説明

二重果実掛袋

【課題】改良された二重果実掛袋を提供する。
【解決手段】遮光性の外袋2内に透光性の内袋3の下部が収納されて二重果実掛袋1になっている。有底の外袋2には、その上端縁8から下方に延びて再び上端縁8に至る不連続切線9によって、上方接着片10が形成されている。内袋3には、下端縁16から上方に入り込んで再び下端縁16に至る不連続切線17により下方接着片18が設けられている。この外袋2と内袋3は、上記上方接着片10と上記下方接着片18で接着され、一体となっている。外袋2を取り除いたとき、上方接着片10、下方接着片18が切離され、内袋3の下方には不連続切線17によって切欠凹部が形成され、果実の下方部分まできれいに着色することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実、特に桃等の栽培に使用する果実掛袋に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、これ迄に桃等の栽培において用いられる果実掛袋として、上下に開口した内袋をこれより短く形成した外袋の底部まで挿入し、該外袋の上端縁より露出している内袋の開口上縁中央部に果樹の枝を挿入するための欠截部を設けた二重果実袋において、内袋の横方向の長さを外袋に対して実質上大きく形成し、他方、外袋の上端縁と下端縁との間に切裂き線を設けるとともに、前記上端縁から切裂き線に延びる切込みを設けて、前記上端縁、切裂き線および切込みにて囲まれた部分を接着片とし、この接着片を前記内袋に接着することによって前記内袋と外袋とを互いに結合した二重果実掛袋を提供してきた(特許文献1)。
この二重果実掛袋は、内袋と外袋を上記接着片により結合するようにしたので、内袋に損傷を与えることなく外袋のみを極めて容易かつ能率的に剥ぎ取ることができるところから、現在に至るまで好評を博し、広く使用されている。
【特許文献1】実公平2−42115号公報(実用新案登録請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した二重果実袋を更に改良しようとするものであって、上記の袋では、稀に外袋を取り外そうとする前に該外袋が自然に外れてしまうことがあったり、図7に示すように、該外袋を取り除いた後において内袋31が果実19全体をすっぽりと覆ってしまうため、果実19の成熟度合を見る場合に下方から覗き込まなければならないことがあった。
また、外袋の掛かった状態で果実が肥大して行くと、この内袋31が肥大する果実の表面に沿って密着してしまい、外袋を外したときに内袋の折込部は拡がっていくが、折込部以外の部分は果実の表面に沿って密着したままの状態になっているので、果実19の下方部分(展示、販売時には上面部分となる)に光が充分に当たらず着色がうまくいかないこともあった。
【0004】
そこで、こうした点を改良し、栽培初期においては、内外の二重袋によって果実を確実に保護し、外袋を取り外した後においては、内袋によって果実を保護すると共にその成熟度合を容易に視認することができ、また、収穫時には、従来色づきにくかった果実の下方部分まできれいに着色することができるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上方に開口し底部の一部に排水口を備えた遮光性を有する外袋内に、上下に開口し側部に拡開可能な折込部を形成した透光性を有する内袋の下方を該外袋の中間部まで挿入して収納し、上記外袋の上端縁より上方に露出している該内袋の開口上縁中央部に果樹の枝を挿入するための挿入切欠部を設ける。外袋には、その上端縁から下方に延びて再び上端縁に至る不連続切線で形成した上方接着片を設け、この上方接着片と上記内袋を接着する。また、上記内袋の折込部以外の部分には、その下端縁から上方に入り込み再び下端縁に至る不連続切線で下方接着片を形成し、この下方接着片を上記外袋の下部に接着することによって二重果実掛袋とするものである。
【0006】
また、上記外袋は長方形状の紙片を側方貼着片で貼着して筒状に形成し、その筒状の底部を貼着する。そして上記側方貼着片における上部は非貼着部、下部は貼着部とし、上記非貼着部の長さを外袋の上下長さの2割〜5割に形成するようにして、外袋を取外す際に肥大した果実を落とすような余分な作用が及ばないようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記したように、外袋と内袋が、外袋に形成した上方接着片と内袋に形成した下方接着片の双方で接着されているので、栽培初期において外袋と内袋を確実に一体化しておくことができ、この外袋を引き剥がすと外袋の上方接着片及び内袋の下方接着片を形成している不連続切線がそれぞれ切り離され、下方接着片の切離に伴って内袋の下端縁より上方に入り込んだ切欠凹部が形成される。この切欠凹部によって果実を覆っている内袋内の果実の状態を側方から容易に視認することができ、さらにこの切欠凹部を介して光が果実の下方に照射されるので、果実全体を内袋で保護しつつ、果実の下方まできれいに着色することができる。
