説明

ワークの仕上げ装置

【課題】 ワークの仕上げ装置にてバリ取り工具等の工具を他の工具に変える際に要する時間を従来より短くすること。
【解決手段】 ワークのバリ取り用等の工具51、52を保持する複数のスピンドルを備えたワークの仕上げ装置において、第1スピンドル40および第2スピンドル45を有するスピンドル部30を備え、第1スピンドル40の回転軸44の軸方向44aと第2スピンドル45の回転軸49の軸方向49aが互いに直交し、第1駆動源22の回転軸23の回転を第1および第2スピンドル40、45の回転軸44、49に伝える一組の歯車24を備え、スピンドル部30を第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転可能に支えるフレーム21を備え、スピンドル部30を第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転させる第2駆動源33を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミダイカスト製品等のワークの仕上げ装置に関し、特に工具の交換を従来よりも高速で行うことができるワークの仕上げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミダイカスト製品等のワークのバリ取り等をする仕上げ装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この仕上げ装置は、3軸直交座標のX軸と平行な旋回軸心の回りに配列されてバリ取り工具が結合される複数のスピンドルを有し、前記旋回軸心を中心として回転制御されかつX軸方向、Y軸方向、Z軸方向へ移動制御されるタレットヘッドを備えた加工ユニットの近傍には、鋳造粗材が固定される粗材取付け面を有し、この粗材取付け面の中心を通ってY軸と平行な垂直軸心を中心として回動制御されかつ前記粗材取付け面と並行な水平軸心を中心として回動制御される治具テーブルを備えている。これにより、前記仕上げ装置は、鋳造粗材を1つの治具によって加工ステーションにセットして鋳造粗材を治具テーブルに固定したままの状態で、鋳造粗材の姿勢をその各端面に対するバリ取り加工に適した姿勢に変向させ、各形態の鋳バリを的確かつ能率的に削り取ることができ、治具テーブルへの鋳造粗材の取付け形態を変更する必要がないので、バリ取り作業を簡易化してバリ取り加工の精度を良くすることができる。
【特許文献1】特開平7−241714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、バリ取りをするバリ取り工具を他の工具に変えるときに、バリ取り工具が結合される複数のスピンドルを有するタレットヘッドを前記旋回軸心の回りに旋回させる必要があり、主軸モータは加工位置へ旋回したスピンドルのみ回転駆動するので、バリ取りをするバリ取り工具を他の工具に変えるときに、加工位置に旋回したスピンドルが主軸モータに回転駆動されてバリ取り作業を開始するのに時間が必要となる。このため、バリ取りをする工具を他の工具に変えるのに要する時間が長くなるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、バリ取り工具等の工具を他の工具に変える際に要する時間を従来より短くすることができるワークの仕上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ワークのバリ取り用等の工具を保持する複数のスピンドルを備えたワークの仕上げ装置において、スピンドル部を備え、このスピンドル部は第1スピンドルおよび第2スピンドルを有し、前記各スピンドルには前記工具を回転させる回転軸が設けられ、前記第1スピンドルの回転軸の軸方向と前記第2スピンドルの回転軸の軸方向が互いに交差し、電動機等の第1駆動源を備え、前記第1駆動源の回転軸の回転を前記第1および第2スピンドルの回転軸に伝える一組の歯車を備え、
前記スピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転可能に支えるフレームを備え、前記スピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転させる油圧モータ等の第2駆動源を備えることを特徴とするワークの仕上げ装置である。
これにより、ワークのバリ取り用等の工具を保持する複数のスピンドルを備えたワークの仕上げ装置の第1スピンドルの回転軸の軸方向と第2スピンドルの回転軸の軸方向が互いに交差し、一組の歯車が電動機等の第1駆動源の回転軸の回転を前記第1および第2スピンドルに伝えるので、前記第1駆動源により前記第1および第2スピンドルを同時に回転駆動することができる。
