説明

二部材の嵌合装置

【課題】蓋部の弾性爪部を本体の嵌合部に嵌合させることにより蓋部を本体に装着する構成において、弾性爪部が嵌合部の正規位置に嵌合したことを容易に確認することができる二部材の嵌合装置を提供する。
【解決手段】ノブ1の背面側を閉鎖する閉鎖部12に、キャップがノブ1に装着された状態で嵌合部10に嵌合する弾性爪部15の先端位置を視認可能な窓部16を設けると共に、その窓部16に、嵌合部10に対して正規の嵌合位置で嵌合した弾性爪部15の先端位置を示す凹部16aを設けた。これにより、弾性爪部15が嵌合部10の正規位置に嵌合しているか否かを容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋部を本体に嵌合する二部材の嵌合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓋部に設けられた弾性爪部を、本体に設けられた嵌合部に嵌合することにより、蓋部を本体に嵌合状態で装着することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−101543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓋部を本体に嵌合状態で装着した際にがたつきが生じないように蓋部を本体に圧入した状態で弾性爪部を嵌合部に嵌合するようにしている。このため、蓋部を本体に装着した際に、弾性爪部が嵌合部に対して半嵌合状態であった場合でも、外見からは蓋部が本体に嵌合状態で装着されているように見える。
このような課題を解決するために、特許文献1では、本体に窓部を設け、その窓部から嵌合部に対する弾性爪部の嵌合状態を確認することが記載されている。
しかしながら、特許文献1のものでは、弾性爪部が嵌合部に対して半嵌合状態であることを一目で確認することは困難な場合がある。つまり、半嵌合状態といっても、嵌合部に対して半嵌合状態となる弾性爪部の位置によっては一目で半嵌合状態であることの確認が困難な場合があるからである。このため、弾性爪部が嵌合部の正規位置に嵌合していない場合には、例えば衝撃により弾性爪部が嵌合部から外れてしまって蓋部が本体から外れてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、蓋部の弾性爪部を本体の嵌合部に嵌合させることにより蓋部を本体に装着する構成において、弾性爪部が嵌合部の正規位置に嵌合したことを容易に確認することができる二部材の嵌合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、背面が閉鎖部で閉鎖され、前面が開口した開口空間部に嵌合部が設けられた本体と、嵌合方向に突出した弾性爪部が設けられた蓋部とを備え、前記弾性爪部が前記嵌合部に嵌合することで前記開口空間部を閉鎖するように前記蓋部を前記本体に嵌合状態で装着する二部材の嵌合装置において、前記閉鎖部に設けられ、前記蓋部が前記本体に装着された状態で前記本体に対する前記蓋部の嵌合方向と反対方向から前記弾性爪部の先端位置を視認可能な窓部と、前記窓部の周縁部に設けられ、前記嵌合部に対して正規の嵌合位置で嵌合した前記弾性爪部の先端位置を示す嵌合確認部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓋部を本体に装着すると、蓋部の弾性爪部が本体の嵌合部に嵌合し、その嵌合状態を本体の閉鎖部に設けられた窓部から確認することができる。このとき、弾性部材が嵌合部に対して半嵌合状態となって撓んだ状態となると、嵌合確認部が示す正規の嵌合位置から弾性爪部の先端がずれるようになるので、弾性爪部が嵌合部の正規位置に嵌合しているか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態におけるキャップの装着状態で示すノブの縦断側面図
【図2】キャップの装着状態で示すノブの背面図
【図3】キャップとノブの分解斜視図
【図4】キャップの装着状態で示すノブの斜視図
【図5】半嵌合状態を示す図1相当図
【図6】半嵌合状態を示す図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1はキャップの装着状態で示すノブの縦断側面図、図2はキャップの装着状態で示すノブの背面図、図3はキャップとノブの分解斜視図、図4はキャップの装着状態で示すノブの斜視図である。ノブ1(本体に相当)は、例えば図示しないシートヒータスイッチの温度調整用ボリュームのシャフトに装着されるもので、回転操作によりシートの内部から吹き出す温風の温度を調整するためのものである。キャップ2(蓋部に相当)は、ノブ1の前面に装着されることで蓋部材及び意匠部材として機能する。
【0010】
