説明

乾燥装置及び該乾燥装置を備える記録装置

【課題】乾燥領域における乾燥効率の低下を抑制することができる乾燥装置及び該乾燥装置を備える記録装置を提供する。
【解決手段】乾燥装置は、インクの付着により記録が施される連続紙Sを搬送方向の上流側から下流側へと搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送される連続紙Sの搬送経路の途中において連続紙Sのインクが付着した表面と対向する位置に形成された吹出口34から表面に向けて加熱した空気を吹き出すことにより連続紙Sに乾燥処理を施すヒーターユニット24と、を備え、ヒーターユニット24よりも搬送方向の下流側で吹出口34から吹き出された空気を連続紙Sの表面側において滞留可能とする乾燥領域Dの天井面を、ヒーターユニット24の外郭を構成するカバー31のうち吹出口34が形成されると共に該吹出口34から連続紙Sの搬送方向の下流側に向けて搬送経路を上方から覆うように延設された下面31cにより形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び該乾燥装置を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に対して液体を付着させることで記録を行う記録装置として、インクジェット式記録装置が広く知られている。そして、こうした記録装置には、インク(液体)が付着した記録媒体を搬送途中に乾燥させるための乾燥装置が記録媒体の搬送経路上に設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この乾燥装置は、外部から空気を取り入れるための吸引ファンと、取り入れられた空気を温めるための加熱ヒーターと、温められた空気(温風)を搬送途中の記録媒体に向けて吹き出す吹出口と、吹出口から吹き出された温風を吸気ファンに再び導く流通空間とを備えている。そして、温風を循環させて記録媒体に吹き付けることにより、記録媒体に付着したインクを乾燥させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−045861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の記録装置では、乾燥装置が記録媒体の搬送経路の上方位置に設けられるとともに、その乾燥装置よりも記録媒体の搬送方向の下流側位置に乾燥室が記録媒体を上下両側から挟んで対向する上側区画壁と下側区画壁とで区画形成されている。すなわち、乾燥装置よりも搬送方向の下流側で乾燥装置の吹出口から吹き出された乾燥風を記録媒体の上面側に滞留可能とする乾燥室(乾燥領域)の天井面は、乾燥装置の外部カバーと、その外部カバーとは別の板金部材からなる上側区画壁とが、搬送途中の記録媒体の上面と各々対向するように搬送方向に並列配置態様となることで形成される。そのため、乾燥装置の吹出口から吹き出された温風の乾燥風が乾燥装置の外部カバーと該カバーとは別の板金部材からなる上側区画壁との間に存在する隙間等から乾燥室外に漏れ出てしまうことにより、乾燥室における乾燥効率が低下する虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は乾燥領域における乾燥効率の低下を抑制することができる乾燥装置及び該乾燥装置を備える記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の乾燥装置は、液体の付着により記録が施される記録媒体を搬送方向の上流側から下流側へと搬送する搬送手段と、当該搬送手段により搬送される前記記録媒体の搬送経路の途中において前記記録媒体の前記液体が付着した表面と対向する位置に形成された吹出口から前記表面に向けて加熱した空気を吹き出すことにより前記記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、を備え、当該乾燥手段よりも前記搬送方向の下流側で前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側において滞留可能とする乾燥領域の天井面を、前記乾燥手段の外郭を構成する外面のうち前記吹出口が形成されると共に該吹出口から前記記録媒体の搬送方向の下流側に向けて前記搬送経路を上方から覆うように延設された延設面部により形成した。
【0008】
