説明

ロボットハンド

【課題】マグネット部に永久磁石を用いてもワークの重量に対応してワークに対する吸着力を高くする。
【解決手段】ロボットハンド10では、互いに対向する磁極が反対になるようにマグネット部74、76が配置されており、ハンド部34、36が閉位置に移動された際に、スペーサ78、80が互いに当接して、マグネット部74、76が互いに連結される。これにより、スペーサ80からスペーサ78へ向かう磁力線は、スペーサ80、78の間の空気を介さずに、スペーサ78、80内を高密度で伝搬されるため、吸着部70、72における磁力線が多くなり、吸着部70、72の磁力が強くなる。したがって、ハンド部34、36が閉位置以外の位置に配置された際に比べて閉位置に配置された際に、ワークに対する吸着力が高くなる。これにより、マグネット部74、76に永久磁石を用いても、ワークの重量に対応してワークに対する吸着力を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のマグネット部を備えたロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のワーク取り出し装置では、ロボットハンドがマグネット部を有しており、マグネット部は、電磁石によって構成されている。これにより、ワークがマグネット部に吸着され、マグネット部(電磁石)に供給する電流の電流値を高くすることで、マグネット部のワークに対する吸着力を高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−66180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このワーク取り出し装置では、上述のように、マグネット部に電磁石を用いているため、電磁石に電流を供給するための電源装置や配線などが必要になり、構造が複雑になる。このため、簡易な構造でワークを吸着するために、例えば、マグネット部に永久磁石を用いることが考えられるが、この場合では、マグネット部のワークに対する吸着力が一定となる。したがって、重量の重いワークに対して、該ワークに対する吸着力を高くできることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、マグネット部に永久磁石を用いてもワークの重量に対応してワークに対する吸着力を高くできるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のロボットハンドは、対向して配置されると共に、対向方向において閉位置と開位置との間で移動可能にされ、ワークを把持する一対のハンド部と、磁性体により形成されると共に、一対の前記ハンド部にそれぞれ設けられ、前記ワークを吸着するヨークと、永久磁石により構成されると共に、一対の前記ヨークの間において一対の前記ヨークにそれぞれ連結され、互いに対向する磁極が反対になるようにかつ磁極の配列方向を前記対向方向に沿った状態に配置された一対のマグネット部と、磁性体又は永久磁石により構成されると共に、一対の前記マグネット部の間において一対の前記マグネット部にそれぞれ連結され、前記ハンド部が前記閉位置に移動された際に互いに当接することで一対の前記マグネット部を連結させる一対の連結部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のロボットハンドでは、一対のハンド部が、対向方向において閉位置と開位置との間で移動されて、ワークがハンド部に把持される。また、一対のハンド部には、磁性体により形成されたヨークがそれぞれ設けられており、一対のヨークの間には、永久磁石により構成された一対のマグネット部が配置されて、マグネット部はそれぞれ一対のヨークに連結されている。これにより、ヨークが、磁化されてワークを吸着する。
【0008】
また、一対のマグネット部は、磁極の配列方向をハンド部の対向方向に沿った状態に配置されている。さらに、一対のマグネット部の間には、磁性体又は永久磁石により構成された一対の連結部が設けられており、連結部はそれぞれ一対のマグネット部に連結されている。
【0009】
ここで、マグネット部は、互いに対向する磁極を反対にするように配置されており、ハンド部が閉位置に移動された際に、一対の連結部が互いに当接することで、一対のマグネット部が連結される。
【0010】
