説明

乗用型田植機

【課題】 乗用型田植機において、アクチュエータにより前輪を自動的に操向操作する自動走行手段を備えた場合、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って適切に走行するように構成する。
【解決手段】 田面を撮影することにより田面に植え付けられた機体の隣の苗列L1を検出する検出手段38を備える。自動走行手段が作動する自動走行モードと、操縦ハンドルにより前輪1を人為的に操向操作する手動走行モードとを、選択して設定可能な人為選択操作具29を備える。苗植付装置5に動力を伝達する植付クラッチが遮断状態に操作されると検出手段38を停止させ、植付クラッチが伝動状態に操作されると検出手段38を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機において自動走行の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機では例えば特許文献1に開示されているように、前輪を操向操作可能なアクチュエータと、田面を撮影することにより田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出する検出手段とを備えて、検出手段の検出に基づいて機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、アクチュエータにより前輪を自動的に操向操作する自動走行手段を備えたものがある。
【0003】
特許文献1のような自動走行手段を備えた場合、自動走行手段を作動状態及び停止状態に操作するもので、人為的に操作される人為選択操作具を備えることが多い。これによって、植付行程においては、人為選択操作具により自動走行手段を停止状態に設定して、運転者が操縦ハンドルにより前輪を操向操作する。次に機体の後部に備えられた苗植付装置の苗が少なくなると、人為選択操作具により自動走行手段を作動状態に設定してから、運転者は後を向いて苗植付装置に苗を補給する。このように運転者が後を向いて苗植付装置に苗を補給している間、自動走行手段によって機体を走行させることにより、運転者が後を向いて苗植付装置に苗を補給する際に機体を停止させる必要がなくなる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−14611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように人為選択操作具により自動走行手段を作動状態及び停止状態に設定するように構成した場合、自動走行手段が作動状態であると、検出手段も作動状態となり、自動走行手段が停止状態であると、検出手段も停止状態となるように構成することが考えられる。この場合、検出手段が停止状態から作動状態に設定されると、検出手段が田面を撮影し始めて、撮影した画像(検出信号)を処理することにより、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出するまでに、少し時間を要する。
【0006】
これにより、例えば植付行程で自動走行手段及び検出手段を停止状態に設定して、運転者が操縦ハンドルにより前輪を操向操作している状態において、人為選択操作具により自動走行手段及び検出手段を作動状態に設定したとする。
この場合、前述のように検出手段が田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出するまでに少し時間を要するものであると、この間では検出手段が田面に植え付けられた機体の隣の苗列をまだ検出していないのに、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、自動走行手段がアクチュエータにより前輪を自動的に操向操作しようとすることになるので、実際には機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って適切に走行しない状態が生じることになる。
【0007】
本発明は乗用型田植機において、田面を撮影することにより田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出する検出手段、検出手段の検出に基づいて機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、アクチュエータにより前輪を自動的に操向操作する自動走行手段を備えた場合、人為選択操作具により自動走行手段を作動状態に設定した際に、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って適切に走行するように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機において次のように構成することにある。
