説明

ロータリ耕耘機

【課題】 ロータリ耕耘機からトラクタ側へと伝播する振動を吸収する弾性体の振動吸収能力のアップを図ったロータリ耕耘機を提供する。
【解決手段】 ロータリ機枠4に、トラクタに装着された連結装置3に連結される上連結部20と下連結部22とを備え、下連結部22は、ロータリ機枠4に設けられた連結ブラケット21に設けられていると共に連結装置3に左右軸廻りに回動可能に枢支連結されるピンによって構成され、連結ブラケット21は、ロータリ機枠4に固定された第1部材21Aと、下連結部22が設けられた第2部材21Bとを備えていると共に、これら第1部材21Aと第2部材21Bとを、ロータリ機枠4が連結装置3に連結されて作業姿勢とされた状態において前記下連結部22を境にして上下に振り分け状に位置する弾性体43を介して連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を移動しながら該圃場を耕耘する機械として、トラクタの後部に連結装置を介して取り付けられるロータリ耕耘機がある。
このロータリ耕耘機は、ギヤケースの左右両側に左右方向外方に突出状に設けられた左右一対のサポートアームの一方のサポートアームの外端側に伝動ケースの上部を固定すると共に他方サポートアームの外端にサイドフレームが固定されてなるロータリ機枠を備え、このロータリ機枠の伝動ケースとサイドフレームとの下部間には、左右方向の軸心回りに回転駆動される爪軸に多数の耕耘爪を固定してなるロータリ耕耘部が設けられており、耕耘爪が爪軸回りに回転することで圃場が耕耘される。
【0003】
また、ギヤケースの上部にはトップマストが上方突出状に設けられ、このトップマストに連結装置の上被連結部に連結される上連結部が設けられ、左右各サポートアームに連結ブラケットが設けられ、この左右各連結ブラケットに連結装置の下被連結部に連結される下連結部が設けられている。
このロータリ耕耘機にあっては、土壌を耕耘することによって発生する振動が連結装置を介してトラクタ側に伝播し、該振動によってトラクタの運転者が不快感を感じるという問題がある。
【0004】
これを解消するため、ロータリ耕耘部とトラクタとの間に設けられた弾性体により前記振動を吸収し、ロータリ耕耘機からトラクタへと伝播する振動を低減するようにしたロータリ耕耘機がある(特許文献1参照)。
このロータリ耕耘機にあっては、サポートアームに設けられる連結ブラケットを、ロータリ機枠側に固定された第1部材と、下連結部が設けられた第2部材とを弾性体を介して連結して構成し、この弾性体の弾性変形によりロータリ耕耘機からトラクタへと伝播する振動を吸収している。
【0005】
第1部材には取付壁が側方突出状に備えられていると共に、該取付壁の前方側に対向配置された他の取付壁が第2部材に側方突出状に備えられており、一方の取付壁に形成された貫通孔に筒体が挿通状に設けられている。
この筒体は、上下一対設けられていると共に、円筒状に形成された前記弾性体と、該弾性体の外側に同心状に外嵌されて固着された外カラーと、該弾性体の内側に同心状に内嵌されて固着された内カラーとから構成されており、外カラーは一方の取付壁の貫通孔に内嵌されて固着され、内カラーは弾性体から軸心方向両側に突出している。
【0006】
また、内カラーには、他方の取付壁を貫通するボルトが挿通され、該ボルトの先端側にナットを螺合することによって第1部材と第2部材とを連結している。
【特許文献1】特開2002−95305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のロータリ耕耘機にあっては、ロータリ機枠の上部側が連結装置に連結され、ロータリ機枠の下部にロータリ耕耘部が設けられていることから、例えば、耕耘爪が耕耘軌跡の前部側において上から下側に回転するダウンカット耕耘している場合、下連結部には前方に押圧される方向の力が作用し、上連結部には後方に引っ張られる方向の力が作用する(耕耘爪が耕耘軌跡の前部側において下から上側に回転するアップカット耕耘の場合は、この逆である)。