このため、一対の連結部が互いに連結されることで、一方の連結部から他方の連結部へ向かう磁力線が、一対の連結部の間の空気を介さずに、当該連結部内を高密度で伝搬される。一方、ハンド部が閉位置以外の位置に移動された際(閉位置から開位置へ向けて移動された際)には、一対の連結部が互いに離間されるため、一方の連結部から他方の連結部へ向かう磁力線が、一対の連結部の間の空気中を低密度で伝搬される。これにより、一対の連結部が互いに連結されない際に比して、一対の連結部が互いに連結された際に、ヨークにおける磁力線(磁束)が多くなるため、ヨークの磁力が強くなる。したがって、ハンド部が閉位置以外の位置に配置された際のヨークのワークに対する吸着力に比して、ハンド部が閉位置に配置された際のヨークのワークに対する吸着力が高くなり、ハンド部の位置によって、ワークに対する吸着力を高くできる。
【0011】
請求項2に記載のロボットハンドは、請求項1に記載のロボットハンドにおいて、前記連結部は磁性体により構成されたスペーサとされている。
【0012】
請求項2に記載のロボットハンドでは、連結部が磁性体により構成されたスペーサとされているため、簡易な構成でマグネット部を連結できる。さらに、ハンド部が閉位置に移動された際に、一対のマグネット部同士が直接当接されないため、マグネット部の耐久性及び耐磨耗性が向上される。
【0013】
請求項3に記載のロボットハンドは、請求項1又は請求項2に記載のロボットハンドにおいて、前記ヨークは、前記ワークを吸着する吸着部を有し、前記ハンド部は、非磁性体により形成され、前記吸着部を露出させた状態で前記ヨーク及び前記マグネット部を覆っている。
【0014】
請求項3に記載のロボットハンドでは、ワークを吸着する吸着部がヨークに設けられており、吸着部が露出された状態でヨーク及びマグネット部がハンド部に覆われている。
【0015】
ここで、ハンド部は、非磁性体により形成されている。このため、ハンド部がワークを吸着する際に、例えば、吸着対象であるワーク以外のワークにハンド部が接触しても、当該ワークがハンド部に吸着されることが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のロボットハンドによれば、マグネット部に永久磁石を用いてもワークの重量に対応してワークに対する吸着力を高くできる。
【0017】
請求項2に記載のロボットハンドによれば、簡易な構成でマグネット部を連結でき、マグネット部の耐久性及び耐磨耗性を向上できる。
【0018】
請求項3に記載のロボットハンドによれば、吸着対象のワーク以外のワークがハンド部に吸着されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るロボットハンドを示す斜視図である。
【図2】図1に示されるロボットハンドを示す前方から見た側面図である。
【図3】図1に示されるロボットハンドがロボットに取付けられた状態を示す側面図である。
【図4】図1に示されるロボットハンドの断面図(図1の4−4線断面図)である。
【図5】(A)は、図1に用いられるハンド部が閉位置に配置された状態を示す側面図であり、(B)は、ハンド部が開位置に配置された状態を示す側面図である。
【図6】(A)は、閉位置において、図5に示されるハンド部がワークを吸着した際を示す斜視図であり、(B)は、(A)の状態を示すハンド部の側面図である。
【図7】(A)は、図5に示されるハンド部の第1把持部においてワークが把持された際を示す斜視図であり、(B)は、(A)の状態を示すハンド部の側面図である。
【図8】(A)は、図5に示されるハンド部の第2把持部においてワークが把持された際を示す斜視図であり、(B)は、(A)の状態を示すハンド部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係るロボットハンド10が斜視図にて示されており、図2には、ロボットハンド10が側面図にて示されている。なお、これらの図に適宜示される矢印UPはロボットハンド10の上方を示し、矢印FRはロボットハンド10の前方を示し、矢印RHはロボットハンド10の右方を示す。
【0021】
これらの図に示すように、ロボットハンド10は、取付部12を備えている。取付部12は矩形板状の第1取付プレート14を有しており、第1取付プレート14が、ロボット90に装着されている(図3参照)。また、取付部12は、第1取付プレート14の下方において、矩形板状の第2取付プレート16を有しており、第2取付プレート16は第1取付プレート14と対向して配置されている。
【0022】
第1取付プレート14及び第2取付プレート16には、各々の角部において、それぞれ略円柱形状のガイドピン18が上下方向に沿って挿通されており、ガイドピン18の先端(下端)に設けられたネジ部にナット20が螺合されている。また、第1取付プレート14と第2取付プレート16との間には、ガイドピン18に対応して圧縮コイルスプリング22が設けられており、圧縮コイルスプリング22内にガイドピン18が挿通されている。圧縮コイルスプリング22は、第1取付プレート14及び第2取付プレート16をそれぞれ離間させる方向(上下方向)へ付勢している。これにより、第2取付プレート16は第1取付プレート14に対して接離する方向(上下方向)へ相対移動可能に取付けられている。