前輪を人為的に操向操作可能な操縦ハンドルと、前輪を操向操作可能なアクチュエータと、田面を撮影することにより田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出する検出手段とを備える。検出手段の検出に基づいて機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、アクチュエータにより前輪を自動的に操向操作する自動走行手段を備える。自動走行手段が作動する自動走行モードと、操縦ハンドルにより前輪を人為的に操向操作する手動走行モードとを、選択して設定可能な人為選択操作具とを備える。機体に備えられた苗植付装置に動力を伝達する植付クラッチが遮断状態に操作されると検出手段を停止させ、植付クラッチが伝動状態に操作されると検出手段を作動させる作動操作手段を備える。
【0009】
(作用)
本発明の第1特徴によると、自動走行手段が作動する自動走行モード及び操縦ハンドルにより前輪を人為的に操向操作する手動走行モードが、人為選択操作具により設定されるのに対して、検出手段の作動及び停止は植付クラッチの伝動及び遮断状態により設定される。これにより、例えば植付行程で人為選択操作具により手動走行モードを設定して、運転者が操縦ハンドルにより前輪を操向操作している状態においては、植付クラッチが伝動状態に操作されて苗植付装置が苗の植付作動を行っているのであり、植付クラッチが伝動状態に操作された際に検出手段も作動を開始している。
【0010】
従って、本発明の第1特徴によると、前述の状態において人為選択操作具により自動走行モードを設定した際に、既に少し前から検出手段が作動を開始しており、検出手段が田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出している。これについて言い換えると、検出手段が田面に植え付けられた機体の隣の苗列をまだ検出していないのに、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、自動走行手段がアクチュエータにより前輪を自動的に操向操作しようとするような状態は生じないことになる。
【0011】
乗用型田植機において、一回の植付行程が終了して機体が畦際に達すると、機体を畦際で旋回させて次の植付行程に入る。この場合、畦際での旋回時に検出手段を作動させていると、検出手段は田面ではなく畦を撮影することになり苗を撮影しないことになるので、検出手段は苗を撮影していないのに田面に植え付けられた機体の隣の苗列を無理に検出しようとすることになり、検出手段に負荷が掛かることになる。
【0012】
本発明の第1特徴によると、植付クラッチが伝動状態に操作されると検出手段が作動して、植付クラッチが遮断状態に操作されると検出手段が停止する。機体を畦際で旋回させて次の植付行程に入る場合、畦際での旋回時に植付クラッチを遮断状態に操作し苗植付装置を停止させているので、本発明の第1特徴によると、畦際での旋回時に検出手段は停止しており、検出手段が苗を撮影していないのに田面に植え付けられた機体の隣の苗列を無理に検出しようとする状態は生じない。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型田植機において、人為選択操作具により自動走行モードを設定した際に、既に少し前から検出手段が作動を開始しており、検出手段が田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出しているので、自動走行手段がアクチュエータにより前輪を自動的に操向操作して、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って適切に走行するようになる。これにより、人為選択操作具により自動走行モードを設定した際に、機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って適切に走行せずに、苗植付装置による苗の植え付けが乱れるような状態を避けることができた。
【0014】
本発明の第1特徴によると、畦際での旋回時に検出手段は停止しており、検出手段が苗を撮影していないのに田面に植え付けられた機体の隣の苗列を無理に検出しようとする状態は生じないので、検出手段に負荷が掛かる状態を避けることができた。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
機体の後部に苗植付装置を備えて、苗植付装置の右及び左側部に右及び左の検出手段を備える。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
乗用型田植機において、機体の後部に備えられる苗植付装置は一般に機体の横幅よりも大きな横幅を備えている。
これにより、本発明の第2特徴のように、苗植付装置の右及び左側部に右及び左の検出手段を備えると、田面に植え付けられた機体の隣の苗列の上方付近に右又は左の検出手段を位置させることが容易に行えるので、田面に植え付けられた機体の隣の苗列が右又は左の検出手段によって誤差少なく検出されるようになる(田面に植え付けられた機体の隣の苗列が斜め横側から右又は左の検出手段によって検出されることによる誤差の発生が抑えられる)。
【0017】
