説明

乗用型農作業機

【課題】一輪の駆動用車輪と座席とを有する簡易な構造の乗用型農作業機において、長時間作業時の疲労感の緩和を図ることができる乗用型農作業機を提供する。
【解決手段】乗用型水田溝切り機は、エンジン2に駆動される1輪の駆動用車輪4と、水田に溝を切る溝切り機40と、使用者が大腿部を含む左右の足をそれぞれ左右に出して跨った状態に座る座席20とを備える。座席20の左右側方には、補助部材60が設けられている。補助部材60は、座面20bより下側で、座席20に使用者が跨った際の使用者の左右の大腿部のそれぞれの内側に接触する位置に、それぞれ当該大腿部の内側に接触して当該大腿部を支持する補助座面62を有する。左右の補助座面62は、それぞれ座席20に跨った状態の足の大腿部の内側の傾斜に対応して外側に向かうにつれて下方に下がるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田溝切り機、水田中耕除草機あるいは水田施肥機等の乗用型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型農作業機として、一輪の乗用型水田溝切り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この乗用型水田溝切り機においては、前後方向に延びる伝動軸用パイプ(本体フレーム)の後端部および前端部にそれぞれ、エンジンおよび減速機が取り付けられている。エンジンの回転動力は、伝動軸用パイプ内の伝動軸を介して減速機へ伝達される。減速機の出力軸には1つの駆動用車輪が取り付けられている。伝動軸用パイプには、ステーを介して座席(サドル)および溝切り刃(溝切板、溝切体、バイド板)が取り付けられている。座席は、駆動用車輪の中心の後方斜め上方に設けられ、溝切り刃は、座席の後方斜め下方に設けられている。
したがって、乗用型水田溝切り機は、地面(水田)に対して、前側の駆動用車輪と後ろ側の溝切り刃とで支持された状態となっている。
【0003】
そして、この乗用型水田溝切り機を用いて、水田等の圃場において溝切りを行うには、作業者は座席に跨って乗り、エンジンの回転駆動力により駆動用車輪を回転させて、この駆動用車輪により溝切り機を前進させる。そうすると、作業者の体重が駆動用車輪と溝切り刃とにより支持されるので、溝切り刃が加圧され、溝切り刃が所定深さに保持されて溝切り機が前進する。
【0004】
【特許文献1】特開2006−57361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような乗用型水田溝切り機においては、使用者が左右の足を水田に付けて乗用型水田溝切り機のバランスを維持しながら使用者の臀部で使用者の体重を乗用型水田溝切り機にかけて、溝切り刃を加圧するようにしている。
したがって、使用者の体重は、一部が足先側で支持されるが、多くは臀部で支持されることになる。また、乗用型水田溝切り機においては、跨って乗る必要があることから、比較的に平面的な座面で、かつ、左右幅が狭い座面となっているとともに、溝切り刃への体重のかけ方を調整するために、前後に乗車位置を移動できるように、前後方向に沿った外面に殆ど変化がなく外面が端部を除いて前後に直線状の形状(平面状の形状)となっている。すなわち、座席20の全体は、長方形に近い形状となっている。
したがって、座面が臀部を平面的に支えた状態となっていることから、座席に座った状態の臀部に体重が集中することで臀部に負担がかかり、長時間の作業において使用者に疲労感を生む原因になっていた。
【0006】
例えば、乗用型水田溝切り機の座席は、自動二輪車のシートに比べると簡素な形状となっており、臀部への負担が大きくなる虞がある。
さらに、乗用型水田溝切り機においては、足を乗せる部材がないので、乗車時に自転車のように足をペダルに乗せたり、自動二輪車のように足をステップバーに乗せたりできないので、これら自転車や自動二輪車に比較して臀部への負担が大きくなる虞があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、使用者の乗車時に臀部への体重の集中を抑制して臀部への負担を緩和し、長時間の作業における疲労感の軽減を図ることができる乗用型農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の乗用型農作業機は、原動機(2)に駆動される1輪の駆動用車輪(4)と、地面側での作業に用いられる作業部(40)と、使用者が大腿部を含む左右の足をそれぞれ左右に出して跨った状態に座る座席(20)とを備えた乗用型農作業機において、前記座席(20)の左右側方には、それぞれ、当該座席(20)の座面(20b)より下側で、当該座席(20)に使用者が跨った際の使用者の左右の大腿部のそれぞれの内側に接触する位置に、それぞれ当該大腿部の内側に接触して当該大腿部を支持する補助座面(62)を有する補助部材(60)が設けられ、前記左右の補助座面(62)は、それぞれ前記座席(20)に跨った状態の足の大腿部の内側の傾斜に対応して外側に向かうにつれて下方に下がるように傾斜していることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明においては、座席(20)に跨った状態で座席(20)から左右斜め下方に延出する使用者の大腿部の内側に補助座面(62)が副えられた状態となるので、従来、臀部に集中していた体重を大腿部にも分散して支持させることが可能となり、臀部への負担を緩和し、長時間の作業における疲労感を軽減することができる。
