説明

主軸装置およびこれを備えた工作機械

【課題】主軸ヘッドの上下動に対して生じるバランスシリンダの圧力変化を、高速かつ高精度に安定化させることができる主軸装置およびこれを備えた工作機械を提供。
【解決手段】主軸ヘッド43の重量を支える付勢力を発生するバランスシリンダ44と、バランスシリンダを制御する圧力レギュレータ70とを備える。圧力レギュレータは、空気供給源からの空気の等温化圧力容器への流入流量を規制し、該容器内の圧力を一定に保持する。サーボ弁を操作する圧力制御手段は、圧力計によって検出された圧力をフィードバック制御する圧力制御系をメインループとし、その内側に、流量計で計測された流入流量をフィードバック制御する流入流量制御系を構成するとともに、この流入流量と圧力微分計で計測された等温化圧力容器内の圧力微分値とに基づいて、等温化圧力容器から流出する空気の流出流量を推定し、推定した流出流量を流入流量制御系にフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸装置およびこれを備えた工作機械に関する。詳しくは、主軸を有する主軸ヘッドの重量の少なくとも一部を支える付勢力を発生するバランスシリンダを有する主軸装置およびこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、コラムの案内面に沿って主軸ヘッドを昇降可能に支持し、この主軸ヘッドの重量に見合う付勢力をバランスシリンダによって発生させることによって、主軸ヘッドを軽い力で円滑に昇降できるようにした工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
従来、バランスシリンダによって主軸ヘッドの重量をバランスさせるバランス装置は、エアー供給源からのエアーを減圧弁で所定の圧力に減圧したのち、バランスシリンダに供給して、主軸ヘッドの重量とバランスさせる一方、制御回路内の圧力が高くなると、リリーフ弁が作動し、制御回路内の圧力を所定の圧力に保つ構造が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−138419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した構造のバランス装置では、減圧弁の精度も十分でないうえ、応答速度が遅いという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、このような従来の課題に対して、主軸ヘッドの上下動に対して生じるバランスシリンダの圧力変化を、高速かつ高精度に安定化させることができる主軸装置およびこれを備えた工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主軸装置は、主軸ヘッド支持部材と、この主軸ヘッド支持部材に昇降可能に設けられ主軸を有する主軸ヘッドと、この主軸ヘッドを昇降させる昇降機構と、前記主軸ヘッドの重量の少なくとも一部を支える付勢力を発生するバランスシリンダと、このバランスシリンダの圧力を制御する圧力レギュレータとを備えた主軸装置において、前記圧力レギュレータは、空気供給源から供給される空気の流入流量を規制するサーボ弁と、このサーボ弁を介して流入する空気を等温状態に保持するとともに前記バランスシリンダに供給する等温化圧力容器と、この等温化圧力容器内へ流入する空気の流入流量を計測する流量計と、前記等温化圧力容器内の空気の圧力を検出する圧力計と、前記等温化圧力容器内の空気の圧力微分値を検出する圧力微分計と、前記サーボ弁を操作して前記等温化圧力容器内の空気を所定の圧力に制御する圧力制御手段とを備え、前記圧力制御手段は、前記圧力計によって検出された圧力をフィードバック制御する圧力制御系と、前記流量計によって計測された流入流量をフィードバック制御する流入流量制御系と、前記圧力微分計によって計測された圧力微分値と前記流量計によって計測された流入流量とに基づいて、前記等温化圧力容器から流出する空気の流出流量を推定する流出流量推定手段とを有し、前記流入流量制御系を前記圧力制御系の制御ループ内に構成するとともに、前記流出流量推定手段によって推定された流出流量を前記流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系を構成する、ことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、圧力レギュレータは、等温化圧力容器をバッファとして用いることにより、等温化圧力容器への空気の流入過程および流出過程を等体積かつ等温変化とみなすことができるため、簡便に圧力制御を行うことができる。
