説明

上澄水排出装置

【課題】乾燥汚泥の搬出量を低減するとともに搬出を容易にする天日乾燥床を提供する。
【解決手段】貯槽11に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床で利用する装置で、上澄水排出装置10は、貯槽の内部に投入された含水汚泥から分離された上澄水を排出する上澄水排出口を有する上澄水排出管101と、貯槽内の上澄水の水位を測定するセンサ102と、センサで測定される水位に応じて上澄水を排出する上澄水排出口の高さを制御する制御装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、浄水施設の汚泥乾燥処理に用いられる天日乾燥床に利用される上澄水排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場では、処理対象の原水から発生した汚泥の乾燥に天日乾燥床を利用することがある。天日乾燥床は、天日によって含水汚泥の水分を蒸発させるとともに、貯槽の底面に設けられる敷砂利等の透水層を透過した水分を排水管等を介して排水することで、貯槽に投入した含水汚泥を乾燥させるものである。そのため、天日乾燥床に汚泥を投入してある程度の期間が経過すると、透水層上には、乾燥した汚泥が堆積する。その後、天日乾燥床では、乾燥汚泥が搬出されて廃棄物として処理された後に再び含水汚泥が投入されて処理が繰り返される。
【0003】
天日乾燥床では、透水層を透過した水分の排水と天日による水分の蒸発によって含水汚泥を処理しており、処理期間が長い問題がある。特に、天日によって乾燥させるため、天候や湿度等の自然条件にされやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の天日乾燥床における汚泥の処理には、長期間が必要である問題があった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の実施形態では、処理期間を短縮し、天日乾燥の処理を促進することのできる天日乾燥床で利用する上澄水排出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、実施形態に係る上澄水排出装置は、貯槽に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床で利用する装置である。この上澄水排出装置は、貯槽の内部に投入された含水汚泥から分離された上澄水を排出する上澄水排出口を有する上澄水排出管と、貯槽内の上澄水の水位を測定するセンサと、センサで測定される水位に応じて前記上澄水排出口の高さを制御する制御装置とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る上澄水排出装置及びこの上澄水排出装置を利用する天日乾燥床を説明する横断面図である。
【図2】図1の係る天日乾燥床の使用例を説明する図である。
【図3】図2に続いて図1の天日乾燥床の使用例を説明する図である。
【図4】実施形態に係る上澄水排出装置の上澄水排出管の一例を説明する図である。
【図5】実施形態に係る上澄水排出装置の上澄水排出管の他の例を説明する図である。
【図6】実施形態に係る上澄水排出装置の上澄水排出管の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る上澄水排出装置について説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る上澄水排出装置10を利用する天日乾燥床1の装置構成概念図(断面図)である。
【0011】
実施形態に係る上澄水排出装置10は、図1に示すように、貯槽11の底面に透水層12が形成され、この透水層12上に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床1で利用する。この上澄水排出装置10は、貯槽11の内部に投入された含水汚泥から分離された上澄水を排出する上澄水排出口101a〜101cを有する上澄水排出管101と、貯槽11内の上澄水の水位を測定するセンサ102と、センサ102で測定される水位に応じて上澄水を排出する上澄水排出口101a〜101cの高さを制御する制御装置103と、上澄水排出口101a〜101cの開閉を駆動する駆動部104とを備えている。
【0012】
