説明

ロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置

【課題】エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減する。
【解決手段】耕耘作業機1は、作業機本体10に回転可能に支持された作業ロータ20の上方を覆うシールドカバー22の後端部にエプロン25が上下方向に回動自在に枢結され、エプロン25の上面と作業機本体10との間に圧縮ばね31を備えたコンプレッションロッド30が設けられ、このコンプレッションロッド30によって作業姿勢にあるエプロン25を押圧する。作業機本体10の側部に設けられた側板フレーム23とエプロン25の側端部との間にガススプリング41を設ける。ガススプリング41は、非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方へ回動させると、エプロン25の上方への回動を補助しながら伸長する。ガススプリング41は、エプロン25が作業姿勢にあるときに、ロッド側の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方を覆うシールドカバーの後端部にエプロンの上端部を上下回動自在に枢支したロータリ作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなロータリ作業機の後部にエプロンを設けたものは、エプロンの前面部分や作業ロータに付着した土を掻き落としたり、作業ロータに設けられた耕耘爪を取り替えたりする場合に、エプロンを跳ね上げた状態に保持しながら、土の掻き落としや耕耘爪の交換が行われるのが一般的であるが、エプロンは重いため、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。またエプロンを跳ね上げた状態に保持するにはコンプレッションロッドに設けられたロック装置を操作してエプロンの回動をロックする作業が必要であるが、この作業も作業者にとってはなはだ煩わしい。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、これらの作業を容易にするエプロン装置(文献では均平板装置)が提案されている。このエプロン装置90は、図7(側面図)に示すように、機枠91の下部に回転自在に設けられた作業ロータ(図示せず)の上方を覆うシールドカバー22の後端部に上下方向に回動自在に取り付けられて後方斜め下方へ延びるエプロン25と、エプロン25の上方に配設された機枠91の後部に上下方向に回動自在に軸支されて後方に延びる保持アーム92と、保持アーム92の後部に前後方向に回動自在に取り付けられた軸受け体93と、上側が軸受け体93に摺動可能に挿通して下端部がエプロン25の後側上面に設けられた取付け枠94の上部に回動自在に軸支された保持杆95と、軸受け体93よりも上側の保持杆95及び軸受け体93よりも下側の保持杆95に巻装されて軸受け体93に対し保持杆95を上下方向に付勢するコイルばね96,96'を備えてなる。
【0004】
このエプロン装置90によれば、非作業時において、エプロン25の前面部分や作業ロータに付着した土を掻き落とす場合には、保持アーム92の後部を上方に向かって回動させながらエプロン25の後下端縁を持ち上げて、エプロン25をシールドカバー22との回動支点Pを中心として上方へ回動させる。そして、保持杆95の長手方向の中心軸線が機枠91に対する保持アーム92の回動支点Rを超えた段階で、エプロン25は前方に付勢され、軸受け体93が機枠91に設けられたストッパ枠97に当接して、エプロン25が上方の非作業位置に保持される。
【0005】
【特許文献1】実開昭55−12324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来のエプロン装置90では、エプロン25を持ち上げ操作するだけで作業姿勢にあるエプロン25を上方の所定の非作業位置に移動させることができるが、作業者が作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げるには、重いエプロン25を一定範囲を回動する段階まで持ち上げる必要があり、作業者にとってこの持ち上げ作業は重労働であることに変わりがなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減することができるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、作業機本体に回転可能に支持された作業ロータ(例えば、実施形態における耕耘ロータ20)の上方をシールドカバーにより覆い、該シールドカバーの後端部にエプロンの上端部を上下回動自在に枢支したロータリ作業機において、作業機本体とエプロンとの間に枢結されて伸縮可能であり、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると該エプロンの上方への回動を補助しながら伸長する伸縮付勢手段(例えば、実施形態におけるガススプリング41)を備えたことを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、作業機本体とエプロンとの間に枢結されて伸縮可能であり、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると該エプロンの上方への回動を補助しながら伸長する伸縮付勢手段を設けることで、非作業時において作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると、伸縮付勢手段が伸長しながらエプロンの上方への回動を補助する。このため、重いエプロンを容易に持ち上げて非作業位置に移動させることができ、エプロン跳ね上げ作業の作業者の労力を軽減することができる。
