説明

二次電池

【課題】
電池の大容量化、高エネルギー密度化のために、限られた電池空間内において、安全弁の動作を確実に行い、電池内で発生したガスを迅速に排出する安全性に優れた、大容量の電池を提案する。
【解決手段】
積層体を内包する電池缶の蓋板に安全弁が形成され、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品と安全弁とは同一の蓋板に配置され、安全弁は正極及び負極の一対の端子間の蓋板の中心線の少なくとも一部を覆うように配置され、蓋板の中心線から通電部品における安全弁側の端部までの距離が、蓋板の中心線から安全弁の最外径までの距離以下であり、安全弁の動作時における開口部から蓋板面への投影領域と正極及び負極の外部出力端子等の通電部品から蓋板面への投影領域とが重ならない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全弁を有する二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を背景にして、ハイブリッド電気自動車(HEV)、電気自動車(EV)、フォークリフト、ショベルカー等の移動体のみならず、UPS(無停電電源装置)、太陽光発電の電力貯蔵などの産業用用途にも、リチウムイオン電池を代表とする二次電池の適用が図られている。このような二次電池の用途拡大に伴って、大容量化、高エネルギー密度化が求められている。
【0003】
また、これら高性能化に加えて、高安全性化も重要な課題となっている。二次電池としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等がある。ニッケルカドミウム電池はカドミウムが有毒であることなどから、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池への転換が進んでいる。現存する二次電池の中でも、特にリチウムイオン二次電池は高エネルギー密度化に適しており、現在でもその開発が盛んに進められている。
【0004】
このニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池の主要な構成は、表面に負極活物質層を形成した金属集電体(負極)と、電解質を保持するセパレータと、表面に正極活物質層を形成した他の金属集電体(正極)である。ニッケル水素電池は、正極にニッケル酸化物、負極に水素吸蔵合金を採用している。また、リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム金属酸化物、負極に黒鉛などのカーボン材料を採用している。電池構造としては、帯状の負極、セパレータ、正極を順次渦巻き状に巻いた円筒型構造と、短冊状の負極、セパレータ、正極を交互に配置した積層型構造とに大別される。帯状の負極、セパレータ、正極を巻き取るための軸芯等の発電に関与しない体積部分が多くある円筒型構造よりも、短冊状の負極、セパレータ、正極を交互に配置した積層型構造の方が、一般的に高体積エネルギー密度化に適している。これは、積層型は、巻取りのための軸芯が不要であることや、外部出力用の正極及び負極端子を同一面に形成し易いことから、発電に寄与する部分以外の体積を少なくできるからである。このような二次電池は、この電池構造体の外装缶と外部出力用の正極及び負極端子を有する蓋板で密閉されている。
【0005】
従来一般的にこのような二次電池の組立は、外装缶に蓋板で封止する前に、外部出力用の正極及び負極端子と、負極、セパレータ、正極からなる電極群との電気的接続を行う。外部出力用の正極及び負極端子は、端子本体と端子本体の基部に形成された端子基体部とを備えている。電池缶外部に露出している部分を端子本体と呼び、電池缶内部に納まっている部分を端子基体部と呼ぶ。通常、この端子基体部において、電極群との電気接続を行う。その後、外部出力用の正極及び負極端子と電極群が組みつけられて一体となった構造体は蓋板の開口部に絶縁性部材を介して取り付けられる。この蓋板付きの構造体を外装缶の開口部に挿入後、蓋板と外装缶を封止する。外装缶の中では、電池構造体の構成要素であるセパレータ、正極、負極が電解液で含浸されている。そして、安全性を確保するため、安全弁などの安全機構部が付与されている。エネルギー密度が高い大容量の電池は、過充電等の誤使用や異物の混入などによる短絡等によって、従来の電池に比べて、破裂、発火等が生じた場合の被害規模が大きくなる。
