10,11,12の各々に対する励起光の出力を制御する。また、制御ユニット6は、後述する検知ユニット19の検知結果に基づき、シード光源ユニット1によるシード光の光軸がずれている場合には、励起光伝送用ファイバ11,12の各々に対する励起光の出力を停止するように制御する。
【0009】
シード光源ユニット1は、励起光伝送用ファイバ10を介して出力された励起光に基づいて固体レーザをシード光として出力する光源である。例えば、シード光源ユニット1は、内部にNd:YAG結晶やQスイッチ等を有しており、励起光伝送用ファイバ10を介して出力された励起光により固体レーザ媒質(Nd:YAG結晶)を励起し、Qスイッチによりパルス発振させて生成した固体レーザをシード光として出力する。
【0010】
ビームサンプラー20は、シード光源ユニット1により出力されたシード光の一部を透過させ、一部を反射させるミラーである。ビームサンプラー20を透過したシード光は、検知ユニット19に対して入射される。一方、ビームサンプラー20により反射されたシード光は、ミラーや集光レンズ等を介してファイバアンプユニット3に入射する。
【0011】
ファイバアンプユニット3は、励起光伝送用ファイバ11,12を介して出力された励起光により励起されたエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを入力されたシード光に付与して増幅する。
【0012】
波長変換ユニット4は、例えば、KTP結晶等の非線形光学結晶を対向する2つのミラー間に配置して構成された光パラメトリック発振器であり、ファイバアンプユニット3により増幅して出力されたレーザ光を波長変換し、互いに異なる波長を有する2つのレーザ光(シグナル光、アイドラ光)を出力するものである。
【0013】
検知ユニット19は、シード光源ユニットから出力されたシード光の光軸位置等を検知して、検知結果を制御ユニット6に出力する。
【0014】
以上のように構成された従来のレーザ発生装置の作用を説明する。まず制御ユニット6は、電源ユニット5による電力供給を制御する。これにより、電源ユニット5は、レーザダイオードに対して電力を供給してレーザダイオードを駆動させ、励起光伝送用ファイバ10に対して第1励起光を出力する。この第1励起光は、励起光伝送用ファイバ10を介してシード光源ユニット1に送られる。また、電源ユニット5は、励起光伝送用ファイバ11に対して第2励起光を出力する。この第2励起光は、励起光伝送用ファイバ11、レンズ、ミラー等を介してファイバアンプユニット3の一端部に送られる。同様に、電源ユニット5は、励起光伝送用ファイバ12に対して第3励起光を出力する。この第3励起光は、励起光伝送用ファイバ12、レンズ、ミラー等を介してファイバアンプユニット3の他端部に送られる。
【0015】
シード光源ユニット1は、励起光伝送用ファイバ10を介して出力された第1励起光により固体レーザ媒質(例えばNd:YAG結晶)を励起し、Qスイッチによりパルス発振させて生成した固体レーザをシード光として出力する。シード光源ユニット1により出力されたシード光は、ビームサンプラー20を介して一部が検知ユニット19に対して出力されるとともに、一部がファイバアンプユニット3に対して出力される。
【0016】
ファイバアンプユニット3は、第2励起光と第3励起光とにより励起されたエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーをシード光源ユニット1により出力されたシード光に付与して増幅する。ファイバアンプユニット3により増幅されて出力されたレーザ光は、ミラーやレンズ等を介して波長変換ユニット4に対して出力される。波長変換ユニット4は、ファイバアンプユニット3により出力されたレーザ光を波長変換して出力する。
【0017】
一方、検知ユニット19は、シード光源ユニットから出力されたシード光の光軸位置等を検知して、検知結果を制御ユニット6に出力する。制御ユニット6は、検知ユニット19の検知結果に基づいて、シード光の光軸が本来の位置からずれているか否かを判断し、シード光の光軸がずれている場合には、励起光伝送用ファイバ11,12の各々に対する励起光の出力を停止あるいは低下するように制御する。これによってファイバアンプユニット3の励起電力が停止あるいは低下するので、ファイバアンプ出力は低下する。なお、制御ユニット6は、必ずしも励起光伝送用ファイバ11,12の両方に対する励起光を停止させる必要は無く、励起光伝送用ファイバ11,12のいずれか一方に対する励起光のみを停止させる構成でもよい。
【0018】
このような制御ユニット6の動作により、図3に示す従来のレーザ発生装置は、ファイバ入射光軸の変動に起因するファイバ出力光強度の局所的な偏りが発生するのを防止して、光学部品が損傷するのを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−245833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図3に示す従来のレーザ発生装置は、シード光源ユニット1から出力されたシード光について、検知ユニット19により異常が検知された場合にファイバアンプユニット3の励起電力を制御して停止させているため、熱的な状態が除去されてしまい、再びファイバアンプユニット3を熱的に安定した状態にしてレーザ光の出力を安定させるまでに所定の時間が必要になるという問題点がある。したがって、短時間のシーケンスとなるようなプロセスに対して、図3に示す従来のレーザ発生装置は適用が困難である。
