説明

ローラ式の固液分離装置

【課題】 ローラ内に内部ドラムを配設して、その内部ドラムとスクリーン内側との間で液状物の流路を形成させて、液状物の排出をスムーズに行い、排出流速を上げて溜まった空気や泡の排出効率を高めるとともに、循環洗浄時は洗剤の流速を高めて洗浄効率を上げる。
【解決手段】 ローラR1,R2内周に沿うように内部ドラムRdが配され、スクリーンで分離した液状物をスクリーンRsと内部ドラムRdとで形成される流路Rcに沿って流して出口11に集めて排出する。また前記内部ドラムRdの前方ないしは外周に出口側に向かってローラR1,R2内の液状物を送り込み、送液するためのパドル(羽根)10を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の孔が外周に形成されたスクリーンを有するローラを備え、固液混合物から固形物と液状物を多数の孔を介して分離するローラ式の固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆腐製造や油揚げ製造や豆乳飲料の製造の際に、大豆を一晩水に浸した後、水を加えながらすり砕いて得られた大豆スラリー(いわゆる「生呉」)を煮沸して得られたような固液混合物(いわゆる「煮呉」。以下、本明細書中において「ゴ液」とも言う。)、すなわち固形物と液状物が混合した固液混合物から液体を濾過し、圧搾・脱水して分離する固液混合物の分離装置が知られている。
【0003】
固液混合物の分離装置としては、多数の孔が形成された筒状のスクリーンと、スクリーンの内部において螺旋スクリューを回転駆動させるスクリュー方式があり、これと自然濾過を行う多数の孔が形成された筒状のスクリーン(濾過用スクリーン)と組み合わせて多段階方式を採用するものがある(例えば特許文献1や2等)。一方、軸方向を平行にして対向する左右一対のローラ間に固液混合物を供給するローラ方式のものがある。一対のローラでは一度しか絞ることができないとして、特許文献3では、内部が空洞の一対のローラでその上方から供給される固液混合物(ゴ液)を圧搾して(一次絞り)、次に受け入れ量よりも排出量を小さくするように形成した絞り通路が連通されている滞留部に受け入れられて、ローラ下面と滞留部でオカラを圧搾する(二次絞り)。特許文献3の実施例では、図12に示すように、一対のローラ1,1と、ローラに付着する固形物を掻き取るスクレーパ4,4と、ローラ1,1の対向中心部17から両スクレーパ4,4に至るまでの対向下側面部分16a,16aとで囲まれるようにオカラ(固形物)の滞留部5が形成され、この滞留部5には、滞留したオカラに圧搾圧力を与えるように、受け入れ量よりも排出量を小さくするように通路を絞って形成した絞り通路50が形成されている。なお、絞り通路50の排出口51には、排出口51を閉鎖する方向にバネ52によって付勢した蓋体53が設けられ、この蓋体53により、滞留部5の内圧に応じて排出口51の開口面積を加減可能に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3417794号公報
【特許文献2】特許第3392322号公報
【特許文献3】特許第3537377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のローラ式の固液分離装置のローラは、内部が空洞で、空気が抜けにくい構造であることから、スクリーンに液状物の圧力(荷重)が十分にかからず(スクリーンに無理な荷重がかかる)、供給量を増加させて圧力(荷重)を強くかけると、微細な固形物もスクリーンを通過したり、また、泡が溜まった状態で内部に泡が発生したりする問題を有していた。これをゴ液(生呉、煮呉)から豆乳とオカラとに分離(濾過、脱水と圧搾)を行う例で説明すると、ローラ内部が空洞であると、スクリーンに豆乳の荷重が十分にかからず、供給量を増加させて荷重を強くかけると、残滓(ミジン)もスクリーンを通過したり、また、泡が溜まった状態で内部に泡が発生したり、スクリーンに湯葉が張り詰まらせたりする問題を有していた。普通のゴ液等では微細な泡が常に混在しており、スクリーンの内部には常に空気溜まりがある状態になる。さらに、スクリーンに残滓(ミジン)や湯葉が付着しても、これを除去する手段がないという問題も有していた。
【0006】
また、特許文献3の図1に記載される供給口30の形態から推察できるように左右一対のローラで、主として上方側からの固液混合物の自重によって供給量を調整するものでは、供給口内の固液混合物レベルや濃さ・粘りに影響を受けてその供給量の調整が難しいのみならず、液中濾過を行うことが難しいと推察できる。すなわち、ゴ液(生呉、煮呉)から豆乳とオカラとに分離するに際しては、空気の滞留を抑制することが望まれるが、一定以下に空気の滞留を抑制することは出来なかった。当然ながら、消泡剤を使わない無消泡剤製法には適用できなかった。また従来は簡単に分解洗浄できない構造で食品機械としての要件を満たしていない上に、洗浄液量も多く、洗浄効率も悪く、洗浄液や残さが多量に内部に滞留しやすい問題もあった。
【0007】
そこで本発明の目的は、ローラ内に内部ドラムを配設して、その内部ドラムとスクリーン内側との間で液状物の流路を形成させて、液状物の排出をスムーズに行い、排出流速を上げて溜まった空気や泡の排出効率を高めるとともに、循環洗浄時は洗剤の流速を高めて洗浄効率を上げるローラ式の固液分離装置を提供することにある。そしてスクリーンに対して均衡な圧力による濾過ができるとともに、空気の滞留やそれによる泡の再発生が抑制された液状物を抽出することができるローラ式の固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載のローラ式の固液分離装置は、多数の孔が外周に形成されたスクリーンを有するローラをケーシング内に備え、ローラの外側にある固液混合物から多数の孔を介して固形物を分離し、液状物を内側に濾過するローラ式の固液分離装置において、ローラ内周に沿うように内部ドラムが配され、スクリーンで分離した液状物をスクリーンと内部ドラムとで形成される流路に沿って流して出口に集めて排出することを特徴とする。