センサ102は、例えば、汚泥界面計や対向してアレイ状に並べられる発光ダイオードとフォトダイオードである。そして、フォトダイオードは、受光信号を制御装置10へ出力する。制御装置10は、予め校正された各フォトダイオードの受光レベルから液面と、所定の透明度になった上澄水が得られている液高位置を判定し、所定の上澄水となった液面までの上澄水を排出するために上澄水排出口101a〜101cのいずれかを開閉する様に制御信号を駆動部104に送出する。
【0013】
上澄水排出口101a〜101cには、例えば、図示しない開閉弁が取りつけられ、駆動部104は、その弁を開閉するアクチュエータが用いられる。
【0014】
ここで、上澄水排出管101の一端は貯槽11の内部で汚泥が投入された際の汚泥の水面より上に位置し、他端は透水層12を透過した水分を排水する排水管14に接続されている。
【0015】
例えば、この天日乾燥床1で処理対象となる含水汚泥は、浄水場で河川水等を浄水処理した後に排出される汚泥であって、川砂等を含む高含水率(例えば、90%程度)のものである。
【0016】
貯槽11は、壁面及び底面がコンクリート等で覆われており、底面に排水管14が接続される排水口13を有している。天日乾燥床1では、貯槽11に投入される汚泥に含まれていた水分を長期間(例えば、数ヶ月〜6ヶ月)天日に当てることによって蒸発させるとともに、敷砂利等の透水層12を透過させて排水口13及び排水管14を介して排出することができる。
【0017】
続いて、図2及び図3に示す断面図を用いて、天日乾燥床1において実施形態に係る上澄水排出装置10を利用した場合の天日乾燥の処理の流れについて説明する。
【0018】
実施形態に係る上澄水排水装置10が有する上澄水排出管101は、例えば図4に示すように、上澄水排出口101a〜101cが形成される外筒101iと上澄水排出口101a〜101cの開閉に利用する内筒101iiとを有している。外筒101iと内筒101iiとはそれぞれ中空の円筒である。図4では、説明の為、内筒101iiと外筒101iとを分離して図示しているが、実際は、内筒101iiは外筒101i内に存在する。
【0019】
以下では、制御装置103が上澄水排出管101の外筒101iか、又は内筒101iiが回転することにより上澄水排出口101a〜101cの何れかが対向した位置になるか否かで開閉する様に駆動部104を制御する場合について説明する。なお、言うまでも無いが回転位置と上澄水排出口101a〜101cが開閉する対応位置関係は予め設定され、それに合わせて制御信号が出力される。
【0020】
この場合駆動部104は、図示されないが内管、又は外管に取りつけられたモータとギヤの様な回転駆動機構によって構成される。
【0021】
外筒101iの一端である上端部は、貯槽11の内部に投入される汚泥200の水面よりも上に位置する。この上端部は、封止の有無は問わない。一方、外筒101iの他端である下端部は、排水管14に接続されており、貯槽11から流入する上澄水201を排水管14を介して排出できるようになっている。また、外筒101iに形成される複数の上澄水排出口101a〜101cは、貯槽11に配置されたときに水位が異なる高さに位置するように形成されている。
【0022】
また、内筒101iiは、外周が外筒101iの内周と接するとともに、外筒101iの内部で回転自在に配置されている。内筒101iiにも上澄を排水するための孔101d〜101fが形成されているが、各孔101d〜101fは、外筒101iの上澄水排出口101a〜101cとは異なる位置関係で配置されている。したがって、内筒101iiを回転させることで、各上澄水排出口101a〜101cの開閉を調整することができる。なお、内筒101iiの長さは、上澄水排出口101a〜101cを開閉することのできる長さがあれば外筒101iの長さと異なっていてもよい。
【0023】
例えば、外筒101iの内部に内筒101iiがあり、外筒101iのラインl1と内筒101iiのラインl2が重なっている状態のときには、全ての上澄水排出口101a〜101cは閉じている。外筒101i内で内筒101iiが回転し、ラインl1とラインl3が重なったとき、上澄水排出口101b,101cは閉じているが、上澄水排出口101aと孔101dの位置が一致して、上澄水排出口101aは開く。さらに外筒101i内で内筒101iiが回転し、ラインl1とラインl4が重なったとき、上澄水排出口101a,101cは閉じているが、上澄水排出口101bと孔101eの位置が一致して、上澄水排出口101bは開く。続いて外筒101i内で内筒101iiが回転し、ラインl1とラインl5が重なったとき、上澄水排出口101a,101bは閉じているが、上澄水排出口101cと孔101fの位置が一致して、上澄水排出口101cは開く。