【0010】
また、大腿部の内側に接触して大腿部を支持する補助座面(62)が、座席(20)の座面(20b)より下側で斜め方向となった大腿部の内側に沿った状態で斜めに配置されるので、体重の一部を臀部だけではなく大腿部でも支持する構造とした場合に大腿部に余計な負担がかかるのを防止することができ、かつ、足先を水田に着かせるような状態となる際に補助部材(60)が邪魔になることがなく、足先で体重の一部を支持可能となるとともに、乗用型農作業機のバランスを取ることができる。
以上のことから、使用者の体重を臀部だけではなく、臀部、大腿部、足先でバランス良く支持することが可能となり、長時間の乗車時に使用者の負担を大幅に軽減することができる。
【0011】
請求項2に記載の乗用型農作業機は、請求項1に記載の発明において、前記補助部材(60)が前記座席(20)に対する前後位置を変更自在に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、補助部材(60)の座席(20)に対する前後位置を調整できるので、例えば、使用者の体格などに基いて、補助部材(60)の前後位置を使用者が最も快適に乗車可能な状態とすることができる。
【0013】
請求項3に記載の乗用形農作業機は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記補助部材(60)が前記補助座面(62)の傾斜角度を変更自在に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明におていは、補助部材(60)の補助座面(62)の傾斜角度を調整できるので、例えば、使用者の体格などに基いて、補助座面(62)の角度を使用者が最も快適に乗車可能な状態とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の乗用型農作業機によれば、足を乗せるステップやステップバーの無い状態で、座席に跨った状態に乗ることにより、使用者の体重の多くを臀部で受けてしまう状態となってしまうのを、補助部材の補助座面で大腿部を支持することで防止し、長時間の作業時の臀部への負担を軽減し、長時間に渡る作業時でも快適に作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す図であって、図1は側面図であり、図2は要部としての補助部材を供えた座席を示す背面図および底面図であり、図3は使用状態を示すために使用者のモデルを透視可能に付加した側面図であり、図4は要部としての補助部材を供えた座席を示す使用者のモデルを透視可能に付加した背面図である。なお、図4における補助部材は、図2における補助部材と座席への取り付け構造が異なるものとなっており、図2の補助部材の座席への取付構造の変形例となっている。
【0017】
この乗用型水田溝切り機(乗用型農作業機)は、後方側が少し高くなって斜めに前後方向に延びる伝動軸用パイプ1を備えている。この伝動軸用パイプ1の後端部および前端部にはそれぞれ、エンジン(原動機)2および減速機3が取り付けられている。エンジン2の回転動力は、伝動軸用パイプ1内の伝動軸(図示せず)を介して減速機3へ伝達される。減速機3の出力軸(図示せず、駆動軸:車軸)は、減速機3のケースから進行方向右側(後側から見て右側)に水平に突出しており、この出力軸には、駆動用車輪4が1つ取り付けられている。この駆動用車輪4は、減速機3を介して減速されて伝達されるエンジン2からの回転動力により回転駆動される。
【0018】
減速機3の上部には、上側に向かって少し斜め後方に延びる前パイプ11が取り付けられている。また、伝動軸用パイプ1の後端部近傍には、上側に向かって略45度の角度で斜め前方におよび略垂直に延びる中パイプ14および後パイプ15が取り付けられている。すなわち、伝動軸用パイプ1の後端部近傍の上側に中パイプ14および後パイプ15の下端部が溶接により固定されている。中パイプ14の上端部は前パイプ11の上端部近傍に溶接により固定されている。
【0019】
また、伝動軸用パイプ1の後端部近傍には、下側に向かって斜め後方に延びる下パイプ16が取り付けられている。すなわち、伝動軸用パイプ1の後端部近傍の下側に下パイプ16の上端部が溶接により固定されている。これらの伝動軸用パイプ1、前パイプ11、中パイプ14、後パイプ15および下パイプ16によりパイプからなる本体フレーム(本体部)10が構成されている。この本体フレーム10は、前後方向に沿って上下に垂直に延びるフレーム構造となっている。なお、伝動軸用パイプ1と下パイプ16との下側には、補強板17が溶接により固定されている。
