説明

ワーク搬送システム

【課題】ワークの受け渡し位置の数が増大しても設備コストの増大を抑えることが可能なワーク搬送システムを提供する。
【解決手段】アルミニウム鋳造品2を搬送する搬送台車10と、搬送台車10により搬送されてきたアルミニウム鋳造品2を所定の位置に固定する固定治具30・30・・・と、を具備するワーク搬送システム1において、搬送台車10が、固定治具30・30・・・が所定の位置にアルミニウム鋳造品2を固定する動作を行うための駆動力を固定治具30・30・・・の係止ユニット32・32・32に供給するナットランナー16・16・16と、アルミニウム鋳造品2が前記所定の位置に固定されたことを検出する圧力検出器20・20・20と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送するワーク搬送システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークを移載するためのロボットハンドの技術は公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
また、搬送台車にロボットハンド等を設け、ワークの搬送およびワークの受け渡しを可能とするワーク搬送システムも公知となっている。
【0003】
このようなワーク搬送システムのうち、自動車部品等のアルミニウム鋳造品をワークとし、これを加工装置(マシニングセンタ等)に搬送するワーク搬送システムは、ワークを固定するための治具を加工装置毎に設けていた。
【0004】
例えば、図6に示す従来のワーク搬送システム101は、ストッカ104に載置されたアルミニウム鋳造品102・102・・・を加工装置103・103・・・に搬送するためのシステムであり、主として搬送台車110、固定治具130・130・・・等を具備する。
【0005】
搬送台車110は走行可能な本体111、複数の関節を有するロボットアーム112、ロボットアーム112の先端部に設けられ、アルミニウム鋳造品102を把持するワーク把持機構113等を具備する。
【0006】
固定治具130は、アルミニウム鋳造品102に係合して固定治具130の所定の位置にアルミニウム鋳造品102を固定する係止爪132・132・132、アルミニウム鋳造品102に係止爪132・132・132を係合させる動作およびアルミニウム鋳造品102に係合した係止爪132・132・132を解除する動作を行うアクチュエータである油圧シリンダ117・117・117、油圧シリンダ117・117・117に作動油を供給する駆動源である油圧ポンプ116、等を具備する。
【0007】
また、固定治具130は、エアポンプ118、エア供給配管119・119・119、基準座134・134・134、圧力検出器120・120・120を具備する。
固定治具130の所定の位置にアルミニウム鋳造品102が固定されるとアルミニウム鋳造品102が基準座134・134・134の先端部に当接し、エアポンプ118からエア供給配管119・119・119を経て基準座134・134・134の先端部から空気が排出されるエア供給経路が閉塞され、エア供給経路の圧力が上昇する。
ワーク搬送システム101は、当該圧力の上昇を圧力検出器120で検出することにより、固定治具130の所定の位置にアルミニウム鋳造品102が固定されたことを確認する。
【特許文献1】特開平8−243966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のワーク搬送システム101には以下の問題があった。
すなわち、ワーク搬送システム101はアルミニウム鋳造品102の受け渡し位置たる固定治具130・130・・・の数が増大すると、それに伴って油圧シリンダ117・117・117や油圧ポンプ116、あるいはエアポンプ118、エア供給配管119・119・119、圧力検出器120・120・120等の数も増大する。そのため、ワーク搬送システム全体として設備コストやメンテナンスの負担(コスト、労力)が過大となるという問題があった。
本発明は以上の如き状況に鑑み、ワークの受け渡し位置の数が増大しても設備コストの増大を抑えることが可能なワーク搬送システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、
ワークを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されてきたワークを所定の位置に固定する固定手段と、
を具備するワーク搬送システムにおいて、
前記搬送手段が、
前記固定手段が所定の位置にワークを固定する動作を行うための駆動力を前記固定手段に供給する駆動手段と、