本発明によれば、ローラの外側から固液混合物を供給手段(ポンプ、供給口のホッパーレベルが制御された自重供給等)によってスクリーンに対して一定で適度な圧力をかけると、均衡のとれた圧力がスクリーン表面側にかかり、スクリーンと孔のない内部ドラムとの間の狭い流路にも弱めの適度な内圧が生じて、液状物が安定して勢いよく流れるので、スクリーンを通過した液状物とともに溜まった空気がこの流路に沿ってより速い流速で常時押し流されるようになり、出口に集められ排出される。またスクリーン内側は常に液状物が速く流れているので、空気混在の固液混合物であっても、空気溜まりが出来得ない。このように、本発明ではローラ内部に残留する液状物や残さ・洗剤を少なくするとともに、ローラ内部の空気を常時安定して押し出し、溜まりにくくなり、従来の空気溜まりによる諸問題を防止できる。
なお、前記ローラと、スクリーンを有しないローラないしは固定板とからなるローラ式固液分離装置であってもよい。
【0009】
本発明の請求項2記載のローラ式の固液分離装置は、前記ローラの後方側にローラ軸が配され、このローラ軸に沿って前記内部ドラムが配され、前記ローラの前方側には前記スクリーンで分離した液状物を排出する出口が前記ローラ軸に対向する位置に設けられていることを特徴とする。ここで、ローラ軸に対して内部ドラムやローラやケーシングや出口を有する前蓋が組み立てられるとともに分解ができる構成が好ましい。
本発明によれば、ローラ軸を駆動手段で回転させると、内部ドラムがローラとともに回転して、スクリーンで分離された液状物は、断面コ字状の流路に沿って流れ、前方側の出口に向かって集められて、出口からスムーズに排出される。特にローラ内の出口側(端面;円柱の底面)ではスクリーンから濾過した液状物が中心に向かって合流して、一層流速が高まるので、前記のように、混在したり、溜まったりした空気も共にスムーズに排出されるようになる。また、洗浄の際には、ケーシングの蓋(前蓋)を開いて、ローラを着脱することが容易になる。スクリーンの状態の点検は本絞り装置の重要管理項目であり、本発明によって誰でも容易に分解洗浄と目視確認ができる機械を提供でき、食品機械としての要件を満足させることができる。
【0010】
本発明の請求項3記載のローラ式の固液分離装置は、前記内部ドラムの前方の出口側にパドルが装着されていることを特徴とする。パドルは、液状物を出口側に向かってローラ内の液状物を送り込むためや、掬い上げるたりするために装着されている。
また、本発明の請求項4記載のローラ式の固液分離装置は、前記内部ドラムの側面外周ないしは底面上に、ローラ内の液状物を掬い上げたり、前方の出口へ送り込むための突起、溝、又は凹凸状の送り羽根が形成されていることを特徴とする。これらの送り羽根(内部ドラムないしはローラ内側に設けられた突起、溝、又は凹凸状の構造)螺旋状羽根、捻り形状)がローラ内の出口側、すなわち前記内部ドラムの先端側に向かって螺旋状(ないしは1条螺旋〜複数条螺旋形状や捻り形状、スクリュウ形状)に形成されることが好ましい。内部ドラム先端面(端面;円柱の底面)においては円周側から円の中心に向かって液状物を掬い集めたり、前方の出口へ送り出すために形成されていることが好ましい。
これら本発明によれば、前記パドルがローラ内の底部に残存する豆乳を掬い上げたり、前方の出口へ送り込んで出口から排出させることができる。また前記のように液状物とともに空気(泡)の排出効率も一層よくなる。
【0011】
本発明の請求項5記載のローラ式の固液分離装置は、前記ローラは2個以上が一つのケーシング内に配され、それぞれのローラで分離抽出された液状物は、最も高いローラの上端位置以上に高い位置にて排出させ、すべてのローラを固液混合物で満たした状態にして濾過、脱水、圧搾を行うことを特徴とする。なお、前記ローラは第1のローラと第2のローラとが水平姿勢で上下に配するものでも(図1)、水平姿勢で左右の水平に配されても、垂直姿勢で配されても(図11)、又、複数が斜めやジグザグ状に配されるものでも良い(図7(a)(b)(c)参照)。
本発明によれば、前記各ローラを固液混合物で満たした状態にして濾過、脱水、圧搾を行う、液中分離が可能になる。
【0012】
本発明の請求項6記載のローラ式の固液分離装置は、前記固液混合物が豆腐や油揚や豆乳飲料等の製造工程におけるゴ液(生呉、煮呉)であり、前記固形物がオカラであり、前記液状物が豆乳であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、固液混合物から液状物と固形物とに分離する際、例えば、ゴ液(生呉、煮呉)から豆乳とオカラとに分離(脱水と圧搾)を行うときに生じる泡の発生が抑制された液状物(豆乳)を抽出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ローラ内周に沿うように内部ドラムが配されていることから、ローラ内部の空洞が埋まり、溜まる空気量が減ると共に、溜まった空気を液状物の排出する流れで追い出す効果が高まり、無消泡剤製法でも泡かみがほとんどない液状物を得ることができる、いわゆる液中絞りを効率よく実施することができる。また、スクリーンが目詰まりを起こしたり、泡が発生した状態で内部に溜まったり、液状成分の酸化を起こしたりする問題も防止できる。そして、内部ドラムの存在によりスクリーンの材質や構造に係わらず液状物の圧力(荷重)が十分にかかるようになるとともに、前記ローラの前方側に前記スクリーンで分離した液状物を排出する出口からスクリーンを通過した液状物が所定の流路に沿って流れ、出口からスムーズに排出されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態のローラ式の固液分離装置を示す断面図である。
【図2】上記第1の実施の形態の上下のローラと駆動機構を示す断面図である。
【図3】上記図1の第1と第2のローラを説明する拡大断面図である。
【図4】上記第1の実施の形態の斜視図である。
【図5】上記第1の実施の形態の他の例を説明する断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のローラ式の固液分離装置の断面図である。
【図7】上記各実施の形態の他の例を説明する図であり、(a)はローラが1つの場合の例であり、(b)はローラが3つの場合の例であり、(c)はローラが4つの場合の例である。
【図8】上記各実施の形態の他の例を説明する図であり、(a)は加圧蓋が左右開きタイプの例であり、(b)は直動押し切りタイプの例であり、(c)は加圧手段がバネ式の例であり、(d)は加圧手段が錘の例である。
【図9】上記各実施の形態のローラ内の前方側のパドル構造を説明する断面図である。
