説明

交互配置の閉鎖型スプリンクラーヘッドで構成する消火設備

【課題】隣接する閉鎖型スプリンクラーヘッドは異なる消化薬剤貯蔵容器から放出し、隣接する保護区域に火災拡大した場合に対する消火性能を確立する。
【解決手段】防護すべき1フロア内に1個の閉鎖型放射ヘッド10の散布範囲に包含される夫々の防護区画を隈なく均等に配列し、各防護区画の中心部に夫々1個の閉鎖型放射ヘッドを設置し、2台以上の消火薬剤貯蔵容器1に各消火薬剤貯蔵容器毎に連通延長した配管にそれぞれ各防護区画毎の閉鎖型放射ヘッドを各1個宛設け、かつ同一の消火薬剤貯蔵容器に連通する各閉鎖型放射ヘッドの各防護区画は相互に非隣接状態に配置され全防護区画が異なる薬剤貯蔵容器毎に交互する形に配置されていることを特徴とする自動消火設備である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
閉鎖型スプリンクラーヘッドと消火薬剤を使用した消火設備に関するスプリンクラーヘッドの配置と消火薬剤貯蔵容器、配管の配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火薬剤を使用する消火設備においてはコンパクト化やコスト面から貯蔵する消火薬剤は限られた量となり、限定量の消火薬剤を火災位置に対して無駄なく有効に作用されることが重要である。防火対象物の用途により選定した各種の消火設備はその消火薬剤の特徴によって構造は異なるが常時開放しているヘッドを使用し、建築物を一定の面積ごとに区分した防護区画に複数のヘッドを設けて消火薬剤貯蔵容器の起動によって複数のヘッドから区画全域に一斉放出することによって消火するものである。

(a) たとえば主に危険物関連施設に設置される粉末消火設備は図3のように、天井部大梁を境界とした一定の面積を防護区画とし、各防護区画には常時開口している複数の噴射ヘッドを設け、隣接する防護区画は異なる2台の容器に配管されているように組み合わせる。出火した場合には区画ごとに設けた火災感知器の作動等による起動信号等により設備本体(粉末貯蔵容器)が作動し、出火区画に対して1台分の消火薬剤が複数の噴射ヘッドから一斉に放射され、窒息効果等により消火する設備である。
したがって、隣接区画へ火災拡大した場合には残る1台の容器が作動することによって消火する配置となっている。

(b) また、一般建築物に設置されるパッケージ型自動消火設備においても図4のように性能が認定された防護面積に適合した量の消火薬剤貯蔵容器を2台以上設置し、隣接する防護区画が相互に延焼の可能性がある場合には異なる各々の容器に連通する配管に防護区ごと選択弁を介して複数の枝配管を配し、その先端に設けた複数の常時開放型放出口を設けてある。火災発生時には防護区画中央部に設置した火災感知器の作動信号によって消火薬剤貯蔵容器の制御弁を開放する等により複数の放出口から消火薬剤を防護区域全体に同時放出することにより消火するものであり、隣接区域に火災拡大した場合には未使用の別容器が同様に作動することによって防護が可能である。

