説明

ワーク搬送装置

【課題】搬送ヘッドよりも大きなサイズのシート状のワークをその表面を非接触状態で吸引保持するようにする。
【解決手段】気体案内面14を有する凹部13が形成された搬送ヘッド11には、環状の気体噴出口16が形成されたノズル15が凹部13内に突出して取り付けられており、気体噴出口16から噴出された気体は気体案内面14に沿って径方向外方に案内される。搬送ヘッド11に装着される保持プレート25には、気体案内面14に案内された気体を保持プレート25の前面外周部に向けて噴出する複数の気体噴出孔31a,31bが形成されるとともに気体噴出孔31a,31bから噴出された気体の一部を凹部13内に逆流させる気体戻し孔32がノズル15の外周面15bにオーバーラップさせて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状のワークを吸引保持して搬送するワーク搬送装置に関し、特に四辺形のシート状のワークを吸引保持するようにしたワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状ないしシート状の被加工物つまりワークを搬送するための搬送装置としては、ベルヌーイハンドないしベルヌーイチャックと言われる非接触式の搬送装置がある。このタイプの搬送装置はワークに対向する平坦な吸着面が形成された搬送ヘッドを有しており、吸着面とワークとの間に沿って空気等の気体を流すことによって吸着面の前方側に負圧を発生させるようにしている。この負圧によりワークを吸引すると、吸着面に沿って流れる気体に向けてワークが吸引されるので、ワークは吸着面に対して非接触となった状態で搬送ヘッドにより搬送される。
【0003】
搬送ヘッドの形態としては、特許文献1に記載されるように、ワークに対向する先端面の中央部に凹面が形成され、外周部にワークを吸引して保持する環状の平坦な保持面が形成されたタイプがあり、凹面の中心部に設けられたノズルから凹面に沿って空気を噴射することにより、凹面に沿って案内された空気はそのまま保持面に沿って流れ、ワークを吸引することになる。このタイプの搬送ヘッドにおいては、空気をノズルから噴出させた状態のもとで、支持台に配置されたワークに向けて搬送ヘッドを下向きにして接近させると、搬送ヘッドの保持面に向けてワークが持ち上げられて搬送ヘッドに吸引保持される。
【0004】
シート状のワークを搬送するための搬送ヘッドとしては、特許文献2に記載されるように、空気を噴出するテーパ形状の多数の吐出孔が形成されたディフューザプレートを有するタイプがあり、それぞれの吐出孔から空気を噴出することにより、ワークはディフューザプレートに吸引されて非接触となってディフューザプレートに保持される。さらに、半導体ウエハ等の薄膜状のワークを保持する保持装置としては、特許文献3に記載されるように、非接触状態となって保持されたワークが横滑りしないように、環状の吸着パッドの径方向内方にワークに接触する弾性部材を設けるようにしたタイプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−181879号公報
【特許文献2】特開2007−324442号公報
【特許文献3】特開2007−329375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送ヘッドの先端面の面積よりも大きな面積のシート状のワークを水平に吸引保持して搬送すると、搬送ヘッドから外方に突出した部分が自重で下向きに湾曲してしまい、ワーク全体を真っ直ぐに伸ばして状態で搬送することができなくなる。ワークの種類によっては、搬送時に湾曲してしまうと、搬送時にワークが反った状態となることから、製品品質を低下させてしまうものがある。そこで、特許文献1に記載されたタイプの凹部付きの搬送ヘッドを用いて、搬送ヘッドをワークのサイズに対応させて大型化することなく、搬送ヘッドの先端面の面積よりも大きな面積を有するシート状のワークを吸引保持して搬送するために、搬送ヘッドの先端面にワークの形状に対応した形状の孔付きの保持プレートを装着するようにしたタイプの搬送装置の開発が試みられた。
【0007】
多数の噴出孔が分散して形成されワークのサイズに対応したサイズの保持プレートを搬送ヘッドの先端面にスペーサを介して装着すると、凹部の底面に沿って流れた空気が保持プレートの背面に沿って流れるとともに、保持プレートに形成された多数の孔から噴出されて保持プレートの前面に沿って流れることになる。これにより、ワークをこれに対応したサイズの保持プレートに吸引保持させることが可能となった。
【0008】