まず、ノブ1について説明する。ノブ1は樹脂製であり、円柱形状の摘み部3の内周側に開口空間部4が形成されており、その開口空間部4に、摘み部3の内周面と連結部5により支持されたボス部6が位置している。摘み部3の外周面には滑り止めと意匠を兼ねるローレット部7が設けられている。このボス部6には、図示しない温度調整用ボリュームのシャフトが背面側から挿入される挿入穴部8が形成されており、その形状は、温度調整用ボリュームのシャフトの形状である平面取り加工に対応している。尚、ボス部6には図示しないスプリングが装着されるもので、そのスプリングにより挿入されたシャフトの抜け止めが図られる。
【0011】
ボス部6の外周面においてシャフトの平面取り加工に対応する部位には平面部9が形成されており、その平面部9にボス部6の軸心方向に沿った傾斜面部10aを有した凸状の嵌合部10が形成されている。
摘み部3とボス部6とを連結する連結部5の前面側端面には指標部11が突出形成されている。この指標部11は摘み部3の回転位置を示すものである。
【0012】
次にキャップ2について説明する。キャップ2は透光性の樹脂製であり、円盤状の意匠部13の背面には複数の保持部14が背面側、つまりノブ1への嵌合方向に突出して一体形成されている。これらの保持部14の内周側はボス部6の外周面に対応した形状をなしており、ノブ1にキャップ2が装着された状態でボス部6に対して保持部14が位置決め状態で保持されるようになっている。キャップ2においてボス部6の平面部9に対応した部位には平板状の弾性爪部15が背面側に突出して一体形成されている。弾性爪部15の先端部には穴部15aが形成されていると共に当該先端部においてノブ1の平面部9と対面する部位には傾斜面部15bが形成されている。ノブ1にキャップ2が装着される際に、弾性爪部15の傾斜面部15bが嵌合部10の傾斜面部10a上を滑ることで撓んだ状態となり、最終的に弾性爪部15の穴部15aが嵌合部10に嵌合するようになっている。この場合、弾性爪部15はボス部6の平面部9から少し離間した位置で嵌合部10に嵌合するように設定されている。これは、弾性爪部15を平面部9に密着して嵌合するように設定した場合には、弾性爪部15が平面部9から押されて撓むことがあり、その場合には、嵌合部10に対する弾性爪部15の嵌合が不完全となる虞があるからである。
【0013】
意匠部13にはスリット13aが形成されており、そのスリット13aをノブ1の指標部11に嵌合することで意匠部13と指標部11とが一体となる。この場合、指標部11は意匠部13の形状に対応した形状に形成されており、スリット13aに指標部11が嵌合した状態で意匠部13と指標部11とが面一形状となる。また、スリット13aの内側には指標部11への嵌合方向を指向する微小ノブが形成されており、キャップ2を指標部11に嵌合した状態で両者が圧入状態で嵌合するようになっている。
【0014】
ここで、ボス部6の背面側は閉鎖部12で閉鎖されており、その閉鎖部12において嵌合部10の背面となる部位には当該閉鎖部12を貫通する矩形状の窓部16が形成されている。この窓部16は、平面部9に設けられた嵌合部10に嵌合するノブ1の弾性爪部15の嵌合状態を視認可能とするために設けられている。つまり、窓部16の内周面において弾性爪部15の幅方向となる部位には陥没形状の凹部16a(嵌合確認部に相当)が形成されている。この凹部16aは、嵌合部10の正規の嵌合位置に嵌合した弾性爪部15の位置を示す形状に形成されており、その幅寸法は、弾性爪部15の厚さ寸法と同一である。
尚、ボス部6の背面側には図示しないライトガイドが設けられ、ライト点灯時にはライトガイドからの光により指標部11が明るくなるようになっている。
【0015】
次に、上記構成の作用について説明する。
キャップ2をノブ1に装着するには、キャップ2のスリット13aとノブ1の指標部11とを位置合わせた状態でキャップ2の保持部14がノブ1のボス部6を保持するように押し込む。すると、キャップ2の保持部14がノブ1のボス部6を保持しながら進行し、その進行に伴って弾性爪部15の先端部の傾斜面部15bが嵌合部10の傾斜面部10a上を滑るので、弾性爪部15がボス部6の平面部9と反対側に撓むようになる。そして、キャップ2のスリット13aをノブ1の指標部11に強く圧入すると、弾性爪部15の穴部15aが嵌合部10を乗り越えることで穴部15aが嵌合部10に嵌合するようになるので、キャップ2をノブ1に嵌合状態で装着することができる。この装着状態では、ノブ1の開口空間部4がキャップ2により完全に閉鎖されることになる。
【0016】
ところで、上述したようにキャップ2のスリット13aがノブ1の指標部11に圧入されることから、弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10に嵌合しない半嵌合状態となった場合であっても、外見からはキャップ2がノブ1に嵌合状態で装着されているように見える。しかしながら、このような半嵌合状態では、衝撃によりキャップ2がノブ1から外れてしまう虞がある。
【0017】
そこで、ノブ1の背面側から閉鎖部5に設けられた窓部16を通じて嵌合部10に対する弾性爪部15の嵌合状態を確認する。