前記ワークが前記所定の位置に固定されたことを検出するワーク位置検出手段と、
を具備するものである。
【0011】
請求項2においては、
前記搬送手段は、
エアポンプと、
該エアポンプから圧送された空気を前記固定手段に供給するための搬送側エア供給経路と、
を具備し、
前記ワーク位置検出手段は前記搬送側エア供給経路の圧力を検出する圧力検出器であるものである。
【0012】
請求項3においては、
前記搬送手段が前記固定手段にワークを受け渡す位置にあるときに一端が前記搬送側エア供給経路に接続され、他端が前記固定手段の所定の位置に固定されたワークにより閉塞される位置に配置される固定側エア供給経路を前記固定手段に設け、
前記搬送側エア供給経路と固定側エア供給経路とが接続されると開き、前記搬送側エア供給経路と固定側エア供給経路との接続が解除されると閉じる開閉弁を前記搬送側エア供給経路に設けるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、ワークの受け渡し位置の数が増大しても設備コストの増大を抑えることが可能である。
【0015】
請求項2においては、ワークの受け渡し位置の数が増大してもエアポンプおよび圧力検出器の数を増やす必要はなく、設備コストの増大を抑えることが可能である。
【0016】
請求項3においては、圧力検出器による検出結果の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、図1乃至図5を用いて本発明に係るワーク搬送システムの実施の一形態であるワーク搬送システム1の全体構成について説明する。
図1に示す如く、ワーク搬送システム1はアルミニウム鋳造品2を加工装置3・3・・・に搬送するためのシステムであり、主として搬送台車10、固定治具30・30・・・等を具備する。
【0018】
アルミニウム鋳造品2は本発明に係るワークの実施の一形態であり、アルミニウム合金を溶融して得られた溶湯を鋳型に流し込んで凝固させることにより所定の形状に成型したものである。
【0019】
ここで、本発明に係る「ワーク」は、本発明に係るワーク搬送システムにより搬送される対象物を指す。なお、「ワーク」は通常、ある程度の定形性を有する物品(主として固体物)を含むが、定形性を有さないもの(粉体、粒体、液体、気体等)を所定の形状を有する容器に充填したもの等も含む。
【0020】
本発明に係るワーク搬送システムは、本実施例のアルミニウム鋳造品2に限らず、種々の物品をワークとして搬送する用途に広く適用可能である。
【0021】
加工装置3・3・・・は搬送されてきたアルミニウム鋳造品2に所定の加工(切削、研削、穴開け等)を施す装置である。
【0022】
以下では、搬送台車10の詳細について説明する。
図1に示す如く、搬送台車10は本発明に係る搬送手段の実施の一形態であり、ストッカ4に載置されたアルミニウム鋳造品2を加工装置3・3・・・に搬送するものである。搬送台車10は本体11、ロボットアーム12、ワーク把持機構13等を具備する。
【0023】
本体11は搬送台車10の下部構造体を成すものであり、車輪(不図示)により走行することが可能である。
なお、本実施例の搬送台車10は車輪で走行する構成としたが、本発明に係る搬送手段はこれに限定されず、例えば履帯で走行する構成としても良い。また、本発明に係る搬送手段は軌道に沿って走行する構成としても良い。
ロボットアーム12は搬送台車10の上部構造体を成すものであり、ロボットアーム12の基部は本体11に固定される。ロボットアーム12は回動または旋回可能な複数の関節を有し、各関節の回動角度または旋回角度を調整可能である。
【0024】
ワーク把持機構13はアルミニウム鋳造品2を把持するものであり、ロボットアーム12の先端部に設けられる。ロボットアーム12とワーク把持機構13とが協動することにより、搬送台車10と加工装置3・3・・・(より厳密には固定治具30・30・・・)との間でアルミニウム鋳造品2の受け渡しを行う。
【0025】
図1および図2に示す如く、ワーク把持機構13はプレート14、クランパ15、ナットランナー16・16・16、搬送側カプラ17・17・17等を具備する。
【0026】
プレート14はワーク把持機構13の主たる構造体を成す板状の部材であり、クランパ15、ナットランナー16・16・16、搬送側カプラ17・17・17等が設けられる。
【0027】
クランパ15はプレート14の前面に設けられ、油圧シリンダ15aおよび係止爪15bを具備する。
油圧シリンダ15aは油圧により伸長・収縮するアクチュエータであり、そのシリンダロッドの先端部には係止爪15bが設けられる。係止爪15bとプレート14の前面との間にアルミニウム鋳造品2が挟まれた状態で油圧シリンダ15aが収縮することにより、アルミニウム鋳造品2がワーク把持機構13に把持される。