この構成によれば、乾燥領域の天井面全体が乾燥手段の外面の一部である延設面部により構成される。したがって、乾燥領域の上部に乾燥手段の外面と他の部材との隙間等がないため、温風が乾燥領域外に漏れ出ることを抑制でき、乾燥領域における乾燥効率の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の乾燥装置において、前記搬送手段は、前記搬送経路の途中位置において前記乾燥手段の上流側と下流側とにそれぞれ配設されるとともに、前記記録媒体の前記表面に当接した状態で回転可能な一対のローラー部材を備え、該一対のローラー部材と前記記録媒体の前記表面と前記乾燥手段における前記延設面部との間に前記乾燥領域を形成するようにした。
【0010】
この構成によれば、乾燥手段の上流側と下流側とに配設された一対のローラー部材により、乾燥領域における記録媒体の搬送経路に沿った上流側と下流側の領域が覆われるため、搬送経路に沿って温風が逃げることを抑制することができる。したがって、乾燥領域における乾燥効率の低下をさらに抑制することができる。
【0011】
本発明の乾燥装置において、前記乾燥手段は、該乾燥手段の内部に外部から取り入れた空気を温めて前記吹出口に温めた空気を送る空気流路部とは別の独立した蓄熱空間部を前記乾燥領域に隣接する位置に有する。
【0012】
この構成によれば、乾燥領域に隣接するように配置される蓄熱空間部の断熱効果により乾燥領域内の温度を高めることができる。したがって、乾燥領域の乾燥効率を高めることができる。
【0013】
本発明の乾燥装置において、前記乾燥手段の前記吹出口は前記記録媒体における搬送方向の下流側に向かって開口しているとともに、前記空気流路部における前記吹出口に連なる流路部分の内壁面が、前記乾燥手段における前記吹出口が形成されて前記記録媒体と対向する面に対して前記記録媒体における搬送方向の上流側が上方となるように傾斜している。
【0014】
この構成によれば、乾燥手段は搬送方向の下流側に向かって搬送される記録用紙に対して広範囲にわたって順風となるように温風を吹き付けることができる。したがって、乾燥領域において、記録媒体を効率よく乾燥することができる。
【0015】
本発明の乾燥装置において、前記乾燥手段の前記蓄熱空間部は、前記吹出口よりも前記記録媒体の搬送方向における下流側の位置に配置される。
この構成によれば、記録媒体に向かって吹き出された温風によって蓄熱空間部を温めることができるため、乾燥領域内の温度をより高めることができる。したがって、乾燥領域の乾燥効率をより高めることができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、搬送される記録媒体に搬送経路の途中で記録を施す記録ヘッドと、当該記録ヘッドよりも前記搬送経路における下流側の位置に設けられる上記構成の乾燥装置と、を備えた。
【0017】
この構成によれば、記録装置において上記乾燥装置の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態にける記録装置の概略側面図。
【図2】記録装置の拡大概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式記録装置(以下、「記録装置」と略す。)及び該記録装置が備える乾燥装置に具体化した実施形態を図1及び図2に従って説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」及び「上下方向」をいう場合は、特に説明がない限り、各図において矢印で示す「前後方向」及び「上下方向」をいうものとする。
【0020】
図1に示すように、記録装置11は、その外郭を形成する略矩形箱状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状の連続紙(記録媒体)Sを繰り出す繰り出し部13と、繰り出された連続紙Sにインクを噴射して記録を施す記録部14と、該記録部14にて記録が施された連続紙Sを巻き取る巻き取り部15が設けられている。
【0021】
すなわち、本体ケース12内において、連続紙Sにおける搬送方向の上流側となる後側寄りの位置には繰り出し部13が配設されているとともに、下流側となる前側寄りの位置には巻き取り部15が配設されている。そして、繰り出し部13と巻き取り部15との間となる搬送経路の途中位置に記録部14が配設されている。また、記録部14における後側寄りの位置には、連続紙Sを支持可能なプラテン16が設けられている。
【0022】