【0021】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、ファイバアンプ出力光による光学部品の損傷を回避するとともに、ファイバアンプ出力光の異常検知後における迅速な復帰が可能なレーザ発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るレーザ発生装置は、上記課題を解決するために、第1レーザダイオード、第2レーザダイオード、及び第3レーザダイオードの各々に対して給電して駆動させる電源部と、前記第1レーザダイオードにより出力された第1励起光に基づいてシード光を出力するシード光源と、前記第2レーザダイオードにより出力された第2励起光と前記第3レーザダイオードにより出力された第3励起光とにより励起されたエネルギーを前記シード光に付与して増幅し、レーザ光として出力するファイバアンプと、前記シード光源と前記ファイバアンプとの間の光路上に配置され、前記シード光源により出力されたシード光を遮光する遮光部と、前記電源部による電力供給と前記遮光部による遮光とを制御する制御部と、前記ファイバアンプにより出力されたレーザ光の強度を検知して異常の有無を判断するビームモニタ部とを備え、前記制御部は、前記ビームモニタ部により異常と判断された場合に前記遮光部を制御して前記シード光を遮光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ファイバアンプ出力光による光学部品の損傷を回避するとともに、ファイバアンプ出力光の異常検知後における迅速な復帰が可能なレーザ発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の形態のレーザ発生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のレーザ発生装置における各部の状態を示す図である。
【図3】従来のレーザ発生装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のレーザ発生装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1のレーザ発生装置の構成を示すブロック図である。図1を参照して、レーザ発生装置の構成を説明する。本実施例のレーザ発生装置は、図1に示すように、シード光源ユニット1、ビーム遮蔽ユニット2、ファイバアンプユニット3、波長変換ユニット4、電源ユニット5、制御ユニット6、ビームモニタユニット7、励起光伝送用ファイバ10,11,12、ビームサンプラー13、レンズ15,16、及びその他のレンズやミラーにより構成されている。また、ビーム遮蔽ユニット2は、音響光学素子8とアパーチャ9とにより構成されている。
【0027】
電源ユニット5は、本発明の電源部に対応し、第1レーザダイオード、第2レーザダイオード、及び第3レーザダイオードの各々に対して電力を供給(給電)して駆動させるとともに、各レーザダイオードからの励起光を励起光伝送用ファイバ10,11,12の各々に対して出力する。なお、第1レーザダイオード、第2レーザダイオード、及び第3レーザダイオードは、電源ユニット5の内部に設けられており、図示はしないものとする。各レーザダイオードは、供給された電流(LD電流)に応じて各々励起光を出力する。
【0028】
また、第1レーザダイオードにより出力された第1励起光は、励起光伝送用ファイバ10に対して出力され、第2レーザダイオードにより出力された第2励起光は、励起光伝送用ファイバ11に対して出力され、第3レーザダイオードにより出力された第3励起光は、励起光伝送用ファイバ12に対して出力されるものとする。
【0029】
シード光源ユニット1は、本発明のシード光源に対応し、第1レーザダイオードにより出力された第1励起光に基づいてシード光を出力する。具体的には、シード光源ユニット1は、励起光伝送用ファイバ10を介して出力された第1励起光に基づいて固体レーザをシード光として出力する光源であり、例えば、内部にNd:YAG結晶やQスイッチ等を有しており、第1励起光により固体レーザ媒質(Nd:YAG結晶)を励起し、Qスイッチによりパルス発振させて生成した固体レーザをシード光として出力する。
【0030】
ビーム遮蔽ユニット2は、本発明の遮光部に対応し、シード光源ユニット1とファイバアンプユニット3との間の光路上に配置され、シード光源ユニット1により出力されたシード光を遮光することができる。
【0031】
ビーム遮蔽ユニット2内のアパーチャ9は、開口部を有しており、当該開口部から所定方向のシード光のみを通過させる。また、ビーム遮蔽ユニット2内の音響光学素子8は、後述する制御ユニット6の制御に基づいて、シード光の進行方向を制御する。詳述すると、音響光学素子8は、駆動電力が0の場合には入射光を0次光18として直進させ、駆動電力が供給された場合には入射光を回折させて1次光14として出力する。
