説明

両軸受リール

【課題】 両軸受リールにおいて、サミングを快適に行えるようにするとともに、釣り糸を確実に係止できるようにする。
【解決手段】 スプール12は、糸巻胴部12aと、糸巻胴部12aの両端に径方向外方に突出した第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cとを有している。第2フランジ部12cは、糸巻胴部12aの径方向外方に突出して設けられた第2傾斜部12fと、第2傾斜部12fの先端部から軸方向外方に突出した第2円筒部12gと、第2円筒部12gから第2傾斜部12fにわたって略U字状に湾曲した線材からなる釣糸係止部70を装着可能に略U字状に凹んで形成された装着凹部12kと、装着凹部12kの基端部と連通し第2傾斜部12fの内部にボス部12hを貫通し釣糸係止部70を挿入可能な貫通孔12lとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リール、特に、釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールは、一般に、ハンドルを有するリール本体と、リール本体に回転自在に装着されたスプールとを備えている。スプールは、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の両端に設けられたフランジ部とを有している。糸巻胴部は、外周に釣り糸が巻き付けられる円筒状の筒状部と、筒状部の内周側に形成されスプール軸に装着されるボス部とを有している。フランジ部は、糸巻胴部より大径に設けられ、糸巻胴部の両端にそれぞれ径方向外方に突出して設けられている。フランジ部は、軸方向外方に向けて徐々に拡径するように傾斜している。
【0003】
このような両軸受リールでは、魚等がヒットしたときにスプールが高速回転するのを防止するために、フランジ部の外周部を親指で押さえる、いわゆるサミングを行うことがある。このようなサミングを行うことにより、スプールの過回転を防止できるので、魚等とのやり取りを楽しんだり、あるいは釣り糸がバックラッシュするのを防止できる。
【0004】
このようなサミング可能な両軸受リールにおいて、特に、ワカサギ釣りに用いられる両軸受リールにおいては、サミングを行いやすくするために、サミングする側のフランジ部を、逆側のフランジ部に比して、軸方向長さが長くなるように円筒状に形成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このようにサミングする側のフランジ部の軸方向長さを長く円筒状に形成することにより、親指の接触面積が増加するので、サミングを容易にかつ確実に行うことができる。
【0005】
また、ワカサギ釣り等の落とし込み釣りでは、仕掛けを棚位置まで落としたとき、棚位置を記憶するために、繰り出した釣り糸の途中部分を係止するための突出した舌状の釣糸係止部をサミングする側のフランジ部の円筒状部分に固定されたものが知られている(たとえば、特許文献1、特に、第5図参照)。ここでは、舌状の釣糸係止部に釣り糸の途中部分を係止した状態で釣り糸をさらに巻き上げることにより、再度仕掛けを投入するときに係止位置より後に巻き上げた釣り糸だけ投出されるので、前回と同じ棚位置に仕掛けを位置させることができる。
【特許文献1】実開昭62−144477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の両軸受リールは、繰り出した釣り糸の途中部分を係止するための釣糸係止部が、サミングする側のフランジ部の円筒状部分に固定されているので、たとえばフランジ部の糸巻胴部側端部に固定部を設けると、釣り糸が係止される挟持部分が円筒状部分の固定部より軸方向外方に位置する。釣り糸が係止される挟持部分が軸方向外方に位置すると、釣り糸を係止できる挟持幅、すなわち釣糸係止部の先端部と固定部との間の軸方向長さが短くなるので、係止した釣り糸が抜けやすくなり、このため釣り糸の確実な係止を阻害するおそれが生じる。
【0007】
本発明の課題は、両軸受リールにおいて、サミングを快適に行えるようにするとともに、釣り糸を確実に係止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明1に係る両軸受リールは、釣竿に取り付けられ釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールであって、釣竿に装着されるリール本体と、リール本体の一側に回転自在に設けられたハンドルと、スプールと、釣糸係止部とを備えている。スプールは、リール本体に回転可能に支持され、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられた第1傾斜部と第1傾斜部の先端部から軸方向外方に突出して設けられた第1円筒部とを有する第1フランジ部と、糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられた第2傾斜部と第2傾斜部の先端部から軸方向外方に突出して設けられ軸方向長さが第1円筒部の軸方向長さより長くなるように形成された第2円筒部とを有する第2フランジ部とを有している。釣糸係止部は、基端部が糸巻胴部又は第2傾斜部に固定され、基端部から先端部の間の部分が第2傾斜部から第2円筒部に沿って折れ曲がり、先端部から挿入された釣り糸を第2フランジ部との間で挟持可能な部材である。