しかしながら、シート状のワークをその表面に処理液等が付着した濡れた状態で搬送するようにしたところ、搬送した後のワーク開放位置において空気の噴出を停止しても、保持プレートの表面にワークが付着した状態となってワークを離脱することができないということが判明した。この理由は、保持プレートに多数の孔を分散して形成すると、保持プレートに吸引保持されたシート状のワークが部分的に保持プレートに接触してしまい、ワークの表面に付着した液体の表面張力によってワークが保持プレートに密着してしまうからであると考えられる。このように、ワークが部分的に保持プレートに接触すると、濡れていないようなワークでも保持プレートとの接触により表面に傷が付くおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、搬送ヘッドよりも大きなサイズのシート状のワークをその表面を非接触状態で吸引保持するようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク搬送装置は、シート状のワークを吸引搬送するワーク搬送装置であって、先端面に気体案内面を有する凹部が形成された搬送ヘッドと、前記搬送ヘッドに前記凹部内に突出して取り付けられ、前記凹部の前記気体案内面に対向して前記気体案内面との間で気体を前記気体案内面に向けて噴出する環状の気体噴出口を形成するノズルと、ワークの形状に対応した形状を有し、前記搬送ヘッドの先端にその外周部外方に迫り出して装着される保持プレートとを有し、前記気体案内面に案内された気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する複数の気体噴出孔を前記保持プレートに形成し、前記気体噴出孔から噴出された気体の一部を凹部内に前記ノズルの外周面側から逆流させる気体戻し孔を、前記ノズルの外周面にオーバーラップさせて前記保持プレートに形成し、ワークの外周エッジに当接してワーク搬送時に前記ワークの前記保持プレートに対する横滑りを防止する突起を前記保持プレートの外周縁部に設けることを特徴とする。
【0011】
本発明のワーク搬送装置においては、前記気体噴出孔は、それぞれ前記ノズルの中心から同一の半径位置に円周方向に間隔を隔てて形成され、前記気体案内面の外周端にまで流れた気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する外側の気体噴出孔と、前記半径位置よりも小さい半径位置に円周方向に間隔を隔てて形成され、前記気体案内面の中間部にまで流れた気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する内側の気体噴出孔とを有すること特徴とする。本発明のワーク搬送装置においては、前記気体戻し孔は、前記保持プレートの中心部に形成され前記ノズルの外径よりも大径であることを特徴とする。ワーク搬送装置においては、前記気体戻し孔を円周方向に間隔を隔てて前記保持プレートに複数形成することを特徴とする。本発明のワーク搬送装置においては、前記保持プレートは四辺形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送ヘッドの先端に搬送ヘッドの外径よりも大きいサイズの保持プレートを装着し、搬送ヘッドの気体案内面により案内された気体を噴出する複数の気体噴出孔を保持プレートに形成したので、気体噴出孔から保持プレートの前面外周部にまで流れる気体によりワークを吸引保持することができる。これにより、搬送ヘッドよりも大きい寸法の保持プレートを用いてワークを非接触状態で吸引保持することができる。
【0013】
保持プレートの中央部にはノズルの外周面にオーバーラップさせて気体戻し孔が形成されており、気体噴出孔から保持プレートの前面に流れる気体の一部を凹部内に逆流させるようにしたので、逆流する気体が保持プレートとワークとの間に流れて、ワークが保持プレートに接触することが防止されるとともにワークが非接触状態となって保持プレートに保持される。
【0014】
ワークは保持プレートに対して全面が非接触状態となって保持されるので、表面が濡れた状態のワークを搬送した後に、気体の供給を停止させると、確実にワークを搬送装置から離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態であるワーク搬送装置の正面側を示す斜視図である。
【図2】図1の背面側を示す斜視図である。
【図3】図1の一部切欠き側面図である。
【図4】ワーク搬送装置の正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態であるワーク搬送装置の一部切欠き側面図である。
【図6】比較例としてのワーク搬送装置を示す一部切欠き側面図である。
【図7】他の比較例としてのワーク搬送装置を示す一部切欠き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図3に示されるように、このワーク搬送装置はロボットアーム等の移動部材10に装着されて使用される。ワーク搬送装置は、ワークを吸引保持する位置と、吸引保持された状態で搬送されたワークWをワーク搬送装置から離脱させる位置との間を往復動自在となっている。ワーク搬送装置は、外周面が円形となったブロック状の搬送ヘッド11を有しており、移動部材10は搬送ヘッド11の後端面に装着される。
【0018】
