説明

中通し竿

【課題】 この発明は、釣り糸を付けた状態で元竿に収納した中竿を引き出すときに糸噛み現象を生じないようにすることを目的とする。
【解決手段】 リールからの釣り糸が竿体内部を挿通する中通し竿であって、元竿内部における竿尻付近にフック型面ファスナー等の雄型突起を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リールから繰り出した釣り糸を元竿の釣り糸導入口から竿体内部に挿通した中通し竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、元竿10に釣り糸導入ガイド13を備え、元竿10に開設した釣り糸導入口14より通した釣り糸を穂先竿である中竿3の先端から導出するようにした中通し竿が知られている。この中通し竿の内面は元竿から穂先竿の先端まで滑らかな截頭円錐形である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−125504号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された中通し竿では、釣り糸をセットしたまま中竿を収納すると、中竿の外周に釣り糸が巻きついたりして纏わり付いたりすることがある。このような状態で竿を伸ばすと、元竿の内面と中竿の外面との間に糸が噛み込む糸噛み現象を起こすことがあり、このような事態が生じると中竿の所定位置への引き出しや糸の引き出しができなくなる不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、釣り糸をセットしたまま中竿を収納したとしても再度中竿を引き出すときに糸噛み現象の生じない中通し竿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
請求項1に係る発明(第1発明)は、リールからの釣り糸が竿体内部を挿通する中通し竿であって、元竿内部における竿尻付近に多数の雄型突起を設けた点にある。
【0007】
〔作用〕
釣り糸を竿体内部に挿通して中竿を伸ばした状態から釣り糸をセットしたまま中竿を収納する。この状態では、リールから引き出された釣り糸は元竿の釣り糸導入口より元竿の竿尻方向に向かい中竿の竿尻の開口から穂先竿先端の導出口から外部に導出された状態になっている。この状態で釣り糸が中竿の外周に巻きついていると、従来構造のものでは、中竿を引き出すときに釣り糸が中竿外周に纏わり付いた状態で引き出されるように移動し、中竿が引き出されるに従って元竿の内径が徐々に小さくなっていることから遂には、中竿外周に纏わり付いていた釣り糸が元竿の内周面との間で噛み込む糸噛み現象を起こす不都合があるが、本発明においては、元竿内部における竿尻付近に多数の雄型突起を設けてあるから、中竿を元竿内に収納してある状態で、中竿の竿尻の開口から出ている釣り糸は元竿の竿尻付近の内面に設けてある雄型突起に係止された状態となっている。この状態から中竿を引き出すと、元竿内周面と中竿外周面との間で弛んだ状態で中竿の外周に纏わり付いている釣り糸に対してテンションが掛かり、中竿の引き出しに伴って中竿に対する纏わり付きが解消される。従って、中竿を引き出す際に釣り糸が元竿との間で噛み込むことがなく、中竿を良好に引き出しセッティングできる。
【0008】
〔発明の効果〕
従って、本第1発明によれば、釣り糸をセットしたまま中竿を収納して、再度中竿を引き出して釣りをするときに、釣り糸が竿の内部で噛み込んだり、もつれたりすることなく中竿を引き出すことができるから、そのまま釣り作業に移行することができるので、快適な釣りを楽しむことができる。
【0009】
〔第2発明の構成〕
請求項2に係る発明(第2発明)は、請求項1に係る発明において、前記雄型突起を元竿の竿尻付近の内周面又は元竿の竿尻端部の開口に装着する尻栓の内端面に形成した点にある。
【0010】
〔作用効果〕