【0023】
第2取付プレート16の下方には、略直方体ブロック状の本体部24が設けられている。本体部24は、第2取付プレート16に固定されて、第2取付プレート16から下方へ突出されている。本体部24内には、後述する可動部26、28を駆動させるためのエア駆動部(図示省略)が内蔵されている。
【0024】
本体部24の下部には、前方から見て断面略逆L字形状の一対の可動部26、28が左右方向に対向して設けられている。可動部26、28は、略板状のベース部26A、28Aを有しており、ベース部26A、28Aは、本体部24の下部において、本体部24に対して左右方向へ移動可能に取付けられている。また、ベース部26A、28A(可動部26、28)には、前述したエア駆動部が連結されており、エア駆動部の駆動によって、ベース部26A、28A(可動部26、28)は互いに接離する方向へ移動可能に構成されている。また、一対のベース部26A、28Aには、左右方向内側の部分において、略板状のプレート部26B、28Bが一体に設けられており、プレート部26B、28Bはベース部26A、28Aから下方へ突出されている。
【0025】
一対のプレート部26B、28Bの左右方向外側には、それぞれ略直方体ブロック状の取付アーム30、32が設けられている。取付アーム30、32は、上方の部分において、ボルト等によってプレート部26B、28Bに締結されて、取付アーム30、32が可動部26、28から下方へ突出されている。
【0026】
一対の取付アーム30、32の間には、可動部26、28の下方において、一対のハンド部34、36が設けられている。ハンド部34、36は、リン青銅等の非磁性体材により製作された爪部38、40を有している。爪部38、40は略直方体ブロック状に形成されており、爪部38、40の上方の部分が取付アーム30、32に固定されて、爪部38、40が上下方向に延伸されている。これにより、爪部38、40が、取付アーム30、32を介して、可動部26、28に取付けられて、一対の爪部38、40(ハンド部34、36)は、図5(A)に示される閉位置(爪部38、40が互いに最も接近した位置)と図5(B)に示される開位置(爪部38、40が互いに最も離間された位置)との間で移動可能に構成されている。
【0027】
一対の爪部38、40の互いに対向する面(左右方向内側面)には、先端(下端)の位置において、一対の第1把持部42、44が設けられている。第1把持部42、44は、左右方向に対して直交する方向に沿って各々配置されている。これにより、図7(A)及び図7(B)に示すように、例えば、矩形状の断面を有するワークWを把持する際には、爪部38、40が、第1把持部42、44の部位において、ワークWの側面を把持できるように構成されている。
【0028】
また、一対の爪部38、40の互いに対向する面には、第1把持部42、44の上方において、第2把持部46、48が設けられている。第2把持部46、48は、前方から見て断面略V字形の溝状に形成されると共に、前後方向に延伸されている。また、第2把持部46、48は、互いに対向する位置に配置されて、左右方向内側へ開口されている。これにより、図8(A)及び図8(B)に示すように、例えば、円形状の断面を有するワークWを把持する際には、爪部38、40が、第2把持部46、48の部位において、ワークWの外周部を把持できるように構成されている。さらに、爪部38、40の先端部には、左右方向外側の部分において、断面略矩形状の段部50、52が設けられており、段部50、52は前後方向に沿って延伸されている。
【0029】
さらに、ハンド部34、36は、リン青銅等の非磁性体材により製作された一対のカバー部54、56を有しており、カバー部54、56は、爪部38、40の左右方向外側にそれぞれ配置されている。カバー部54、56は、吸着対象であるワークWに隣接したワークWがハンド部34、36に吸着されることを防止するためのものである。カバー部54、56は、略直方体状に形成されて、ボルト58、60によって爪部38、40に取付けられている。また、カバー部54、56の先端(下端)面は、爪部38、40の先端(下端)面と面一に配置されており、カバー部54、56の先端部と爪部38、40の段部50、52によって、凹部62、64が形成されている。さらに、カバー部54、56の先端部には、左右方向外側の部分において、傾斜面54A、56Aが設けられており、傾斜面54A、56Aは下方へ向かうに従い左右方向内側へ傾斜されている。