搬送ヘッド11の先端面にはその外周部に環状に形成された取付面12の内側に凹部13が形成されている。この凹部13は搬送ヘッド11の中心部に径方向を向いて取付面12よりも後退して形成された平坦部14aと、この平坦部14aと取付面12との間に湾曲して形成された湾曲部14bとを有する気体案内面14により形成されている。
【0019】
搬送ヘッド11の径方向中心部には凹部13内に突出してノズル15が設けられており、このノズル15は取付面12よりも後退した先端面15aを有し、ノズル15の外周面15bは円形となっている。ノズル15の背面側の外周部には気体案内面14との間で環状の気体噴出口16を形成する噴出口形成面17が形成されており、その内側には環状のポケット溝18が環状に形成されている。搬送ヘッド11にはポケット溝18に開口する気体供給孔19が形成されており、気体供給孔19は図2に示されるように、搬送ヘッド11の後端面に開口する給気ポート21に連通している。この給気ポート21には圧縮空気源に接続された給気配管が接続されるようになっており、給気配管を介して気体供給孔19には外部から圧縮空気が供給される。気体供給孔19の前方にはポケット溝18が形成されているので、複数の気体供給孔19からポケット溝18内に流入した空気はポケット溝18内で均一に分散された後に気体噴出口16から気体案内面14に向けて噴出される。このような搬送ヘッド11の形状は、上述した特許文献1に記載されたワーク搬送装置と同様となっている。
【0020】
給気ポート21に加えて、搬送ヘッド11の外周面に開口させて給気ポート22が気体供給孔19に連通して形成されており、図2に示されるように、この給気ポート22は搬送ヘッド11にねじ止めされる封止部材23により閉じられている。したがって、搬送ヘッド11の後端面に開口した給気ポート21から圧縮空気を供給する形態に代えて、搬送ヘッド11の外周面に開口した給気ポート22から空気を供給することもでき、その場合には給気ポート21を封止部材により閉じることになる。2つの給気ポート21,22の一方から圧縮空気を供給すると、気体案内面14とこれに対向する噴出口形成面17との間に環状に形成された気体噴出口16から径方向外方に圧縮空気が噴出し、噴出した空気は気体案内面14に沿ってこれに案内されて取付面12に向けて流れる。
【0021】
搬送ヘッド11の先端には保持プレート25が装着されている。この保持プレート25の背面の取付孔に搬送ヘッド11が嵌合し、保持プレート25の背面に設けられたピン(図示省略)が搬送ヘッド11に形成された取付孔26に嵌合され、保持プレート25はピンにより搬送ヘッド11に固定されている。保持プレート25はワークWの形状に対応して正方形となっており、保持プレート25の図1における水平方向の縦寸法と上下方向の横寸法は搬送ヘッド11の外径よりも大きく設定され、保持プレート25の外周部は搬送ヘッド11の外周部よりも外方に迫り出している。
【0022】
保持プレート25の前面の外周縁部には突起27が設けられている。突起27は、図1における左右の側部と上下の側部にそれぞれ2つずつ設けられている。ただし、突起27の数は2つに限られず任意の数に設定される。ワークWは突起27の内側に配置されて搬送ヘッド11により吸引保持する搬送開始位置からワーク離脱位置まで搬送され、ワーク搬送時には、ワークWの外周エッジが突起27に当接してワークWの保持プレート25に対する横滑りと脱落が防止される。
【0023】
図3および図4に示されるように、保持プレート25にはノズル15の中心から半径R1の位置に円周方向に間隔を隔てて12個の気体噴出孔31aが形成されている。それぞれの気体噴出孔31aは搬送ヘッド11の気体案内面14の湾曲部14bと取付面12との境界部を横断する位置に形成されており、凹部13内を気体案内面14の外周端にまで径方向外方に向けて案内された空気は、その姿勢を大きく変更することなく、気体噴出孔31aを貫通して保持プレート25の前面外周部に向けてこれに沿うようにして噴出される。なお、気体噴出孔31aの数は図示する数に限定されることなく、任意の数とすることができる。
【0024】
保持プレート25にはノズル15の中心から半径R1よりも小さい半径R2の位置に円周方向に間隔を隔てて8つの気体噴出孔31bが形成されている。それぞれの気体噴出孔31bは搬送ヘッド11の気体案内面14に対応する位置に形成されており、凹部13内を気体案内面14の中間部にまで径方向外方に向けて案内された空気の大部分は、気体噴出孔31bから保持プレート25を貫通し保持プレート25の前面外周部に向けて噴出される。気体噴出孔31bから噴出される空気も、その姿勢を大きく変更することなく、気体噴出孔31bを貫通して保持プレート25の前面外周部に向けてこれに沿うようにして噴出される。
【0025】
それぞれの気体噴出孔31aは外側の気体噴出孔となっており、気体噴出孔31bは気体噴出孔31aよりも径方向内側に配置された内側の気体噴出孔となっている。気体噴出孔31bの数も図示する数に限定されることなく、任意の数とすることができる。