【0006】
従来の安全弁は、例えば、特許文献1のように、正極及び負極端子と同じ平面にある蓋板に配置されたものや、特許文献2のように、電池缶側面に安全弁を配置したものなどが提案されている。また、安全弁が動作した際に、発生したガスがスムースに電池缶外へ排出できるように、特許文献2では、ガス抜き孔(安全弁)が渦巻電極群の捲回面の投影した電池缶面内にあることで、発生するガスが巻軸に沿ってスムースに、電池缶側壁に設けたガス抜き孔を通して、電池外へ排出されることが記載されている。また、特許文献3には、円筒形電池において、円板状の封口板の中央に極柱を配置し、極柱の外周面における防爆弁の配置方向とは異なった周方向位置にリードの接合面を設けて、複数の防爆弁とリードを、封口板に対して垂直方向から見て相互に重ならない位置に配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-8616号公報
【特許文献2】特許3573295号公報
【特許文献3】特許4233671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
大容量電池の場合、破裂した際のガス放出量も多くなるため、安全弁の面積をなるべく大きく取ることが必要である。安全弁の面積が電池容量に対して小さ過ぎると、生成ガス量に対して電池缶外に放出されるガス量が小さいため、安全弁が作動しても電池缶の内圧上昇が止まらず、電池缶自体の破損に至る恐れがある。また、電池缶内部で生成ガスの流れが妨げられて滞留し内圧上昇を招かないように、正極、負極、セパレータからなる金属集電板群及び端子等の通電部品と安全弁の配置関係に配慮が必要である。高い内圧で破損するほど、破損時の衝撃などにより、周囲環境に及ぼす影響が大きくなる。よって、大容量化するほど、安全弁の面積は広くとるとともに、電池缶内部のガス流れをスムースにする必要がある。
【0009】
また、大容量電池の放電時の温度上昇を抑えるため、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品を大きくする必要がある。これは、大容量になるほど、放電時の電流が大きくなるため、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品の電気抵抗を小さくしないと、通電部品部分での発熱が増大し、電池の許容安全温度までの余裕が少なくなってしまうからである。このように、二次電池の大容量化に伴い安全弁や通電部品の大型化といった課題がある。
【0010】
一方、エネルギー密度を高めるためには、なるべく電池体積を小さくする必要があり、発電要素以外、すなわち、安全弁や端子等の通電部品はなるべく小さくする必要がある。このように、大容量電池において、大容量化と高エネルギー密度化の両方に対応するためには、安全弁や端子等の通電部品の大きさに対して相反する要求がある。特に、100Ah以上の大容量の電池の場合、蓄えられているエネルギー量が大きいことから、電池はコンパクトでありながら、安全弁はなるべく大きいことが望まれる。
【0011】
エネルギー密度を高めるためには、特許文献1のように、安全弁や外部出力用の正極及び負極端子を同じ平面内に集約することが望ましい。しかしながら、大容量化に伴い、通電抵抗による発熱を抑えるために、外部出力用の正極及び負極端子等の通電部品や、活物質層が塗布されている金属集電体に形成され前記通電部品に電気的接続されているタブの幅も広く取る必要があるが、特許文献1では、端子等の通電部品や端子に接続されるタブの形状に関しては配慮されておらず、大容量化に伴う端子やタブ等の通電部品の発熱を抑える課題に対してはなんら開示されていない。
【0012】
このため、大容量化に伴い安全弁を大きくし、且つ、端子等の通電部品やタブの形状を大きくし寸法幅を広げると、安全弁の直下にまで、タブや端子等の通電部品が広がって配置される可能性があり、異常時の生成ガスの排出がスムースに行われなくなる可能性がある。
