説明

予備タンク付電磁弁

【課題】片ロッドシリンダーのロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室をポートにより接続した2ポジション電磁弁を有する予備タンク付電磁弁を提供。
【解決手段】予備タンク付電磁弁10は弁部11と、弁部11の両側面の一側に取り付けられたソレノイド部12と、弁部11の両側面の他側に取り付けられた可変容量式タンク13と、を備える。ソレノイド部12は、コイルアッセンブリ14と、チューブアッセンブリ15とを備え、固定用ナット16により一体化されている。可変容量式タンク13はタンク本体50の突起部51が弁本体37に螺着されており、突起部51に形成された段付凹部52はタンク本体50に形成されたシリンダ室57aに連通している。タンク本体50には、ピストン59が摺動自在に嵌挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力を受けて伸縮する片ロッドシリンダーとそのシリンダーのロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室をアクチュエータポート(A/Bポート)で接続する予備タンク付電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の予備タンク付電磁弁は油圧ポンプがなく、外力によって伸縮する片ロッドシリンダーと該片ロッドシリンダーのヘッド側シリンダー室およびロッド側シリンダー室を電磁弁で連通したり、閉止したりするシステムでは、一般的に図11乃至図13に示す油圧回路が使用される。
【0003】
なお、係る先行技術文献は見出せなかったので、図11乃至図13により従来の油圧回路について説明する。
【0004】
図11は、片ロッドシリンダー71、2ポジション電磁弁72(以下、電磁弁72と云う)、リリーフ弁73、バキュームチェック弁74およびタンク75で構成する従来の油圧回路70を示す。
図11において、外力F11が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図11で左行へ移動することで、ヘッド側シリンダー室77から作動油(図示しない)が排出され、電磁弁72のポジション72aの位置(電磁弁72が非励磁状態)で作動油がAポートからPポート、TポートからBポートへそれぞれ流れ、ロッド側シリンダー室78に流入する。
このとき、ヘッド側シリンダー室77の断面積はロッド側シリンダー室78の断面積より大きいことより、ヘッド側シリンダー室77から排出される作動油量は、ロッド側シリンダー室78へ流入可能な作動油量よりも多くなる。この余剰作動油量は電磁弁72のPポートおよびTポートの圧力がリリーフ弁73の設定圧以上になり、該リリーフ弁73からタンク75へ排出される。
【0005】
逆に外力F21が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図11で右行へ移動することで、ロッド側シリンダー室78から作動油が排出され、電磁弁72のポジション72aの位置(電磁弁72が非励磁状態)でBポートからTポート、PポートからAポートへそれぞれ流れ、ヘッド側シリンダー室77に流入する。
このとき、ロッド側シリンダー室78断面積はヘッド側シリンダー室77の断面積より小さいことより、ロッド側シリンダー室78ら排出される作動油量は、ヘッド側シリンダー室77へ必要な作動油量より少なくなる。
【0006】
ヘッド側シリンダー室77への作動油が不足することで、電磁弁72のPポートおよびTポートの圧力が負圧になりバキュームチェック弁74が開き、タンク75からバキュームチェック弁74を介して電磁弁72のPポート、Aポートを通り、ヘッド側シリンダー室77へ不足分の作動油が供給される。
また、電磁弁72のソレノイドがONされ、電磁弁72がポジション72bに切り換わると、ヘッド側シリンダー室77およびロッド側シリンダー室78は共に遮断されるため、外力がF1´およびF2´が付勢されても、片ロッドシリンダー71はロックされロッド76が動かなくなる。
【0007】
図12は、従来の他の油圧回路80を示し、図12中、図11の構成要素と同一の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。以下、同様にする。
外力F12が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図12の左行へ移動することで、ヘッド側シリンダー室77から作動油が排出され、電磁弁72がポジション72aの位置でAポートからPポート、TポートからBポートへそれぞれ流れ、ロッド側シンダー室78に流入する。