【図10】上記各実施の形態のローラ内の側面部のパドル構造を説明する断面図である。(a)は螺旋状パドルが内部ドラムに配設されており、(b)は別の例の螺旋状パドルがスクリーン内側の補強板に固定されており、(c)は別の例で螺旋状の溝が内部ドラム側面上に形成されており、内部ドラムが補強板を兼ねた形態である。
【図11】上記各実施の形態の他の例のローラの配列の斜視図である。
【図12】特許文献3に示されるような、従来装置の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用したローラ式の固液分離装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態のローラ式の固液分離装置Z1の断面図であり、図4は、斜視図である。図2は、固液分離装置Z1の各ローラR1,R2とその駆動手段を説明する断面図である。図3は、図1のローラR1,R2の構成を説明する側面図である。
【0018】
本実施形態のローラ式の固液分離装置Z1は、豆腐製造及び油揚製造、豆乳飲料製造において、ゴ液(固液混合物)から固形物(オカラ)と液状物(豆乳)とに分離させるために用いられるものに適用したもので、本体(ケーシング)3が8の字状に形成され、この8の字状の上方に第1のローラR1が組み込まれ、8の字状の下方に第2のローラR2が組み込まれ、これらが基台7に取り付けられている。断面が8の字状のケーシング3の中央(図中左側)には、ゴ液(固液混合物)を遠心式ポンプで、回転数をインバータで適度に調整してゴ液送り量を加減して、適度な吐出圧力(0.0005〜0.5MPa、好ましくは0.002〜0.05MPa)を保つように供給する供給口2が設けられ、その反対側、すなわち断面が8の字状のケーシング3の中央(図中右側)の外側には、固形物を排出する排出窓8が設けられている。その排出窓8には加圧手段を伴う加圧蓋9が配され、一定の品質の固形物が排出される。
本発明では固液混合物の供給手段による供給量、供給圧、ローラ回転数、加圧蓋の圧力のお互いのバランスを適度に調整することで、処理能力が高めたり、液状物の収率が高かめたり、固形物を減らしたり(減量・減容化)、液状物中に微細な固形物を少なくしたり、目的に合わせた最適な条件に調整することができる。なお、供給される固液混合物は供給手段の前後において冷却手段(プレート式、多管式、蛇管などの熱交換器等)や加熱手段(直接蒸気加熱や間接加熱のプレート式、多管式、蛇管などの熱交換器)によって所定の適温に調整されることが好ましい。豆腐用の煮呉の場合、加熱直後ではゴ液温度が100〜95℃であるが、湯葉などの目詰まりなどを防止するため、絞る前に60〜95℃ほどまで冷却するのが好ましい。
【0019】
一対のローラR1,R2は、その軸方向が平行になるように上下に配置された同じ形状で同じ寸法の筒状ローラである。一対のローラR1,R2は、各々回転軸Rjを有するが、一つのモータMでカップリング17を介して駆動され、歯車16により連結されて、回転方向は互いに逆方向で、同期して回転する。回転軸Rjを固定するための回転軸受けには、一般的な樹脂製の滑り軸受けを採用している。回転軸Rjに後述する内部ドラムRdが取り付けられ、内部ドラムRdの外周にスクリーンRsが取り付けられ、これらの先端側で、内部ドラムRdとスクリーンRsに挟まれるように前蓋Rmが取り付けられている(図2参照)。したがって、各ローラR1,R2の前方に配される前蓋Rmと各ローラR1,R2の取外しには特に専門的知識を必要とせずメンテナンスが可能である。各ローラR1,R2は、図2に示すように、ローラ軸Rjに沿ってはめ込まれて支持されており、前蓋を開けば手前に引き抜くことができ、容易に分解しての洗浄も可能であり(図2参照)、食品機械としての要件を満たしている。なおローラ2本以上では各ローラ周速を同じにするのが好ましいが、互いに異なる周速になるよう構成することであってもよい。この場合、積極的におろし金的効果を活用して2次的微粉砕を起こして、固形物の減少、液体分へ移行する固形物抽出率向上効果、例えば豆乳濃度向上という効果を狙うこともできる。同様におろし金的効果を高める場合、ローラ回転数を高めたり、ポンプの送り量を控えたり、ロール片側を固定の部材にする、加圧蓋の加圧を強くするなど、必要に応じて適宜組み合わせてもよい。
【0020】
一対のローラR1,R2は、スクリーンRsとパンチング板(補強板)Rhとを重ね合わせて形成されている(図3)。これらの外周のスクリーンRsは、第1と第2の対ローラR1、R2の外表面に配置され、多数の微細孔cが略全面に形成されている。微細孔c内には、固液混合物(ゴ液)から絞られた液状物(豆乳)が通過し、その後、一対のローラR1,R2の端面に形成された出口11,12から回収される(図2)。パンチング板Rhは、スクリーンRsの内側に配置され、スクリーンRsの形状維持及び補強の役割を担っている。パンチング板Rhの内側には、内部ドラムRdが配置され、液状物が効率良く出口11,12に導かれるようになる流路Rcが形成されている。内部ドラムRdは、上下各ローラR1,R2の内部空洞部を減少させるために各々設置されるものであれば特に限定されないが、例えば、金属(ステンレス製、チタン製)や樹脂製であるが、液状物が各ローラ内部に流入して出口11,12から排出されると同時に装置内部の空気を容易に排除するとともに、各回転ローラR1,R2の内部で液状物が撹乱して泡立つことを防止し、しかも、各回転ローラR1,R2の内部に残留する液状物を少なくする。なお、内部ドラムRdは軽量化のため、密閉かつ空洞・中空でもよく、更にチタン製や樹脂製でもよい。スクリーンRsを通過し分離された液状物は、内部ドラムRdで形成される断面コ字状の液状物流路Rcを通り、出口11,12から排出されるが、出口11,12からの継続配管を、最も高いローラの上端位置以上に高い位置まで一度立ち上げることで(図4)、上下各ローラR1,R2内を液状物で満液にした状態で濾過及び脱水・圧搾操作を行うことができ、これにより液状物(豆乳)を起泡させずに濾過できると同時に、スクリーン表面が空気に晒されることが無い為、湯葉による目詰まりも起き難くなり、長時間稼働が可能となるように、空気溜まりが発生しないように泡を押し出す作用と抑泡作用がより期待ができる。なお、前記出口11,12からの前記継続配管の最終の排出口は、最も高いローラの上端位置よりも低い位置より低い位置まで立ち下がってもよく、この場合サイホン効果も期待できて、液状物(豆乳)が排出しやすくなり、より効果的である。また空気との接触がほとんど無く、液状物(豆乳)や固形物(オカラ)のタンパク質や脂肪や色素などの成分の酸化も最小限に抑えることができる。なお、出口11,12に吸引ポンプやデアレータを連結することが可能である。また、第1のローラR1から分離して得られた処理液と第2の対ローラR2から分離して得られた処理液とは、各々別に外部に排出しても良いが、これらを混合してから排出させても良い。また、ローラ配置については、平行で左右垂直に設けた2本ローラ式圧搾装置でも良い。また、出口11,12の位置は、断面コ字状の流路Rcの中央に限れるが、各出口から先の配管は、どの位置でも良い。
