人体用振動伝播具
【課題】縫ぐるみ型、枕型等の形態変位可能物であって、かつ携帯型の被接触体の全体を振動具にすることができること。
【解決手段】人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかもドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る人体用振動伝播具。
【解決手段】人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかもドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る人体用振動伝播具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体用振動伝播具に関し、特に、人体の腰を基準として、該腰以上の部位に接触可能な携帯型被接触体に内蔵される人体用振動伝播具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、家具類としての「椅子」の背面部の中央部に二枚の振動板を介して所定形状のドライバーユニットを内蔵する事項が記載されている。前記ドライバーユニットは、本願発明のドライバーユニットと同様に音源体が発生する電気的低音域の信号を機械的振動に変換するものである。この特許文献1に記載の人体用振動伝播具は、身体に直接接触する椅子の背もたれの裏側に板状振動伝達板を固定し、さらに、該板状振動伝達板の裏面に嵌合穴を有する硬質の板状振動板を固定的に重ね、前記嵌合穴にドライバーユニットを密嵌合状態に組み込む構成である。
【0003】
上記構成の人体用振動伝播具は、ベッドのような平面的形状の家具に内蔵するのは相応しいものの、形態が変位する携帯型装着具や「縫ぐるみ」に適用することができない、実効振動面積の範囲を拡大するためには、上下の振動板を長尺状かつ幅広に形成しなければならない、という問題点があった。
【0004】
特許文献2は、出願人が貴庁に提案したものである。この特許文献2の図3には、椅子を構成するフレームに水平方向に張設されたバネ部材があり、該バネ部材の中央部にドライバーユニットを固定する事項が記載されている。この特許文献2のリラクゼーション椅子は、振動伝播装置の実効振動面積の範囲に拡大させるためには、複数個のドライバーユニットを使用しなければならない、という問題点があった。
【0005】
なお、特許文献3及び特許文献4には、音源体が発生する電気的低音域の信号を機械的振動に変換する振動装置の具体的構成が記載され、ドライバーユニット及びこれに類する振動装置の電気回路は、周知事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−34795
【特許文献2】特開2001212198
【特許文献3】特開2001−86580
【特許文献4】特開2008−92122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の所期の目的は、振動伝播装置の実効振動面積の範囲に拡大させ、縫ぐるみ型、枕型等の形態変位可能物であって、かつ携帯型の被接触体の全体を振動具にすることができることである。第2の目的は、振動伝播装置を構成する振動伝播線を、平面的形状、立体的形状等の任意の形状に簡単に折り曲げることにより、例えば曲面性のある変位可能な物であって、かつ厚い部分を有する携帯型被接触体であっても、可能な限り、携帯型被接触体に振動伝播装置を内蔵させることができることである。その他、軽量化や臨場感のある人体用振動伝播具を提案することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人体用振動伝播具は、人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成ることを特徴とする。
【0009】
上記構成に於いて、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁21に形成された複数個の取付け部16に差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ変位した形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ていることを特徴とする。また、携帯型被接触体Aは、人に装着された状態で接触し或いは人が手で抱き抱えることにより接触されることを特徴とする。さらに、ドライバーユニット3は、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備え、これに対して、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーであり、該デジタルオーディオプレーヤー6は、携帯型被接触体に設けた収納部30に収納され、かつ電気的接続手段を介して前記ドライバーユニットに自在に接続可能であることを特徴とする。加えて、振動伝播線4は、少なくとも長いものと、短いもの二種類以上を含んでいることを特徴とする。
【0010】
ここで「被接触体」は、人体の腰以上に接触可能でかつ人体により容易に運搬可能な有体物であって、その接触態様は、(a)人体に対して接触することができる場合と、(b)人体が接触することができる場合の両方である。前者は、例えばベルト、ジャンパー、厚手の上着、リュックサック等の装着体であり、一方、後者は、縫ぐるみ、枕等人の腕により抱きかかえられるものである。
【発明の効果】
【0011】
(A)人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aに振動伝播線4を有する振動伝播装置Bを内蔵させたので、実効振動面積の範囲に拡大することができ、縫ぐるみ型、枕型等の形態変位可能物であって、かつ携帯型の被接触体の全体を振動具にすることができる。また、臨場感のある人体用振動伝播具を提案することができる。
(B)振動伝播線4がドライバーユニット3の半径外方向に延在し、該振動伝播線4がドライバーユニット3の振動を広範囲に伝達する機能を有するから、ドライバーユニット3が1個のみで済む。したがって、コストの削減化を図ることができる。また、振動伝播手段が「線材」なので、軽量化を図ることもできる。さらに、その自由端部を折り曲げて係止部分にすることもできる。加えて、携帯型被接触体Aに振動伝播装置Bを内蔵しても人に対して「違和感」を与えない。