雄型突起を元竿の竿尻端部の開口に装着する尻栓の内端面に形成した場合は、中竿を収納したときに中竿の竿尻端部の開口から出ている釣り糸が中竿の自重によって雄型突起側に押圧されて該雄型突起に確実に係止される。
したがって、請求項1に記載の作用及び効果を確実に発揮することができる。
【0011】
雄型突起を元竿の竿尻付近の内周面に形成した場合は、中竿を収納したときにその自重で釣り糸が雄型突起側に押圧されて該雄型突起に係止される。一端係止された釣り糸は、雄型突起が釣り糸の引張方向に設けられる前記尻栓に設けた場合よりも離脱し難いから、中竿を引き出すときに、中竿の外周に纏わり付いている釣り糸に対して強くテンションが掛かり、中竿の引き出しに伴って中竿に対する纏わり付きが確実に解消される。従って、中竿を引き出す際に釣り糸が元竿との間で噛み込むことがなく、中竿を良好に引き出しセッティングできる。
したがって、請求項1に記載の作用及び効果を確実に発揮することができる。
【0012】
〔第3発明の構成〕
請求項3に係る発明(第3発明)は、請求項1に係る発明において、前記雄型突起を元竿の竿尻付近の内周面と元竿の竿尻端部の開口に装着する尻栓の内端面に形成した点にある。
【0013】
〔作用効果〕
第3発明においては、元竿の竿尻付近の内周面と元竿の竿尻の尻栓内端面との両方に雄型突起を形成してあるので、請求項2と3の両作用効果を奏するものであり、請求項1に記載の作用及び効果をより一層確実に発揮することができる。
【0014】
〔第4発明の構成〕
請求項4に係る発明(第4発明)は、請求項2または3に係る発明において、前記尻栓の内端面に形成してある雄型突起は尻栓の内端面に接着したフック型面ファスナーで構成した点にある。
【0015】
〔作用効果〕
フック型(雄型)の面ファスナーは、釣り糸をそれに押圧することにより、確実に釣り糸を係止することができるから、製造コストが安く、安価に提供することができながら、請求項1の作用効果を確実に期待できる。
【0016】
〔第5発明の構成〕
請求項5に係る発明(第5発明)は、請求項2または3に係る発明において、前記元竿の竿尻付近の内周面に形成してある雄型突起は元竿の竿尻付近の内周面に接着したフック型面ファスナーで構成した点にある。
【0017】
〔作用効果〕
第5発明も第4発明と同じ作用効果が期待できる。
〔第6発明の構成〕
請求項6に係る発明(第6発明)は、請求項2または3に係る発明において、前記元竿の竿尻付近の内周面に形成してある雄型突起は元竿と一体に径方向中心側に延びる針状突起とした点にある。
【0018】
〔作用効果〕
元竿を成形するときに針状突起を形成することができるので、別途面ファスナー等を貼着する必要がない。釣り糸の太さを考慮して針状突起を密に多数設ければ、釣り糸を針状突起間で挾持する状態で係止させることができ、そしてテンションは針状突起が延びる方向とは交差する方向に作用するので、針状突起に係止された釣り糸は中竿が引き出されるときに確実にテンション作用を発揮することができる。
従って、請求項1に記載の作用効果をより確実に発揮することができる。
〔第7発明の構成〕
請求項7に係る発明(第7発明)は、リールからの釣り糸が竿体内部を挿通する中通し竿であって、元竿における竿尻付近の内表面に粘着材を塗着した点にある。
【0019】
〔作用効果〕
中竿を収納したときに中竿の竿尻端部の開口から出ている釣り糸は、中竿の自重で元竿の竿尻付近の内表面に塗着した粘着材の表面に押圧されてくっ付くので、中竿を引き出す際に、中竿の外周に纏わり付いている釣り糸に対してテンションが掛かり、中竿の引き出しに伴って中竿に対する纏わり付きが解消される。
従って、中竿を引き出す際に釣り糸が元竿との間で噛み込むことがなく、中竿を良好に引き出しセッティングできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
海釣り、磯釣り等に使用される中通し竿Aについて説明する。
