説明

人センサ及び負荷制御システム

【課題】静止している人も検出可能とし、且つ複数の領域毎に人の存在を検知可能とする。
【解決手段】画像処理部11は、検知領域の画像データと背景画像データの差分を求め、その差分画像から人の輪郭や領域に対応した画素領域(以下、人体画素領域と呼ぶ。)の抽出を試み、人体画素領域を抽出すれば人が存在すると判断する。また画像処理部11は、人体画素領域における代表位置を求め、当該代表位置が所定時間(所定のフレーム数)内に変位する距離をしきい値と比較することで人の行動(滞在、静止、移動など)を判断する。つまり、当該距離がしきい値未満のときはその人が同じ場所に滞在又は静止しており、当該距離がしきい値以上のときは移動していると判断する。さらに画像処理部11は、抽出した人体画素領域の位置(座標)及び数(人数)を判断する。故に、人センサ1は、静止している人も検出可能であり、且つ複数の領域毎に人の存在を検知することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知領域内における人の存在を検知する人センサ、及び人センサの検知結果に応じて負荷を制御する負荷制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人センサ及び負荷制御システムとして、例えば、特許文献1に記載されている熱線センサ付自動スイッチがある。特許文献1記載のものは、人体から放射される熱線を焦電素子で検出し、焦電素子で検出される熱線の変化に基づいて人の存在を検知して照明負荷を調光制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−270103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来例では、人が静止していると焦電素子で検出される熱線が変化しないためにその人を検知することができない。また、検知領域を分割して各検知領域毎の人の存否に応じて負荷を制御しようとした場合、特許文献1記載の従来例では、分割された各検知領域毎に人センサ(熱線センサ付自動スイッチ)を設置しなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、静止している人も検出可能とし、且つ複数の領域毎に人の存在を検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の人センサは、検知領域の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像される画像から前記検知領域内の人の存否及び存在する人数、位置、人の行動を判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果を負荷制御を行う制御装置に伝送する伝送手段とを備え、前記判断手段は、前記検知領域の画像を複数の領域に分割して各領域毎に人の存否及び存在する人数、位置、人の行動を判断し、且つ前記領域から人の画素領域を抽出するとともに前記人の画素領域における代表位置が所定時間内に変位する距離に基づいて人の行動を判断することを特徴とする。
【0007】
この人センサにおいて、前記判断手段は、前記検知領域の画像に対する前記領域の数及び配置、前記領域に対する人検知の要否が選択可能であることが好ましい。
【0008】
本発明の負荷制御システムは、前記人センサと、前記人センサから伝送される前記判断結果に応じて1乃至複数の負荷を制御する制御装置とを有することを特徴とする。
【0009】
この負荷制御システムにおいて、前記負荷は照明空間に設置される照明負荷であって、前記判断手段は、前記検知領域の画像の画素値から前記検知領域の明るさを判断し、前記伝送手段は、人の存否及び存在する人数、位置、人の行動の判断結果とともに前記明るさの判断結果を前記制御装置に伝送し、前記制御装置は、前記人センサから受け取る前記明るさを所望の明るさと一致させるように前記照明負荷を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人センサ及び負荷制御システムは、静止している人も検出可能とし、且つ複数の領域毎に人の存在を検知可能とすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明に係る人センサの実施形態を示すブロック図、(b)は本発明に係る負荷制御システムの実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上における検知領域の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る人センサ及び負荷制御システムの実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、負荷を照明負荷とする負荷制御システムに本発明の技術思想を適用したものであるが、制御対象の負荷は照明負荷に限定されるものではなく、例えば、空調負荷(室内の温湿度を調整する空調設備)などであってもよい。