この等温化圧力容器内の空気を所定の圧力に制御するために、サーボ弁によって、空気供給源から供給される空気の等温化圧力容器への流入流量を規制する。このとき、圧力レギュレータは、等温化圧力容器内の空気の圧力をフィードバック制御する圧力制御系をメインループとする圧力制御手段によって、サーボ弁を操作して流入流量を規制して、等温化圧力容器内の空気を所定の圧力に制御する。
【0008】
ここで、圧力制御手段は、圧力制御系の内側に構成したマイナーループである流入流量制御系によって、等温化圧力容器へ流入する空気の流入流量をフィードバック制御するとともに、流出流量推定手段によって、等温化圧力容器の空気の圧力微分値と等温化圧力容器へ流入する空気の流入流量とに基づいて、等温化圧力容器から流出する空気の流出流量を推定し、この推定した流出流量を流入流量制御系にフィードバックするモデル追従系によって補償する。
【0009】
従って、このような制御系においては、下流での流出流量の僅かな変化、つまり、バランスシリンダでの僅かな変化に対応して圧力制御が行われるため、外乱に強く、応答性の高い制御系を構成することができる。また、流出流量を圧力微分値に基づいて推定するため、流出流量を直接計測する場合に比較して、計測への流量の影響を少なくでき、高い精度で圧力制御を行うことができる。
その結果、主軸ヘッドの上下動に対して生じるバランスシリンダの圧力変化を、高速かつ高精度に安定化させることができる。
【0010】
本発明の主軸装置において、前記主軸ヘッドは、前記主軸ヘッド支持部材に昇降可能に設けられた主軸ヘッド本体と、この主軸ヘッド本体に回転可能に支持された主軸と、この主軸を回転駆動させる回転駆動源とを含んで構成され、前記主軸ヘッド本体は、ピッチ系のCFRPにより構成されている、ことが好ましい。
ここで、ピッチ系のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とは、ピッチプリカーサー(コールタールまたは石油重質分を原料として得られるピッチ繊維)を炭素化して得られるもので、高強度、高弾性率の性質をもつ。
このような構成によれば、主軸ヘッドは、主軸ヘッド本体と、これに回転可能に支持された主軸と、この主軸を回転駆動させる回転駆動源とを含んで構成され、主軸ヘッド本体がピッチ系のCFRPにより構成されているから、高強度、高弾性率を維持しつつ、軽量化が図れる。従って、主軸ヘッドの昇降速度を高速化することができるから、生産性の向上が期待できる。
【0011】
本発明の主軸装置において、前記昇降機構は、前記主軸ヘッド支持部材および前記主軸ヘッド本体のいずれか一方に前記主軸ヘッドの昇降方向に沿って設けられたマグネットと、前記主軸ヘッド支持部材および前記主軸ヘッド本体のいずれか他方に前記マグネットに対向して配置されたコイルとを含むリニアモータから構成されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、主軸ヘッドを昇降させる昇降機構がリニアモータによって構成されているから、主軸ヘッドを円滑かつ高精度に昇降動作させることができる。
【0012】
本発明の主軸装置において、前記コイルの周囲は遮熱部材で覆われている、ことが好ましい。
このような構成によれば、主軸ヘッドの昇降時にリニアモータのコイルに通電すると、コイルから発熱する。本発明では、コイルの周囲は遮熱部材で覆われているから、コイルからの発熱によって、主軸ヘッド本体などが熱変形を起こすことを防ぐことができる。従って、高精度を維持できる。
【0013】
本発明の工作機械は、前述したいずれかの主軸装置と、ワークを載置するテーブルと、前記主軸装置と前記テーブルとを前記主軸ヘッドの昇降方向に対して直交する少なくとも1軸方向へ相対移動させる移動機構とを備える、ことを特徴とする。
このような構成によれば、上述した効果をもつ工作機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る工作機械を示す斜視図。
【図2】前記実施形態において、主軸装置およびその周辺部分を示す図。
【図3】前記実施形態において、圧力レギュレータの構成を示すブロック図。