【0009】
この両軸受リールでは、第2フランジ部は、第1フランジ部の第1円筒部の軸方向長さより長くなるように形成された第2円筒部を有しているので、親指の接触面積が増加し、このためサミングを快適に行うことができる。
【0010】
また、第2フランジ部側に釣糸係止部が設けられているので、釣り糸の係止が容易になる。さらに、ここでは、釣糸係止部は、基端部が糸巻胴部又は第2傾斜部に固定され、基端部から先端部の間の部分が第2傾斜部から第2円筒部に沿って折れ曲がって形成されているので、従来のように第2円筒部の糸巻胴部側端部に固定部を設ける必要がなくなる。したがって、釣り糸が係止される挟持部分が軸方向外方に位置することがなくなるので、釣り糸が係止できる挟持幅を長くすることができる。このため、係止した釣り糸が抜けにくくなるので、釣り糸を確実に係止することができる。
【0011】
発明2に係る両軸受リールは、発明1の両軸受リールにおいて、リール本体は、内部空間にスプールが配置される第1側板及び第2側板を有している。糸巻胴部の軸方向の中心位置は、第1側板と第2側板との間の内部空間の中心位置より、第1フランジ部側にずれて設けられ、スプールの回転軸に平行に配置され糸巻胴部と対向する範囲の外周に螺旋状溝が形成された螺軸と、螺軸を回転させるための連動機構と、螺旋状溝に係合して往復移動する釣り糸案内部とを有し、釣り糸をスプールに均一に巻き付けるためのレベルワインド機構をさらに備えている。この場合、レベルワインド機構の螺旋状溝が糸巻胴部と対向する範囲に形成されているので、釣り糸をスプールに無駄なく均一に巻き付けることができる。
【0012】
発明3に係る両軸受リールは、発明1又は2の両軸受リールにおいて、第1フランジ部は、ハンドルと近接する側に設けられ、第2フランジ部は、ハンドルと離反する側に設けられている。この場合、たとえば右側にハンドルを設けたとき、右手でハンドル操作を行いながら、左手でサミングを行うことができるので、ハンドル操作とサミングとをリールを持ち替えることなく交互に連続的に行うことができる。
【0013】
発明4に係る両軸受リールは、発明1から3のいずれかの両軸受リールにおいて、第2フランジ部は、釣糸係止部を装着可能に凹んで形成された装着凹部を有している。この場合、装着凹部の内部に釣糸係止部が装着されるので、釣糸係止部が外部に突出することがなくなる。したがって、サミングしたときに親指が接触しにくくなるので、サミングをより快適に行うことができる。
【0014】
発明5に係る両軸受リールは、発明4の両軸受リールにおいて、装着凹部は、第2円筒部に形成されている。この場合、サミングしたときに親指が接触しにくくなるので、サミングをさらに快適に行うことができる。
【0015】
発明6に係る両軸受リールは、発明4又は5の両軸受リールにおいて、装着凹部は、第2傾斜部に形成されている。この場合、たとえば装着凹部を第2円筒部から第2傾斜部にわたって形成することにより、釣糸係止部を第2円筒部及び第2傾斜部の外部に突出しなくなるので、釣り糸を釣糸係止部に係止した後に釣り糸を巻き付けても、巻き付けた釣り糸に段差等が生じにくくなる。
【0016】
発明7に係る両軸受リールは、発明1から6のいずれかの両軸受リールにおいて、釣糸係止部は、糸巻胴部に装着固定されている。この場合、たとえば釣糸係止部を糸巻胴部の内部に貫通させ、糸巻胴部の内部のボス部にねじ止めすることにより、釣糸係止部の取り付け部を外部に露出させなくすることができる。
【0017】
発明8に係る両軸受リールは、発明1から6のいずれかの両軸受リールにおいて、釣糸係止部は、第2傾斜部に装着固定されている。この場合、釣糸係止部の取り付けが簡単になる。
【0018】
発明9に係る両軸受リールは、発明1から8のいずれかの両軸受リールにおいて、釣糸係止部は、略U字状に湾曲した線材からなる金属製の針金状部材である。この場合、釣糸係止部は、先端部が略U字状に湾曲した線材からなる部材であるので、親指が釣糸係止部に接触しても、釣人は違和感を感じることがなくなり、このため、サミングを快適に行うことができる。また、金属製の針金状部材によって釣糸係止部を形成することにより、釣糸係止部の加工が容易になるとともに、安価な釣糸係止部を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、両軸受リールにおいて、第2フランジ部は、第1フランジ部の第1円筒部の軸方向長さより長くなるように形成された第2円筒部を有し、第2フランジ部側に釣糸係止部が設けられている。釣糸係止部は、基端部が糸巻胴部又は第2傾斜部に固定され、基端部から先端部の間の部分が第2傾斜部から第2円筒部に沿って折れ曲がって形成されている。したがって、サミングを快適に行うことができ、釣り糸を確実に係止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態が採用された両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ワカサギ釣り用の小型の両軸受リールである。このリールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2とを備えている。