なお内部ドラムの径を、ローラ内径に近づけるほど、すなわち流路Rcの断面積を小さくすればするほど、流路Rcを流れる液状物の流速が増して、スクリーン内側の空気を押し出す効果、スクリーン細孔に詰まりそうな微細な固形物を洗い流す効果、洗浄時の洗浄効果、などメリットがある。
【0021】
本実施の形態の第1と第2のローラR1,R2は、同じ大きさでその回転速度が同じである。また、本実施の形態では、第1と第2のローラR1,R2のスクリーンRsの孔cの大きさや数も同じであるが、異なる孔形状や孔数であってもよい。なお、一対のローラR1,R2の少なくとも一方のローラに多数の孔cが形成されていれば良く、必ずしも一対のローラR1,R2の両方に形成されている必要はない。また、本実施の形態のように上下一対のローラで構成された場合、従来より更に省スペースである。この形態の場合、上側の第1のローラR1は上から下に向けて、下側の第2のローラR2は下から上に向けて回転する。そして、第1と第2のローラR1,R2の間、即ち所定領域(供給側の領域)H1で1次絞りして、ローラR1,R2の最短距離の部分で2次絞り、所定領域(排出側の領域)H2で3次絞りをするというように、固液混合液に段階的に圧力をかけて濾過するとともに、液状物がローラR1,R2のスクリーンRsを介して内側Rcに濾過された直後、固形物を排出窓8から排出させ得る構成になっている。このように段階的に内圧を高める構成によって、固形物がスクリーンRsを介して内側Rc中の液状物を再吸収することを防ぐ効果がある。特に所定領域(排出側の領域)H2には固形物が満たされており、加圧蓋9を備える排出窓8までの内圧は均一で、前記スクリーンRsを介して液状物の再吸収が起きにくく、かつ、そのH2内の固形物の弾力性によるクッション効果があり、固形物を無理にスクリーンRsに押しつけずに、微細な固形物の少ない液状物が得られやすい。
ローラR1,R2とは接触せず、固形物に軽度な加圧を与えて液状物の濾過を補助するとともに、固形物を排出口に向かって移動させる推進力を与えるため、0.1〜10mmの間隔で構成する。特に豆乳向けには0.5〜2mmの範囲が好ましい。その間隙があまり狭すぎると固形物の水分率は低くなるが、処理能力が下がり、強力な圧搾により微細固形物が多い液状物になる。逆に間隔が広すぎると微細固形物の少ない液状物になるが固形物の推進力が得られず、特に所定領域(排出側の領域)H2の内圧が高まらずに処理能力が下がり、固形物の水分率が高く、場合によっては閉塞する。
つまり、固液混合物の供給口2が第1と第2のローラR1,R2の間であって、8の字状のケーシングの外壁の中央の円弧状に絞った位置に設けられ、一対の第1と第2のローラR1,R2を直線的に介して、ローラ回転力を最も効率よく固形物の推進力にするように構成して、8の字のケーシングの外壁の反対側の排出窓8から排出させるように構成されている。なお、第1のローラR1の回転速度を第2のローラR2の回転速度より早くしたり遅くしたりすることは任意である。また、2段以上ローラがある場合は、各ローラの直径の大きさの違いがあっても良く、いずれのローラとも微小孔を有したスクリーンを備える必要はなく、(凹凸模様の付いた)ゴムローラや金属ローラであってもよい。各ローラの周速(回転数)についても、同じでも違いがあってもよい。このように構成しても、排出窓8からは一定の水分率の固形物(オカラ)が排出される。
対ローラの周速は同じにして必要最小限の低回転数とすると固形物とロールのスリップが少なく、微細な固形物(豆乳の場合、ミジン)の発生を抑える効果があり、また周速を違えたり、周速を必要以上に速くすると、微細孔を有するスクリーンによる“おろし金”的な微粉砕効果があり、微細な固形物が液状物に多く含まれるようになり、また固形物からの抽出率を高めることが出きる。豆乳の場合、繊維質含有量の高い品質になるとともに、同一濃度の豆乳量が増加になり、豆腐製品の収率が1〜3割程は高まる場合もある。
なお前記スクリーンRsの孔cの大きさや数としては任意であるが、豆乳用であれば、例えば固液混合物の接触面において直径0.01〜1.0mmφ、ピッチ0.03〜3.0mmが好ましい。レーザー加工などの微細加工技術によって製作され、板厚と孔径やピッチには制限があるが、可能な限り厚い板で強度があってより細かい孔を多数有するスクリーンが好ましい。開口率としては、3%〜30%、好ましくは5%〜20%である。孔径や開口率が大きいと強度が不足し、孔径や開口率が小さいと濾過能力が不十分となる。形状も円形、長穴、楕円形、四角など何れでもよいが、最大の開口距離ないしは開口率が上記範囲であればよい。通常はステンレス製やチタン製や樹脂製でもよく、板厚は0.1〜3mmである。豆乳など食品、飲料関係では、上記範囲より小さいと能力が不足し、大きいと舌触りに影響する微細な固形物が多くなり、喉ごしが悪く、ザラツキを感じることになる。豆腐用豆乳や飲料用豆乳の場合は、直径0.02〜0.2mmφ、ピッチ0.06〜0.6mmが好ましい。なお、本絞り装置から得られた豆乳を次工程で、スクリーン(300〜100meshないしは目開き0.05〜0.15mmないしは孔径0.01〜0.1mmφ)を備えたミジン取り装置を通して細かなミジンを除くようにしてもよい。
パンチング板(補強板)Rhは、スクリーンRsの細孔径cより十分大きい穴径を有し、スクリーンRsより開口率が高く、スクリーンRsを保持する強度を有する。円形でなくても長穴や楕円形、四角形の穴形状でもよい。通常はステンレス製でチタン製や樹脂製でもよく、板厚は3〜10mmで、好ましくは5〜8mmである。穴径は直径1〜10mmφで、好ましくは3〜8mmφである。穴形状も円形、長穴、楕円形、四角など何れでもよい。