(C)請求項2に記載の発明は、振動伝播線4が、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁2aに形成された複数個の取付け穴16にそれぞれ差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ多方向に変位させた・或いは広げた、或いは狭めた形態をそのまま保持することができる剛性の材質であることから、振動伝播線を適宜に選択することにより、体積が大きい、縫ぐるみ、枕などのみならず、やや厚手のジャンパー、厚手の上着、厚い部分を有するリュックサック等にも適用することができる。付言すると、振動伝播線4を、平面的形状、立体的形状等の任意の形状にすることができるから、例えば曲面性のある変位可能な物であって、かつ厚い部分を有する携帯型被接触体であっても、可能な限り、振動伝播線4の所望する部位を適宜に折り曲げて、携帯型被接触体に振動伝播装置を内蔵させることができる。
(C)請求項3に記載の発明は、ドライバーユニットは、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備えているので、音源体の記憶部に格納されているデータを最大限に活用することができる。
(D)請求項4に記載の発明は、前記(B)の効果を有効的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図9は本発明の最良の実施例(第1実施例)を示す各説明図。
【図1】携帯型被接触体と振動伝播装置とを分離した状態の説明図。
【図2】背面からの説明図。
【図3】正面からの説明図。
【図4】ドライバーユニットと音源体との電気的接続状態を示す概略説明図。
【図5】アタッチメント式振動伝播線と盤状嵌合支持体の説明図。
【図6】携帯型被接触体に内蔵される振動伝播装置の説明図。
【図7】図6に於ける分解説明図。
【図8】図6に於ける8−8線概略断面説明図。
【図9】音源体を含む振動伝播装置の説明図。
【図10】音源体を含む振動伝播装置の第2実施例の概略断面説明図。
【図11】第2実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図12】第2実施例の概略断面説明図。
【図13】第3実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図14】第3実施例の概略断面説明図。
【図15】第4実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図16】第4実施例の概略断面説明図。
【図17】第5実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図18】第5実施例の概略断面説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1乃至図9に示す本発明を実施するための最良の形態(第1実施例)により説明する。図1で示すように、第1実施例の人体用振動伝播具Xは、人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する、例えば電気的低音域の信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る。
【0014】
図1に於いて、Xは人体用振動伝播具で、この人体用振動伝播具Xの基本的構成は、縫ぐるみ形態の携帯型被接触体Aと、この携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成る。そして、前記振動伝播装置Bは、携帯型被接触体Aに内蔵される盤状嵌合支持体2、これに合体するドライバーユニット3、前記盤状嵌合支持体2に半径外方向に延在するように連結する複数の振動伝播線4、内蔵電源5、携帯型被接触体Aの内部又は外部(本実施例)に設けられる音源体6とから構成されている。
【0015】
まず、携帯型被接触体Aは、図1乃至図3で示すように、クッション性の「縫ぐるみ」である。縫ぐるみの形態は、例えば漫画、映画、アニメーション、遊園地等に登場する人物、動物、ロボット等である。縫ぐるみの形態や大きさは、特に限定されるものではなく、人が手で容易に抱きかかえることができるものであれば良い。
【0016】
この携帯型被接触体Aは、普通一般の縫ぐるみと同様に厚みがあると共に、素材自体に弾力性がある。本実施例の携帯型被接触体Aは、図1及び図2で示すように裏側の中央部にスライドファスナー11が設けられている。スライドファスナー11は、務歯を有する左右一対のテープ11a、11aと、これらの務歯を開閉するスライダー11bと、該スライダーに設けられた操作片11cとから成る。
【0017】
したがって、操作片11cを上下方向に引くと、図1で示すように携帯型被接触体Aの開口部12は開閉する。この開口部12から人体用振動伝播具Xを構成する携帯型被接触体Aに振動伝播装置Bを内蔵することができる。但し、音源体6は、携帯型被接触体Aの外面に設けた収納部に収納することもできる。また、修理の際は、前記開口部12からドライバーユニット3を備えた盤状嵌合支持体2等の装置の主要部を取出すことができる。
次に、盤状嵌合支持体2は、図5で示すように平面視六角形の環状板に形成され、その中央部には任意形状の嵌合部15が形成されている。しかして、嵌合部15は、図8及び図9で示すように、下部側の大径孔15aと、この大径孔15aに連通する上部側の小径孔15bとから成る。また、盤状嵌合支持体2の周方向の側壁2aには、取付け穴16が複数個形成されている。取付け穴16の数は、例えば六角形を形成する周方向の各側壁にそれぞれ一対形成されているので、図5で示すように合計12個である。
【0018】
ところで、盤状嵌合支持体2の平面視の形状は六角形の環状板であるが、その形状は特に問わない。したがって、周方向の側壁2aが五角形、三角形、矩形、円形等の環状板或いはこれに類するものであっても良い。要は、盤状の中央部にドライバーユニット3を嵌め込むことができる凹所或いは貫通状の嵌合部が形成され、かつ、周方向の各側壁に単数又は複数の振動伝播線4の基端部4aを取付けることができる取付け穴(挿入穴)、挿入溝、弾性係合爪片等の取付け部16が設けられていれば良い。なお、盤状嵌合支持体2は、軽量性を考慮して硬質の合成樹脂材(ABS等)で成形されている。