【0028】
ナットランナー16・16・16は本発明に係る駆動手段の実施の一形態であり、固定治具30・30・・・が所定の位置にアルミニウム鋳造品2を固定する動作を行うための駆動力を固定治具30(より厳密には、後で詳述する係止ユニット32・32・32)に供給するものである。
ナットランナー16は電動式のトルクレンチであり、その先端部16aが略六角形状に形成される。ナットランナー16は先端部16aを後で詳述するランナー係合部材32aの係合孔32dに係合して回転駆動することにより、係止ユニット32のランナー係合部材32aを回転させることが可能である。
【0029】
搬送側カプラ17・17・17はその基部がプレート14に固定される。また、搬送側カプラ17は本体11に設けられたエアポンプ18の圧送側ポート(圧縮空気が吐出されるポート)にそれぞれ可撓性のエア供給配管19を介して接続される。搬送側カプラ17の詳細については後述する。
【0030】
なお、本実施例のワーク把持機構13はプレート14およびクランパ15によりアルミニウム鋳造品2を把持する構成としたが、本発明に係るワーク搬送システムはこれに限定されず、他の方法によりワークを搬送手段に固定して搬送しても良い。また、本発明に係るワーク搬送システムはワークを搬送手段に固定しない状態(例えば、容器等にワークを収容した状態や搬送手段の本体の上面にワークを載置した状態)で搬送する構成としても良い。
また、本実施例のワーク搬送システム1はワーク把持機構13およびロボットアーム12を具備する搬送台車10によりアルミニウム鋳造品2を搬送する構成としたが、本発明に係るワーク搬送システムはこれに限定されず、搬送手段にロボットアームと異なる移載手段(搬送手段と固定手段との間でワークの受け渡しを行う機能を有するもの)を設ける構成としても良い。
【0031】
以下では、固定治具30の詳細について説明する。
図1および図2に示す如く、固定治具30は本発明に係る固定手段の実施の一形態であり、搬送台車10により搬送されてきたアルミニウム鋳造品2を所定の位置に所定の姿勢で固定するものである。
【0032】
固定治具30・30・・・はそれぞれ加工装置3・3・・・に設けられる。固定治具30に固定されたアルミニウム鋳造品2には対応する加工装置3により所定の加工(切削、研削、穴開け等)が施される。
固定治具30は、主として本体31、係止ユニット32・32・32、固定側カプラ33・33・33、基準座34・34・34等を具備する。
【0033】
本体31は固定治具30の主たる構造体を成す部材であり、その係止面31aに突出する形で係止ユニット32・32・32、固定側カプラ33・33・33、基準座34・34・34等が設けられる。
【0034】
係止ユニット32・32・32はアルミニウム鋳造品2に係合することにより、または本体31の係止面31aとの間でアルミニウム鋳造品2を挟むことにより、アルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置に所定の姿勢で固定するための部材である。
係止ユニット32は主としてランナー係合部材32a、伝達機構32b、係止爪32c等を具備する。
ランナー係合部材32aは略円柱形状の部材であり、その基部は回転可能に軸支され、その先端部は係止面31aから突出しており、先端部側の端面にはランナー係合部材32aの軸線方向から見て略六角形状の係合孔32dが形成される。
ランナー係合部材32aの係合孔32dはナットランナー16の先端部16aと係合可能である。
伝達機構32bはランナー係合部材32aが回転駆動された場合に、ナットランナー16からランナー係合部材32aに伝達された回転駆動力を係止爪32cに伝達するものであり、種々の歯車や回転軸等からなる。
係止爪32cは、ナットランナー16から伝達された(供給された)回転駆動力により所定の動作(回転、回動、あるいは係止面31aに対する近接・離間)を行い、アルミニウム鋳造品2を所定の位置、すなわち本体31の係止面31aに対向する位置に固定した状態またはアルミニウム鋳造品2の固定を解除した状態のいずれかの状態とする部材である。
【0035】
以下では、図3を用いて搬送側カプラ17の詳細について説明する。
搬送側カプラ17は主として内筒41、外筒42、バネ受け43、バネ44、係止リング45、固定ナット46、バルブ固定部材47、バルブ48等を具備する。
【0036】
内筒41および外筒42は搬送側カプラ17の主たる構造体を成す部材であり、いずれも略円筒形状の部材である。
【0037】
