説明

中空繊維強化構造部材を製造するための方法

【課題】一方で製造コストを低減させ、他方で品質を改良した中空繊維構造部材を提供する。
【解決手段】特には航空機用の中空繊維強化構造部材を製造するための方法であって、環状の第一ブレイディング層2を設けるステップと、たて繊維及びよこ繊維を有する少なくとも1つの織物層を備える平らな補強体を第一ブレイディング層上に位置付けるステップと、第一ブレイディング層2及び補強体の周りに第二ブレイディング層3を設けるステップと、第一ブレイディング層2、補強体、及び第二ブレイディング層3の組合せを型内に位置付けるステップと、組合せに樹脂を含浸させるステップと、樹脂が含浸された組合せを型から取り出すステップと、を備える方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロペラ用着陸ギアブレード(の一部)として及びヘリコプター用ブレードのような、特に航空機と共に使用するための中空繊維強化構造部材に関する。大抵は一定方向の荷重を搬送するために使用されるストラット及びブレースのような航空機用構造部材は、慣用的に鋼、アルミニウム、あるいはチタニウムのような金属で作られている。かなりの重量低減が遷移強化プラスチック材料を使用することによってなし得る。こうした材料の例は炭素繊維によって補強されたエポキシ樹脂マトリックスである。これらの材料は航空宇宙産業で使用される翼又は水平安定板のような薄壁の細い構造に慣用的に使用される。
【背景技術】
【0002】
着陸ギアにおけるこれらの材料の適用の問題点の1つは着陸ギアにおける高集中荷重であり、これらの幅に対して非常に厚い壁圧を要する。これらの厚い壁厚は、非常に多数の相対的に薄い層を互いに対して積み重ねることによって積層体複合物で製造し得るのみであり、このプロセスを非常に骨が折れ且つ従ってコスト高にしている。過去には、慣用的なプリプレグ構成物でこれらのタイプのコンポーネントを製造するための努力がされてきたが、これらは高コスト及び労働により決して上手くいかなかった。
【0003】
コストを減じるこれらの方法の1つはRTM(樹脂トランスファーモールド成型)のような液体モールド成型技術を使用することである。これらの方法によって、繊維強化は第一に完全にプリフォーム内に組み込まれた後にこのプリフォームにはネガティブ・モールド内で液体樹脂が注入される。これはコストに対する改良を意味し得るが、プリフォームを作ることに含まれる労働力は依然として極めて高い。
【0004】
2次元及び3次元ブレイディング、3次元非固締織物及び縫い合わされた織物のような、プリフォームの製造を機械化するための幾つかの方法は過去に開発されてきた。これらの方法の全てはこれらが製造し得る幾何学的形状及びレイ・アップにおける特定の限定を被る。ブレイディングによって、例えば、限定された数のみの長さ方向の繊維を実施し得る一方で、ウィービング及び織物によって、平ら又は半平な形状のみを製造し得る。これらの方法の全ては航空機の着陸ギア・コンポーネントに典型的なビームタイプのコンポーネントにとっては適していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一方で中空繊維構造部材の製造コストを低減させ、他方で中空繊維強化構造部材の品質を改良することを目的としている。従って、本発明によるこの方法は、環状の第一ブレイディング層を設けるステップと、たて繊維及びよこ繊維を有する少なくとも1つの織物層を備える平らな補強体を、前記第一ブレイディング層の表面の一部に位置付けるステップと、前記第一ブレイディング層及び前記補強体の周りに第二ブレイディング層を設けるステップと、前記第一ブレイディング層、前記補強体、及び前記第二ブレイディング層の組合せを型内に位置付けるステップと、前記組合せに樹脂を含浸させるステップと、樹脂が含浸された組合せを前記型から取り出すステップと、を備える方法を提供する。
【0006】
本発明によって製造された構造部材は、たて繊維及びよこ繊維が問題となっている構造部材の強度及び剛性に貢献するため、より多くの方向から負荷を掛けられることができるという重要な利点を有しており、例えば中空構造部材の使用中における横力及び制動力に対して抵抗することができる。本発明のような補強体を使用しなければ、本発明に比べてより多くのブレイディング層が使用されるべきであり、これは壁の厚さを増加せしめる。
【0007】
補強効果は、補強体が複数の織物層からなる積層体で構成されている更なる好ましい実施形態のときに特に達成される。
【0008】
ブレイディング層と補強体との間の良好な結合は、型内において、平らな補強体及び少なくとも1つのブレイディング層に樹脂、好ましくは熱硬化性樹脂を高圧高温で注入することによって実現することができる。
【0009】
