説明

下端水切り装置

【課題】 取付け部材を下地部材に容易かつ確実に取付けることができる下端水切り装置を提供する。
【解決手段】 垂れ壁40の下端部に設けられる下地部材31に、第1取付け部材33と、複数の挿通孔68,69が形成される第2取付け部材33とを装着し、第2取付け部材33の基部に保持部材34を固定し、保持部材34にカバー体35を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の垂れ壁の下端部に好適に実施することができる下端水切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来技術の下端水切り装置1を示す鉛直断面図であり、この従来技術はたとえば特許文献1に記載されている。建物の垂れ壁2の下端部3には、天井材4を支持し、かつ雨水の屋内5側への廻り込みを防止するため、下端水切り装置1が設けられる。前記垂れ壁2は、軽量気泡コンクリートパネル(Autoclaved lightweight aerated concrete panels:略称ALC)などの外装材から成る。
【0003】
下端水切り装置1は、前記垂れ壁2の下端部3に固定されたアングルとも呼ばれる形鋼材から成る長尺の下地部材6に取付けられ、この下地部材6対する面倒な加工を必要とせず、容易にかつ簡単な施工によって、見切縁とも呼ばれるカバー体7を下地部材6に取付けるために、長尺の下地部材6にその水平部8の先端部分と垂直部9の上端部分とを挟持する短尺の取付け部材10を取付け、取付け部材10に短尺のホルダ11を固定して、ホルダ11に長尺の前記カバー体7を装着するように構成されている。
【0004】
前記下地部材6には、水平部8と垂直部9の幅寸法の違いによって複数の種類があるが、水平部8および垂直部9の幅寸法の違いがあっても、カバー体7を適正な位置に取付けるためには、取付け部材10およびホルダ11を下地部材6の種類の数だけ用意しなければならず、不経済であるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、この従来技術では、前記取付け部材10は、下地部材6の水平部8の先端部分に係止される第1係止部12を有する水平部13と、下地部材6の垂直部9の上端部分に係止される第2係止部14を有する垂直部15とが一体的に形成される短尺の取付け部材10が用いられる。取付け部材10は、第1係止部12および第2係止部14によって、下地部材6の水平部8の先端部分と垂直部9の上端部分とを挟持し、下地部材6の図7の紙面に垂直な長手方向に間隔をあけて複数、設けられる。これらの取付け部材10には、短尺のホルダ11をビス16によってそれぞれ固定し、各ホルダ11に長尺のカバー体7が装着される。
【0006】
図8は図7に示される取付け部材10の展開斜視図である。前記取付け部材10は、第1係止部12と第2係止部14との間に、取付け部材10の長手方向に間隔をあけて各複数のスリット20,21が形成され、下地部材6の水平部8の幅寸法に対応する位置で、図7に示されるように、垂直部15を水平部13に対して容易に折り曲げることができるように構成されている。
【0007】
このような取付け部材10の取付け作業は、現場において手作業によって行われ、第1係止部12を下地部材6の水平部8の先端部分と垂れ壁2の下端部3の下端面との間に差込み、下地部材6の水平部8の幅寸法に対応する位置に形成されるスリット20またはスリット21で垂直部15を水平部13に対してほぼ直角に折曲げ、アンカープラグ22を予め垂れ壁2の屋内5側の壁面に埋め込まれたアンカーナット23に螺着して、第2係止部14を固定する。その後、取付け部材10の水平部13にホルダ11をビス16によって固定し、ホルダ11にカバー体7を装着して、下端水切り装置1の取付け作業が完了する。
【0008】
【特許文献1】実公平2−8018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来の技術では、取付け部材10には複数列のスリット20,21を形成することによって複数箇所に脆弱部を設け、水平部13に対して垂直部15を下地部材6の水平部8の幅寸法に対応する脆弱部で容易に折り曲げることができるように構成されるが、取付け部材10の展開状態における第1および第2係止部12,14間の前記長手方向の長さL1は一定であるため、垂直部15を前述のように下地部材6の水平部8の幅寸法に相当する位置で正確に折り曲げると、垂直部15の長さL2(図7参照)は、全長L1から水平部13の長さL3を差し引いた残りの長さ(L2=L1−L3)になり、下地部材6の水平部8の幅寸法と垂直部9の幅寸法とが等しい場合のみ、取付け部材10の第2係止部14を取付け部材10の垂直部9の上端部分に係止することができる。