【0021】
ハンドル2は、図1に示すように、板状のアーム部2aと、アーム部2aの一端に回転自在に装着された把手2bとを有するシングルハンドル形のものである。アーム部2aは、図2に示すように、ハンドル軸30の先端に回転不能に装着されており、ナット部材28によりハンドル軸30に締結されている。
【0022】
リール本体1は、図1及び図2に示すように、たとえばアルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属製の部材であり、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6及び第2側カバー7とを有している。リール本体1の内部には、糸巻き用のスプール12がスプール軸20(図2参照)を介して回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0023】
フレーム5内には、図2に示すように、スプール12と、図示しないワンウェイクラッチをオン、オフするためのストッパレバー16と、後述するクラッチ機構21を操作するためのクラッチレバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18とが配置されている。また、フレーム5と第2側カバー7との間には、図2に示すように、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝えるためのギア機構19と、クラッチ機構21と、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構21を制御するためのクラッチ制御機構22と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構24とが配置されている。
【0024】
フレーム5は、図1及び図2に示すように、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板8及び第2側板9と、第1側板8及び第2側板9を一体で連結する前後の連結部10a、10bとを有している。第1側板8の中心部よりやや上方には、スプール12を着脱するための円形の開口8aが形成されている。この開口8aの内周部には、スプール12の回転軸であるスプール軸20の左端を支持するスプール支持部13が装着されている。
【0025】
第1側板8及び第2側板9は、図2に示すように、両端部外周が対向する軸方向内方側に突出して設けられたリング状の第1環状部14a及び第2環状部14bをさらに有している。第1環状部14a及び第2環状部14bの内周部には、側部が開口する環状の第1凹溝部14c及び第2凹溝部14dがそれぞれ形成されている。
【0026】
前側の連結部10aは、上面が第1側板8及び第2側板9の外形と同一面に配置されており、後側の連結部10bは、後面が第1側板8及び第2側板9の外形と同一面に配置されている。また、フレーム5の下部には、図示しない連結部が、前後に1対設けられており、外形より内側に配置されている。この下側の連結部には、図1に示すように、リールを釣竿に装着するための前後に長い、たとえばアルミニウム合金等の金属製の竿装着脚部4がリベット止めされている。
【0027】
第1側カバー6及び第2側カバー7は、図1及び図2に示すように、外形が湾曲した筐状の部材であって、図示しない複数のねじ部材によって第1側板8及び第2側板9に着脱可能に装着されている。
【0028】
スプール12は、図1及び図2に示すように、第1側板8及び第2側板9の間に回転自在に装着され、外周に釣り糸を巻き付けるためのものである。スプール12は、図3に拡大して示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部12aと、糸巻胴部12aの両端にそれぞれ径方向外方に突出して設けられた第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cとを有している。
【0029】
糸巻胴部12aは、図2に示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状部材であって、軸方向の中心位置Yは、第1側板8及び第2側板9の間の内部空間の中心位置Xより、第1フランジ部12b側にずれて配置されている。