【0022】
本実施の形態では、固液混合物が供給される側における、一対のローラR1とローラR2と供給口2で形成されるほぼ断面が三角形状(デルタ形状)の所定領域(供給側の領域)H1は、一対のローラR1とローラR2と排出窓8で形成されるほぼ三角形状(デルタ形状)の所定領域(排出側の領域)H2よりも狭く設定されている(図5)。そして供給された固液混合物が上記経路で直ちに排出窓8に押し付けるように構成されている(真正面から押出されて排出される)。排出窓8は、加圧手段であるシリンダーSrにより加圧蓋9が配されているので、排出窓8に押し付けるような固液混合物が排出窓8に衝突しても、直ちに排出されず、所定量の水分を含んだ固形物(オカラ)が排出される。これは、第1と第2のローラR1,R2の回転速度や固液混合物であるゴ液の濃度等により排出される固形物(オカラ)の水分はほぼ変わらないほぼ均一なものである。なお、第1と第2のローラR1,R2のスクリーンRsに付着した固形物(オカラやミジン)を掻き取るためのスクレーパは、第1と第2のローラR1,R2の外周のどの位置に設けられていても良いが、本実施の形態では、少なくとも排出側の領域H2には配置されておらず、ケーシング3の先端部分3aが第1と第2のローラR1,R2の外周表面に近接して配されている(図1)。
【0023】
図1〜8に示したように、加圧蓋9は、排出窓8に加圧手段により加圧されて蓋がなされるもので、加圧手段であるシリンダーSrにより一定の加圧力がかかる加圧蓋9が排出窓8に取り付けられている。この加圧蓋9は、上方側がケーシング3に固定されており、下方側が開閉する片開きタイプである。シリンダーSrは、上方のローラR1が位置するケーシング3の外周に設けられた固定台3bに固定され、シリンダーSrのロッドSrが加圧蓋9を直接押圧するか、または外側に取り付けられた押し下げ板15を介して押圧することで、排出窓8を閉塞する方向に加圧している。押し下げ板15は、加圧蓋9に取り付けられて、シリンダーSrのロッドSrdにより可動する。このような片開きタイプでは、固形物が下方側からケーシング3の外壁に沿って排出されるので、固形物がシリンダーSrに付着するようなことが防止される。また、片側が固定されているので、排出窓8がぐらつかず、安定した加圧状態を得ることができる。本実施の形態では、加圧手段であるシリンダーSrは1個ないしは2個設けられている(図4)。また、ケーシングの下方側にはシュート14が配され、固形物(オカラ)を排出する。なお、シュート14を配することなく、下方のローラR2の外周かつその外側に配されるケーシングの外周円形(曲面)に沿わせて排出させることもできる。
本実施の形態の他の例としては、図11に示すように、第1のローラR1と第2のローラR2とが垂直姿勢で配される構造でも良い。つまり、ローラ軸Rjが垂直姿勢で配され、出口11,12が上方側になり、この上方側の出口11,12に配管Kが水平方向に取り付けられる構成でも、液中濾過が可能な構成とすることができる。また図示しないが、図11の姿勢とは逆の姿勢、すなわち出口11,12が下方側になり、この上方側の出口11,12が排液用縦配管に合一してローラ上端位置以上まで立ち上がるように取り付けられる構成としてもよく、図9、図10に示したようなパドル等を合わせて設けることによって、溜まった空気を排出でき、空気溜まりを抑制しやすい構成になる。このようにロール軸Rjを垂直方向にして左右一対のロールの形態では最も省スペースであり、操作性に優れる。液状物の排出口が上向きであれば空気を排出しやすく、下向きの場合、ロール内に溜まった空気は抜けにくいが、前記パドルや前記送り羽根によって強制的に空気を排出することが可能である。
【0024】
また、加圧蓋9と排出窓8をしっかりと締め切り、液(液状物)が漏れないようにするために、加圧蓋側又は排出窓側にパッキンpをはめ込むことが有効である(図1)。その場合、前記加圧手段を強くするように、エアシリンダーであれば空気圧制御器で供給空気圧を大きくすると液漏れを抑えることができる。特に洗浄時、洗浄液が漏れることを防止するために、パッキンpをはめ込むように設計することが有効である。なお従来例(図12)では蓋体53で仮に密閉することは可能でも、その出口が下向きのため固形物搬送通路の洗浄作業はやりにくい。
【0025】
固液混合物の供給量と加圧蓋9を加圧する加圧手段Srとは、図4に示すように、制御部5により調整可能に構成すると良い。つまり、加圧蓋8に定圧調整手段を設けた定圧力制御により絞り具合を調整しているが、加圧手段であるエアシリンダーSrの供給空気圧力値を変更することを、固液混合物の供給量に合わせえて調節可能にすることで、運転中でも固液混合物の状態や供給量に合わせた加圧蓋9の加圧を容易に変更可能にするためである。また豆腐と油揚や豆乳飲料など製品毎に絞り具合を切り替える必要がある場合、数値設定できるシステムも容易に設計しやすい。
【0026】
次に、本実施形態におけるローラ式の固液分離装置の動作についてゴ液から豆乳を得る場合で説明する。
まず、大豆を一晩水に浸した後、水を加えながら磨砕した大豆を煮沸して得られたような固液混合物であるゴ液をポンプによって適度な加圧をかけながらケーシング3の供給口2から供給されると、供給側の領域H1と、上下一対のローラR1とローラR2の間の再接近部と、排出側の領域H2を通過することで、これら外周に配されるスクリーンRsに形成された細孔cから豆乳が分離される。なお、ゴ液の投入は、ホッパーによる自重供給でもよいが、そのホッパー内のゴ液レベルを一定に保つようにレベル制御を行うことが好ましく、さらに好ましくはポンプで供給口2にゴ液を送液することで、所定の圧力をかけて行われる。即ち、自重供給では供給側の領域H1での濾過がほとんど起きず、固形物の排出口への押し出す力はロール回転力に大きく依存するので、“おろし金”現象が起きて、微細な固形物の混じった液状物が得られやすい。本願ではポンプを供給手段として弱めで適度な圧力(0.0005〜0.5MPa)による加圧で固液混合物を供給することによって、おろし金現象を抑えて、供給側の領域H1に面するスクリーンの全面での濾過が可能になり、濾過面積を有効に広く使うことができる。濾過面積が広いと、所定量の固液混合物の濾過時間が短縮され濾過能力が高まり、結果的に“おろし金”現象が起きにくくなり、微細な固形物の混入が少ない液状物が得られる。すなわちゴ液であれば豆乳中のミジン量は少なくなる。このポンプ加圧は、排出口8が加圧蓋9によって閉塞する方向で全閉にするように所定の一定圧力で押さえられているので、排出口8から液状物が漏れだすことなく、有効に利用できる。即ち、ポンプによる加圧供給と加圧蓋を併用することが好ましい形態である。もし加圧蓋がなく開口度を固定板などで保持する形態である場合は、大豆の品質やゴ液の煮沸条件やゴ液の濃度、ゴ液タンクのレベルなど諸条件によってポンプ加圧に微妙な変動が生じやすい上に、ときには“おろし金”現象が起きて微細な固形物が多く混じった液状物となり、場合によっては固液混合物がそのまま、すり抜けて排出口から漏れ出してしまうこともある。前記ポンプによる加圧が加圧蓋の押圧に比べて強すぎても同様な結果を招くことになる。