乗用型田植機では一般に苗植付装置に対して、昇降制御機能及びローリング制御機能を備えることが多くある。昇降制御機能は機体の上下動の影響を受けることなく苗植付装置が田面から設定高さに維持されるようにするものであり、ローリング制御機能は機体の左右動の影響を受けることなく苗植付装置が水平に維持されるようにするものである。このような昇降制御機能及びローリング制御機能が備えられていると、機体の上下動や左右動に関係なく田面に対する苗植付装置の姿勢が安定しているので、本発明の第2特徴のように、苗植付装置に右及び左の検出手段を備えることにより、田面に植え付けられた機体の隣の苗列が右及び左の検出手段によって誤差少なく検出されるようになる。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、田面に植え付けられた機体の隣の苗列が右及び左の検出手段によって誤差少なく検出されるようになり、自動走行モード(自動走行手段)での走行性能を向上させることができた。
【0019】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
右及び左の検出手段のうち、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出した検出手段の検出信号に基づいて、自動走行手段が作動するように構成する。右及び左の検出手段のうち、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出しない検出手段の検出信号を無視するように構成する。
【0020】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
植付行程は一般に、機体の右又は左の一方に田面に植え付けられた機体の隣の苗列が存在し、機体の右又は左の他方はまだ苗が植え付けられていない状態となっており、苗が植え付けられていない状態を右又は左の検出手段で検出しても意味のないものとなる。
【0021】
本発明の第3特徴によると、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出した検出手段の検出信号に基づいて自動走行手段が作動するのであり、右及び左の検出手段のうち、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出しない検出手段の検出信号が無視されるので、必要な右又は左の検出手段の検出信号が処理されることになり、右及び左の検出手段の両方の検出信号を処理すると言う無駄が避けられる。
【0022】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、必要な右又は左の検出手段の検出信号が処理され、右及び左の検出手段の両方の検出信号を処理すると言う無駄が避けられることによって、全体として処理速度を速くすることができ、自動走行モード(自動走行手段)での走行性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられ、リンク機構3の後部に苗植付装置5が支持されて、乗用型田植機が構成されており、機体の前部の右及び左横側部に予備苗のせ台32が支持されている。
【0024】
図1,2,4に示すように、苗植付装置5は左右方向に配置された支持フレーム31、支持フレーム31に後向きに固定された伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された植付ケース7、植付ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、接地フロート9及び苗のせ台10等を備えて構成されている。苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース7が回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。
【0025】
図1に示すように、肥料を貯留するホッパー12及び繰り出し部13が運転席11の後側に固定されて、運転席11の下側にブロア14が備えられている。接地フロート9に作溝器15が備えられて、繰り出し部13と作溝器15とに亘ってホース16が接続されている。これにより、苗の植え付けに伴って、ホッパー12から肥料が所定量ずつ繰り出し部13によって繰り出され、ブロア14の送風により肥料がホース16を通って作溝器15に供給されるのであり、作溝器15を介して肥料が田面Gに供給される。
【0026】
[2]
図1に示すように、接地フロート9は後部の横軸芯周りに上下に揺動自在に支持されており、苗植付装置5に対する接地フロート9の上下高さを検出する高さセンサー20が備えられている。接地フロート9は田面Gに接地追従するので、高さセンサー20により接地フロート9から苗植付装置5までの高さを検出することにより、田面Gから苗植付装置5までの高さを検出することができる。これにより機体の上下動に関係なく、高さセンサー20の検出信号に基づいて、苗植付装置5が田面Gから設定高さに維持されるように、油圧シリンダ4により苗植付装置5が自動的に昇降駆動される(昇降制御機能)。