このとき、ヘッド側シリンダー室77の断面積はロッド側シリンダー室78の断面積より大きいことより、ヘッド側シリンダー室77から排出される作動油量は、ロッド側シリンダー室78へ流入可能な作動油量よりも多くなる。この余剰作動油量は電磁弁72のPポートおよびTポートと接続されるアキュムレータ81に送られ、蓄圧される。
【0008】
逆に外力F22が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図12で右行へ移動することで、ロッド側シリンダー室78から作動油が排出され、電磁弁72がポジション72aでBポートからTポート、PポートからAポートへそれぞれ流れ、ヘッド側シリンダー室77に流入する。
このとき、ロッド側シリンダー室78の断面積はヘッド側シリンダー室77の断面積より小さいことより、ロッド側シリンダー室78ら排出される作動油量は、ヘッド側シリンダー室77へ必要な作動油量より少なくなる。ヘッド側シリンダー室77への作動油が不足することで、電磁弁72のPポートとTポートこの不足作動油量は電磁弁72のPポートおよびTポートの圧力が低下することでアキュムレータ81から蓄圧された圧油が電磁弁72のPポートからAポートを通り、ヘッド側シリンダー室77へ不足分の作動油が供給される。
【0009】
また、電磁弁72のソレノイドがONされ、電磁弁72がポジション72bに切り換わると、ヘッド側シリンダー室77およびロッド側シリンダー室78は共に、遮断されるため外力が加わっても、片ロッドシリンダー71はロックされ、ロッド76が動かなくなる。
【0010】
図13は、従来の他の油圧回路90を示し、片ロッドシリンダー71、電磁弁72、可変容量式タンク91で構成する。
外力F13が作用する場合、片ロッドシリンダー71はロッド76が図13で左行へ移動することで、ヘッド側シリンダー室77から作動油が排出され、電磁弁72がポジション72aでAポートからPポートおよびTポートからBポートへそれぞれ流れ、ロッド側シリンダー室78に流入する。
このとき、ヘッド側シリンダー室77の断面積はロッド側シリンダー室78の断面積より大きいことより、ヘッド側シリンダー室77から排出される作動油量は、ロッド側シリンダー室78へ流入可能な作動油量よりも多くなる。この余剰作動油量は電磁弁72のPポートおよびTポートと接続される可変容量式タンク91に送られ蓄えられる。
【0011】
逆に外力F23が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図13で右行へ移動することでロッド側シリンダー室77から作動油が排出され、電磁弁72のポジション72aでBポートからTポートおよびPポートからAポートへそれぞれ流れ、ヘッド側シリンダー室78に流入する。
このとき、ロッド側シリンダー室78の断面積はヘッド側シリンダー室77の断面積より小さいことより、ロッド側シリンダー室78ら排出される作動油量は、ヘッド側シリンダー室77へ必要な作動油量より少なくなる。ヘッド側シリンダー室77への作動油が不足することで、電磁弁72のPポートおよびTポートから流れる不足作動油量は電磁弁72のPポートおよびTポートの圧力が低下することで可変容量式タンク91に蓄えられた圧油が電磁弁72のPポートからAポートを通り、ヘッド側シリンダー室77へ作動油が供給される。
【0012】
また、電磁弁72のソレノイドがONされ、電磁弁72がポジション72bに切り換わると、ヘッド側シリンダー室77およびロッド側シリンダー室78は共に、遮断されるため外力が加わっても、片ロッドシリンダー71はロックされロッド76が動かなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図11乃至図13に示す油圧回路であっても、外力によってのみ片ロッドシリンダー71が伸縮する機能と、電磁弁72の切り換えによって片ロッドシリンダー71をロックできる機能とを、得ることが可能である。
しかし、図11および図12に示す油圧回路では、片ロッドシリンダー71、電磁弁72以外にリリーフ弁73、バキュームチェック弁74およびタンク75またはアキュムレータ81が必要になる。また、前記の油圧機器が必要なため、システム全体として大きくなってしまうことになる。
さらに、図13では、例えば、電磁弁72にISO取り付けなど規格品を使用すると可変容量式タンク91は、別部品とする必要がある。
また、電磁弁72と可変容量式タンク91を一体化するには、電磁弁72は完全に特殊な本体を製作する必要がある。
【0014】
本発明は従来技術が抱える前述の問題点、つまり、片ロッドシリンダーと電磁弁以外の多くの油圧機器を必要とせず、かつ例えばISO取り付けに準じない特殊な本体を製作する必要もなく、外力を受けて伸縮する片ロッドシリンダーと、該片ロッドシリンダーのロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室をポートで接続した電磁弁とを有し、該電磁弁はロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室を、連通したり、遮断したりする2ポジション電磁弁を有する予備タンク付電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、