一方、ロータリ耕耘機が連結装置に連結されて作業姿勢とされた状態において、前記上下一対の弾性体は、両方とも下連結部よりも上方に位置しており、前述したダウンカットの場合、上側の弾性体に対して下側の弾性体に大きく負荷が作用し、下側の弾性他が上側の弾性体よりも大きく弾性変形することから、上下の弾性体による振動吸収能力が小さくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記ロータリ耕耘機からトラクタ側へと伝播する振動を吸収する弾性体の振動吸収能力のアップを図ったロータリ耕耘機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、ロータリ機枠に、トラクタに装着された連結装置に連結される上連結部と下連結部とを備え、下連結部は、ロータリ機枠に設けられた連結ブラケットに設けられていると共に前記連結装置に左右軸廻りに回動可能に枢支されるピンによって構成され、前記連結ブラケットは、ロータリ機枠側に固定された第1部材と、前記下連結部が設けられた第2部材とを備えていると共に、これら第1部材と第2部材とを、ロータリ機枠が連結装置に連結されて作業姿勢とされた状態において前記下連結部を境にして上下に振り分け状に位置する弾性体を介して連結してなることを特徴とする。
【0010】
より具体的には、ロータリ機枠はギヤケースの左右両側から左右方向外方に突設された左右一対のサポートアームを備え、連結ブラケットは左右一対設けられていて左右各サポートアームに連結ブラケットの第1部材が固定され、前記弾性体はサポートアームの上下に配置される。
さらに具体的には、第1部材に取付壁が側方突出状に備えられていると共に、該取付壁の前方側に対向配置された他の取付壁が第2部材に側方突出状に備えられ、この前後の取付壁間に前記弾性体が介装されて該弾性体が前後の取付壁に取り付けられている。
【0011】
さらにまた具体的には、弾性体の前後にプレートを固着し、この前後の各プレートに、前後方向で同じ側にある取付壁を貫通するボルトを固着し、各ボルトに螺合されるナットと各プレートとで取付壁を挟持することにより、第1部材と第2部材とが連結される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロータリ機枠が連結装置に連結されて作業姿勢とされた状態において、上下の弾性体が下連結部を境にして上下に振り分け状に位置しているので、例えば、ダウンカット耕耘の場合、上側の弾性体に比べて下側の弾性体が第1部材の下部側によって大きく押圧されるが、第2部材が下連結部回りに回動可能に枢支連結されているので、下側の弾性体が第1部材の下部側によって大きく押圧されると、該下側の弾性体によって第2部材の下部側が押圧され、第2部材が下連結部回りに若干回動して第2部材の上部側で上側の弾性体を押圧することとなり、耕耘時にロータリ機枠側から上下の弾性体に作用する外力が、上下一方の弾性体に大きく作用することなく上下の弾性体に良好に分散され、これによって弾性体の振動吸収能力を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2において、1はトラクタの車体2の後部に連結装置3(オートヒッチ)を介して着脱自在に連結されるロータリ耕耘機である。
このロータリ耕耘機1は、本実施の形態ではサイドドライブ式ロータリが採用されており、該ロータリ耕耘機1は、ロータリ機枠4と、このロータリ機枠4の下部に設けられたロータリ耕耘部5と、このロータリ耕耘部5を覆うロータリカバー6とを備えている。
ロータリ機枠4は、左右方向中央のギヤケース7と、このギヤケース7の左右両側から左右方向外方に突出する左右一対のサポートアーム8と、左側のサポートアーム8の外端側に上部が固定された伝動ケース9と、右側のサポートアーム8の外端側に上部が固定されたサイドフレーム(図示省略)とを備えてなる。
【0014】
前記ロータリ耕耘部5は、伝動ケース9とサイドフレームとの下部間に左右方向の軸心回りに回転自在に支持された爪軸11と、この爪軸11上に取付固定された多数の耕耘爪12とを有し、爪軸11を、左右方向の軸心回りに、図2において符号Aで示す方向に回転駆動することにより、耕耘爪12が爪軸11回りに回転しながら土中に突入して、土が耕起されると共に砕土されて後方に放てきされるように構成されている。
前記ギヤケース9には、トラクタ車体2の後部から後方に突出するPTO軸13にジョイント装置を介して連動連結されるPIC軸14が設けられ、図3に示すように、PTO軸13からPIC軸14に伝達された動力はギヤケース9内の伝動機構15に伝達され、このギヤケース9に入力された動力は左側のサポートアーム8内に設けられた伝動軸16から伝動ケース9内の伝動機構を経て爪軸13に伝達され、該動力により該爪軸13が矢示A方向に回転駆動されてダウンカット耕耘される。