【0013】
一方、特許文献2のように、異常時に発生するガスがスムースに流れるようにするため、電池缶側面に安全弁を配置すると、正極及び負極端子が配置させている蓋板以外にも、電池缶に穴あけ加工等が必要になりコスト高につながる。また、安全弁が配置されている電池缶面と外部端子が配置されている電池缶面の外部周囲は、ガスを開放する空間や配線空間を設ける必要があるが、特許文献2では安全弁と外部出力用の端子をそれぞれ別々の電池缶面に配置してあるため、2面の周囲に自由空間を設ける必要が生じ、安全弁と外部端子とが同一の電池缶面に配置される場合に比べて、電池の設置等に著しく制約が生じることになる。
【0014】
また、円筒形電池である特許文献3のように、外部出力用の端子を電池缶の両端に配置する場合は、中央に電極の端子である極柱を配しているため、安全弁を中央に配置できないとともに、安全弁一つの大きさには限界があり、円筒電池缶半径から極柱半径を引いた値以下にしか大きくできない。このため、極柱を大きくすると、安全弁の径を大きくすることは困難となる。また、外部出力用の端子を電池缶の両端に配置しているため、発電要素以外の体積が多く必要であり、端子を同一面に集約した場合に比べて、エネルギー密度を高めることができない。また、円筒形電池は金属集電体間で発生するガスは巻軸に沿って排出されるが、積層型の金属集電体は矩形のため発生したガスは電池缶内で四方に広がり、電池缶内でガスが充満しやすいので、より速やかに排出することが望まれる。
【0015】
このように、大容量で、外部出力用の端子や安全弁が電池蓋面に集約した積層型電池に適用する場合、エネルギー密度を高めた電池において、安全弁を大きく取れないことが課題となっている。
【0016】
本発明の目的は、安全弁が作動した際、電池内部のガス放出が確実に行える安全性に優れた大容量でエネルギー密度の高い電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一つの手段として、表面に負極活物質層が形成された金属集電体と、電解質を保持するセパレータと、表面に正極活物質層が形成された他の金属集電体とを短冊形状に交互に配置した積層体を有する電池であって、積層体を内包する電池缶の蓋板に安全弁が形成され、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品と安全弁とは同一の蓋板に配置され、安全弁は正極及び負極の一対の通電部品間の蓋板の中心線の少なくとも一部を覆うように配置されており、蓋板の中心線から通電部品の安全弁側の端部までの距離が、蓋板の中心線から安全弁の最外径までの距離以下であり、安全弁の動作時における開口部から蓋板面への投影領域と通電部品から蓋板面への投影領域とが重ならない構成となる二次電池が考えられる。これにより、通電部品が大型化しても、安全弁開口部と通電部品が重ならないため、積層体から安全弁までのガスを開放する経路が確保され、異常時に発生するガスがスムースに電池缶外へ排出され、安全性が確保でき、安全性を高めた大容量の電池構造を提供できる。
【0018】
別の手段として、安全弁が、積層体内における金属集電体の積層方向と直角方向に配置されている構成となる二次電池が考えられる。これにより、積層体の各金属集電体間で発生したガスは、各金属集電体の間を通り、積層方向と直角方向に排出されるため、ガスの放出がスムースに行われ、安全性が確保でき、安全性を高めた電池構造を提供できる。
【0019】