【0030】
図4に示すように、爪部38、40とカバー部54、56との間には、磁性体により製作されたヨーク66、68が設けられており、ヨーク66、68は略長尺板状に形成されている。ヨーク66、68は、上下方向に沿って延伸されると共に、爪部38、40とカバー部54、56とで狭持されており、ヨーク66、68の外周部が、爪部38、40及びカバー部54、56に覆われている。ヨーク66、68の先端部(下端部)は、略クランク状に屈曲されると共に、前述した凹部62、64内に配置されており、これにより、ヨーク66、68の先端部のみが、爪部38、40及びカバー部54、56から露出されている。また、ヨーク66、68の先端は、爪部38、40の先端面及びカバー部54、56の先端面に対して下方へ突出されており、この突出されている部分が吸着部70、72とされている。
【0031】
一対の爪部38、40内には、第2把持部46、48の上方の位置において、永久磁石により構成されたマグネット部74、76がそれぞれ内蔵されている(図4では、マグネット部74、76における左右方向中間部の線は磁極の境界を示しており、斜線によってN極又はS極の磁極の領域を示している)。マグネット部74、76の左右方向内側には、連結部としての磁性体により製作された略円筒状のスペーサ78、80が設けられており、マグネット部74、76は、スペーサ78、80を介してボルト58、60によって固定されている。また、マグネット部74、76は左右方向に互いに対向して配置されており、マグネット部74、76の左右方向外側の面がヨーク66、68と面当接されている。これにより、マグネット部74、76は爪部38、40及びカバー部54、56から露出されていない。
【0032】
さらに、マグネット部74、76の磁極は、左右方向に沿って配列されており、マグネット部74、76の互いに対向する磁極が反対の磁極になるように、マグネット部74、76が配置されている。つまり、右側の爪部38に設けられたマグネット部74と左側の爪部40に設けられたマグネット部76とでは、それぞれN極が右方に配置されると共に、S極が左方に配置されている。これにより、ヨーク66では、上側(マグネット部74側)の部分の磁極がS極にされており、下側(吸着部70側)の部分の磁極がN極とされている。また、スペーサ78では、右側(マグネット部74側)の部分の磁極がN極とされており、左側(マグネット部74とは反対側)の部分の磁極がS極とされている。一方、ヨーク68では、上側(マグネット部76側)の部分の磁極がN極とされており、下側(吸着部72側)の部分の磁極がS極とされている。また、スペーサ80では、左側(マグネット部76側)の部分の磁極がS極とされており、右側(マグネット部76とは反対側)の部分の磁極がN極とされている。なお、図4では、ヨーク66、68における上下方向中間部の線、及びスペーサ78、80における左右方向中間部の線は、磁極の境界を示しており、斜線によってN極又はS極の磁極の領域を示している。以上により、左右の吸着部70、72において、磁性体により形成されたワークWを吸着できるように構成されている。
【0033】
また、前述したスペーサ78、80には、左右方向内側面において、それぞれボルト58、60の頭部を収容するための略円錐形状のザグリ部78A、80Aが設けられており、ザグリ部78A、80A内にボルト58、60の頭部が収容されている。
【0034】
さらに、一対のハンド部34、36が閉位置に移動された際には、スペーサ78、80の左右方向内側面が互いに面当接されるように、スペーサ78、80のそれぞれの厚さT1、T2の寸法が設定されている。このため、一対のハンド部34、36が閉位置に移動された際には、スペーサ78とスペーサ80とが連結されるため、スペーサ80からスペーサ78へ向かう磁力線は、スペーサ80とスペーサ78との間の空気を介さずに、スペーサ78、80内を高密度で伝搬される(図5(A)の矢印参照)。
【0035】
一方、一対のハンド部34、36が閉位置以外の位置に配置された際(閉位置から開位置へ向けて移動された際)には、スペーサ78とスペーサ80とが互いに離間されるため、スペーサ80からスペーサ78へ向かう磁力線が、スペーサ78とスペーサ80との間の空気中を低密度で伝搬する。これにより、スペーサ78、80が互いに連結されない際に比して、スペーサ78、80が互いに連結された際に、吸着部70から放出される磁力線(磁束)及び吸着部72に入射される磁力線(磁束)が多くなるため、吸着部70,72における磁力が強くなる。したがって、一対のハンド部34、36が閉位置に配置された際のワークWに対する吸着力が、一対のハンド部34、36が閉位置以外の位置に配置された際のワークWに対する吸着力に比して高くなるように構成されている。