さらに、フレームが前記第1および第2スピンドルを有するスピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転可能に支え、油圧モータ等の第2駆動源が前記スピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転させるので、前記第1および第2スピンドルの回転軸が上記回転をし、これにより前記工具が回転をしている状態で、前記工具を保持する第1スピンドルおよび第2スピンドルを交代させることができる。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の仕上げ装置であって、前記第1スピンドルの回転軸の軸方向と前記第2スピンドルの回転軸の軸方向が互いに直交し、前記一組の歯車は、前記第1駆動源の回転軸の先端部に設けられた第1かさ歯車と、この第1かさ歯車に螺合する第2かさ歯車と、前記第1スピンドルの回転軸の端部に設けられ前記第2かさ歯車に螺合する第3かさ歯車と、前記第2スピンドルの回転軸の端部に設けられ前記第2かさ歯車に螺合する第4かさ歯車とを備えることを特徴とする仕上げ装置である。
これにより、回転軸の軸方向が互いに直交する前記第1スピンドルと前記第2スピンドルを前記一組の歯車が同時に回転駆動することができる。その際、前記第1駆動源の回転軸の先端部に設けられた第1かさ歯車がこの第1かさ歯車に螺合する第2かさ歯車を回転させ、さらに、第2かさ歯車がこの第2かさ歯車に螺合する第3および第4かさ歯車を同時に回転させる。このため、第3かさ歯車の回転により第1スピンドルが回転し、第4かさ歯車の回転により第2スピンドルが回転する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、第1および第2スピンドルに保持された工具を共に回転させながら、ワークを仕上げるのに使用するスピンドルを交代させることができるので、前記スピンドルの交代に要する時間を従来よりも短くし、ワークの仕上に要する時間を従来より短くすることができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、第1スピンドルと第2スピンドルの回転軸の軸方向が直交する場合に第1および第2スピンドルを共に回転させることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るワークの仕上げ装置の正面を示し、図2は図1の仕上げ装置の平面を示し、図3は図1の仕上げ装置の右側面を示し、図4は図1の仕上げ装置の左側面を示す。さらに、図5は図1の仕上げ装置のスピンドルユニットの断面を示し、図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ図5のスピンドルユニットのB−B断面、C−C断面、C−D断面を示し、図7は図5のE−E断面を拡大して示す。
【0008】
図1に示すように、ワークの仕上げ装置10は、ワーク53のバリ取り用等の第1工具51、第2工具52等(図5参照)を保持するスピンドルユニット20を備えている。
仕上げ装置10のベッド11a上には、柱状のフレーム11b、11cが立設され、フレーム11b、11cの頂部に差し渡すように梁状のフレーム11dが設けられている。
図2に示すように、X軸ユニット12はフレーム11dの長手方向(X軸方向)に沿って設けられ、X軸サーボモータ12aの回転によりX軸ユニット12に支えられたY軸ユニット13がX軸方向に移動する。そして、図3および図4に示すように、Y軸ユニット13のY軸サーボモータ13aの回転により、Y軸ユニット13の下端部に支えられたスピンドルユニット20がY軸方向に移動する。
図1に示すように、Z軸ユニット14はベッド11aの上面の近傍に設けられ、図2に示すように、Z軸サーボモータ14aの回転によりテーブルユニット16がZ軸方向に移動する。なお、X軸、Y軸およびZ軸(図2参照)は互いに直交している。さらに、図1に示すように、ベッド11a上にはB軸ユニット15が設けられ、このB軸ユニット15のB軸サーボモータ15aの回転によりテーブルユニット16がB軸方向(図2参照)に回転する。
図1に示すように、ワーク53はテーブルユニット16上に固定されるので、X軸ユニット12、Y軸ユニット13およびZ軸ユニット14の働きにより、スピンドルユニット20に保持された第1および第2工具51、52等とワーク53との相対的な位置関係は、ワーク53の形状・大きさに応じてXYZ軸方向に変化することができ、さらに、ワーク53をB軸方向に回転させることができる。
以上の各操作は、作業者55が操作盤17を操作することにより実行することができる。なお、実線で示す操作盤17はワークの仕上げ加工時の状態であり、二点鎖線で示す操作盤17はティーチング時の位置を示す。
【0009】
