説明

中通し竿用のトップガイド

【課題】 トップガイド内の釣り糸挿通空間に着目して、より有効に釣糸が保有する水分を絞り取ることができる中通し竿用のトップガイドを提供する。
【解決手段】 釣り糸挿通空間bの先端側に先端ガイドリング4aを装着するとともに穂先竿1とに接続部位に臨む基端側に基端ガイドリング4bを設ける。釣り糸挿通空間bを形成したガイド本体4Aの壁部に貫通孔4cを設ける。釣り糸挿通空間bに釣り糸cに接触作用して、釣り糸cが保有する水分を除去する鋼球6を収納してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
穂先竿の竿先端に取り付けられ、釣り糸を繰出しまたは巻き上げ導入する中通し竿用のトップガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
トップガイドには、釣り糸挿通空間を備えたガイド本体の先端開口部に、釣り糸を導入する先端ガイドリングとともに、ガイド本体の穂先竿側に臨む基端開口部に基端ガイドリングを装着してあった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−52446号公報(段落番号〔0013〕〔0014〕、及び、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、トップガイドに引き上げられた釣り糸は、先端ガイドリングに摺接してトップガイド内に導入されるとともに、トップガイド内に導入された釣り糸は、基端ガイドリングに摺接した状態で穂先竿の釣り糸挿通経路に導入される。
このような構成において、先端ガイドリング、及び、基端ガイドリングに摺接した状態で釣り糸に付着した水分はこすり取られてトップガイドの釣り糸挿通空間に供給され、貫通孔より排出されるものである。
しかし、トップガイドの釣り糸挿通空間内において釣り糸に接触するものは備えられていないので、釣り糸が保有する水分は、前端ガイドリング、及び、基端ガイドリングとの接触のみに基づいてこすり取られるだけであるために、釣り糸が水分を付着して穂先竿内に誘導される虞があった。
【0005】
つまり、先端ガイドリング、及び、基端ガイドリングともに、トップガイドの先端開口部と基端開口部とに設置位置が限定されるので、設置位置でしか釣り糸との摺接ができず、かつ、釣り糸挿通経路の周縁部分を囲むドーナツ状のものであるので、リング内径が大きな先端ガイドリングと接触しない状態で釣り糸がトップガイド内に導入されることも考慮する必要があり、釣り糸が付着する水分を除去する点に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、トップガイド内の釣り糸挿通空間に着目して、より有効に釣糸に付着する水分を除去することができる中通し竿用のトップガイドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、穂先竿に取り付けられたガイド本体に、前記穂先竿の竿先端開口に臨む基端側の開口と前記基端側の開口とは釣り糸挿通空間を挟んで反対側に位置する先端側の開口とを設け、前記釣り糸挿通空間内に釣り糸に接触可能な水切体を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】
〔作用〕
つまり、先端側の開口において水分の除去が十分に行われなくても、釣り糸挿通空間内において、水切体が釣り糸に接触することによって、釣り糸に付着した水分を除去することができるので、穂先竿内への水分の持ち込みが少なくなる。
【0009】
〔効果〕
ガイド本体の釣り糸挿通空間においても、釣り糸に水切り作用を加えることができ、釣り糸から除去された水分を貯留排出するだけの機能を担っていた部位においても、釣り糸に対する水切り作用を加えることができ、空き空間における有効利用が可能になった。
水切体の設置位置がガイド本体の先端開口部、及び、基端開口部には限定されず、ガイド本体に形成された釣り糸挿通空間に設定できるので、水切体としてリング体に限定されず、形態選択の幅を広くできる。
【0010】
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記水切体が釣り糸と接触して回転する転がり体である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
つまり、釣り糸に作用するものであっても固定のものではなく、転がるものであるので、釣り糸に対して過度の摺接抵抗を与えるものではなく、釣り糸の巻取り、釣り糸の繰り出し抵抗を抑えることができる。
【0012】
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記釣り糸挿通空間を備えたガイド本体の先端開口部に、釣り糸を摺接案内する先端ガイドリングを設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
水切体が作用する前段階で、釣り糸挿通空間に巻き上げられる釣り糸に絞り作用を加えることができるので、釣り糸挿通空間で水切体の接触作用を受けて排出される水分量を軽減でき、トップガイド内に滞留する水分による塩分残量とを少なくできる。