【0015】
なお、ロータリ耕耘機1としては、センタードライブ式ロータリであってもよく、また、耕耘方法としては、爪軸11が矢示A方向とは逆に回転するアップカット耕耘であってもよい。
前記ギヤケース9にはトップマスト18が上方突出状に設けられていると共に、このトップマスト18の前側上部に、左右方向に配置されたピンによって構成された上連結部20が固定されている。
前記左右各サポートアーム8には連結ブラケット21が固定され、この左右各連結ブラケット21の前端側には、左右方向外方に突出状に設けられたピンによって構成された下連結部22が設けられている。
【0016】
一方、前記連結装置3は、上部のトップリンク23と、下部の左右一対のロワーリンク24と、これらトップリンク23と左右ロワーリンク24との後端側(ロータリ耕耘機1側)に連結されていてこれらトップリンク23及び左右ロワーリンク24に定形を与えるヒッチフレーム25とを有する。
なお、本実施の形態では、3点ヒッチ式のオートヒッチによって構成された連結装置3を例示したが、2点ヒッチ式のオートヒッチによって構成された連結装置を採用してもよい。
【0017】
トップリンク23の前端側(トラクタ2側)取付部23aは、トラクタ車体2の後部の背面上部に設けられたトップリンクブラケット26に枢支連結され、左右ロワーリンク24の前端側(トラクタ2側)取付部24aは、トラクタ車体2後部の左右方向で同じ側の側部下部に枢支連結されている。
ヒッチフレーム25は、図5にも示すように、角パイプ材を正面視山形状に折曲して形成されたメインフレーム27と、このメインフレーム27の頂部に設けられた上部材28と、メインフレーム27の左右両側下部に設けられた下部材29とを備えてなる(図10参照)。
【0018】
上部材28の前部側にはトップリンク23の後端側(ロータリ耕耘機1側)取付部23bが枢支連結されていると共に、該上部材28の後部側には前記上連結部20に下側から係合(嵌合)可能な上方に開放状の凹部からなる上被連結部30が形成されている。
左右各下部材29の前部側には、左右方向で同じ側にあるロワーリンク24の後端側(ロータリ耕耘機1側)取付部24bが枢支連結されていると共に、該下部材29の後部側には左右方向で同じ側にある前記下連結部22が後方から係合(嵌合)可能な後方開放状の凹部からなる下係合部31が形成されている。
【0019】
また、左右各下部材29には、下連結部22が下係合部31に係合した状態で下連結部22の下係合部31からの離反を阻止する係止部材32が設けられており、この係止部材32と下係合部31とで下連結部22を左右方向の軸心回りに回動可能に枢支連結する下被連結部19が構成されている。
この左右の係止部材32は、前後方向中途部が支軸33によって下係合部31に左右方向の軸心回りに回動自在に枢支され、後部側に下連結部22に下側から係合可能なフック部34が形成されていると共に、該係止部材32は下連結部22に係合する方向(図5の反時計回り)に図示省略の捩りコイルバネ等のバネによって付勢されており、下連結部22が後方から近接してフック部34に接当してこれを押圧すると係止部材32が前記バネの付勢力に抗して下側に逃げて下連結部22の下係合部31への係合を許容し、下連結部22が下係合部31に係合するとバネの付勢力によって復帰して、下連結部22の下係合部31からの離反を阻止するように構成されている。
【0020】
また、左右の各係止部材32の前端側には解除リンク35の下端側が枢支連結され、この解除リンク35の上端側は、メインフレーム27の上部側に左右方向の枢軸36回りに回動自在に枢支された回動アーム37の上部側に枢支連結されており、この回動アーム37の上端側には解除レバー38が固定されていて、解除レバー38を下側に揺動操作させると、回動アーム37が後方側に回動して解除リンク35を介して係止部材32の前部側が引き上げられて、該係止部材32のフック部34が下方に引き下げられ、これによって、下連結部22の下係合部31からの離反が許容されるように構成されている。
【0021】
