説明

乗用型田植機の苗のせ台支持構造

【課題】 乗用型田植機の苗のせ台支持構造において、摺動レールの付近のメンテナンス作業が行い易くなる状態を確保しながら、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗を抑える。
【解決手段】 苗のせ台12の下部に左右方向に沿って複数個の摺動部材45を固定し、摺動部材45を介して苗のせ台12を摺動レール27に往復横移動自在に支持する。摺動部材45を介して苗のせ台12を摺動レール27に往復横移動自在に支持した作業姿勢、及び苗のせ台12の下部及び摺動部材45を摺動レール27から後方上方に移動させた非作業姿勢に、苗のせ台12を変更自在に構成する。隣接する摺動部材45の間の空間を埋める空間部材49を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機における苗のせ台の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機の苗のせ台では例えば特許文献1に開示されているように、苗植付装置の下部に左右方向に亘って摺動レール(特許文献1の図1,2,3の13)を支持し、苗のせ台(特許文献1の図1,2,3の9)の下部に左右方向に沿って、複数個の摺動部材(特許文献1の図1,2,3の15,16)を固定して、摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持したものが多くある。
【0003】
近年では例えば特許文献2に開示されているように、摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持した作業姿勢(特許文献2の図4参照)、及び苗のせ台の下部及び摺動部材を摺動レールから後方上方に移動させた非作業姿勢(特許文献2の図5参照)に、苗のせ台を変更自在に構成することが提案されている。これにより、苗のせ台を非作業姿勢に設定することによって、摺動レールの付近のメンテナンス作業が行い易くなる。
【0004】
【特許文献1】実開平4−94921号公報(図1,2,3)
【特許文献2】特開2006−94730号公報(図4,5,10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2では、摺動部材を介して苗のせ台が摺動レールに往復横移動自在に支持されているので(摺動レールに摺動部材が乗せられ、摺動部材に苗のせ台の下部が乗せられているので)、隣接する摺動部材の間において摺動レールと苗のせ台との間に空間が生じており、前述の空間に泥水等が入り込み易い状態になっている。
近年では乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなってきており、前述の空間に泥水等が入り込み易い状態において、乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなると、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗が顕著なものとなる。
【0006】
本発明は乗用型田植機の苗のせ台支持構造において、摺動レールの付近のメンテナンス作業が行い易くなる状態を確保しながら、乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなった場合に、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗を抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機の苗のせ台支持構造において次のように構成することにある。
苗植付装置の下部に左右方向に亘って摺動レールを支持し、苗のせ台の下部に左右方向に沿って複数個の摺動部材を固定して、摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持する。摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持した作業姿勢、及び苗のせ台の下部及び摺動部材を摺動レールから後方上方に移動させた非作業姿勢に、苗のせ台を変更自在に構成する。隣接する摺動部材の間の空間を埋める空間部材を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、苗のせ台の下部に左右方向に沿って複数個の摺動部材を固定して、摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持した場合、隣接する摺動部材の間の空間を埋める空間部材を備えている。これにより、隣接する摺動部材の間の空間が消失して(小さくなって)、隣接する摺動部材の間の空間に泥水等が入り込み難くなるので、乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなっても、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗が少なくなる。