【0032】
本実施例においては、音響光学素子8は、制御ユニット6により「非遮光」に制御されている場合には、シード光を回折せずに0次光18として出力することによりアパーチャ9の開口部を通過させる。一方、音響光学素子8は、制御ユニット6により「遮光」に制御されている場合には、アパーチャ9の開口部からファイバアンプユニット3側にシード光が通過しないように、シード光を回折して1次光14を出力し、当該1次光14をアパーチャ9の開口部ではなく壁面に照射する。
【0033】
なお、本実施例におけるレーザ発生装置の「遮光部」は、上述したように音響光学素子8を採用したビーム遮蔽ユニット2であるが、音響光学素子の代わりに電気光学素子(EO)を採用した構成でもよい。
【0034】
ファイバアンプユニット3は、本発明のファイバアンプに対応し、第2レーザダイオードにより出力された第2励起光と第3レーザダイオードにより出力された第3励起光とにより励起されたエネルギーを入力されたシード光に付与して増幅し、レーザ光として出力する。すなわち、ファイバアンプユニット3は、励起光伝送用ファイバ11,12を介して出力された励起光により励起されたエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを入力されたシード光に付与して増幅する。
【0035】
ビームサンプラー13は、ファイバアンプユニット3により出力されたレーザ光の一部を透過させ、一部を反射させるミラーである。ビームサンプラー13を透過したレーザ光は、ミラーや集光レンズを介して後述する波長変換ユニット4に対して入射される。一方、ビームサンプラー13により反射されたレーザ光は、レンズ16を介してビームモニタユニット7に入射する。
【0036】
ビームモニタユニット7は、本発明のビームモニタ部に対応し、ファイバアンプユニット3により出力されビームサンプラー13により導光されたレーザ光の強度を検知して異常の有無を判断する。具体的には、ビームモニタユニット7は、検知したレーザ光の強度が予め設定された第1所定値以上である場合に、レーザ光の強度が異常であると判断する。あるいは、ビームモニタユニット7は、検知したレーザ光の強度が予め設定された第2所定値以下である場合に、レーザ光の強度が異常であると判断する。なお、ビームモニタユニット7の代わりに制御ユニット6が異常判断を行う構成でもよい。
【0037】
ビームモニタユニット7は、例えば単素子あるいは複数素子のラインセンサが2次元センサを備えており、ファイバアンプユニット3の出力光の1点あるいは複数点をモニタする。1例としてビームモニタユニット7は、光強度を感知する複数のセンサが縦横にマトリクス状に配置されることにより構成される。この場合において、ビームモニタユニット7は、レーザ光の2次元的な光強度分布を調べることができ、各位置におけるレーザ光の強度を基準値である第1所定値あるいは第2所定値と比較して異常の有無を判断することができる。
【0038】
また、ビームモニタユニット7に対して導光されるレーザ光については、ファイバアンプユニット3の出射端がレンズ15,16によって結像されるように適切に配置され、結像点にビームモニタユニット7のセンサが配置される。
【0039】
制御ユニット6は、本発明の制御部に対応し、電源ユニット5による電力供給とビーム遮蔽ユニット2による遮光とを制御する。具体的には、制御ユニット6は、電源ユニット5による電力供給を制御することにより、励起光伝送用ファイバ10,11,12の各々に対する励起光の出力を制御することができる。また、制御ユニット6は、ビームモニタユニット7によりレーザ光の強度が異常と判断された場合に、ビーム遮蔽ユニット2を制御してシード光を遮光させる。
【0040】
本実施例においては、制御ユニット6は、ビームモニタユニット7により正常と判断された場合にのみアパーチャ9の開口部をシード光が通過するように音響光学素子8を制御する。
【0041】
波長変換ユニット4は、従来のレーザ発生装置と同様に、例えばKTP結晶等の非線形光学結晶を対向する2つのミラー間に配置して構成された光パラメトリック発振器であり、ファイバアンプユニット3により増幅して出力されたレーザ光を波長変換し、互いに異なる波長を有する2つのレーザ光(シグナル光、アイドラ光)を出力する。
【0042】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を図1,2を用いて説明する。ここで図2は、本実施例のレーザ発生装置における各部の状態を示す図である。まず制御ユニット6は、電源ユニット5による電力供給を制御する。これにより、電源ユニット5は、第1レーザダイオードに対して電力を供給して第1レーザダイオードを駆動させ、励起光伝送用ファイバ10に対して第1励起光を出力する。この第1励起光は、励起光伝送用ファイバ10を介してシード光源ユニット1に送られる。また、電源ユニット5は、励起光伝送用ファイバ11に対して第2励起光を出力する。この第2励起光は、励起光伝送用ファイバ11、レンズ、ミラー等を介してファイバアンプユニット3の一端部に送られる。同様に、電源ユニット5は、励起光伝送用ファイバ12に対して第3励起光を出力する。この第3励起光は、励起光伝送用ファイバ12、レンズ、ミラー等を介してファイバアンプユニット3の他端部に送られる。