上記(a)、(b)の消火設備はいずれも複数の常時開放型の噴射ヘッドから形成した一定面積の防護区画に対して消火薬剤を同時放出する消火設備である。

(c)開放型噴射ヘッドを使用する消火設備に対し、図5は防護対象物全体に対して1台の消火薬剤貯蔵容器から延長した1本の配管に火災の熱によって単発的に開口し、開口したヘッドの散水範囲を防護範囲とする閉鎖型ヘッド(以下閉鎖型スプリンクラーヘッドと呼ぶ)を複数設けてなる従来型の消火設備がある。
【0003】
【特許文献1】特許第2689050号
【特許文献2】特許第3627942号
【特許文献3】特公平7−79849号
【特許文献4】実用新案登録 第2547483号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当課題は上記(c)の閉鎖型スプリンクラーヘッドを設置した従前の消火設備に関する欠点について改善を図るものである。
【0005】
図5による従来の消火設備の場合、1個の放射ヘッドで防護区画が包含される小区画では問題がないが、設置する面積が広い場合には1フロアに複数の閉鎖型ヘッドを設置し、1台の薬剤貯蔵容器に連通する1本配管に設けられているため、火災発生位置がヘッドの中間位置の場合や、火災が延焼した時には隣り合うヘッドが同時または時間をおいて開放する場合がある。
このような場合には次のような消火性能に対する不都合を生じる。
(1)ヘッド1個分の防御範囲に限定された消火薬剤量の消火設備の場合においては隣接ヘッドが同時開放した時には、2個のヘッドに消火薬剤が分散してしまい、防護区画に対する単位面積当たりの散水密度の低下が生じる。
(2)火災により、1個の閉鎖型ヘッドが開放した後、火災拡大により時間差を置いて2個のヘッドが作動開放した場合にはヘッド2個分以上の消火薬剤貯蔵量であっても、作動が遅れた側のヘッド部分は消火薬剤散布量が確保されない。
【0006】
例えば図5においてヘッドaの防護範囲で火災が発生した場合には通常は最初にヘッドaが作動する。
この段階で消火または火災抑制すれば周囲温度が低下して複数のヘッドが作動することはないが、ヘッドbやヘッドcとの中間位置での火災や別方向への延焼があった場合にはbまたはcまたはdがaと同時に開放して放出することも有り、前述のような問題が発生する。
【0007】
当設備は閉鎖型ヘッドを使用するスプリンクラー設備と同様に消火薬剤貯蔵容器に連通する1本の配管に設けられた複数の通常閉鎖している感熱型ヘッドが近傍で発生した火災に対して単発開放して消火薬剤を放出することにより、各ヘッドの散水範囲内の火災を消火また抑制するものである。
大量の貯水槽を設けたスプリンクラー設備はポンプを使用して長時間連続放水が可能であるが当設備の場合は火災拡大時に隣接するヘッドの消火薬剤散水量を確保することが重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1は当課題を解決するため、2台以上の消火薬剤貯蔵容器を備えて、各々の容器に連通する配管に閉鎖型ヘッドを交互に設けた例である。
防護対象物によっては、3台以上の消火薬剤貯蔵容器を設置し、隣接するヘッドが同じ容器の配管にならないよう交互配置することにより火災拡大時の防護区域を確保することができる。
【0009】
図6は加圧式薬剤貯蔵容器、加圧用ガス容器、作動装置、受信装置等の本体部分と火災感知器、制御配線および感熱開口の閉鎖型放射ヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッド)で構成される消火設備である。
【0010】
請求項2は、このような消火設備を複数台組み合わせることにより、請求項1の異なる消火薬剤貯蔵容器毎に閉鎖型放射ヘッドを配置する消火設備システムとするものである。
【発明の効果】
【0011】
実施形態のように設置された隣接する閉鎖型スプリンクラーヘッドは異なる消火薬剤貯蔵容器から放出するため、隣接する保護区域に火災拡大した場合に対する消火性能が確立できる。
本発明の効果を以下に示す。
(1)同一の薬剤貯蔵容器に属する防護区画は相互に隣接しないので、火災発生位置がヘッドの中間位置の場合や火災が延焼した場合に異なる薬剤貯蔵容器の系列が同時に対応するので、薬剤の散布密度の低下を来すことなく隈なく均一に効果的な消火ができる。
(2)防護すべきフロア内に各防護区画を隈なく均等に配列し、各防護区画の中心部に各1個のヘッドを配置しているので、各防護区画の防護ひいてはフロア全体の防護を効果的に実施できる。