また、外袋を筒状に形成している側方貼着片は、上部を非貼着部、下部を貼着部とし、非貼着部の長さを外袋の上下長さの2割〜5割にしているので、果実の上方の肩の部分に位置する外袋は非貼着部となり、外袋を取外す際に肥大した果実を引張って落とすようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例について述べれば、図示するように、二重果実掛袋1は遮光性を有する外袋2内に、透光性を有する内袋3の下部が収納された二重構造になっている。上記外袋2は、略長方形状の紙片を折曲線4で折り曲げ、側方の貼着片5とで貼着して筒状とし、下方貼着部6で貼着して底部の両側に排水口7を備えた有底の袋状に形成されている。
【0009】
この外袋2には、その上端縁8から下方に延びて再び上端縁8に至る不連続切線9が設けられ、これによって上方接着片10が切取り可能に形成されている。図示するものでは、不連続切線が、上端縁8から下方に延びる切裂き線11と、該切裂き線11の下端部から上端縁8まで傾斜して延びる切込線12によって形成されている。図において、上方接着片は略三角形状に形成されているが、略四角形状、略扇形状等適宜の形状に形成することができ、また、ミシン線その他の適宜形状の不連続切線に形成することもできる。
【0010】
上記内袋3は、上下に開口し、上記外袋2より幅広の筒状体とされ、その両側部には拡開可能な折込部13を設けて幅を狭くし、外袋2内に挿入されている。この内袋3の開口上縁部14の中央部には、果樹の枝を挿入するため略V字状の挿入切欠部15が形成されている。この挿入切欠部の形状は、略U字状、略半円状等、果樹の枝を挿入することができる適宜の形状に形成することもできる。
【0011】
この内袋3の正面及び背面(折込部13以外の部分)の下部には、下端縁16から上方に入り込んで再び下端縁16に至る不連続切線17が形成され、この不連続切線17により下方接着片18が切取り可能に設けられている。図示のものでは、下方接着片18が下方に膨らんだ形状となっているが、下端縁から上方に入り込んで再び下端縁に至る不連続切線が形成されていればよく、略半円形状、略山形形状、略波形形状などの適宜形状に形成することができる。また、上記下方接着片18は、上記挿入切欠部15と対応する位置関係にあるので、内袋資材の無駄にはならない。なお、本実施例では、裏面側も表面側と同じように形成されているが、必ずしも同じように形成しなくてもよい。
【0012】
上記した外袋2に設けた上方接着片10は、外袋内に挿入されている上記内袋3の外面に接着され、上記挿入された内袋3に設けた下方接着片18は、外側の外袋2の内面に接着され、外袋2と内袋3は一体化される。
【0013】
こうした二重果実掛袋1を使用する場合、果実19を二重果実掛袋1内に収納し、内袋3の上記挿入切欠部15に果実の枝20を挿入して、内袋3の一側部に設けた止金21で結束して取り付ける。取り付けられた二重果実掛袋1は、外袋2と内袋3が、外袋2の表裏に形成された上方接着片10と、内袋3の表裏に形成された下方接着片18の4個所で接着されているので、少々の風が吹いても外袋が簡単に剥がれるようなことがなく、生育過程にある果実19を確実に保護することができる。
【0014】
果実19はこうして外袋2により遮光された状態で成長していくが、内袋3の外側には外袋2があるので、内袋3は果実19の肥大に伴って果実の表面に沿うように曲げられた状態になって行く。果実19が更に肥大していって栽培終期に差し掛かったとき、外袋2を持って引っ張ると、上記上方接着片10を形成している不連続切線9が切り離され、また、上記下方接着片18を形成している不連続切線17も切り離されて、外袋2が剥がされる。この場合、図示の外袋2では、果実の肥大に伴って外袋2の上下方向に設けたミシン線などの切取線29の上部が切れることも多く、これによって外袋の取り外しが一層容易になる。
そして、この外袋2が剥がされた際に内袋3の下端には、下方接着片18が切り取られたことにより、切欠凹部22が形成される。こうして外袋2が剥がされると、内袋3の折込部13は拡がることができるので、果実19の下方にも光が当たるようになり、また、果実の表面に沿うようになっている折込部13が設けられていない部分には上記切欠凹部22があって、ここから果実19の下方に光が当たるので、果実19の上方を実質的に内袋3で覆って保護しつつ、その下面(展示、販売時の上面)全体の色付きを良くして品質優良なものとすることができる。