図5に示すように、スピンドルユニット20は複数のスピンドル(例えば第1スピンドル40および第2スピンドル45)を有するスピンドル部30を備えている。
さらに、スピンドルユニット20のケース状のフレーム21の外面には、電動機等の第1駆動源22が付設され、第1駆動源22の回転軸23(スピンドル部30の内側に軸受23b、23c、23dを介して回転自在に保持されている。)の回転を第1スピンドル40および第2スピンドル45に伝える一組の歯車24がスピンドルユニット20に配設されている。
一組の歯車24は、第1駆動源22の回転軸23の先端部23aに設けられた第1かさ歯車25と、この第1かさ歯車25に螺合する第2かさ歯車26と、第1スピンドル40の回転軸44の端部に設けられ第2かさ歯車26に螺合する第3かさ歯車27と、前記第2スピンドル45の回転軸49の端部に設けられ第2かさ歯車26に螺合する第4かさ歯車28とを備えている。
【0010】
さらに、スピンドル部30のスピンドル支持部31は第1スピンドル40および第2スピンドル45を支えている。第1スピンドル40は筒状のケース41の内側に軸受42a、42bにより回転軸44が回転自在に支えられている。回転軸44の先端部にはクランプユニット43が取り付けられている。このクランプユニット43はバリ取り等の第1および第2工具51等を保持することができる。同様にして、第2スピンドル45は筒状のケース46の内側に軸受47a、47bにより回転軸49が回転自在に支えられている。回転軸49の先端部にはクランプユニット48が取り付けられている。このクランプユニット48はバリ取り等の第2工具52等を保持することができる。
ここで、第2かさ歯車26と第3かさ歯車27の歯数比と第2かさ歯車26と第4かさ歯車28の歯数比とを同じにすると、回転軸44の回転速度と回転軸49の回転速度を同じにすることができる。
なお、第1スピンドル40の回転軸44の軸方向44aと第2スピンドル45の回転軸49の軸方向49aが互いに直交している。また、軸方向44aと軸方向49aのなす角は回転軸23の軸方向23e(図7参照)により二等分されている。
フレーム21がスピンドル部30を軸受30a、30bを介して第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転可能に支えている。
さらに、フレーム21には油圧モータ等の第2駆動源33が付設されている。第2駆動源33の回転軸にはプーリー34が取り付けられ、スピンドル部30のスピンドル支持部31の外周にはプーリー32が取り付けられている。そして、フレーム21の開口部21aにはタイミングベルト35(図6参照)が配置され、このタイミングベルト35はプーリー32とプーリー34に掛けられている。このため、第2駆動源33は、スピンドル部30を第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転させることができる。
【0011】
図5に示すように、スピンドル支持部31の外周には、ストッパブロック取付け用のプレート36aが取り付けられている。そして、図7に示すように、プレート36aにストッパブロック36が固定されている。位置センサ39はフレーム21に配置され、ストッパブロック36の位置を検出することができる。具体的には、図7に示すように、ストッパブロック36には金属(鉄等の磁性体でもよい。)製のピン36bが立設され、フレーム21には位置センサ39(例えば近接スイッチ)が設けられ、ストッパブロック36の回転により、ピン36bが位置センサ39の近傍に位置したことを位置センサ39が検出して、その検出信号を操作盤17に伝える。これにより、図1の操作盤17は第1および第2スピンドル40、45のうちどちらがワーク53の仕上げに使用されているかを表示することができる。
【0012】
図6に示すように、第1スピンドル40と第2スピンドル45の切換のためにスピンドル部30を回転させたときには、ストッパブロック36がフレーム21の内側に固定されているストッパボルト37a、37bに当接して停止することにより、第1および第2スピンドル40、45の位置の割出しをすることができる。その際、ストッパブロック36がストッパボルト37a、37bに衝突する衝撃をショックアブソーバ38a、38bが緩和する。
【0013】
以上の構成の仕上げ装置10は、以下のように動作する。
(1)ワーク53のバリ取り用等の第1および第2工具51、52等を保持する複数のスピンドルを備えたワークの仕上げ装置10の第1スピンドル40の回転軸44の軸方向44aと第2スピンドル45の回転軸49の軸方向49aが互いに直交し、一組の歯車24が第1駆動源22の回転軸23の回転を第1および第2スピンドル40、45に伝えるので、第1駆動源22により第1および第2スピンドル40、45を同時に回転駆動することができる。
