説明

三次元測定機

【課題】精度よく測定しなければならない小さい領域と、精度よく測定しなくてもよい大きな領域とが混在する大きな被測定物を適切に測定することができる安価な三次元測定機の提供。
【解決手段】三次元測定機1は、三次元測定機本体2と、制御装置3とを備える。三次元測定機本体2は、測定子を有するプローブ4と、プローブ4を駆動する駆動機構5とを備える。プローブ4は、測定子を駆動する駆動部43を備える。制御装置3は、第1測定部321と、第2測定部322とを備える。第1測定部321は、駆動部43にて駆動される測定子の移動量を測定する。第2測定部322は、プローブ4の移動量を測定する。また、第2測定部322による測定精度は、第1測定部321による測定精度より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物に接触することで一定の範囲内を移動する測定子を有するプローブと、プローブを支持するとともに、駆動する駆動機構とを備え、測定子の移動量、及びプローブの移動量に基づいて、被測定物を測定する三次元測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の表面形状測定装置(三次元測定機)では、測定子を有する倣いプローブと、駆動機構とを備え、測定子を被測定物に押し込んだ状態で測定子の移動量、及びプローブの移動量を取得し、取得した各移動量を合成することで被測定物を測定している。
このような三次元測定機では、駆動機構にて測定子を移動させることで被測定物を測定するため、被測定物よりも大きい測定空間を有する三次元測定機を用いて測定する必要がある。したがって、例えば、自動車用の部品などの大きな被測定物を測定する場合には、大きな三次元測定機を用いて測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、複数の小さな穴が所定の間隔で連続して形成されているような大きな被測定物を三次元測定機にて測定する際に、穴の径は精度よく測定しなければならないが、各穴のピッチは精度よく測定しなくてもよいような場合、すなわち精度よく測定しなければならない小さい領域と、精度よく測定しなくてもよい大きな領域とが混在する場合がある。
しかしながら、このような場合に、特許文献1に記載の三次元測定機では、精度よく測定しなければならない小さい領域に応じた測定精度を有する高価な三次元測定機を用いて測定しなければならないという問題がある。
また、大きな三次元測定機は、駆動機構も大きくなるので、小さい領域を高速に測定することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、精度よく測定しなければならない小さい領域と、精度よく測定しなくてもよい大きな領域とが混在する大きな被測定物を適切に測定することができる安価な三次元測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三次元測定機は、一定の範囲内で移動可能な測定子を有するプローブと、前記プローブを支持するとともに、駆動する駆動機構とを備え、前記測定子の移動量、及び前記プローブの移動量に基づいて、被測定物を測定する三次元測定機であって、前記プローブは、前記測定子を駆動する測定子駆動部を備え、前記三次元測定機は、前記測定子駆動部にて駆動される前記測定子の移動量を測定する第1測定部と、前記プローブの移動量を測定する第2測定部とを備え、前記第2測定部による測定精度は、前記第1測定部による測定精度より低いことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、三次元測定機は、測定子駆動部にて測定子を駆動することで小さい領域を測定し、駆動機構にてプローブを駆動することで大きな領域を測定することができる。また、プローブの移動量を測定する第2測定部による測定精度は、測定子の移動量を測定する第1測定部による測定精度より低いので、精度よく測定しなければならない小さい領域と、精度よく測定しなくてもよい大きな領域とが混在する大きな被測定物を適切に測定することができる。また、第1測定部による測定精度を向上させるだけでよいので三次元測定機を安価に製造することができる。
さらに、測定子駆動部は、駆動機構にて駆動されるプローブに設けられているので、駆動機構と比較して小さくなる。したがって、小さい領域を高速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元測定機を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における三次元測定機本体の一部を示す概略模式図。
【図3】前記実施形態におけるプローブを示す拡大模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機1を示すブロック図である。
三次元測定機1は、図1に示すように、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2を制御する制御装置3とを備える。
【0010】
図2は、三次元測定機本体2の一部を示す概略模式図である。なお、図2では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸、及びY軸として説明する。以下の図面においても同様である。
三次元測定機本体2は、図1、及び図2に示すように、被測定物9を測定するための球状の測定子41Aを有するプローブ4と、プローブ4を支持するとともに、駆動する駆動機構5とを備える。なお、本実施形態では、被測定物9として複数の小さな穴91,92,93がX軸方向に沿って所定の大きな間隔で連続して形成されている大きな部材を例示して説明する。
【0011】
図3は、プローブ4を示す拡大模式図である。
プローブ4は、図3に示すように、Z軸方向を軸とする棒状に形成され、測定子41Aを先端側(図3中下方側)に有するスタイラス41と、スタイラス41の基端側を支持する支持機構42とを備える。
支持機構42は、図1、及び図3に示すように、一定の範囲内でスタイラス41をX,Y,Z軸の各軸方向(図3中矢印方向)に移動可能に支持するものであり、スタイラス41を各軸方向に駆動する駆動部43と、スタイラス41の各軸方向の移動量を検出するためのプローブセンサ44とを備える。すなわち、駆動部43は、スタイラス41を駆動することで測定子41Aを駆動する測定子駆動部として機能する。