【0015】
図4に示すものは、内袋23の下端部を直線状にしてそこに半楕円形状の下方接着片24を設けたものであるが、その他にも略波形形状、略半円形状、略山形形状その他の適宜の形状に形成することができる。また、図5のものは、内袋25の下方接着片26を表面側と裏面側とで位相をずらせて形成したものである。上記不連続切線を形成する際に、上記下端縁に対して傾斜する部分に連結個所部を設けておけば、縦方向に引っ張ったとき容易に切り取りやすくなり、外袋をスムーズに剥がすことができる。なお、本実施例において、外袋と内袋は4個所で接着してあるが、所望により3個所または5個所以上で接着するように調整することもできる。
【0016】
図6には、外袋2の変形例が示されている。この外袋は、筒状を形成している側方の貼着片5の貼着部51が外袋の下方に位置しており、上方は非貼着部52となっている。この非貼着部52の長さは、外袋の上下長さの約2割〜5割程度にされ、図示のものでは約4割にされている。
こうした外袋では、保護している果実が成長して行ったときに、果実の下部には側方の貼着片5に設けた貼着部51が位置するが、肥大した果実の上部には側方の貼着片5の非貼着部52が位置するようになる。その後に外袋2を外すときにこれを引張った際、上記非貼着部52が貼着部とされている場合には、果実上部の果梗から下方に向かう表面の曲面に沿うように貼着部が位置するので、これにより果実を下方に引張ることとなって、肥大した果実を落とす危険性が高くなる。しかし、本例のものでは、果実の肥大に伴って外袋の上下方向に延びるミシン線などの切取線29の上部が切れない場合にも、果実の上部には側方の貼着片5の非貼着部52が位置しているので、側方の貼着片5が抵抗にならず、果実を過度に引張ることがなく、外袋を取外す際に肥大した果実を落とすようなことが少なく、確実に外袋を外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の実施例において、内袋と外袋を分離した状態を示す正面図である。
【図3】図1に示す実施例を果実に取り付け、外袋を外した状態を示す説明図である。
【図4】他の実施例の一部を拡大して示した説明図である。
【図5】他例の一部を拡大して示した説明図である。
【図6】更に他の例の外袋を示す正面図である。
【図7】従来例を果実に取り付け、外袋を外した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 二重果実掛袋
2 外袋
3、23、25、31 内袋
5 外袋の側方の貼着片
51 貼着片の貼着部
52 貼着片の非貼着部
8 上端縁
9、17、22 不連続切線
10 上方接着片
11 切裂き線
12 切込線
13 折込部
15 挿入切欠部
18、24、26 下方接着片
22 切欠凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口し底部の一部に排水口を備えた遮光性を有する外袋内に、上下に開口し側部に拡開可能な折込部を形成した透光性を有する内袋の下方を該外袋の中間部まで挿入して収納し、上記外袋の上端縁より上方に露出している該内袋の開口上縁中央部に果樹の枝を挿入するための挿入切欠部を設け、該外袋の上端縁から下方に延びて再び該上端縁に至る不連続切線で形成した上方接着片を設け、該上方接着片と上記内袋を接着し、上記内袋の折込部の折込部以外の部分にその下端縁から上方に入り込み再び該下端縁に至る不連続切線で形成した下方接着片を設け、該下方接着片を上記外袋の下部に接着したことを特徴とする二重果実掛袋。
【請求項2】
上記外袋は、長方形状の紙片を側方の貼着片で貼着して筒状に形成し、筒状の底部を貼着したものであって、上記貼着片における上部は非貼着部、下部は貼着部とされ、上記非貼着部の長さが外袋の上下長さの2割〜5割に形成されている請求項1に記載の二重果実掛袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−124956(P2009−124956A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300675(P2007−300675)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(390026491)小林製袋産業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】