【0030】
第1フランジ部12bは、図3に示すように、糸巻胴部12aの一端(図3右側)に径方向外方に突出して設けられた第1傾斜部12dと、第1傾斜部12dの先端部から軸方向外方に突出して設けられた第1円筒部12eとを有している。第2フランジ部12cは、糸巻胴部12aの他端(図3左側)に径方向外方に突出して設けられた第2傾斜部12fと、第2傾斜部12fの先端部から軸方向外方に突出して設けられた第2円筒部12gとを有している。第2円筒部12gは、軸方向長さが第1円筒部12eの軸方向長さより長くなるように、具体的には、第1円筒部12eの軸方向長さの略2倍の長さになるように形成されており、このため左手の親指でサミングを行うことが容易になっている。
【0031】
第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cは、図3に示すように、第1円筒部12e及び第2円筒部12gの両端外周に突出し、第1環状部14a及び第2環状部14bの先端部との間に僅かな隙間をあけて設けられ、第1フランジ部12b及び第2フランジ部12cと第1側板8及び第2側板9との間に釣り糸が進入するのを防止する第1釣り糸進入防止部12i及び第2釣り糸進入防止部12jをさらに有している。スプール12は、糸巻き胴部12aの内周側の軸方向の実質的に中央部に一体で形成された筒状のボス部12hを有しており、ボス部12hを貫通するスプール軸20に、たとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。
【0032】
また、このようなスプール12には、図3から図6に示すように、釣り糸の途中部分を係止するための略U字状に湾曲した線材からなる釣糸係止部70が第2フランジ部12cに装着されている。第2フランジ部12cは、第2円筒部12gから第2傾斜部12fにわたって釣糸係止部70を装着可能に略U字状に凹んで形成された装着凹部12kと、装着凹部12kの基端部と連通し第2傾斜部12fの内部にボス部12hを貫通し釣糸係止部70を挿入可能な貫通孔12lとを有している。
【0033】
釣糸係止部70は、図3から図6に示すように、金属製の断面略円形の針金状部材であって、略U字状に湾曲した先端部70aと、先端部70aから装着凹部12kに沿って折れ曲がり糸巻胴部12a側に延びる中間部70bと、中間部70bから貫通孔12lを貫通し両端部がそれぞれ対向するように略L字状に折れ曲がりボス部12hにねじ部材71によって固定される基端部70cとを有している。
【0034】
先端部70aは、図3及び図6に示すように、略U字状に湾曲し、その先部分がやや斜め上外方に突出して形成されており、先部分が第2円筒部12gの装着凹部12kより外方にやや突出している。このため、釣り糸が先端部70aから中間部70b側に釣り糸を係止しやすくなっている。なお、先端部70aの中間部70b側の部分は、第2円筒部12gの装着凹部12kの内部に配置されている。このため、釣り糸を釣糸係止部70に係止した後巻き付けるときには、巻き付けた釣り糸に段差等が生じにくくなる。また、先端部70aが略U字状に湾曲した線材からなる部材であるので、親指が釣糸係止部70に接触しても、釣人は違和感を感じることがなくなり、このため、サミングを快適に行うことができる。
【0035】
中間部70bは、図3及び図4に示すように、第2傾斜部12fの装着凹部12kの外形に沿って折れ曲がり、基端部70c側がスプール軸20に対して略直交するように貫通孔12lに沿って平行に延びた2つの軸部分である。なお、中間部70bは、第2傾斜部12fの装着凹部12kの内部に配置されている。このため、釣り糸を釣糸係止部70に係止した後巻き付けるときには、巻き付けた釣り糸に段差等が生じにくくなる。
【0036】
基端部70cは、図3及び図4に示すように、中間部70bの両端部がそれぞれ対向するように略L字状に折れ曲がっており、この折れ曲がり部分を図3左側から装着されたねじ部材71の頭部とボス部12hとで挟持することによって、釣糸係止部70がボス部12hにねじ止めされている。
【0037】
このような釣糸係止部70に釣り糸を係止するには、まず、釣り糸の途中部分を先端部70aから先端部70aと第2円筒部12gの装着凹部12kとの間に挿入する。次に、挿入された釣り糸を間部70bと第2傾斜部12fの装着凹部12kとの間に引き込んで挟持する。なお、釣り糸の挟持される位置は、既に糸巻胴部12aに巻き付けられている糸巻き量より径方向外方の位置である。
【0038】
クラッチレバー17は、図1及び図2に示すように、第2側板9と第2側カバー7との間の後部でスプール12後方に配置されている。クラッチレバー17は、前後方向にスライド可能に設けられており、クラッチ制御機構22(図2参照)に係合している。
【0039】