しかし取付け部材10は、現場でスリット20または21が形成される部分で手作業によって折り曲げるため、折り曲げ位置が取付け部材10の前記長手方向に垂直でかつスリット20または21上を通る軸線からずれると、第1係止部12を水平部8の先端部分に係止した状態で第2係止部14を垂直部9の上端部分に係止することができなくなる。そのため、取付け部材10を折り曲げる際に、下地部材6の水平部8の幅寸法L3に対応する位置で前記長手方向に垂直でかつスリット20または21上を通る軸線に沿って正確に折り曲げなければならず、取付け部材10の下地部材6への取付け作業に手間を要するという問題がある。
【0010】
また、この従来の技術では、取付け部材10はその長さL1が一定であるため、取付け部材10の長さL1が下地部材6の水平部8の幅寸法および垂直部6の幅寸法の合計値よりも大きい場合であっても、取付け部材10の折曲げ位置が下地部材6の水平部8の幅寸法に対して僅かに長くなる側へずれると、取付け部材10の垂直部15が下地部材6の垂直部9から離間して面接触させることができず、また折曲げ位置が下地部材6の水平部8の幅寸法に対して僅かに短くなる側へずれると、取付け部材10の垂直部15は下地部材6の垂直部9に干渉して面接触させることができない。
【0011】
したがって第1係止部12を下地部材6の水平部8の先端部分に係止できたとしても、取付け部材10毎の折曲げ位置の僅かな相違によって取付け状態にばらつきを生じ易く、取付け部材の下地部材への取付け状態に対する信頼性が低いという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、取付け部材を下地部材に容易にかつ確実に取付けることができる下端水切り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、建物の垂れ壁の下端部に、水平に固定される長尺の下地部材であって、前記垂れ壁の一方の壁面に沿って配置される垂直部と、前記垂れ壁の下面に沿って配置される水平部とを有する下地部材と、
前記下地部材の垂直部に沿って配置される板状の第1基部を有し、垂直部の上端部分に、前記垂直部に上方から掛け止められる第1係止部が設けられ、前記第1基部の下端部に、前記下地部材の水平部に沿って延びる第1折曲げ部が設けられる短尺の第1取付け部材と、
前記下地部材の水平部に沿って配置される板状の第2基部を有し、水平部の前記垂れ壁の他方の壁面寄りに配置される一端部に、前記水平部に他方の壁面側から掛け止められる第2係止部が設けられ、前記第2基部の前記垂れ壁の一方の壁面寄りの他側部に、前記下地部材の垂直部に沿って延びる第2折曲げ部が設けられる短尺の第2取付け部材と、
前記第2係止部よりも前記一方の壁面が臨む内側および前記他方の壁面が臨む外側に嵌合受部がそれぞれ設けられ、前記第2取付け部材の第2基部に固定される保持部材と、
前記保持部材の各嵌合受部にそれぞれ嵌合する嵌合部を有し、各嵌合部が各嵌合受部に嵌合して前記保持部材に装着されるカバー体とを含み、
前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか一方には、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方が挿通することができる複数のスリットが長手方向に間隔をあけて形成されることを特徴とする下端水切り装置である。
【0014】
本発明に従えば、建物の垂れ壁の下端部に長尺の下地部材が水平に固定され、垂直部が垂れ壁の一方の壁面に沿って配置され、水平部は垂れ壁の下面に沿って配置され、このような下地部材によって垂れ壁の下端部が補強される。
【0015】
前記下地部材には、第1取付け部材と第2取付け部材とが設けられる。前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか一方には、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方が挿通することができる複数の挿通孔が、長手方向に間隔をあけて形成される。前記複数の挿通孔が第1折曲げ部に形成される場合には、第2折曲げ部が前記第1折曲げ部の複数の挿通孔のいずれか1つに挿通され、下地部材の垂直部側へ折り曲げられて前記垂直部に沿って配置され、第1折曲げ部は下地部材の水平部側へ折り曲げられて前記水平部に沿って配置される。また、前記複数の挿通孔が第2折曲げ部に形成される場合には、第1折曲げ部が前記第2折曲げ部の複数の挿通孔のいずれか1つに挿通され、下地部材の水平部側へ折り曲げられて前記水平部に沿って配置され、第2折曲げ部は下地部材の垂直部側へ折り曲げられて前記垂直部に沿って配置される。