【0014】
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記釣り糸挿通空間を囲む壁部に、前記釣り糸挿通空間と外部空間とを連通させる貫通孔を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
貫通孔を形成することによって、釣り糸挿通空間内に導入された水分等を迅速に貫通孔を通して排出できるので、水分が穂先竿内に持ち込まれることはなく、水分に含まれる塩分等が結晶化して、釣り糸の移動抵抗を増大させることを、未然に回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
中通し竿Aについて説明する。図1に示すように、中通し竿Aは、トップガイド4を備えた穂先竿1と、中竿2、リールシート5を備えた元竿3とで、構成し、元竿3の竿先部分にリールRから繰り出されてくる釣り糸cを元竿3から穂先竿1の内部に形成した釣り糸挿通経路a内に導入する釣り糸導入孔3Aを備えて構成してある。
【0017】
トップガイド4の構成について説明する。図2に示すように、トップガイド4は、先端側に向けて大径化するラッパ状を呈するガイド本体4Aを設けるとともに、ガイド本体4Aの先端開口部に先端ガイドリング4aを装着し、ガイド本体4Aの穂先竿側に臨む基端開口部に基端ガイドリング4bを装着し、ガイド本体4Aを構成する壁部に、前記壁部に囲まれた釣り糸挿通空間bと外部空間とを連通させる孔径D3の貫通孔4cを形成して、構成してある。
【0018】
図2に示すように、先端ガイドリング4a及び基端ガイドリング4bは、炭化水素等のセラミックを材料として円滑な表面加工を施したものであり、先端ガイドリング4aの内径D1は後端ガイドリング4bの内径D2より大径に構成してある。このように、先端ガイドリング4aの内径D1を後端ガイドリング4bの内径D2より大径に構成してあるので、先端ガイドリング4aに摺接する釣り糸cは、急激に屈曲することはなく、緩やかに進行方向を変化させて、後端ガイドリング4bに摺接しながら、穂先竿1の釣り糸挿通経路a内に導入される。
したがって、釣り糸cの移動に対する摺接抵抗を低減できる構成となっている。
【0019】
ガイド本体4Aは、ステンレス、アルミ、チタン等の金属、或いは、軽量化を旨としてナイロン等のエンジニアリング樹脂を利用することが可能であり、これらの材料で成形したものにクロムメッキ等を施して仕上処理を施している。
【0020】
図2に示すように、ガイド本体4Aの穂先竿側に臨む基端部には装着用アダプター4Bが螺着されている。装着用アダプター4B後端部には嵌合開口部4dが形成されており、この嵌合開口部4d内に穂先竿1の竿先端を装入することによって、穂先竿1を取り付け固定している。
装着用アダプター4BはPBT、PETの熱可塑性樹脂を材料としたものである。
【0021】
図2に示すように、トップガイド4のガイド本体4Aの釣り糸挿通空間b内には、水切体(転がり体)としての鋼球6が収納されている。鋼球6は、釣り糸挿通空間b内に収納されているだけで、ガイド本体4Aの壁部に支持された状態でその壁部の内周面上を自由に転動することができるようになっている。
【0022】
図2に示すように、鋼球6は、ステンレス又は鋼鉄、合金等の材料で構成され、表面にクロムメッキ等が施されて、表面の円滑性と耐久性とが付与されている。鋼球6の直径Dは、先端ガイドリング4aの内径D1、後端ガイドリング4bの内径D2、貫通孔4cの孔径D3より大径に設定してあり、釣り糸挿通空間b内に保持できるようになっている。
ただし、鋼球6を釣り糸挿通空間b内に収納するには、先端ガイドリング4aを装着する前に、鋼球6を釣り糸挿通空間bに装入し、その後、先端ガイドリング4aを装着する。
【0023】
上記したように、鋼球6が釣り糸挿通空間b内に保持されているので、釣り糸挿通空間bを通過する釣り糸cに対して、図2に示すように、釣り糸cが鋼球6によって直線経路から外れて迂回する状態になり、これによって、鋼球6による水切り作用を受ける。したがって、釣り糸cは付着する水分が除去されて、穂先竿1等での釣り糸挿通経路aでの釣り糸の付着現象等を軽減できる。
釣り糸cから除去された水分は貫通孔4cより排出される。
【0024】
次ぎに、トップガイド4を接続した穂先竿1から中竿2、元竿3までの釣り糸挿通経路aにおける構成について説明する。穂先竿1等の内部空間には、図4に示すように、リング体7が所定間隔をもって設置されている。リング体7は、セラミック製等の硬質リングであり、一部を穂先竿1等の肉厚内に埋め込まれた状態で設けられており、リング体7の内側リング周面7aが釣り糸挿通経路a内に突出している。
【0025】
以上のような構成によって、リング体7の内側リング周面7aで穂先竿1等の内周面1Aから釣り糸cを持上げ保持でき、釣り糸cが連続して穂先竿1等の内周面1Aに接触することを阻止できる。
【0026】