(3)異なる薬剤容器毎にヘッドおよびそれに属する防護区画が交互に配置されているので、フロアの各防護区画により隈なく均等の分割配列が無駄なくしかもコンパクトに実施でき経済的である。
【実施例】
【0012】
図1においてヘッドB(1)の近傍で出火した場合にはヘッドB(1)の作動によって消火する。この場合は、薬剤貯蔵容器Bから放出しAの容器は残存する。仮に横のヘッドA(2)方向へ延焼した場合には容器Aの消火薬剤がヘッドA(2)から規定量消火薬剤を放出する。
B(1)ヘッド位置からB(2)方向への拡大にも配慮したい場合にあっては薬剤貯蔵容器を3台または4台設置し、多系統の配管によってヘッドを組み合わせることが可能である。
図2は複数の薬剤貯蔵容器を1台の格納箱に収納することにより、小スペースでかつ安価で設置できる構成を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は消火設備の放射ヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッド)の組み合わせ配置およびそれに関連する消火薬剤貯蔵容器および配管が主題となるため、消火薬剤貯蔵容器の構造や差動装置、制御装置等については記述を省略する。
【図1】本発明の消火設備に基づいたヘッドの配置例。1つの防護区域に閉鎖型スプリンクラーヘッドを複数設ける場合に、隣接するヘッドは2台以上の複数設置した異なる貯蔵容器に連動する配管に設けられている状態を現わす配置平面図である。
【図2】複数の薬剤貯蔵容器を1台の格納箱に収納することによりコンパクト化が可能であり、図1の配置を容易にする例の正面図である。
【図3】防護区画内に設けた複数の開放型ヘッドから同時に消火薬剤を放出して消火する従来型の粉末消火設備の配置平面図である。
【図4】図3と同様に開放型ヘッド複数から消火薬剤を同時放出して一定の防護区画全域を消火する水系のパッケージ型自動消火設備の配置平面図である。
【図5】閉鎖型スプリンクラーを使用しているが、防護対象物全体に対して1台の消火薬剤貯蔵容器から延長した配管に複数のヘッドを設けた従来型の消火設備配置平面図である。
【図6】請求項2の乾式配管方式の消火設備配置図である。
【符号の説明】
【0014】
1 消火薬剤貯蔵容器
2 配管
3 選択弁
4 分岐管
5 開放型放射ヘッド
6 枝配管
7 火災感知器
8 火災感知器 A
9 火災感知器 B
10 閉鎖型放射ヘッド
11 制御弁
12 制御装置
13 格納箱
14 作動装置
15 加圧用ガス容器
16 制御配線
17 圧力水層(消火薬剤)
18 指示圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱感知によって開放する複数の常時閉鎖型放射ヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッド)を使用した消火設備において、防護すべき1フロア内に1個の閉鎖型放射ヘッドの散布範囲に包含される夫々の防護区画を隈なく均等に配列し、各防護区画の中心部に夫々1個の閉鎖型放射ヘッドを設置し、2台以上の消火薬剤貯蔵容器に各消火薬剤貯蔵容器毎に連通延長した配管にそれぞれ各防護区画毎の閉鎖型放射ヘッドを各1個宛設け、かつ同一の消火薬剤貯蔵容器に連通する各閉鎖型放射ヘッドの各防護区画は相互に非隣接状態に配置され全防護区画が異なる薬剤貯蔵容器毎に交互する形に配置されていることを特徴とする自動消火システム。
【請求項2】
防護フロアに設けた火災感知器の作動と連動して消火薬剤貯蔵容器の作動装置が起動することにより配管内に消火薬剤が送り込まれ、さらに火災拡大による温度上昇によって、消火薬剤貯蔵容器に連通する配管に設けた複数の閉鎖型スプリンクラーヘッドの内、火源直近のヘッドが開放して消火薬剤を放射する消火設備において加圧式薬剤貯蔵容器、加圧用ガス容器作動装置、受信装置を含む乾式配管方式で構成する請求項1記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319513(P2007−319513A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154519(P2006−154519)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(301065744)株式会社モリタユージー (5)
【Fターム(参考)】