説明

ワンタッチ操作で機能させる三脚の開脚法および同法を用いたワンタッチ開閉脚式三脚。

【課題】 写真撮影用の三脚や計測器を載せた三脚式スタンドは、位置を変えたり移動する際に長い脚部が邪魔になり問題であった。本願はワンタッチで開脚と閉脚ができ、移動や収納が迅速に行えて且つ小型軽量化が可能な三脚とその開閉脚法の確立を課題とした。
【解決手段】 主脚体1にステー体7が固定され、習動ノブ13がステー体7に習動可能に設けられている。開脚バー9、9は一端が副脚体3,3の側面に回動可能に軸支されると共に、他端が習動ノブ13に回転可能に軸支され構成されてなる。以上の構成により、習動ノブをステー体の上部にスライドさせることにより開脚し、三脚を床面から持ち上げることにより各脚体の自重により閉脚する、構造が簡素で小型軽量化が可能なワンタッチ操作の開閉脚式三脚とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真撮影や各種の測量などの際に使用する三脚式スタンド、または絵画のスケッチに用いる三脚式イーゼル、或いはオフィスでのプレゼンテーションや店舗等の様々な案内やメニューの表示に使用するスタンド等の三脚に適応させた、三脚式スタンドの開脚法及び同法を用いたワンタッチ開閉脚式三脚に関する。
【背景技術】
【0002】
写真撮影や地形の測量などの作業には、携帯性と移動の可能な三脚式スタンドが使用され、一般的には一つの作業毎に移動と再設置を繰り返しながら、夫々に作業を積み重ねるのが普通である。また絵画のスケッチ用イーゼルや店舗等の案内板や献立板などは、作業開始や開店の時に一度設置すれば、一定時間に亘り据え置きする場合が多いものであるが、何れの場合においても設置と収納が簡単にできて、且つ嵩張らずにコンパクトで持ち運びし易いものが求められていた。
【0003】
従来の主たる写真用機材としての三脚は、アルミ等の軽量な金属製の脚体を持つものが多く、絵画用イーゼルには木材など天然素材製の脚体もあるが、現状の三脚の開閉脚はその都度一脚毎に手作業に頼るものであり、移動の多い作業の場合には不便なものであった。殊に写真撮影や測量などにおいて移動の多い作業を伴う場合は、カメラや測定器を載せた侭で脚を開いて移動を余儀なくされることがある。このような時には三脚の開閉が簡単迅速にできれば、作業能率を損なわず極めて有利となる。
【0004】
三脚の脚をワンタッチ操作で開閉可能とし、操作性を飛躍的に向上させた在来技術の三脚の開閉機構に関しては、例えば特許文献1が提案されている。然しながらこの方法においては、三脚を構成する三本の脚体は連携することなく、脚体を別々に操作するものである。従って脚体の開脚動作としては操作性の改善が見られるものの、三本の脚体を同時に開閉脚することはできないものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−121687
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願では煩わしい操作をしないで、三脚の三本脚をワンタッチで任意の開度で開脚できて、更に該三脚の本体を持ち上げるだけで、該三脚の接地部が地面から離れる瞬間に自動的に閉脚し、設置場所を頻繁に変えて移動する際にも、誰もが簡単に操作できるような三脚を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を達成するため、該三脚の主脚体に設けられた習動部と、連結ピンまたは習動リングを介して各副脚体に連結する二本の開脚バーをもって構成する。そして該連結ピンまたは該習動リングを習動させるだけで、該二本の開脚バーが各脚体を押し広げ、該主脚体と該副脚体の間を任意の角度に開き、開脚させることを特徴とする三脚とした。
【0008】
この種のワンタッチ式による三脚の開脚法の要件は、単純な機構により誰もが簡単に操作できるよう設計することにある。即ち特許文献1のような、各脚体を個々別々に操
作して一つ一つの動作を積み重ねて設置するのではなく、一動作で全て完結するように
構成した。更にここでは、三脚の各脚体の取付け部である基台の近傍に、上記開閉脚機
構を取り付け、従来の一般的な三脚式スタンドにも応用できるような構造とした。
【0009】
また基台に連係する各脚体は開閉自由に係止し、脚体の接地部が地面から離れるとき、各脚体は万有引力と自重によりその先端部を直下に向けて鉛直姿勢になる。このため三本の各脚体は自動的に閉脚して中央に集合し、結束し易く収納と移動が極めて容易となる。また操作部は構造が単純であるから小型軽量化が可能であり、持ち運びの楽な絵画用イーゼルなどに応用すると好適である。
【0010】
更に習動部の形態と構造は各脚体の支柱の形状に合わせて考慮すればよい。即ち脚体としての各支柱が円柱形か角柱形であるのか、または該支柱の表面の平滑性や柱体としての太さの均一性等を勘案して決めればよい。支柱が平滑で太さが細く一定した一般的写真用三脚には習動リング方式が適しており、また木製や太い支柱の場合にはステー体方式も用いる事ができる。そして該習動部としてステー体を用いる場合には、該ステー体のスリットに嵌合し習動させる連結ピンの角度は、該開脚バーの取付け角度に合せて、支障なく平行移動できるようにすればよい。
【0011】
