説明

ロボットの制振装置

【課題】プーリによってアーム部材を駆動するロボットにおいて、設置位置の制限を受けることなく振動の減衰性能が高いロボットの制振装置を提供する。
【解決手段】第二制振用プーリ52は、錘部材と円弧ばねの作用によって姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう従動部材25の振動を打ち消す方向へ揺動する。姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう従動部材25の振動を打ち消す方向の揺動は、制振用ベルト53を経由して第一制振用プーリ51に伝達される。これにより、従動部材25に振動が生じようとしても、この振動は第二制振用プーリ52から伝達された揺動によって打ち消される。また、錘部材を含む第二制振用プーリ52は、制振用ベルト53を経由して第一制振用プーリ51に接続することにより、アーム部材21の先端部32よりもモータ22側に配置される。そのため、錘部材を含む第二制振用プーリ52は、自由な配置が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは、構造の容易化および部品点数の減少を図るために駆動力を発生するアクチュエータの数の低減が求められている。そこで、一対のプーリと、これらのプーリに懸架されたベルトとを用いる動力伝達機構により、アクチュエータの数を低減することが考えられている。このように駆動力を伝達するベルトは、動作時すなわち駆動力を伝達する際に伸縮をともなう。そのため、ベルトによって駆動力が伝達されるアームの先端側では、ベルトの伸縮にともなう振動が発生する。そこで、例えば特許文献1に開示されているように、ベルトに制振機構を設けることが提案されている。
【0003】
しかしながら、駆動力を伝達するためのベルトは、駆動力を伝達する方向ごとに伸縮幅が不均一である。そのため、特許文献1に開示されているベルトの制振機構を用いても、ベルトの駆動方向の一方についてのみ制振機能を生じることになる。したがって、ベルトの駆動方向の双方において伸縮にともなう振動を効率的に減衰するためには、ベルトの駆動方向にあわせて一組の制振機構を設置する必要がある。また、この制振機構は、プーリに懸架されているベルトを直接押し付ける。そのため、制振機構を設置する位置は、一対のプーリに懸架されているベルトの中間付近に限定されるという問題がある。ロボットの場合、アームの内側には各種の配線および姿勢制御機構などが収容されている。そのため、制振機構の設置位置は、これら収容されている内包物によって制限され、必ずしも所望するベルトの中間付近とは限らない。その結果、振動の減衰性能を十分に確保することが難しくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−9771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、プーリによってアーム部材を駆動するロボットにおいて、設置位置の制限を受けることなく振動の減衰性能が高いロボットの制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、モータからアーム部材へベルトを経由せずに駆動力を伝達、すなわちモータからアーム部材へ直接駆動力を伝達している。このような請求項1記載の発明の構成では、アーム部材の先端に取り付けられた従動部材の姿勢を一定に維持するために、姿勢維持部を備えている。この姿勢維持部は、モータを収容部に固定されている姿勢制御プーリと、アーム部材に対して回転するプーリ軸部材と一体の従動プーリとに懸架される姿勢制御ベルトを有している。この姿勢制御ベルトも、駆動力伝達ベルトと同様に、伸縮によって従動部材に振動を生じさせる。
【0007】
そこで、請求項1記載の発明では、錘部材を有する第二制振用プーリを備えている。錘部材を有する第二制振用プーリは、姿勢制御ベルトの伸縮にともなう従動部材の振動を打ち消す方向へ揺動する。第一制振用プーリと第二制振用プーリとは制振用ベルトで接続されている。そのため、姿勢制御ベルトの伸縮にともなう従動部材の振動は、制振用ベルトおよび第二制振用プーリによって打ち消される。これにより、姿勢制御ベルトの伸縮によって従動プーリと一体に回転する従動部材に振動が生じようとしても、この振動は第二制振用プーリの揺動によって打ち消される。したがって、姿勢制御ベルトの伸縮にともなう従動部材の振動の減衰性能を高めることができる。また、第一制振用プーリと第二制振用プーリとは、制振用ベルトによって接続されている。そのため、第二制振用プーリは、その配置位置に関わらず、制振用ベルトによって接続される。したがって、設置位置の制限を受けることなく振動の減衰性能を高めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、第二制振用プーリは、アーム部材の長辺方向においてアーム部材の中心よりもモータ側に設けられている。第二制振用プーリは、従動部材の振動を減衰するために十分な質量が必要となる。このように比較的質量の大きな錘部材を含む第二制振用プーリを根元側に設けることにより、アーム部材は先端側が軽くなる。その結果、アーム部材の駆動に必要な力、すなわちモータの出力は低減される。したがって、モータおよびこれを収容するアーム部材の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による制振装置を適用したロボットを示す概略斜視図