【0013】
本実施形態の負荷制御システムは、図1(b)に示すように人センサ1と、制御装置2と、複数の照明負荷3とで構成される。制御装置2は、人センサ1から伝送線を介して伝送される人検知情報(後述する)に応じて各照明負荷3に対する制御指令を生成し、生成した制御指令を信号線を介して各照明負荷3に伝送する。照明負荷3は、白熱灯や蛍光ランプ、あるいはLEDランプなどの光源(図示せず)と、制御指令に応じて光源を点灯・消灯及び調光する点灯装置(図示せず)とを有し、照明空間(例えば、オフィスビルの1フロア)の天井に配設される。
【0014】
人センサ1は、図1(a)に示すように撮像部10、画像処理部11、通信部12、設定部13、記憶部14などを備える。撮像部10は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどの撮像素子やレンズ、撮像素子のアナログの出力信号をディジタルの画像信号(画像データ)に変換するA/D変換器などを具備する。記憶部14は、フラッシュメモリなどの書換可能な不揮発性半導体メモリからなり、後述するように画像処理部11における画像処理及び判断処理に必要な種々の情報を記憶している。通信部12は、伝送線を介して制御装置2との間でデータ伝送を行う。設定部13は、記憶部14に記憶される種々の情報を設定するためのスイッチ、あるいは図示しない設定器から与えられる前記情報を取り込むためのインタフェースからなる。なお、人センサ1は、照明負荷3による照明空間全体が撮像可能な位置、例えば、照明空間の天井や壁などに設置される。
【0015】
画像処理部11は、マイクロコンピュータあるいはDSPなどで構成され、撮像部10から取り込む画像データに対して種々の画像処理を実行し、且つ画像処理の結果を利用して人の存在などを判断する判断処理を実行する。例えば、検知領域(照明空間)に人が存在しない状況で撮像された検知領域の画像データが背景画像データとして記憶部14に記憶される。画像処理部11は、撮像部10から取り込まれる検知領域の画像データと背景画像データの差分を求め、その差分画像から人の輪郭や人の領域に対応した画素領域(以下、人体画素領域と呼ぶ。)の抽出を試み、人体画素領域を抽出すれば人が存在すると判断する。ただし、背景差分の代わりにフレーム間差分から人体画素領域を抽出することも可能である。また画像処理部11は、人体画素領域における代表位置を求め、当該代表位置が所定時間(所定のフレーム数)内に変位する距離をしきい値と比較することで人の行動(滞在、静止、移動など)を判断する。つまり、当該距離がしきい値未満のときはその人が同じ場所に滞在又は静止しており、当該距離がしきい値以上のときは移動していると判断する。ただし、代表位置とは、人体画素領域の重心位置や人体の特定の部位(例えば、頭部)の位置である。なお、人が静止している場合、フレーム間差分による抽出方法では人体画素領域が抽出できない可能性もあるが、背景差分による抽出方法では人体画素領域の抽出が可能である。さらに画像処理部11は、抽出した人体画素領域の位置(座標)及び数(人数)を判断する。なお、これらの判断結果、すなわち、検知領域内における人の存否及び存在する人数、位置、人の行動(滞在、静止又は移動)が前記情報(人検知情報)として通信部12から伝送線を介して制御装置2に送られる。
【0016】
制御装置2は、人センサ1から受け取る人検知情報に応じて照明負荷3を制御する。例えば、制御装置2は、複数の照明負荷3のうちで照明範囲と人の存在位置とが重なる照明負荷3に制御指令を与えて全点灯させ、照明範囲と人の存在位置とが重ならない照明負荷3には制御指令を与えて消灯又は全点灯(100%)よりも低い調光率で調光点灯させる。また、制御装置2は、人が移動している間は制御指令を与えて照明負荷3を相対的に低い調光率で調光点灯させ、人が滞在している間は滞在場所(人の存在位置)の照明負荷3に制御指令を与えて全点灯させる。
【0017】
ここで、撮像部10から取り込まれる画像データの各画素値は検知領域の明るさと対応しており、画像処理部11では、画像データの画素値から検知領域内の明るさ(照度)を判断することができる。そして、画像処理部11で求めた明るさの判断結果(明るさのレベル)が人検知情報とともに通信部12から伝送線を介して制御装置2に伝送される。制御装置2は、人センサ1から受け取る明るさのレベルを所望の値と一致させるように制御指令を与えて照明負荷3の調光率を変化させる。これにより、人が存在するときの照明空間を常に適切な明るさに保つことができる。なお、窓から入射する外光(例えば、昼光)の影響により、照明負荷3の調光率を下限値まで下げても明るすぎる場合、制御装置2は照明負荷3を消灯させることもある。