【0026】
それぞれの気体噴出孔31a,31bを貫通した空気は、ノズル15の気体噴出口16から噴出されて気体案内面14に沿って径方向外方に向かう姿勢となっているので、図3において矢印で示されるように保持プレート25の前面に沿って流れる。これにより、それぞれの気体噴出孔31a,31bから噴出して保持プレート25の前面に沿って流れる空気に対して保持プレート25の前方側から空気が回り込み、保持プレート25の前面側に負圧が発生する。搬送ヘッド11の径方向外方に対応する保持プレート25の外周部には凹部13から直接空気が供給されることはないが、気体噴出孔31a,31bから噴出した空気が外周部に案内されるので、その部分に沿って流れる空気により保持プレート25の外周部の前面側にも負圧領域が形成される。
【0027】
このように、保持プレート25の前面側には全体的に負圧領域が形成されるので、保持プレート25の外周部には気体噴出孔が形成されていないが、保持プレート25をワークWに接近させると、ワークWは保持プレート25に引き寄せられて、全体的に湾曲することなく、ワークWの表面は保持プレート25に非接触状態となって吸引保持される。
【0028】
保持プレート25の中央部には、ノズル15の外径よりも大径の気体戻し孔32が形成されている。この気体戻し孔32はノズル15の外周面15bを横断するようにこれにオーバーラップして形成されている。気体噴出孔31a,31bから噴出された空気の大部分は、前述のように、径方向外方に向けて流れ、残りは径方向内方に向けて流れる。つまり、気体戻し孔32を介して凹部13内に外周面15bに沿って逆流することになる。このように、ノズル15の先端面15aに対応させて保持プレート25に気体戻し孔32を形成すると、気体噴出孔31a,31bから噴出した空気の一部が気体戻し孔32を介して凹部13内に逆流する空気の流れが形成されるので、ワークWのうちノズル15の先端面15aに対応する部分は保持プレート25に対して大きく湾曲することなく、ワークWと保持プレート25の前面との間には、全体的にほぼ同様の隙間が形成された状態となってワークWが保持プレート25に対して非接触状態で吸引保持される。
【0029】
図5は本発明の他の実施の形態であるワーク搬送装置を示す一部切欠き側面図である。図1〜図4に示したワーク搬送装置の保持プレート25には、気体戻し孔32がノズル15の先端面に対応させて1つ形成されているのに対し、図5に示す保持プレート25には、複数の気体戻し孔32がそれぞれノズル15の外周面15bを横断するようにして形成されている。それぞれの気体戻し孔32は、ノズル15の中心から所定の半径の位置に円周方向に間隔を隔てて形成されている。気体戻し孔32の径方向外方には、上述したワーク搬送装置と同様に、気体噴出孔31aと気体噴出孔31bが複数個形成されている。
【0030】
図6および図7は比較例として示すワーク搬送装置であり、それぞれは搬送ヘッド11を上述した搬送ヘッド11と同一の構造とし、保持プレート25の形状を相違させて実験を行った。図6に示すように、保持プレート25に気体案内面14の中間部に対応させて複数の気体噴出孔31を形成し、ノズル15の先端面15aに対応させてその外径よりも小径の気体戻し孔32を形成した場合には、ノズル15から空気を噴出させた状態で搬送ヘッド11をワークに接近させても、ワークWを確実に吸引保持させることができなかった。このため、作業者が手作業でワークWを保持プレート25に接近させて吸引保持させる必要があった。ただし、表面が濡れたワークWを保持プレート25により吸引保持した後に、空気の供給を停止させても、ワークWは保持プレート25に接触することなく、ワークWを確実に保持プレート25から離脱させることが可能であった。
【0031】
一方、図7に示すように、全体的に多数の気体噴出孔31が形成された保持プレート25を搬送ヘッド11の先端面にスペーサ34を介して装着するようにした場合には、ノズル15から空気を噴出させた状態で搬送ヘッド11をワークWに接近させると、ワークWを保持プレート25に向けて吸引させることが可能であったが、ワークWの全体が保持プレート25の前面に接触してしまうことが判明した。ワークWが部分的に保持プレート25に接触すると、表面が濡れた状態のワークWを吸引保持して搬送した後にワークWを離脱する際にワークWが保持プレート25に水分の表面張力によって密着した状態となり、空気の供給を停止してもワークWが保持プレート25に接触した状態となってしまった。しかも、ワークWが保持プレート25に接触してしまうと、非接触状態でのワークを搬送することができなくなり、ワークWに傷がつく可能性がある。このため、濡れた状態のワークWを搬送することができないので、搬送前の処理工程で濡れた状態となったワークWを次の工程に搬送するには、予めワークWを乾燥させる必要がある。
【0032】
