説明

不織布、繊維および電気化学的電池

【課題】簡単かつ問題のない製造により長い寿命を有する電気化学的電池を提供する。特に、電池の自己放電を回避または抑制するように機能するセパレータに使用する不織布を提供する。
【解決手段】不織布セパレータを構成する繊維として、アルカリ性媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な物質を共重合やグラフトによって組み込んだ機能性繊維を使用する。前記の物質は、繊維の、媒質と接触しうる領域のみに組み込むことができる。繊維は、芯鞘型やサイドバイサイド型の多成分繊維とすることもでき、例えばこれを芯鞘型繊維とした場合、その外側部分の成分のみを、前記の物質が組み込まれた繊維から形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な少なくとも1種の物質を内在的に含む少なくとも1種の繊維材料からなる機能性繊維を含む、特にバッテリあるいは電気化学的電池におけるセパレータとして使用するための不織布に関する。さらに本発明は、アルカリ媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な少なくとも1種の物質を内在的に含む少なくとも1種の繊維材料を含む繊維に関する。最後に本発明は、少なくとも1つの正極および1つの負極と、電荷担体の移動を可能にする材料とを少なくとも部分的に収容するケーシングを備えており、セパレータによりこれらの電極が分離され、かつセパレータが不織布または少なくとも1種の繊維を含む電気化学的電池、特にバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリバッテリもしくはアルカリ電池には、特別な性質を有するセパレータ材料が必要である。この性質には、電解液に対する耐性、酸化に対する耐性、高い機械的安定性、小さな厚み許容差、低いイオン体積抵抗、高い電子体積抵抗、電極から溶出する固体粒子に対する引き留め能、電解液による持続的な濡れ性、および電解液に対する高い保持能が含まれる。
【0003】
しかしながら、上記セパレータの製造のために使用されるポリマーによって、セパレータ材料はさまざまな利点および欠点を有する。例えばポリオレフィンからなるセパレータは、強アルカリ性電解液による化学的な攻撃に対して、また電池の化学的な環境での酸化に対して極めて良好な耐性を有する。しかし、アルカリ性電解液による濡れ性は不良である。これに対して、ポリアミドは常に十分に良好な濡れ性を有するが、その耐加水分解性は、特に比較的高い温度の場合には完全ではない。
【0004】
上記セパレータには、これをニッケル水素蓄電池またはニッケルカドミウム蓄電池に使用する場合には、もう1つの課題がある。このような蓄電池は、自己放電が加速されてしまうという欠点を有する。電荷移動は、電解液内で負のカドミウム電極もしくは金属水素化物電極から正の酸化ニッケル電極へ運ばれるイオンによって行なわれる。電池は非作業状態でもゆっくりと自己放電する。その場合、極端な過放電によって場合によっては電極が使用不能になる可能性もあり、これによりその蓄電池の全体の損失を招く。
【0005】
この不都合な自己放電のためのメカニズムとして論じられているのは、負極での還元および正極での酸化によって電子の移動の原因となっている窒素化合物である。
【0006】
ニッケルカドミウム蓄電池もしくはニッケル水素蓄電池の自己放電への様々なセパレータ材料の作用は、公知である(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
使用されるセパレータ材料によって、自己放電が回避または抑制されるのが望ましい。これは現段階では、セパレータによりアンモニアを捕捉することで放電を遅延することによって実現されている。
【0008】
アンモニアを結合するこのようなセパレータは現段階では、別の作業工程でポリオレフィン不織布を処理することを含む製造方法により製造されている。その場合、アクリル酸のグラフトによって、ならびに濃硫酸を用いたスルホン化によって所望の性質を得ることができる。この場合、不織布の仕上げ後に第2の作業工程を行うことは不都合である。この製造方法によって製造された製品は、例えば日本の日本バイリーン株式会社(スルホン化材料)もしくは英国のScimat Ltd.(アクリル酸グラフト材料)から入手できる。
【0009】
別の製造方法では、アンモニアを吸収する粉末ないしは分散体が塗布される。このためには、アクリル酸でグラフトされたポリオレフィンを使用する。その場合、このような製品においては、塗布された粒子の領域に「封印された箇所」が生じてしまうことがあり、この箇所は、バッテリの性質に対して不都合に作用しうる。この製造方法によって製造された製品は、Freudenberg Vliesstoffe KG(ドイツ、Weinheim)から購入可能である。
【0010】