【0043】
シード光源ユニット1は、励起光伝送用ファイバ10を介して出力された第1励起光により固体レーザ媒質(例えばNd:YAG結晶)を励起し、Qスイッチによりパルス発振させて生成した固体レーザをシード光として出力する。シード光源ユニット1により出力されたシード光は、ミラーを介してビーム遮蔽ユニット2に対して入力される。
【0044】
一方、制御ユニット6は、当該レーザ発生装置の起動時点においてビーム遮蔽ユニット2を制御し、ビーム遮蔽ユニット2にシード光を通過させる。本実施例におけるビーム遮蔽ユニット2は、音響光学素子8が0次光を出力することにより、アパーチャ9の開口部を介してシード光を通過させることができる。したがって、制御ユニット6は、図2に示すように、音響光学素子8に対する音響光学素子駆動信号をオフにすることにより0次光18を出力させ、アパーチャ9の開口部を介してシード光を通過させることができる。なお、この場合において、0次光18とシード光とは同一の光である。
【0045】
ファイバアンプユニット3は、第2励起光と第3励起光とにより励起されたエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーをシード光源ユニット1により出力されビーム遮蔽ユニット2を介して入力されたシード光に付与して増幅する。ファイバアンプユニット3により増幅されて出力されたレーザ光は、ビームサンプラー13を介して一部は波長変換ユニット4に対して出力され、一部はビームモニタユニット7に対して出力される。波長変換ユニット4は、ファイバアンプユニット3により出力されたレーザ光を波長変換して出力する。
【0046】
一方、ビームモニタユニット7は、ファイバアンプユニット3の出力光をリアルタイムに監視しており、ファイバアンプユニット3により出力されたレーザ光の強度を検知し、予め設定された第1所定値あるいは第2所定値等の基準値との比較により異常の有無を判断する。第1所定値等の基準値は、ユーザが予め特性を評価することにより設定されたものである。
【0047】
ここで、例えば温度や振動等の要因により、ファイバ入射光軸の変動やファイバの機械的な変位が生じ、ファイバ出力光のモードが変動して局所的に光強度が強くなったものとする。この場合には、ビームモニタユニット7が検知したレーザ光の強度が予め設定された第1所定値以上となるため、ビームモニタユニット7は、光強度が異常と判断し、制御ユニット6に対してステータスが異常である旨の信号を出力する(図2参照)。
【0048】
制御ユニット6は、ビームモニタユニット7からステータス異常の信号を受け取ると、ビーム遮蔽ユニット2を制御してシード光を遮光させる。具体的には、制御ユニット6は、図2に示すように、音響光学素子8に対する音響光学素子駆動信号をオンにすることにより回折した1次光14を出力させ、アパーチャ9の壁面に対してシード光を照射させる。これによってシード光がアパーチャ9を通過しないため、ビーム遮蔽ユニットは、シード光を遮光することができる。
【0049】
なお、ビーム遮蔽ユニット2によりシード光の遮光が行われている間において、電源ユニット5は、制御ユニット6の制御に基づいて、励起光伝送用ファイバ11に対する第2励起光の出力と励起光伝送用ファイバ12に対する第3励起光の出力とを継続する。このようにして、本発明のレーザ発生装置は、熱的な状態が除去されるのを回避し、復帰時間を短縮することができる。
【0050】
その後、制御ユニット6は、ビーム遮蔽ユニット2を制御してシード光を遮光させてから一定期間経過後に、再びビーム遮蔽ユニット2を制御してシード光を通過させる。具体的には、制御ユニット6は、音響光学素子8に対する音響光学素子駆動信号を再びオフにすることにより0次光18を出力させ、アパーチャ9の開口部を通過するようにシード光を出射させる。ここで、「一定期間」とは、ユーザにより任意に設定された時間である。
【0051】
なお、シード光を遮光してから一定期間経過したか否かの判断は、ビームモニタユニット7が一定期間経過後にステータスを自動的に正常に戻すことにより行われてもよいし、制御ユニット6により行われてもよい。あるいは、作業者が手動で復帰させる構成でもよい。
【0052】
ビーム遮蔽ユニット2において遮光後に再びシード光を通過させた場合において、ファイバアンプユニット3は、上述したように既に熱的に安定した状態が保たれているため、スムーズに入力されたシード光を増幅して出力することができる。その後の波長変換ユニット4の動作は同一である。また、ビームモニタユニット7は、継続してレーザ光の強度を検知し、異常と判断した場合(ステータス異常)には再び異常である旨を制御ユニット6に対して出力する。
【0053】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るレーザ発生装置によれば、ファイバアンプユニット3の出力レーザ光による光学部品の損傷を回避するとともに、ファイバアンプ出力光の異常検知後における迅速な復帰を実現することができる。