【0010】
また特徴の一つは、伸縮付勢手段は、エプロンが作業姿勢にあるときに、作業機本体側の回動支点がエプロンの作業機本体に対する回動支点と同軸上又は略同軸上に配置され、非作業時には作業機本体側の回動支点の位置が移動可能であることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、伸縮付勢手段は、エプロンが作業姿勢にあるときに、作業機本体側の回動支点がエプロンの作業機本体に対する回動支点と同軸上又は略同軸上に配置され、非作業時には作業機本体側の回動支点の位置が移動可能であることにより、エプロンが作業姿勢にあるときには作業機本体側の回動支点の位置はエプロンの作業機本体に対する回動支点と同軸上又は略同軸上に常に位置する。このため、伸縮付勢手段はエプロンと一体化されるため、伸縮付勢手段の付勢力によってエプロンの上方への回動が補助されることはない。
【0012】
また特徴の一つは、伸縮付勢手段が、作業機本体側の回動支点が作業機本体に対して上下方向に移動可能に支持され、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると作業機本体側の回動支点がエプロンの作業機本体に対する回動支点よりも下方に移動し、伸長しながらエプロンの上方への回動を補助することを特徴とする。
【0013】
この特徴によれば、伸縮付勢手段の作業機本体側の回動支点が作業機本体に対して上下方向に移動可能に支持され、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると、作業機本体側の回動支点がエプロンの作業機本体に対する回動支点よりも下方に移動し、伸縮付勢手段が伸長しながらエプロンの上方への回動を補助することにより、エプロン跳ね上げ作業を容易に行うことができる。
【0014】
また特徴の一つは、伸縮付勢手段がガススプリングであることを特徴とする。
【0015】
この特徴によれば、伸縮付勢手段をガススプリングにすることで、縮小したガススプリングを作業機本体とエプロンとの間に設けると、伸縮付勢手段は常に伸びようとしてエプロンを付勢する。このため、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると、伸縮付勢手段によってエプロンを上方へ回動させる補助力が作用してエプロン跳ね上げ作業を容易にすることができる。非作業位置に移動したエプロンを作業姿勢に戻すためにエプロンを下方に押し下げると、ガススプリングは徐々に縮小してエプロンが下方に回動して作業姿勢になる。このため、エプロンが急激に下方に回動する事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置によれば、上記特徴を有することによって、エプロンを持ち上げて所定の非作業位置に移動させる際の作業者の労力負担を軽減可能なロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係わるロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。なお、本実施形態は、耕起・砕土用の耕耘作業機を対象として説明する。
【0018】
[第1実施形態]
先ず、エプロン跳ね上げ補助装置を説明する前に、このエプロン跳ね上げ補助装置を装備した耕耘作業機について説明する。耕耘作業機1は、図1(側面図)に示すように、作業機本体10を備える。作業機本体10は、左右方向に延びる本体フレーム11の前部に、図示しない走行機体の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト12とロアーリンク連結部13を設けて、走行機体の後部に昇降可能に装着される。また、本体フレーム11の中央部には走行機体のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して走行機体からの動力が伝達される入力軸14を有した図示しないギアボックスが設けられている。
【0019】
本体フレーム11は、ギアボックスから幅方向両側に延びる主フレーム16を有し、走行機体の前進方向に向かって左側の主フレーム16の端部には、チェーン伝動ケース18が垂設され、右側の主フレーム16の端部には図示しない側部フレームがチェーン伝動ケース18と対向して垂設されている。左側の主フレーム16及びチェーン伝動ケース18内には伝動機構が設けられ、このチェーン伝動ケース18と側部フレームの下端部間に多数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータ20が回転自在に取り付けられている。そして、入力軸14に伝達された動力は、ギアボックスを介して主フレーム16及びチェーン伝動ケース18内の伝動機構に伝達されて、耕耘ロータ20を所定方向に回転させる。
【0020】
耕耘ロータ20の上側はシールドカバー22により覆われ、このシールドカバー22の後側の幅方向両端部には側部カバー23が設けられている。つまり、作業機本体10は、本体フレーム11、トップマスト12、ロアーリンク連結部13、ギアボックス、チェーン伝動ケース18、側部フレーム、耕耘ロータ20、シールドカバー22、側部カバー23等を有して構成されている。
【0021】