【図2】本発明の一実施形態による制振装置を適用したロボットを示す模式的な側面図
【図3】本発明の一実施形態による制振装置を適用したロボットの作動を示す模式図
【図4】本発明の一実施形態による制振装置の要部を示す概略斜視図
【図5】従来のロボットをモデル化した模式図
【図6】本発明の一実施形態による制振装置を適用したロボットをモデル化した模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による制振装置を適用したロボットを図面に基づいて説明する。
図1から図3に示すようにロボット10は、直動軸11、ロボット本体12および軸駆動装置13を備えている。直動軸11は、ロボット本体12の移動方向に沿って配置されている。ロボット本体12は、この直動軸11の軸方向へ往復移動する。軸駆動装置13は、モータ14を有しており、直動軸11の軸方向に沿ったロボット本体12の移動のための駆動力を発生する。
【0011】
ロボット本体12は、アーム部材21、モータ22、モータ収容部23、プーリ軸部材24、従動部材25および姿勢維持部26を備えている。モータ22は、モータ収容部23に収容されている。モータ収容部23は、直動軸11に沿って移動するスライダ27に固定されている。スライダ27は、図示しない駆動力伝達部を経由して軸駆動装置13から駆動力を受ける。これにより、モータ22を収容するモータ収容部23は、スライダ27とともに直動軸11の軸方向へ往復移動する。モータ22は、駆動力出力部28を有している。駆動力出力部28は、モータ22の図示しない回転軸と、直接またはギア機構を経由して接続している。駆動力出力部28は、モータ22から出力される駆動力をアーム部材21に伝達する。モータ22を収容するモータ収容部23はスライダ27に固定されているため、モータ22から駆動力が発生すると、駆動力出力部28を経由して接続しているアーム部材21は、モータ22に対して回転する。
【0012】
アーム部材21は、側面視において長辺および短辺を有しており、長辺方向の全長が短辺方向の全長よりも大きく設定されている。アーム部材21は、長辺方向の一方の端部側が駆動力出力部28に接続している。一方、アーム部材21は、長辺方向の他方の端部側にプーリ軸部材24が設けられている。このように、アーム部材21は、モータ22側の端部である根元部31から、プーリ軸部材24側の端部である先端部32まで延びている。プーリ軸部材24は、図2に示すようにアーム部材21の先端部32側に設けられている軸受部35に回転可能に支持されている。これにより、プーリ軸部材24は、アーム部材21に対して回転する。
【0013】
従動部材25は、アーム部材21に支持されているプーリ軸部材24に取り付けられている。従動部材25は、プーリ軸部材24と一体に回転する。従動部材25は、フレーム36およびハンド37を有している。フレーム36は、プーリ軸部材24に固定されている。ハンド37は、フレーム36と一体に固定され、ロボット10で取り扱う対象となる図示しないワークを把持する。フレーム36およびハンド37で構成される従動部材25は、一体となってプーリ軸部材24とともに回転する。なお、ハンド37は、ワークを把持するだけでなく、ワークに対し機械的な加工を加える機能や、検査のためにワークを撮影する機能を有していてもよい。
【0014】
姿勢維持部26は、姿勢制御プーリ41、従動プーリ42および姿勢制御ベルト43を有している。姿勢制御プーリ41は、モータ収容部23に回転不能な状態で固定されている。従動プーリ42は、プーリ軸部材24に、プーリ軸部材24とともに回転可能に取り付けられている。すなわち、従動部材25および従動プーリ42は、プーリ軸部材24とともに一体に回転する。また、従動プーリ42は、アーム部材21を挟んで従動部材25のフレーム36の反対側に設けられている。姿勢制御ベルト43は、姿勢制御プーリ41と従動プーリ42とに懸架されている。
【0015】