図1に示すように、繰り出し部13には、左右方向(紙面と直交する方向)に延びる巻き軸17が回転可能に設けられている。そして、その巻き軸17には、連続紙Sがあらかじめロール状に巻かれた状態で巻き軸17と一体回転可能に支持されている。すなわち、連続紙Sは、巻き軸17が回転することにより巻き軸17から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。また、繰り出し部13における斜め前側の位置には、巻き軸17から繰り出された連続紙Sを巻き掛けて記録部14に向けて導くための第1中継ローラー18が左右方向に延びた状態で回転可能に設けられている。そして、第1中継ローラー18に、巻き軸17から繰り出された連続紙Sを後側下方から巻き掛けることにより、連続紙Sの搬送方向を水平方向に変換するようになっている。
【0023】
また、プラテン16の前側には、該プラテン16を挟んで後側(上流側)の第1中継ローラー18と前後方向で対向する第2中継ローラー19が第1中継ローラー18と平行な態様で左右方向に延びるように設けられている。なお、第1中継ローラー18及び第2中継ローラー19は各々の周面の頂部がプラテン16の上面である支持面と同一の高さとなるように各々配置される位置が調整されている。そのため、第1中継ローラー18により搬送方向が水平方向に変換された連続紙Sは、プラテン16の支持面に摺接しつつ下流側となる前側に搬送された後、第2中継ローラー19に前側上方から巻き掛けられることにより、連続紙Sの搬送方向が水平方向から前斜め下方に変換される。
【0024】
また、プラテン16の前側であって第2中継ローラー19の後側の位置には、搬送ローラー対20,21が間隔をあけて配設されている。搬送ローラー対20,21は、それぞれ左右方向に延びるとともに連続紙Sにおいて記録が施される面に当接するローラー部材としての駆動ローラー20a,21aと、連続紙Sの他方の面に当接する従動ローラー20b,21bとにより構成されている。そして、駆動ローラー20a,21aと従動ローラー20b,21bとにより連続紙Sを狭持した状態で、駆動ローラー20a,21aの駆動回転に従動ローラー20b,21bが従動回転することで連続紙Sの搬送が行われるようになっている。
【0025】
そして、第2中継ローラー19の前側には巻き取り部15が配設されると共に、該巻き取り部15における下方(第2中継ローラー19の前斜め下方)の位置には巻き取り軸22が回転可能に設けられている。そして、巻き取り軸22に対して連続紙Sの搬送方向下流端となる先端が巻きつけられるようになっている。上記のように、繰り出し部13、記録部14、巻き取り部15及び搬送ローラー対20,21により、記録媒体である連続紙Sを搬送経路に沿って搬送する搬送手段が構成されている。
【0026】
また、図1に示すように、記録部14の上方であってプラテン16と対向する位置には、ラインヘッドタイプの記録ヘッド23が設けられている。記録ヘッド23の下面はインクを噴射する図示しない複数のノズルが開口する水平なノズル形成面になっている。記録ヘッド23は水平方向において連続紙Sの搬送方向と直交する方向に延びるとともに、長手方向の長さが連続紙Sの最大紙幅に対応する長さを有している。そして、記録ヘッド23は搬送される連続紙Sの記録領域に対して搬送経路の途中でインクを噴射して記録を施すようになっている。
【0027】
さらに、連続紙Sの搬送方向において記録部14よりも下流側となる記録ヘッド23の前側の位置には、記録ヘッド23から噴射されたインクが付着した連続紙Sに乾燥処理を施す乾燥手段としてのヒーターユニット24を着脱可能な装着部Pが設けられている。ヒーターユニット24には、制御部25が電気的に接続されているとともに、該制御部25によってヒーターユニット24の温度等が制御されるようになっている。
【0028】
また、図1に示すように本体ケース12の上面12aであってヒーターユニット24の装着部Pに対応する位置には、開口部26が形成されているとともに、該開口部26を覆蓋可能な蓋体27が設けられている。蓋体27は開口部26を覆蓋する覆蓋位置(図1において実線で示す位置状態)と、開口部26を開放する非覆蓋位置(図1において二点破線で示す位置状態)との間で変位するように、蓋体27において後側に設けられた回転軸27aを介して本体ケース12に対して回動可能に支持されている。すなわち、蓋体27は図1において矢印Aに示す方向に回動するようになっている。
【0029】
また、蓋体27の略中央には指先を差し入れ可能な開口27b(図2参照)が設けられるとともに、蓋体27における本体ケース12の内面側の面には開口27bを覆うように断面視略U字状の陥入部27cが形成されている図2参照。すなわち、この開口27b及び陥入部27cはユーザーが指先を差し入れて蓋体27を回動変位するための取手となっている。そして、蓋体27を覆蓋位置から非覆蓋位置に変位させることにより、開放状態にされた開口部26を介してヒーターユニット24を本体ケース12内の装着部Pに対して着脱可能になっている。