シールドカバー22の後端部には、エプロン25の前端部が上下方向に回動可能に枢支されている。エプロン25は後方側へ延びてその先端部が接地して耕土表面を均平にする。エプロン25の上面と主フレーム16との間には、圧縮ばね31が巻装されてエプロン25の作用圧を調整可能なコンプレッションロッド30が設けられ、コンプレッションロッド30には、エプロン25に対してコンプレッションロッド30をロックしてエプロン25の上下回動を規制するロック装置32が設けられている。なお、コンプレッションロッド30の詳細については後述する。
【0022】
シールドカバー22の前方側には、走行機体の後輪幅に合わせて、作業時に耕耘ロータ20による作業深さを一定にしながら圃場に接して走行する一対の接地輪35が設けられている。
【0023】
コンプレッションロッド30は、エプロン25の幅方向に所定間隔を有して複数設けられている。コンプレッションロッド30の前端部は主フレーム16に上下回動可能に枢支され、コンプレッションロッド30の後側はエプロン上面に設けられたブラケット座26に上下回動可能に枢支されたブラケット27に嵌装されている。コンプレッションロッド30には、これに取り付けられた座金33とロック装置27との間に巻装された圧縮ばね31の圧力によりエプロン25の作用圧が調整可能に構成されている。座金33は、コンプレッションロッド30の軸方向に沿って位置変更可能に取り付けられている。
【0024】
チェーン伝動ケース18側の側部カバー23の外側には、エプロン跳ね上げ補助装置40が設けられている。エプロン跳ね上げ補助装置40は、図1及び図2(部分平面図)に示すように、側部カバー23の外側に配設されたガススプリング41と側部カバー23の外側上部に配設された支点ロック装置50を有して構成されている。ガススプリング41は、チェーン伝動ケース18よりも幅方向内側に配設されており、シリンダチューブ42と、シリンダチューブ42内に摺動自在に挿入されたピストンに接続されてシリンダチューブ42の一端から延出するシリンダロッド43とを有してなる。ガススプリング41は、シリンダロッド43に何ら負荷が作用していないときは、所定のガス反力を有して全伸長状態となり、ガススプリング41が縮小する方向にシリンダロッド43に負荷が作用すると、シリンダロッド43の移動量に応じてガス反力が徐々に増大するように構成されている。
【0025】
ガススプリング41のロッド側端部には幅方向に所定間隔を有して対向配置されて長手方向に延びる一対のフランジ部44が設けられ、各フランジ部44には挿通孔が設けられている。この挿通孔に後述するリンク部材51の先端部に取り付けられた回動軸45が挿通されて、ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して上下方向に移動自在に支持される。ガススプリング41のボトム側端部はエプロン25の左側端部に設けられた取付け座28に枢結されている。
【0026】
リンク部材51は、その基端部が側部カバー23の後側上部の外側に上下方向に回動自在に枢結され、リンク部材51の先端側は側部カバー23に沿って延びて先端部に回動軸45を取り付けている。回動軸45は一対のフランジ部44の挿通孔に挿通されてガススプリング41のロッド側端部を回動自在に支持する。このため、回動軸45の中心軸線がガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oになっている。ガススプリング41は、エプロン25が斜め下方に延びて耕耘作業が可能な作業姿勢になると、略全縮状態になるとともに、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置される。このため、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の回動が補助されることはない。
【0027】
このように構成されたエプロン跳ね上げ補助装置40は、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略軸上に保持可能な支点ロック装置50を有している。支点ロック装置50は、側部カバー23の外側上部に突設された移動規制板53と、移動規制板53と協働してリンク部材51の先端部を挟持する支点保持機構部60とを有する。
【0028】
移動規制板53は、側部カバー23の外側であってエプロン25の回動支点Pを通る回動中心軸線Qに近接した位置に設けられて、リンク部材51の先端上部と当接可能である。一方、支点保持機構部60は、基端部が側部カバー23の外側に上下方向に回動自在に取り付けられて先端部がリンク部材51の先端下部と当接するロック板61と、ロック板61の上部に固着されて上方へ延びる把手部62と、ロック板61と側部カバー23との間に取り付けられてロック板61を下方に付勢する引っ張りばね63とを有してなる。
【0029】
ロック板61は、その基端部に突出片61aを有し、この突出片61aが側部カバー23に設けられた係止ピン64に当接すると、ロック板61の先端部と移動規制板53との間にリンク部材51の先端を挟持可能である。そして、ロック板61は引っ張りばね63によって常に下方に付勢されているので、ロック板61は、移動規制板53と協働してリンク部材51の先端を挟持した状態に維持することが可能である。このため、リンク部材51の先端部が挟持されると、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に保持することができる。
【0030】