【0027】
ローラR1,R2に供給されたゴ液は、先ず供給側の領域H1でポンプ圧等の弱い圧力で濾過されて、対ローラの最近部分で少し強めの圧力で濾過されて、加圧蓋9の方向に向かうが、上下ローラ間及びスクレーパ間通路と加圧蓋9により囲まれた部分(排出側の領域)H2で強めの加圧状態となり、段階的に濾過(脱水・圧搾)が行われる。
ここで、液状物を取り出す配管Kは、上方のローラR1から液状物を取り出すための配管K1と下方のローラR2から液状物を取り出すための配管K2とは、下方のローラR2からの配管K2を上方のローラR2の高さ位置よりも高くなるように連結することで(図4)、液中濾過が可能な構造になっている。すなわち、上方のローラR1と下方のローラR2とのいずれのローラからも空気が抜けるようにした配管Kの構成にすることで、泡の無い、品質ムラのない高品質の豆乳を抽出できる。なお、上記配管構成としては、図4の配管の上方側と同じように、その下方側Keからも液状物を取り出す構成にすることも可能である。また次工程の豆乳タンクなど高い位置にあっても容易に送液することも可能である。
【0028】
次に、本実施の形態の他の例のローラ式の固液分離装置Z2としては、図5に示すように、上記ケーシング3の先端部分3aを設けずに、上下のローラR1,R2の外周に固液混合物が行き渡るようにするための通路T1,T2を設けるようにしても良い。特に、濾過面積が広くなり濾過効率がよくなる上に、スクリーン表面上に薄い固形物の層が形成され、濾過効率や処理能力は少し下がるが、その層が濾過助剤として働き、微細な固形物(例えば豆乳中のミジン)がスクリーンを介して液状物に混入することを抑制する効果がある。なお、スクレーパは一対のローラR1,R2の外周のどの位置に設けても良い。
【0029】
また、ローラの配置例としては、図7(a)に示すように、一つのローラR1の場合のみでも、供給口2からローラR1を介して排出窓8まで送り込むことができ、図7(b)に示すように、3個のローラR1〜R3をジグザグ状に配置して、斜め上方のローラR1とR2との間の供給口2から固液混合物を供給して、斜め下方のローラR2とR3との間の排出窓8まで送り込んで排出させる構成でもよく、図7(c)に示すように、第1の対ローラR1,R2の次に第2の対ローラR3,R4を配置して、これらを直線状に繋ぐ通路3cを形成したものでも適用可能である。図7(a)〜(c)に示す例では、排出窓8の付近に液状物の流れを方向付ける所定の壁3dが設けられているが(この場合、排出側の領域H2における固液混合物の圧力を高める利点を有する。)、この壁の代わりにスクレーパを配することも可能であり、このスクレーパを設ける場合は、各ローラR1,R2,R3,R4の方向に回り込むように液状物の流れを確保することも可能である(図5の符号T2参照)。また図示はしないが、1台目の固液分離装置(例えばスクリーン孔径が粗め;強めの加圧)で得た液状物を、2台目の固液分離装置(例えば1台目よりスクリーン孔径が細かい;極弱い加圧)で液状物を得るように、多段階にライン構成してもよく、処理能力を向上させたり、微細な固形物を効率よく除く上で、効果的な形態である。
また、図7(a)〜(c)に示す例では、いずれもケーシング3が各ローラR1〜R4の外周に円筒状になるように壁を構成している。このように、複数設けられるローラの配置としては、上下一対に配置したり、平行(水平)に一対配したり、ローラ軸を垂直方向に配したり、ジグザグ状に3個以上配置したりすることができる。特に排出窓8に最も近い一対のローラにおける所定領域(排出側の領域)H2では、液状物の脱水又は固形物の圧搾が最終的に行われる。
【0030】
また、加圧蓋9と加圧手段であるエアシリンダーSrの例としては、図8(a)に示すように、加圧蓋9が2個一対のもので、これらの加圧蓋9の各々と加圧手段であるシリンダーSrを取り付けたものや、図8(b)に示すように、円形の排出窓8の外周から固形物を排出させるために、加圧蓋9の真ん中にエアシリンダーによる加圧を加えるようにした直動押し切りタイプとして構成するものでも良い。加圧手段の他の例として、油圧式シリンダー、水圧式シリンダーや単なる錘(図8(d)の符号Ro)や、バネ式でもよい(図8(c))。なお、加圧蓋9は、図8(a)(c)(d)に示すように、片側をケーシングに可動的に固定された形態の方が、安定した加圧を行うことができる。
【0031】
ローラR1,R2のローラ軸Rjには、内部ドラムRdが取り付けられている(図1、図2、図3)。内部ドラムRdは、ステンレス製の筒状で、ローラ軸Rjに取り付けられ、スクリーンのような孔は形成されていない。内部ドラムRdは、豆乳がローラR1,R2内に滞留すること(残滓や洗浄液の滞留も含む)を防止するとともに、多数の孔cが外周に形成されたスクリーンRsとの間で豆乳の脱水と圧搾を効率的に行う役割や泡の発生を抑制する役割を果たす。内部ドラムRdの前方に出口11,12が設けられている。出口11,12は、円筒状のローラR1,R2の前方中央に設けられている。したがって、ローラR1,R2の内部はスクリーンRsと内部ドラムRdの間に形成される断面がコ字状の流路Rcに沿って液状物が流れ、前方の出口11,12に送り出される。内部ドラムRdとしては、ステンレス製に限らず、合成樹脂製やチタン製などに軽量化を図るものでも良い。内部ドラムRdの形状としては、三角柱や四角柱や六角柱等の断面が多角形状でも良く、前記パドルを兼ねたスネーク状ないしは螺旋状の形状(例えば“キャンドル状”の捻り形状)で液状物を前方に送る機能があってもよい。また、前方側(出口11,12)に向かって徐々に径が小さくなるテーパ形状に形成され、出口11,12側に液状物が流れ易くするものでも良い。内部ドラムRdとローラR1,R2は、その中心のローラ軸Rjにボルトで固定されて、ローラ軸Rjに対して内部ドラムRdとローラR1,R2の脱着が容易になっている。このため、洗浄が容易な構造になっている。