【0030】
次に、ヒーターユニット24について図2に従って説明する。
記録ヘッド23の前側(下流側)であって搬送ローラー対20,21の間の位置に配設されるヒーターユニット24は、水平方向において連続紙Sの搬送方向と直交する方向に延びるとともに、長手方向の長さが連続紙Sの最大紙幅に対応する長さとなっている。そして、図2に示すように、ヒーターユニット24は、変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂により形成された略直方体形状をなすカバー31を有している。このカバー31の外面により、ヒーターユニット24の外郭が構成されている。ヒーターユニット24の装着方向において上面側となるカバー31の上面31aには、略コの字状(略U字状)をなす板状の取手部32が設けられている。そして、この取手部32を把持するとともに上方に持ち上げることにより、本体ケース12内の装着部Pにヒーターユニット24を着脱できるようになっている。また、カバー31の前側(下流側)となる前側面31bには、複数(図2では5つ図示)の吸気口33が鉛直方向に所定間隔をおいて規則的に開口形成されている。さらに、カバー31の下側となる下面31cの後側(上流側)の位置には、カバー31の長手方向に沿う略矩形状の吹出口34が連続紙Sの搬送方向の下流側に向かって開口形成されている。
【0031】
また、カバー31の内部であって吸気口33と対向する位置には、吸気口33を介してカバー31外の空気を内部に取り込むための複数のファン35が設けられている。さらに、カバー31の内部には、吸気口33から取り込んだ空気を吹出口34にまで導くための空気流路部36が設けられている。すなわち、カバー31の内部には略J字状に形成された内壁面37a,37bが設けられているとともに、内壁面37a,37bにおける前側の端部がそれぞれファン35の上面及び下面と連結する一方、後側の他端部がそれぞれ吹出口34における後側の後辺部及び前側の前辺部と連結している。そして、カバー31の両側面(図示略)と内壁面37a,37bとにより、カバー31内で空気が流れる空気流路部36が区画形成されている。
【0032】
また、空気流路部36の内部においてファン35の送風方向下流側であって吹出口34の後側(上流側)上方の位置には、ヒーター38が設けられている。さらに、ヒーター38よりも下方の空気流路部36を構成する部分の内壁面37a,37bは、後側(上流側)から前側(下流側)に向かって後側が上方となるように傾斜している。したがって、ヒーターユニット24は、ヒーター38を発熱させた状態でファン35を回転させることにより、吸気口33から取り込んだ空気をヒーター38により加熱した後、温めた空気(温風)を連続紙Sに対して搬送方向の上流側から下流側に向かって吹き付けるようになっている。
【0033】
また、図2に示すように、ヒーターユニット24は装着部Pに対して正確に装着された状態では、ヒーターユニット24におけるカバー31の下面31cにより搬送ローラー対20、21間における連続紙Sの記録領域の上部を上方から覆うように構成されている。そして、連続紙Sの表面、カバー31の下面31c及び搬送ローラー対20,21により、ヒーターユニット24の吹出口34から連続紙Sに向けて吹き出された温風を滞留させて連続紙Sのインクを乾燥させる乾燥領域Dが形成されている。すなわち、乾燥領域Dの天井面がカバー31の下面31cで構成されると共に、乾燥領域Dにおける連続紙Sの搬送方向の上流側と下流側の領域が連続紙Sの表面に当接する駆動ローラー20a,21aにより覆われるようになっている。この点で、ヒーターユニット24におけるカバー31の下面31cは、吹出口34が形成されると共に該吹出口34から連続紙Sの搬送方向の下流側に向けて搬送経路を上方から覆うように延設された延設面部として機能する。そして、本実施形態では、繰り出し部13、記録部14、搬送ローラー対20,21及び巻き取り部15からなる搬送手段とヒーターユニット24とにより搬送される連続紙Sに対して乾燥を施すための乾燥領域Dを形成する乾燥装置が構成されている。
【0034】
また、ヒーターユニット24におけるカバー31の内部には、前側面31b、下面31c、両側面及び内壁面37bにより区画される独立した蓄熱空間部39が空気流路部36の前側(下流側)の位置に形成されている。この蓄熱空間部39は、空気流路部36と乾燥領域Dとに隣接しているため、蓄熱空間部39内の空気は空気流路部36内のヒーター38と吹出口34から下流側に向かって吹き出されて乾燥領域Dに滞留している温風とによって温められるようになっている。