【0018】
ところで、画像処理部11においては、検知領域の画像を複数の領域に分割して各領域毎に人の存否及び存在する人数、位置、人の行動、明るさなどを判断することが好ましい。図2は照明空間であるオフィスビルの1フロアのレイアウトの一例を示しており、フロア全体が検知領域100となり、その中央に通路113が設けられ、通路113の両側に間仕切りで仕切られた複数(図示例では6つずつ)の分割領域101〜112が設けられている。これら複数(図示例では12)の分割領域101〜112はそれぞれ異なる照明負荷3の照明範囲と重なっている。そして、人センサ1においては、設定部13によって複数の分割領域101〜113の位置情報、例えば、各分割領域101〜113の4つの頂点の座標が設定され、設定された位置情報が記憶部14に記憶される。
【0019】
画像処理部11は、記憶部14に記憶されている位置情報に基づき、各分割領域101〜113毎に人の存否及び存在する人数、位置、人の行動、明るさなどを判断し、各分割領域101〜113毎の人検知情報及び明るさレベルを通信部12から制御装置2に伝送させる。つまり、本実施形態の人センサ1では、画像処理部11と設定部13が判断手段に相当する。ただし、全ての分割領域101〜113に対して人の存在等を検知する必要は無く、例えば、書類棚などが占有している分割領域に対しては人の存在等を検知する対象から除外しても構わない。
【0020】
制御装置2では、人センサ1から伝送される各分割領域101〜113毎の人検知情報及び明るさレベルに応じて、各分割領域101〜112に対応する照明負荷3を制御する。例えば、分割領域101のみに人が存在する場合、制御装置2は、その分割領域101に対応する照明負荷3のみに制御指令を与えて全点灯させる。あるいは、通路に相当する分割領域113のみに人が存在する場合、制御装置2は、その他の分割領域101〜112に対応する照明負荷3に制御指令を与えて相対的に低い調光率で調光点灯させる。ただし、通路(分割領域113)に照明負荷3が設置され、分割領域113の人の存否に応じて制御装置2が当該照明負荷3を制御しても構わない。
【0021】
上述のように本実施形態の人センサ1によれば、撮像部10で撮像される検知領域の画像から人の存否等を検知しているので、焦電素子を利用する従来例とは異なり、静止している人の存在も検知することができる。しかも、検知領域100から分割された複数の領域101〜113毎に人の存在を検知することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 人センサ
2 制御装置
3 照明負荷
10 撮像部(撮像手段)
11 画像処理部(判断手段)
12 通信部(伝送手段)
13 設定部(判断手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像される画像から前記検知領域内の人の存否及び存在する人数、位置、人の行動を判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果を負荷制御を行う制御装置に伝送する伝送手段とを備え、前記判断手段は、前記検知領域の画像を複数の領域に分割して各領域毎に人の存否及び存在する人数、位置、人の行動を判断し、且つ前記領域から人の画素領域を抽出するとともに前記人の画素領域における代表位置が所定時間内に変位する距離に基づいて人の行動を判断することを特徴とする人センサ。
【請求項2】
前記判断手段は、前記検知領域の画像に対する前記領域の数及び配置、前記領域に対する人検知の要否が選択可能であることを特徴とする請求項1記載の人センサ。
【請求項3】
請求項1又は2の人センサと、前記人センサから伝送される前記判断結果に応じて1乃至複数の負荷を制御する制御装置とを有することを特徴とする負荷制御システム。
【請求項4】
前記負荷は照明空間に設置される照明負荷であって、前記判断手段は、前記検知領域の画像の画素値から前記検知領域の明るさを判断し、前記伝送手段は、人の存否及び存在する人数、位置、人の行動の判断結果とともに前記明るさの判断結果を前記制御装置に伝送し、前記制御装置は、前記人センサから受け取る前記明るさを所望の明るさと一致させるように前記照明負荷を制御することを特徴とする請求項3記載の負荷制御システム。

【図1】
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【図2】
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