また別の手段として、安全弁が円弧を有する形状であって、円弧の略中心が蓋板の対角線交差中心に位置し、積層体を構成している金属集電体の長手方向の端部に形成された電気接続用タブと通電部品とを接続する位置が、安全弁の外径よりも蓋外縁部側に配置されている構成となる二次電池が考えられる。これにより、蓋板中央に安全弁を配置可能となり、安全弁の口径を大きくとれるとともに、タブと通電部品の接続位置が安全弁の外径よりも蓋板外縁部側に配置することで、タブと通電部品の接続位置が安全弁と重ならず、積層体から安全弁までのガスの排出経路が確保されて、異常時に発生するガスがスムースに電池缶外へ排出され、安全性が確保でき、安全性を高めた大容量の電池構造を提供できる。その際、タブと通電部品とが接続される位置が、蓋板の中心線を除く、蓋板の積層方向の長さを略4等分した等分線上に配置される構成となる二次電池とすると、その効果は高まる。また、蓋板の中央が対称軸となるように通電部品を配置した場合、開いた形状を有する溝パターンを形成した円形金属箔を安全弁とした場合や安全弁の動作時に大口径を形成する形状となる溝パターンを形成した円形金属箔を安全弁とした場合にも、その効果は高まる。
【0020】
さらに別の手段として、安全弁が、溝パターンが形成された円形金属箔であり、溝パターンは安全弁の中心を通り、外周部に沿った円弧を有し、交差を伴わない一筆書き状に連続してつながっている構成となる二次電池が考えられる。これにより、異常時に発生するガス圧によって安全弁が作動する場合、溝パターンが、安全弁の中心を通るため、開裂圧のバラツキが少なく、外周部に沿った円弧を有するため、周長に対する開口径を大きくとることができ、また一筆書き状に連続してつながっているため、溝パターンにおける亀裂がスムースに伝播するとともに、ガス排出による圧力で安全弁が飛散することのない安全性を高めた大容量の電池構造を提供できる。その際、溝パターンの形状は、略アルファベットのsあるいはe、または渦巻状であることが望ましいが、これらの形状と類似する形状であれば、程度差はあっても、効果が得られることは明らかである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安全弁が作動した場合に、電池内部に発生したガスの電池外部への放出が、より確実に、より安全に行え、大容量でエネルギー密度が高く、より安全な二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を説明する電池を蓋板方向から見た平面投影図である。
【図2】本発明の一実施例を説明する電池を側面から見た概略断面図である。
【図3】本発明の一実施例を説明する電池を蓋板方向から見た平面投影図である。
【図4】本発明の一実施例を説明する電池が備える安全弁の平面図である。
【図5】本発明の一実施例を説明する電池が備える安全弁の平面図である。
【図6】本発明の一実施例を説明する電池が備える安全弁の平面図である。
【図7】本発明の一実施例を説明する電池が備える安全弁の平面図である。
【図8】従来の電池が備える安全弁の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例による電池を蓋板方向から見た投影図であり、図2は図1の電池を側面方向から見た平面透視図である。電池容量200Ahの積層型リチウムイオン二次電池である。
【0025】
図2において、積層体1は、表面に負極活物質層を形成した金属集電体(銅)と、電解質を保持するセパレータと、表面に正極活物質層を形成した他の金属集電体(アルミニウム)とを短冊形状に交互に積層した構成となっている。積層体1の厚み等の寸法や積層枚数は、必要な電池容量によって決まる。電池缶2は矩形の積層体を内包するため、角形をしている。角形電池は、帯状の前記金属集電体やセパレータを円柱状に巻いて円筒形の電池缶に入れる場合にくらべ、巻き取るための軸芯等がないため、体積エネルギー密度を高くできる利点がある。電池缶2の材質は例えばアルミニウムやステンレス鋼などの金属材料が機械的強度の面から好ましいが、金属材料に限らず、電解液に侵食されない樹脂、例えば、ふっ素系、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ系、POM、PEEKなどの樹脂を用いてもよい。樹脂系の電池缶は、金属系の電池缶に比べ、材質の密度が小さいため軽くなる利点がある。一方、樹脂系は強度的に弱く、また、熱伝導性が小さいため放熱性に劣るなどの欠点がある。
【0026】
