説明

乗用型田植機

【課題】 走行機体の後部に苗植付け装置を昇降自在に連結するとともに、走行機体の後部に運転座席を配備した乗用型田植機において、苗のせ台への予備苗の移し替えを正確かつ手際よく行うことができるようにする。
【解決手段】 運転座席9と苗植付け装置6との間に位置させて苗補給用の補助ステップ16を走行機体3に固定配備するとともに、補助ステップ16を、予備苗Fを安定載置する形状に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を昇降自在に連結するとともに、走行機体の後部に運転座席を配備した乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機においては、畦からの苗補給の頻度を少なくして作業能率を高めるために、予備苗をできるだけ多量に積載できることが望ましく、例えば、特許文献1に示されているように、運転座席と苗植付け装置の間に、横長の補助苗のせ台を配備したものが提案されている。
【特許文献1】特開平10−28423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成によると、横長の補助苗のせ台に多数の予備苗を載置することができるのであるが、予備苗を苗植え装置の苗のせ台に補給する際、運転作業者は運転位置から補助苗のせ台の予備苗を更に後方の苗のせ台に移載することになり、苗のせ台から前方に離れた位置からの苗補給作業となってしまい、苗のせ台への予備苗の位置決めおよび移し替えに手間取ることがあった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、苗のせ台への予備苗の移し替えを正確かつ手際よく行うことができるようにすること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、走行機体の後部に苗植付け装置を昇降自在に連結するとともに、前記走行機体の後部に運転座席を配備した乗用型田植機において、
前記運転座席と苗植付け装置との間に位置させて苗補給用の補助ステップを走行機体に固定配備するとともに、前記補助ステップを、予備苗を安定載置する形状に形成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、苗植付け装置の苗のせ台への苗補給に際しては、運転作業者が補助ステップに乗ることにより、補助ステップに載置収容しておいた予備苗を取り上げて苗のせ台の所定位置に送り込むことになる。この場合、苗のせ台は運転作業者の直ぐ前に在るので、予備苗の位置決めや苗のせ台上端部への予備苗の滑り込み補給を速やかに行うことができる。
従って、本発明によると、苗のせ台への予備苗の移し替えを正確かつ手際よく行うことができる。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記補助ステップを全体に平坦に形成するとともに、その外周辺に、載置した予備苗の脱落防止用の隆起部を設けてあるものである。
【0008】
上記構成によると、水田における耕盤の凹凸等によって機体が傾斜しても、補助ステップに載置収容した予備苗が補助ステップから脱落することがなく、特に予備苗を樹脂製のすくい板ですくい取って補助ステップに載置する場合、予備苗が滑り動きやすいものとなるが、隆起部との接当によって確実に脱落を防止することができる。
【0009】
第3の発明は、上記第1の発明において、
前記補助ステップに、巻回した予備苗を受け入れ載置する湾曲凹部を形成してあるものである。
【0010】
上記構成によると、巻回した予備苗を湾曲凹部で安定よく収容することができるとともに、展開した予備苗より数多くの予備苗を収容することが容易となる。
【0011】
第4の発明は、上第1〜3のうちのいずれか一つの発明において、
前記走行機体の前部横側に予備苗収容部を設けるとともに、予備苗収容部の予備苗を前記補助ステップの近傍にまで載置搬送する予備苗搬送機構を備えてあるものである。
【0012】
上記構成によると、運転作業者は、機体前部にまで移動して予備苗収容部に収容した予備苗を取り出して後方に持ち運ばなくても、補助ステップに居ながら機体前部の予備苗を取り扱うことができるので、多量の予備苗を収容することができるとともに、苗補給作業を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、本発明に係る乗用型田植機の側面が、図2にその平面がそれぞれ示されている。この乗用型田植機は、前車輪1と後車輪2を備えた4輪駆動式の走行機体3の後部に、油圧シリンダ4で駆動される平行四連リンク構造のリンク機構5を介して苗植付け装置6が昇降自在に連結され、走行機体3の前部左右に予備苗Fを3段に積載収容した予備苗のせ台7が立設された構造を備えている。
【0014】
走行機体3の前部には、図示されていないエンジンを収容した原動部8が設けられるとともに、機体後部に運転座席9が設けられ、運転座席9の足元から原動部8に亘って主ステップ10が配備されている。
【0015】
苗植付け装置6は6条植え仕様に構成されており、6条分のマット状の苗を並列載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台12、苗のせ台12の下端から1株分づつ苗を切り出して田面に押し込む6組の回転式の植付け機構13、田面の植付け箇所を均らす整地フロート14、等を備えている。
【0016】
運転座席9と苗のせ台12との間に位置して、苗補給用の補助ステップ16が走行機体3の後部上方に固定配備されており、補助ステップ16の左右端部は主ステップ10の左右後端部に接続されて後車輪2の上方を覆うフェンダとして機能するよう構成されている。