【0016】
このように第1および第2折曲げ部のいずれに挿通孔が形成されても、第1折曲げ部は第2取付け部材の第2基部が下地部材の水平部から離反することを阻止し、第1係止部が下地部材の垂直部の上端部分から離脱することを阻止するので、第1および第2取付け部材は、第1および第2折曲げ部を折り曲げるという簡単な操作によって、下地部材に容易かつ確実に取付けられる。
【0017】
また、前記挿通孔は、第1取付け部材または第2取付け部材の長手方向に間隔をあけて複数、形成されるので、下地部材の水平部または垂直部の幅寸法が異なる場合であっても、前記水平部および垂直部の幅寸法に対応した挿通孔を用いて第1および第2取付け部材を下地部材に取付けることができる。
【0018】
こうして下地部材に取付けられた第2取付け部材には、保持部材が設けられる。保持部材は、前記第2係止部よりも一方の壁面が臨む内側および前記他方の壁面が臨む外側に嵌合受部をそれぞれ有し、第2取付け部材の第2基部に固定される。第2取付け部材に固定された保持部材には、カバー体が装着される。カバー体は、前記保持部材に装着された状態では、保持部材の各嵌合受部にカバー体の嵌合部がそれぞれ嵌合し、カバー体の脱落が防止される。
【0019】
また本発明は、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方には、複数の脆弱部が前記長手方向に間隔をあけて形成されることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方に複数の脆弱部が形成されるので、下地部材の水平部および垂直部の幅寸法に対応する折曲げ位置の脆弱部で、前記複数の挿通孔が形成されていない第1折曲げ部または第2折曲げ部を容易にかつ正確に折り曲げることができ、下地部材への第1および第2取付け部材の取付け作業を容易化することができる。
【0021】
また本発明は、前記保持部材は、外周部に外ねじが形成された軸部を有するねじ部材によって、前記第2取付け部材に固定され、
前記保持部材には、前記ねじ部材の軸部が挿通し、各嵌合受部間にわたる幅方向に延びる長孔が形成されることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、前記保持部材に長孔が形成されるので、保持部材を第2取付け部材に対して前記長孔に沿って移動させて、保持部材の第2取付け部材への取付け位置を容易に調整して位置決めし、保持部材を第2取付け部材に正確に取付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1取付け部材の第1折曲げ部によって第2取付け部材の下地部材からの離脱が防止され、第2取付け部材の第2折曲げ部によって第1取付け部材の下地部材からの離脱が防止され、これによって第1および第2取付け部材を下地部材に確実に取付けることができる。また、第1および第2折曲げ部のいずれか一方には、複数の挿通孔が形成され、これらの挿通孔のうちの1つに第1および第2折曲げ部のいずれか他方を挿通するように構成されるので、水平部または垂直部の幅寸法が相違する下地部材であっても、前記他方の折曲げ部を前記幅寸法に対応した挿通孔に挿通させればよく、これによって下地部材の幅寸法の相違に応じて、形状の異なる複数種類の取付け部材を準備する必要がなく、取付け部材の種類が少なくて済み、取付け部材の製造コスト、現場への搬入の手間を低減し、第1および第2取付け部材を用いて下地部材に保持部材およびカバー体を取付けることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方に複数の脆弱部が形成されることによって、第1折曲げ部または第2折曲げ部を容易にかつ正確に折り曲げることができ、取付け作業の作業性を向上することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記保持部材に長孔が形成されることによって、保持部材の第2取付け部材に対する位置決めを容易に行うことができ、保持部材を第2取付け部材に正確に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明の実施の一形態の下端水切り装置30を示す鉛直断面図である。本実施の形態では、第2取付け部材33の第2折曲げ部61に複数のスリット状の挿通孔68,69が形成され、第1取付け部材32の第1折曲げ部54に複数のスリット70,71が形成される場合について説明する。下端水切り装置30は、下地部材31と、第1取付け部材32と、第2取付け部材33と、保持部材34と、カバー体35とを含み、下地部材31にその長手方向に間隔をあけて第1および第2取付け部材32,33を取付け、各第2取付け部材33に保持部材34をそれぞれ連結し、各保持部材34に長尺のカバー体35を装着するように構成される。