【0036】
一方、図5(B)に示すように、本体部24の前方の面には、略逆L字形板状のブラケット82が取付けられている。ブラケット82は、本体部24から下方へ延設されている。ブラケット82の下方の部分は、後方へ折り曲げられて、一対のプレート部26B、28Bの間に配置されており、この部分がセンサ取付部84とされている。
【0037】
ブラケット82のセンサ取付部84には、検出部としてのセンサ86が設けられている。このセンサ86は光反射型センサとして構成されており、センサ86は、下方へ向けて光を照射して、ワークWによって反射された反射光を受光可能に構成されている。これにより、ハンド部34、36の閉位置以外の位置において、爪部38、40がワークWを把持した際、又は、ヨーク66、68の吸着部70、72がワークWを吸着した際に、センサ86から照射された光がワークWに反射されて、この反射光をセンサ86が受光することで、ワークWの有無を検出可能に構成されている(図5(B)では、爪部38、40の開位置において、吸着部70、72がワークWを吸着した際を示している)。
【0038】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
本実施の形態のロボットハンド10では、ヨーク66、68に吸着部70、72がそれぞれ設けられており、ヨーク66、68は、マグネット部74、76にそれぞれ当接されている。このため、ヨーク66、68(吸着部70、72)が磁化されている。また、吸着部70、72は、ハンド部34、36の先端部に設けられると共に、ハンド部34、36の先端から突出されている。
【0040】
初めに、乱積みされたワークWを吸着部70、72に吸着させてワークWを取り出す際には、ロボットハンド10の先端部をワークWへ向けてロボットハンド10をワークWに接近させる。
【0041】
この際に、図6(A)及び(B)に示すように、例えば、ワークWの重量が比較的重い場合には、ハンド部34、36を閉位置に移動(配置)させる。一方、ワークWの重量が比較的軽く、ワークWの長さが長い場合には、ハンド部34、36を閉位置以外の位置(例えば、開位置)へ移動(配置)させる。
【0042】
この状態で、吸着部70、72をワークWに接触させることで、吸着部70、72の磁力によってワークWが吸着部70、72に吸着される。これにより、乱積みされたワークWからワークWが取り出される。
【0043】
そして、吸着部70、72にワークWを吸着させた状態でロボットハンド10を仮置き場へ移動させる。この際に、ハンド部34、36が閉位置以外の位置へ配置されている場合には、スペーサ78、80は互いに面当接されていないため、センサ86がワークWへ向けて光を照射して、ワークWによって反射された反射光をセンサ86が受光する。これにより、センサ86によってワークWが検出されて、ワークWがロボットハンド10に吸着されていることが検出される。
【0044】
ロボットハンド10が仮置き場へ移動された際には、仮置き場に設けられた引掛け部等にワークWを引掛けさせて、ワークWを吸着部70、72から離脱させる。これにより、ワークWが仮置き場に配置される。
【0045】
この後に、ワークWの形状に対応して、本体部24のエア駆動部を駆動させて、一対のハンド部34、36を互いに離間させる方向へ移動させる。そして、ワークWの断面形状が矩形状に形成されている場合には、一対の爪部38、40の第1把持部42、44の間にワークWが配置されるように、ロボットハンド10を移動させる。また、ワークWの断面形状が円形状に形成されている場合には、一対の爪部38、40の第2把持部46、48の間にワークWが配置されるように、ロボットハンド10を移動させる。
【0046】
この状態で、エア駆動部を駆動させて、一対のハンド部34、36を互いに接近する方向へ移動させる。これにより、ワークWがハンド部34、36に把持される。そして、ハンド部34、36がワークWを把持した状態で、ワークWを所定の組付け位置に配置させる。
【0047】
また、この際には、スペーサ78、80が互いに面当接されていないため、センサ86がワークWへ向けて光を照射して、ワークWによって反射された反射光をセンサ86が受光する。これにより、ワークWがロボットハンド10に把持されていることが検出される。
【0048】
ここで、ロボットハンド10では、互いに対向する磁極が反対になるようにマグネット部74、76が配置されており、ハンド部34、36が閉位置に移動(配置)された際に、スペーサ78とスペーサ80とが互いに当接することで、一対のマグネット部74、76が互いに連結される。
【0049】