好ましくは、ブレイディング繊維、たて繊維及び/又はよこ繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(ケブラー(登録商標))あるいはポリアミド繊維であり、これらの繊維は、問題となっている構造部材用に良好な強度特性を有している。
【0010】
また、本発明は、最終的には、本発明に係る上記方法に従って製造された中空繊維強化構造部材に関するものでもある。
【0011】
一般に、本発明の目的は、コストを低減させる一方で、従来技術に比べて複合体ブレースの品質を改善することである。これは、慣用(マニュアル)ではあるがプリフォームに繊維強化部を配置するための最適な方法と、プリフォームにクロスプライ層を配置するための完全に自動化された方法と、を組み合わせることによって達成し得る。より詳細には、主な多数の層は、予め形成された繊維積層体から機械的に切り出され、その結果、複数の層からなる網サイズの積層体が、プリフォーム用に正確な配向及び正しい寸法となる。これらの積層体は、マンドレル上に正しい位置及び配向で配置される。プレカットされた積層体を配置する前後で、織物層はマンドレルアセンブリの上で編まれる。これは、マンドレル及びプリフォームを機械の回転中心線に沿った長手方向に移動させる機構を有するブレイディングマシンから成るいわゆるオーバーブレイディングマシン上に予め形成させることができる。編みながらマンドレルを移動させることによって、織物層がマンドレル上に作り出される。この層の上には、プレカットされた積層体を再び特定の位置に配置することができ、そして、この工程は別の層を編むことで再び繰り返される。
【0012】
このオーバーブレーディング工程において変化するもののうちの1つは、ブレイディングボビンの回転速度とマンドレルの長手方向速度との関係、並びに既に存在する層を具備するマンドレルの円周であり、これらの両方は、繊維の角度及び各々の横断面の層の厚さを決定する。これらのパラメータを変えることによって、層の厚さ又はブレイディング繊維の角度の何れかを変更させることができる。
【0013】
次に、本発明を、本発明の好ましい実施形態の説明及び添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る方法を用いた構造部材の製造中における構造部材の横断面図である。
【図2】構造部材の製造の初期段階中における構造部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、角が丸まった矩形の横断面を有するマンドレル1を示している。マンドレル1は、本発明に係る方法の第一の好ましい実施形態に従って製造された中空繊維強化構造部材の最終的な内側部分の位置に配置される。環状の第一のブレイディング層2は、マンドレル1の周りで編まれる。明瞭化のために、図1には、マンドレル1と第一ブレイディング層2との間に或る距離が存在するが、この距離は実際には存在しない。
【0016】
第一ブレイディング層(まだ述べられていない第二ブレイディング層3及び第三ブレイディング層4も同様)のブレイディング第二第三は、中心線8を中心にして矢印7の方向にマンドレル1を回転させながら、それと同時に、の点線8に従って供給点5からマンドレル1に向かってブレイディング繊維を供給することによって行われる。同時に、マンドレル1が、図面の平面に対して垂直な方向に往復移動され、この移動によって繊維が例えば90°又は120°の頂角を有する側面視V字形状に形成され、前記頂角は一方でマンドレル1の回転速度に、他方でマンドレル1が図面の平面に対して垂直な方向に往復移動される速度によって決まる。別の方法としては、供給点5がマンドレル1の周りを矢印9の方向に回転し、及び/又は供給点5が(マンドレル1の代わりに、又は場合によってはマンドレル1と同時に)図面の平面に対して垂直な方向に往復移動される。この点において、繊維8とマンドレル1との相対的な動作は関連性がある。所望により、ブレイディングしながら、巻回されたばかりの繊維8の一部分を圧力ロールで押し付けることもできる。
【0017】
一旦、第一ブレイディング層2が所望の厚さに到達すると、ブレイディングが、すなわち、供給点5とマンドレル1との相対的な動作、及び供給点5を介した繊維8の供給が中断され、その後、平らな補強体10が、手作業又は例えばピック・アンド・プレース・ロボット等の機械のどちらかでこれらの補強体を第一ブレイディング層2の外側面上の問題となっている箇所に対して位置付けると共に、例えば結合補助具、機械式ピン又は他の固定手段によってその場所に固定することによって、マンドレル1のうちの幅が短い方の両側面における第一ブレイディング層2の外側面上に設けられる第一第一。
【0018】
各補強体は、たて繊維及びよこ繊維を有する多数の織物層によって構成されており、これらの織物層は互いに積層されている。初期段階の間は、織物層が、例えば高圧高温で熱可塑性結合剤を使用することによって相互に連結されている。
