説明

ワイヤレスマイクシステム

【課題】デジタル信号をアナログ信号の近傍で変調することより、アナログとデジタルのマイクを1つのシステムに混在させる。
【解決手段】高周波混合分配器11の混合側に接続された複数の同軸ケーブル2と、これら同軸ケーブル2の何れかに接続されるアナログアンテナユニット4aまたはデジタルアンテナユニット4dと、前記高周波混合分配器11の分配側に接続されるアナログ受信機3aまたはデジタル受信機3dを備える。デジタルアンテナユニット4dは、高周波増幅器42、周波数変換回路43及び基準周波数検出部45を有する。高周波混合分配器11は、各同軸ケーブル2に対して、基準周波数信号を送信する基準周波数発振回路15を有する。デジタルアンテナユニット4dでは、受信した基準周波数に基づき、高周波増幅器42で増幅された高周波信号をアナログアンテナユニット4aからの出力信号と同じ帯域の周波数に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅構内、放送局、学校、劇場、放送用等で使用するワイヤレスマイクシステムに関するものであって、特に、アナログワイヤレスマイクとデジタルワイヤレスマイクが混在する場合に適したシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスマイクシステムには、デジタルとアナログの2方式が知られているが、最近は、既設のアナログ式システムをデジタル式に置き換える傾向がある。この場合、大規模なシステムでは、システム全体を一時に変更することができず、アナログとデジタルの2方式を混在させることになる。例えば、特許文献1には、複数の受信機本体とこれに接続された多数のアンテナを有するシステムが開示されているが、これら複数の受信機本体の一部のみをデジタル受信機に置き換え、既存のアナログ受信機と置換後のデジタル受信機を併用する。
【0003】
しかし、このようなアナログとデジタルの2方式を併用すると、次のような問題点がある。一般に、受信機本体とアンテナとは、同軸ケーブルや回線補償器などを介して接続される。この場合、アナログとデジタルとでは、帯域の異なる周波数を使用するために、伝送損失が異なることから、それぞれに回線設計を行い、それぞれの同軸ケーブルを敷設し接続しなければならない。その結果、アナログ方式をデジタル方式に置換した場合、アンテナや受信機本体を交換するだけでなく、両者を接続する同軸ケーブルも置換する必要がある。
【0004】
しかし、駅構内などの広い場所で使用されるワイヤレスマイクでは、アンテナと受信機との距離が長く、同軸ケーブルも長尺になるため、既存の同軸ケーブルを撤去して新たにデジタル方式用のケーブルを敷設することは、作業が大変である。そのため、アンテナと受信機本体を接続する同軸ケーブルについて、既存のアナログ用のケーブルをデジタル方式に転用することができると便利である。
【0005】
一方、デジタル方式のワイヤレスマイクでは、アンテナが受信した信号を高周波増幅器によって変換した後、更に高周波増幅器からの信号と発振器からの発振周波数(基準周波数)とを混合して、中間周波数に変換している。この中間周波数変換用の発振器は、特許文献2に示すように、受信機本体やアンテナ側に設けられる。しかし、アナログ方式のワイヤレスマイクでは、このような基準周波数は不要である。そのため、前記のようなアナログとデジタルの受信機を併用する場合、基準周波数をどのようにしてデジタル方式の中間周波数増幅器部分に供給するかについても、配慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−50955号公報
【特許文献2】特公平8−10845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1及び特許文献2の発明は、何れもアナログとデジタルの両方式を併用するものではない。そのため、同軸ケーブルの共用、基準周波数の供給についての問題を解決することはできなかった。
【0008】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、同軸ケーブルをアナログとデジタルの両システムで共用することができ、しかも、同軸ケーブルにデジタル方式のアンテナユニットを接続した場合でも、周波数変換用の基準周波数をデジタルアンテナユニット側に供給することができるワイヤレスマイクシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、高周波混合分配器の混合側に接続された複数の同軸ケーブルと、これら同軸ケーブルの何れかに接続されるアナログアンテナユニットまたはデジタルアンテナユニットと、前記高周波混合分配器の分配側に接続されるアナログ受信機またはデジタル受信機とを備えている。各アンテナユニットは、受信アンテナに接続されている。アナログアンテナユニットは、高周波増幅器を有する。デジタルアンテナユニットは、高周波増幅器、周波数変換回路及び基準周波数検出部を有する。高周波混合分配器は、各同軸ケーブルに対して、基準周波数信号を送信する基準周波数発振回路を有する。
【0010】
また、本発明において、同軸ケーブル上にアナログ用またはデジタル用の回線補償器を設けることができる。この場合、デジタル用の回線補償器には、高周波混合分配器からの基準周波数信号をアンテナユニット側に通過させるフィルタを設ける。なお、高周波増幅器は、必ずしも各ユニットや回線補償器に設ける必要はない。
【発明の効果】
【0011】