本発明では、開脚と閉脚の何れの操作においても、上述のように必要最小限の操作で完結するように構成されているから、時と場所を問わず誰もが簡単且つ迅速に、ワンタッチの操作で確実に三脚の設置と収納が実行できるものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の三脚の開脚法又は同法を用いた三脚を使用すれば、簡便且つ臨機応変にワンタッチ操作で三脚スタンドの設置ができるから、写真撮影や地形の測量及び前述の各種用途において、作業中の移動や再設置を頻繁に行う場面でも、極めて高い作業効率が得られる。
【0013】
また本発明によって三脚式スタンドの小型化が図れ、脚体の取付け部品や角度調整のための部品等を少なくできるから、携帯性を重視する遠隔地への移動には極めて有効なものとなる。また小型化の効用は、店舗やオフィスにおける移動や収納スペースに余裕空間をつくり、保管場所等の有効活用に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施する際は、一般的に該三脚の開閉脚機構である習動部は基台の近傍に設けるから、前述のように脚体の素材の相違や伸縮性の有無に関係なく、何れにも適用できること。
【0015】
また本発明のワンタッチ式開脚法と同法を用いた三脚は、連結ピンを付設する習動ノブまたは習動リングを操作するだけで、二本の開脚バーをスライドさせワンタッチで任意の開度に三脚を開脚できること。また開脚バーを支軸する主脚体側の取り付け位置を低く設置することにより、本体を持ち上げるだけで、各脚体の先端が接地面から離れる瞬間に閉脚するので、誰もが携行して簡単に使用できること。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例に基づき図面を参照して説明するが、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、これらの例に限定されるものではない。
図1は、本実施例の斜視図である。図2は、図1の正平面図である。図3は、図2を閉脚状態として示す正平面図である。図4は、習動部としてのステー体と開脚バーの連係を示す平面図である。図5は、図4の鎖線A―Aによる切断面を矢印方向から見た拡大断面図である。図6は、図1に対応する別形態の習動部と習動リングの開脚バーとの連係を示した部分斜視図である。
【0017】
図1及び図2では、主脚体1に設けられたステー体7の上部に習動ノブA13が位置し、該習動ノブA13からは開脚バー9が左右に略水平に伸び、その先端は各副脚体3の側面に支軸B21により回動可能に軸支されており、該各副脚体3は夫々が該開脚バー9に押されて後退し、該主脚体1と該各副脚体3の脚体間を押し広げた状態であることが分かる。
【0018】
即ち、主脚体1において、ステー体7のスリット11に嵌合された習動ノブA13を、該スリット11に沿って習動し、該ステー体7の上部に移動させたとき、該習動ノブA13に設けた連結ピン15に付設された各開脚バー9は、ピストンの働きをして各副脚体3を押しやり、開脚させたものである。
【0019】
図3は、図2の閉脚後の状態を示し、主脚体1に設けられたステー体7の下部に習動ノブA13が降下しており、左右の開脚バー9は夫々略垂直の姿勢に変化して、該各副脚体3が夫々の脚体間を閉じて、中央に集合したところを示している。
【0020】
図4は、本発明の主要な機構部としてのステー体7を示すものであり、図5は該ステー体7における機能と役割を示したものである。図4ではステー体7のスリット11に複数の切り欠きを設けて係止部17とした。これは三脚の開脚開度を変える場合に有効であり、習動ノブA13が適宜な位置で係止できるように設けたもので、形状とその位置は適宜に決めることができる。
【0021】
ここで各開脚バー9の上端部は、支軸B21により夫々の副脚体3の側面に回動可能に軸支されるから、ステー体7のスリット11に沿って習動ノブA13が上部へ習動したとき、該各開脚バー9はどのような角度にも対応して、該脚体を有する三脚は接地面の形状に順応させて任意の開度で、設置することができるものである。
【0022】
以上、本発明のステー体7による三脚の開脚法は、図4に示す習動ノブA13を(1)、スリット11の上部を(2)とし、更に開脚バー9が副脚体3に軸支した箇所を(3)とするとき、(1)(2)(3)を頂点とする三角形で説明することができる。即ち、閉脚した際は、辺(1)−(2)と、辺(1)−(3)がほぼ等しくあり、辺(2)−(3)は小さくなる。また(1)をスリット11の上部にスライドして移動したときは、辺(1)−(2)が小さくなり、辺(2)−(3)が大きくなるから、即ち開脚状態を示すものとなる。
【0023】
図5は、図4における鎖線A―Aを切断面として、矢印方向から見た際の拡大断面図である。ここではステー体7のスリット11に、連結ピン15を付設した習動ノブA13が嵌合し、該連結ピン15には開脚バー9が支軸A19により回動自由に軸支されている。そしてここでは、連結ピン15における開脚バー9の取付け角度が、各副脚体3に対する連結角度に適合させ、該開脚バー9が平行移動できるように設ければ良い。
【0024】