【0054】
すなわち、本発明のレーザ発生装置は、ファイバアンプユニット3の後段にビームモニタユニット7を備えることにより、ファイバ出力光のモードの強度が局所的に強くなる等の異常を感知することができ、ビーム遮蔽ユニット2においてシード光を遮光するため、波長変換ユニット4が有する非線形光学結晶等の光学部品の損傷を回避することができる。
【0055】
また、従来のレーザ発生装置が異常検知時にファイバアンプユニット3の励起電力を制御して停止させていたのに対し、本発明のレーザ発生装置は、ファイバアンプユニット3の励起電力を遮断あるいは低下させることがないため、ファイバアンプユニット3の熱的な状態が除去されるのを回避し、復帰時に定格出力に達するまでの熱的安定時間を要することがなく、復帰時間を短縮することができる。したがって、短時間のシーケンスとなるようなプロセスに対しても、本発明のレーザ発生装置の適用は容易である。
【0056】
なお、本発明のレーザ発生装置は、必ずしも全ての種類のファイバアンプに適しているわけではない。例えば、本発明のファイバアンプユニット3は、ツリウム(Tm)をレーザ活性物質として添加したファイバアンプを採用することができる。しかしながら、イッテルビウム(Yb)をレーザ活性物質として添加したファイバアンプは、シード光が入力されていない状態で励起電力を維持してしまうと、不要なパルス光を出力して光学部品を損傷してしまう場合があり、本発明のレーザ発生装置には適さない。
【0057】
したがって、そのようなシード光が入力されていない状態で励起電力を維持すべきでないファイバアンプを使用するレーザ発生装置は、本発明の適用対象外であるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るレーザ発生装置は、ファイバアンプにより増幅されたレーザ光を励起光として波長変換を行うレーザ発生装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 シード光源ユニット
2 ビーム遮蔽ユニット
3 ファイバアンプユニット
4 波長変換ユニット
5 電源ユニット
6 制御ユニット
7 ビームモニタユニット
8 音響光学素子
9 アパーチャ
10,11,12 励起光伝送用ファイバ
13 ビームサンプラー
14 1次光
15,16 レンズ
18 0次光
19 検知ユニット
20 ビームサンプラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レーザダイオード、第2レーザダイオード、及び第3レーザダイオードの各々に対して給電して駆動させる電源部と、
前記第1レーザダイオードにより出力された第1励起光に基づいてシード光を出力するシード光源と、
前記第2レーザダイオードにより出力された第2励起光と前記第3レーザダイオードにより出力された第3励起光とにより励起されたエネルギーを前記シード光に付与して増幅し、レーザ光として出力するファイバアンプと、
前記シード光源と前記ファイバアンプとの間の光路上に配置され、前記シード光源により出力されたシード光を遮光する遮光部と、
前記電源部による電力供給と前記遮光部による遮光とを制御する制御部と、
前記ファイバアンプにより出力されたレーザ光の強度を検知して異常の有無を判断するビームモニタ部とを備え、
前記制御部は、前記ビームモニタ部により異常と判断された場合に前記遮光部を制御して前記シード光を遮光させることを特徴とするレーザ発生装置。
【請求項2】
前記ビームモニタ部は、検知した前記レーザ光の強度が第1所定値以上である場合に異常と判断することを特徴とする請求項1記載のレーザ発生装置。
【請求項3】
前記ビームモニタ部は、検知した前記レーザ光の強度が第2所定値以下である場合に異常と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーザ発生装置。
【請求項4】
前記遮光部は、
開口部から所定方向の前記シード光のみを通過させるアパーチャと、
前記制御部の制御に基づいて前記シード光の進行方向を制御する音響光学素子とを有し、
前記制御部は、前記ビームモニタ部により正常と判断された場合にのみ前記アパーチャの開口部を前記シード光が通過するように前記音響光学素子を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のレーザ発生装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記遮光部を制御して前記シード光を遮光させてから一定期間経過後に、再び前記遮光部を制御して前記シード光を通過させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のレーザ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−278290(P2010−278290A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130227(P2009−130227)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】