【0027】
図1及び図2に示すように、リンク機構3の後部下部の前後軸芯P1周りに苗植付装置5がローリング自在に支持され、水平面に対する苗植付装置5の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜センサー(図示せず)が備えられている。支持フレーム31の右及び左端部に右及び左の支持フレーム33が上向きに固定され、右及び左の支持フレーム33の上部に亘って支持フレーム34が固定されて、支持フレーム34に苗のせ台10の上部が往復横移動自在に支持されている。
【0028】
図2に示すように、リンク機構3の後部上部にローリングモータ35が固定され、支持フレーム34の右及び左側部とローリングモータ35とが右及び左のバネ36を介して接続されている。これにより、機体の左右動に関係なく、傾斜センサーの検出信号に基づいて、苗植付装置5が水平に維持されるように(水平面に対して所定の傾斜角度に維持されるように)、ローリングモータ35により苗植付装置5が前後軸芯P1周りに自動的にローリング駆動される(ローリング制御機能)。
以上の昇降制御機能及びローリング制御機能により、苗植付装置5が田面Gから設定高さに維持され、苗植付装置5が水平に維持されて(水平面に対して所定の傾斜角度に維持されて)、苗の植付深さが設定深さに維持される。
【0029】
[3]
図1及び図4に示すように、運転席11の右横側に昇降レバー39が備えられて、昇降レバー39が自動位置、上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に直線的に操作自在に構成されており、昇降レバー39の操作位置が制御装置30に入力されている。これにより、油圧シリンダ4及びローリングモータ35、苗植付装置5に動力を伝達する植付クラッチ(図示せず)が、以下のように操作される。
【0030】
図1及び図4に示すように、昇降レバー39を上昇位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が上昇駆動され、昇降レバー39を中立位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作された状態で、油圧シリンダ4がその位置で停止する。昇降レバー39を下降位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が下降駆動され、昇降レバー39を中立位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作された状態で、油圧シリンダ4がその位置で停止する。昇降レバー39を下降位置に操作した状態で、苗植付装置5(接地フロート9)が田面Gに接地すると、植付クラッチが遮断状態に操作された状態で、前項[2]に記載の昇降制御機能及びローリング制御機能が作動する。昇降レバー39を植付位置に操作すると、前項[2]に記載の昇降制御機能及びローリング制御機能が作動した状態で、植付クラッチが伝動状態に操作される。
【0031】
図1及び図4に示すように、操縦ハンドル28の右横下側に補助昇降レバー40が備えられており、補助昇降レバー40の操作位置が制御装置30に入力されている。補助昇降レバー40は中立位置N、上昇位置U、下降位置D、右マーカー位置R及び左マーカー位置Lに十字状に操作自在に構成されており、中立位置Nに戻るように付勢されている。昇降レバー39が上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作されていると、補助昇降レバー40は右及び左マーカー位置R,Lで以下のような機能を発揮して、上昇及び下降位置U,Dでは機能しない。昇降レバー39が自動位置に操作されていると、補助昇降レバー40は上昇及び下降位置U,D、右及び左マーカー位置R,Lで以下のような機能を発揮する。
【0032】
図1及び図4に示すように、補助昇降レバー40を上昇位置Uに操作すると(補助昇降レバー40を上昇位置Uに操作してから中立位置Nに操作しても)、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が上限位置に上昇駆動される。補助昇降レバー40を下降位置Dに操作すると(補助昇降レバー40を下降位置Dに操作してから中立位置Nに操作しても)、植付クラッチが遮断状態に操作されて、油圧シリンダ4により苗植付装置5が下降駆動され、苗植付装置5(接地フロート9)が田面Gに接地すると、植付クラッチが遮断状態に操作された状態で、前項[2]に記載の昇降制御機能及びローリング制御機能が作動する。前述のように補助昇降レバー40を下降位置Dに操作してから中立位置Nに操作し再び下降位置Dに操作すると、植付クラッチが伝動状態に操作される。
【0033】