図6は習動リング16を用いた場合の実施形態を示す部分斜視図である。これは一般的な写真用機材としての三脚の場合を示すもので、円柱形の脚体には該習動リング16が好適に用いられることが分かる。即ち、この場合は該主脚体1自体が習動部として働くから、該主脚体1に嵌合して習動させ開脚したところを示している。該習動リング16には習動ノブB14を設けて、手指による習動操作をし易くしている。そして支軸A19によって軸支された開脚バー9は、支軸B21を介して各該副脚体3に連結していることが分かる。
【0025】
本発明の三脚を自動的に閉脚させるための条件は、該三脚の最大開脚時における支軸A19の位置が、支軸B21の位置よりも僅かに低い位置になるように取り付けることである。即ち、最大開脚時における開脚バー9の姿勢は水平状態ではなく、支軸A19の方に若干傾かせる必要がある。言い換えれば、支軸B21が若干の高位置に止まるように設定することである。このためには、主脚体1へのステー体7の取り付け位置と習動ノブA13の位置を考慮するし、また習動リング16を用いる場合には該主脚体1の適宜な位置にストッパーを設け、支軸A19が高位置にならない対策を取る必要がある。
【0026】
本発明のワンタッチ開閉脚式三脚においては、主脚体1及び副脚体3を基台5に取付ける際に開閉自在に連係されることが必要だが、一般的な材質の支軸で連結されたものであれば、本発明の特徴を阻害するものではない。また開脚した該主脚体1及び該副脚体3の接地部が床や地面に接すると、該三脚の全重量による接触摩擦が生じるため、その設置位置に固定して三脚のぐら付きや傾きの心配は不要となる。
【0027】
以上に述べた通り、図1または図2および図6に示す本発明の三脚の開脚法によれば、該習動ノブA13に手を添えて該ステー体7の上部へ習動するか、若しくは該習動ノブB14に手指を掛けて該主脚体1の支柱に沿って習動操作するだけで、該習動ノブA13に付設した該連結ピン15および該習動リング16に夫々付設された該開脚バー9が、各該副脚体3を押し広げるためワンタッチで開脚したものである。
【0028】
また閉脚する際は、該三脚の基台5付近を持ち上げて、該三脚の各脚体の接地部を地面または床面等から引き離すだけで、該ステー体7に嵌合する該習動ノブ13又は該習動リング16は該主脚体1に沿って降下し、該主脚体1の下方へ移動するから、図3に示すように該三脚の各脚体1及び3は、夫々の自重により該基台5の下方に垂直に集合し収納し易い形状になる。斯くして本発明の三脚ならば、設置と収納がワンタッチの操作でできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の三脚は、迅速な開脚と閉脚がワンタッチの操作でできるから、どのような場面においても、誰でも何時でも臨機応変に対応が可能であり、貴重な場面を即座に残す機会を増やせるに相違ない。また絵画用のイーゼルは、屋外での写生やスケッチには欠かすことのできない用具であるが、野山への持ち運びは小型で軽量なものが求められ、本発明のワンタッチ開閉脚式三脚を応用すれば、実に好適なイーゼルを作ることができる。更に、オフィスや店舗等で用いる案内板や、ディスプレー用のスタンドにも応用できるから、プレゼンテーションや説明会など、移動の多い用途にも好適な用具となり得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態を示すワンタッチ開脚式三脚の全体斜視図
【図2】図1の正平面図
【図3】図2の閉脚状態を示す正平面図
【図4】ステーと開脚バーを示す平面図
【図5】図4における鎖線で切断した部分を示す拡大断面図
【図6】習動リングと開脚バーの働きを示す部分斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 主脚体
3 副脚体
5 基台
7 ステー体
9 開脚バー
11 スリット
13 習動ノブA
14 習動ノブB
15 連結ピン
16 習動リング
17 係止部
19 支軸A
21 支軸B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在に連係された三本の支柱からなる三脚において、該三脚中の一本の支柱は習動部を有する主脚体とし、他の二本の支柱を副脚体として構成し、該習動部を移動する習動ピンまたは習動リングを用い該副脚体に連結する二本の開脚バーをスライドさせ、該副脚体を押し広げて該三脚を任意の開度に開脚させることを特徴とする三脚の開脚法。
【請求項2】
主脚体には、習動部に沿って習動可能で習動ノブが付設した連結ピンまたは習動リングを設け、二本の開脚バーの夫々の一端を該連結ピンまたは該習動リングに連結し他端を各副脚体の側面に回動可能に軸支されてなる、請求項1に記載のワンタッチ開閉脚式三脚。
【請求項3】
前記三脚において、ステー体と連結ピンを組み合わせた習動部を設け、または支柱に沿って習動する習動リングを設けて、主脚体と副脚体とを連結する少なくとも一対の開脚バーを備えることを特徴とする、請求項1ないし2に記載のワンタッチ開閉脚式三脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328075(P2007−328075A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158242(P2006−158242)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(596151571)
【Fターム(参考)】