弁部と、
前記弁部の両側面の一側に取り付けたソレノイド部と、
前記ソレノイド部に対向して前記弁部の両側面の他側に取り付けた可変容量式タンクと、
を有し、
前記弁部は外力を受けて伸縮するピストンロッドによりロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室を有する片ロッドシリンダーに連通し、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
前記ピストンと前記プラグ間の前記タンク本体の軸心方向に装着されたばね部材と、
前記ピストンと前記プラグ間に位置し前記タンク本体の半径方向に装着され使用条件に応じて適宜該タンク本体内の空気量を調整するエア抜きプラグと、
を、備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項1記載の予備タンク付電磁弁において、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
前記ピストンと前記プラグ間に位置し前記タンク本体の半径方向に装着され使用条件に応じて適宜該タンク本体内の空気量を調整するエア抜きプラグと、
を、備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項1記載の予備タンク付電磁弁において、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
使用条件に応じて適宜前記タンク本体内の空気量を調整するため前記タンク本体の半径方向または前記プラグの軸心方向に設けた小径穴と、
を、備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、片ロッドシリンダーと電磁弁以外の多くの油圧機器を必要とせず、かつ例えばISO取り付けに準じない特殊な本体を製作する必要もなく、外力を受けて伸縮する片ロッドシリンダーと該ロッドシリンダーのロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室をアクチュエータポート(A/Bポート)に接続した電磁弁を有し、この電磁弁はロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室を、連通したり、遮断したりする2ポジション電磁弁であるシステムを提供することが可能になる。
また、このシステムは、片ロッドシリンダーと電磁弁のみのシステム構成であり、コンパクトである。バルブ本体も特殊なものを必要とせず、コストを低減する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る油圧回路である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係る油圧回路である。
【図3】本発明の第三の実施の形態に係る油圧回路である。
【図4】本発明の第四の実施の形態に係る油圧回路である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁の概略構造図である。
【図6】図5に示す予備タンク付電磁弁の動作説明図である。
【図7】本発明の第二の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁の概略構造図である。
【図8】本発明の第三の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁の概略構造図である。
【図9】本発明の第四の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁の概略構造図である。
【図10】本発明の第五の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁の概略構造図である。
【図11】従来の第一の油圧回路図である。
【図12】従来の第二の油圧回路図である。