【0024】
すなわち、上澄水排出管101では異なる高さに設けられる各上澄水排出口101a〜101cを異なるタイミングで開くことができるため、汚泥200と上澄水201の高さに応じて開く上澄水排出口101a〜101cを決定し、貯槽11から上澄水を排出することができる。
【0025】
なお、図4に示す上澄水排出管101の例では、貯槽11の底面からの高さが異なる3箇所に上澄水排出口101a〜101cを設けているが、上澄水排出管101に設ける上澄水排出口101a〜101cの数は限定されない。
【0026】
図2(a)に示すように、天日乾燥床1には、処理対象となる汚泥(含水汚泥)200が投入される。天日乾燥床1では、貯槽11に汚泥200が投入された後、ある程度の期間が経過すると、図2(b)に示すように、汚泥200中の水分が透水層12を透過して排水管14から排水される。また、貯槽11中の汚泥200は、上澄水201と濃縮した汚泥200に分離される。
【0027】
制御装置103は、センサ102で測定された上澄水201の水位及び汚泥200の水位を常時又は定期的に入力している。また、制御装置103は、センサ102から上澄水201の水位及び汚泥200の水位を入力すると、入力した上澄水201の水位及び汚泥200の水位と上澄水排出管101の複数の上澄水排出口101a〜101cとの高さを比較する。汚泥200の水位より高く、上澄水201の水位より低い位置に存在する上澄水排出口101aがあるとき、制御装置103は、図2(c)この上澄水排出口101aを開にし、上澄水排出管101を介して上澄水201を貯槽11から排出する。すなわち、制御装置103は、内筒101iiを回転させて排出口101aに孔101dの位置を一致させる。
【0028】
上澄水排出口101aを開にして上澄水201を貯槽11から排水した後、再びある程度の期間が経過すると、図3(a)に示すように、天日乾燥床1では、汚泥200は上澄水201とさらに濃縮した汚泥200に分離される。
【0029】
制御装置103がセンサ102から入力する上澄水201の水位及び汚泥200の水位と各上澄水排出口101b,101cとの高さを比較し、汚泥200の水位より高く、上澄水201の水位より低い位置に存在する上澄水排出口101bが存在したとき、図3(b)に示すように、この上澄水排出口101bを開にし、上澄水排出管101を介して上澄水201を貯槽11から排出する。すなわち、制御装置103は、内筒101iiを回転させて排出口101bに孔101eの位置を一致させる。
【0030】
その後、図3(c)に示すように、貯槽11中の汚泥200から水分が蒸発して乾燥汚泥202となったときには、この乾燥汚泥202は貯槽11から搬出されて産業廃棄物等として廃棄される。また、貯槽11から乾燥汚泥202が搬出された天日乾燥床1では、再び図2及び図3を用いて上述したような処理が繰り返される。
【0031】
このように、実施形態に係る上澄水排出装置10では、汚泥200が上澄水201と濃縮した汚泥201とに分離されると、センサ102で測定された上澄水201の水位に応じて上澄水排出口101a〜101cの開閉を調整し、上澄水201を貯槽11から排出する。したがって、天日乾燥床1で汚泥を天日乾燥する際に、全ての上澄水201を天日で蒸発させる必要がなくなるため、汚泥200を乾燥する期間を短縮し、天日乾燥の処理を促進することができる。
【0032】
また、天日乾燥床1は、屋根のない屋外にあるため、雨が降った場合等には上澄水201や濃縮された汚泥200上には雨水が溜まるが、上澄水排出管101の無い天日乾燥床1ではこの雨水も天日で蒸発させる必要があり、雨水も天日乾燥に要する期間を長くしていた。しかしながら、実施形態に係る上澄水排出装置10では、上澄水201や汚泥200上に溜まる雨水を上澄水排出管101を介して排出することができるため、雨による天日乾燥の期間の遅れを軽減することができる。
【0033】
[変形例]
