説明

ワイヤー構成

【課題】 本発明の目的は、光学機器が落下したときの最下点で生じる衝撃を緩和し、全体として充分な引張り強度のある落下防止ワイヤーを提供することである。
【解決手段】 製品(光学機器等)と前記製品を取付ける固定部とを連結するワイヤーの構成において、1本のワイヤーの途中に弛みを設け、弛みの一方の端部と他方の端部との間に、収縮状態にある弾性部材を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器とその光学機器を設置する固定部とを連結し、光学機器の落下を防ぐ「落下防止ワイヤー」の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、落下防止ワイヤーは、1本のワイヤーから成るものや、2本のワイヤーの間に直列に弾性体(バネ等)の両端を固定連結したものがあった。例えば、特許文献1では、1本のワイヤーから成るものが開示されている。特許文献2では、2本のワイヤーの間に直列に引張りバネの両端を固定連結したものが開示されている。
【特許文献1】特公昭63−026189号公報
【特許文献2】実開平06−016628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、光学機器(ビデオカメラ等)を高所(天井等)に設置するとき、光学機器が不用意に落下しないよう、「光学機器」と「設置場所(固定部)」との間をワイヤー(チェーン等)で接続しておくことが行われている。光学機器の重量が重く(数キログラム以上)になってくると、落としたときにワイヤーは切れなくても、ワイヤーが伸びきった最下点で発生する衝撃によって、光学機器に外部的内部的な損傷を生じることがあった。
【0004】
また、落下防止ワイヤー全体としての引張り強度が弱くなると言う問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、光学機器が落下したときの最下点で生じる衝撃を緩和し、全体として充分な引張り強度のある落下防止ワイヤーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目課題を達成するために、本発明では、1本のワイヤーの途中に弛みを設け、弛みの一方の端部と他方の端部との間に、収縮状態にある弾性部材(バネ、ゴム等)を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光学機器が落下したときの最下点で生じる衝撃を緩和し、全体として充分な引張り強度のある落下防止ワイヤーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0009】
図6と図7-A、図7-Bを参照し、従来例の構成と動作を概説する。
【0010】
図6は、従来の落下防止ワイヤーの図である。
【0011】
1は、1本のワイヤーである。2は、金属製のスリーブで、ワイヤー1の一方の端部をワイヤー1自身に加締め、ループ形状部1-aを形成している。このループ部1-aが高所固定部に固定される。3は、金属製の端子で、ワイヤー1の他方の端部に加締められている。
【0012】
この金属製の端子3の丸穴部3-aは、光学機器100にビス等で固定される。
【0013】
図7-Aは、光学機器100が高所(天井)の固定用金具に取付けられている状態を示しており、さらに、光学機器100が、従来の落下防止ワイヤーによって、高所(天井)の別の固定用金具に連結されている状態を示している。
【0014】
図7-Bは、何らかの原因によって、光学機器100が高所(天井)から落下し、最下点になった状態を示している。
【0015】
図7-Aの状態から図7-Bの状態に至る間、光学機器100は自由落下し、下方向に加速していく。最下点に到達すると、落下防止ワイヤーが伸びきって、急激に停止するため、光学機器100には、衝撃が加わり、外部的内部的に損傷が生じることがある。
【0016】
この衝撃を緩和する本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施例の図である。
【0018】
図1-(イ)、図1-(ロ)と図5-A、図5-B、図5-C、を参照し、本発明の構成と動作を詳説する。
【0019】
1は、1本のワイヤーである。2は、金属製のスリーブで、ワイヤー1の一方の端部をワイヤー1自身に加締め、ループ形状部1-aを形成している。このループ部1-aが高所固定部に固定される。3は、金属製の端子で、ワイヤー1の他方の端部に加締められている。
【0020】
この金属製の端子3の丸穴部3-aは、光学機器100にビス等で固定される。
【0021】