【0027】
前記下地部材31は、建物の垂れ壁40の下端部41に固定され、垂れ壁40の屋内側の一方の壁面42に沿って配置される垂直部43と、垂れ壁40の下面44に沿って配置される水平部45とを有する。下地部材31は、図1の紙面に垂直な水平方向に延び、長尺のL形鋼によって実現される。前記垂れ壁40は、軽量気泡コンクリートパネル( Autoclaved lightweight aerated concrete panels;略称ALC)から成る。
【0028】
下地部材31は、L形鋼からなり、長手方向両端部が建物の躯体に連結され、前記垂れ壁40を支持する補強部材として設けられる。第1および第2取付け部材32,33ならびに保持部材34は、高い耐腐食性および機械的強度の要求からステンレス鋼板を打抜き曲げ加工した材料から成る。カバー体35は、アルミニウム合金の押出し形材から成る。
【0029】
図2は第1および第2取付け部材32,33を分離した展開状態を示す斜視図である。図1をも参照して、前記第1取付け部材32は、下地部材31の垂直部43に沿って平行に配置される矩形板状の第1基部50を有し、この第1基部50の上端部分51に、前記下地部材31の垂直部43の上端部分に上方から掛け止められる断面凹状の第1係止部52が設けられ、前記第1基部50の下端部53には、図2の仮想線で示されるように、下地部材31の水平部45に沿って平行に延びる第1折曲げ部54が設けられる。
【0030】
第2取付け部材33は、下地部材31の水平部45に沿って平行に配置される板状の第2基部56を有し、この第2基部56の前記垂れ壁40の他方の壁面57寄りに配置される一側部58に、前記下地部材31の水平部45の先端部分に他方の壁面57側から掛け止められる断面凹状の第2係止部59が設けられ、前記第2基部56の前記垂れ壁40の一方の壁面42寄りの他側部60に、前記下地部材31の垂直部43に沿って平行に延びる第2折曲げ部61が設けられる。
【0031】
図3は下端水切り装置30の分解斜視図である。図1および図2をも参照して、前記保持部材34は、第2係止部59よりも一方の壁面42が臨む屋内側および前記他方の壁面57が臨む屋外側に嵌合受部63,64がそれぞれ設けられ、前記第2取付け部材33の第2基部56にビス65によって固定される。前記カバー体35は、保持部材34の各嵌合受部63,64にそれぞれ嵌合して支持される嵌合部66,67を有し、各嵌合部66,67が各嵌合受部63,64に嵌合させることによって、前記保持部材34にカバー体35が着脱可能に装着される。
【0032】
前記第1取付け部材32において、第1折曲げ部54には、長手方向に垂直な幅方向に延びる複数列のスリット70,71が形成され、これらのスリット70,71によって、第1折曲げ部54には複数列の脆弱部72,73が各スリット70,71毎に形成される。前記第2折曲げ部61には、前記第1折曲げ部54が挿通することができる複数の挿通孔68,69が長手方向に間隔をあけて形成される。
【0033】
第1折曲げ部54は、第2取付け部材33の第1折曲げ部61に形成された一方の挿入孔68の幅寸法よりも僅かに小さい幅寸法の第1挿入部分90と、第1折曲げ部61に形成された他方の挿入孔69の幅寸法よりも僅かに小さい幅寸法の第2挿入部分91とを有する。第1挿入部分90の幅寸法は、第1基部50の幅寸法よりも小さく、第2挿入部分91の幅寸法は第1挿入部分90の幅寸法よりも小さく、第1基部50、第1挿入部分90および第2挿入部分91の順に、段階的に幅寸寸法が小さく形成される。
【0034】
第1挿入部分90の脆弱部72は、第1挿入部分90の前記スリット70が形成される有効断面の少ない残余の部分によって実現される。また第2挿入部分91の脆弱部73は、第2挿入部分91の前記スリット71が形成される有効断面の少ない残余の部分によって実現される。このように各脆弱部72,73は、その両側の領域に比べて有効断面が小さく形成されるので、現場で作業が容易に折り曲げることができる。各スリット70,71の前記長手方向の間隔は、下地部材31の垂直部43の幅寸法が日本工業規格(略称JIS)などによって多段階的に規定されているため、この垂直部43の幅寸法に応じた間隔で形成することによって、下地部材31として異なる断面寸法が異なるものが用いられた場合であっても、第1脆弱部72で折り曲げるか、第2脆弱部73で折り曲げるかを選択することによって、下地部材31の垂直部43の幅寸法に合致した折曲げ位置で容易にかつ正確に折り曲げることができる。