【0012】
駆動機構5は、図1、及び図2に示すように、プローブ4をX軸方向(図2中矢印方向)に沿って移動可能に支持するとともに、プローブ4をX軸方向に沿って駆動するものであり、プローブ4のX軸方向の移動量を検出するためのスケールセンサ51を備える。
【0013】
制御装置3は、図1に示すように、スタイラス41、及びプローブ4の駆動を制御する駆動制御手段31と、プローブセンサ44、及びスケールセンサ51による検出結果に基づいて、被測定物9の表面形状等を測定する測定手段32とを備える。
駆動制御手段31は、予め入力された被測定物9の輪郭データに基づいて、スタイラス41、及びプローブ4を駆動するための位置指令値を駆動部43、及び駆動機構5に対して出力する。
【0014】
測定手段32は、第1測定部321と、第2測定部322とを備える。
第1測定部321は、プローブセンサ44による検出結果に基づいて、駆動部43にて駆動されるスタイラス41の移動量、すなわち測定子41Aの移動量を測定する。
第2測定部322は、スケールセンサ51による検出結果に基づいて、駆動機構5にて駆動されるプローブ4の移動量を測定する。また、第2測定部322による測定精度は、第1測定部321による測定精度より低い。
【0015】
以下、三次元測定機1にて被測定物9の各穴91〜93の径、及びピッチを測定する方法について説明する。
例えば、穴92の径を測定するには、駆動制御手段31による制御の下、駆動機構5は、図2に示すように、プローブ4を穴92の近傍位置まで移動させ、第2測定部322は、プローブ4の移動量を測定する。
第2測定部322にてプローブ4の移動量が測定されると、駆動制御手段31による制御の下、駆動部43は、スタイラス41を移動させることで穴92の内側面に測定子41Aを当接させ、第1測定部321は、測定子41Aの移動量を測定する。
【0016】
第1測定部321にて測定子41Aの移動量が測定されると、測定手段32は、プローブ4の移動量、及び測定子41Aの移動量に基づいて、測定子41Aを当接させた穴92の内側面の位置を測定する。
そして、測定手段32は、駆動部43にて測定子41Aを穴92の内周に沿って移動させながら測定することで穴92の中心、及び直径を測定する。
【0017】
次に、穴92に隣接する穴93の径を測定するには、駆動制御手段31による制御の下、駆動機構5は、プローブ4を穴93の近傍位置まで移動させる。そして、測定手段32は、穴92と同様に穴93の中心、及び直径を測定し、測定した穴92,93の中心、及び直径に基づいて、穴92,93のピッチを測定する。
【0018】
本実施形態に係る三次元測定機1によれば、次のような効果がある。
(1)三次元測定機1は、駆動部43にて測定子41Aを駆動することで穴91〜93を測定し、駆動機構5にてプローブ4を駆動することで穴91〜93のピッチを測定することができる。また、プローブ4の移動量を測定する第2測定部322による測定精度は、測定子41Aの移動量を測定する第1測定部321による測定精度より低いので、精度よく測定しなければならない小さい領域である穴91〜93と、精度よく測定しなくてもよい大きな領域である穴91〜93のピッチとが混在する大きな被測定物9を適切に測定することができる。
【0019】
(2)第1測定部321による測定精度を向上させるだけでよいので三次元測定機1を安価に製造することができる。
(3)駆動部43は、駆動機構5にて駆動されるプローブ4に設けられているので、駆動機構5と比較して小さくなる。したがって、小さい領域を高速に測定することができる。
【0020】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、駆動機構5は、プローブ4をX軸方向に沿って1軸方向に駆動していたが、2軸方向や、3軸方向に駆動してもよい。また、駆動機構は、直線的にプローブを移動するものでなくてもよく、例えば、ロボットアームのように、非直線的にプローブを移動するものであってもよい。要するに、駆動機構は、プローブを支持するとともに、駆動する機構であればよい。
【0021】
前記実施形態では、三次元測定機1は、1つのプローブ4を備えていたが、2つ以上のプローブを備えていてもよい。
前記実施形態では、プローブ4は、スタイラス41の軸がZ軸方向となる姿勢で駆動機構5に支持されていたが、プローブは、どのような姿勢で駆動機構に支持されていてもよい。
前記実施形態では、三次元測定機1は、被測定物9に接触することで測定をする接触式の測定子41Aを備えていた。これに対して、例えば、三次元測定機は、画像プローブ等のように被測定物に接触することなく測定をする非接触式の測定子を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、三次元測定機に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…三次元測定機
4…プローブ
5…駆動機構
41A…測定子
43…駆動部(測定子駆動部)
321…第1測定部
322…第2測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の範囲内で移動可能な測定子を有するプローブと、前記プローブを支持するとともに、駆動する駆動機構とを備え、前記測定子の移動量、及び前記プローブの移動量に基づいて、被測定物を測定する三次元測定機であって、
前記プローブは、
前記測定子を駆動する測定子駆動部を備え、
前記三次元測定機は、
前記測定子駆動部にて駆動される前記測定子の移動量を測定する第1測定部と、
前記プローブの移動量を測定する第2測定部とを備え、
前記第2測定部による測定精度は、前記第1測定部による測定精度より低いことを特徴とする三次元測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−256121(P2010−256121A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105205(P2009−105205)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】