図1に示すように、穂先竿1、中間竿2、元上竿3(以下、これら穂先竿1、中間竿2、元上竿3を中竿1,2,3と総称する)及び元竿4を伸縮自在に挿嵌して振出し型の中通し竿Aを構成する。元竿4はリール5を取り付けたリールシート6を備えており、元竿4の外面に取り付けた糸導入ガイド7に形成したガイド孔8から送り込んだ釣り糸9を元竿4に形成した釣り糸導入口10から挿入して元竿4の内部及び中竿1,2,3の内部に形成した糸案内経路11を介して穂先竿1の先端の竿先導出口から竿外に送り出すように構成してある。
【0021】
図2に示すように、糸導入ガイド7は元竿4の竿体12の竿先側寄りの外面に取り付けられ、糸導入ガイド7に対抗した部位に形成した前記導入口10の開口縁に耐磨耗性の長円形のセラミックリング13を備えて、釣り糸9の導入口10に対する接触抵抗を緩和し、釣り糸9が円滑に繰出せるようにしてある。
【0022】
前記複数本の中竿1,2,3のうち、元上竿3は元竿4に伸縮自在に連結され、中間竿2は元上竿3に伸縮自在に連結され、穂先竿1は中間竿2に伸縮自在に連結されている。
【0023】
これらの竿は、ガラス繊維や炭素繊維を含有する樹脂製のプリプレグ素材を芯材に巻回して焼成し、竿尻側ほど大径となる截頭円錐形の筒状に成形される。
【0024】
元上竿3については、図2に示すように、元竿4の内部に位置している竿尻側端部に底栓14を設けるとともに、この底栓14には元上竿3の内部と元竿4の竿体12内部とを連通させる貫通孔15を設けてある。
【0025】
元竿4、元上竿3、中間竿2、穂先竿1のそれぞれの内部空間及び元上竿3の前記底栓14の貫通孔15が、釣り糸9の通路としての糸案内径路11になっている。
【0026】
中通し竿Aは、図1に示す如くリール5及び釣り糸9を装着して使用する。リール5から繰り出された釣り糸9が糸導入ガイド7のガイド孔8を通って元竿4の釣り糸導入口10に至り、この釣り糸導入口10から元竿4の竿先側の内部を挿通して元上竿3の前記底栓14に至り、この底栓14の貫通孔15から元上竿3、中間竿2、穂先竿1の内部を挿通して穂先竿1の先端の導出口から竿外に出るように釣り糸9を装着して使用する。
【0027】
図2に示すように、元竿4の竿尻には、尻栓16を螺合してある。図2及び図4に示すように尻栓16は大径部17とネジ部18とゴム部19と雄型面ファスナー20とから成る。大径部17とネジ部18とは樹脂又はアルミニュームで一体に形成してある。ゴム部19は中竿1,2,3を元竿4内に自重落下させたときのための緩衝部材として機能させるもので、ネジ部18の端面に接着材にて接着してある。雄型面ファスナー20は中竿1,2,3を引き出すときの元上竿3の外周に纏わり付いた釣り糸9の糸絡みを防止するためのもので、ゴム部19に接着材を介して接着してある。
【0028】
フック型(雄型)面ファスナー20としては、株式会社クラレのマジックテープ(登録商標名)を用いることができる。
【0029】
元竿4から引き出した中竿1,2,3を収納するときは、釣り糸9をセットしたまま、元上竿3を元竿4内に、中間竿2を元上竿3内に、穂先竿1を中間竿2内にそれぞれ収納する。釣り糸9を取付けたまま中竿1,2,3を元竿4内に収納すると、リール5から引き出されている釣り糸9は元竿4の釣り糸導入口10より元竿4の竿尻方向に向かい元竿4内に収納された元上竿3の竿尻の底栓14の貫通孔15を通って穂先竿1の先端の導出口から外部に導出された状態になっている。
元上竿3の底栓14の貫通孔15からその外周面を伝って元竿4の釣り糸導入口10に至るまでの釣り糸9は、元竿4内で元上竿3が何らかの原因で回転したりすると釣り糸9が元上竿3の外周に巻きつくことがある。特に、釣り糸9や竿が濡れていると竿外周に釣り糸9がくっつきやすい。この状態にあるときに元上竿3を引き出すと元竿4内の釣り糸Lが元上竿3の外周に纏わり付いた状態で引き出されるように移動する。
【0030】