【0020】
本体フレーム10の上側には、座席(サドル:シート)20が次のように取り付けられている。すなわち、本体フレーム10の前パイプ11および後パイプ15の上端部には、板状の四角枠21が固定され、一方座席20の下部には、前側の左右2箇所および後側の中央部1箇所に下方に延びる取付板22が固定されており、これらの取付板22がそれぞれ、四角枠21の前側の左右および後側の中央部にボルトにより固定されている。取付板22には、上下に間隔をおいて複数個の取付孔24が形成されており、ボルトが挿入される取付孔24の位置を選択することにより座席20の取付高さを変えることができるようになっている。
【0021】
四角枠21は、進行方向左側(後側から見て左側)において水平に前後方向に直線状に延びる部分が本体フレーム10の前パイプ11および後パイプ15の上端部に固定されており、したがって四角枠21は前後方向に沿って上下に延びる本体フレーム10より進行方向右側に水平に突き出ており、これにより座席20の左右方向中心部は、駆動用車輪4の左右方向中心部から少し右側に位置している。この座席20は、駆動用車輪4の後方斜め上方に位置している。
【0022】
座席20には、この座席20の前方上方の位置に、左右に水平に延びるパイプからなるハンドル30が次のように取り付けられている。すなわち、座席20の下部中央部には、この座席20の下側を前後方向に延びさらに座席20の前側を上側に向かって少し斜め前方に延びるパイプからなるハンドル支持部材31が固定されており、このハンドル支持部材31の上端部近傍に支持金具32が固定され、この支持金具32にハンドル30が固定されている。
この例において座席20には、補助部材60が取り付けられている。これら座席20と補助部材60については、後に詳細に説明する。
【0023】
ハンドル30には、スロットルレバー(図示せず)が取り付けられており、このスロットルレバーによりエンジン2のスロットル開度、すなわちエンジン2の出力を調整する。また、ハンドル30には、ストップスイッチ(図示せず)が取り付けられており、このストップスイッチによりエンジン2の点火プラグへの電流の流れをショートさせ、エンジン2の駆動を停止させる。
【0024】
また、座席20には、持ち上げて移動するための把手部材34が取り付けられている。この把手部材34は、パイプからなり、扁平なU字状に形成されており、両端部を両手で把持することによりこの乗用型水田溝切り機を持ち上げて運搬することができるようになっている。
【0025】
前記駆動用車輪4は、複数個のラグ51が固定されている。なお、駆動用車輪4は、ラグ51が固定される外輪52と、当該駆動用車輪4の中心部で減速機3の出力軸が固定される円筒状のハブと、外輪52とハブとを連結する複数個のスポーク53とを備えている。
【0026】
また、座席20の後方斜め下方には、溝切り刃(作業部)40が設けられている。すなわち、下側に向かって斜め後方に延びる下パイプ16の下端部には、板状の支持ステー41が進行方向右側に水平に突き出るように固定されており、この支持ステー41の先端部に溝切り刃40の前端部上部に設けられた取付部材42が取り付けられている。この溝切り刃40は、その前端側が後端側より高くなるように傾斜して取り付けられている。溝切り刃40の高さおよび傾斜角度は、溝切り刃40の支持ステー41への取り付け位置を変えることにより、変えることができるようになっている。溝切り刃40の左右方向中心部は、座席20の左右方向中心部と一致している。
【0027】
そして、図1および図2に示すように、この乗用型水田溝切り機の座席20には、上述のように補助部材60が取り付けられている。ここで、座席20は、平面視して、乗用型水田溝切り機の進行方向(前後方向)沿って長い略矩形状に形成されている。すなわち、座席20は、左右幅に対して前後方向が長い形状とされている。
そして、座席20の底部には、例えば、樹脂板もしくは金属板からなる底板20aが設けられている。そして、座席20は、底板20a上で座席20の座面20bとなる上面を構成するシート状部材20cの内部にクッション材が充填されている。また、座席20の上面の左右側縁部が外側に向かうにつれて湾曲して下る形状となっている。
【0028】
そして、座席20の左右には、それぞれ補助部材60,60が設けられている。補助部材60,60も座席20と同様に樹脂板もしくは金属板からなる底板と、内部にクッション材が充填されたシート状部材61を備え、座席20を小さくした形状となっている。
すなわち、補助部材60,60は、平面視して左右幅より前後長さの方が長い略矩形状で、全体としては略直方体状となっている。そして、補助部材60,60の上面は、座席20と同様に上面の左右側縁部が外側に向かうにつれて湾曲して下る形状となっている。但し、補助部材60,60は、その上面が水平ではなく、左右方向に沿って傾斜し、右の補助部材60は、右に向かうにつれて下る方向に傾斜して配置され、左の補助部材60は、左に向かうにつれて下る方向に傾斜して配置されている。
【0029】