内部ドラムRdの前方には、その先端にパドル10を取り付けることが好ましい(図9、図10)。ローラR1,R2内には、分離された豆乳が随時流入してくるので、ローラR1,R2内の豆乳は押出されるように出口11から排出される。しかし、運転終了時は押出すことができなくなる。ローラR1,R2内部の豆乳の上半分は配管Kの下方側Keを開放することにより、流路11,12より排出されるが、残り下半分はローラR1,R2内に残存する。少量であるが、この豆乳を排出させるにはパドル10を取付けることが有効である。すなわち、断面コ字状の液状物流路RcのローラR1の前方側(内部ドラムRdの頭部)に複数枚のパドル10が取付けられることで、ローラR1が回転すれば、同じ周速で固定されたパドル10も回転する構造である。各パドル10の長さは、断面コ字状の液状物流路Rcに及ぶ長さである。各パドル10の先端形状は豆乳を掬い上げ易いように屈曲した形状が好ましい(図9(c))。これにより、残存豆乳はパドル10で連続的に掬い上げられるようにして出口11から排出させることができる。
このような豆乳を掬い上げ、豆乳を出口11,12に送り出すようにするためには、図10(a)(b)に示すように、内部ドラムRdの外周壁に螺旋状の突出部Rrや10nや、これとは逆に溝(図示せず)が形成されているものでも良い。また、これらを組み合わせた凹凸が形成されていても良い。これら内部ドラムRdの外周壁に構成する送り羽根は前記パドルと併用することで更に効果的である。またローラ軸が垂直や傾斜して排出口が下向きであってもローラ内の空気をも効率よく排出する効果がある。上記パドル10としては、ローラR1,R2のローラ軸Rjに取り付けることも可能である。すなわち、ローラ軸Rjを内部ドラムRdの前方にまで貫通させて、このローラ軸Rjの先端に上記パドル10を取り付け、このパドル10をローラ軸Rjに対して回転可能に構成することも可能である。また、パドル10は、上記以外に、スクリーンRs内面(補強パンチング筒の内面)に配設してもよく、又、補強パンチングと内部ドラムRdを兼ねた形態で、スクリーンの保持機能と流路形成を兼ねた螺旋状の凹凸10mが表面に形成された構造の内部ドラムであってもよい(図10(c))。
【0032】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態のローラ式の固液分離装置Z3の断面図である。本実施の形態は、一対のスクレーパ6,6が上下のローラR1,R2に向けて取り付けられている。つまり、上記ローラ式の固液分離装置Z2のような通路T1,T2が設けられていない。一対のスクレーパ6,6は、供給される固液混合物が上下のローラR1,R2間を通過した後、これをそのまま排出窓8の方向に案内するように配されている。つまり、上下のローラR1,R2と上下の各スクレーパ6,6と近接配置されるケーシング壁3の加圧蓋9により排出側の領域H2が形成されている。上下の各スクレーパ6,6としては、排出窓8に向かうほど広がるように取り付けることも可能である。このように広がるように取り付けると、スクレーパ間通路内でケーク(固形物)が停滞して運転継続不可の状態(閉塞状態)にはならない。固形物とスクレーパの摩擦抵抗が少ないため固形物の流れがスムーズであり処理能力の向上効果が期待できる。また加圧蓋9による加圧が弱めであっても、排出口がスクレーパから離れているために液状物の再吸収が起きにくく、水分率の少ない固形物が得られ、微細な固形物の少ない液状物が得られやすい(いわゆる“おろし金”現象が起きにくい)。また洗浄時には排出側の領域H2に溜まった固形物を除去することも容易になる。
【0033】
また、供給側の領域H1は、排出側の領域H2よりも広く設定されている。したがって、第1の実施の形態と比較すると、固液混合物が供給側の領域H1からの供給量が排出側の領域H2に通過しやすくなり、半絞り状態の固形物がローラ回転と同調して通過しやすくなる。そのため、絞り時間の短縮化や能力向上になる上、固形物がローラ表面のスクリーン上を擦る現象(いわゆる“おろし金”現象)が起きにくく、微細な固形物(例えば豆乳中のミジン)の混入が少ない液状物(豆乳)を得ることができる。また排出される固形物の断面積が広くなると、排出側の領域H2を常に満たす固形物が排出口8の吐出全圧力が大きくなり、排出窓8を押圧する力が不足するようなことがない。逆に言えば排出窓8の押圧を小さくしても内圧を高めることができ、また内圧の微調整、即ち絞り状態の微妙な加減が容易になる。
【0034】
したがって、本実施の形態によれば、上下ローラ間に圧送された固液混合物は、供給側の領域H1で1次絞りされ、上下各ローラ間で2次絞りされるとともにローラ回転力により排出口8へ向かう推進力を受けて、上下各ローラを通過した後は、スクレーパ6,6間の通路(スクレーパ通路)を通り、排出側の領域H2で3次絞りされ、加圧蓋9と排出窓8との隙間より排出される。これにより、供給口2から直線的な流れで固液混合物が運ばれて、加圧蓋9を強く押圧することとなるが、この押圧力による固形物の水分比率は、エアシリンダーSrによる加圧力を調整することで行うことができる。
ここで、上記一対のローラR1,R2の配置としては、上下の配置のみならず、左右に一対配置するものでも良い。左右に配置させる場合としては、引用文献3のように、円筒状の上下面が横方向に向くようにして、上方側から固液混合物を供給したとき、一対のローラR1,R2間を自然落下(重力による落下)するようにしても良く、又、円筒状の上下面が上下端に向く(ローラ軸が縦方向ないしは垂直方向、少し傾斜してもよい。)ようにすることも可能である。
【0035】
次に、特許文献3(内部ドラム等の記載は一切ない)と本願の実施の形態とを比較して説明する。
1.特許文献3では、固形物と液状物の成分や品質が均一にすることは難しいが、本願の実施の形態のローラ式の固液分離装置では、加圧手段による加圧が排出窓に一定にかけることができるので、固形物と液状物の成分が均一にする脱水と圧搾が可能である。