【0019】
次に、続けて第二ブレイディング層3が形成されるようにブレイディング工程が続けられ、この第二ブレイディング層3によって補強体10が第一ブレイディング層2に押し付けられる。図2はこの状況に関するものである。次に、図1の補強体11のような更なる補強体と、図1の第三ブレイディング層4のような更なるブレイディング層と、を同様の方法で形成することも可能であり、また、これらは要求される強度及び剛性によって決まる。
【0020】
所望量のブレイディング層及び補強体が形成され次第、次のステップでは、マンドレル1を含む全体が、該全体を完全に包囲する硬い型内に配置され、その後、ブレイディング層2、3、4及び補強体10、11に、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂等の樹脂が高温高圧で注入される。樹脂の硬化後に、外側の型が開けられると共にマンドレル1が取り外し、その結果、例えば機械加工、穿孔又は切断等によって機械的に処理され得る中空繊維強化構造部材がもたらされる。こうした製品は、例えば、着陸ギアの部品として、プロペラ用ブレードとして、あるいはヘリコプター用ブレードとして適用し得る。
【0021】
上述した実施形態における補強体10、11は平らな側面に設けられるが、本発明の範囲内で、補強体10、11は、例えば、マンドレル1の丸まった角のような丸みを帯びた位置に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 マンドレル
2 第一ブレイディング層
3 第二ブレイディング層
4 第三ブレイディング層
5 供給点
8 繊維
10 補強体
11 補強体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空繊維強化構造部材を製造するための方法であって、
マンドレル(1)を供給するステップと、
前記マンドレルの周りにブレイディング繊維(8)を巻き付けて形成された第一ブレイディング層(2)を設けるステップと、
たて繊維及びよこ繊維を有する少なくとも1つの織物層を備える平らな補強体(10)を、前記マンドレル上の位置において前記第一ブレイディング層の表面の一部だけに対して位置付けるステップと、
前記第一ブレイディング層及び前記補強体の周りにブレイディング繊維(8)を巻き付けて形成された第二ブレイディング層(3)を設けるステップと、
前記第一ブレイディング層、前記補強体及び前記第二ブレイディング層の組合せ、並びに前記マンドレルからなる全体を、該全体を完全に囲う型内に位置付けるステップと、
高圧高温で前記型内にある前記第一ブレイディング層、前記補強体及び前記第二ブレイディング層に樹脂を注入することによって、前記組合せに前記樹脂を含浸させるステップと、
前記樹脂が含浸された前記組合せを前記型から取り出すステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記補強体は、複数の織物層からなる積層体で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレイディング繊維、前記たて繊維及び前記よこ繊維のうちの少なくとも1つは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、あるいはポリアミド繊維であることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法によって製造された中空繊維強化構造部材であって、
マンドレルの周りにブレイディング繊維を巻き付けて形成された第一ブレイディング層と、
たて繊維及びよこ繊維を有する少なくとも1つの織物層を備え、前記第一ブレイディング層の表面の一部だけに接触させて位置付けられた平らな補強体と、
前記第一ブレイディング層及び前記補強体の周りにブレイディング繊維を巻き付けて形成された第二ブレイディング層と、
を備えており、
前記第一ブレイディング層、前記補強体及び前記第二ブレイディング層の組合せに樹脂が含浸されている、中空繊維強化構造部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−14875(P2013−14875A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181005(P2012−181005)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2008−509956(P2008−509956)の分割
【原出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(505184746)
【Fターム(参考)】