内筒41の外径は外筒42の基部側の内径と略同じであり、内筒41は外筒42に摺動可能に貫装される。内筒41には基部側の端面から先端部側の端面まで貫通する貫通孔41aが形成され、貫通孔41aの基部側端部はエア供給配管19に連通接続される。
【0038】
外筒42の内周面は段差を境として基部側が小さく、かつ先端部側が大きくなっている。外筒42の内周面の基部側は内筒41の外周面と摺接し、外筒42の内周面の先端部側にはバネ受け43が嵌装される。
【0039】
内筒41の外径は、段差面41bを境として先端部側が小さくなっており、内筒41の段差面41bとバネ受け43のバネ受け面43aの間にはバネ44が介装される。バネ44は外筒42を内筒41の先端部側に突出する方向に付勢する。
【0040】
内筒41の先端部には固定ナット46により係止リング45が固定される。係止リング45はバネ受け43の先端部側端面に当接することによりバネ44の付勢力で外筒42が内筒41から脱落することを防止する。
【0041】
バルブ固定部材47は略円筒形状の部材であり、外筒42においてバネ受け43よりも先端部側に嵌装される。
バルブ固定部材47の先端側にはバルブ48が嵌設される。また、係止リング45の外周面に嵌設されたOリング45aはバルブ固定部材47の内周面に気密的に摺接する。バルブ固定部材47、係止リング45およびバルブ48で囲まれた空間である摺動室47aは貫通孔41aと連通する。
【0042】
バルブ48は本発明に係る開閉弁の実施の一形態であり、外筒42の先端部よりもやや基部側よりとなる位置に配置される。バルブ48は後述するソケット52が差し込まれていない状態では閉じた状態となり、ソケット52が差し込まれた状態では開いた状態となる。
【0043】
以下では、図3を用いて固定側カプラ33の詳細について説明する。
固定側カプラ33は本体51、ソケット52を具備する。
【0044】
本体51は固定側カプラ33の主たる構造体を成す略円筒形状の部材であり、その基部が固定治具30の本体31の係止面31a側に固定され、その先端部が係止面31aから突出している。本体51には基部側の端面から先端側の端面まで貫通する貫通孔51aが形成され、本体51の先端部にはソケット52が嵌装される。
本体51の外径は搬送側カプラ17の外筒42の先端側の内径と略同じであり、固定側カプラ33を外筒42の先端側に摺動可能に嵌装することが可能である。
【0045】
ソケット52は略円筒形状の部材であり、バルブ48に差し込まれることによりバルブ48を開いた状態とするための部材である。
【0046】
基準座34は略円筒形状の部材であり、その基部が固定治具30の本体31の係止面31a側に固定され、その先端部が係止面31aから突出している。基準座34には基部側の端面から先端側の端面まで貫通する貫通孔34aが形成される。
基準座34の先端部は、アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に固定されたときに、ちょうどアルミニウム鋳造品2の表面に当接し、その結果、貫通孔34aの開口部34bが閉塞される位置に配置される。
【0047】
連通経路35は固定治具30の本体31に形成される経路であり、その一端は固定側カプラ33の本体51に形成された貫通孔51aに連通接続され、その他端は基準座34に形成された貫通孔34aに連通接続される。
【0048】
以下では、図1乃至図5を用いて圧力検出器20を用いたアルミニウム鋳造品2の位置検出について説明する。
圧力検出器20は本発明に係るワーク位置検出手段の実施の一形態であり、エア供給経路5の空気圧が所定の値以上であるか否かを検出することにより、搬送台車10から固定治具30に受け渡されたアルミニウム鋳造品2が所定の位置に固定されたことを検出するものである。
図3に示す如く、エア供給経路5はエアポンプ18から基準座34の先端部までの空気の経路を指す。
エア供給経路5は、搬送台車10に設けられているエア供給配管19および搬送側カプラ17からなる搬送側エア供給経路5a、および、固定治具30に設けられている固定側カプラ33、連通経路35および基準座34からなる固定側エア供給経路5b、により構成される。
圧力検出器20はエア供給配管19の中途部に設けられ、エア供給配管19の空気圧が所定の値以上となった場合には「ON」となって電気信号を(ワーク搬送システム1の一連の動作を制御する図示せぬ制御装置等に)送信することが可能である。
【0049】
図3に示す如く、搬送台車10がアルミニウム鋳造品2を搬送しているときには、エアポンプ18が作動し、かつ搬送側カプラ17が固定側カプラ33に接続されていない状態となる。
このとき、バルブ48は閉じているため、エアポンプ18からエア供給配管19を経て搬送側カプラ17までのエア供給経路5の空気圧が上昇する。その結果、圧力検出器20は「ON」となる。