【図4】従来の工作機械において、送り速度1000mm/minの検証結果を示す図。
【図5】前記実施形態において、送り速度1000mm/minの検証結果を示す図。
【図6】従来の工作機械において、送り速度2000mm/minの検証結果を示す図。
【図7】前記実施形態において、送り速度2000mm/minの検証結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、バランス装置を有する主軸装置を備えた工作機械に適用した例である。
(工作機械全体の説明:図1参照)
本工作機械は、図1に示すように、ベース1と、このベース1にX軸ガイド機構11およびX軸リニアモータ機構12を介してX軸方向へ移動可能に設けられ上面にワークWを載置するテーブル13と、このテーブル13を跨いで設けられた門型コラム20と、この門型コラム20の水平ビーム20AにY軸ガイド機構21およびY軸リニアモータ機構22を介してY軸方向へ移動可能に設けられた主軸装置30とから構成されている。
【0016】
X軸ガイド機構11は、ベース1の上面にX軸方向に沿って互いに平行に配置されたガイドレール11Aと、テーブル13の下面にガイドレール11Aに沿ってスライド可能に設けられたスライド部材11Bとを含んで構成されている。
X軸リニアモータ機構12は、ベース1の上面においてガイドレール11Aの間にこれらと平行に配列されたマグネット12Aと、このマグネット12Aに隙間を隔ててテーブル13の下面に取り付けられたコイル12Bとを含むリニアモータによって構成されている。
【0017】
Y軸ガイド機構21は、図2にも示すように、門型コラム20の水平ビーム20Aの上面にY軸方向に沿って互いに平行に配置されたガイドレール21Aと、主軸装置30の下面にガイドレール21Aに沿ってスライド可能に設けられたスライド部材21Bとを含んで構成されている。
Y軸リニアモータ機構22は、門型コラム20の水平ビーム20Aの上面においてガイドレール21Aの間にこれらと平行に配列されたマグネット22Aと、このマグネット22Aに隙間を隔てて主軸装置30の下面に取り付けられたコイル22Bとを含むリニアモータによって構成されている。
【0018】
(主軸装置の説明:図2参照)
主軸装置30は、図2にも示すように、門型コラム20の水平ビーム20AにY軸ガイド機構21およびY軸リニアモータ機構22を介してY軸方向へ移動可能に設けられた主軸ヘッド支持部材としてのサドル33と、このサドル33にZ軸ガイド機構41および昇降機構としてのZ軸リニアモータ機構42を介して昇降可能に設けられた主軸ヘッド43と、この主軸ヘッド43の重量の少なくとも一部を支える付勢力を発生するバランスシリンダ44と、空気供給源60と、この空気供給源60からの空気をバランスシリンダ44に供給するとともにバランスシリンダ44の圧力を制御する圧力レギュレータ70と、サドル33の主軸ヘッド43とは反対側に取り付けられたバランスウエイト45とから構成されている。
【0019】
Z軸ガイド機構41は、主軸ヘッド43の裏面にZ方向に沿って互いに平行に配置されたガイドレール41Aと、サドル33の正面に固定されガイドレール41Aをスライド可能に案内するスライド部材41Bとを含んで構成されている。
Z軸リニアモータ機構42は、主軸ヘッド43の裏面においてガイドレール41Aの間にこれらと平行に配列されたマグネット42Aと、このマグネット42Aに隙間を隔ててサドル33の正面に取り付けられたコイル42Bとを含むリニアモータによって構成されている。
ここで、コイル42Bの周囲は遮熱部材42Cで覆われている。遮熱部材42Cとしては、アルミニウムまたはプラスチックスなどの材料によって箱状に形成されている。
【0020】
主軸ヘッド43は、主軸ヘッド本体51と、この主軸ヘッド本体51に回転可能に支持された主軸52と、この主軸52を回転駆動させる回転駆動源53とを含んで構成されている。
主軸ヘッド本体51は、ピッチ系のCFRPにより構成されている。ピッチ系のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とは、ピッチプリカーサー(コールタールまたは石油重質分を原料として得られるピッチ繊維)を炭素化して得られるもので、高強度、高弾性率の性質をもつ。主軸52には工具54が着脱可能に取り付けられる。回転駆動源53は、モータによって構成されている。