前記のような構成を有する本発明のワイヤレスマイクシステムでは、高周波混合分配器から各同軸ケーブルに基準周波数の信号を出力する。そのため、同軸ケーブルの先端に接続されたデジタルアンテナユニットでは、前記高周波混合分配器から受信した基準周波数信号とユニット内の高周波増幅器からの高周波信号とに基づいて周波数変換を行い、アナログアンテナユニットから出力される周波数と同じ周波数帯域の信号を出力する。その結果、同軸ケーブルに接続されたアンテナユニットがアナログ方式でもデジタル方式でも、同じ周波数帯域の信号が同軸ケーブルを流れることになり、両方式で同軸ケーブルを共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示すブロック図。
【図2】実施例1におけるデジタルアンテナユニットの構成を示すブロック図。
【図3】実施例1におけるアナログアンテナユニットの構成を示すブロック図。
【図4】実施例1におけるデジタル用の回線補償器の構成を示すブロック図。
【図5】実施例1におけるアナログ用の回線補償器の構成を示すブロック図。
【図6】実施例1における高周波混合分配器の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例1を図1から図6に従って具体的に説明する。
図1において、符号1は本発明のワイヤレスマイクシステムの中核となる高周波混合分配器ユニットである。この高周波混合分配器ユニット1の出力側(分配側)には、同軸ケーブル2を介して複数の受信機が接続される。図1では、一例として、デジタルワイヤレス受信機3dとアナログワイヤレス受信機3aが1台ずつ接続されているが、その台数には限定されない。
【0014】
前記高周波混合分配器ユニット1の入力側(混合側)には、同軸ケーブル2を介して複数のアンテナユニット4が接続されている。このアンテナユニット4としては、使用する受信機の方式に合わせてデジタルアンテナユニット4dと、アナログアンテナユニット4aの2種類が用意される。また、高周波混合分配器ユニット1と各アンテナユニット4とを結ぶ同軸ケーブル2上には、回線補償器6が設けられている。この回線補償器6としては、同軸ケーブル2に接続するアンテナユニット4の種類に合わせて、デジタル用の回線補償器6dと、アナログ用の回線補償器6aの2種類が用意される。
【0015】
図2に示すように、前記デジタルアンテナユニット4dは、受信アンテナ41に接続されている。前記デジタルアンテナユニット4dは、高周波増幅器42、周波数変換回路43、コネクタ44、基準周波数検出部45、及びローカルアンプ46を備えている。受信アンテナ41は、デジタルワイヤレスマイクロホン5dからの電波を受信する。高周波増幅器42は、アンテナ41で受信した信号を増幅する。周波数変換回路43は、高周波混合分配器ユニット1から受信した基準周波数に基づき、高周波増幅器42で増幅された高周波信号をアナログアンテナユニット4aからの出力信号と同じ帯域の周波数に変換する。
【0016】
コネクタ44は、前記周波数変換回路43からの信号を同軸ケーブル2へ出力する。基準周波数検出部45は、同軸ケーブル2を通じて高周波混合分配器ユニット1から送信された基準周波数の信号を検出すると共に、これをローカルアンプ46に出力する。ローカルアンプ46は、基準周波数検出部45からの基準周波数を増幅する逓倍回路を有し、基準周波数信号を増幅した後、周波数変換回路43に出力する。
【0017】
図3に示すように、アナログアンテナユニット4aは、受信アンテナ41に接続されている。アナログアンテナユニット4aは、高周波増幅器42及びコネクタ44を備えている。この高周波増幅器42は、前記デジタルアンテナユニット4dの周波数変換回路43から出力される信号と同じ帯域の周波数を出力する。
【0018】
図4に示すように、同軸ケーブル2に配設するデジタル用の回線補償器6dは、アンテナからの受信信号を増幅する高周波増幅器61と、この高周波増幅器61の両側に接続されたアンテナ側のコネクタ62と高周波混合分配器ユニット1側のコネクタ63を備えている。また、この高周波増幅器61と並列に基準周波数用のフィルタ64が設けられている。このフィルタ64は、高周波混合分配器ユニット1から送信された基準周波数信号を高周波増幅器61をバイパスしてアンテナ側に送信する。また、基準周波数のみを通過させるものであるから、アンテナからの受信信号は、高周波増幅器61側を流れることになり、そこで増幅される。
【0019】
図5に示すように、同軸ケーブル2に配設するアナログ用の回線補償器6aは、アンテナからの受信信号を増幅する高周波増幅器61と、この高周波増幅器61の両側に接続されたアンテナ側のコネクタ62と高周波混合分配器ユニット1側のコネクタ63を備えている。
【0020】
図6に示すように、高周波混合分配器ユニット1は、高周波混合分配器11と、その入力側(混合側)に設けられた複数個のアンテナ用コネクタ12と、その出力側(分配側)に設けられた受信機側コネクタ13を備える。高周波混合分配器11と各アンテナ用コネクタ12との間には、各コネクタ12から入力された信号を増幅する高周波増幅器14が設けられている。高周波混合分配器ユニット1内には、基準周波数発振回路15が設けられている。この基準周波数発振回路15の出力はアンテナ用の各コネクタ12に接続され、基準周波数発振回路15から出力された基準周波数信号がコネクタ12、同軸ケーブル2を介して、各アンテナユニット4に送信される。
【0021】