このように、本発明の上位概念をなす従来の不織布は、その製造およびその後の使用を考慮した場合、著しい欠点を有している。
【非特許文献1】P.Kritzer、J. Power Sources 2004、137、317〜321頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、簡単かつ問題のない製造により長い寿命を有する電気化学的電池を提供することである。特に、電池の自己放電を回避または抑制するように機能するセパレータに使用する不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴によって解決される。つまり、アルカリ性媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な少なくとも1種の物質を内在させて含む少なくとも1種の繊維材料からなる機能性繊維を含む、バッテリまたは電気化学的電池におけるセパレータとして使用される不織布であって、前記物質が、前記繊維材料の体積領域に、媒質が作用しうる前記繊維の表面で有効であるように組み込まれている、もしくは、前記物質が、媒質が作用しうる表面を有する機能性繊維の体積領域に、表面で有効であるように組み込まれている不織布によって解決される。
【0013】
本発明によれば、まず始めの段階で、電気化学的電池の性質が、その電池で使用される不織布もしくはその電池で使用される繊維によって決まることが分かった。さらに、化学的に活性なまたは活性化可能な物質を、これを繊維マトリックスに組み込みかつ分散して配置させることによって持続的かつ適切に使用できることが分かった。最後に第3の段階で、媒質と接触しうる領域にのみ化学的に活性な物質を選択的に割り当てることによって、この物質を経済的かつ効果的に使用できることが分かった。これに関して、化学的に活性な物質によって改質させるのは繊維マトリックスのうちの、その改質を必要とする部分のみである。これにより、改質のために繊維の構造全体が不都合な影響を受けることが排除される。また、化学的に活性な物質を組み込むことによって、表面で既に消費された物質が、体積領域の内部から補充可能であることが保証される。これにより、電気化学的電池の特に長い寿命が保証される。
【0014】
冒頭に述べた課題は、さらに次のように解決される。
【0015】
機能性繊維は多成分繊維を含むことができる。この繊維タイプは、その製造方法が既によく知られているので、容易に製造可能である。
【0016】
この多成分繊維は、サイドバイサイド型繊維を含むことができる。サイドバイサイド型繊維は容易に入手可能である。
【0017】
前記の安定化を達成するためには、繊維には芯鞘型繊維が含まれていてもよく、その場合、その芯部は安定化の作用を付与するものでなければならない。
【0018】
上記多成分繊維の1成分のみが上記物質を含んでいてもよい。この具体的な態様によって、繊維の構造内で上記物質による改質の影響を受けない領域が繊維中で得られることが保証される。
【0019】
芯鞘型繊維の鞘成分が上記物質を含んでいてもよい。このことによって、上記物質が1本の繊維の外周全体でアルカリ性媒質と相互作用可能であることを実現できる。これにより、特に大きな反応性表面を得ることができる。
【0020】
不織布が、機能性繊維を少なくとも15重量%を含む繊維混合物からなっていてもよい。15重量%という下限は、電気化学的電池の十分な長さの放電時間を実現可能にする値を表わす。使用する機能性繊維をそれより少なくすると、自己放電が過度に速く起こり、従来のセパレータを用いて構成された電池に対しての利点がなくなる。
【0021】
少なくとも1種の物質が、共重合によって形成されたポリマーとして形成されていてもよい。共重合を行うことによって、特に均質でかつ安定した内部構造を有する材料が得られる。これにより、化学的に活性な分子が特に有利に一体積中に分布することが保証される。
【0022】
少なくとも1種の物質が、グラフトによって形成されたポリマーとして形成されていてもよい。その場合、特に、機能性ポリマーを、溶融液もしくは溶液または分散液の形態で存在させてアクリル酸とグラフトし、続いて繊維へと紡糸することができる。別の方法では、繊維を、紡糸後に分散体中でアクリル酸とグラフトしてもよい。この繊維はその後、さらなる化学的な改質を行うことなく、後続の諸工程で不織布へとさらに加工することができる。
【0023】
繊維は、ポリマーの反応押出しによる共重合またはグラフトによって機能化することも可能であり、それにより、アルカリ性溶液からのアンモニアを結合させることのできる官能基を分子内に有しているか、またはアルカリ性電解液中に形成することもできる。このようなポリマーはさらに、アルカリ性媒質中でルイス酸として作用する官能基を含んでいてもよい。この具体的な態様によって、機能性繊維によりアルカリ性溶液中のアンモニアが結合可能となることが保証される。これにより、電気化学的電池の放電の速度が効果的に低下する。
【0024】
ポリマーにはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)またはその他のポリオレフィンを含むことができる。このようなポリマーの使用は、問題のない製造が行われるという観点から有利であり、それは、その材料特性が既知であって、製造プロセスが容易に予測可能かつ再現可能であることによる。
【0025】
繊維材料を、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、エチレンビニルアルコールまたはこれらの混合物を塊状での反応押出しを利用して共重合またはグラフトによって機能化することもできる。グラフトはポリマー分散液中でも行うことができる。
【0026】
不織布は、不織布重量1gあたり少なくとも0.1mmolのアンモニア吸収能によって特徴付けられていてもよい。この吸収能によって、電気化学的電池の放電プロセスの速度を十分に低下させることが保証される。
【0027】
特に好ましくは、不織布は、不織布質量1g当たり少なくとも0.1mmolのNH、不織布質量1g当たり0.2mmolのNHまたは0.4mmolのNHを結合させることができる。この選択された値は、放電時間が特に顕著に緩慢になる時の特性値を表わしている。
【0028】
不織布は、濃アルカリ液に対して耐加水分解性の繊維を含む繊維混合物を有していてもよい。このことによって、不織布が安定した構造を有しかつアルカリ性媒質中で分解しないことが保証される。
【0029】
良好な濡れ性を得るために、不織布は親水性の性質、特に親水性の表面を有していてもよい。これは、フッ素化処理、プラズマ処理またはスルホン化によって得ることができる。不織布材料を、極性でかつ不飽和の有機物でグラフトさせてもよい。さらに、湿潤剤を塗布することもできる。湿潤剤は容易に入手可能である。
【0030】
不織布は、坪量(単位面積当たりの重量)15〜300g/mを有していてもよい。この範囲によって、不織布が十分な流体吸収能を有すると共に、使用に適した重量の電気化学的電池が実現可能となることが保証される。
【0031】
不織布の厚みは20〜400μmとすることができる。この範囲によって、使用に適した内寸および外寸を有する電気化学的電池が実現可能となることが保証される。
【0032】
不織布は、湿式不織布技術によって製造することができる。この技術による製造によって、不織布が高い均質性を有することが保証される。
【0033】
不織布は、乾式不織布技術によって製造することもできる。この技術では、不織布材料に、この不織布材料の安定性に不利な影響を及ぼす媒質を供給しない。
【0034】
不織布は、スパンボンド・メルトブローン技術によって製造することもできる。これにより、極めて細い繊維の製造、ひいては高い比表面積を有する不織布の製造が可能となる。
【0035】
冒頭に述べた本発明の課題はさらに、請求項27に記載の特徴を有する繊維によって解決される。その発明の内容の説明を繰り返すことを避けるため、不織布自体の実施態様を参照されたい。
【0036】
繊維の直径は、5μmより小さくすることができる。これにより、極細の繊維を使用することが可能となり、不織布の表面積が大きくなる。
【0037】
繊維は、繊維材料から紡糸するが、その際、繊維材料を、紡糸後に初めて上記物質によって機能化させることもできる。この態様によって、機能性繊維を市販の繊維から生成することが可能となる。これにより、繊維の製造および改質が2つの別々の場所で実施可能となる。
【0038】
上記物質によって機能化された繊維材料から繊維の紡糸を行なうこともできる。これにより、一箇所で機能性繊維を製造することが可能となる。
【0039】
繊維または多数の繊維が高フィブリル化された状態で存在していてもよい。この態様によって、不織布の製造のためにパルプ材料を使用することが可能となる。パルプ材料は表面積が著しく大きいことが特徴である。
【0040】
本出願の特許請求の範囲に記載の繊維は、本明細書に記載された不織布に含まれる繊維に応じた幾何学的もしくは物質的な態様によって特徴付けることもできる。その場合には、幾何学的な構成として全ての繊維タイプ、例えば芯鞘型繊維等を選択することができる。さらに、本出願においては、繊維材料またはその機能化のために使用する物質を、意味をなすあらゆる組合せで使用することができる。
【0041】
冒頭に述べた課題はさらに、請求項33に記載の特徴によって解決される。その発明の内容の説明を繰り返すことを避けるため、上記不織布自体の実施態様を参照されたい。
【発明の効果】
【0042】