【0035】
また、ヒーターユニット24は、カバー31の下面31cが平面状に形成されているとともに、重心がヒーターユニット24の中心にくるように構成されている。そのため、ヒーターユニット24を装着部Pから取り出した場合に、ヒーターユニット24単体を装着姿勢の状態で床や机等に直接置くことができるようになっている。
【0036】
次に、上記のように構成された記録装置11の作用について、特に乾燥領域D内における連続紙Sの乾燥処理に着目して説明する。
さて、例えば記録装置11において記録処理が開始されると、ヒーターユニット24のヒーター38が発熱しつつファン35が駆動して温風が吹き出され始めると共に、連続紙Sが繰り出し部13から繰り出されて搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。続いて、連続紙Sが記録部14に搬送されると、記録部14ではプラテン16上を摺動する連続紙Sの表面に対して記録ヘッド23から連続紙Sの表面にインクが噴射される。そして、インクが付着した連続紙Sはさらに搬送されて乾燥領域D内を通過する。乾燥領域D内では、搬送される連続紙Sの表面に対して上流側に位置するヒーターユニット24の吹出口34から下流側に向かって温風が吹き付けられる。
【0037】
乾燥領域Dの上部(天井面)及び連続紙S搬送方向に沿った上流側と下流側の側面は、ヒーターユニット24の下面31c及び駆動ローラー20a,21aにより覆われているため、吹出口34から吹き出された温風が効率よく乾燥領域D内に滞留する。また、乾燥領域D内では温風が上流側から下流側に向かって吹き出されることにより、下流側に搬送される連続紙Sに対して広範囲且つ長時間にわたって温風が吹き付けられるため、連続紙Sの表面に付着したインクの乾燥が促進される。さらに、乾燥領域D内の上部には蓄熱空間部39が配置されているため、蓄熱空間部39内の温かい空気層により乾燥領域D内の温度は高く保たれる。
【0038】
そして、連続紙Sは、表面のインクが乾燥した状態で巻き取り部15に搬送されるとともに巻き取り軸22によって巻き取られる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0039】
(1)乾燥領域Dの上部全体がヒーターユニット24におけるカバー31の下面31cにより構成されるため、乾燥領域Dの上部にカバー31の下面31cと他の部材との隙間等がない。したがって、温風が乾燥領域D外に漏れ出ることを抑制でき、乾燥領域における乾燥効率の低下を抑制することができる。
【0040】
(2)ヒーターユニット24の上流側と下流側とに配設された搬送ローラー対20,21の駆動ローラー20a,21aとにより、乾燥領域Dにおける連続紙Sの搬送経路に沿った上流側と下流側の領域が覆われるため、搬送経路に沿って温風が逃げることを抑制することができる。したがって、乾燥領域における乾燥効率の低下をさらに抑制することができる。
【0041】
(3)乾燥領域Dに隣接するように配置された蓄熱空間部39の断熱効果により乾燥領域内の温度を高めることができる。したがって、乾燥領域の乾燥効率を高めることができる。
【0042】
(4)ヒーターユニット24は、搬送方向の下流側に向かって搬送される連続紙Sに対して広範囲にわたって順風となるように温風を吹き付けることができる。したがって、乾燥領域Dにおいて、連続紙Sを効率よく乾燥することができる。
【0043】
(5)連続紙Sに向かって吹き出された温風によって蓄熱空間部39を温めることができるため、乾燥領域D内の温度をより高めることができる。したがって、乾燥領域Dの乾燥効率をより高めることができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・記録媒体は連続紙Sに限らず、連続フィルム等であってもよい。また、連続紙Sは搬送途中で所定の長さに切断されてもよい。さらに、記録媒体は長尺状のものに限らず所定の大きさに形成された単票紙であってもよい。
【0045】
・ヒーターユニット24は着脱可能なものに限らず、記録装置11の本体ケース12内に固定して設けられていてもよい。
・記録ヘッド23はラインヘッドタイプに限らず、短尺の記録ヘッドが連続紙Sの搬送方向と交差する方向に移動して連続紙Sの全幅に記録を行うようにしてもよい。
【0046】