また、解除リンク35を回動アーム37を支持する枢軸36の軸心よりも後方側に位置させると、係止部材32のフック部34が引き下げられた位置に係止部材32が保持されるように構成されている。
また、トラクタ車体2の後端側上方には左右一対のリフトアーム40が配置され、左右各リフトアーム40の基部側(前部側)は、トラクタ車体2の後部上面に立設されたブラケット39に左右方向の軸心回りに回動自在に支持され、左右各リフトアーム40の先端側(後端側)は、リフトロッド41を介して左右方向で同じ側にあるロワーリンク24の前後方向中途部に連結されている。
【0022】
トラクタ車体2の背面側には、左右の各リフトアーム40を上下に揺動させる昇降シリンダ42が設けられ、この昇降シリンダ42は、単動形油圧シリンダによって構成されており、該昇降シリンダ42に圧油を供給すると左右のリフトアーム40が上方に揺動して左右のリフトロッド41が引き上げられ、これによって左右のロワーリンク24,ヒッチフレーム25及びトップリンク23が上方に揺動して連結装置3に連結されたロータリ耕耘機1が上昇するように構成されている。
また、昇降シリンダ42から圧油が抜かれると、左右のリフトアーム40が下方に揺動して左右のリフトロッド41が下方移動し、これによって左右のロワーリンク24,ヒッチフレーム25及びトップリンク23が下方に揺動して連結装置3に連結されたロータリ耕耘機1が自重で下降するように構成されている。
【0023】
前記構成の連結装置3にロータリ耕耘機1を連結する場合、ロータリ耕耘機1を、図2に示す作業姿勢に対して前下がりとなる待機姿勢に保持した状態において、連結装置3の上被連結部30がロータリ耕耘機1側の上連結部20の下方に位置するようにトラクタ2をバックさせ、上被連結部30が上連結部20の下方に位置した状態でロワーリンク24及びヒッチフレーム25等を上昇させて上被連結部30によって上連結部20を下からすくい上げると、ロータリ耕耘機1が連結装置3(トラクタ2)に近づくように上連結部20回りに回動してロータリ耕耘機1側の下連結部22が連結装置3の下係合部31に係合すると共に下連結部22が係止部材32によって抜止めされ、これによって下連結部22がヒッチフレーム25の下被連結部19に左右方向の軸心回りに回動可能に枢支連結され、これによってロータリ耕耘機1が連結装置3に自動連結される。
【0024】
なお、このときPTO軸13とPIC軸14とを連動連結するジョイント装置の後端側も同時にPIC軸14に接続される。
また、連結装置3からロータリ耕耘機1を取り外す場合は、連結装置3の解除レバー38を引き下げて、係止部材32をそのフック部34が下連結部22から下側に外れた状態に保持しておき、この状態でロワーリンク24及びヒッチフレーム25を下降させることによりロータリ耕耘機1が連結装置3から取り外される。
図3に示すように、前記左右の各サポートアーム8は、2分割されており、ギヤケース7から一体的に突設された左右方向の軸心を有する円筒体によって構成された内方部材8Aと、左右方向の軸心を有する円筒体によって構成されていて前記内方部材8Aの左右方向外方側に同心状に配置された外方部材8Bとから構成されている。
【0025】
前記左右の各連結ブラケット21は、図1及び図4に示すように、サポートアーム8に固定された(ロータリ機枠4側に固定された)第1部材21Aと、前記下連結部22が設けられた第2部材21Bと、これら第1部材21Aと第2部材21Bとを弾性体43を介して連結する連結手段44とを備えている。
第1部材21Aは板材からなり、本体部46と取付壁47とから主構成されている。
この第1部材21Aの本体部46は、板厚方向を左右方向に一致させてサポートアーム8の内方部材8Aと外方部材8Bとの間に配置され、左右方向内側の面をサポートアーム8の内方部材8Aの左右方向外方側の端部に固着し、左右方向外方側の面にサポートアーム8の外方部材8Bの左右方向内方側の端部を固着することにより第1部材21Aがサポートアーム8に固着されていると共に、この第1部材21Aの本体部46を介してサポートアーム8の内方部材8Aと外方部材8Bとが連結されている。
【0026】
この第1部材21Aには、サポートアーム8の内方部材8Aと外方部材8Bとを連通させる連通孔48が形成されている。
第1部材21Aの本体部46の上部46Aはサポートアーム8の後部側から上方に延出状とされ、該本体部46の下部46Bはサポートアーム8の後部側から下方に延出状とされている。