そして、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oをエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に保持した状態で、把手部62を前側に傾動すると、引っ張りばね63に抗してロック板61が上方へ回動して、ロック板61の先端部がリンク部材51の先端から外れて、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oのロック保持状態を解除することができる。
【0031】
このように構成された耕耘作業機1において、非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げて非作業位置に移動させる場合には、先ず、コンプレッションロッド30に設けられたロック装置32によるロック状態を解除するとともに、コンプレッションロッド30に対して座金33をフリーな状態にする。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40の支持保持機構部60の把手部62を前側に傾動して、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oのロック保持を解除する。そして、エプロン25を上方に持ち上げると、図3(a)(側面図)に示すように、エプロン25は回動支点Pを中心として上方へ回動し、これと同時にガススプリング41のボトム側端部が上方へ移動するとともに、ガススプリング41のロッド側端部がリンク部材51を介して徐々に下方に移動する。またエプロンの上方への回動に伴ってロック装置32がコンプレッションロッド30の前側に移動するとともに、圧縮ばね31及び座金33がコンプレッションロッド30の前側に移動する。そして、ガススプリング41のロッド側端部側の回動支点Oがボトム側の回動支点Rよりも下方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢される。このため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができる。
【0032】
そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、図3(b)(側面図)に示すように、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止する。このとき、ガススプリング41は伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢しようとするため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができる。そして、ロック装置32によってコンプレッションロッド30を固定して、エプロン25をコンプレッションロッド30を介して作業本体部10に固定する。
【0033】
このように、非作業時において作業姿勢にあるエプロン25を上方へ回動させると、ガススプリング41からの力によってエプロン25の上方への回動を補助する。このため、重いエプロン25を軽い負担で跳ね上げて所定の非作業位置Pnに移動させることができ、エプロン跳ね上げ作業の作業者の労力を軽減することができる。
【0034】
一方、非作業位置Pnに移動したエプロン25を作業姿勢に戻す場合には、ロック装置32を操作してエプロン25に対するコンプレッションロッド30のロック状態を解除し、エプロン25を下方に押圧する。エプロン25が下方に押圧されると、エプロン25は回動支点Pを中心として下方に回動する。これと同時にガススプリング41は、ボトム側端部が下方に移動するとともにロッド側端部が上方に移動しながら縮小する。このときガススプリング41は自己の緩衝効果によって徐々に縮小するため、エプロン25の自重が作用しても、エプロン25が速い速度で回動することはなく、エプロン25が急激に下降することはない。
【0035】
そして、エプロン25が作業姿勢に戻ると、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oはエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に移動して、ガススプリング41はエプロン25と一体化される。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40の支持保持機構部60の把手部62を後側に傾動して、リンク部材51の先端部を移動規制板53とロック板61との間で挟持して、ガススプリング41のロッド側端部を保持する。そして、座金33をコンプレッションロッド30の所定位置に移動させて固定する。
【0036】
このように、非作業位置Pnに移動したエプロン25を作業姿勢に戻すためにエプロン25を下方に押し下げても、エプロン25が急激に下降することはない。また、エプロン25が作業姿勢に戻ると、ガススプリング41はエプロン25と一体化するので、ガススプリング41の付勢力によってエプロン25の上方への回動が補助されることはない。
【0037】
なお、前述した実施形態では、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の作業機本体10に対する回動支点Pと同軸上又は略同軸上に配置される場合を示したが、エプロン25が作業姿勢になると、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや上方位置に移動し、又は回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや下方位置に移動するようにしてもよい。