ここで、搬送側カプラ17が固定側カプラ33に接続されていない状態で圧力検出器20が「ON」となることにより、(a)バルブ48が確実に閉じていること、および、(b)エアポンプ18からエア供給配管19を経て搬送側カプラ17までのエア供給経路5、すなわち搬送側エア供給経路5aにおいて「エアの漏れ」が起こっていないこと、を確認することが可能である。
【0050】
図4に示す如く、搬送台車10がアルミニウム鋳造品2を固定治具30に受け渡す位置に到達し、ロボットアーム12を作動させてワーク把持機構13を固定治具30に接近させていくと、搬送側カプラ17が固定側カプラ33に接続され、かつアルミニウム鋳造品2が基準座34の先端部に当接していない状態となる。
このとき、バルブ48にはソケット52が差し込まれて開いた状態となるため、エアポンプ18からエア供給配管19、搬送側カプラ17、固定側カプラ33、連通経路35を経て基準座34までのエア供給経路5が連通する。また、基準座34の開口部34bはアルミニウム鋳造品2により閉塞されていない。従って、エア供給経路5の空気圧は下降し、圧力検出器20は「OFF」となる。
ここで、搬送側カプラ17が固定側カプラ33に接続され、アルミニウム鋳造品2が基準座34の先端部に当接していない状態で圧力検出器20が「OFF」となることにより、(a)搬送側カプラ17が固定側カプラ33に確実に接続されてバルブ48が開いていること、および、(b)固定側カプラ33、連通経路35を経て基準座34までのエア供給経路5、すなわち固定側エア供給経路5bにおいて「詰まり」が起こっていないこと、を確認することが可能である。
【0051】
図5に示す如く、ワーク把持機構13を固定治具30に更に接近させていき、ワーク把持機構13により把持されているアルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置まで移動させ、続いて係止ユニット32のランナー係合部材32aの係合孔32dに係合したナットランナー16の先端部16aを回転駆動してアルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置に固定する(図2参照)と、アルミニウム鋳造品2の表面が基準座34に当接し、開口部34bを閉塞した状態となる。
また、搬送側カプラ17は固定側カプラ33に接続された状態を保持しつつバネ44の付勢力に抗して収縮する。
このとき、図4の状態から引き続きエアポンプ18からエア供給配管19、搬送側カプラ17、固定側カプラ33、連通経路35を経て基準座34までのエア供給経路5が連通しているが、基準座34の開口部34bはアルミニウム鋳造品2により閉塞されている。従って、エア供給経路5の空気圧は上昇し、圧力検出器20は「OFF」となる。
ここで、図4の状態において一度圧力検出器20が「OFF」となり、図5の状態で再び圧力検出器20が「ON」となることにより、アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に所定の姿勢で配置されたことを確認することが可能である。
【0052】
なお、ワーク把持機構13により把持されているアルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置まで移動させ、固定治具30に固定したにも関わらず、圧力検出器20が「ON」とならず、「OFF」のままである場合には、アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に固定されていないものとみなし、一度ワーク把持機構13によりアルミニウム鋳造品2を把持し、アルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置に固定する動作を再度行う。
このように構成することにより、固定治具30へのアルミニウム鋳造品2の固定が不十分である場合(アルミニウム鋳造品2が所定の位置からずれている等)をその場で確認することが可能であり、アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に固定されないトラブルが発生した場合に通常の作業に復帰するのに要する時間を短縮し、ひいては作業効率の向上に寄与する。
【0053】
なお、アルミニウム鋳造品2は必ずしも基準座34の先端部に当接し、開口部34bを「完全に」閉塞する必要はない。
すなわち、アルミニウム鋳造品2が基準座34の先端部に当接していなくても基準座34の先端部からの距離が十分に小さい場合には、開口部34bからエアが排出される際に圧力損失が生じるため、圧力検出器20により検出されるエア供給経路5の圧力に変化が生じ、アルミニウム鋳造品2が所定の位置に固定されたことを検出することが可能である。