図1及び図4に示すように、補助昇降レバー40を右マーカー位置Rに操作すると(補助昇降レバー40を右マーカー位置Rに操作してから中立位置Nに操作しても)、植付クラッチが伝動状態に操作されて、右のマーカー(図示せず)が格納状態から田面Gに接地する作用状態に操作される状態となる(苗植付装置5が下降駆動されると、これに伴って右のマーカーが作用状態に操作される)。補助昇降レバー40を左マーカー位置Lに操作すると(補助昇降レバー40を左マーカー位置Lに操作してから中立位置Nに操作しても)、植付クラッチが伝動状態に操作されて、左のマーカー(図示せず)が格納状態から田面Gに接地する作用状態に操作される状態となる(苗植付装置5が下降駆動されると、これに伴って左のマーカーが作用状態に操作される)。
【0034】
[4]
図1及び図3に示すように、機体の前部にミッションケース17が備えられ、ミッションケース17に固定された支持フレーム18が前方に延出されて、支持フレーム18にエンジン19が支持されている。中立位置、前進側及び後進側に無段階に操作自在な静油圧式の無段変速装置24がミッションケース17に連結され、無段変速装置24を操作する変速レバー21が備えられており、運転者が変速レバー21により無段変速装置24を操作することによって、機体の走行速度を任意に設定する。
【0035】
図1,3,4に示すように、ミッションケース17の右及び左の横側面から右及び左の前車軸ケース(図示せず)が延出されて、右及び左の前車軸ケースに右及び左の前輪1が操向自在に支持されている。ミッションケース17の下部にピットマンアーム22が縦軸芯周りに揺動自在に支持され前向きに延出されて、右及び左の前輪1とピットマンアーム22とに亘ってタイロッド23が接続されている。ピットマンアーム22を揺動操作するパワーステアリングユニット25がミッションケース17の上部に備えられ、パワーステアリングユニット25から上方にステアリング軸26が延出されて、ステアリング軸26の上端に操縦ハンドル28が固定されている。
【0036】
これにより、図1,3,4に示すように、運転者が操縦ハンドル28によりパワーステアリングユニット25を介してピットマンアーム22を揺動操作して、右及び左の前輪1を操向操作する。この場合に、ピットマンアーム22(右及び左の前輪1)を直進位置A0から、機械的な限界である右及び左の第1操向限度A1に亘って揺動操作することができる。
【0037】
図3及び図4に示すように、ステアリング軸26に駆動ギヤ26aが固定されている。パワーステアリングユニット25の上方の固定部にモータ27(アクチュエータに相当)が固定され、モータ27の駆動軸27aが下方に延出されてパワーステアリングユニット25に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ27bがスプライン構造にてモータ27の駆動軸27aに一体回転及びスライド自在に外嵌されて、ピニオンギヤ27bをモータ27の駆動軸27aに沿ってスライド操作する操作レバー29(人為選択操作具に相当)が備えられており、操作レバー29の操作位置が制御装置30に入力されている。
【0038】
[5]
図1,2,4に示すように、右及び左の支持フレーム37が右及び左の支持フレーム33に固定されて右及び左の横外方に延出されており、右及び左の支持フレーム37に右及び左のカメラ38(検出手段に相当)が固定されている。右及び左のカメラ38の画像(検出信号)が、制御装置30(検出手段に相当)に入力されるように構成されている。
【0039】
図1,2,4に示すように、植付行程において、機体の右又は左の横外側に、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1(前回の植付行程で植え付けられた苗列L1)の上方付近に、右及び左のカメラ38が位置しており、右及び左のカメラ38が斜め前方下方に向けられている。これにより、右及び左の一方のカメラ38は、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1において、右及び左の一方の前輪1の直前から前方の所定の範囲を撮影するのであり、右及び左の他方のカメラ38は苗を撮影しない。この場合、右及び左の一方の前輪1の直前から前方の所定の範囲は、樹木の田面Gへの映り込みや朝日及び夕日の田面Gへの映り込みが少なく、右及び左の前輪1による波の影響が少ない。
【0040】
[6]
次に、操作レバー29によって設定される自動走行モード及び手動走行モードについて図5及び図6に基づいて説明する。
図3及び図4に示す状態は操作レバー29を手動走行位置B1に操作している状態で、手動走行モードが設定された状態であり、操作レバー29によりモータ27のピニオンギヤ27bが、上方にスライド操作されてステアリング軸26の駆動ギヤ26aから上方に離れている。手動走行モードにおいて、運転者は操縦ハンドル28により右及び左の前輪1を操向操作して、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1に沿うように機体を走行させればよい。この場合、モータ27のピニオンギヤ27bが上方にスライド操作されてステアリング軸26の駆動ギヤ26aから上方に離れているので、運転者が操縦ハンドル28により右及び左の前輪1を操向操作する際に、モータ27が右及び左の前輪1の操向操作の抵抗になることがない。