【0019】
次に、低音域の信号を機械振動に変換するバイブロトランスデューサー、換言すると、電気信号−機械信号変換器に相当する心臓部のドライバーユニット3は、例えば円形或いは角型の取付けベース板21と、この取付けベース板の上面に一体成形された円形のケーシング22と、低音域の信号を機械振動に変換する永久磁石25、振動コイル26等の主な部材とから成り、前記取付けベース板21の周縁部には、固着具23用の貫通小孔24が複数個形成されている。
【0020】
しかして、前記ケーシング22内には、図9に示すように、永久磁石25、振動コイル26、複数個の端子を含む接続端子27等から構成され、前記接続端子27には、入力端子28aを有するドライバーユニット側の電気コード28が接続されている。
周知のように、前記振動コイル26は、電流(振動用信号)を流すことで磁性を帯びて磁力を発生させ、前記永久磁石25の磁性による相互作用によってケーシング22並びに取付けベース板21に機械的な振動を与えるものである。すなわち、ドライバーユニット3は、携帯型被接触体Aの内部又は外部に設けた音源体6が発生する低音域の信号を機械的振動に変換する。携帯型被接触体Aは、このような公知・周知・新規のドライバーユニット3を、少なくとも一つ内蔵している。
【0021】
ドライバーユニット3は、盤状嵌合支持体2の嵌合部15に密嵌合状態に組み込まれ、前述した複数個の固着具23及び貫通小孔24を介して盤状嵌合支持体2に一体的に固定され、一つの振動ユニットを構成する。付言すると、本実施例では、図7に示すように、前記嵌合部15の大径部15aに角型の取付けベース板21が略面一状態に嵌入し、同時に嵌合部15の小径部15bに永久磁石25、振動コイル26等を内蔵すると共に、内蔵電源5に電気的に接続する円形のケーシング22が密に合体嵌合して一つの振動ユニットと成る。
【0022】
次に、振動伝播線4は、ドライバーユニット3の周方向の側壁に相当する外壁の取付け穴(挿入穴や挿入溝)16に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニット3から発振された振動を携帯型被接触体Aに全体的に拡散させる。携帯型被接触体Aは、その素材自体が弾性或いはクッション性を有する部材なので、携帯型被接触体Aの素材全体が振動伝播線4を介して全体的な振動体と成る。
【0023】
しかして、本実施例の振動伝播線4は、図5で示すように、一番長いもの4Aと、一番短いもの4Cと、その中間に位置するもの4Bに区分けされ、例えば図7に如く盤状嵌合支持体2に放射状に取付けられる。付言すると、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁2aに形成された複数個の取付け穴16にそれぞれ差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ多方向に変位させた・或いは広げた、或いは狭めた形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ている。
【0024】
ここで振動伝播線4の変位に関して説明すると、図7に示した一番長いもの4Aは、動物の頭部内に位置付けられるので、極力動物の頭部の相似形状に類似するように自由端部4a側を円形状に外拡変位させる。また、中間に位置するもの4Bは、動物の左右の腕内と脚部内にそれぞれ位置付けられるので、各取付基端部4a付近を適宜に折り曲げる。その結果、図1等で示すように、電源5と音源体6を除く振動伝播装置Bの形状は、人体を連想するような骨組状態となる。
【0025】
最後に、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーである。デジタルオーディオプレーヤー6は、そのケース内にICを内臓し、少なくともデジタル方式の音楽ファイルを再生する機能を有する。該デジタルオーディオプレーヤー6は、第1実施例では、携帯型被接触体Aの表1aに設けたポケット型収納部30に自由に収納され、かつ、該ポケット型収納部30に連通する連通孔31を通るドライバーユニット3側の電気的接続手段(電気コード28、入力端子28a)に対して、デジタルオーディオプレーヤー6側の電気的接続手段(接続コード6a、コネクタ6b)を自在に接続することにより電気的に接続する。付言すると、携帯型被接触体Aに内蔵されたドライバーユニット3と前記ポケット型収納部30に収納される携帯型のデジタルオーディオプレーヤー6は、両方の電気的接続手段を介して自由自在に接続する。
【実施例】
【0026】
発明の実施の形態で示した実施例に於いて、振動伝播装置Bは、携帯型被接触体Aの開口部12を介して携帯型被接触体Aに内蔵させることができるが、音源体6は外部に設けることも可能である(図3参照)。第1実施例の携帯型被接触体Aは、「縫いぐるみ型」の形態なので、人体が腕でもって抱きかかえるように接触することができる。また、振動伝播線4の形状や太さは、任意に設計変更することができる事項である。さらに、ドライバーユニット3は、音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するものであるが、前記電気信号は、低音域の信号乃至高音域の信号でも良い。
【0027】
次に、この欄では、音源体を含む振動伝播装置Bの第2実施例と、携帯型被接触体の他の実施例を説明する。なお、第2実施例及び携帯型被接触体の他の実施例をそれぞれ説明するにあたって、第1実施例と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0028】
まず、図10は音源体を含む振動伝播装置B1の第2実施例を示す概略断面説明図である。この振動伝播装置B1が第1実施例の振動伝播装置Bと主に異なる点は、ドライバーユニット3Aは、その円形のケーシング22A内に振動を発生する振動アクチュエータ25,26と共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータ40を内装していることである。したがって、音アクチュエータ40は、スピーカー41を有している。この第2実施例の振動伝播装置B1を第1実施例の振動伝播装置Bに代えて携帯型被接触体Aに内蔵すると、該携帯型被接触体Aからは振動のみならず、歌や音楽や音声が放出されるという利点がある。
【0029】
