説明

中空押出形材

【課題】長尺に形成しても堅牢な中空押出形材の提供。
【解決手段】複数の形材構成部材を係合して構成する中空押出形材で、連接する一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2は、端部に延長形材構成部材1a,2aを接合し、係合部3a,3bと、他方の形材構成部材2および延長形材構成部材2aの被係合部4a,4bとが係合した当接部P,Qの対峙する箇所には、挿入孔10を形成し、棒材11が挿入して挿入孔10の孔奥側に向けて棒材11の長手側両端を押圧する押込具12を嵌入し、押圧力により棒材11が挿入孔10の孔内周壁に圧接し、係合する一方の形材構成部材1および延長形材構成部材1aと、他方の形材構成部材2および延長形材構成部材2aとが離れるように形成してあり、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2のそれぞれの延長形材構成部材1a,2aとの接合部1c,2cは、形材長手方向の相違。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の形材構成部材を係合して構成される中空押出形材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーポートの桁材などの大型で長尺な中空押出形材を製造する場合、大型で且つビレットに強い圧力を加えることのできる押出機を使用するものであった。ところが、上記のような大型の押出機を使用する場合には、設備コストや運用コストが嵩む問題点があり、このことから、例えば形材構成部材として、比較的径の小さな中空押出形材や、断面ほぼC字状、断面ほぼコ字状もしくは、断面ほぼL字状をなすソリッド材を押し出し、各々の形材構成部材を係合して所望の中空押出形材を得る手法もとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248589号公報
【0004】
【特許文献2】特許第4102473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような手法で通常の押出形材の皮膜複合塗装長さである6mを超えて、さらに、長尺の中空押出形材を製造するときには、図3(a)のように、形材構成部材の形材長手方向の端部に同径の延長形材構成部材を接合する場合がある。ところが、複数の形材構成部材100,200を係合・接合して得られた中空押出形材では、一つの中空押出形材に係合部300a,300b,400a,400bや接合部100c,200cを有することで継目が多くなる上、接合部100c,200cが形材径方向の全周に渡って設けられることから、図3(b)のように、等分布荷重を想定したときの曲げモーメントによる撓みで接合部100c,200cにおける曲げ応力とせん断力(図中Cの位置)が大きくなると、強固な接合部品や施工を要し、したがって、同等長さの一体成形された中空押出形材に比べて破損変形しやすくなり、このことから、堅牢な長尺の中空押出形材を得られない問題点があった。
【0006】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、長尺に形成しても堅牢な中空押出形材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の形材構成部材を係合して構成する中空押出形材であって、連接する一方の形材構成部材と他方の形材構成部材は、それぞれの形材長手側の端部に延長形材構成部材を接合して長尺に形成してあり、一方の形材構成部材および延長形材構成部材の係合部と、他方の形材構成部材および延長形材構成部材の被係合部とが係合した当接部の対峙する箇所には、孔形成溝をそれぞれ有すると共に、両孔形成溝が対面して挿入孔を形成し、挿入孔には、この挿入孔の孔長とほぼ同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材が挿入してあり、挿入孔の両方の孔開口には、挿入孔の孔奥側に向けて棒材の長手側両端を押圧する押込具がそれぞれ嵌入し、押込具からの押圧力により棒材が挿入孔内で変形すると共に、棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に圧接し、係合する一方の形材構成部材および延長形材構成部材と、他方の形材構成部材および延長形材構成部材とが離れる方向に押圧力を付与されるように形成してあり、一方の形材構成部材と他方の形材構成部材のそれぞれの延長形材構成部材との接合部は、形材長手方向の相違する位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係合する一方の形材構成部材と他方の形材構成部材の接合位置を形材長手側の相違する位置としたことにより、荷重時の曲げモーメントによる中空押出形材の撓みで、接合部の位置での曲げ応力とせん断力が大きくなっても、押込具の押圧力による棒材変形に伴う接合力に加え、その接合部と対峙する側の形材構成部材の一体成形された部位が補う構造となる。したがって、長尺で且つ複数の形材構成部材からなっていても堅牢な中空押出形材の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)(b)(c)】(a)は、本実施による中空押出形材の斜視図であり、(b)は、平面図であり、(c)は、係合部と被係合部を拡大して示す縦断面図である。
【図2】本実施による中空押出形材の作用状態を示す説明上簡略化した平面図である。
【図3(a)(b)】(a)は、従来のこの種の中空押出形材を示す斜視図であり、(b)は、作用状態を示す説明上簡略化した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の中空押出形材の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本実施による中空押出形材の斜視図であり、(b)は、平面図であり、(c)は、一部を拡大した正面図である。図2は、本実施による中空押出形材の作用状態を説明上簡略化した平面図である。
【0011】
本実施による中空押出形材は、図1(a)のように、縦断面略コ字型をなす上下一対の形材構成部材1,2からなっており、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2は、それぞれの形材長手方向の一端部に略同一形状の延長形材構成部材1a,2aを接合して長尺に形成してあり、さらに、コ字の先端部同士がそれぞれ係合して断面ほぼ矩形状に組み立てられる。
【0012】