【0021】
バランスシリンダ44は、主軸ヘッド43を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
各バランスシリンダ44は、上端がブラケット55を介してサドル33に支持されたシリンダ本体44Aと、上端にシリンダ本体44A内に摺動可能に収納されたピストンを有し下端が主軸ヘッド43の下端に連結されたピストンロッド44Bとから構成されている。
ピストンで区画されたシリンダ本体44Aの下室には、空気供給源60からのエアーが圧力レギュレータ70を介して供給されている。その結果、バランスシリンダ44によって、主軸ヘッド43の重量とバランスする付勢力が主軸ヘッド43に上向きに与えられている。
【0022】
(圧力レギュレータの説明:図3参照)
圧力レギュレータ70は、圧力を高速かつ精密に目標圧力に保持するもので、例えば、特開2009−110033号に開示された圧力レギュレータを用いることができる。
これは、図3に示すように、空気供給源60から供給される空気の流入流量を規制するサーボ弁71と、このサーボ弁71を通った空気を流入し等温状態に保持する等温化圧力容器72と、この等温化圧力容器72内へ流入する空気の流入流量を計測する流量計73と、等温化圧力容器72内の空気の圧力を検出する圧力計74と、等温化圧力容器72内の空気の圧力微分値を検出する圧力微分計75と、流量計73、圧力計74および圧力微分計75で検出された信号をA/D変換するA/D変換器76と、このA/D変換器76を通じて与えられる信号を基にサーボ弁71の制御電圧を算出し、その制御電圧をD/A変換器78を介してサーボ弁71へ与える圧力制御手段77とを備える。
【0023】
ここで、本実施形態の圧力レギュレータ70の制御系は、目標設定圧力(目標値)Prefに対して等温化圧力容器72内の空気の圧力PをフィードバックしてPI(比例動作、積分動作)制御する圧力制御系をメインループとして構成している。
このメインループの内側に、等温化圧力容器72にサーボ弁71を介して流入する空気の流入流量Ginをフィードバック制御する流入流量制御系を1つのマイナーループとして構成するとともに、流入流量Ginと等温化圧力容器72内の空気の圧力微分値dP/dtとに基づいて等温化圧力容器72から流出する流出流量Goutを推定するオブザーバ(流入流量推定手段)を構成し、オブザーバで推定した流出流量Gout(上にハット)を流入流量制御系にフィードバックして補償するモデル追従制御系を他のマイナーループとして構成している。
【0024】
従って、いま、圧力レギュレータ70が起動され、等温化圧力容器72内の空気の圧力Pが所定の目標値に整定された状態にあるとする。このとき、サーボ弁71は、等温化圧力容器72の流出口から流出する流出流量と、流入口から流入する流入流量とがバランスする開度に調整されている。
ここで、空気供給源60からの空気の圧力Ps、または、等温化圧力容器72から流出する空気の流出流量Goutに変動が生じ、等温化圧力容器72内の圧力Pが目標値Prefから変化すると、圧力レギュレータ70は空気の圧力の変動を補償するために、圧力制御手段77によって、流量計73で計測された流入流量Gin、圧力計74で計測された圧力Pおよび圧力微分計75で計測された圧力微分値dP/dtをA/D変換器76を介して受信し、これらの受信した計測データに基づいてサーボ弁71に対する制御電圧Eiを算出し、この算出した制御電圧EiをD/A変換器78を介してサーボ弁71に与える。
すると、サーボ弁71は、圧力制御手段77によって算出された制御電圧Eiに応じた開度にサーボ弁71を制御し、その開度に応じた流入流量Ginで等温化圧力容器72に空気を流入する。これによって、等温化圧力容器72内の空気の圧力Pが目標値Prefに整定されるように制御される。
【0025】
<実施形態の作用、効果>
このような構成の工作機械において、ワークWを加工するには、ワークWをテーブル13上にセットしたのち、テーブル13をX軸方向へ、サドル33をY軸方向へ、主軸ヘッド43をZ軸方向へ移動させながら、工具54によってワークを加工する。
ここで、主軸ヘッド43をZ軸方向へ移動すると、バランスシリンダ44の圧力が変動する。本実施形態では、主軸ヘッド43の上下動に対して生じるバランスシリンダ44の圧力変化を、圧力レギュレータ70によって高速かつ高精度に安定化させることができる。そのため、移動速度の高速化、加工時間の短縮化が図れるとともに、移動時の負荷も安定し制御性を向上させることができるので、加工精度の向上も期待できる。