上記の構成により、ロボット本体12は、モータ22から駆動力が発生すると、アーム部材21が回転する。この場合、アーム部材21は、図3に示すように直動軸11に平行な状態と直動軸11に垂直な状態との間で回転する。すなわち、ロボット本体12は、直動軸11に沿って軸方向へ往復移動するとともに、直動軸11側のモータ22の回転軸を支点に回転する。これにより、ロボット本体12は、例えば直動軸11の一方の端部側に設定された把持位置P1において、図3のAに示すようにアーム部材21の先端部32が下方となるように回転し、図示しないワークを把持する。このとき、ロボット本体12は、アーム部材21の長手方向が直動軸11と概ね垂直となる。そして、ロボット本体12は、図3のBに示すようにワークを把持した状態でモータ22を中心にアーム部材21の先端部32が根元部31とほぼ同一の位置となるように回転する。これにより、ハンド37に把持されたワークは、直動軸11の近傍まで持ち上げられる。このとき、ロボット本体12は、アーム部材21の長手方向が直動軸11と概ね平行となる。
【0016】
ロボット本体12は、このようにワークを把持した状態で軸駆動装置13からの駆動力によって把持位置P1から他方の端部側に設定された開放位置P2まで移動する。開放位置P2まで移動すると、ロボット本体12は再び図3のAに示すようなアーム部材21の先端部32が下方となる状態まで回転する。そして、ロボット本体12は、この開放位置P2においてハンド37が下方を向いた状態で図示しないワークを開放する。このとき、把持位置P1と同様に、ロボット本体12は、アーム部材21の長手方向が直動軸11と概ね垂直となる。そして、ロボット本体12は、ワークを開放した状態でモータ22を中心に、再びアーム部材21の先端部32が根元部31とほぼ同一の位置となるように回転する。その後、ロボット本体12は、再び把持位置P1へ移動し、ワークを把持する。
【0017】
このように、ロボット本体12は、把持位置P1における図3のAに示す状態でのワークの把持、把持位置P1における図3のBに示す状態へのアーム部材21の回転、図3のBに示す状態を維持しつつ直動軸11に沿って開放位置P2へ移動、開放位置P2における図3のAに示す状態でのワークの開放、開放位置P2における図3のBに示す状態へのアーム部材21の回転、および図3に示す状態を維持しつつ直動軸11に沿って把持位置P1へ移動を繰り返す。
【0018】
ここで、プーリ軸部材24は、アーム部材21と相対的な回転が可能に支持されている。そして、このプーリ軸部材24には、従動プーリ42が一体に設けられている。従動プーリ42は、姿勢制御ベルト43を経由してモータ収容部23に固定されている姿勢制御プーリ41と接続されている。そのため、アーム部材21が図3のAに示す状態とBに示す状態との間で回転しても、従動プーリ42はこのアーム部材21の回転と逆方向へ回転する。その結果、アーム部材21が回転しても、従動プーリ42と一体に回転する従動部材25、および従動部材25に取り付けられているハンド37は、常に一定の方向すなわち図2の下方を向いた状態を維持する。
【0019】
このように、ロボット本体12は、姿勢維持部26を備える。そのため、アーム部材21の回転にともなって姿勢維持部26の姿勢制御ベルト43に伸縮が生じると、その伸縮がプーリ軸部材24および従動部材25に伝達される。姿勢制御ベルト43から伝達された伸縮は、プーリ軸部材24に対し中心軸を中心とする微小な揺れ、すなわち振動を生じさせる原因となる。そこで、ロボット本体12は、図1および図2に示すように制振装置50を備えている。
【0020】
制振装置50は、上述のロボット本体12の構成に加え、第一制振用プーリ51、第二制振用プーリ52および制振用ベルト53を有している。第一制振用プーリ51は、プーリ軸部材24に取り付けられ、プーリ軸部材24と一体に回転する。この第一制振用プーリ51は、プーリ軸部材24の端部すなわち従動部材25のフレーム36を挟んで従動プーリ42の反対側の端部に設けられている。
【0021】
第二制振用プーリ52は、プーリ軸部材24と平行な回転軸部材54を中心に回転軸部材54とともに揺動する。回転軸部材54は、アーム部材21に対し回転可能に、軸受部材55に支持されている。第二制振用プーリ52は、図2に示すように一体の錘部材56を有している。また、第二制振用プーリ52は、図4に示すように錘部材56と接続する弾性部材としての円弧ばね57を有している。なお、弾性部材は、円弧ばね57に限らず、任意のばねを適用可能である。錘部材56は、止め輪部材58によって第二制振用プーリ52とともに回転軸部材54に固定されている。制振用ベルト53は、この第二制振用プーリ52と第一制振用プーリ51とに懸架されている。これにより、第二制振用プーリ52の揺動は、制振用ベルト53を経由して第一制振用プーリ51へ伝達される。錘部材56は、本実施形態のように第二制振用プーリ52と組み付ける構成だけでなく、第二制振用プーリ52そのものが錘部材であってもよい。
【0022】
次に、上記の構成による制振装置50の作用について説明する。