【0009】
本発明の第1特徴によると、苗のせ台を作業姿勢及び非作業姿勢に変更自在に構成しているので、苗のせ台を非作業姿勢に設定することにより、摺動レールの付近が開放されることになって、摺動レールの付近のメンテナンス作業が行い易くなる。
この場合、摺動部材が苗のせ台の下部に固定されているので、苗のせ台を非作業姿勢に設定すると、苗のせ台の下部と一緒に摺動部材が摺動レールから後方上方に離れるので、苗のせ台を非作業姿勢に設定した際に、この設定とは別に摺動部材を摺動レールから取り外すと言うような作業を行う必要がない。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型田植機の苗のせ台支持構造において、隣接する摺動部材の間の空間に泥水等が入り込み難くなるように構成することにより、乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなっても、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗を少なくすることができ、摺動レール及び摺動部材の耐久性を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、苗のせ台を作業姿勢及び非作業姿勢に変更自在に構成している点、及び苗のせ台を非作業姿勢に設定した際に、この設定とは別に摺動部材を摺動レールから取り外すと言うような作業を行う必要がない点により、摺動レールの付近のメンテナンス作業の作業性が良いものとなった。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型田植機の苗のせ台支持構造において次のように構成することにある。
空間部材を苗のせ台に固定する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によれば、空間部材が苗のせ台に固定されているので、苗のせ台を非作業姿勢に設定すると、苗のせ台の下部と一緒に摺動部材及び空間部材が摺動レールから後方上方に離れるので、苗のせ台を非作業姿勢に設定した際に、この設定とは別に空間部材を摺動レールから取り外すと言うような作業を行う必要がない。この場合、摺動レールから摺動部材及び空間部材が離れた状態となって、摺動レールが大きく開放された状態となる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、苗のせ台を非作業姿勢に設定した際に、この設定とは別に空間部材を摺動レールから取り外すと言うような作業を行う必要がない点、摺動レールから摺動部材及び空間部材が離れた状態となって、摺動レールが大きく開放された状態となる点により、摺動レールの付近のメンテナンス作業の作業性が良いものとなった。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の乗用型田植機の苗のせ台支持構造において次のように構成することにある。
潤滑剤を保持可能に空間部材を構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
苗のせ台が摺動レールに沿って往復横移動した場合、摺動部材が苗のせ台と一緒に摺動レールに沿って往復横移動するのに加えて、空間部材も苗のせ台と一緒に摺動レールに沿って往復横移動する。
【0016】
本発明の第3特徴によれば、空間部材が潤滑剤(例えば潤滑油やグリス等)を保持可能に構成されているので、空間部材に潤滑剤を適時補給して保持させておくことにより、前述のように空間部材が苗のせ台と一緒に摺動レールに沿って往復横移動すると、空間部材に保持された潤滑剤が摺動レールに塗布される状態になる。
摺動部材が苗のせ台と一緒に摺動レールに沿って往復横移動する場合、潤滑剤が塗布された摺動レールの部分に摺動部材が達すると、摺動部材に潤滑剤が付着することになるのであり、摺動部材と摺動レールとの間の摺接面に潤滑剤が入り込むことになって、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗が少なくなる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、潤滑剤が摺動レールに塗布され、摺動部材と摺動レールとの間の摺接面に潤滑剤が入り込むようにすることによって、乗用型田植機(苗植付装置)の使用時間が長くなっても、泥水等による摺動レール及び摺動部材の磨耗を少なくすることができ、摺動レール及び摺動部材の耐久性を向上させることができた。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴の乗用型田植機の苗のせ台支持構造において次のように構成することにある。