【0026】
例えば、図4および図5は、従来の工作機械と本実施形態の工作機械において、主軸ヘッド43を送り速度1000mm/minで移動させたときの検証結果である。
図4は、従来の工作機械(図1に示す構成において、主軸ヘッドの材質を鋳物とし、圧力レギュレータをfairchild社製圧力レギュレータの検証結果で、上段の図がZ軸リニアモータ機構42に対する位置指令値および電流指令値を示す図、下段の図がそのときのバランスシリンダのバランス圧を示す図である。
図5は、本実施形態の工作機械の検証結果で、上段の図がZ軸リニアモータ機構42に対する位置指令値および電流指令値を示す図、下段の図がそのときのバランスシリンダのバランス圧を示す図である。
これから明かなように、本実施形態によれば、バランスシリンダのバランス圧が従来の工作機械に比べ大幅に小さくなっていることが判る。
【0027】
また、図6および図7は、従来の工作機械と本実施形態の工作機械において、主軸ヘッド43を送り速度2000mm/minで移動させたときの検証結果である。
図6は、従来の工作機械(図4と同じ構成)の検証結果で、上段の図がZ軸リニアモータ機構42に対する位置指令値および電流指令値を示す図、下段の図がそのときのバランスシリンダのバランス圧を示す図である。
図7は、本実施形態の工作機械(図5の説明と同じ)の検証結果で、上段の図がZ軸リニアモータ機構42に対する位置指令値および電流指令値を示す図、下段の図がそのときのバランスシリンダのバランス圧を示す図である。
これから明かなように、本実施形態によれば、バランスシリンダのバランス圧が従来の工作機械に比べ大幅に小さくなっていることが判る。
【0028】
また、本実施形態によれば、主軸ヘッド43は、主軸ヘッド本体51と、この主軸ヘッド本体51に回転可能に支持された主軸52と、この主軸52を回転駆動させる回転駆動源53とを含んで構成され、主軸ヘッド本体51がピッチ系のCFRPにより構成されているから、高強度、高弾性率を維持しつつ、軽量化が図れる。従って、主軸ヘッド43の昇降速度を高速化することができるから、生産性の向上が期待できる。
【0029】
また、本実施形態によれば、主軸ヘッド43を昇降させる昇降機構が、主軸ヘッド43に主軸ヘッド43の昇降方向に沿って設けられたマグネット42Aと、サドル33にマグネット42Aに対向して配置されたコイル42Bとを含むZ軸リニアモータ機構42から構成されているから、主軸ヘッドを円滑かつ高精度に昇降動作させることができる。
しかも、Z軸リニアモータ機構42を構成するコイル42Bの周囲は遮熱部材42Cで覆われているから、コイルからの発熱によって、主軸ヘッド本体51などが熱変形を起こすことを防ぐことができる。従って、高精度を維持できる。
【0030】
<変形例>
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
前記実施形態では、工作機械として、テーブル13がX軸方向へ、主軸ヘッド43がY軸方向およびZ軸方向へ移動可能であったが、これに限られない。要は、テーブル13と主軸ヘッド43が二次元(2軸方向)あるいは三次元(3軸方向)へ相対移動可能な構造であれば、いずれが移動する構造であってもよい。
【0031】
また、前記実施形態では、各軸移動機構をリニアモータ機構、つまり、X軸リニアモータ機構12,Y軸リニアモータ機構22、Z軸リニアモータ機構42によって構成したが、必ずしも、リニアモータ機構でなくてもよい。ボールねじを用いた送り機構であってもよい。
また、前記実施形態では、主軸52の回転駆動源53として、モータを用いたが、これに限らず、例えば、エアータービン機構などであってもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、バランスシリンダ44によって主軸ヘッド43の重量とバランスする付勢力を発生させるようにしたが、必ずしも、主軸ヘッド43の重量とバランスする付勢力でなくてもよく、主軸ヘッド43の重量の少なくとも一部を支える付勢力を発生する構成であってもよい。
【0033】