レベルワインド機構18は、図2に示すように、スプール12の前方で第1側板8と第2側板9との間に配置され、外周面に交差する螺旋状溝46aが形成された螺軸46と、螺軸によりスプール軸20方向に往復移動する釣り糸案内部47とを有している。螺旋状溝46aは、図2に示すように、スプール軸20に平行に配置され、糸巻胴部12aと対向する範囲の外周に形成されている。ここでは、螺旋状溝46aが糸巻胴部12aと対向する範囲に形成されているので、釣り糸をスプール12に無駄なく均一に巻き付けることができる。螺軸46の図2右端には、ギア機構19に噛み合う図示しないギア部材が装着されており、このため、螺軸46はハンドル軸30の糸巻き取り方向の回転に連動して回転するようになっている。
【0040】
ギア機構19は、図2に示すように、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたメインギア31と、メインギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32とを有している。ハンドル軸30は、図示しない爪式のワンウェイクラッチにより糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止されており、ストッパレバー16(図1参照)によって糸繰り出し方向の回転を許可することができる。
【0041】
スプール軸20は、図2に示すように、第2側板9を貫通して第2側カバー7の外方に延びており、その延びた右端は、第2側カバー7により回転自在に支持されている。またスプール軸20の左端は、スプール支持部13によって回転自在に支持されている。
【0042】
次に、実釣時のリールの操作及び動作について詳細に説明する。
【0043】
キャスティングを行うときには、クラッチレバー17を下方に押圧する。すると、クラッチ機構21を構成するピニオンギア32が軸方向外方に移動し、クラッチオフ状態になる。このクラッチオフ状態では、スプール12が自由回転状態になり、キャスティングを行うと仕掛けの重さにより釣り糸がスプール12から勢いよく繰り出される。
【0044】
仕掛けが棚位置に位置すると、この棚位置を記憶するために、釣り糸の途中部分を釣糸係止部70に係止する。この状態で、魚等がヒットすると、左手の親指で第2フランジ部12cの第2円筒部12gをサミングしながら、交互に右手でハンドル2を糸巻き取り方向に回転させて釣り糸をスプール12に巻き付ける。次に、再度、キャスティングを行うときは、釣糸係止部70の釣り糸係止位置より後に巻き上げた釣り糸だけ投出されるので、前回と同じ棚位置に仕掛けを位置させることができる。
【0045】
このような両軸受リールでは、第2フランジ部12cは、第1フランジ部12bの第1円筒部12eの軸方向長さより長くなるように形成された第2円筒部12gを有しているので、サミングするときの親指の接触面積が増加し、このため、サミングを快適に行うことができる。また、第2フランジ部12c側に釣糸係止部70が設けられているので、釣り糸の係止が容易になる。
【0046】
さらに、ここでは、釣糸係止部70は、基端部70cが第2傾斜部12fを貫通して糸巻胴部12a内部のボス部12hに固定され、中間部70bから先端部70aの間の部分が第2傾斜部12fから第2円筒部12gに沿って折れ曲がって形成されているので、従来のように第2円筒部12gの糸巻胴部12a側端部に固定部を設ける必要がなくなる。したがって、釣り糸が係止される挟持部分が軸方向外方に位置することがなくなるので、釣り糸が係止できる挟持幅を長くすることができる。さらに、ここでは、釣り糸の途中部分を先端部70aから先端部70aと第2円筒部12gの装着凹部12kとの間に挿入し、挿入された釣り糸を間部70bと第2傾斜部12fの装着凹部12kとの間に引き込んで挟持しているので、係止した釣り糸が抜けにくくなり、このため、釣り糸を確実に係止することができる。
【0047】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、小型の両軸受リールを例にあげて説明したが、両軸受リールの形状はこれに限定されるものではなく、たとえば大型の両軸受リールや、丸型の両軸受リールや、ロープロフィール型の両軸受リール等にも本発明を適用できる。
【0048】
(b) 前記実施形態では、釣糸係止部70は、金属製の断面略円形の針金状部材であったが、材質や形状はこれらのものに限定されるものではなく、たとえば合成樹脂によって釣糸係止部70を形成してもよい。
【0049】
(c) 前記実施形態では、釣糸係止部70は、先端部70aがやや斜め上外方に突出して形成されていたが、図7に示すように、先端部70aが第2円筒部12gの装着凹部12kの内部に配置されるようにしてもよい。この場合、サミングしたときに親指が釣糸係止部70に接触しにくくなる。
【0050】
(d) 前記実施形態では、釣糸係止部70は、ボス部12hにねじ部材71によって取り付けられていたが、取り付け方法はこれらに限定されるものではなく、たとえば第2傾斜部12fに圧入したり接着固定するようにしてもよい。なお、この場合には、貫通孔12lやねじ部材71を設ける必要がなくなる。