簡単かつ問題のない製造により長い寿命を有する電気化学的電池を提供するという課題を顧慮して、アルカリ性媒質中で化学的に活性であるかもしくは活性化可能である少なくとも1種の物質を内在させて含む少なくとも1種の繊維材料からなる機能性繊維を含む、特にバッテリあるいは電気化学的電池におけるセパレータとして使用される不織布であって、前記物質が、機能性繊維の、媒質が作用しうる表面を有する体積領域のみに、表面にて有効であるように組み込まれていることを特徴とする不織布を提供する。繊維は、前述の繊維材料からなっている。電気化学的電池は、このような不織布をセパレータとして含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の教示を有利に構成しかつ発展させるのに様々な方法が存在する。これについては、一方では、独立項である請求項1および27に従属する請求項を参照し、他方では、表に基づく本発明の有利な実施例についての次の説明を参照されたい。表に基づく本発明の有利な実施例についての説明に関連して、上記教示の一般に有利な態様および発展形も説明する。
【実施例】
【0044】
A)アンモニアを結合するポリオレフィン繊維を例えば次の方法によって製造した。
【0045】
1.アクリル酸でグラフトされた、アクリル酸(AS)成分を5.5%含有するポリプロピレンの使用
繊維への紡糸を押出し温度210〜215℃で行なった。紡糸ノズルの穴直径は450μmであった。1ノズルあたりのポリマー処理量は、0.11cm/minであった。続いてこの繊維を温度80〜100℃で3倍延伸した。得られた繊維の繊度は約2.5dtexであり、アンモニア吸収能は0.58mmolNH/gであった。
【0046】
2.アクリル酸でグラフトされた、アクリル酸(AS)成分を6.0%含有するポリエチレンの使用
繊維への紡糸を押出し温度205〜210℃で行なった。紡糸ノズルの穴直径は450μmであった。1ノズルあたりのポリマー処理量は、0.13cm/minであった。続いてこの繊維を温度80〜100℃で3倍延伸した。同様に、得られた繊維の繊度は約3dtexであり、アンモニア吸収能は0.51mmolNH/gであった。
【0047】
3.ポリプロピレンからなる「芯部」とアクリル酸でグラフトされたポリエチレンからなる「鞘部」を有する芯鞘型繊維の使用
芯部ポリマーとして、210℃でMFI値が37である、Borealis社(デンマーク)のポリプロピレン種を使用した。MFI値は、特定の圧力条件および温度条件での特定の直径のノズルを通した溶融物の材料フローを表わす、いわゆるメルトフローインデックスとして知られている。鞘部ポリマーとしては、実施例2で挙げた改質ポリエチレンを使用した。芯/鞘の比は50:50であった。繊維の得られた繊度は約1.7dtexであった。繊維のアンモニア吸収能は0.38mmolNH/gであった。
【0048】
4.メルトブローン工程へのポリプロピレン繊維の使用
MFI値が800である、Borealis社(デンマーク)のポリプロピレンを機能化させ、温度270℃で紡糸した。得られた繊維直径は4μmであった。
【0049】
5.既に準備されたショートカットファイバの改質
大和紡績株式会社のポリオレフィンからなる芯鞘型繊維を使用した。この繊維のカット長は6mm、繊度は0.8dtexであった。この繊維を分散体中でアクリル酸でグラフトさせた。改質された繊維のアンモニア吸収能は0.3mmolNH/gであった。
【0050】
B)実施例A)1.〜A)5.の繊維から不織布を製造した。この場合、機能化繊維として長さ6mmのショートカットファイバを使用した。
【0051】
1.A)1.に記載の改質PP繊維の使用
この繊維を、繊度0.8dtexのポリオレフィン芯鞘型繊維(大和紡績株式会社、日本)と共に混合比60:40で分散させ、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて約135℃で熱融着させ、カレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0.32mmolであった。
【0052】
2.A)2.に記載の改質PE繊維の使用
この繊維を、繊度0.8dtexのポリプロピレン繊維(大和紡績株式会社、日本)と共に混合比40:60で分散させて、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて約140℃で熱融着させ、カレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0.24mmolであった。
【0053】
3.A)3.に記載の改質芯鞘型繊維の使用
この純粋の繊維を分散させ、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて140℃で熱融着させ、カレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0.39mmolであった。
【0054】
別の実施例では、この芯鞘型繊維70%を、繊度0.8dtexの純粋なポリプロピレン繊維(大和紡績株式会社、日本)30%と共に分散させて、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて140℃で熱融着させ、カレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0.28mmolであった。