制振装置50が設けられていない従来のロボット本体をモデル化して図示すると、図5に示すように一方の端部が固定された弾性部材61の端部に従動部材62が取り付けられた状態となる。すなわち、弾性部材61は、本実施形態における姿勢制御ベルト43を含む姿勢維持部26に相当する。また、従来のロボットの場合、弾性部材61は、モータから従動部材62へ駆動力を伝達する駆動力伝達ベルトに相当する。この図5に示すモデルの場合、弾性部材61の一端は固定されているものの、他端の自由端側に従動部材62が取り付けられている。そのため、弾性部材61の振動に起因する従動部材62の振動は、弾性部材61の振動が減衰するまで継続することになる。
【0023】
これに対し、制振装置50を備える本実施形態のロボット本体12をモデル化して図示すると、図6に示すように二つの弾性部材71と弾性部材72との間に従動部材73が接続している。弾性部材71は、本実施形態における姿勢制御ベルト43を含む姿勢維持部26に相当する。この弾性部材71は、一端が固定されており、他端が従動部材73に接続している。すなわち、弾性部材71の一端は、本実施形態の場合、姿勢制御プーリ41に相当する。一方、弾性部材72は、本実施形態における円弧ばね57に相当する。この弾性部材72は、一端が従動部材73に接続され、他端が錘部材74に接続している。この錘部材74は、本実施形態の錘部材56に相当する。このように、図6に示す本実施形態のモデルの場合、従動部材73は、固定端と錘部材74との間に、弾性部材71および弾性部材72によって支持されていることになる。そのため、弾性部材71および弾性部材72のばね定数を適切に選択することにより、姿勢維持部26に相当する弾性部材71の振動は、円弧ばね57および錘部材56に相当する弾性部材72および錘部材74によって相殺される。その結果、弾性部材71に起因する従動部材73の振動は、弾性部材72および錘部材74によって打ち消される。すなわち、本実施形態に置き換えると、姿勢維持部26に起因する従動部材25の振動は、円弧ばね57および錘部材56によって打ち消される。
【0024】
本実施形態の場合、第一制振用プーリ51と第二制振用プーリ52とは制振用ベルト53で接続されている。そのため、姿勢制御ベルト43の伸縮によって従動プーリ42、従動プーリ42に接続するプーリ軸部材24、およびプーリ軸部材24に接続する第一制振用プーリ51が振動すると、その振動は制振用ベルト53を経由して第二制振用プーリ52へ伝達される。第二制振用プーリ52は、円弧ばね57および錘部材56によって、伝達された振動を打ち消す方向へ揺動する。この第二制振用プーリ52の揺動は、制振用ベルト53を経由して第一制振用プーリ51に伝達される。その結果、プーリ軸部材24に取り付けられている従動部材25の振動は、円弧ばね57および錘部材56による第二制振用プーリ52の揺動によって打ち消される。
【0025】
また、本実施形態の場合、錘部材56のように重量が大きな部材は、アーム部材21の長辺方向においてモータ22により近い側に配置される。円弧ばね57および錘部材56は、従動部材25に近いプーリ軸部材24に設けることも可能である。しかし、プーリ軸部材24は、アーム部材21の先端部32側に位置するため、錘部材56のように比較的重量の大きな部材を先端部32側に配置すると、アーム部材21を駆動するためにモータ22に要求される駆動力は増大する。そのため、モータ22を含む駆動部分の大型化を招く。そこで、本実施形態のように、第一制振用プーリ51と第二制振用プーリ52とを制振用ベルト53で接続することにより、円弧ばね57および錘部材56が設けられている第二制振用プーリ52とプーリ軸部材24とは、離れた位置に配置可能である。特に、本実施形態では、この錘部材56を含む第二制振用プーリ52は、アーム部材21の長辺方向においてその中心よりもモータ22側に配置されている。これにより、錘部材56のような重量の大きな部材をアーム部材21に取り付ける場合でも、モータ22の出力増大および大型化は不要である。また、モータ22の大きさおよび出力を一定に維持できれば、ロボット本体12の駆動速度を大きくすることができる。
【0026】
以上説明したように、一実施形態では、円弧ばね57を挟んで錘部材56と接続する第二制振用プーリ52を備えている。錘部材56との間に円弧ばね57を挟み込んでいる第二制振用プーリ52は、姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう従動部材25の振動を打ち消す方向へ揺動する。この第二制振用プーリ52の揺動、すなわち姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう従動部材25の振動を打ち消す方向の揺動は、制振用ベルト53を経由して第一制振用プーリ51に伝達される。第一制振用プーリ51は、プーリ軸部材24を中心として従動プーリ42と一体に回転可能である。そのため、プーリ軸部材24と一体に従動プーリ42と共に回転する従動部材25は、第二制振用プーリ52から第一制振用プーリ51へ伝達された揺動により、従動プーリ42と共に振動が打ち消される。