潤滑剤の注入口を苗のせ台の苗のせ面側に備え、注入口と空間部材とを接続する供給路を苗のせ台に備える。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、空間部材に潤滑剤を補給する場合、苗のせ台の苗のせ面側から注入口及び供給路を介して空間部材に潤滑剤を補給することができるのであり、苗のせ台の苗のせ面とは反対側の各部材に邪魔されることなく、空間部材に潤滑剤を容易に補給することができる。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、苗のせ台の苗のせ面とは反対側の各部材に邪魔されることなく、空間部材に潤滑剤を容易に補給することができるようになって、摺動レールの付近のメンテナンス作業の作業性が良いものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[1]
図1に示すように、前輪1及び後輪2で支持された機体の前部に、エンジン3及びミッションケース4が備えられ、機体の後部に四連リンク式のリンク機構6が油圧シリンダ14により昇降駆動自在に支持されており、リンク機構6に苗植付装置7が支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、苗植付装置7は6条植型式に構成されており、1個のフィードケース15、3個の伝動ケース8、伝動ケース8の右及び左側に回転駆動自在に支持された回転ケース9、回転ケース9の両端に支持された一対の植付アーム10、接地フロート11、6組の苗のせ面12aを備えた苗のせ台12、苗のせ台12に載置された苗を摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)に送る縦送り機構13等を備えている。リンク機構6の後部の下部にフィードケース15が前後軸芯周りにローリング自在に支持されて、エンジン3の動力が植付クラッチ(図示せず)及びPTO軸18を介してフィードケース15に伝達されている。フィードケース15に横向きの支持フレーム16が固定されており、支持フレーム16に3個の伝動ケース8が後向きに片持ち状に固定されて、フィードケース15と3個の伝動ケース8に亘って伝動軸17が接続されている。
【0023】
これにより、図1及び図2に示すように、エンジン3の動力がPTO軸18からフィードケース15に伝達されて、苗のせ台12が往復横送り駆動されるのであり、エンジン3の動力が伝動軸17、伝動ケース8、伝動ケース8の内部に配置された伝動チェーン(図示せず)を介して回転ケース9に伝達され、回転ケース9が回転駆動されて、摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)から植付アーム10が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0024】
図1に示すように、2つの植付条に対応した3個の繰り出し部19が運転座席5の後側に固定されており、透明樹脂製で肥料を貯留するホッパー20が3個の繰り出し部19に亘って固定されている。植付アーム10によって植え付けられた苗(植付条)の横側に溝を形成する作溝器21が、植付条の各々に対応して6個用意されて接地フロート11に固定されており、2個の作溝器21と1個の繰り出し部19とがホース22を介して接続されている。運転座席5の下側にブロア23が備えられ、ブロア23か繰り出し部19に沿って左右にパイプ(図示せず)が延出されており、繰り出し部19においてホース22が接続される部分とは反対側に送風口(図示せず)が形成されて、繰り出し部19の送風口がパイプに挿入されている。
【0025】
これにより、苗のせ台12が往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース9が回転駆動されて、摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)から植付アーム10が交互に苗を取り出して田面に植え付け、これと同時にホッパー20の肥料が繰り出し部19から所定量ずつ繰り出される。ブロア23からの高圧の風がホース22に供給されており、高圧の風により肥料がホース22を通って作溝器21に供給され、作溝器21により田面に形成された溝に肥料が送り込まれる。
【0026】
[2]
次に、苗のせ台12の往復横送り駆動構造及び縦送り機構13の駆動構造について説明する。
図2,3,4に示すように、伝動ケース8に亘って左右方向に摺動レール27が支持され、苗のせ台12の下部が摺動レール27に沿って往復横移動自在に支持されている。支持フレーム16の右及び左側部から上方に右及び左の支持フレーム28が延出されて、右及び左の支持フレーム28の上部に亘って支持フレーム29が取り付けられている。支持フレーム29の複数箇所に固定されたロッド30に、ローラー31が上下向き軸芯周りに回転自在に支持され、断面コ字状の支持フレーム32が苗のせ台12の上部の裏面に沿って固定されており、ローラー31が支持フレーム32の内側に挿入されている。これにより、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横移動自在に支持されている。
【0027】