この第1部材21Aの本体部46の上部46A及び下部46Bの、左右方向外方側の面の前端側に、前記取付壁47(これを後側取付壁という)が左右方向外方に突出状で且つ板面が前後を向くように設けられている。
【0027】
また、上下の後側取付壁47はサポートアーム8の外方部材8Bの上下に配置されている。
第2部材21Bは板材からなり、本体部49と取付壁50とから主構成されている。
この第2部材21Bの本体部49は、板厚方向を左右方向に一致させて第1部材21Aの本体部49の前方側に間隔をおいて配置され、該本体部49の上部49A及び下部49Bの、左右方向外方側の面の後端側に、前記取付壁50(これを前側取付壁という)が左右方向外方に突出状で且つ板面が前後を向くように設けられている。
【0028】
この上下の前側取付壁50は、上下方向で同じ側にある後側取付壁47に前後方向に関して間隔をおいて対向配置されている。
また、第2部材21Bの本体部49には、上下の前側取付壁50を補強する補強板が固着されている。
連結手段44は、ゴム様弾性部材を円柱状に形成してなる弾性体43と、この弾性体43の軸心方向両側に固着されたプレート52と、各プレート52に固着されたボルト53と、各ボルト53に螺合されるナット54とを備えてなる。
【0029】
各ボルト53は各プレート52に対して直交状で且つ弾性体43と同心状に設けられている。
この連結手段44は、上側の前側取付壁50と後側取付壁47との間、及び、下側の前側取付壁50と後側取付壁47との間に、それぞれ左右一対ずつ設けられている。
また、連結手段44は、弾性体43が前側取付壁50と後側取付壁47との間に軸心が各取付壁47,50に直交するように位置し、且つ前側のプレート52が前側取付壁50に接当すると共に後側のプレート52が後側取付壁47に接当するように配置されている。
【0030】
また、前側のプレート52に固着されたボルト53が前側取付壁50に形成したボルト挿通孔55を挿通し、後側のプレート52に固着されたボルト53が後側取付壁47に形成したボルト挿通孔55を挿通し、各ボルト53に螺合されるナット54とプレート52とで各取付壁47,50が挟持されることにより第1部材21Aと第2部材21Bとが連結されており、耕耘時にロータリ耕耘部5で生じた振動が弾性体43の弾性変形により吸収され、これによってロータリ耕耘部5で生じた振動がトラクタ側に伝播するのを防止している。
【0031】
また、前記弾性体43は、ロータリ耕耘機1(ロータリ機枠4)が連結装置3に連結されて作業姿勢とされた状態において前記下連結部22を境にして上下に振り分け状に位置している。
これにより、例えば、ダウンカット耕耘の場合、上側の弾性体43に比べて下側の弾性体43が下側の後側取付壁47によって大きく押圧されるが、第2部材21Bが下被連結部19に下連結部22回りに回動可能に枢支連結されているので、この下側の弾性体43が下側の後側取付壁47によって大きく押圧されると、該下側の弾性体43によって下側の前側取付壁50が押圧されて、第2部材21Bが下連結部22回りに若干回動して上側の前側取付壁50で上側の弾性体43を押圧することとなり、耕耘時にロータリ機枠4側から上下の弾性体43に作用する外力が、上下一方の弾性体43に大きく作用することなく上下の弾性体43に良好に分散され、これによって弾性体43の振動吸収能力を十分に発揮させることができる。
【0032】
前記実施の形態にあっては、第1部材21Aに対する第2部材21Bの過度の相対移動を規制する(弾性体43の過度の弾性変形を規制する)規制手段57を備えている。
この規制手段57は、第1部材21Aに設けられた規制部材58と、第2部材21Bに設けられた被規制部材59とから主構成されている。
規制部材58は、第1部材21Aの本体部46の上部46A及び下部46Bの左右方向内方側の面に設けられていて、該本体部46の左右方向内方側の面から左右方向外方側に延出する上下壁部58A,58Bと、この上下壁部58A,58Bの左右方向内方側の端部同志を連結する連結壁58Cとからコ字形に形成されていて、前後に開放状とされている。
【0033】
被規制部材59は、前部が第2部材21Bの本体部49の上部49A及び下部49Bの左右方向内方側の面に固着され、後部が規制部材58の上下壁部58A,58B間を前後移動可能(弾性体43の軸心方向に移動可能)に挿通している。