【0035】
第2折曲げ部61には、前述のように第1の挿入孔68と第2の挿入孔69とが長手方向に間隔をあけて形成されるとともに、第1の挿入孔68の幅方向両側に一対の切欠き92a,92bが形成され、さらに第2の挿入孔69の幅方向両側に一対の切欠き93a,93bが形成される。第2折曲げ部61に前記第1の挿入孔68とその両側の切欠き92a,92bとが形成されることによって、第2折曲げ部61と第2基部56とを連結する第1脆弱部94が形成され、第2の挿入孔69とその両側の切欠き93a,93bとが形成されることによって、第2脆弱部95が形成される。
【0036】
第1の挿入孔68と第2の挿入孔69との長手方向の間隔および第1の各切欠き92a,92bと第2の各切欠き93a,93bとの長手方向の間隔は、前述のスリット70とスリット71との間隔の決め方と同様に、下地部材31の水平部45の幅寸法が日本工業規格(略称JIS)などによって多段階的に規定されているため、この水平部45の幅寸法に応じた間隔で形成することによって、下地部材31として異なる断面寸法が異なるものが用いられた場合であっても、第1脆弱部94で折り曲げるか、第2脆弱部95で折り曲げるかを選択し、下地部材31の水平部45の幅寸法に合致した折曲げ位置で容易にかつ正確に折り曲げることができる。
【0037】
これらの脆弱部72,73;94,95が前記第1および第2折曲げ部54,61に形成されることによって、下地部材31の垂直部43および水平部45の幅寸法に対応する折曲げ位置を容易に選択して第1および第2折曲げ部54,61の折曲げ位置が第1および第2係止部52,59と平行になるように正確に折り曲げることができ、下地部材31への第1および第2取付け部材32,33の取付け作業を容易化し、信頼度の高い取付け状態を容易に達成することができる。
【0038】
第2取付け部材33の第2基部56には、複数(本実施の形態では4)の立ち上がり片96a,96b,96c,96dが形成される。これらの立ち上がり片96a〜96dは、第2取付け部材33が下地部材31の水平部45に取付けられた状態で、水平部45の下面に下方から当接し、水平部45の先端部分に第2係止部59の折り返し部分が掛け止められた状態で上限のがたつきが防止される。
【0039】
前記保持部材34は、外周部に外ねじが形成された軸部を有するねじ部材であるビス65によって第2基部56に固定され、前記保持部材34の第2基部56にはまた、前記ビス65の軸部が挿通し、各嵌合受部63,64間にわたる幅方向(図1の左右方向)に延びる一対の長孔74が形成される。保持部材34は、前記一対の長孔74が形成される基部110と、基部110の屋外に臨む壁面57側に配置される一端部にほぼ直角に連なる第1脚部111と、基部110の屋内に臨む壁面42側に配置される他端部にほぼ直角に連なる第2脚部112と、基部110の前記一端部から上方に立上る立上り部113とを有する。基部110と第1脚部111と立上り部113とが交差する部分には、前記嵌合受部63がL字状の受け面を屋外側でかつ上方に臨ませて形成される。また第2脚部112の下端部近傍には、前記嵌合受部64がL字状の受け面を屋内側でかつ上方に臨ませて形成される。
【0040】
前記保持部材34には、前記カバー体35が着脱可能に装着される。カバー体35は、前記立上り部113に当接する第1壁部120、第1壁部120の下端部から屋外側に向かって下方に傾斜する第2壁部121、第2壁部121の最も屋外側でかつ下方に配置される端部に連なって下方に延びる第3壁部122、第3壁部の下端部から屋内側に向かって水平に延びる第4壁部123、第4壁部123の最も屋内側の端部から上方に立ち上がる第5壁部124、第5壁部の上端部から屋内側に突出する第6壁部125、および第3壁部122の下端部と第4壁部123の屋外側の端部との交差部から下方に突出する水切り突部126を有する。このカバー体34は、長尺材であって、アルミニウム合金の押出し形材によって形成されてもよく、ステンレス鋼板の曲げ加工材によって形成されてもよい。
【0041】
保持部材34の前記第6壁部125の遊端部131は、嵌合受部64に嵌合して支持される。前記第1壁部120と第2壁部121との交差部132は、前記嵌合受部63に嵌合して支持される。またカバー体35に水切り突部126が設けられるので、屋外から垂れ壁40およびカバー体35に付着した雨水は、第2壁部121から第3壁部122に導かれ、水切り突部126から自重によって落下し、第4壁部123を伝って屋内側へ回り込むことが防がれる。