図2,4,6に示すように、フィードケース15から螺旋軸33が延出され、螺旋軸33の端部が支持ブラケット35を介して支持フレーム16に回転自在に支持されており、螺旋軸33に送り部材34が外嵌されている。苗のせ台12の上下中央付近の裏面に苗のせ台12の全幅に亘って支持フレーム36が固定されており(図3参照)、支持フレーム36に固定された連結部材37と送り部材34とが、接続部材38及びボルト39を介して接続されている。これにより、フィードケース15の動力によって螺旋軸33が回転駆動されて、送り部材34が螺旋軸33に沿って往復横送り駆動されるのであり、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横送り駆動される。
【0028】
図3及び図4に示すように、縦送り機構13は幅広の送りベルトを回転駆動するように構成されており、苗のせ台12の苗のせ面12aの各々に備えられている。縦送り機構13の下部に亘って1本の駆動軸40が架設され、苗のせ台12の裏面の4箇所に固定された支持部材41によって駆動軸40が回転自在に支持されており、駆動軸40の所定箇所に入力アーム40aがワンウェイクラッチ(図示せず)を介して外嵌されている。図2に示すように、フィードケース15から縦送り軸43が延出され、縦送り軸43の端部が支持ブラケット42を介して支持フレーム16に回転自在に支持されており、縦送り軸43に2個の駆動アーム43aが固定されている。縦送り軸43の2個の駆動アーム43aの間に駆動軸40の入力アーム40aが位置しており、フィードケース15の動力によって縦送り軸43が回転駆動されている。
【0029】
これにより、図2,3,4に示すように、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横送り駆動されて、往復横送り駆動のストロークエンドに達すると、駆動軸40の入力アーム40aが縦送り軸43の一方の駆動アーム43aの位置に達して、駆動軸40の入力アーム40aが縦送り軸43の一方の駆動アーム43aにより所定角度だけ回転駆動され、縦送り機構13が所定量だけ回転駆動されて、苗のせ台12に載置された苗が摺動レール27の苗取り出し口27eに送られる。
【0030】
[3]
次に、摺動レール27の付近の構造について説明する。
図4に示すように、伝動ケース8の横側面に固定されたブラケット24に、支持ロッド25が上下スライド自在に支持され、支持ロッド25の上部にコ字状の係合部25aが固定されている。伝動ケース8の横軸芯P1周りに上下揺動及び固定自在な支持アーム26が支持ロッド25の係合部25aに係合しており、支持アーム26により支持ロッド25の位置が決められている。
【0031】
図12及び図13に示すように、アルミの引き抜き材で構成された摺動レール27が備えられており、断面四角形状のパイプ部27a、パイプ部27aから延出されて摺動レール27の全長に亘って形成された受け部27b、パイプ部27aの苗のせ台12側の上部に摺動レール27の全長に亘って形成された段部27c、パイプ部27aの苗のせ台12の反対側の上部に摺動レール27の全長に亘って形成されたリブ27d、受け部27bの6箇所に形成された切欠き状の苗取り出し口27e等を備えて、摺動レール27が構成されている。
【0032】
図3,12,13に示すように、断面T字状の連結部材44が苗のせ台12の下部の裏面に苗のせ台12の全幅に亘って固定されており、連結部材44の4箇所の下面及び上面に、摺動部材45及び係合部材46が以下のように固定されている。摺動部材45は基板部45a、縦壁部45b、2個のボルト孔45c及び1個の係合突起45d等を備えて、合成樹脂により一体的に構成されている。係合部材46は合成樹脂により断面L字状に構成されており、切欠き部46a及び切欠き部46aの周囲の浅い凹部46bを備えて構成されている。
【0033】
図12及び図13に示すように、連結部材44の開口部44aに摺動部材45の係合突起45dが挿入されて、摺動部材45が連結部材44の4箇所の下面に取り付けられ、摺動部材45の一方のボルト孔45cにボルト47が下側から挿入されて、連結部材44の開口部44bにボルト47が下側から挿入されている。支持部材41から下方に延出部41bが延出されて直角に折り曲げられており、支持部材41の延出部41bの開口部41cが連結部材44の開口部44bに位置するように、支持部材41の延出部41bが連結部材44の上面に乗せ付けられ、ボルト47が支持部材41の開口部41cに下側から挿入されている。
【0034】
図12及び図13に示すように、摺動レール27の全長に亘るもので対磨耗性の高い金属製の摺動プレート59が用意されており、摺動プレート59が摺動レール27のパイプ部27aの上面にビス60によって固定されている。摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に乗せ付けられた状態で、係合部材46の切欠き部46aにボルト47が挿入されて、係合部材46が連結部材44の上面に取り付けられており、ナット48がボルト47に締め付けられて、摺動部材45及び係合部材46、支持部材41の延出部41bが連係部材44に固定されている。この場合、ナット48をボルト47に締め付けると、係合部材46の凹部46bにナット48が入り込むことになるので、ナット48が少し緩んでも、係合部材46の凹部46bがナット48に引っ掛かるので、係合部材46が簡単に脱落するようなことがない。