これに対して、図1〜図4に示す本発明のワーク搬送装置においては、気体案内面14によって案内された空気が気体噴出孔31a,31bを貫通した後に保持プレート25の前面に沿って流れるようにしたので、搬送ヘッド11をワークWに接近させると、ワークWは保持プレート25に向けて持ち上げられるように吸引保持され、吸引保持を確実に行うことができた。しかも、ワークWは部分的に反りや湾曲を発生させることなく、全体的にほぼ平坦となった状態で保持プレート25に吸引保持され、ワークWが保持プレート25に接触することがなかった。これにより、濡れた状態のワークWを搬送した後に気体噴出口16からの空気の噴出を停止させると、ワークWを保持プレート25から確実に離脱させることが可能であった。ワーク搬送時にワークWの外周エッジは突起27の内面に当接してワークWの横滑りが防止されるが、ワーク離脱時にワークWの外周エッジと突起27とが接触しても、ワークWを離脱させることができた。
【0033】
本発明のワーク搬送装置においては、搬送ヘッド11の先端面に保持プレート25を装着して保持プレート25に対応したサイズのワークを吸引保持するようにしたので、ワークのサイズが変更されたときには、搬送ヘッド11を交換することなく、搬送ヘッド11に装着される保持プレート25を交換することにより、種々のサイズのワークを吸引保持することができる。
【0034】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示するワークWは正方形となっているが、縦寸法と横寸法が相違した長方形のワークWについても吸引搬送することができる。その際には、保持プレート25はワークWのサイズに対応させて長方形に設定される。ノズル15に供給する気体としては、空気のみならず窒素ガス等を供給するようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 移動部材
11 搬送ヘッド
12 取付面
13 凹部
14 気体案内面
14a 平坦部
14b 湾曲部
15 ノズル
16 気体噴出口
17 噴出口形成面
18 ポケット溝
19 気体供給孔
21 給気ポート
25 保持プレート
27 突起
31a,31b 気体噴出孔
32 気体戻し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のワークを吸引搬送するワーク搬送装置であって、
先端面に気体案内面を有する凹部が形成された搬送ヘッドと、
前記搬送ヘッドに前記凹部内に突出して取り付けられ、前記凹部の前記気体案内面に対向して前記気体案内面との間で気体を前記気体案内面に向けて噴出する環状の気体噴出口を形成するノズルと、
ワークの形状に対応した形状を有し、前記搬送ヘッドの先端にその外周部外方に迫り出して装着される保持プレートとを有し、
前記気体案内面に案内された気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する複数の気体噴出孔を前記保持プレートに形成し、
前記気体噴出孔から噴出された気体の一部を凹部内に前記ノズルの外周面側から逆流させる気体戻し孔を、前記ノズルの外周面にオーバーラップさせて前記保持プレートに形成し、
ワークの外周エッジに当接してワーク搬送時に前記ワークの前記保持プレートに対する横滑りを防止する突起を前記保持プレートの外周縁部に設けることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク搬送装置において、前記気体噴出孔は、それぞれ前記ノズルの中心から同一の半径位置に円周方向に間隔を隔てて形成され、前記気体案内面の外周端にまで流れた気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する外側の気体噴出孔と、前記半径位置よりも小さい半径位置に円周方向に間隔を隔てて形成され、前記気体案内面の中間部にまで流れた気体を前記保持プレートの前面外周部に向けて噴出する内側の気体噴出孔とを有すること特徴とするワーク搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のワーク搬送装置において、前記気体戻し孔は、前記保持プレートの中心部に形成され前記ノズルの外径よりも大径であることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のワーク搬送装置において、前記気体戻し孔を円周方向に間隔を隔てて前記保持プレートに複数形成することを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置において、前記保持プレートは四辺形であることを特徴とするワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−108879(P2011−108879A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262990(P2009−262990)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】