4は、引張りコイルバネで、縮んだ状態(イ)にあり、この縮んだ状態で、一方のフック部4-aは、ワイヤー1に金属製スリーブ5によって、加締め固定されている。他方のフック部4-bは、ワイヤー1に金属製スリーブ6によって、加締め固定されている。図示のように、このとき、ワイヤー1の長さL1の範囲は、長さL0になるよう、意図的に弛ませた状態で、引張りコイルバネ4の両フック部を加締め固定する。その結果、ワイヤー1には、弛み部1-bが形成される。ここまでが、第1の実施例のワイヤー構成である。
【0022】
本構成の落下防止ワイヤーの動作を説明する。
【0023】
図5-Aは、光学機器100が高所(天井)の固定用金具に取付けられている状態を示しており、さらに、光学機器100が従来の落下防止ワイヤーによって、高所(天井)の別の固定用金具に連結されている状態を示している。ここでの引張りコイルバネ4は、縮んだ状態である。
【0024】
図5-Bは何らかの原因によって、光学機器100が高所(天井)から落下し、前述の弛み部1-bを残して、最下点から直前の位置に達した状態である。ここでも、引張りコイルバネ4は、縮んだ状態である。
【0025】
図5-Cは、光学機器100がさらに落下していき、最下点になった状態を示している。
【0026】
ここでの引張りコイルバネ4は、伸びきった状態を示している。
【0027】
図5-Bの状態から図5-Cの状態に至る間、光学機器100は、さらにΔLだけ落下していき、最下点に達する。このΔL間において、引張りコイルバネ4は、伸ばされるため、光学機器100を引き上げる方向の力が発生する。この力によって、光学機器100は、減速しながら、最下点に達することになる。
【0028】
つまり、最下点における光学機器100の落下速度は、引張りコイルバネ4がない従来例と比較して、遅くなる。結果として、最下点で生じる衝撃を小さくすることができる。
【0029】
また、衝撃を緩和する性能は、バネの線径・全長・材質から決まる『バネ定数』を所望の値にすることで変更可能である。バネは、1個ではなく、複数個配置することもできる。
【実施例2】
【0030】
図2は、本発明の第2の実施例である。
【0031】
図2-(イ)、図2-(ロ)を参照し、本発明の構成と動作を詳説する。
【0032】
1は、1本のワイヤーである。2は、金属製のスリーブで、ワイヤー1の一方の端部をワイヤー1自身に加締め、ループ形状部1-aを形成している。このループ部1-aが高所固定部に固定される。3は、金属製の端子で、ワイヤー1の他方の端部に加締められている。
【0033】
この金属製の端子3の丸穴部3-aは、光学機器100にビス等で固定される。
【0034】
24は、ゴム等弾性材で、縮んだ状態(イ)にあり、この縮んだ状態で、一方の取付け部24-aは、ワイヤー1に金属製スリーブ5によって、加締め固定されている。
【0035】
他方の取付け部24-bは、ワイヤー1に金属製スリーブ6によって、加締め固定されている。
【0036】
図示のように、このとき、ワイヤー1の長さL1の範囲は、長さL0になるよう、意図的に弛ませた状態で、ゴム等弾性材24の両フック部を加締め固定する。その結果、ワイヤー1には、弛み部1-bが形成される。ここまでが、第2の実施例のワイヤー構成である。
【0037】
本構成の落下防止ワイヤーの動作を説明する。
【0038】
図2-(イ)は、落下防止ワイヤーのゴム等弾性材24が縮んだ状態を示している。
【0039】
図2-(ロ)は、落下防止ワイヤーのゴム等弾性材24が伸びきった状態を示している。
【0040】
前述した通り、(イ)状態のとき、ワイヤー1のループ形状部1-aは、高所固定部に固定されており、金属製端子3の丸穴部3-aは、光学機器100に固定されている。この状態から光学機器100は、さらに、ΔLだけ落下していき、最下点((ロ)状態)に達する。
【0041】
このΔL間において、ゴム等弾性材24は、伸ばされるため、光学機器100を引き上げる方向の力が発生する。この力によって、光学機器100は、減速しながら、最下点に達することになる。
【0042】
つまり、最下点における光学機器100の落下速度は、ゴム等弾性材24の無い従来例と比較して、遅くなる。結果として、最下点で生じる衝撃を小さくすることができる。
【0043】
また、衝撃を緩和する性能は、ゴムの断面・全長・材質を所望のものにすることで変更可能である。ゴムは、1個ではなく、複数個配置することもできる。
【実施例3】
【0044】
図3は、本発明の第3の実施例である。
【0045】
以下、図3を参照し、本実施例について、その構成と動作を説明する。
【0046】