前記のような構成を有する実施例1においては、高周波混合分配器ユニット1からの基準周波数信号を、そのユニット1に設けられたアンテナ用コネクタ12、同軸ケーブル2及び回線補償器6を介してアンテナユニット4に送信することができる。この場合、高周波混合分配器ユニット1に既存のアナログ方式の受信機3a及びアンテナユニット4aが接続されていると、高周波混合分配器ユニット1からの基準周波数信号は、アナログ用の回線補償器5aで遮断され、アナログアンテナユニット4aには到達しない。また、回線補償器5aを設けていない場合に、基準周波数信号がアナログアンテナユニット4aに達したとしても、アナログアンテナユニット4aには基準周波数信号を処理する回路がないので、特に問題が生じることがない。
【0022】
一方、設備の更新などにより、高周波混合分配器ユニット1にデジタル方式の受信機3d及びデジタルアンテナユニット4dが接続されていると、高周波混合分配器ユニット1からの基準周波数信号は、デジタル用の回線補償器5dをそのフィルタ64部分を通過し、デジタルアンテナユニット4dに到達する。その結果、デジタルアンテナユニット4dでは、受信した基準周波数に基づき、高周波増幅器42で増幅された高周波信号をアナログアンテナユニット4aからの出力信号と同じ帯域の周波数に変換することができる。
【0023】
このように、実施例1によれば、高周波混合分配器ユニット1から基準周波数信号を同軸ケーブル2を通して各アンテナに送信し、アンテナがデジタル方式の場合には、基準周波数信号に基づいてアンテナユニットからの出力信号の帯域を、アナログ方式のアンテナユニットからの出力信号と同じものとすることができる。その結果、受信方式がアナログでもデジタルでも同じ帯域の出力信号が同軸ケーブル2を流れることになるので、受信方式ごとに専用の回線設計を行う必要がなくなり、既存のアナログ用の同軸ケーブルをそのまま利用して、デジタル方式のワイヤレスマイクシステムを構築できる。特に、各方式専用の回線設計が不要となり、同軸ケーブルの共用が可能になるため、アナログとデジタルの両方式を同一システム内に混在させることが可能になり、システムの移行が容易に実施できる。
【実施例2】
【0024】
本発明は前記のような実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。
(1) 各アンテナユニット4や高周波混合分配器ユニット1、あるいは回線補償器6に設けた高周波増幅器は必ずしもその部分に設ける必要はなく、交信する信号の強度などに応じて、適宜配置することができる。
(2) アンテナユニット4と高周波混合分配器ユニット1を接続する同軸ケーブル2上の回線補償器6a,6dは、回線設計に応じて適宜配置することができ、まったく設けないことも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…高周波混合分配器ユニット
2…同軸ケーブル
3d…デジタルワイヤレス受信機
3a…アナログワイヤレス受信機
4d…デジタルアンテナユニット
4a…アナログアンテナユニット
5d…デジタルワイヤレスマイク
5a…アナログワイヤレスマイク
6d…デジタル用回線補償器
6a…アナログ用回線補償器
15…基準周波数発振回路
43…周波数変換回路
45…基準周波数検出部
64…フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波混合分配器の混合側に接続された複数の同軸ケーブルと、
これら同軸ケーブルの何れかに接続されるアナログ受信アンテナまたはデジタル受信アンテナと、
前記高周波混合分配器の分配側に接続されるアナログ受信機またはデジタル受信機とを備え、
前記デジタル受信アンテナには、周波数変換回路及び基準周波数検出部を接続し、
前記高周波混合分配器には、各同軸ケーブルに対して、基準周波数信号を送信する基準周波数発振回路を設け、
前記高周波混合分配器から受信した基準周波数を用いて、前記周波数変換回路及び基準周波数検出部により、前記デジタル受信アンテナで受信した信号をアナログ受信アンテナから同軸ケーブルへの出力信号と同じ帯域の周波数に変換して、同軸ケーブルに出力することを特徴とするワイヤレスマイクシステム。
【請求項2】
前記デジタル及びアナログの受信アンテナが、受信アンテナからの受信信号を増幅する高周波増幅器を有するユニットとして構成され、デジタルアンテナユニットには、高周波増幅器からの出力信号をアナログアンテナユニットからの出力信号と同じ帯域の信号に変換するために、前記周波数変換回路及び基準周波数検出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレスマイクシステム。
【請求項3】
前記アンテナと高周波混合分配器とを接続する同軸ケーブルに回線補償器が設けられ、デジタル受信アンテナを接続するデジタル用の回線補償器には、受信信号を増幅する高周波増幅器と、高周波混合分配器からの基準周波数信号のみを通過させるフィルタが、並列に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤレスマイクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−252064(P2010−252064A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99594(P2009−99594)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】