次に、図11及び図12は第2実施例の携帯型被接触体A1を示す説明図である。この携帯型被接触体A1は、ジャンパー或いは厚手の上着である。第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が、この携帯型被接触体A1のやや肉厚の背面部に内蔵されている。
【0030】
ところで、本実施例の振動伝播線4は、ドライバーユニット(3、3A)を有する盤状嵌合支持体2の全ての取り付け部16に三種類の振動伝播線4A、4B、4Cをそれぞれ取付ける必要はない。第2実施例の携帯型被接触体A1は、「上着型」なので、盤状嵌合支持体2の周側壁2Aの取付け穴16に、例えば一番短い振動伝播線4Cと、中間の振動伝播線4Bを適宜に選択して連結している。
【0031】
付言すると、上着型の携帯型被接触体A1には頭部に相当する部位が存在しないので、それに相当する一番長い振動伝播線4Aは盤状嵌合支持体2に連結されていない。また、携帯型被接触体A1の長袖の部分は自由に動く必要があるので、長袖の部分に振動伝播線が位置するように盤状嵌合支持体2に長い一番長い振動伝播線4Aが連結されていない。
なお、この第2実施例のドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、収納部30に連通する連通孔からではなく、携帯型被接触体A1の上縁部の適宜個所から引き出されている。このように、ドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、携帯型被接触体A1の適宜個所から外部へと引き出すことができる。
【0032】
次に、図13及び図14は第3実施例の携帯型被接触体A2を示す説明図である。この携帯型被接触体A2は枕である。枕型の携帯型被接触体A2は、縫いぐるみ型の携帯型被接触体Aと同様に、人の腕により抱きかかえることができるので、ここでは、人体が接触することができる場合の類型に含めている。しかして、この携帯型被接触体A2にも、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。
【0033】
また、ドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、収納部30に連通する連通孔31から外部へ引き出され、枕型の携帯型被接触体A2の一側壁に設けた収納部30に音源体6を適宜に収納することができる。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、例えば全て中間の振動伝播線4Bが使用されている。そして、振動伝播装置(B、B1)の形状は、全体として「蟹」の印象を与える。このように、複数本の振動伝播線4については、同一の長さだけのものを使用することもできる。
【0034】
次に、図15及び図16は第4実施例の携帯型被接触体A3を示す説明図である。この携帯型被接触体A3は、人体の腰や腹に巻きつけることができるやや肉厚のベルトである。この携帯型被接触体A3にも、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、例えば一番長い振動伝播線4Aのみが左右一対使用されて、それらの自由端部4a、4A側は、腰や腹にフイットするように内側にやや湾曲状に折り曲げ形成している。
【0035】
最後に、図17及び図18は第5実施例の携帯型被接触体A4を示す説明図である。この携帯型被接触体A4は、人が肩に背負うことができるリュックサックである。この携帯型被接触体A4の内側の肉厚部分に、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、三種類の振動伝播線4A、4B、4Cが適宜に選択されて使用されている。
【0036】
以上のように、本実施例の「被接触体」は、人体の腰以上に接触可能でかつ人体により容易に運搬可能な有体物であって、その接触態様は、(A)人体に対して接触することができる場合と、(B)人体が接触することができる場合の両方である。前者は、例えばベルト、リュックサック等の装着体であり、一方、後者は、縫ぐるみ、枕等の人の腕により抱きかかえられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、人体の腰を基準として、該腰以上の部位に接触可能な携帯型被接触体に内蔵される人体用振動伝播具を製造・販売する業界で利用される。
【符号の説明】
【0038】
X…人体用振動伝播具、A〜A4…携帯型被接触体、B、B1…振動伝播装置、2…盤状嵌合支持体、2a…周方向の側壁、3…ドライバーユニット、4…振動伝播線、4a…基端部、4A…自由端部、4a…一番長いもの、4C…一番短いもの、4B…中間のもの、5…電源、6…音源体、11…開閉手段、12…開口部、15…嵌合部、16…取付け部、21…取付けベース板、22…ケーシング、23…固着具、25…永久磁石、26…振動コイルド、28…ドライバーユニット側の電気コード、30…収納部。
【技術分野】
【0001】
本発明は人体用振動伝播具に関し、特に、人体の腰を基準として、該腰以上の部位に接触可能な携帯型被接触体に内蔵される人体用振動伝播具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、家具類としての「椅子」の背面部の中央部に二枚の振動板を介して所定形状のドライバーユニットを内蔵する事項が記載されている。前記ドライバーユニットは、本願発明のドライバーユニットと同様に音源体が発生する電気的低音域の信号を機械的振動に変換するものである。この特許文献1に記載の人体用振動伝播具は、身体に直接接触する椅子の背もたれの裏側に板状振動伝達板を固定し、さらに、該板状振動伝達板の裏面に嵌合穴を有する硬質の板状振動板を固定的に重ね、前記嵌合穴にドライバーユニットを密嵌合状態に組み込む構成である。
【0003】
上記構成の人体用振動伝播具は、ベッドのような平面的形状の家具に内蔵するのは相応しいものの、形態が変位する携帯型装着具や「縫ぐるみ」に適用することができない、実効振動面積の範囲を拡大するためには、上下の振動板を長尺状かつ幅広に形成しなければならない、という問題点があった。
【0004】
特許文献2は、出願人が貴庁に提案したものである。この特許文献2の図3には、椅子を構成するフレームに水平方向に張設されたバネ部材があり、該バネ部材の中央部にドライバーユニットを固定する事項が記載されている。この特許文献2のリラクゼーション椅子は、振動伝播装置の実効振動面積の範囲に拡大させるためには、複数個のドライバーユニットを使用しなければならない、という問題点があった。