また、被規制部材59と規制部材58の上下壁部58A,58Bとの間には若干の隙間が設けられていて、第1部材21Aに対する第2部材21Bの大きな傾きや、第1部材21Aに対する第2部材21Bの上下方向の大きな相対移動が規制される。
また、被規制部材59と規制部材58の連結壁58Cとの間にも若干の隙間が設けられている。
【0034】
図6は他の実施形態を示しており、この実施形態にあっては、第1部材21Aの本体部46の上下部が取付壁部61とされ、第2部材21Bの上下部が被取付壁部63とされ、取付壁部61に被取付壁部63が弾性体43を介して連結手段64によって取り付けられている。
取付壁部61と被取付壁部63とは、左右方向において間隔をおいて対向状に配置されている。
取付壁部61にはボルト挿通孔65が板厚方向に貫通形成され、被取付壁63には装着孔66がボルト挿通孔65と同心状に板厚方向貫通状に形成されている。
【0035】
連結手段64は、円筒状に形成された前記弾性体43と、該弾性体43の外側に同心状に外嵌されて固着された外カラー67と、該弾性体43の内側に同心状に内嵌されて固着された内カラー68と、ボルト69及びナット70とから主構成されている。
外カラー67は装着孔66に内嵌されて該装着孔66の内面に固着され、内カラー68は弾性体43から軸心方向両側に突出しており、軸心方向一端側が取付壁部61に接当している。
ボルト69は内カラー68の軸心方向他端側に接当する座金71,内カラー68及びボルト挿通孔65を挿通しており、ボルト69の先端側にナット70を螺合させて締め込むことにより、第1部材21Aと第2部材21Bとが弾性体43を介して連結されている。
【0036】
この実施形態にあっても、これら第1部材21Aと第2部材21Bとが、ロータリ機枠4が連結装置3に連結されて作業姿勢とされた状態において前記下連結部22を境にして上下に振り分け状に位置する弾性体43を介して連結されており、その作用効果は前述した実施形態と同様である。
その他の構成は前記実施の形態と同様に構成される。
図7及び図8は、連結装置3のトップリンク23及び左右各ロワーリンク24に、ロータリ耕耘機1側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体43を設けた例を示している。
【0037】
図7及び図8に示すものにあっては、前記トップリンク23及び左右各ロワーリンク24は前後の構成体23A,23B,24A,24Bに分割され、前構成体23A,24Aの後端側に前側取付壁72,73が設けられ、後構成体74,75の前端側に前側取付壁72,73に対して間隔をおいて対向配置された後側取付壁74,75が設けられ、これら前後の取付壁72,73,74,75を図1に示す連結手段44と同様の構造の連結手段44によって連結してなる。
この図7及び図8に示すものにおいて、前記実施形態と同様の構成部分は同様の符号を付して説明を省略する。
【0038】
また、この図7及び図8に示すトップリンク23を、前記図1〜図6に示す実施形態の連結装置3に採用して、上連結部20からトラクタ側に伝播する振動を、トップリンク23に設けた弾性体43によって吸収するようにしてもよい。
図9〜図11は、連結装置3のヒッチフレーム25に、ロータリ耕耘機1側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体43を設けた例を示している。
この図9〜図11に示すヒッチフレーム25にあっては、ヒッチフレーム25の上部材28及び下部材29を2部材に分割すると共に、これら2部材を弾性体43を介して連結している。
【0039】
上部材28は、メインフレーム27の頂部に固着された第1部材28Aと、トップリンク23の後端側の取付部23bが連結される第2部材28Bとから構成されている。
第1部材28Aには上被連結部30が設けられ、第2部材28Bは板材からなり、第1部材28Aの左右両側に配置されている。
この第1部材28Aと第2部材28Bとを連結する連結手段76は、前後一対設けられ、円筒状に形成された弾性体43と、該弾性体43の外側に同心状に外嵌されて固着された外カラー77と、該弾性体43の内側に同心状に内嵌されて固着された内カラー78と、ボルト79及びナット80とから主構成されている。