前記実施形態では、バランスシリンダ44を有する主軸装置30を備えた工作機械について説明したが、バランスシリンダ44を有する主軸装置30を備えるものであれば、工作機械に限らず、超精密非球面加工機などの超精密工作機械にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、主軸ヘッドの位置を高速かつ高精度に制御できるから、一般的な工作機械に限らず、超精密非球面加工機などの超精密工作機械にも応用できる。
【符号の説明】
【0035】
12…X軸リニアモータ機構(移動機構)、
22…Y軸リニアモータ機構(移動機構)、
33…サドル(主軸ヘッド支持部材)、
42…Z軸リニアモータ機構(昇降機構)、
42A…マグネット、
42B…コイル、
42C…遮熱部材、
43…主軸ヘッド、
44…バランスシリンダ、
51…主軸ヘッド本体、
52…主軸、
53…回転駆動源、
60…空気供給源、
70…圧力レギュレータ、
71…サーボ弁、
72…等温化圧力容器、
73…流量計、
74…圧力計、
75…圧力微分計、
77…圧力制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸ヘッド支持部材と、この主軸ヘッド支持部材に昇降可能に設けられ主軸を有する主軸ヘッドと、この主軸ヘッドを昇降させる昇降機構と、前記主軸ヘッドの重量の少なくとも一部を支える付勢力を発生するバランスシリンダと、このバランスシリンダの圧力を制御する圧力レギュレータとを備えた主軸装置において、
前記圧力レギュレータは、空気供給源から供給される空気の流入流量を規制するサーボ弁と、このサーボ弁を介して流入する空気を等温状態に保持するとともに前記バランスシリンダに供給する等温化圧力容器と、この等温化圧力容器内へ流入する空気の流入流量を計測する流量計と、前記等温化圧力容器内の空気の圧力を検出する圧力計と、前記等温化圧力容器内の空気の圧力微分値を検出する圧力微分計と、前記サーボ弁を操作して前記等温化圧力容器内の空気を所定の圧力に制御する圧力制御手段とを備え、
前記圧力制御手段は、前記圧力計によって検出された圧力をフィードバック制御する圧力制御系と、前記流量計によって計測された流入流量をフィードバック制御する流入流量制御系と、前記圧力微分計によって計測された圧力微分値と前記流量計によって計測された流入流量とに基づいて、前記等温化圧力容器から流出する空気の流出流量を推定する流出流量推定手段とを有し、前記流入流量制御系を前記圧力制御系の制御ループ内に構成するとともに、前記流出流量推定手段によって推定された流出流量を前記流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系を構成する、
ことを特徴とする主軸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の主軸装置において、
前記主軸ヘッドは、前記主軸ヘッド支持部材に昇降可能に設けられた主軸ヘッド本体と、この主軸ヘッド本体に回転可能に支持された主軸と、この主軸を回転駆動させる回転駆動源とを含んで構成され、
前記主軸ヘッド本体は、ピッチ系のCFRPにより構成されている、
ことを特徴とする主軸装置。
【請求項3】
請求項2に記載の主軸装置において、
前記昇降機構は、前記主軸ヘッド支持部材および前記主軸ヘッド本体のいずれか一方に前記主軸ヘッドの昇降方向に沿って設けられたマグネットと、前記主軸ヘッド支持部材および前記主軸ヘッド本体のいずれか他方に前記マグネットに対向して配置されたコイルとを含むリニアモータから構成されている、
ことを特徴とする主軸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の主軸装置において、
前記コイルの周囲は遮熱部材で覆われている、
ことを特徴とする主軸装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の主軸装置と、
ワークを載置するテーブルと、
前記主軸装置と前記テーブルとを前記主軸ヘッドの昇降方向に対して直交する少なくとも1軸方向へ相対移動させる移動機構とを備える、
ことを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99816(P2013−99816A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244593(P2011−244593)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】