【0038】
回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや上方位置に移動する場合には、エプロン25はガススプリング41によって常に下方向に付勢され、回動支点Oがエプロン25の回動支点Pよりやや下方位置に移動する場合には、エプロン25はガススプリング41によって常に上方向に付勢される。このため、エプロン25が作業姿勢になったときの回動支点Pに対する回動支点Oの位置を選択的に設定可能にすると、圃場条件に応じて、エプロン25を常に下方に付勢する下方付勢状態、エプロン25を常に上方に付勢する上方付勢状態、エプロン25が作業姿勢にあるときは付勢しない中立状態の3態様を使い分けることができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では、前述した第1実施形態との相違点のみを説明し、第1実施形態と同一態様部分については、同一符号を附してその説明を省略する。エプロン跳ね上げ補助装置40'は、図4(側面図)及び図5(平面図)に示すように、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oを、側部フレーム23の外側に設けた案内孔72に沿って移動可能に構成したものである。
【0040】
このエプロン跳ね上げ補助装置40'は、エプロン25に枢結されたガススプリング41と、側部フレーム23に取り付けられて前述した案内孔72を有した案内板70と、ガススプリング41のロッド側端部を所定位置に保持する支点保持部材80とを有してなる。
【0041】
案内板70は、平面視において逆コ字状に形成されて上下方向に延び、幅方向に対向する一対の側板部71を有し、各側板部71には上下方向に延びる円弧状の案内孔72が設けられている。案内板70は内側の側板部71が側部カバー23から外側に所定距離を有した位置に配置されて側部カバー23に固着されている。そして、一対の側板部71間にガススプリング41のロッド側端部の一対のフランジ部44が挿入され、側板部71の案内孔72及びフランジ部44の挿通孔に回動軸73が挿通されて、ガススプリング41のロッド側端部が案内孔72に沿って上下方向に移動可能である。
【0042】
支点保持部材80は、平面視において一対のフランジ部44間に配置されて前後方向に延びた板状部材である。支点保持部材80は前側端部が側部カバー23に上下方向に回動自在に枢結されて後側が上下方向に回動自在であり、前後方向中間部には回動軸73を係止する係止段部81が設けられ、係止段部81から後側には後方側へ延びる把手部82が設けられている。支点保持部材80は、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に移動した状態で後側に傾動すると、係止段部81が回動軸73の下側に当接して回動軸73の下側への移動を規制する。また、案内孔72は、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に位置すると、回動軸73が案内孔72の上端に移動して回動軸73の上方への移動を規制する。
【0043】
このエプロン跳ね上げ補助装置40'は、エプロン25が作業姿勢にあるときには、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略同軸上に位置して、ガススプリング41のロッド側端部に取り付けられた回動軸73が案内孔72と支点保持部材80によって保持される。
【0044】
このように構成されたエプロン跳ね上げ補助装置40'によって、非作業時に作業姿勢にあるエプロン25を上方に持ち上げて非作業位置Pnに移動させる場合には、先ず、コンプレッションロッド30に設けられたロック装置32によるロック状態を解除するとともに、コンプレッションロッド30に対して座金33をフリーな状態にする。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40'の支持保持部材80の把手部82を前側に傾動して、ガススプリング41のロッド側端部のロック状態を解除する。そして、エプロン25を上方に持ち上げると、図6(a)(側面図)に示すように、エプロン25は回動支点Pを中心として上方へ回動し、これと同時にガススプリング41のボトム側端部がエプロン25を介して上方に移動するとともに、ガススプリング41のロッド側端部が案内孔72に沿って下降する。そして、ガススプリング41のロッド側端部の回動支点Oがボトム側の回動支点Pよりも上方に移動して、ガススプリング41の後側が斜め上方に傾き、そして、ガススプリング41が伸長すると、ガススプリング41の付勢力のうちの上方向成分の力によってエプロン25が上方に付勢される。このため、作業者は軽い労力負担でエプロン25を上方へ跳ね上げることができる。
【0045】
そして、エプロン25が所定の非作業位置Pnに移動すると、図6(b)(側面図)に示すように、作業者はエプロン25の持ち上げ作業を停止する。このとき、ガススプリング41はさらに伸長しようとしてエプロン25を上方に付勢するため、作業者は小さな力で楽に非作業位置Pnにエプロン25を維持若しくは停止させることができる。そして、ロック装置32によってコンプレッションロッド30を固定して、エプロン25をコンプレッションロッド30を介して作業本体部10に固定する。
【0046】