このため、一対のハンド部34、36が閉位置に移動された際には、スペーサ78とスペーサ80とが連結されるため、スペーサ80からスペーサ78へ向かう磁力線は、スペーサ80とスペーサ78との間の空気を介さずに、スペーサ78、80内を高密度で伝搬される。
【0050】
一方、一対のハンド部34、36が閉位置以外の位置に配置された際には、スペーサ78とスペーサ80とが互いに離間されるため、スペーサ80からスペーサ78へ向かう磁力線が、スペーサ78とスペーサ80との間の空気中を低密度で伝搬する。これにより、スペーサ78、80が互いに連結されない際に比して、スペーサ78、80が互いに連結された際に、吸着部70から放出される磁力線(磁束)及び吸着部72に入射される磁力線(磁束)が多くなるため、吸着部70,72における磁力が強くなる。したがって、一対のハンド部34、36が閉位置に配置された際のワークWに対する吸着力が、一対のハンド部34、36が閉位置以外の位置に配置された際のワークWに対する吸着力に比して高くなる。これにより、マグネット部74、76に永久磁石を用いても、ワークWの重量に対応してワークWに対する吸着力を高くできる。
【0051】
また、スペーサ78、80が磁性体により構成されており、ハンド部34、36が閉位置に移動された際に、スペーサ78とスペーサ80とが互いに当接する。このため、簡易な構成でマグネット部74とマグネット部76とを連結できる。さらに、スペーサ78、80の厚さT1、T2の寸法を設定することで、マグネット部74、76を容易に連結させることができる。また、ハンド部34、36が閉位置に移動された際には、マグネット部74とマグネット部76とが直接当接されないため、マグネット部74、76の耐久性及び耐磨耗性を向上できる。
【0052】
さらに、ワークWを吸着する吸着部70、72がヨーク66、68に設けられており、吸着部70、72が露出された状態でヨーク66、68及びマグネット部74、76が非磁性体により形成されたハンド部34、36に覆われている。このため、ハンド部34、36がワークWを吸着する際に、例えば、吸着対象であるワークW以外のワークWにハンド部34、36が接触しても、当該ワークWがハンド部34、36に吸着されることを抑制できる。
【0053】
また、ハンド部34、36には、ワークWを吸着する吸着部70、72が設けられている。これにより、吸着部70、72がハンド部34、36に一体に設けられているため、ハンド部34、36とは別に吸着部70、72を設けるためのハンド部を設ける必要がなくなる。これにより、ロボットハンド10の体格を小型化できる。
【0054】
さらに、一対の爪部38、40には、それぞれマグネット部74、76が内蔵されている。また、一対のマグネット部74、76には、磁性体により形成されたヨーク66、68がそれぞれ当接されており、ヨーク66、68に吸着部70、72が設けられている。このため、ヨーク66、68(吸着部70、72)が磁化されて、吸着部70、72においてワークWが吸着される。これにより、ワークWを吸着する際には、マグネット部74、76とワークWとが直接接触しないため、マグネット部74、76にワークWを直接吸着させる場合に比して、マグネット部74、76の耐久性及び耐磨耗性を向上できる。
【0055】
また、吸着部70、72がハンド部34、36の延伸方向の先端部に設けられている。これにより、ワークWを吸着させる際のハンド部34、36の移動方向とハンド部34、36の延伸方向とを一致させることで、ハンド部34、36の移動時に、ワークWを収容する収容箱の側壁や吸着対象であるワークW以外のワークWにハンド部34、36が干渉することを抑制できる。しかも、吸着部70、72が、爪部38、40の先端面及びカバー部54、56の先端面から突出されているため、ワークWを吸着部70、72に確実に吸着できる。
【0056】
さらに、吸着部70がハンド部34に設けられており、吸着部72がハンド部36に設けられているため、ワークWを一対の吸着部70、72に掛け渡した状態で吸着できる。しかも、一対のハンド部34、36を閉位置と開位置との間において移動させることで、ワークWの長さに対応した位置に吸着部70、72を配置できる。
【0057】
また、一対のハンド部34、36の間には、センサ86が設けられており、ハンド部34、36が閉位置以外の位置に移動(配置)された際に、センサ86がワークWに向けて光を照射してワークWによって反射された反射光を受光することで、ワークWの有無が検出される。このため、ワークWがハンド部34、36に吸着されたか否か、又は、ワークWがハンド部34、36に把持されたか否かを、1つのセンサ86によって検出できる。
【0058】