【0041】
一回の植付行程が終了して機体が畦際に達すると、運転者は昇降レバー39を上昇位置に操作するか、又は補助昇降レバー40を上昇位置Uに操作することにより(前項[3]参照)、植付クラッチを遮断状態に操作して(ステップS3)、苗植付装置5を上昇駆動するのであり、運転者は操縦ハンドル28により右及び左の前輪1を操向操作して、畦際での旋回を行う。
【0042】
この場合、畦際での旋回時(植付クラッチが遮断状態に操作されている間)は、右又は左のカメラ38及び制御装置30による田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1の検出は行われず(作動操作手段に相当)(ステップS2)(右又は左のカメラ38は撮影を行っているが、制御装置30により右及び左のカメラ38の画像(検出信号)が処理されない状態、又は右又は左のカメラ38の撮影を停止する状態)、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1が未検出の状態に設定される(ステップS1)。
【0043】
畦際での旋回が終了して機体が次の植付行程に入る直前に達すると、運転者は昇降レバー39を下降位置から植付位置に操作するか、又は補助昇降レバー40を下降位置Dに2回操作することにより(前項[3]参照)、苗植付装置5を田面Gに下降駆動して、植付クラッチを伝動状態に操作する(ステップS3)。これにより、右及び左のカメラ38の画像(検出信号)の制御装置30による初回の処理によって(ステップS4,S5,S6)、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1を撮影する右(左)のカメラ38を判別する。
【0044】
従って、図4に示すように、例えば右のカメラ38は苗を撮影しないので、右のカメラ38の画像(検出信号)は処理されずに無視され、左のカメラ38が田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1を撮影していると、左のカメラ38の画像(検出信号)が制御装置30により処理される(作動操作手段に相当)(ステップS7)。田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1が検出済の状態に設定されて(ステップS8)、ステップS3,S4からステップS9に移行する。
【0045】
前述のように畦際での旋回が終了して機体が次の植付行程に入る直前に達した状態において、苗植付装置5が田面Gに下降駆動されて、右(左)のカメラ38が田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1に向いて適切に撮影できる状態(いわゆる、条合わせが終了した状態)である点、機体の走行速度が低速であり、右及び左の前輪1による波があまり発生していない状態である点により、右及び左のカメラ38の画像(検出信号)の制御装置30による初回の処理によって(ステップS4,S5,S6)、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1を撮影する右(左)のカメラ38が適切に判別される。
【0046】
畦際での旋回が終了して機体が次の植付行程に入った場合、操作レバー29は手動走行位置B1に操作された状態であり、手動走行モードが設定された状態であるので、図4に示すように、例えば右のカメラ38の画像(検出信号)は処理されずに無視され、左のカメラ38の画像(検出信号)が制御装置30により処理されて、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1が検出されているが(ステップS9)、運転者は操縦ハンドル28により右及び左の前輪1を操向操作して、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1に沿うように機体を走行させている。
【0047】
この後に苗のせ台10に苗を補給する必要が生じた場合、操作レバー29を自動走行位置B2に操作する(ステップS10)。これにより、自動走行モードが設定され、図3に示すように、操作レバー29によりモータ27のピニオンギヤ27bが、下方にスライド操作されてステアリング軸26の駆動ギヤ26aに咬合する。右(左)のカメラ38の画像(検出信号)が制御装置30により処理されて、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1に沿って機体が走行するように、制御装置30によりモータ27を介して右及び左の前輪1が自動的に操向操作される(自動走行手段に相当)(ステップS13)。この場合に、ピットマンアーム22の位置を検出する位置センサー(図示せず)が備えられており、図4に示すようにピットマンアーム22(右及び左の前輪1)が直進位置A0から、右及び左の第2操向限度A2(右及び左の第1操向限度A1よりも直進位置A0側)の範囲で自動的に操向操作される。