【図13】従来の第三の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る予備タンク付電磁弁につき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る油圧回路5を示し、図1中、図11乃至図13に示す構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図1に示す油圧回路5は、片ロッドシリンダー71と、予備タンク付電磁弁10のみで構成される。予備タンク付電磁弁10には予備タンク付電磁弁10を図1のポジションに戻すためのリターンスプリング43と、可変容量式タンク13内のピストン59に荷重を付加しているばね部材61も構成部品として含まれる。予備タンク付電磁弁10は弁部11がポジション11b(SOL−OFF時)の位置で、Aポート、Pポート、Tポート、Bポートおよび予備タンク付電磁弁10のソレノイド部12とは逆側(図1で左側)に設けた可変容量式タンク13とも予備タンク付電磁弁10のバルブ内部で連通している。
【0021】
この油圧回路5によれば、外力F1が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図の左へ移動することで、ヘッド側シリンダー室77から作動油が排出され、予備タンク付電磁弁10がポジション11bで予備タンク付電磁弁10のバルブ内部でAポートからBポートへと流れ、ロッド側シリンダー室78に流入する。このとき、ヘッド側シリンダー室77の断面積はロッド側シリンダー室78の断面積より大きいことより、ヘッド側シリンダー室77から排出される作動油量は、ロッド側シリンダー室78へ流入可能な作動油量よりも多くなる。この余剰作動油量は予備タンク付電磁弁10のPポート、Tポート、Aポート、Bポートが共に内部で連通する可変容量式タンク13に送られ、貯蔵される。
【0022】
逆に外力F2が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図1で右へ移動することで、ロッド側シリンダー室77から作動油が排出され、予備タンク付電磁弁10がポジション11bの位置でBポートからバルブ内部でAポートへと流れ、ヘッド側シリンダー室77に流入する。このとき、ロッド側シリンダー室78の断面積はヘッド側シリンダー室77の断面積より小さいことより、ロッド側シリンダー室78ら排出される作動油量は、ヘッド側シリンダー室77へ必要な作動油量より少なくなる。ヘッド側シリンダー室77への作動油が不足することで、予備タンク付電磁弁10のAポート、Bポート、PポートおよびTポートの圧力が低下することで可変容量式タンク13から蓄えられた作動油が予備タンク付電磁弁10のバルブ内部からAポートを通り、ヘッド側シリンダー室77へ供給される。
【0023】
また、予備タンク付電磁弁10のソレノイド部12がONされ、予備タンク付電磁弁10がポジション11aに切り換わると、ヘッド側シリンダー室77およびロッド側シリンダー室78は共に、遮断されるため外力が加わっても、片ロッドシリンダー71はロックされロッド76が動かなくなる。
また、本発明では、図1の油圧回路5の予備タンク付電磁弁10の代わりに、図2および図3に示す油圧回路6および油圧回路7のように、予備タンク付電磁弁10aおよび10bに置き換えても同じ機能を有することは言うまでもない。
また、使用方法によっては、図4の油圧回路8において予備タンク付電磁弁10cのようにSOL−ON時に、Pポート、Tポート、Aポート、Bポートと可変容量式タンク13が連通状態になり、SOL−OFF時にAポート、Bポートが遮断されるポジションでも対応可能であることは言うまでもない。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁10の概略構造を示す縦断面図である。図5に示すように、予備タンク付電磁弁10は弁部11と、該弁部11の両側面の一側(図5で右側面)に取り付けられたソレノイド部12と、弁部11の両側面の他側(図5で左側面に)取り付けられた可変容量式タンク13と、を備える。なお、弁部11、ソレノイド部12および可変容量式タンク13は軸心方向(図5で左右方向)に略同一線上に配置されている。
【0025】
ソレノイド部12は、中空部を備える筒状のコイルアッセンブリ14と、前記コイルアッセンブリ14の中空部に挿通されたチューブアッセンブリ15とを備え、これらは樹脂製の固定用ナット16により一体化されている。参照符号17〜26は、前記コイルアッセンブリ14における周知の部材を示す。すなわち、コイル17は、合成樹脂材料、例えばナイロン、PPS等の樹脂により形成されたコイルボビン18の外周面にコイル巻線19を巻き回して構成されている。前記コイルボビン18は、中空の巻胴20を有し、該巻胴20の両端には放射方向に鍔20a、20bが一体形成されている。
【0026】
コイル17を囲繞する外部磁気回路体23は、コイルボビン18の一端(図5で左端)に添設される環状の第1のヨーク24と、他端(図5で右端)に添設された第2のヨーク25と、前記ヨーク24、25を磁気的に接続された第3のヨーク26と、を備える。これらの第1〜第3のヨーク24〜26は、いずれも磁性材料より形成される。
【0027】