【0042】
また前記保持部材34の第1脚部111の基端部は、下方になるにつれて第2脚部112寄りに傾斜し、第2脚部112の前記嵌合受部64から下方に延びる下端部は、下方になるにつれて第1脚部11寄りに傾斜する。これらの第1脚部111の傾斜部および第2脚部112の傾斜部が形成されので、前記カバー体35を保持部材34に下から装着するとき、第1壁部120から交差部132が第1脚部111の傾斜した基端部によって案内され、カバー体35の遊端部131が第2脚部112の傾斜した下端部によって案内され、各嵌合受部63,64に弾発的に嵌着させ、カバー体35を保持部材34に着脱可能にかつ大きな挟着力で装着し、天井板136の側縁部を確実に支持し、容易に脱落することが防がれる。
【0043】
図4は断面形状の異なる下地部材31a,31bへの下端水切り装置30の取付け状態を示す鉛直断面図であり、図4(a)は断面が小さい下地部材31aに下端水切り装置30が取付けられた状態を示し、図4(b)は断面が大きい下地部材31bに下端水切り装置30が取付けられた状態を示す。
【0044】
建物の垂れ壁40の下端部41には、断面形状の異なる2種の下地部材31a,31bがほぼ水平に張架されて固定される。これらの下地部材31a,31bの長手方向両端部は、建物の躯体にそれぞれ連結され、垂れ壁40の延在距離、すなわち水平方向のスパンが短い部分には、断面の小さい一方の下地部材31aが用いられ、前記スパンが長い部分には、断面の大きい他方の下地部材31bが用いられ、図4(1)および図4(2)に示されるように、垂れ壁40の下端部41をそれぞれ支持し、表面を補強している。なお、断面の異なる各下地部材31a,31bを総称する場合には、添え字a,bを省略して「下地部材31」と記す。
【0045】
垂れ壁40の下端部41には、垂れ壁40の他方の壁面57から下面44を経て一方の壁面42側に雨水が廻り込むことを防止するために、前述の下端水切り装置30が設けられる。この下端水切り装置30を設けるに際しては、まず第1取付け部材32の第1係止部52を、下地部材31a,31bの垂直部43の上端部分に掛け止め、次に第2取付け部材33の第2係止部59を下地部材31a,31bの水平部45の先端部分に掛け止め、第2取付け部材33の挿通孔68に第1取付け部材32の第1折曲げ部54を挿通させて、水平部45とほぼ平行となるように折り曲げ、第1取付け部材32から突出した第2折曲げ部61を垂直部43とほぼ平行となるように折り曲げる。この状態では、第1および第2取付け部材32,33の下地部材31a,31bからの離脱が防がれるとともに、第1折曲げ部54を挿通する挿通孔68を各下地部材31a、31bの水平部45の幅寸法にほぼ等しい位置に形成されたものを選択することができ、下地部材31aの断面形状に適合させることができる。
【0046】
このような第1および第2折曲げ部54,61には、いずれに挿通孔が形成されても、第1折曲げ部54は第2取付け部材33の第2基部56が下地部材31の水平部45から離反することを阻止し、第1係止部52が下地部材31の垂直部43の上端部分から離脱することを阻止するので、第1および第2取付け部材33は、第1および第2折曲げ部61を折り曲げるという簡単な操作によって、下地部材31に容易かつ確実に取付けられる。
【0047】
また、前記挿通孔68,69は、第1取付け部材32または第2取付け部材33の長手方向に間隔をあけて複数、形成されるので、下地部材31の水平部45または垂直部43の幅寸法が異なる場合であっても、前記水平部45および垂直部43の幅寸法に対応した挿通孔を用いて第1および第2取付け部材32,33を下地部材31に取付けることができる。
【0048】
こうして下地部材31に取付けられた第2取付け部材33には、保持部材34が設けられる。保持部材34は、前記第2係止部59よりも一方の壁面42が臨む内側および前記他方の壁面57が臨む外側に嵌合受部66,67をそれぞれ有し、第2取付け部材33の第2基部56に固定される。第2取付け部材33に固定された保持部材34には、カバー体35が装着される。カバー体35は、前記保持部材34に装着された状態では、保持部材34の各嵌合受部63,64にカバー体35の嵌合部66,67がそれぞれ嵌合し、カバー体35の脱落が防止される。
【0049】
図5は本発明の実施の他の形態の第2取付け部材33aを示す一部の断面図である。前述の実施形態では、脆弱部72,73がスリット70,71によって実現されたが、本発明の実施の他の形態の第2取付け部材33aには、脆弱部72,73が凹溝70a,71aを形成することによって実現される。