・蓄熱空間部39を吹出口34よりも上流側に設けてもよい。また、吹出口34の上流側と下流側の両方に設けてもよい。さらに、乾燥領域Dに隣接する位置に蓄熱空間部39を設けなくてもよい。
【0047】
・温風の吹き出し方向は、連続紙Sにおける搬送方向の下流側に向かう斜め方向とは限らず、例えば連続紙Sに対して鉛直方向下向きの方向であってもよい。
・駆動ローラー20a,21aは長尺状のものに限らず、幅方向に複数に分割されたものを用いてもよい。また、従動ローラー20b,21bがなくてもよい。さらに、乾燥領域Dに駆動ローラー20a,21aを設けなくてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式記録装置11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。記録装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
D…乾燥領域、S…記録媒体としての連続紙、11…記録装置、20,21…搬送ローラー対、20a,21a…ローラー部材としての駆動ローラー、23…記録ヘッド、24…乾燥手段としてのヒーターユニット、31…カバー、31c…延設面部としての下面、34…吹出口、36…空気流路部、37a,37b…内壁面、39…蓄熱空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の付着により記録が施される記録媒体を搬送方向の上流側から下流側へと搬送する搬送手段と、
当該搬送手段により搬送される前記記録媒体の搬送経路の途中において前記記録媒体の前記液体が付着した表面と対向する位置に形成された吹出口から前記表面に向けて加熱した空気を吹き出すことにより前記記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、を備え、
当該乾燥手段よりも前記搬送方向の下流側で前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側において滞留可能とする乾燥領域の天井面を、前記乾燥手段の外郭を構成する外面のうち前記吹出口が形成されると共に該吹出口から前記記録媒体の搬送方向の下流側に向けて前記搬送経路を上方から覆うように延設された延設面部により形成した
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記搬送経路の途中位置において前記乾燥手段の上流側と下流側とにそれぞれ配設されるとともに、前記記録媒体の前記表面に当接した状態で回転可能な一対のローラー部材を備え、該一対のローラー部材と前記記録媒体の前記表面と前記乾燥手段における前記延設面部との間に前記乾燥領域を形成するようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥手段は、該乾燥手段の内部に外部から取り入れた空気を温めて前記吹出口に温めた空気を送る空気流路部とは別の独立した蓄熱空間部を前記乾燥領域に隣接する位置に有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記乾燥手段の前記吹出口は前記記録媒体における搬送方向の下流側に向かって開口しているとともに、前記空気流路部における前記吹出口に連なる流路部分の内壁面が、前記乾燥手段における前記吹出口が形成されて前記記録媒体と対向する面に対して前記記録媒体における搬送方向の上流側が上方となるように傾斜している
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記乾燥手段の前記蓄熱空間部は、前記吹出口よりも前記記録媒体の搬送方向における下流側の位置に配置される
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
搬送される記録媒体に搬送経路の途中で記録を施す記録ヘッドと、
当該記録ヘッドよりも前記搬送経路における下流側の位置に設けられる請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の乾燥装置と、を備えた
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−194570(P2011−194570A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60280(P2010−60280)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】