したがって、補助部材60の上面も傾斜しており、この傾斜した上面が後述のように乗車した使用者の左右の大腿部の内側に接触して大腿部を支持する補助座面62となる。
そして、左右の補助部材60,60は、左右に長い矩形板状の取付板63により座席20に取り付けられるようになっている。
【0030】
取付板63は、中央部が座席20の底板20aに取り付けられる座席取付部64とされ、座席取付部64より左右外側となる左右側縁部がそれぞれ、外側に向かうにつれて下側に向かう補助部材取付部65,65となっている。
そして、取付板63の左右側縁部の補助部材取付部65,65には、その上面側に上述のように傾斜した状態の補助部材60,60の底板が固定的に取り付けられている。なお、補助部材60,60の底板の大きさと、補助部材取付部65,65の大きさはほぼ等しく、補助部材取付部65,65の上面の略全面に補助部材60,60の底板が重なった状態となっている。
【0031】
また、取付板63の中央部の座席取付部64は、その前後長さが座席20の前後長さの半分より短く、左右幅が座席20と略同じ長さとなっている。そして、座席取付部64には、前後方向に長い複数(4つ)の長穴66,…が上下左右にほぼ均等に配列されている。
また、座席20の底板20aには、座席取付部64の取り付け位置に対応するとともに、取り付けられる座席取付部64の4つの長穴の位置にそれぞれビス用のねじ孔(雌ねじ)が形成されている。
【0032】
そして、前記座席取付部64の長穴を通して当該ねじ孔にビス67,…をねじ止めすることにより、座席20の底板20aに取付板63の座席取付部64がビス67,…で締結される。
この際に、座席取付部64のビス67,…を通すビス孔となる部分が長穴66,…となっているので、この長穴66の範囲で、座席20に対する取付板63の前後位置を変更することが可能となっている。
【0033】
また、座席取付部64を座席20に取り付け後もビス67,…を緩めた後に取付板63を前後にずらし、再びビス67,…を締め付けることで、いつでも、補助部材60の前後位置を変更自在となっている。
なお、座席20の底板には、上述のハンドル支持部材31および把手部材34が取り付けられているが、取付板63の位置において、例えば、座席20の底板と上述のハンドル支持部材31および把手部材34との間に隙間を設け、これらハンドル支持部材31および把手部材34に干渉することなく、取付板63の位置を変更自在となっている。
【0034】
また、取付板63においては、座席20の底板20aに取り付けられた座席取付部64と、その左右それぞれの補助部材60が取り付けられた補助部材取付部65,65との間が、座席取付部64に対して補助部材取付部65,65を斜めとするための屈曲部68,68となっている。これによって補助部材取付部65,65に取り付けられた左右の補助部材60,60が斜めとなっている。
【0035】
そして、取付板63の屈曲部68,68は、使用者が座席20に座って大腿部を補助部材60,60の補助座面62,62に載せても塑性変形しない強度を有するものとなっている。なお、取付板63は、座席20に座った使用者が補助部材60,60に大腿部を載せた際に僅かに弾性変形するものとしてもよい。
【0036】
また、取付板63の屈曲部68,68は、外部から上述の大腿部を補助部材60,60に載せたときの荷重より大きな力を加えた場合に塑性変形するようになっており、例えば、使用者が一方の手で座席20を押えた状態で補助部材60,60を下側に押し付けたり、上側に引っ張ったりすることで、取付板63を屈曲部68,68で塑性変形させて、補助部材60,60の上面となる補助座面62,62の傾斜角度を変更自在となっている。
【0037】
なお、取付板63は、屈曲部68,68で予め折り曲げられて補助部材60,60を傾斜させた状態となっているとともに、2つの屈曲部68,68同士の間の座席取付部64には、座席20の底板20aが取り付けられ、2つの屈曲部68,68よりそれぞれ外側の補助部材取付部65,65には補助部材60,60の底板が固定的に取り付けられていることから、上述のように補助部材60,60に力を掛けて取付板63を曲げようとした場合に、屈曲部68,68に応力が集中して、屈曲部68,68の部分において、座席取付部64に対して補助部材取付部65,65の角度が変わるように取付板63が曲がるようになっている。
【0038】
そして、これにより、補助部材60,60の補助座面62,62の角度が変更自在となっている。
そして、補助部材60,60の前後位置が、図3および図4に示すように、座席20に跨って座った使用者の大腿部の内側に補助座面62,62が当たる位置に調整されているとともに、補助部材60,60の補助座面62,62の傾斜角度が、座席20に跨って座った使用者の大腿部の内側となる部分の傾斜角度に沿うように調整される。
【0039】