【0005】
なお、特許文献3及び特許文献4には、音源体が発生する電気的低音域の信号を機械的振動に変換する振動装置の具体的構成が記載され、ドライバーユニット及びこれに類する振動装置の電気回路は、周知事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−34795
【特許文献2】特開2001212198
【特許文献3】特開2001−86580
【特許文献4】特開2008−92122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の所期の目的は、振動伝播装置の実効振動面積の範囲に拡大させ、縫ぐるみ型、枕型等の形態変位可能物であって、かつ携帯型の被接触体の全体を振動具にすることができることである。第2の目的は、振動伝播装置を構成する振動伝播線を、平面的形状、立体的形状等の任意の形状に簡単に折り曲げることにより、例えば曲面性のある変位可能な物であって、かつ厚い部分を有する携帯型被接触体であっても、可能な限り、携帯型被接触体に振動伝播装置を内蔵させることができることである。その他、軽量化や臨場感のある人体用振動伝播具を提案することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人体用振動伝播具は、人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成ることを特徴とする。
【0009】
上記構成に於いて、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁21に形成された複数個の取付け部16に差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ変位した形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ていることを特徴とする。また、携帯型被接触体Aは、人に装着された状態で接触し或いは人が手で抱き抱えることにより接触されることを特徴とする。さらに、ドライバーユニット3は、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備え、これに対して、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーであり、該デジタルオーディオプレーヤー6は、携帯型被接触体に設けた収納部30に収納され、かつ電気的接続手段を介して前記ドライバーユニットに自在に接続可能であることを特徴とする。加えて、振動伝播線4は、少なくとも長いものと、短いもの二種類以上を含んでいることを特徴とする。
【0010】
ここで「被接触体」は、人体の腰以上に接触可能でかつ人体により容易に運搬可能な有体物であって、その接触態様は、(a)人体に対して接触することができる場合と、(b)人体が接触することができる場合の両方である。前者は、例えばベルト、ジャンパー、厚手の上着、リュックサック等の装着体であり、一方、後者は、縫ぐるみ、枕等人の腕により抱きかかえられるものである。
【発明の効果】
【0011】
(A)人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aに振動伝播線4を有する振動伝播装置Bを内蔵させたので、実効振動面積の範囲に拡大することができ、縫ぐるみ型、枕型等の形態変位可能物であって、かつ携帯型の被接触体の全体を振動具にすることができる。また、臨場感のある人体用振動伝播具を提案することができる。
(B)振動伝播線4がドライバーユニット3の半径外方向に延在し、該振動伝播線4がドライバーユニット3の振動を広範囲に伝達する機能を有するから、ドライバーユニット3が1個のみで済む。したがって、コストの削減化を図ることができる。また、振動伝播手段が「線材」なので、軽量化を図ることもできる。さらに、その自由端部を折り曲げて係止部分にすることもできる。加えて、携帯型被接触体Aに振動伝播装置Bを内蔵しても人に対して「違和感」を与えない。
(C)請求項2に記載の発明は、振動伝播線4が、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁2aに形成された複数個の取付け穴16にそれぞれ差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ多方向に変位させた・或いは広げた、或いは狭めた形態をそのまま保持することができる剛性の材質であることから、振動伝播線を適宜に選択することにより、体積が大きい、縫ぐるみ、枕などのみならず、やや厚手のジャンパー、厚手の上着、厚い部分を有するリュックサック等にも適用することができる。付言すると、振動伝播線4を、平面的形状、立体的形状等の任意の形状にすることができるから、例えば曲面性のある変位可能な物であって、かつ厚い部分を有する携帯型被接触体であっても、可能な限り、振動伝播線4の所望する部位を適宜に折り曲げて、携帯型被接触体に振動伝播装置を内蔵させることができる。
(C)請求項3に記載の発明は、ドライバーユニットは、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備えているので、音源体の記憶部に格納されているデータを最大限に活用することができる。
(D)請求項4に記載の発明は、前記(B)の効果を有効的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図9は本発明の最良の実施例(第1実施例)を示す各説明図。
【図1】携帯型被接触体と振動伝播装置とを分離した状態の説明図。
【図2】背面からの説明図。
【図3】正面からの説明図。
【図4】ドライバーユニットと音源体との電気的接続状態を示す概略説明図。
【図5】アタッチメント式振動伝播線と盤状嵌合支持体の説明図。
【図6】携帯型被接触体に内蔵される振動伝播装置の説明図。
【図7】図6に於ける分解説明図。
【図8】図6に於ける8−8線概略断面説明図。
【図9】音源体を含む振動伝播装置の説明図。
【図10】音源体を含む振動伝播装置の第2実施例の概略断面説明図。
【図11】第2実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図12】第2実施例の概略断面説明図。