【0055】
4.A)3.に記載の改質芯鞘型繊維と、A)1.に記載の改質PP繊維とを併用した使用
上記の両繊維を混合比70:30で分散させ、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて約145℃で熱融着させ、10N/mmでカレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0.42mmolであった。
【0056】
5.A)5.で改質されたショートカットファイバの使用
この繊維を分散させ、湿式ウェブを集積した。坪量60g/mの生成されたウェブを、続いて140℃で熱融着させ、カレンダー処理して140μmの厚みにした。測定されたアンモニア吸収能は、不織布1gにつきNH0.3mmol/gであった。
【0057】
6.比較例(空試験)
比較例として、改質されていないポリオレフィン繊維からなる、Freudenberg Vliesstoffの市販されている製品FS 2226-14(坪量60g/m、厚み140μm)を用いた。測定されたアンモニア結合能は、不織布1gにつきNH0mmolであった。
【0058】
C)ポリマーからなるメルトブローン不織布
A)4.に記載の改質ポリプロピレンを用いて、紡糸温度約270℃でのメルトブローン技術によって、坪量35g/mであり厚み120μmである不織布を製造した。この材料の繊維の太さは2〜4μmの範囲内であった。この不織布は、1gにつきNH0.62mmolのアンモニア結合能を有していた。
【0059】
D)自己放電に関してのバッテリにおける結果
B)もしくはC)で製造された不織布セパレータをバッテリに組み込み、これらセパレータが自己放電へ及ぼす影響を試験した。この目的のために、それぞれB)3.、B)4.、B)5.およびC)、ならびに比較例B)6.によるセパレータを備えている容量1200mAhの単3型(AA型)のニッケル水素電池を各5個製造した。自己放電を種々の条件で測定した。
【0060】
アンモニア結合能を測定するために、次のステップを含む方法を実施した。
【0061】
約2gのセパレータ材料を、0.3モル濃度のアンモニア(NH)5mlを添加した8モル濃度の苛性カリ(KOH)120ml中で3日間40℃で保存した。同時に、出発ポリマーを使用しない2つのブランク試験を開始した。保存後、場合によっては油状の分離物があればこれを濾紙を用いて表面から吸収させて取り除く。元の125mlの出発物質から100mlの部分量を取り出し、そこからアンモニアを水蒸気蒸留によって、0.1モルの塩酸(HCl)10mlと指示薬としてメチルレッド数滴とで処理した蒸留水150ml中に留出させる。続いて酸を、0.1規定の苛性ソーダ液(NaOH)を用いて逆滴定する。
【0062】
次表に、上記の不織布セパレータ材料を用いて製造されたバッテリの自己放電(SE)の結果を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
本試験の範囲内で製造された、アンモニアを結合するセパレータ材料によって、アンモニアを結合することができないセパレータに比して、バッテリの自己放電挙動に関して著しく改善された挙動がバッテリに与えられることを明らかにすることができた。
【0065】
本発明による教示の別の有利な態様および発展形については、一方で明細書の一般的な部分を、他方で添付された特許請求の範囲を参照されたい。
【0066】
最後に、純粋に任意に選択された前記の実施例が本発明の教示を詳説するためだけに用いたのであって、本発明の教示はこの実施例に限定されるものではないことを特に強調しておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な少なくとも1種の物質を内在させて含む少なくとも1種の繊維材料からなる機能性繊維を含む、バッテリまたは電気化学的電池におけるセパレータとして使用される不織布であって、
前記物質が、前記繊維材料の体積領域に、媒質が作用しうる前記繊維の表面で有効であるように組み込まれている、不織布。
【請求項2】
前記機能性繊維が多成分繊維からなる、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記多成分繊維がサイドバイサイド型繊維からなる、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記多成分繊維が芯鞘型繊維からなる、請求項2または3に記載の不織布。
【請求項5】
前記多成分繊維の1成分のみが前記物質を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項6】
前記芯鞘型繊維の鞘成分または外側にある成分が前記物質を含む、請求項4または5に記載の不織布。
【請求項7】