さらに、爪部38、40は、平面状に形成された第1把持部42、44とV字形溝状に形成された第2把持部46、48とを有している。このため、例えば、矩形状の断面を有するワークWをハンド部34、36が把持する際には、ハンド部34、36が第1把持部42、44の部位においてワークWを把持でき、円形状の断面を有するワークWをハンド部34、36が把持する際には、ハンド部34、36が第2把持部46、48の部位においてワークWを把持できる。これにより、ワークWの断面形状に対応して、ハンド部34、36がワークWを把持できる。
【0059】
また、第1取付プレート14と第2取付プレート16との間には、圧縮コイルスプリング22が設けられており、第1取付プレート14は第2取付プレート16に対して上下方向に相対移動可能に構成されている。このため、仮に、ワークWを収容する収容箱や吸着対象であるワークW以外のワークWに、ハンド部34、36が干渉した場合には、圧縮コイルスプリング22の付勢力に抗して、ハンド部34、36がロボットハンド10の上方へ移動(退避)できる。さらに、吸着部70、72にワークWを吸着させる際に、ロボットハンド10をワークWに向けて移動させ過ぎた場合でも、圧縮コイルスプリング22の付勢力に抗して、ハンド部34、36がロボットハンド10の上方へ移動される。このため、ロボットハンド10を移動させる移動誤差を許容でき、吸着部70、72の耐久性及び耐磨耗性を向上できる。
【0060】
なお、本実施の形態では、スペーサ78、80が磁性体により構成されている。これに替えて、スペーサ78、80を永久磁石により構成してもよい。また、スペーサ78、80を、例えば、円環状に形成された複数のワッシャを重ね合わせて構成してもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、マグネット部74、76が、左右方向に沿って、互いに対向して配置されているが、マグネット部74、76が、左右方向と直交する方向にずれて配置されてもよい。つまり、スペーサ78、80によって、マグネット部74、76が連結される構成にされていればよい。
【0062】
さらに、本実施の形態では、爪部38、40の先端面及びカバー部54、56の先端面から吸着部70、72が突出されている。これに替えて、吸着部70、72を凹部62、64内に配置させて、吸着部70、72を爪部38、40の先端面及びカバー部54、56の先端面から突出されないように配置してもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、第2把持部46、48が、断面V字形の溝状に形成されているが、第2把持部46、48の断面形状はこれに限らない。例えは、第2把持部46、48の断面形状を矩形状や円形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 ロボットハンド
34 ハンド部
36 ハンド部
66 ヨーク
68 ヨーク
70 吸着部
72 吸着部
74 マグネット部
76 マグネット部
78 スペーサ(連結部)
80 スペーサ(連結部)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置されると共に、対向方向において閉位置と開位置との間で移動可能にされ、ワークを把持する一対のハンド部と、
磁性体により形成されると共に、一対の前記ハンド部にそれぞれ設けられ、前記ワークを吸着するヨークと、
永久磁石により構成されると共に、一対の前記ヨークの間において一対の前記ヨークにそれぞれ連結され、互いに対向する磁極が反対になるようにかつ磁極の配列方向を前記対向方向に沿った状態に配置された一対のマグネット部と、
磁性体又は永久磁石により構成されると共に、一対の前記マグネット部の間において一対の前記マグネット部にそれぞれ連結され、前記ハンド部が前記閉位置に移動された際に互いに当接することで一対の前記マグネット部を連結させる一対の連結部と、
を備えたロボットハンド。
【請求項2】
前記連結部は磁性体により構成されたスペーサとされた請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記ヨークは、前記ワークを吸着する吸着部を有し、
前記ハンド部は、非磁性体により形成され、前記吸着部を露出させた状態で前記ヨーク及び前記マグネット部を覆う請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18076(P2013−18076A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152939(P2011−152939)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】