このように、非作業時において作業姿勢にあるエプロン25を持ち上げると、ガススプリング41からの力によってエプロン25の上方への回動を補助する。このため、重いエプロン25を軽い負担で跳ね上げて所定の非作業位置Pnに移動させることができ、前述した第1実施形態と同様に、エプロン跳ね上げ作業の作業者の労力を軽減することができる。
【0047】
一方、非作業位置Pnに移動したエプロン25を作業姿勢に戻す場合には、ロック装置32を操作してエプロン25に対するコンプレッションロッド30のロック状態を解除し、エプロン25を下方に押圧する。エプロン25が下方に押圧されると、エプロン25は回動支点Pを中心として下方に回動する。これと同時にガススプリング41のボトム側端部がエプロン25を介して下方に移動するとともに、ロッド側端部が案内孔72に沿って上方に移動し、ガススプリング41は圧縮されて縮小する。このときガススプリング41は自己の緩衝効果によって徐々に縮小するため、ガススプリング41が急激に縮小することはない。
【0048】
そして、エプロン25が作業姿勢に戻ると、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oがエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略軸上に移動する。そして、エプロン跳ね上げ補助装置40'の支持保持部材80の把手部82を後側に傾動すると、係止段部81が回動軸73の下側に当接して回動軸73の下側への移動を規制する。また、回動軸73は案内孔72の上端に当接する。このため、ガススプリング41のロッド側の回動支点Oはエプロン25の回動支点Pと同軸上又は略軸上に保持される。
【0049】
このように、非作業位置に移動したエプロン25を作業姿勢に戻すためにエプロン25を下方に押し下げると、ガススプリング41は徐々に縮小するので、ガススプリング41の縮小によるエプロン25の下降速度を抑えることができる。
【0050】
なお、本実施例では、伸縮付勢手段としてガススプリング41を例にしたが、圧縮ばねを内蔵した伸縮シリンダでもよい。またロータリ作業機の一例として耕起・砕土用の耕耘作業機1を対象としたが、代掻き用の耕耘作業機を対象としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるエプロン跳ね上げ補助装置を搭載した耕耘作業機の側面図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係わるエプロン跳ね上げ補助装置を搭載した耕耘作業機の部分平面図を示す。
【図3】エプロン跳ね上げ補助装置の動作を説明するための耕耘作業機の側面図を示す。
【図4】本発明の第2実施形態に係わるエプロン跳ね上げ補助装置を搭載した耕耘作業機の側面図を示す。
【図5】本発明の第2実施形態に係わるエプロン跳ね上げ補助装置を搭載した耕耘作業機の部分平面図を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係わるエプロン跳ね上げ補助装置の動作を説明するための耕耘作業機の側面図を示す。
【図7】従来のエプロン装置の側面図を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 耕耘作業機(ロータリ作業機)
10 作業機本体
20 耕耘ロータ(作業ロータ)
22 シールドカバー
25 エプロン
40,40' エプロン跳ね上げ補助装置
41 ガススプリング(伸縮付勢手段)
O,P 回動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機本体に回転可能に支持された作業ロータの上方をシールドカバーにより覆い、該シールドカバーの後端部にエプロンの上端部を上下回動自在に枢支したロータリ作業機において、
前記作業機本体と前記エプロンとの間に枢結されて伸縮可能であり、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると該エプロンの上方への回動を補助しながら伸長する伸縮付勢手段を備えたことを特徴とするロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置。
【請求項2】
前記伸縮付勢手段は、前記エプロンが作業姿勢にあるときに、前記作業機本体側の回動支点が前記エプロンの前記作業機本体に対する回動支点と同軸上又は略同軸上に配置され、非作業時には前記作業機本体側の回動支点の位置が移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置。
【請求項3】
前記伸縮付勢手段は、前記作業機本体側の回動支点が前記作業機本体に対して上下方向に移動可能に支持され、非作業時に作業姿勢にあるエプロンを上方へ回動させると前記作業機本体側の回動支点が前記エプロンの前記作業機本体に対する回動支点よりも下方に移動し、伸長しながら前記エプロンの上方への回動を補助することを特徴とする請求項2に記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置。
【請求項4】
前記伸縮付勢手段は、ガススプリングであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のロータリ作業機のエプロン跳ね上げ補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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