【図13】第3実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図14】第3実施例の概略断面説明図。
【図15】第4実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図16】第4実施例の概略断面説明図。
【図17】第5実施例の携帯型被接触体を示す説明図。
【図18】第5実施例の概略断面説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1乃至図9に示す本発明を実施するための最良の形態(第1実施例)により説明する。図1で示すように、第1実施例の人体用振動伝播具Xは、人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する、例えば電気的低音域の信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る。
【0014】
図1に於いて、Xは人体用振動伝播具で、この人体用振動伝播具Xの基本的構成は、縫ぐるみ形態の携帯型被接触体Aと、この携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成る。そして、前記振動伝播装置Bは、携帯型被接触体Aに内蔵される盤状嵌合支持体2、これに合体するドライバーユニット3、前記盤状嵌合支持体2に半径外方向に延在するように連結する複数の振動伝播線4、内蔵電源5、携帯型被接触体Aの内部又は外部(本実施例)に設けられる音源体6とから構成されている。
【0015】
まず、携帯型被接触体Aは、図1乃至図3で示すように、クッション性の「縫ぐるみ」である。縫ぐるみの形態は、例えば漫画、映画、アニメーション、遊園地等に登場する人物、動物、ロボット等である。縫ぐるみの形態や大きさは、特に限定されるものではなく、人が手で容易に抱きかかえることができるものであれば良い。
【0016】
この携帯型被接触体Aは、普通一般の縫ぐるみと同様に厚みがあると共に、素材自体に弾力性がある。本実施例の携帯型被接触体Aは、図1及び図2で示すように裏側の中央部にスライドファスナー11が設けられている。スライドファスナー11は、務歯を有する左右一対のテープ11a、11aと、これらの務歯を開閉するスライダー11bと、該スライダーに設けられた操作片11cとから成る。
【0017】
したがって、操作片11cを上下方向に引くと、図1で示すように携帯型被接触体Aの開口部12は開閉する。この開口部12から人体用振動伝播具Xを構成する携帯型被接触体Aに振動伝播装置Bを内蔵することができる。但し、音源体6は、携帯型被接触体Aの外面に設けた収納部に収納することもできる。また、修理の際は、前記開口部12からドライバーユニット3を備えた盤状嵌合支持体2等の装置の主要部を取出すことができる。
次に、盤状嵌合支持体2は、図5で示すように平面視六角形の環状板に形成され、その中央部には任意形状の嵌合部15が形成されている。しかして、嵌合部15は、図8及び図9で示すように、下部側の大径孔15aと、この大径孔15aに連通する上部側の小径孔15bとから成る。また、盤状嵌合支持体2の周方向の側壁2aには、取付け穴16が複数個形成されている。取付け穴16の数は、例えば六角形を形成する周方向の各側壁にそれぞれ一対形成されているので、図5で示すように合計12個である。
【0018】
ところで、盤状嵌合支持体2の平面視の形状は六角形の環状板であるが、その形状は特に問わない。したがって、周方向の側壁2aが五角形、三角形、矩形、円形等の環状板或いはこれに類するものであっても良い。要は、盤状の中央部にドライバーユニット3を嵌め込むことができる凹所或いは貫通状の嵌合部が形成され、かつ、周方向の各側壁に単数又は複数の振動伝播線4の基端部4aを取付けることができる取付け穴(挿入穴)、挿入溝、弾性係合爪片等の取付け部16が設けられていれば良い。なお、盤状嵌合支持体2は、軽量性を考慮して硬質の合成樹脂材(ABS等)で成形されている。
【0019】
次に、低音域の信号を機械振動に変換するバイブロトランスデューサー、換言すると、電気信号−機械信号変換器に相当する心臓部のドライバーユニット3は、例えば円形或いは角型の取付けベース板21と、この取付けベース板の上面に一体成形された円形のケーシング22と、低音域の信号を機械振動に変換する永久磁石25、振動コイル26等の主な部材とから成り、前記取付けベース板21の周縁部には、固着具23用の貫通小孔24が複数個形成されている。
【0020】
しかして、前記ケーシング22内には、図9に示すように、永久磁石25、振動コイル26、複数個の端子を含む接続端子27等から構成され、前記接続端子27には、入力端子28aを有するドライバーユニット側の電気コード28が接続されている。
周知のように、前記振動コイル26は、電流(振動用信号)を流すことで磁性を帯びて磁力を発生させ、前記永久磁石25の磁性による相互作用によってケーシング22並びに取付けベース板21に機械的な振動を与えるものである。すなわち、ドライバーユニット3は、携帯型被接触体Aの内部又は外部に設けた音源体6が発生する低音域の信号を機械的振動に変換する。携帯型被接触体Aは、このような公知・周知・新規のドライバーユニット3を、少なくとも一つ内蔵している。
【0021】
ドライバーユニット3は、盤状嵌合支持体2の嵌合部15に密嵌合状態に組み込まれ、前述した複数個の固着具23及び貫通小孔24を介して盤状嵌合支持体2に一体的に固定され、一つの振動ユニットを構成する。付言すると、本実施例では、図7に示すように、前記嵌合部15の大径部15aに角型の取付けベース板21が略面一状態に嵌入し、同時に嵌合部15の小径部15bに永久磁石25、振動コイル26等を内蔵すると共に、内蔵電源5に電気的に接続する円形のケーシング22が密に合体嵌合して一つの振動ユニットと成る。
【0022】
次に、振動伝播線4は、ドライバーユニット3の周方向の側壁に相当する外壁の取付け穴(挿入穴や挿入溝)16に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニット3から発振された振動を携帯型被接触体Aに全体的に拡散させる。携帯型被接触体Aは、その素材自体が弾性或いはクッション性を有する部材なので、携帯型被接触体Aの素材全体が振動伝播線4を介して全体的な振動体と成る。
【0023】