参照符号29〜32は、チューブアッセンブリ15における周知の部材を示す。固定鉄芯29は磁性ステンレスのような高透磁率材料で形成され、弁部11への連結部30を有する。中空筒部材31は、磁性ステンレスのような高透磁率材料で形成された部材(図示しない)および非磁性ステンレスのような極低透磁率材料で形成された部材(図示しない)より形成されている。参照符号32は、閉塞部材を示す。
固定鉄芯29、閉塞部材32は、例えば溶接により一体化されて中空筒部材31の内部が密閉されるように形成される。可動鉄芯33は磁性体材料で、連動用ロッド34は被磁性体材料で形成される。参照符号35は手動操作用の押ピンを示す。
【0028】
弁部11は、ハウジングである弁本体37の内部にはスプール38が摺動自在に嵌挿されている。前記スプール38には、軸心方向には第1ランド39、第2ランド40と、両端部近傍にリテーナ41a、41bが形成されている。前記リテーナ41aとスプール38の小径の軸端部42には、ばね部材43が嵌挿されている。前記ばね部材43は一端部(図5で右端)が軸端部42に挿通されたスペーサ44に係合し、他端部(図5で左端)が弁本体37に螺着されたタンク本体50の突起部51に形成された段付凹部52に装填されており、ソレノイド部12が非励磁になった際、ばね部材43の弾発力によりスプール38が矢印X方向(後退)に変位するようになる。
【0029】
前記弁本体37に形成されたポート穴53は図示しない油圧源に接続するためのものであり、ポート穴54a、54bは図示しない油タンクへ接続されるためのものである。ポート穴55および56は、図示しないアクチュエータに接続されるポートである。
【0030】
可変容量式タンク13はタンク本体50の一側(図5で右側)に形成された突起部51が弁本体37に螺着されており、該突起部51に形成された段付凹部52はタンク本体50に形成されたシリンダ室57aに連通している。一方、タンク本体50の他側(図1で
左側)はOリング部材を介してプラグ58により液密的にシールされている。
シリンダ室57aには、ピストン59が摺動自在に嵌挿されており、該ピストン59には有底の穴部60が形成されている。
【0031】
さらに、プラグ58とピストン59の穴部60との間にはばね部材61が配設されている。ばね部材61は一端(図5で左端)がプラグ58の端面に係合し、他端(図5で右端)がピストン59の穴部60の有底面に係合しており、弾発力によりピストン59を常時、矢印X方向に押圧している。
プラグ58とピストン59間のスプリング室57bに設けられ、タンク本体50の半径方向に設けられたエア抜きプラグ62は、予備タンク付電磁弁10の使用条件に応じてタンク本体50内のエアの息継ぎ量を適宜調整するためのもので、プラグ58とピストン59間の容積が変化する場合に空気をエア抜きプラグ62より外部(大気)に放出したり、外部から吸入したりする。
【0032】
図5の状態でポート穴54aと可変容量式タンク13はスプール38とリテーナ41b、リテーナ44との隙間の油路で常時連通されている。
可変容量式タンク13を組み付けている状態は、3ポジションタイプの電磁弁で通常、ソレノイド部12と同じものを組み付けている状態であり、弁部11は標準的なISO取り付け用電磁弁のバルブ本体と共通なものとなっている。
【0033】
本発明の実施の形態に係る予備タンク付電磁弁10は基本的には以上のように構成されたものであり、図1に示す油圧回路5および図5の予備タンク付電磁弁10を参照してその動作について説明する。
外力F1が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図5の左へ移動することで、ヘッド側シリンダー室77から作動油が排出され、予備タンク付電磁弁10が図の中立ポジションでAポートからバルブ内のポート穴54a、54bを経由し、Bポートへと流れ、ロッド側シリンダー室78に流入する。
【0034】
このとき、ヘッド側シリンダー室77の断面積はロッド側シリンダー室78の断面積より大きいことより、ヘッド側シリンダー室77から排出される作動油量は、ロッド側シリンダー室78へ流入可能な作動油量よりも多くなる。この余剰作動油量は予備タンク付電磁弁10の図の左側のTポートであるポート穴54aに連通する可変容量式タンク13に送られ、シリンダ室57aに蓄えられる。このとき、ピストン59はばね部材61の弾発力とシリンダ室57aに貯蔵される作動油の圧力による力が釣り合う位置まで図の右から左へ移動する。
【0035】
逆に外力F2が作用する場合、片ロッドシリンダー71は、ロッド76が図の右へ移動することで、ロッド側シリンダー室77から作動油が排出され、予備タンク付電磁弁10が中立ポジションでBポートであるポート穴56からバルブ内部でTポートであるポート穴54a、54bを経由してAポートへと流れ、ヘッド側シリンダー室77に流入する。このとき、ロッド側シリンダー室78の断面積はヘッド側シリンダー室77の断面積より小さいことより、ロッド側シリンダー室78から排出される作動油量は、ヘッド側シリンダー室77へ流入可能な作動油量よりも少なくなる。ヘッド側シリンダー室77への作動油が不足することで、予備タンク付電磁弁10のAポート、Bポート、PポートおよびTポートの圧力が低下することで可変容量式タンク13に蓄えられた作動油が予備タンク付電磁弁10のバルブ内部からAポートを通り、ヘッド側シリンダー室77へ供給される。