図3に示すように、元竿4の竿尻の尻栓16の内端面に多数の雄型突起としてのフック状の雄型突起を多数植設した面ファスナー20を設けてあるので、元上竿3の竿尻から外方に導出された釣り糸9は元上竿3の自重等で雄型面ファスナーのフックに引っ掛っているため、元上竿3が引き出されるに従って、元上竿3に纏わり付いていた釣り糸9が、引っ張られた状態となって釣り糸9にテンションが掛かり、元上竿3に纏わり付いていた釣り糸9が元上竿3から引き出されて絡みつきが解消されるので、釣り糸9が元竿4と元上竿3の間に噛み込むことなく元上竿3を引き出してセッティングすることができる。従って、釣り糸9が竿間に噛み込むことの煩わしさもなく、快適に釣りを楽しむことができる。
【0031】
〔別実施形態〕
上記の実施形態では、雄型突起としてのフック型面ファスナー20を尻栓16に設けたが、図5に示すように、フック型面ファスナー20を元竿4の竿尻付近の内周に貼着して、尻栓端面と元竿4の竿尻内周面との両方に設けてもよい。
又、尻栓16には設けずに、元竿4の竿尻付近の内周面にのみフック型面ファスナー20を貼着してもよい。
【0032】
雄型突起を元竿4の竿尻付近の内周に設ける場合は、元竿内周面から径方向中心側に突出して元竿4と一体成形された針状突起で構成してもよい。
【0033】
これらの雄型突起20は元竿4の竿尻付近だけでなく、元竿4の釣り糸導入口10付近にも設けてもよい。
【0034】
雄型突起に代えて、元竿における竿尻付近の内周表面と尻栓16の内端面、又はこれらのいずれか一方に粘着材を塗着してもよい。塗着手段としては、粘着材を元竿4における竿尻付近の内周表面及び尻栓16の内端面に直接塗着してもよい。又、両面に粘着材を塗着した両面粘着テープを貼着してもよい。
【0035】
中竿としては穂先竿1だけのものでもよいし、三本を越える数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】中通し竿の側面図
【図2】元竿の一部拡大縦断面図
【図3】(イ)は元竿内に中竿を収納した状態を示す一部拡大縦断面図、(ロ)は中竿を引き出す途中の状態を示す一部拡大縦断面図
【図4】尻栓の斜視図
【図5】元竿の竿尻付近の別の実施の態様を示す縦断面図
【符号の説明】
【0037】
4 元竿
5 リール
9 釣り糸
10 釣り糸導入口
12 竿体
16 尻栓
20 雄型突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールからの釣り糸が竿体内部を挿通する中通し竿であって、元竿内部における竿尻付近に多数の雄型突起を設けてある中通し竿。
【請求項2】
前記雄型突起を元竿の竿尻付近の内周面又は元竿の竿尻端部の開口に装着する尻栓の内端面に形成してある請求項1記載の中通し竿。
【請求項3】
前記雄型突起を元竿の竿尻付近の内周面と元竿の竿尻端部の開口に装着する尻栓の内端面に形成してある請求項1記載の中通し竿。
【請求項4】
前記尻栓の内端面に形成してある雄型突起は尻栓の内端面に接着したフック型面ファスナーで構成してある請求項2または3記載の中通し竿。
【請求項5】
前記元竿の竿尻付近の内周面に形成してある雄型突起は元竿の竿尻付近の内周面に接着したフック型面ファスナーで構成してある請求項2または3記載の中通し竿。
【請求項6】
前記元竿の竿尻付近の内周面に形成してある雄型突起は元竿と一体に径方向中心側に延びる針状突起である請求項2または3記載の中通し竿。
【請求項7】
リールからの釣り糸が竿体内部を挿通する中通し竿であって、元竿における竿尻付近の内表面に粘着材を塗着してある中通し竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−289119(P2007−289119A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123285(P2006−123285)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】