【0040】
外カラー77は第1部材28Aに形成された装着孔81に内嵌されて該装着孔81の内面に固着され、内カラー78は弾性体43から軸心方向両側に突出しており、軸心方向両端側が第2部材28Bに接当している。
ボルト79は、第2部材28Bに形成されたボルト挿通孔82及び内カラー78を挿通しており、ボルト79の先端側にナット80を螺合させて締め込むことにより、第1部材28Aと第2部材28Bとが弾性体43を介して連結されている。
左右の各下部材29は、メインフレーム27の下端側に固着された第1部材29Aと、下係合部31が設けられた第2部材29Bとから構成されている。
【0041】
第1部材29Aには、ロワーリンク24の後端側の取付部24bを枢支連結する連結ピン83が左右方向外方に突出状に設けられ、第2部材29Bには、係止部材32が枢支されている。
この第1部材29Aと第2部材29Bとを連結する連結手段84は、前後一対設けられ、円筒状に形成された弾性体43と、該弾性体43の外側に同心状に外嵌されて固着された外カラー85と、該弾性体43の内側に同心状に内嵌されて固着された内カラー86と、ボルト87及びナット88とから主構成されている。
【0042】
外カラー85は第2部材29Bに形成された装着孔89に内嵌されて該装着孔89の内面に固着され、内カラー86は弾性体43から軸心方向両側に突出しており、該内カラー86の軸心方向一端側が第1部材29Aに接当しており、内カラー86の軸心方向他端側は第2部材29Bに形成された挿通孔90を挿通している。
ボルト87は、第1部材29Aに形成されたボルト挿通孔91及び内カラー86を挿通しており、ボルト87の先端側にナット88を螺合させて締め込むことにより、第1部材29Aと第2部材29Bとが弾性体43を介して連結されている。
【0043】
前記第2部材29Bに形成された挿通孔90は弾性体43が変形することによる第2部材29Bの動きを妨げない大きさに形成されている。
この図9〜図11に示すものにおいて、前記実施形態と同様の構成部分は同様の符号を付して説明を省略する。
前述したようにトップリンク23及びロワーリンク24からなる三点リンク、又はヒッチフレーム25に弾性体43を設けることにより、装着する作業機が弾性体43をもたないものであっても防振効果があるという利点がある。
【0044】
図12は、ロータリ耕耘機1側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体43として、コイルバネ43を使用した例を示している。
この図12に示すものにあっては、連結ブラケット21の第2部材21Bの上部後部側に設けられた枢支連結部92が、第1部材21Aの上部側に設けられた支持部93に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
また、第1部材21Aの前上部には接当部94が設けられ、第2部材21Bには、前記接当部94の下側に位置していて該接当部94に接当する被接当部95が設けられている。
【0045】
前記コイルバネ43は、第2部材21Bの、前記接当部94の上方側に対向状に設けられたバネ受け部96と接当部94との間に圧縮状に介装されている。
この図12に示すものにあっては、ロータリ耕耘しない通常の場合は、図12(a)に示すように、接当部94が被接当部95に接当している。
ダウンカット耕耘して負荷が発生している場合は、図12(b)に示すように、ロータリ耕耘部5のダウンカット耕耘によってロータリ機枠4の下部に前方移動させるような力が作用して、接当部94がコイルバネの付勢力に抗して被接当部95から上方側に若干離反する。
【0046】
そして、ロータリ耕耘部5によって発生した振動は、コイルバネ43の伸縮動作によって吸収される。
この図12に示すものにあっては、弾性体43としてコイルバネを使用することにより、経年変化によってゴムのように劣化することがないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】連結ブラケットの側面図である。
【図2】トラクタ車体の後部に連結装置を介してロータリ耕耘機が装着された状態を示す側面図である。
【図3】ロータリ機枠の中央側の平面断面図である。
【図4】連結ブラケット等の平面一部断面図である。
【図5】ロータリ耕耘機が連結される際の状態を示す側面図である。