積層体1の構成材料である金属集電体の長手方向の端部に電気接続用タブ6が形成されている。タブ6と通電部品4は、超音波接合により固着されている。通電部品4は、正極及び負極の外部出力端子及びタブを接合したタブ融着板やタブ融着板を前記外部出力端子に押し付ける押し板やナット、ワッシャ、ボルト等の金属製締結部材などの副通電部品から構成され、電気的接続がなされている部品類のことである。正極及び負極の外部出力端子は、電池缶から外部に露出している部分の端子本体部10と電池缶内部に納まっている部分の端子基体部11に大別される。積層体1に形成されているタブ6は、容量によって決まり、数十Ahから数百Ahの容量の電池は数十枚から数百枚のタブ枚数に及ぶ。本実施例の図では、複数に束ねたタブを簡便に表すため、例えば、図1のタブ6のように、1つの図形として表している。タブ6の枚数が多い場合は、通電部品4は複数の副通電部品(図示せず)を用い、各副通電部品に分けてタブ6を超音波接合してもよい。タブ6と通電部品4の接続は、超音波接合以外にも、カシメや圧着などの電気的接続方法を用いてもよい。図1においては、通電部品4から蓋板面への投影領域9と安全弁3の動作時の開口部から蓋板面への投影領域8の位置関係をわかりやすくするため、積層体を省略して図示している。
【0027】
図1において積層体は省略されているが、積層方向は、蓋板7の短辺方向であり、タブ6と直交方向である。タブ6を通電部品4に接続する位置は、中心線上ではなく、蓋板7の積層方向の長さを略4等分した等分線上に設けた。分けて接続することにより、通電部品4の中心までタブを取り回すのに比べて、タブ長さが半分短く済んだ。
【0028】
図1に示すように、安全弁3は正極及び負極の一対の端子間の蓋板の中心線上に配置されており、蓋板の中心線から安全弁の最外径までの距離はbである。前記蓋板7の中心線から前記通電部品4における前記安全弁側の端部までの距離はaである。通常、安全弁と通電部品が重なるのを防ぐため、前記蓋板7の中心線から前記通電部品4における前記安全弁側の端部までの距離aが、蓋板の中心線から安全弁の最外径までの距離bより大きくとるが、大容量化に対応して通電部品を大きくできないため、大容量化に伴う放電電流の増加が困難となる。また、安全弁の開口部と通電部品の蓋板への投影領域が重なっていると、異常時に発生したガスが安全弁から排出される際、通電部品に妨げられたり、金属集電板の溶融片が通電部品のところで詰まったりする恐れがある。本実施例では、蓋板中心線から通電部品4における安全弁側の端部までの距離aは、蓋板中心線から安全弁の最外径までの距離bよりも小さくなっている。すなわち、通電部品4の端部を安全弁最外径よりも蓋板中央寄りに配置している。また、タブ6と通電部品4の接続位置は、安全弁3の外径よりも蓋外縁部側に位置している。このことにより、タブ6との接合面積を広くとることが可能となり、大容量化に伴う通電抵抗の増大を抑制できた。しかも、安全弁の開口部と通電部品の蓋板への投影領域が重なっていないため、異常時に発生したガスが安全弁から排出される際、通電部品に妨げられたり、金属集電板の溶融片が通電部品のところで詰まったりすることがなくなった。
なお、蓋板7には通電部品4が通る穴が空いており、シール部品(図示せず)、絶縁部品(図示せず)や締結部品(図示せず)を介して通電部品4が蓋板7に固定される。もちろん、蓋板7と通電部品4との接続方法はこれに限らず、蓋板7と通電部品4をモールド成形等により一体に成形してもよい。なお、通電部品4は蓋板7とは電気的に絶縁されている。
【0029】
安全弁3は円形状であって、円形状の中心が蓋板7の対角線交差中心に1つ配置されている。電池内部で気化したガスにより電池内圧が上昇し、安全弁3の耐圧よりも大きくなると、安全弁の開口部が溝パターンに沿って開裂し、電池内部のガスが安全弁を通して電池缶外に開放される。安全弁は、積層体内における金属集電体の積層方向と直角方向に配置されており、発生したガスは、金属集電体の層間を通り、スムースに安全弁より排出される。また、安全弁の円形状の中心が蓋板7の対角線交差中心にあることで、安全弁が蓋の端部近くにあるよりも、電池が傾いた場合でも、缶内にガスの滞留が生じにくい。安全弁の形状は、正円形以外でも楕円形や角丸長方形や卵形形状など円弧を含む形状であってもよい。安全弁3は、円形のステンレス鋼薄板にエッチングによって溝パターンが形成されており、所定の圧力で溝の部分から破断し、溝パターンに沿って開口する方式となっている。開裂する圧力は、安全弁の外径と溝パターン径の関係によって調整される。