【0054】
以上の如く、本実施例のワーク搬送システム1は、
アルミニウム鋳造品2を搬送する搬送台車10と、
搬送台車10により搬送されてきたアルミニウム鋳造品2を所定の位置に固定する固定治具30・30・・・と、
を具備するワーク搬送システムにおいて、
搬送台車10が、
固定治具30・30・・・が所定の位置にアルミニウム鋳造品2を固定する動作を行うための駆動力を固定治具30・30・・・の係止ユニット32・32・32に供給するナットランナー16・16・16と、
アルミニウム鋳造品2が前記所定の位置に固定されたことを検出する圧力検出器20・20・20と、
を具備するものである。
以下、図6に示す従来のワーク搬送システム101と比較することにより、本実施例のワーク搬送システム1の利点について説明する。
【0055】
図6に示す従来のワーク搬送システム101は、アルミニウム鋳造品102を固定するための係止爪132・132・132を動作させるための駆動手段、すなわちアクチュエータである油圧シリンダ117・117・117および油圧シリンダ117・117・117に作動油を供給する駆動源である油圧ポンプ116、および、アルミニウム鋳造品102が所定の位置に固定されたことを検出する圧力検出器120・120・120を固定治具130・130・・・のそれぞれに設けている。
そのため、固定治具130・130・・・の数の増大に伴い油圧シリンダ117・117・117、油圧ポンプ116、圧力検出器120・120・120の数も増大し、設備コストおよびメンテナンスの負担(コストおよび労力)が増大するという問題があった。
【0056】
これに対して、図1乃至図5に示す本実施例のワーク搬送システム1は、アルミニウム鋳造品2を固定治具30の所定の位置に固定する係止ユニット32・32・32(より厳密には係止爪32c・32c・32c)を動作させるための駆動手段であるナットランナー16・16・16、および、アルミニウム鋳造品2が所定の位置に固定されたことを検出する圧力検出器20・20・20を搬送台車10に設けている。
そのため、ワークの受け渡し位置、ひいては固定治具30・30・・・の数が増大してもナットランナー16・16・16、および圧力検出器20・20・20の数を増やす必要はなく、設備コストおよびメンテナンスの負担(コストおよび労力)の増大を抑えることが可能である。
【0057】
なお、本実施例のワーク搬送システム1は、所定の圧力以上で「ON」となり電気信号を送信する構成としたが、本発明に係るワーク搬送システムはこれに限定されず、ワーク位置検出手段を搬送側エア供給経路の圧力値を検出する圧力センサで構成しても良い。また、ワーク位置検出手段を、静電容量や磁界の変化、あるいは光学的な手法等によりワークが所定の位置に固定されたことを検出するセンサとしても良い。
【0058】
また、図6に示す従来のワーク搬送システム101は、エアポンプ118、エアポンプ118から圧送される空気を固定治具130に供給するエア供給配管119・119・119、およびエア供給配管119・119・119からの空気を排出する基準座134・134・134を固定治具130のそれぞれに設けるとともに、エア供給配管119・119・119の中途部にそれぞれ圧力検出器120・120・120を設けている。
そして、ワーク搬送システム101は、所定の位置に固定されたアルミニウム鋳造品102が基準座134・134・134に当接して基準座134・134・134を閉塞することに起因するエア供給配管119・119・119の内部の空気の圧力上昇を圧力検出器120・120・120で検出することにより、アルミニウム鋳造品102が所定の位置に固定されたことを検出している。
そのため、固定治具130・130・・・の数の増大に伴いエアポンプ118、エア供給配管119・119・119および圧力検出器120・120・120の数も増大し、設備コストおよびメンテナンスの負担(コストおよび労力)が増大するという問題があった。
【0059】
これに対して、図1乃至図5に示す本実施例のワーク搬送システム1の場合、搬送台車10がエアポンプ18、エア供給配管19・19・19および圧力検出器20・20・20を具備する。
そのため、ワークの受け渡し位置、ひいては固定治具30・30・・・の数が増大してもエアポンプ18、エア供給配管19・19・19および圧力検出器20・20・20の数を増やす必要はなく、設備コストおよびメンテナンスの負担(コストおよび労力)の増大を抑えることが可能である。
【0060】
さらに、図1乃至図5に示す本実施例のワーク搬送システム1は、