【0017】
補助ステップ16は全体的に平坦面に形成されるとともに、3枚の予備苗Fを横長姿勢で並列載置できる大きさに形成されている。補助ステップ16の外周辺には土手状の隆起部16aが設けられており、載置した予備苗Fの脱落が防止されるようになっている。
【0018】
本発明の乗用型田植機は以上のように構成されており、苗植付け装置6で苗が消費されると、走行機体3を停止した後、運転作業者が補助ステップ16に乗り上がって、載置収容した予備苗Fを取り上げて苗のせ台12の上端部における所定位置に差し入れることになる。
【0019】
補助ステップ16に載置収容する予備苗Fは、育苗箱(図示せず)からすくい板(図示せず)ですくい出して、すくい板ごと補助ステップ16に載置してもよく、あるいは、育苗箱に入れたままで補助ステップ16に載置し、苗補給時に育苗箱からすくい板ですくい出すようにしてもよい。
【0020】
〔他の実施例〕
(1)図3および図4に示すように、前記補助ステップ16の左右に湾曲凹部17を形成し、この湾曲凹部17に巻回した複数の予備苗Fを受け入れ載置するよう構成して実施することもできる。
【0021】
(2)図5に示すように、湾曲凹部17を備えた補助ステップ16の左右端に、前記湾曲凹部17と同様な湾曲凹部17aを備えた苗収容台18を連設するとともに、この苗収容台18を前後向き支点a周りに回動可能に構成し、苗収容台18を横外方に回動展開することで一層多量の予備苗Fを収容できるとともに、非使用時には図中の仮想線で示すように、補助ステップ16の上に回動格納しておくことが可能となる。
【0022】
(3)図6および図7に示すように、補助ステップ16の上方に、横架固定したレール21に沿って左右スライド移動可能な補助座席22を配備し、運転作業者が補助座席22に座って左右に移動することで、苗のせ台12への予備苗Fの補給作業を楽に行えるようにして実施することもできる。なお、前記リンク機構5の上部に足乗せ23を装備しておくと、補助座席22に楽な姿勢で着座することができる。
【0023】
(4)図8に示すように、走行機体3の左右前部に、巻回した複数の予備苗Fを積載収容することができ、かつ、積載した予備苗Fを後方に搬送可能な電動式のローラコンベア25を備えた予備苗収容部26を設置するとともに、この予備苗収容部26の後端と前記補助ステップ16の左右端との間に電動式のベルトコンベアからなる予備苗搬送機構27を配備し、予備苗収容部26に積載した予備苗Fを補助ステップ16の左右端にまで搬送できるように構成してもよい。これにより、補助ステップ16に居る運転作業者は手元スイッチ操作などによって予備苗収容部26の予備苗Fを補助ステップ16まで搬送して、苗のせ台12に移し替えることができて便利なものとなる。
【0024】
(5)図9に示すように、前記苗のせ台12を2枚の苗を縦列載置可能な長さに構成するとともに、その長手方向中間で分割して、下半部12aを角度固定して支持し、上半部12bを中間支点p周りに上下揺動可能に構成して、この上半部12bを油圧式あるいは電動式のシリンダ28を介して揺動させるように構成してもよい。これによると、2枚の苗を縦列載置した状態では上半部12bの傾斜角度を緩くして、上半部12bに載置された苗の重量が下半部12aに載置された苗に作用し難くすることで、下半部12aに載置された苗が変形しないようにし、苗の消費が進むと上半部12bの傾斜角度をきつくして上半部12bに載置した苗が円滑に下方に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】別実施例の補助ステップを備えた乗用型田植機の全体平面図
【図4】図3におけるIV-IV断面図
【図5】変形例の補助ステップを示す要部の縦断正面図
【図6】更に別の実施例を示す乗用型田植機の全体側面図
【図7】図6に示す乗用型田植機の全体平面図
【図8】その他の実施例を示す乗用型田植機の全体側面図
【図9】その他の実施例を示す乗用型田植機の全体側面図
【符号の説明】
【0026】
3 走行機体
6 苗植付け装置
9 運転座席
16 補助ステップ
17 湾曲凹部
26 予備苗収容部
27 予備苗搬送機構
F 予備苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に苗植付け装置を昇降自在に連結するとともに、前記走行機体の後部に運転座席を配備した乗用型田植機において、
前記運転座席と苗植付け装置との間に位置させて苗補給用の補助ステップを走行機体に固定配備するとともに、前記補助ステップを、予備苗を安定載置する形状に形成してあることを特徴とする乗用型田植機。
【請求項2】
前記補助ステップを全体に平坦に形成するとともに、その外周辺に、載置した予備苗の脱落防止用の隆起部を設けてある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記補助ステップに、巻回した予備苗を受け入れ載置する湾曲凹部を形成してある請求項1記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記走行機体の前部横側に予備苗収容部を設けるとともに、予備苗収容部の予備苗を前記補助ステップの近傍にまで載置搬送する予備苗搬送機構を備えてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82040(P2009−82040A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254406(P2007−254406)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】