2.特許文献3は、本文記載はないが図1から推察すると、ローラ内側に滞留した空気が抜けにくく、ゴ液のように微小な空気を含む処理液の場合、ローラ内側に常に空気が供給され存在する状況とみられ、また図1からローラ外側も、上部の処理液が少ない場合、空気にさらされることもあり得ると考えられ、湯葉が形成され目詰まりし易いと考えられる。また、図1から処理液の供給圧が重力による弱いものと推察できるので、目詰まりした時にスクリーンの孔に詰まったものを押し出すほどの再生する手段が無い。これに対し、本願の実施の形態のローラ式の固液分離装置では、ポンプを供給手段にすることでローラが直接空気に触れない構造であり、ローラ(スクリーン)のどちらの面も空気層が存在せず、内部ドラムやパドル等の付設した内部ドラムを設けることによって滞留する空気も液状物と共に排出できる形態であるので、湯葉が生成され難い。また、万一目詰まりしても、ポンプにて圧送するので目詰まりし難い利点がある。
3.特許文献3では、本文記載はないが図1から推察すると、装置には固液混合物を自重で供給する形態とみられ、そのため装置からは落差により液状物を排出するしかなく、出口配管より次工程装置は低く抑える必要があり、固形物の押し出し圧力はロール回転力のみに依存するので“おろし金現象”が起きやすいと推論できる。また特許文献3は、固液混合物を供給するポンプ等の供給手段と蓋体との併用効果についての記載は一切ない。これに対し、本願の実施の形態では、固液混合物は送りポンプで上下ローラ間に軽く加圧気味で圧送しているので、ロール上の濾過面を広く有効に活用できて、濾過能力が向上し、ロール回転力が加わって、固形物は排出口に向かって押し出される。またこのポンプ圧があれば、分離された液状物はより高い位置へも送り出すことができる。したがって、次工程の装置高さに制限が無い。また、発泡性のある固液混合物の場合で消泡剤無しで分離操作後、次工程配送途中を上り配管とできるので抑泡作用が期待できる。また、下方のローラR2からの配管K2を上方のローラR2の高さ位置よりも高くすることで、液中絞りが行われて、抑泡作用が期待できる。
4.特許文献3は、左右ローラの下側の奥まった位置に、排出口51を閉塞する方向にバネ52と蓋体53が設けられているが、これに対し、本願の実施の形態では、上下にローラR1,R2が配され、シリンダーSrやスクレーパ6,6の位置が側方面になるので、これら部品の取付・調整がし易い。また、洗浄の際にも、本願の実施の形態では、シリンダーSrで排出窓を開放した状態にして洗浄することもできる。
5.特許文献3は、下方側にスクレーパが配され、その取付・調整がし難い構成である。すなわち蓋体53は装置下側で奥まっており、目視しにくく、調整や全閉や洗浄作業が行いにくい。これに対し、本願の実施の形態では、上下にローラR1,R2が配され、シリンダーSrやスクレーパ6,6の位置が側方面になるので、これら目視しながら部品の取付・調整がし易く、全閉操作や洗浄作業を行いやすい。
【0036】
以上、上記各実施の形態では、ゴ液を絞って豆乳の製造する場合で説明したが、煮呉を絞る煮絞り法や、加熱前の生呉を絞る生絞り法でもよい。また豆腐製造及び油揚製造や飲料用豆乳製造に限らず、果汁飲料製造における搾汁や、汚泥物処理から食品残渣物処理まで、固液混合物を固形物と液状物に分離する産業分野に幅広く用いられることができる。また、上記各実施の形態では、液中濾過構造で説明したが、本発明は液中濾過構造でなくとも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
Z1〜Z3 ローラ式の固液分離装置、
2 供給口、
3 ケーシング壁、
6 スクレーパ、
8 排出窓、
9 加圧蓋、
10 パドル(羽根)、
K,K1,K2 配管、
R1 第1のローラ、
R2 第2のローラ、
Rj ローラ軸、
Rd 内部ドラム、
Rs ローラのスクリーン、
Rc 流路、
H1 供給側の領域、
H2 排出側の領域、
Sr 加圧手段(各種シリンダー)、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の孔が外周に形成されたスクリーンを有するローラをケーシング内に備え、ローラの外側にある固液混合物から多数の孔を介して固形物を分離し、液状物を内側に濾過するローラ式の固液分離装置において、ローラ内周に沿うように内部ドラムが配され、スクリーンで分離した液状物をスクリーンと内部ドラムとで形成される流路に沿って流して出口に集めて排出することを特徴とするローラ式の固液分離装置。
【請求項2】
前記ローラの後方側にローラ軸が配され、このローラ軸に沿って前記内部ドラムが配され、前記ローラの前方側には前記スクリーンで分離した液状物を排出する出口が前記ローラ軸に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のローラ式の固液分離装置。
【請求項3】
前記内部ドラムの前方の出口側にパドルが装着されていることを特徴とする請求項1又は2記載のローラ式の固液分離装置。
【請求項4】
前記内部ドラムの外周に突起、溝、又は凹凸状の送り羽根が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のローラ式の固液分離装置。
【請求項5】
前記ローラは2個以上が一つのケーシング内に配され、それぞれのローラで分離抽出された液状物は、最も高いローラの上端位置以上に高い位置にて排出させ、すべてのローラを固液混合物で満たした状態にして濾過を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のローラ式の固液分離装置。
【請求項6】
前記固液混合物が豆腐や油揚や豆乳飲料等の製造工程におけるゴ液であり、前記固形物がオカラであり、前記液状物が豆乳であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のローラ式の固液分離装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−104541(P2011−104541A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263384(P2009−263384)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(591162631)株式会社高井製作所 (32)
【Fターム(参考)】