さらに、フレーム21がスピンドル部30を第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転可能に支え、第2駆動源33がスピンドル部30を第1駆動源22の回転軸23を回転中心として回転させるので、第1および第2スピンドル40、45の回転軸44、49が上記回転し、第1および第2スピンドル40、45のクランプユニット43、48に保持された第1および第2工具51、52が回転している状態で、例えばクランプユニット43に保持された工具51がワーク53のバリ取り等の仕上げをしているときに、スピンドル部30を回転させて、クランプユニット48に保持された工具52がワーク53のバリ取り等の仕上げをするようにすることができ、逆に、クランプユニット48に保持された工具52がワーク53のバリ取り等の仕上げをしているときに、スピンドル部30を回転させて、クランプユニット43に保持された工具51がワーク53のバリ取り等の仕上げをするようにすることができる。
(2)さらに、回転軸44、49の軸方向44a、49aが互いに直交する第1スピンドル40と第2スピンドル45を一組の歯車24が同時に回転駆動することができる。その際、第1駆動源22の回転軸23の先端部23aに設けられた第1かさ歯車25がこの第1かさ歯車25に螺合する第2かさ歯車26を回転させ、さらに、第2かさ歯車26がこの第2かさ歯車26に螺合する第3および第4かさ歯車27、28を同時に回転させる。このため、第3かさ歯車27の回転により第1スピンドル40の回転軸44が回転し、第4かさ歯車28の回転により第2スピンドル45の回転軸49が回転する。
【0014】
なお、第1スピンドル40の回転軸44の軸方向44aと第2スピンドル45の回転軸49の軸方向49aは、上記実施の形態において直交しているが、これに限定されず、交差する状態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るワークの仕上げ装置の正面図である。
【図2】図1の仕上げ装置の平面図である。
【図3】図1の仕上げ装置の右側面図である。
【図4】図1の仕上げ装置の左側面図である。
【図5】図1の仕上げ装置のスピンドルユニットの断面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)はそれぞれ図5のスピンドルユニットのB−B断面、C−C断面、C−D断面図である。
【図7】図5のE−E断面を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
10 仕上げ装置
20 スピンドルユニット
21 フレーム
22 第1駆動源
23 回転軸
23a 先端部
24 一組の歯車
25 第1かさ歯車
26 第2かさ歯車
27 第3かさ歯車
28 第4かさ歯車
30 スピンドル部
33 第2駆動源
40 第1スピンドル
44 回転軸
44a 軸方向
45 第2スピンドル
49 回転軸
49a 軸方向
51 第1工具
52 第2工具
53 ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのバリ取り用等の工具を保持する複数のスピンドルを備えたワークの仕上げ装置において、
スピンドル部を備え、このスピンドル部は第1スピンドルおよび第2スピンドルを有し、前記各スピンドルには前記工具を回転させる回転軸が設けられ、前記第1スピンドルの回転軸の軸方向と前記第2スピンドルの回転軸の軸方向が互いに交差し、
電動機等の第1駆動源を備え、
前記第1駆動源の回転軸の回転を前記第1および第2スピンドルの回転軸に伝える一組の歯車を備え、
前記スピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転可能に支えるフレームを備え、
前記スピンドル部を前記第1駆動源の回転軸を回転中心として回転させる油圧モータ等の第2駆動源を備えることを特徴とするワークの仕上げ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワークの仕上げ装置であって、
前記第1スピンドルの回転軸の軸方向と前記第2スピンドルの回転軸の軸方向が互いに直交し、
前記一組の歯車は、前記第1駆動源の回転軸の先端部に設けられた第1かさ歯車と、この第1かさ歯車に螺合する第2かさ歯車と、前記第1スピンドルの回転軸の端部に設けられ前記第2かさ歯車に螺合する第3かさ歯車と、前記第2スピンドルの回転軸の端部に設けられ前記第2かさ歯車に螺合する第4かさ歯車とを備えることを特徴とするワークの仕上げ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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