【0030】
安全弁3の溝形成方式としては、エッチング以外にも、加圧によって溝を形成してもよいし、レーザーや切削加工により溝を形成してもよいし、溝形成方式を特定するものではない。また、安全弁3はレーザー溶接により蓋板7に接合した。安全弁を蓋板に形成する方式としては、本実施例に限らず、例えば、蓋板7に直接、安全弁3を切削や加圧により機械的に形成する方式でも良いし、安全弁の形成方式を特定するものではない。また、安全弁3の材質もステンレス鋼以外にもアルミニウム、ニッケル等やふっ素系、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂でも良く、水分を通さず、蓋板材と同じ材質や接合しやすい材質から選んで用いることができる。
【0031】
図1において、安全弁3は、蓋板7の対角線中心に配置されている。安全弁3の動作時には、この溝パターン外径が開口径となる。正極及び負極の通電部品4は、蓋板7中央を対称軸として左右対称に配置されている。このことにより、金属集電板から通電部品に流れる電流の分布が均等になる利点がある。安全弁3の動作時の開口部から前記蓋板面への投影領域8と、前記正極及び負極の外部出力端子等の通電部品4から前記蓋板面への投影領域9は重なっていない。すなわち、安全弁の動作時における開口部から蓋板面への投影領域と正極及び負極の外部出力端子等の通電部品から蓋板面への投影領域とは、一部または全部が重ならないことにより、電池缶内部の主に積層体で発生したガスが、積層体から蓋板の安全弁の開口部までの空間内において、正極及び負極端子等の通電部品等に妨げられずに通ることができるため、ガス放出が確実に行われて安全性が確保でき、安全性を高めた電池構造を提供できる。さらに本実施例1の電池を作製し、過充電試験を行い、内圧、温度、電池電圧、電流を測定した。安全弁が動作するまで連続充電を行った結果、安全弁は所定の圧力で開放され、ガスが放出された。安全弁が開放された後は、金属集電板が安全弁や通電部品に詰まったり、突沸のような急激な圧力変動が見られたりすることはなく、時間とともに内圧は低減し、安全性が高い電池であることが確認できた。
【0032】
<実施例2>
図3は本発明の実施例による電池を蓋板方向から見た平面投影図である。実施例1よりも電池容量を1.25倍に大容量化した250Ah積層型リチウムイオン二次電池を作製した。正極及び負極活物質層の改良により、容量密度を向上させた。蓋板7寸法は、実施例1と同じである。通電部品4において、端子基体部11は、蓋板に対して垂直に起立している外部接続端子部分、すなわち、端子本体部10の周辺が凹んだ構造となっている。安全弁3の動作時の開口径から蓋板面への投影領域8と、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品4から蓋板面への投影領域9は重なっていない。蓋板7の幅は実施例1と同じであり、蓋に配置されている外部出力用の正極と負極端子間の距離は実施例1と同じであるが、安全弁3の直径、及び、開口部直径を大きくした。安全弁3は、蓋板7の対角線交差中心に位置している。
【0033】
本実施例では、蓋板中心線から通電部品4における安全弁側の端部までの距離aは、蓋板中心線から安全弁の最外径までの距離bよりも小さくなっている。すなわち、通電部品4の端部を安全弁最外径よりも蓋板中央寄りに配置している。このことにより、タブ6との接合面積を広くとることが可能となり、大容量化に伴う通電抵抗の増大を抑制できた。
【0034】
積層体から出ている電気接続部位、すなわちタブ6は、安全弁の外径よりも蓋外縁部側で通電部品4と接合されている。また、タブ6は枚数が多いため、正極・負極ごとに、4箇所に分けて接合されている。
【0035】