1は、1本のワイヤーである。2は、金属製のスリーブで、ワイヤー1の一方の端部をワイヤー1自身に加締め、ループ形状部1-aを形成している。このループ部1-aが高所固定部に固定される。3は、金属製の端子で、ワイヤー1の他方の端部に加締められている。
【0047】
この金属製の端子3の丸穴部3-aは、光学機器100にビス等で固定される。
【0048】
34は、O−リング(ゴム製)で、通常の状態(イ)にあり、この通常の状態で、ワイヤー1を図示1-CのようにO−リングの穴にくぐらせる。さらに、ワイヤー1を図示1-dのようにO−リングの穴にくぐらせる。
【0049】
このとき、図示のように、ワイヤー1の長さL1の範囲は、長さL0になるよう、意図的に弛ませた状態で、O−リング(ゴム製)34は通常の形態(イ)にする。その結果、ワイヤー1には、弛み部1-bが形成される。ここまでが、第1の実施例のワイヤー構成である。
【0050】
本構成の落下防止ワイヤーの動作を説明する。
【0051】
図3-(イ)は、落下防止ワイヤーのO−リング(ゴム製)34が通常の状態を示している。図3-(ロ)は、落下防止ワイヤーのO−リング(ゴム製)34が変形し伸びきった状態を示している。
【0052】
前述した通り、(イ)状態のとき、ワイヤー1のループ形状部1-aは、高所固定部に固定されており、金属製端子3の丸穴部3-aは、光学機器100に固定されている。この状態から光学機器100は、さらに、ΔLだけ落下していき、最下点((ロ)状態)に達する。
【0053】
このΔL間において、O−リング(ゴム製)34は、変形し伸ばされるため、光学機器100を引き上げる方向の力が発生する。この力によって、光学機器100は、減速しながら、最下点に達することになる。
【0054】
つまり、最下点における光学機器100の落下速度は、O−リング(ゴム製)34の無い従来例と比較して、遅くなる。結果として、最下点で生じる衝撃を小さくすることができる。
【0055】
また、衝撃を緩和する性能は、O−リングの太さ・内径・材質を所望のものにすることで変更可能である。O−リングは、1個ではなく、複数個配置することもできる。
【0056】
図4に複数個のO−リング44を配置したときの図を示す。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明第1の実施例のワイヤー構成(引張りコイルばねを用いた場合)
【図2】本発明第2の実施例のワイヤー構成(ゴム弾性体を用いた場合)
【図3】本発明第3の実施例のワイヤー構成(O−リングを用いた場合)
【図4】本発明第3の実施例のワイヤー構成(複数個のO−リングを用いた場合)
【図5】第1の実施例の動作説明図(引張りコイルばねを用いた場合)
【図6】従来例のワイヤー構成
【図7】従来例の動作説明図
【符号の説明】
【0059】
1 ワイヤー
1-a ループ形状部
1-b 弛み部
2 金属製スリーブ
3 金属製端子
3-a 丸穴部
100 光学機器
4 引張りコイルバネ
4-a 一方のフック部
4-b 他方のフック部
5 金属製スリーブ
6 金属製スリーブ
24 ゴム等弾性材
24-a 一方の取付け部
24-b 他方の取付け部
34 O−リング
44 複数個のO−リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品(光学機器)と前記製品を取付ける固定部とを連結するワイヤー構成において、
1本のワイヤーの途中に弛みを設け、弛みの一方の端部と他方の端部との間に、
収縮状態にある弾性部材を配置したことを特徴とするワイヤー構成。
【請求項2】
前記弾性部材として、コイルバネを用いたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤー構成。
【請求項3】
前記弾性部材として、ゴム部材を用いたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤー構成。
【請求項4】
前記弾性部材として、Oリング(ゴム製)を用い、ワイヤーを前記Oリングの穴に、
2回以上くぐらせることによって、前記Oリングを配置したことを特徴とする
請求項1に記載のワイヤー構成。
【請求項5】
前記弾性部材として、複数のOリング(ゴム製)を用いた請求項4に記載のワイヤー構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294455(P2009−294455A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148250(P2008−148250)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】