これにより、姿勢制御ベルト43の伸縮によって従動プーリ42と一体に回転する従動部材25に振動が生じようとしても、この振動は第二制振用プーリ52から伝達された振動を打ち消す方向の揺動によって打ち消される。したがって、姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう従動部材25の振動の減衰性能を高めることができる。また、第二制振用プーリ52の揺動は、制振用ベルト53によって第一制振用プーリ51へ伝達される。そのため、姿勢制御ベルト43の伸縮にともなう振動を打ち消すための第二制振用プーリ52の揺動は、その配置位置に関わらず、制振用ベルト53によって第一制振用プーリ51へ伝達される。したがって、設置位置の制限を受けることなく従動部材25における振動の減衰性能を高めることができる。
【0027】
また、一実施形態では、第二制振用プーリ52は、アーム部材21の長辺方向においてアーム部材21の中心よりもモータ22側すなわち根元部31側に設けられている。第二制振用プーリ52は、従動部材25の振動を減衰するために十分な質量が必要となる。このように比較的質量の大きな錘部材56を含む第二制振用プーリ52を根元部31側に設けることにより、アーム部材21は先端側が軽くなる。その結果、アーム部材21の駆動に必要な力、すなわちモータ22の出力は低減される。したがって、モータ22およびこれを収容するモータ収容部23の小型化を図ることができる。また、モータ22の大きさを一定に確保できれば、ロボット本体12の駆動速度の増大を図ることができる。
【0028】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
一実施形態では、第二制振用プーリ52は、錘部材56および円弧ばね57を有する例について説明した。しかし、第二制振用プーリ52自体を錘部材として構成、すなわち第二制振用プーリ52と錘部材とを一体に構成し、制振用ベルト43を、錘部材である第二制振用プーリと第一制振用プーリ51との間を接続する弾性部材として機能する構成としてもよい。制振用ベルト43のようなベルト部材は、わずかながらも伸縮をともなう。そのため、制振用ベルト43を弾性部材とみなすことにより、第一制振用プーリ51には弾性部材である制振用ベルト43を経由して錘部材である第二制振用プーリ52が接続しているともみなすことができる。この場合、制振用ベルト43のばね定数、錘部材と一体に構成する第二制振用プーリ52の質量を適切に設定することにより、上述の一実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0029】
図面中、10はロボット、21はアーム部材、22はモータ、23はモータ収容部、24はプーリ軸部材、25は従動部材、26は姿勢維持部、31は根元部、32は先端部、41は姿勢制御プーリ、42は従動プーリ、43は姿勢制御ベルト、50は制振装置、51は第一制振用プーリ、52は第二制振用プーリ、53は制振用ベルトを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根元部から先端部に向けて延びるアーム部材と、
前記アーム部材の前記根元部側に設けられ、駆動力を発生するモータと、
前記モータを収容するモータ収容部と、
前記アーム部材の前記先端部側に設けられ前記アーム部材に対して回転するプーリ軸部材と、
前記プーリ軸部材に取り付けられ、前記プーリ軸部材と一体に回転する従動部材と、
前記従動部材とともに前記プーリ軸部材と一体に回転する従動プーリ、前記モータ収容部に固定されている姿勢制御プーリ、および前記従動プーリと前記姿勢制御プーリとに懸架されている姿勢制御ベルトを有し、前記従動部材を前記アーム部材の姿勢に関わらず予め設定された設定姿勢に維持する姿勢維持部と、
前記プーリ軸部材と一体に回転する第一制振用プーリと、
錘部材を有し、前記プーリ軸部材と平行であって前記アーム部材に対して回転する回転軸部材と一体に、前記姿勢制御ベルトの伸縮にともなう前記従動部材の振動を打ち消す方向へ揺動する第二制振用プーリと、
前記第一制振用プーリと前記第二制振用プーリとを接続する制振用ベルトと、
を備えることを特徴とするロボットの制振装置。
【請求項2】
前記第二制振用プーリは、前記アーム部材の長辺方向において前記アーム部材の中心よりも前記モータ側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のロボットの制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183525(P2011−183525A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53026(P2010−53026)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】