【0035】
この状態で図12及び図13に示すように、摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に乗せ付けられて、摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のリブ27dに接当し(又は摺動レール27のリブ27dから少し離れ)、摺動部材45の縦壁部45bが摺動レール27の段部27cに接当している。係合部材46が摺動レール27のリブ27dの横面部及び下端部に接当している。これにより、摺動部材45及び係合部材46が摺動レール27に沿って摺動することによって、苗のせ台12の下部が摺動部材45を介して摺動レール27に往復移動自在に支持されるのであり、摺動レール27に対して苗のせ台12の下部(摺動部材45及び係合部材46)が図12の紙面上方、紙面右方及び左方に移動する状態が防止される。
【0036】
苗取り量調節レバー(図示せず)が苗植付装置7に備えられており、図4に示すように苗取り量調節レバーにより、支持アーム26の姿勢を横軸芯P1周りに変更して固定することができるのであり、支持アーム26の姿勢を横軸芯P1周りに変更することにより、支持ロッド25及び摺動レール27、苗のせ台12の位置を上下方向に変更することができる。このように摺動レール27の位置を上下方向に変更することによって、植付アーム10の通過軌跡に対する摺動レール27の苗取り出し口27eの位置を上下方向に変更して、植付アーム10が取り出す苗の量を変更することができる。
【0037】
[4]
次に、隣接する摺動部材45の間の空間を埋める空間部材49について説明する。
図8及び図9に示すように、摺動部材45の長さは摺動レール27に比べて短いので、隣接する摺動部材45の間において摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)と連結部材44との間に空間が生じており、この空間が図10の紙面斜め左下方に向いている。図8,9,10,13に示すように、スポンジ材で構成された空間部材49が用意されており、隣接する摺動部材45の間の空間を埋めるように(隣接する摺動部材45に亘るように)、連結部材44の下面に空間部材49が連結クリップ50により固定されている。この状態で、空間部材49の両端部が隣接する摺動部材45の端部の近接する状態となっており、空間部材49の下面が摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)の上面に略接する状態となっている。
【0038】
図8,9,10,11に示すように、空間部材49の略中央の位置(苗のせ台12において、隣接する苗のせ面12aの間に位置する仕切り部12b)において、筒状のプラグ部材51が連結部材44の開口部(図示せず)に下側から挿入されており、プラグ部材51の下端部に空間部材49の上面が押し付けられている。苗のせ台12の苗のせ面12a側において、苗のせ台12の仕切り部12bに筒状のプラグ部材52(注入口に相当)が固定されており、プラグ部材51,52に亘ってホース53(供給路に相当)が接続されている。
【0039】
図10及び図11に示すように、通常ではプラグ部材52にキャップ(図示せず)が取り付けられて、プラグ部材52が塞がれている。キャップを取り外すことにより、苗のせ台12の苗のせ面12a側からプラグ部材52に潤滑油(潤滑剤に相当)を供給することができるのであり、潤滑油はホース53及びプラグ部材51を介して空間部材49に供給されて、潤滑油が空間部材49におけるプラグ部材51の付近の部分に含浸される(染み込んで保持される)。
【0040】
これにより、図8,9,10に示すように、苗のせ台12が摺動レール27に沿って往復横移動することにより、空間部材49におけるプラグ部材51の付近の部分に含浸された潤滑油が、摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に塗布される状態となる。これと同時に苗のせ台12が摺動レール27に沿って往復横移動することにより、潤滑油が塗布された範囲に摺動部材45が達して(潤滑油が塗布された範囲に、摺動部材45の往復横移動の範囲が重複して)、摺動部材45にも潤滑油が塗布され、摺動部材45(基板部45a)と摺動レール27(パイプ部27a)(摺動プレート59)との間の摺接面に潤滑油が入り込む状態となる。
【0041】
[5]
次に、摺動部材45を介して苗のせ台12を摺動レール27に往復横移動自在に支持した作業姿勢、及び苗のせ台12の下部及び摺動部材45を摺動レール27から後方上方に移動させた非作業姿勢に、苗のせ台12を変更する構造について説明する。