このように、リング体7を設けて釣り糸cを穂先竿1等の内周面1Aから持上げ保持することとしたのは、次ぎのような理由による為である。つまり、釣り糸cが穂先竿1等の内周面1Aと接触すると、それによって移動抵抗が作用する。移動抵抗が大きくなると、釣り糸cの巻上げ時の巻き上げ負荷が大きくなり、釣り糸cを繰り出す場合には、十分にかつ迅速に仕掛けを所望の棚位置まで降ろせない、といった不都合が考えられる。
特に、穂先竿1等の内周面1Aに水分が付着していると、その水分を媒介として釣り糸cが内周面1Aに付着しやすい。そして、その場合には、水分のない場合に比べて釣り糸cに作用する移動抵抗が大きくなり易い傾向にある。
【0027】
以上のような知見に基づいて、上記したようなリング体7を設けたものであり、釣り糸cが連続して穂先竿1等の内周面1Aに接触することを阻止でき、かつ、水分は隣接するリング体7,7の間の空間に保持されるので、釣り糸cが直接水分に接触する機会が少なくなるので、釣り糸cに対する移動抵抗を抑制することができる。
【0028】
リング体7としては、図5に示すように、内側リング周面7a部分に硬質リング7bを設け、硬質リング7bを支持する本体部分7cは、アルミ等の軽量金属、又は、硬質樹脂等で構成してもよい。
【0029】
〔第2実施形態〕
水切体6の構成としては、次ぎのようなものでよい。図3(イ)(ロ)に示すように、水切体6の形状としては、球状、又は、紡錘型の形状に構成し、トップガイド4の左右側壁4C、4Cに支持軸6aで軸支する構成を採ることができる。
このような構成によって、釣り糸cが転がり体6の周面に接触することによって、自己が付着する水分が除去されることとなる。
【0030】
〔別実施形態〕
(1) トップガイド4の釣り糸挿通空間bに設ける水切体6としては、図3において、支持軸6a回りで回転しない固定の鋼球等であってもよい。また、穂先竿1等の釣り糸挿通経路aに設けたリング体を、釣り糸挿通空間bでも使用するように、トップガイド4の内周面より立ち上げて水切体6としてもよい。また、水切体6としては、立体的なものではなく、例えば、植毛等をトップガイド4の内周面より立ち上げて水切体6としてもよい。
(2) トップガイド4に先端ガイドリング4a及び基端ガイドリング4bを設けてあるが、基端ガイドリング4bについては、設けてなくてもよい。
(3) トップガイド4において、貫通孔4cとしては、円周方向2箇所に設ける形態について図示してあるが、ガイド本体4Aの強度との兼ね合いで、設置個数を設定すればよく、貫通孔4cを設けない選択も可能である。
(4)穂先竿1、中竿2、元竿3の釣り糸挿通経路aに設けるものとしては、図6に示すように、穂先竿1等の内周面1Aを凹凸面に形成し、リング体に相当する凸面部分を竿体と一体形成してもよい。また、図示してはいないが、凹凸面を形成することなく、内周面1Aに撥水性のある滑り剤層を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】中通し竿を示す側面図
【図2】トップガイドを示す縦断側面図
【図3】(イ)トップガイドの釣り糸挿通空間内に設ける水切体の別実施構造を示す縦断正面図、(ロ)トップガイドの釣り糸挿通空間内に設ける水切体の別実施構造を示す縦断側面図
【図4】穂先竿等の釣り糸挿通経路に、釣り糸を支持するリング体を設けてある状態を示す縦断側面図
【図5】図4のリング体の内周面に硬質リングを設けてある状態を示す縦断側面図
【図6】穂先竿等の内周面を凹凸面として形成する別実施構造を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0032】
1 穂先竿
4A ガイド本体
4a 先端ガイドリング
4c 貫通孔
6 鋼球(転がり体)(水切体)
b 釣り糸挿通空間
c 釣り糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先竿に取り付けられたガイド本体に、前記穂先竿の竿先端開口に臨む基端側の開口と前記基端側の開口とは釣り糸挿通空間を挟んで反対側に位置する先端側の開口とを設け、前記釣り糸挿通空間内に釣り糸に接触可能な水切体を設けてある中通し竿用のトップガイド
【請求項2】
前記水切体が釣り糸と接触して回転する転がり体である請求項1記載の中通し竿用のトップガイド。
【請求項3】
前記釣り糸挿通空間を備えたガイド本体の先端開口部に、釣り糸を摺接案内する先端ガイドリングを設けてある請求項1又は2記載の中通し竿用のトップガイド。
【請求項4】
前記釣り糸挿通空間を囲む壁部に、前記釣り糸挿通空間と外部空間とを連通させる貫通孔を形成してある請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の中通し竿用のトップガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−263820(P2008−263820A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109383(P2007−109383)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】