しかして、本実施例の振動伝播線4は、図5で示すように、一番長いもの4Aと、一番短いもの4Cと、その中間に位置するもの4Bに区分けされ、例えば図7に如く盤状嵌合支持体2に放射状に取付けられる。付言すると、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁2aに形成された複数個の取付け穴16にそれぞれ差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ多方向に変位させた・或いは広げた、或いは狭めた形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ている。
【0024】
ここで振動伝播線4の変位に関して説明すると、図7に示した一番長いもの4Aは、動物の頭部内に位置付けられるので、極力動物の頭部の相似形状に類似するように自由端部4a側を円形状に外拡変位させる。また、中間に位置するもの4Bは、動物の左右の腕内と脚部内にそれぞれ位置付けられるので、各取付基端部4a付近を適宜に折り曲げる。その結果、図1等で示すように、電源5と音源体6を除く振動伝播装置Bの形状は、人体を連想するような骨組状態となる。
【0025】
最後に、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーである。デジタルオーディオプレーヤー6は、そのケース内にICを内臓し、少なくともデジタル方式の音楽ファイルを再生する機能を有する。該デジタルオーディオプレーヤー6は、第1実施例では、携帯型被接触体Aの表1aに設けたポケット型収納部30に自由に収納され、かつ、該ポケット型収納部30に連通する連通孔31を通るドライバーユニット3側の電気的接続手段(電気コード28、入力端子28a)に対して、デジタルオーディオプレーヤー6側の電気的接続手段(接続コード6a、コネクタ6b)を自在に接続することにより電気的に接続する。付言すると、携帯型被接触体Aに内蔵されたドライバーユニット3と前記ポケット型収納部30に収納される携帯型のデジタルオーディオプレーヤー6は、両方の電気的接続手段を介して自由自在に接続する。
【実施例】
【0026】
発明の実施の形態で示した実施例に於いて、振動伝播装置Bは、携帯型被接触体Aの開口部12を介して携帯型被接触体Aに内蔵させることができるが、音源体6は外部に設けることも可能である(図3参照)。第1実施例の携帯型被接触体Aは、「縫いぐるみ型」の形態なので、人体が腕でもって抱きかかえるように接触することができる。また、振動伝播線4の形状や太さは、任意に設計変更することができる事項である。さらに、ドライバーユニット3は、音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するものであるが、前記電気信号は、低音域の信号乃至高音域の信号でも良い。
【0027】
次に、この欄では、音源体を含む振動伝播装置Bの第2実施例と、携帯型被接触体の他の実施例を説明する。なお、第2実施例及び携帯型被接触体の他の実施例をそれぞれ説明するにあたって、第1実施例と同一の部分には、同一の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0028】
まず、図10は音源体を含む振動伝播装置B1の第2実施例を示す概略断面説明図である。この振動伝播装置B1が第1実施例の振動伝播装置Bと主に異なる点は、ドライバーユニット3Aは、その円形のケーシング22A内に振動を発生する振動アクチュエータ25,26と共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータ40を内装していることである。したがって、音アクチュエータ40は、スピーカー41を有している。この第2実施例の振動伝播装置B1を第1実施例の振動伝播装置Bに代えて携帯型被接触体Aに内蔵すると、該携帯型被接触体Aからは振動のみならず、歌や音楽や音声が放出されるという利点がある。
【0029】
次に、図11及び図12は第2実施例の携帯型被接触体A1を示す説明図である。この携帯型被接触体A1は、ジャンパー或いは厚手の上着である。第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が、この携帯型被接触体A1のやや肉厚の背面部に内蔵されている。
【0030】
ところで、本実施例の振動伝播線4は、ドライバーユニット(3、3A)を有する盤状嵌合支持体2の全ての取り付け部16に三種類の振動伝播線4A、4B、4Cをそれぞれ取付ける必要はない。第2実施例の携帯型被接触体A1は、「上着型」なので、盤状嵌合支持体2の周側壁2Aの取付け穴16に、例えば一番短い振動伝播線4Cと、中間の振動伝播線4Bを適宜に選択して連結している。
【0031】
付言すると、上着型の携帯型被接触体A1には頭部に相当する部位が存在しないので、それに相当する一番長い振動伝播線4Aは盤状嵌合支持体2に連結されていない。また、携帯型被接触体A1の長袖の部分は自由に動く必要があるので、長袖の部分に振動伝播線が位置するように盤状嵌合支持体2に長い一番長い振動伝播線4Aが連結されていない。
なお、この第2実施例のドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、収納部30に連通する連通孔からではなく、携帯型被接触体A1の上縁部の適宜個所から引き出されている。このように、ドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、携帯型被接触体A1の適宜個所から外部へと引き出すことができる。
【0032】
次に、図13及び図14は第3実施例の携帯型被接触体A2を示す説明図である。この携帯型被接触体A2は枕である。枕型の携帯型被接触体A2は、縫いぐるみ型の携帯型被接触体Aと同様に、人の腕により抱きかかえることができるので、ここでは、人体が接触することができる場合の類型に含めている。しかして、この携帯型被接触体A2にも、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。
【0033】
また、ドライバーユニット(3、3A)の接続手段28,28aは、収納部30に連通する連通孔31から外部へ引き出され、枕型の携帯型被接触体A2の一側壁に設けた収納部30に音源体6を適宜に収納することができる。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、例えば全て中間の振動伝播線4Bが使用されている。そして、振動伝播装置(B、B1)の形状は、全体として「蟹」の印象を与える。このように、複数本の振動伝播線4については、同一の長さだけのものを使用することもできる。