図2,3,4,6は、苗のせ台12を作業姿勢に設定した状態を示している。図4及び図6に示すように、連結部材37に側面視L字状の長孔37aが開口されており、接続部材38に固定されたボルト39が連結部材37の長孔37aに挿入され、ナット54により締め付けられて、ボルト39が連結部材37に固定されている。この場合、作業姿勢において、連結部材37の長孔37aの上端部にボルト39が位置している。
【0042】
図2,3,4に示すように、支持フレーム29の右及び左の端部にブラケット29aか固定されており、作業姿勢において、支持フレーム29のブラケット29aが右及び左の支持フレーム28の上端にピン55及びボルト56により固定されている。図3及び図7に示すように、右及び左の支持部材41に取付孔41aが開口され、支持フレーム36の右及び左側部に合成樹脂製の保持部材57が固定されている。棒材をコ字状に折り曲げて構成された右及び左の支持部材58が用意されており、作業姿勢において、右及び左の支持部材58の下部が右及び左の支持部材41の取付孔41aに挿入され、右及び左の支持部材58の上部が保持部材57に嵌め込まれている。
【0043】
以上の作業姿勢に対して苗のせ台12を非作業姿勢に変更する場合、右及び左の支持部材58(図7参照)を取り外して、ナット48(図13参照)をボルト47から充分に緩めて係合部材46を取り外し、ボルト56(図4参照)を取り外して、ボルト39及びナット54(図6参照)を緩める。
これにより、図5に示すように、螺旋軸33に対して送り部材34及び接続部材38を苗のせ台12側に少し回転させながら、苗のせ台12の下部をピン55周りに上方に持ち上げながら、ボルト39を連結部材37の長孔37aの下端部に移動させる。連結部材44に摺動部材45及び空間部材49が固定されているので、苗のせ台12の下部と一緒に摺動部材45及び空間部材49が摺動レール27から後方上方に移動するのであり、この状態で右及び左の支持部材58を摺動レール27と連結部材44とに亘って取り付けて、苗のせ台12を非作業姿勢に保持する。
【0044】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、空間部材49におけるプラグ部材51の付近の部分の下面に凹部を形成してもよい(潤滑剤を保持可能な構成に相当)。これにより、苗のせ台12の苗のせ面12a側からプラグ部材52にグリス(潤滑剤に相当)を供給することにより、グリスがホース53及びプラグ部材51を介して空間部材49の前述の凹部に供給されるように構成してもよい。
摺動プレート59を廃止して、摺動部材45の基板部45aを摺動レール27のパイプ部27aに直接に乗せ付けるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置の平面図
【図3】苗のせ台及び摺動レールの付近の正面図
【図4】苗植付装置(作業姿勢)の全体側面図
【図5】苗植付装置(非作業姿勢)の全体側面図
【図6】螺旋軸及び送り部材の付近の正面図
【図7】苗植付装置の左の支持部材の付近の側面図
【図8】苗のせ台、摺動レール、摺動部材及び空間部材の付近の縦断正面図
【図9】摺動レール、摺動部材及び係合部材、空間部材の付近の縦断正面図
【図10】苗のせ台、摺動レール、空間部材、プラグ部材及びホースの付近の縦断側面図
【図11】苗のせ台、プラグ部材及びホースの付近の横断平面図
【図12】摺動レール、摺動部材及び係合部材の付近の縦断側面図
【図13】苗のせ台、摺動部材及び係合部材、空間部材、連結部材の付近の分解斜視図
【符号の説明】
【0046】
7 苗植付装置
12 苗のせ台
12a 苗のせ台の苗のせ面
27 摺動レール
45 摺動部材
49 空間部材
52 注入口
53 供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付装置の下部に左右方向に亘って摺動レールを支持し、苗のせ台の下部に左右方向に沿って複数個の摺動部材を固定して、前記摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持し、
前記摺動部材を介して苗のせ台を摺動レールに往復横移動自在に支持した作業姿勢、及び前記苗のせ台の下部及び摺動部材を摺動レールから後方上方に移動させた非作業姿勢に、前記苗のせ台を変更自在に構成すると共に、
前記隣接する摺動部材の間の空間を埋める空間部材を備えてある乗用型田植機の苗のせ台支持構造。
【請求項2】
前記空間部材を苗のせ台に固定してある請求項1に記載の乗用型田植機の苗のせ台支持構造。
【請求項3】
潤滑剤を保持可能に前記空間部材を構成してある請求項2に記載の乗用型田植機の苗のせ台支持構造。
【請求項4】
潤滑剤の注入口を前記苗のせ台の苗のせ面側に備え、前記注入口と空間部材とを接続する供給路を苗のせ台に備えてある請求項3に記載の乗用型田植機の苗のせ台支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−17738(P2008−17738A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190507(P2006−190507)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】