【0036】
図6は、予備タンク付電磁弁10のソレノイド部12がONされた状態を示す。すなわち、図6は予備タンク付電磁弁10のスプール38が矢印Y方向に移動した状態で、ヘッド側シリンダー室77に接続するAポート、ロッド側シリンダー室78に接続されるBポートは共に、遮断されるため、外力が加わっても、片ロッドシリンダー71はロックされ、ロッド76が動かなくなる。
【0037】
また、図7に示すように、図5の構造に対し実際の使用される実機の特性によっては、ピストン59に荷重を加えるばね部材61(図5参照)を設けない構造を使用してもよい。
同様に、図8に示すように図7に対してエア抜きプラグ62(図7参照)も廃止し、タンク本体50をピストン59でシリンダ室57aとスプリング室57bとを遮断した構造を使用してもよい。
さらに、図9に示すように、エア抜きプラグ62(図7参照)の代わりにタンク本体50の半径方向に息継ぎ用の小径穴63を設けてもよい。
またさらに、図10に示すように、エア抜きプラグ62(図7参照)の代わりにプラグ58に息継ぎ用の小径穴64を設けてもよい。
本発明の実施の形態では、図7乃至図10に示す構成にしても図5及び図6と同様の効果が得られる。
【0038】
また、本発明では、図1の予備タンク付電磁弁10の代わりに図2および図3に示す予備タンク付電磁弁10a、予備タンク付電磁弁10bに置き換えて同じ機能を有することは言うまでもない。
また、使用方法によっては、図4に予備タンク付電磁弁10bのようにSOL・ONで、Pポート、Tポート、Aポート、Bポートと可変容量式タンク13が連通になり、SOL・OFFでAポート、Bポートが遮断されるポジションでも対応可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10 予備タンク付電磁弁 11 弁部
12 ソレノイド部 13 可変容量式タンク
14 コイルアッセンブリ 50 タンク本体
58プラグ 59 ピストン
61 ばね部材 62 エア抜きプラグ
63、64 小径穴 71 片ロッドシリンダー
76 ロッド 77、78 シリンダー室









【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部と、
前記弁部の両側面の一側に取り付けたソレノイド部と、
前記ソレノイド部に対向して前記弁部の両側面の他側に取り付けた可変容量式タンクと、
を有し、
前記弁部は外力を受けて伸縮するピストンロッドによりロッド側シリンダー室およびヘッド側シリンダー室を有する片ロッドシリンダーに連通し、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
前記ピストンと前記プラグ間の前記タンク本体の軸心方向に装着されたばね部材と、
前記ピストンと前記プラグ間に位置し前記タンク本体の半径方向に装着され使用条件に応じて適宜該タンク本体内の空気量を調整するエア抜きプラグと、
を、備えたことを特徴とする予備タンク付電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の予備タンク付電磁弁において、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
前記ピストンと前記プラグ間に位置し前記タンク本体の半径方向に装着され使用条件に応じて適宜該タンク本体内の空気量を調整するエア抜きプラグと、
を、備えたことを特徴とする予備タンク付電磁弁。
【請求項3】
請求項1記載の予備タンク付電磁弁において、
前記可変容量式タンクは、
前記弁部に取り付けられ内部が該弁部の油路に連通するタンク本体と、
前記タンク本体に摺動自在に嵌挿されたピストンと、
前記タンク本体の一側を閉塞して該タンク本体をシリンダーに形成するプラグと、
使用条件に応じて適宜前記タンク本体内の空気量を調整するため前記タンク本体の半径方向または前記プラグの軸心方向に設けた小径穴と、
を、備えたことを特徴とする予備タンク付電磁弁。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−72781(P2012−72781A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216276(P2010−216276)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】