このように、タブ6と通電部品4との接続位置を蓋外縁部側に配置したことにより、安全弁の直径を大きくとることができた。すなわち安全弁が円形状で、その円形状の中心が蓋板の対角線交差中心に位置し、積層体を構成している金属集電体の長手方向の端部に形成された電気接続用タブと、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品とを接続する位置が、安全弁の外径よりも蓋外縁部側に配置されていることにより、電気接続用タブと通電部品との接合位置と安全弁の位置において、蓋板面への各投影領域が重ならないため、円形状の安全弁を広く形成することが可能になり、大容量化した電池においても安全性を確保した電池構造を提供できる。
【0036】
安全弁は図4のようにS字の溝5を形成した。溝5のパターンは、安全弁の中心を通る直線と、安全弁の円周外縁に沿った円弧から成り、連続的に溝5が形成されている。これより、安全弁3の動作時には、溝パターンの破断により、開口部が形成される。すなわち、この開口部の面積が、安全弁の動作時における開口部から蓋板面への投影領域8である。開口時に安全弁の破片が飛び散らないように、溝パターンは閉じた形状を有していない。すなわち、開口したあとでも、溝以外の安全弁を形成している面は電池の一部として蓋板7の一部として留まっている。
【0037】
溝はエッチングにより形成した。安全弁に用いた箔はステンレス鋼であり、実施例1と同じ材質である。実施例1と同様に、ステンレス鋼以外でも、水分を通さず、蓋板材同じ材質や接合しやすい材質から選んで用いることができる。溝形状は、エネルギーを瞬時に放出する必要から、安全弁の円周外縁に近い方が開裂したときに大口径となるようにした方がよい。しかしながら、溝円弧が外周部に近いほど、安全弁を蓋板に付ける際の熱歪等の影響を受け安く、開裂圧にバラツキが生じやすい。
【0038】
本発明の溝パターンは、中心部を通るため、開裂溝パターンのうち、この中心付近で最初に亀裂が入り、溝部を亀裂が伝播し、連続して形成されている外周部の円弧部分まで伝播して弁が開く。このため、開裂圧にバラツキが少なく、且つ、開口径を大きくとることができた。溝パターンは図4以外にも、例えば、図5、図6、図7のように、安全弁の中心を通り、外周部に沿って円弧を形成するパターンであればよい。
【0039】
図5は、安全弁中心を起点とした渦巻パターンであり、動作時は、中心付近の溝部から亀裂が入り、最外周溝部まで溝に沿って亀裂が伝播し、安全弁が開口する。
【0040】
図6は、寺の地図記号に類似した溝パターンであり、動作時は、中央の溝が交差している付近から開裂し、4つの部分に分かれて開口される。
【0041】
図7は、アルファベットのeの字に類似したパターンであり、中心を通る直線部の溝から開裂し、連続してつながっている外周部の円弧状の溝へ亀裂が伝播して、安全弁が開口する。
【0042】
図5、図6及び図7とも、安全弁3の動作時の開口径は本実施例と実質的に同じになる。特に、図4、図5、図7の各溝パターンは交差を伴わない一筆書き状に連続してつながっており、溝パターンにおける亀裂伝播の向きが一義的に決まるため、確実に開裂することができる。ここで、溝パターンは、S字形状、渦巻き形状、寺の地図記号に類似した形状、アルファベットのeの字に類似した形状に特定されることなく、円弧を有する形状であれば、効果が得られる。
【0043】
このように、安全弁が溝パターンを形成した円形金属箔から成り、溝パターンは安全弁の中心を通り、且つ外周部に沿った円弧からなり、溝パターンは一筆書き状に連続してつながっていることにより、安全弁の開口圧のばらつきが小さくなり、所定の圧力で開口することができるため、安全性が確保でき、安全性を高めた電池構造を提供できる。
【0044】
図4、図5、図6、図7の安全弁と比較のために図8のような中心を通らない溝パターンを作製し、開裂試験を実施したところ、図4から図7の溝パターンの開裂圧のばらつきは、図8の溝パターンの開裂圧のばらつきに比べて、小さいことがわかった。
【0045】
本実施例2の電池を作製して、過充電試験を行い、内圧、温度、電池電圧、電流を測定した。安全弁が動作するまで連続充電を行った結果、安全弁は所定の圧力で開放され、ガスが放出された。安全弁が開放された後は、金属集電板が安全弁や通電部品に詰まったり、突沸のような急激な圧力変動が見られたりすることはなく、時間とともに内圧は低減し、安全性が高い電池であることが確認できた。