図5は半嵌合状態でのキャップ2の装着状態を示すノブ1の縦断面図、図6はその背面図である。弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10に半嵌合状態で撓んでいる場合は、図6に示すように弾性爪部15の先端が穴部15aの凹部16aから外れた位置に見える。これに対して、図1及び図2に示すように弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10の正規位置に嵌合している場合は、図2に示すように弾性爪部15の先端が窓部16の凹部16aに一致した位置して見える。これにより、弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10の正規位置に嵌合しているか否かを容易に確認することができる。この場合、凹部16aの幅寸法は、弾性爪部15の厚さ寸法と同一であることから、弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10の正規位置に嵌合している場合は、弾性爪部15が凹部16aに完全に一致するようになるので、そのことに基づいて弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10の正規位置に嵌合しているか否かを確実に確認することができる。
【0018】
そして、上述のような確認の結果、弾性爪部15の穴部15aがボス部6の嵌合部10に半嵌合状態であることを確認した場合は、キャップ2をノブ1に対してさらに強く押し込んでから、窓部16を通じて嵌合状態を再び判断することを繰返す。
以上のようにして、キャップ2をノブ1に嵌合状態で確実に装着することができる。
【0019】
このような実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
ノブ1の背面側を閉鎖する閉鎖部12に、キャップ2がノブ1に装着された状態で嵌合部10に嵌合する弾性爪部15の先端位置を視認可能な窓部16を設けると共に、その窓部16に、嵌合部10に対して正規の嵌合位置で嵌合した弾性爪部15の先端位置を示す凹部16aを設けるようにしたので、弾性爪部15が嵌合部10の正規位置に嵌合しているか否かを容易に確認することができる。
凹部16aは、弾性爪部15の幅方向に対して陥没した形状であることから、弾性爪部15との位置関係を容易に確認することができる。
凹部16aの幅寸法は弾性爪部15の厚さ寸法と同一であるから、弾性爪部15が嵌合部10の正規位置に嵌合したか否かを一目で確認することができる。
【0020】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
弾性爪部15の穴部15aに代えて先端に鈎部を形成すると共に、凸状の嵌合部10に代えて穴形状の嵌合部をボス部6に形成し、弾性爪部15の鈎部を穴形状の嵌合部に嵌合するようにしてもよい。
凹部16aの幅寸法を弾性爪部15の厚さ寸法と同一である必要はなく、弾性爪部15が嵌合部10の正規位置に嵌合したか否かを確認できればよい。
【符号の説明】
【0021】
図面中、1はノブ(本体)、2はキャップ(蓋部)、4は開口空間部、10は嵌合部、12は閉鎖部、15は弾性爪部、15aは穴部、16は窓部、16aは凹部(嵌合確認部)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面が閉鎖部で閉鎖され、前面が開口した開口空間部に嵌合部が設けられた本体と、嵌合方向に突出した弾性爪部が設けられた蓋部とを備え、前記弾性爪部が前記嵌合部に嵌合することで前記開口空間部を閉鎖するように前記蓋部を前記本体に嵌合状態で装着する二部材の嵌合装置において、
前記閉鎖部に設けられ、前記蓋部が前記本体に装着された状態で前記本体に対する前記蓋部の嵌合方向と反対方向から前記弾性爪部の先端位置を視認可能な窓部と、
前記窓部の周縁部に設けられ、前記嵌合部に対して正規の嵌合位置で嵌合した前記弾性爪部の先端位置を示す嵌合確認部と、
を備えたことを特徴とする二部材の嵌合装置。
【請求項2】
前記嵌合確認部は、前記窓部の内周面に形成され、前記嵌合部に正規の嵌合位置で嵌合した前記弾性爪部の幅方向に対して陥没形状の凹部であることを特徴とする請求項1記載の二部材の嵌合装置。
【請求項3】
前記凹部の幅寸法は、前記弾性爪部の厚さ寸法と同一であることを特徴とする請求項2記載の二部材の嵌合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86803(P2013−86803A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225770(P2011−225770)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】