【0034】
次に、図15及び図16は第4実施例の携帯型被接触体A3を示す説明図である。この携帯型被接触体A3は、人体の腰や腹に巻きつけることができるやや肉厚のベルトである。この携帯型被接触体A3にも、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、例えば一番長い振動伝播線4Aのみが左右一対使用されて、それらの自由端部4a、4A側は、腰や腹にフイットするように内側にやや湾曲状に折り曲げ形成している。
【0035】
最後に、図17及び図18は第5実施例の携帯型被接触体A4を示す説明図である。この携帯型被接触体A4は、人が肩に背負うことができるリュックサックである。この携帯型被接触体A4の内側の肉厚部分に、第1実施例の振動伝播装置B又は第2実施例の振動伝播装置B1のいずれか一方が内蔵されている。この振動伝播装置(B、B1)を構成する複数本の振動伝播線4は、三種類の振動伝播線4A、4B、4Cが適宜に選択されて使用されている。
【0036】
以上のように、本実施例の「被接触体」は、人体の腰以上に接触可能でかつ人体により容易に運搬可能な有体物であって、その接触態様は、(A)人体に対して接触することができる場合と、(B)人体が接触することができる場合の両方である。前者は、例えばベルト、リュックサック等の装着体であり、一方、後者は、縫ぐるみ、枕等の人の腕により抱きかかえられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、人体の腰を基準として、該腰以上の部位に接触可能な携帯型被接触体に内蔵される人体用振動伝播具を製造・販売する業界で利用される。
【符号の説明】
【0038】
X…人体用振動伝播具、A〜A4…携帯型被接触体、B、B1…振動伝播装置、2…盤状嵌合支持体、2a…周方向の側壁、3…ドライバーユニット、4…振動伝播線、4a…基端部、4A…自由端部、4a…一番長いもの、4C…一番短いもの、4B…中間のもの、5…電源、6…音源体、11…開閉手段、12…開口部、15…嵌合部、16…取付け部、21…取付けベース板、22…ケーシング、23…固着具、25…永久磁石、26…振動コイルド、28…ドライバーユニット側の電気コード、30…収納部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る人体用振動伝播具。
【請求項2】
請求項1に於いて、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁21に形成された複数個の取付け部16に差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ変位した形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ていることを特徴とする人体用振動伝播具。
【請求項3】
請求項1に於いて、ドライバーユニット3Aは、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備え、これに対して、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーであり、該デジタルオーディオプレーヤー6は、携帯型被接触体に設けた収納部30に収納され、かつ電気的接続手段を介して前記ドライバーユニットに自在に接続可能であることを特徴とする人体用振動伝播具。
【請求項4】
請求項1に於いて、振動伝播線4は、少なくとも長いものと、短いもの二種類以上を含んでいることを特徴とする人体用振動伝播具。
【請求項1】
人体に対して接触することができる或いは人体が接触することができる携帯型被接触体Aと、該携帯型被接触体Aに内蔵される振動伝播装置Bとから成り、前記振動伝播装置Bは、中央部に嵌合部15を有する盤状嵌合支持体2と、前記嵌合部に一体的に組み込まれ、かつ前記携帯型被接触体の内部又は外部に設けた音源体6が発生する電気信号を機械的振動に変換するドライバーユニット3と、前記盤状嵌合支持体2の外壁に基端部4aが取付けられると共に、半径外方向に延在する自由端部4b側を任意に折り曲げることができ、しかも前記ドライバーユニットから発振された振動を前記携帯型被接触体に全体的に拡散させる振動伝播線4と、前記ドライバーユニットに電気的に接続すると共に前記携帯型被接触体内に設けられた電源5とから成る人体用振動伝播具。
【請求項2】
請求項1に於いて、振動伝播線4は、その基端部4aが盤状嵌合支持体2の周側壁21に形成された複数個の取付け部16に差し込まれた平面視U字形状のアタッチメントであり、かつ変位した形態をそのまま保持することができる剛性の材質で出来ていることを特徴とする人体用振動伝播具。
【請求項3】
請求項1に於いて、ドライバーユニット3Aは、振動を発生する振動アクチュエータと共に、歌や音楽や音声を放出する音アクチュエータの両機能を備え、これに対して、音源体6は、携帯型のデジタルオーディオプレーヤーであり、該デジタルオーディオプレーヤー6は、携帯型被接触体に設けた収納部30に収納され、かつ電気的接続手段を介して前記ドライバーユニットに自在に接続可能であることを特徴とする人体用振動伝播具。
【請求項4】
請求項1に於いて、振動伝播線4は、少なくとも長いものと、短いもの二種類以上を含んでいることを特徴とする人体用振動伝播具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−71831(P2011−71831A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222265(P2009−222265)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(392014818)株式会社アイ信 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(392014818)株式会社アイ信 (6)
【Fターム(参考)】
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