【0051】
(e) 前記実施形態では、第2円筒部12gから第2傾斜部12fにわたって略U字状に凹んだ装着凹部12kが形成されていたが、装着凹部12kの外形はこれに限定されるものではない。たとえば、第2円筒部12gまたは第2傾斜部12fの一方のみに装着凹部12kを形成するようにしてもよいし、あるいは装着凹部12kを形成しない構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面断面図。
【図3】スプールの拡大平面断面図。
【図4】前記スプールの部分拡大側面断面図。
【図5】前記スプールの拡大正面図。
【図6】前記スプールの部分拡大斜視図。
【図7】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0053】
1 リール本体
2 ハンドル
5 フレーム
6 第1側カバー
7 第2側カバー
8 第1側板
9 第2側板
12 スプール
12a 糸巻胴部
12b 第1フランジ部
12c 第2フランジ部
12d 第1傾斜部
12e 第1円筒部
12f 第2傾斜部
12g 第2円筒部
12h ボス部
12i 第1釣り糸進入防止部
12j 第2釣り糸進入防止部
12k 装着凹部
12l 貫通孔
18 レベルワインド機構
20 スプール軸
70 釣糸係止部
70a 先端部
70b 中間部
70c 基端部
71 ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に取り付けられ、釣り糸の繰り出し及び巻き取りを行う両軸受リールであって、
前記釣竿に装着されるリール本体と、
前記リール本体の一側に回転自在に設けられたハンドルと、
前記リール本体に回転可能に支持され、外周に前記釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられた第1傾斜部と前記第1傾斜部の先端部から軸方向外方に突出して設けられた第1円筒部とを有する第1フランジ部と、前記糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられた第2傾斜部と前記第2傾斜部の先端部から軸方向外方に突出して設けられ軸方向長さが前記第1円筒部の軸方向長さより長くなるように形成された第2円筒部とを有する第2フランジ部とを有するスプールと、
基端部が前記糸巻胴部又は前記第2傾斜部に固定され、前記基端部から先端部の間の部分が前記第2傾斜部から前記第2円筒部に沿って折れ曲がり、前記先端部から挿入された前記釣り糸を前記第2フランジ部との間で挟持可能な釣糸係止部と、
を備えた両軸受リール。
【請求項2】
前記リール本体は、内部空間に前記スプールが配置される第1側板及び第2側板を有しており、
前記糸巻胴部の軸方向の中心位置は、前記第1側板と前記第2側板との間の前記内部空間の中心位置より、前記第1フランジ部側にずれて設けられ、
前記スプールの回転軸に平行に配置され前記糸巻胴部と対向する範囲の外周に螺旋状溝が形成された螺軸と、前記螺軸を回転させるための連動機構と、前記螺旋状溝に係合して往復移動する釣り糸案内部とを有し、前記釣り糸を前記スプールに均一に巻き付けるためのレベルワインド機構をさらに備えている、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記第1フランジ部は、前記ハンドルと近接する側に設けられ、前記第2フランジ部は、前記ハンドルと離反する側に設けられている、請求項1又は2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記第2フランジ部は、前記釣糸係止部を装着可能に凹んで形成された装着凹部を有している、請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記装着凹部は、前記第2円筒部に形成されている、請求項4に記載の両軸受リール。
【請求項6】
前記装着凹部は、前記第2傾斜部に形成されている、請求項4又は5に記載の両軸受リール。
【請求項7】
前記釣糸係止部は、前記糸巻胴部に装着固定されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項8】
前記釣糸係止部は、前記第2傾斜部に装着固定されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項9】
前記釣糸係止部は、略U字状に湾曲した線材からなる金属製の針金状部材である、請求項1から9のいずれか1項に記載の両軸受リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−6710(P2007−6710A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187791(P2005−187791)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】