【図6】(a)は他の実施形態に係る連結ブラケットの側面図、(b)はB−B線矢示断面である。
【図7】トップリンク及びロワーリンクに、ロータリ耕耘機側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体を設けた例を示す側面図である。
【図8】(a)はトップリンクの平面断面図、(b)はロワーリンクの平面一部断面図である。
【図9】ヒッチフレームに、ロータリ耕耘機側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体を設けた例を示す側面図である。
【図10】ヒッチフレームに、ロータリ耕耘機側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体を設けた例を示す背面図である。
【図11】(a)は上部材に弾性体を設けた例を示す背面断面図、(b)は下部材に弾性体を設けた例を示す背面断面図である。
【図12】ロータリ耕耘機側からトラクタ側に伝播する振動を吸収する弾性体としてコイルバネを使用した例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
3 連結装置
4 ロータリ機枠
7 ギヤケース
8 サポートアーム
21 連結ブラケット
21A 第1部材
21B 第2部材
20 上連結部
22 下連結部
37 出力ポート
43 弾性体
47 取付壁
50 取付壁
52 プレート
53 ボルト
54 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ機枠(4)に、トラクタに装着された連結装置(3)に連結される上連結部(20)と下連結部(22)とを備え、下連結部(22)は、ロータリ機枠(4)に設けられた連結ブラケット(21)に設けられていると共に前記連結装置(3)に左右軸廻りに回動可能に枢支連結されるピンによって構成され、前記連結ブラケット(21)は、ロータリ機枠(4)に固定された第1部材(21A)と、前記下連結部(22)が設けられた第2部材(21B)とを備えていると共に、これら第1部材(21A)と第2部材(21B)とを、ロータリ機枠(4)が連結装置(3)に連結されて作業姿勢とされた状態において前記下連結部(22)を境にして上下に振り分け状に位置する弾性体(43)を介して連結してなることを特徴とするロータリ耕耘機。
【請求項2】
ロータリ機枠(4)はギヤケース(7)の左右両側から左右方向外方に突設された左右一対のサポートアーム(8)を備え、連結ブラケット(21)は左右一対設けられていて左右各サポートアーム(8)に連結ブラケット(21)の第1部材(21A)が固定され、前記弾性体(43)はサポートアーム(8)の上下に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘機。
【請求項3】
第1部材(21A)に取付壁(47)が側方突出状に備えられていると共に、該取付壁(47)の前方側に対向配置された他の取付壁(50)が第2部材(21B)に側方突出状に備えられ、この前後の取付壁(50,47)間に前記弾性体(43)が介装されて該弾性体(43)が前後の取付壁(50,47)に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリ耕耘機。
【請求項4】
弾性体(43)の前後にプレート(52)を固着し、この前後の各プレート(52)に、前後方向で同じ側にある取付壁(47,50)を貫通するボルト(53)を固着し、各ボルト(53)に螺合されるナット(54)と各プレート(52)とで取付壁(47,50)を挟持することにより、第1部材(21A)と第2部材(21B)とが連結されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリ耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−312743(P2007−312743A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148773(P2006−148773)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】