前記機能性繊維を少なくとも15重量%の割合で含有する繊維混合物からなる、請求項1から6のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項8】
前記物質の少なくとも1種が、共重合によって形成されたポリマーとして構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項9】
前記物質の少なくとも1種が、グラフトによって形成されたポリマーとして構成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項10】
前記ポリマーが、アルカリ性媒質中でルイス酸として作用する官能基を有する、請求項8または9に記載の不織布。
【請求項11】
前記ポリマーがポリプロピレンからなる、請求項8から10のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項12】
前記ポリマーがポリエチレンからなる、請求項8から11のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項13】
前記ポリマーがポリオレフィンからなる、請求項8から12のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項14】
少なくとも0.1mmol/gのアンモニア吸収能を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項15】
濃アルカリ液に対して耐加水分解性の繊維を含む繊維混合物からなる、請求項1から14のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項16】
親水性の性質を有する、請求項1から15のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項17】
フッ素化によって処理されている、請求項16に記載の不織布。
【請求項18】
プラズマ処理によって処理されている、請求項16に記載の不織布。
【請求項19】
スルホン化によって処理されている、請求項16に記載の不織布。
【請求項20】
グラフトされた極性不飽和有機物を含む、請求項16に記載の不織布。
【請求項21】
湿潤剤を用いて親水化されている、請求項16に記載の不織布。
【請求項22】
坪量が15〜300g/mである、請求項1から21のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項23】
厚みが20〜400μmである、請求項1から22のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項24】
湿式ウェブ技術によって製造された、請求項1から23のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項25】
乾式ウェブ技術によって製造された、請求項1から23のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項26】
スパンボンド・メルトブローン技術を用いて製造された、請求項1から23のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項27】
アルカリ媒質中で化学的に活性なまたは活性化可能な少なくとも1種の物質を内在的に含む少なくとも1種の繊維材料を含む繊維において、
前記物質が、前記繊維材料の体積領域に、媒質が作用しうる前記繊維の表面で有効であるように組み込まれている、繊維。
【請求項28】
直径が5μm未満である、請求項27に記載の繊維。
【請求項29】
紡糸後に前記物質によって機能化させた繊維材料を含む、請求項27または28に記載の繊維。
【請求項30】
前記物質によって機能化させた繊維材料から紡糸されている、請求項27または28に記載の繊維。
【請求項31】
高フィブリル化された状態である、請求項27から30のいずれか1項に記載の繊維。
【請求項32】
請求項1から26のいずれか1項に記載の不織布に含まれる繊維に基づく幾何学的および/または物質的な構成を特徴とする、請求項27から31のいずれか1項に記載の繊維。
【請求項33】
少なくとも1つの正極および少なくとも1つの負極と、電荷担体の移動を可能にする材料とを少なくとも部分的に収容するケーシングを備えており、セパレータによってこれらの電極が分離されている電気化学的電池であって、
前記セパレータが、請求項1から32のいずれか1項に記載の不織布または少なくとも1種の繊維を含む、電気化学的電池。

【公開番号】特開2006−222083(P2006−222083A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30430(P2006−30430)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Fターム(参考)】