本実施による一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2のそれぞれの係合箇所は、具体的に、図1(c)のように、それぞれを係合したときに中空押出形材の中空部S側に向けて突出したほぼ鉤状をなす係合部3a,3bと被係合部4a,4bを有している。まず、係合部3a,3bの形状は、被係合部4bと当接する側の当接面Pにおける内側の端縁部からほぼ水平に突出する水平片5aと、この水平片5aの下端部から当接面Pと平行して中空部S側に向けてほぼ垂直に突出する垂直片6aとを有している。さらに、当接面Pの側の端縁部は、中空部S側に向けてほぼ垂直に突出する垂直突出片7aを有している。そして、当接面Pおよび水平片5a、垂直片6aによってほぼコ字型に囲まれた受入溝8aには、被係合部4aの垂直片6bが当接面Pと平行する方向に差し込まれて凹凸に嵌り込むとともに、当接面Pの中空部Sと相反する側の端縁部の垂直突出片7bは、被係合部4aの係合部3aとの当接面Qおよび、水平片5b、垂直片6bによって略コ字型に囲まれた受入溝8bに凹凸に嵌り込み、これにより、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2が係合する。さらに、一方および他方の形材構成部材1,2の係合した各係合部3a,3bおよび各被係合部4a,4bの当接面P,Qにおける互いが対峙する箇所には、半円状をなす一対の孔形成溝10a,10bを有しており、各孔形成溝10a,10bが合わさり、孔開口が略円形状をなす挿入孔を形成している。この挿入孔には、一方あるいは他方の形材構成部材1,2の長手方向の長さと略同一の長さの棒材11を挿入してあり、さらに、挿入孔10のそれぞれの孔開口には、押込具12をそれぞれ螺合してある。また、棒材11は、かならずしも形材長手方向に沿って一続きのものでなくてもよく、接合部1c,2cと一致しない箇所に分断位置が位置するよう2本挿入してもよい。
尚、本実施による一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2は、同一形状をなすものであり、複数種在庫する必要がなく、現場搬送の効率化や部材コストの抑制に寄与できる。
【0013】
また、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2の接合部1c,2cは、図1(b)のように、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2を係合して中空押出形材を形成したときに、形材長手方向の相違する位置に設けられている。さらに具体的には、本実施による中空押出形材は、具体的に6mと2mの形材構成部材1,2を接合して8mの長さとしたものが使用されており、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2を係合したときには、形材長手方向に2m間隔で接合部1c,2cが設けられることになるが、接合部1c,2cは形材径方向の半周にのみ設けられる。このように形成することで、等分布荷重を想定したときの曲げモーメントで中空押出形材の撓みにより、図2(a)のように、各接合部1c,2cの位置(図中A,B)で曲げ応力とせん断力が大きくなっても、一方あるいは他方の形材構成形材1,2の接合部1c,2cを係合して対峙位置にある形材構成部材1,2の一体成形された部位がそれぞれ補うことに加え、押込具12による棒材11変形で接合部1c,2cが拡がることなく中空押出形材の長尺形成が可能となる。
尚、上記の各接合部1c,2cの位置関係は、あくまでも実施の一例を示すものであり、接合部1c,2cが対峙する位置関係とならなければよく、形材長手方向に僅かに相違する位置関係にあっても、充分なせん断耐力が付与される。
【0014】
上記実施形態では、形材構成部材1,2と延長形材構成部材1a,2aの接合部1c,2cを接合するものについて説明したが、さらに、接合部1c,2cにせん断屈が発生することを抑えるために、ほぼ矩形ブロック状をなす補助材を中空部Sに挿入し、つぶれ止めとして用いてもよく、形材構成部材1,2と延長形材構成部材1a,2aの接合手段を上記に限定するものではない。また、一方の形材構成部材1と他方の形材構成部材2、延長形材構成部材1a,2aの係合部3a,3bと被係合部4a,4bについても特に限定するものではなく、例えば、上記実施形態のような棒材11の挿入は行わずに鉤状のもの同士で係合するものや、あるいは、回転嵌合するものなどでもよい。また、本発明の中空押出形材は、例えば、カーポート用の桁材や建築用壁材、柵、パーテーションなどの様々な適用可能性を有している。
【符号の説明】
【0015】
1 一方の形材構成部材
2 他方の形材構成部材
1a,2a 延長形材構成部材
1c,2c 接合部
3a,3b 係合部
4a,4b 被係合部
10 挿入孔
11 棒材
12 押込具
P,Q 当接面(当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の形材構成部材を係合して構成する中空押出形材であって、
連接する一方の形材構成部材と他方の形材構成部材は、それぞれの形材長手側の端部に延長形材構成部材を接合して長尺に形成してあり、
一方の形材構成部材および延長形材構成部材の係合部と、他方の形材構成部材および延長形材構成部材の被係合部とが係合した当接部の対峙する箇所には、孔形成溝をそれぞれ有すると共に、両孔形成溝が対面して挿入孔を形成し、挿入孔には、この挿入孔の孔長とほぼ同一の長さを有し且つ弾性又は軟性を有する棒材が挿入してあり、挿入孔の両方の孔開口には、挿入孔の孔奥側に向けて棒材の長手側両端を押圧する押込具がそれぞれ嵌入し、押込具からの押圧力により棒材が挿入孔内で変形すると共に、棒材の一部が挿入孔の孔内周壁に圧接し、係合する一方の形材構成部材および延長形材構成部材と、他方の形材構成部材および延長形材構成部材とが離れる方向に押圧力を付与されるように形成してあり、
一方の形材構成部材と他方の形材構成部材のそれぞれの延長形材構成部材との接合部は、形材長手方向の相違する位置にあることを特徴とする中空押出形材。


【図1(a)(b)(c)】
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【図2】
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【図3(a)(b)】
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【公開番号】特開2010−159606(P2010−159606A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3863(P2009−3863)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【特許番号】特許第4503092号(P4503092)
【特許公報発行日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】