【0048】
右(左)のカメラ38の画像(検出信号)が制御装置30により処理されている状態において、現時点での右(左)のカメラ38の画像(検出信号)と、現時点から少し前の右(左)のカメラ38の画像(検出信号)とが大きく異なっている場合(現時点での田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1と、現時点から少し前の田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1とが大きく離れている場合)(ステップS12)、異常と判断される。この状態では、ピットマンアーム22(右及び左の前輪1)が直進位置A0に操作されて保持され(ステップS14)、警報(警報ブザーの作動や、警報ランプの点滅)が行われる(ステップS15)。
【0049】
操作レバー29を自動走行位置B2に操作した場合(ステップS10)、ピットマンアーム22(右及び左の前輪1)が右及び左の第2操向限度A2の外側に位置していると(ステップS11)、右及び左の前輪1が大きく操向操作されている状態から、制御装置30によりモータ27を介して右及び左の前輪1が自動的に操向操作されることになる。この状態では、制御装置30によるモータ27を介しての右及び左の前輪1の自動的な操向操作は行われずに、警報(警報ブザーの作動や、警報ランプの点滅)が行われる(ステップS15)。
【0050】
以上のように操作レバー29を自動走行位置B2に操作した状態(ステップS3,S4,S9〜S15)において、操作レバー29を手動走行位置B1に操作すると、ステップS3,S4,S9,S10に移行して、運転者が操縦ハンドル28により右及び左の前輪1を操向操作して、田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1に沿うように機体を走行させる状態となる(右又は左のカメラ38及び制御装置30による田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1の検出は行われている)。
【0051】
次に、運転者が昇降レバー39を上昇位置に操作するか、又は補助昇降レバー40を上昇位置Uに操作することにより(前項[3]参照)、植付クラッチが遮断状態に操作されて(ステップS3)、苗植付装置5が上昇駆動され、ステップS1,S2,S3に移行して、右又は左のカメラ38及び制御装置30による田面Gに植え付けられた機体の隣の苗列L1の検出は行われない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置の正面図
【図3】エンジン及びミッションケース、パワーステアリングユニット、操作レバーの付近の側面図
【図4】パワーステアリングユニット、苗植付装置、右及び左のカメラ、田面に植え付けられた機体の隣の苗列の配置を示す平面図
【図5】自動走行モード及び手動走行モードの制御の前半の流れを示す図
【図6】自動走行モード及び手動走行モードの制御の後半の流れを示す図
【符号の説明】
【0053】
1 前輪
5 苗植付装置
27 アクチュエータ
28 操縦ハンドル
29 人為選択操作具
30,38 検出手段
L1 田面に植え付けられた機体の隣の苗列
G 田面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を人為的に操向操作可能な操縦ハンドルと、前輪を操向操作可能なアクチュエータと、田面を撮影することにより田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段の検出に基づいて機体が田面に植え付けられた機体の隣の苗列に沿って走行するように、前記アクチュエータにより前輪を自動的に操向操作する自動走行手段を備えて、
前記自動走行手段が作動する自動走行モードと、前記操縦ハンドルにより前輪を人為的に操向操作する手動走行モードとを、選択して設定可能な人為選択操作具とを備えると共に、
機体に備えられた苗植付装置に動力を伝達する植付クラッチが遮断状態に操作されると前記検出手段を停止させ、前記植付クラッチが伝動状態に操作されると検出手段を作動させる作動操作手段を備えてある乗用型田植機。
【請求項2】
機体の後部に苗植付装置を備えて、前記苗植付装置の右及び左側部に右及び左の検出手段を備えてある請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記右及び左の検出手段のうち、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出した検出手段の検出信号に基づいて、前記自動走行手段が作動するように構成し、
前記右及び左の検出手段のうち、田面に植え付けられた機体の隣の苗列を検出しない検出手段の検出信号を無視するように構成してある請求項2に記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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