以下に、変形例に係る上澄水排出管について説明する。以下の説明では、図1乃至図4を用いて上述した構成と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0034】
図4を用いて上述した構成の上澄水排出管101の他、図5に示すように、上澄水排出口101a〜101cが形成される中空の円筒で、各上澄水排出口101a〜101cがプラグや弁等の封止栓104a〜104cによって開閉可能な構成の上澄水排出管104を利用してもよい。この上澄水排出管104では、制御装置103は、センサ102で測定された上澄水201と汚泥200の水位に応じて、各封止栓104a〜104cの開閉を調整することで、上澄水201を貯槽11から排出し、天日乾燥に要する期間を短縮する。
【0035】
また、図6に示すように中心軸に対して異なる傾きのスリット105a,105bをそれぞれ有する中空の円筒である内筒105iiと外筒105iとを有する構成の上澄水排出管105を利用してもよい。図6では、内筒105iiと外筒105iとを分離して図示しているが、実際は、内筒105iiは、外壁が外筒105iの内壁と接し、外筒105i内部で回転するように配置されている。この上澄水排出管105では、外筒105iの内部で内筒105iiを回転させることで貯槽11から上澄水排出管105への上澄水201の流路、すなわち上澄水排出口の貯槽11の底面からの高さを変化させることができる。したがって、制御装置103は、センサ102で測定された上澄水201と汚泥200の水位に応じて、内筒105iiを回転させて上澄水排出口の貯槽11の底面からの高さを変化させる。
【0036】
この変形例では、連続的に排水高が調節できるので、排出される上澄水が一定量に近く排出出来るほか、清澄度、または、汚泥の含水率の変化が小さくなる効果がある。
【0037】
その他、図4を用いて上述した上澄水排出管101では、孔101d〜101fを有する内筒101iiを外筒101i内で回転させるものとして説明したが、孔101d〜101fを有さない内筒101iiを外筒101i内で下方移動させるものとしてもよい。
【0038】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…天日乾燥床
10…上澄水排出装置
101,104,105…上澄水排出管
101a〜101c…上澄水排出口
101i,105i…外筒
101ii,105ii…内筒
101d〜101f…孔
104a〜104c…封止栓
105a,105b…スリット
102…センサ
103…制御装置
11…貯槽
12…透水層
13…排水口
14…排水管
200…汚泥
201…上澄水
201…汚泥
202…乾燥汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽に投入される含水汚泥を天日で乾燥する天日乾燥床で利用する上澄水排出装置であって、
前記貯槽の内部に投入された含水汚泥から分離された上澄水を排出する上澄水排出口を有する上澄水排出管と、
貯槽内の上澄水の水位を測定するセンサと、
前記センサで測定される水位に応じて上澄水を排出する前記上澄水排出口の高さを制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする上澄水排出装置。
【請求項2】
前記上澄水排出管は、貯槽の底面からの高さが異なる位置に設けられ、水位に応じて弁で開閉される上澄水排出口を複数備えることを特徴とする請求項1記載の上澄水排出装置。
【請求項3】
前記上澄水排出管は、貯槽の底面からの高さが異なる高さに設けられる複数の上澄水排出口を備える外筒と、孔を有し前記外筒の内壁に外周が接する内筒とを有し、前記外筒の内部で前記内筒を回転させていずれかの前記上澄水排出口と前記孔を一致させて前記上澄水排出口を開くことを特徴とする請求項1記載の上澄水排出装置。
【請求項4】
前記上澄水排出管は、貯槽の底面付近から上面付近にかけて切込みを有する外筒と、当該外筒の切込みとは異なる角度で切込みを有し前記外筒の内壁に外周が接する内筒とを有し、前記外筒の内部で前記内筒を回転させて上澄水を排出させる上澄水排出口の高さを調節することを特徴とする請求項1記載の上澄水排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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