【0046】
本実施例2のように、活物質材料の特性向上により、積層体において同じ体積当たりの容量が増加した場合でも、電池缶寸法を大きくすることなく、安全弁の大面積化が図れ、安全性を確保できたる。また、寸法が同じ金属集電板を用いて、積層枚数を変えることで大容量化した場合でも、電池缶の幅を大きくすることなく、安全弁の大面積化が図れ、安全性を確保できる。
【符号の説明】
【0047】
1…積層体、2…電池缶、3…安全弁、4…通電部品、5…溝、6…タブ、7…蓋板、8…安全弁の動作時における開口部から蓋板面への投影領域、9…通電部品から蓋板面への投影領域、10…端子本体部、11…端子基体部、a…正極及び負極の1対の端子間の蓋板中心線からの通電部品端部までの距離、b…正極及び負極の1対の端子間の蓋板中心線から安全弁外径までの距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に負極活物質層が形成された金属集電体と、電解質を保持するセパレータと、表面に正極活物質層が形成された他の金属集電体とを短冊形状に交互に配置した積層体を有する電池であって、前記積層体を内包する電池缶の蓋板に安全弁が形成され、正極及び負極の外部出力端子等の通電部品と前記安全弁とは同一の蓋板に配置され、且つ、前記安全弁は正極及び負極の一対の通電部品間の蓋板の中心線の少なくとも一部を覆うように配置されており、前記蓋板の中心線から前記通電部品の前記安全弁側の端部までの距離が、前記蓋板の中心線から前記安全弁の最外径までの距離以下であり、且つ、前記安全弁の動作時における開口部から前記蓋板面への投影領域と前記通電部品から前記蓋板面への投影領域とが重ならない構成とすることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記安全弁は、積層体内における前記金属集電体の積層方向と直角方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記安全弁は、円弧を有する形状をしており、該形状の中心は、前記蓋板の対角線交差中心に位置し、且つ、前記積層体を構成している金属集電体の長手方向の端部に形成された電気接続用タブと前記通電部品とを接続する位置が、前記安全弁の外径よりも蓋外縁部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記タブと前記通電部品とが接続される位置が、前記蓋板の中心線を除く、前記蓋板の積層方向の長さを略4等分した等分線上に配置されることを特徴とする請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記一対の通電部品は、前記蓋板の中央が対称軸となるように、配置されていることを特徴とする請求項3に記載の二次電池。
【請求項6】
前記安全弁は、溝パターンが形成された円形金属箔であり、前記溝パターンは、開いた形状を有することを特徴とする請求項3に記載の二次電池。
【請求項7】
前記安全弁は、溝パターンが形成された円形金属箔であり、前記溝パターンは、前記安全弁の動作時に大口径を形成する形状であることを特徴とする請求項3に記載の二次電池。
【請求項8】
前記安全弁は、溝パターンが形成された円形金属箔であり、前記溝パターンは、前記安全弁の中心を通り、外周部に沿った円弧を有し、交差を伴わない一筆書き状に連続してつながっていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記溝パターンの形状が、略アルファベットのsあるいはe、もしくは渦巻き状、またはこれらに類似する形状であることを特徴とする請求項8に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−192550(P2011−192550A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58224(P2010−58224)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】