【0050】
図6は本発明の実施のさらに他の形態の第2取付け部材33bを示す一部の断面図である。前述の図1〜図4に示される実施の形態では、脆弱部72,73がスリット70,71によって実現されたが、本発明の実施の他の形態の第2取付け部材33bには、脆弱部72,73が各複数の透孔70b,71bを図6の紙面に垂直な幅方向に間隔をあけて形成することによって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の一形態の下端水切り装置30を示す鉛直断面図である。
【図2】第1および第2取付け部材32,33を分離した展開状態を示す斜視図である。
【図3】下端水切り装置30の分解斜視図である。
【図4】大きさの異なる下地部材31a,31bへの下端水切り装置30の取付け状態を示す鉛直断面図であり、図4(a)は小形の下地部材31aに下端水切り装置31aが取付けられた状態を示し、図4(b)は大形の下地部材31bに下端水切り装置31bが取付けられた状態を示す。
【図5】本発明の実施の他の形態の第2取付け部材33aを示す一部の断面図である。
【図6】本発明の実施のさらに他の形態の第2取付け部材33bを示す一部の断面図である。
【図7】従来技術の下端水切り装置1を示す鉛直断面図である。
【図8】図7に示される取付け部材10の展開斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
30 下端水切り装置
31 下地部材
32 第1取付け部材
33 第2取付け部材
34 保持部材
35 カバー体
40 垂れ壁
41 垂れ壁40の下端部
42 一方の壁面
43 下地部材31の垂直部
44 垂れ壁40の下面
45 下地部材31の水平部
50 第1基部
51 上端部
52 第1係止部
53 第1基部50の下端部
54 第1折曲げ部
56 第2基部
57 他方の壁面
58 一側部
59 第2係止部
60 他側部
61 第2折曲げ部
63,64 嵌合受部
66,67 嵌合部
68,69 挿通孔
70,71 スリット
74 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の垂れ壁の下端部に、水平に固定される長尺の下地部材であって、前記垂れ壁の一方の壁面に沿って配置される垂直部と、前記垂れ壁の下面に沿って配置される水平部とを有する下地部材と、
前記下地部材の垂直部に沿って配置される板状の第1基部を有し、垂直部の上端部分に、前記垂直部に上方から掛け止められる第1係止部が設けられ、前記第1基部の下端部に、前記下地部材の水平部に沿って延びる第1折曲げ部が設けられる短尺の第1取付け部材と、
前記下地部材の水平部に沿って配置される板状の第2基部を有し、水平部の前記垂れ壁の他方の壁面寄りに配置される一端部に、前記水平部に他方の壁面側から掛け止められる第2係止部が設けられ、前記第2基部の前記垂れ壁の一方の壁面寄りの他側部に、前記下地部材の垂直部に沿って延びる第2折曲げ部が設けられる短尺の第2取付け部材と、
前記第2係止部よりも前記一方の壁面が臨む内側および前記他方の壁面が臨む外側に嵌合受部がそれぞれ設けられ、前記第2取付け部材の第2基部に固定される保持部材と、
前記保持部材の各嵌合受部にそれぞれ嵌合する嵌合部を有し、各嵌合部が各嵌合受部に嵌合して前記保持部材に装着されるカバー体とを含み、
前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか一方には、前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方が挿通することができる複数のスリットが長手方向に間隔をあけて形成されることを特徴とする下端水切り装置。
【請求項2】
前記第1折曲げ部および第2折曲げ部のいずれか他方には、複数の脆弱部が前記長手方向に間隔をあけて形成されることを特徴とする請求項1に記載の下端水切り装置。
【請求項3】
前記保持部材は、外周部に外ねじが形成された軸部を有するねじ部材によって、前記第2取付け部材に固定され、
前記保持部材には、前記ねじ部材の軸部が挿通し、各嵌合受部間にわたる幅方向に延びる長孔が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の下端水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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