なお、図4の座席20および補助部材60,60においては、座席20への補助部材60,0の取り付け構造が異なり、例えば、座席20の下部の左右側縁部にそれぞれ前後方向(乗用型水田溝切り機の進行方向)に沿った円筒状の固定パイプを固定し、補助部材60,60側に当該固定パイプが挿入された状態で固定パイプの外周に沿って回転可能な回転パイプを設け、座席20側の固定パイプに対して補助部材60,60側の回転パイプを前後動自在および回転自在とする。また、例えば、回転パイプに外側から内側に貫通するねじ孔を設け、当該ねじ孔にねじを挿入して締め付けることで、固定パイプに対する回転パイプの前後動および回転を止めて、固定パイプに回転パイプを固定可能とする。
【0040】
これにより、座席20に対して補助部材60,60の前後位置を調整可能となるとともに、補助座面62,62の角度が調整可能となる。
以上のような乗用型水田溝切り機によれば、乗車した使用者の体重を臀部を介して座席20で支持するだけではなく、大腿部を介して補助座面62,62を有する左右の補助部材60,60で支持することができる。
これにより、使用者の体重を座席20と補助部材60,60とで分散して支持できるので、長時間乗車した際の臀部の負担を軽減することができ、長時間乗車した使用者の疲労感を緩和することができる。
【0041】
また、補助座面62,62が座席に跨って使用者の大腿部の内側の面に略沿った状態となっているので、大腿部で使用者の体重の一部を支持する構造であっても、大腿部の負担が大きくなってしまうのを防止することができる。
また、補助座面62,62が、乗車した使用者の大腿部の内側の面に沿っているので、足先で、水田側(地面側)に対して使用者の体重を支えることも可能であり、臀部、大腿部、足先でバランスよく体重を支持し、長時間の作業時でも臀部の負担による疲労感の増加を防止することができる。
【0042】
また、補助部材60,60の前後位置と、補助座面62,62の角度とを変更できることで、体型等によって十分に臀部の負担を大腿部に分散できない状態となるのを防止することができる。
なお、乗用型農作業機における補助部材60,60の取り付け方法は、上述のものに限られるものではなく、本体フレーム10に座席を取り付けるための四角枠21に補助部材60,60を取り付けても良いし、本体フレーム10に他の部材を介して補助部材60,60を取り付けてもよい。
また、補助部材60,60の前後長さを座席20の前後長さとほぼ同じとしてもよい。
【0043】
また、上述の実施の形態では、本発明を乗用型水田溝切り機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、乗用型水田中耕除草機あるいは乗用型水田施肥機等にも適用することができる。この場合、作業部としての溝切り刃が除草部あるいは施肥部等に代えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す図であって、側面図である。
【図2】前記乗用型水田溝切り機の座席および補助部材を示す(a)背面図(b)底面図である。
【図3】前記乗用型水田溝切り機に乗車する使用者のモデルを透視可能に付加した当該乗用形水田溝切り機の側面図である。
【図4】前記モデルを透視可能に付加した前記座席および補助部材を示す背面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 エンジン(原動機)
4 駆動用車輪
20 座席
20b 座面
40 溝切り機(作業部)
60 補助部材
62 補助座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(2)に駆動される1輪の駆動用車輪(4)と、地面側での作業に用いられる作業部(40)と、使用者が大腿部を含む左右の足をそれぞれ左右に出して跨った状態に座る座席(20)とを備えた乗用型農作業機において、
前記座席(20)の左右側方には、それぞれ、当該座席(20)の座面(20b)より下側で、当該座席(20)に使用者が跨った際の使用者の左右の大腿部のそれぞれの内側に接触する位置に、それぞれ当該大腿部の内側に接触して当該大腿部を支持する補助座面(62)を有する補助部材(60)が設けられ、
前記左右の補助座面(62)は、それぞれ前記座席(20)に跨った状態の足の大腿部の内側の傾斜に対応して外側に向かうにつれて下方に下がるように傾斜していることを特徴とする乗用型農作業機。
【請求項2】
前記補助部材(60)が前記座席(20)に対する前後位置を変更自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗用型農作業機。
【請求項3】
前記補助部材(60)が前記補助座面(62)の傾斜角度を変更自在に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用形農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−51204(P2010−51204A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217974(P2008−217974)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】