搬送台車10がいずれかの固定治具30にアルミニウム鋳造品2を受け渡す位置にあるときに一端(固定側カプラ33の先端部)が搬送側エア供給経路5a(より厳密には搬送側カプラ17)に接続され、他端(基準座34の先端部)が固定治具30の所定の位置に固定されたアルミニウム鋳造品2により閉塞される位置に配置される固定側エア供給経路5bを固定治具30に設け、
搬送側エア供給経路5aと固定側エア供給経路5bとが接続されると開き、搬送側エア供給経路5aと固定側エア供給経路5bとの接続が解除されると閉じるバルブ48を搬送側エア供給経路5a(より厳密には搬送側カプラ17)に設けている。
このように構成することにより、アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に固定されたことを圧力検出器20が検出するにあたって、搬送側エア供給経路5aの圧力の変化により、搬送側エア供給経路5aの中途部で空気の漏れがないこと、搬送側エア供給経路5aと固定側エア供給経路5bとが確実に接続されたこと、固定側エア供給経路5bに詰まりが発生していないこと、を合わせて確認することが可能であり、圧力検出器20による検出結果(アルミニウム鋳造品2が固定治具30の所定の位置に固定されたか否か)の信頼性が向上する。
【0061】
なお、本実施例のワーク搬送システム1は一台の搬送台車10と六基の固定治具30・30・・・とを具備するが、本発明に係るワーク搬送システムはこれに限定されず、搬送手段および固定手段はそれぞれ単数または複数あれば良い。
ただし、本発明に係るワーク搬送システムは、搬送手段の数が少ないほど、あるいは固定手段の数が多いほど、設備コストおよびメンテナンスの負担(コストおよび労力)の増大を抑える効果が大きくなる。
【0062】
また、本実施例のワーク搬送システム1は、電動式のトルクレンチであるナットランナー16により固定治具30の係止ユニット32に駆動力を供給する構成であるが、本発明に係るワーク搬送システムはこれに限定されず、例えば搬送手段に設けられた油圧式または空圧式のトルクレンチ、油圧または空圧シリンダ等により、固定手段が所定の位置にワークを固定する動作を行うための駆動力を固定手段に供給する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るワーク搬送システムの実施の一形態を示す模式図。
【図2】ワーク把持機構および固定治具を示す図。
【図3】ワーク搬送時のエア供給経路を示す要部断面図。
【図4】エア供給経路接続時のエア供給経路を示す断面図。
【図5】ワーク固定時のエア供給経路を示す断面図。
【図6】従来のワーク搬送システムの実施例を示す模式図。
【符号の説明】
【0064】
1 ワーク搬送システム
2 アルミニウム鋳造品(ワーク)
10 搬送台車(搬送手段)
16 ナットランナー(駆動手段)
20 圧力検出器(ワーク位置検出手段)
30 固定治具(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されてきたワークを所定の位置に固定する固定手段と、
を具備するワーク搬送システムにおいて、
前記搬送手段が、
前記固定手段が所定の位置にワークを固定する動作を行うための駆動力を前記固定手段に供給する駆動手段と、
前記ワークが前記所定の位置に固定されたことを検出するワーク位置検出手段と、
を具備することを特徴とするワーク搬送システム。
【請求項2】
前記搬送手段は、
エアポンプと、
該エアポンプから圧送された空気を前記固定手段に供給するための搬送側エア供給経路と、
を具備し、
前記ワーク位置検出手段は前記搬送側エア供給経路の圧力を検出する圧力検出器であることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記搬送手段が前記固定手段にワークを受け渡す位置にあるときに一端が前記搬送側エア供給経路に接続され、他端が前記固定手段の所定の位置に固定されたワークにより閉塞される位置に配置される固定側エア供給経路を前記固定手段に設け、
前記搬送側エア供給経路と固定側エア供給経路とが接続されると開き、前記搬送側エア供給経路と固定側エア供給経路との接続が解除されると閉じる開閉弁を前記搬送側エア供給経路に設けることを特徴とする請求項2に記載のワーク搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−190644(P2007−190644A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11385(P2006−11385)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】