説明

人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置

【課題】人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置において、ライン構成の簡素化および省力化を図ること。
【解決手段】コンテナ供給機と、コンテナ供給機から順次送られるコンテナを受け入れる傾斜送り装置と、傾斜送り装置上のコンテナからレトルト培地が移し変えられる植菌送りラインと、傾斜送り装置の上で空になったコンテナが移し変えられる回送ラインと、植菌送りライン上に置かれる植菌機並びにシール加工機と、植菌送りラインに後続する縫合送りラインと、縫合送りライン上に置かれるミシン装置および玉入れ装置とからなり、それらのうちのシール加工機については、レトルト培地の袋口を次のミシン装置でミシン掛けしやすく拝み合わせ整形に保持できるように構成し、また、玉入れ装置については、前記回送ラインから送られてくる空のコンテナにミシン装置からのレトルト培地を詰め込み得るように構成し、次いで培養工程を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、菌床としての培地に例えば椎茸、なめこ、しめじ等の茸類を栽培するために、培地が熟成するまでプラスチック製のレトルトに袋詰めておかれる場合に、培地に種菌を接種する植菌作業と、種菌が増殖しやすく袋口を通気可能にミシン掛けして不完全に封じる作業とをなすために、栽培ハウス内に装備される人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、椎茸等の人工栽培においては、コナラ、サクラ、クヌギ等の広葉樹の原木に種菌を接種したほだ木を用いる原木栽培と、同じような広葉樹等のおが屑、或いは米糠やふすま等に水を混入してブロック状に練り固めた培地を用いる菌床栽培とが採用される。しかしながら、菌床栽培の場合であると、成形したブロックが型崩れしやすいばかりでなく、雑菌の存在により種菌の育成が阻害されるため、その防止策として、本出願人においては、調合した培地をポリプロピレン等のプラスチックフィルムまたはシートからなる袋に充填し圧縮して円柱形等に成形した袋詰めのレトルト培地を作って対応することとして、これに種菌の摂取と同時に、種菌が増殖しやすく袋口を通気可能にミシン掛けするレトルト培地の植菌ライン装置を開発した。
【0003】
なお、本出願人においては、上記のように作ったレトルト培地について効率的に作業・管理をなすために、例えばそれを縦横に並べて収容する後記するようなコンテナを開発し既に特許出願した。その構造の概略については後述する。なお、本願においてはこのような特殊なコンテナに限定するものでないことは言うまでもない。
【0004】
図5は、本出願人において、これまで実施してきた植菌送りライン装置Qを示したもので、矩形に循環する両周回ライン50,50が左右に配置され、その間の中間に沿って直の中央ライン52を設け、両周回ライン50,50と中央ライン52との間に、それぞれ植菌機54とミシン装置56とを配列した作業台が置かれる。また、入り口側には両周回ライン50,50の双方向へ向かうコンテナ53のローラ搬送部57が置かれる。59はコンテナ洗浄機である。
【0005】
上記の植菌送りライン装置Qに供給されるレトルト培地58は、前記したようにプラスチックフィルムまたはシートからなる袋に詰められており、台車62で搬送されて来ると、作業員64a(工数1)によってコンテナ53がローラ部57に載せて両周回ライン50,50方向へ左右に分けられ、周回ライン50,50に到着したコンテナ53,53から作業員64b(工数2)によってレトルト培地58が周回ライン50,50に載せられる。各植菌機54には作業員64c(この場合、合計工数6)が付いているので、周回ライン50に載ってきたレトルト培地58を取って、それに種菌を摂取し、次いで、ミシン56によりレトルト培地58の袋口をミシン掛けして通気可能に封じてから、中央ライン52に載せられる。
【0006】
中央ライン52に載せられたレトルト培地58は終着点に至ると、作業員64d(工数2)によりキャスター65に載せてから、作業員64e(工数1)によりパレット66に載せ変えられた後、リフトによって培養室に移送される。なお、レトルト培地58を送って来たコンテナ53はローラ部57において空になると搬出される。一方、外部より用意されたコンテナ53は作業員64f(工数2)により、コンテナ洗浄機59を通過させ水拭きしてから、作業員64dの使用に供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、植菌送りライン装置Qの構成は、周回ライン50が2ライン、中央ライン52が1ライン、植菌機54およびミシン56がそれぞれ8台、コンテナ洗浄機59が1台、というようにラインを構成する装置が過大となり、また、それに配置される作業員数としての工数も14人というように過剰であったので、生産コストの逓減のためこれの改善を追求し研究を重ねていた。
【0008】
すなわち、この発明は、人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置において、ライン構成の簡素化および省力化を図ることを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、培地を袋詰めして成形したレトルト培地がコンテナに詰め込んで搬入されることにより、それに種菌を接種するとともに、レトルトの袋口を培地が熟成するよう通気可能に袋口の不完全なシール作業をなすための植菌ライン装置であって、コンテナ供給機と、コンテナ供給機から順次送られるコンテナを受け入れる傾斜送り装置と、傾斜送り装置上のコンテナからレトルト培地が移し変えられる植菌送りラインと、傾斜送り装置の上で空になったコンテナが移し変えられる回送ラインと、植菌送りライン上に置かれる植菌機並びにシール加工機と、植菌送りラインに後続する縫合送りラインと、縫合送りライン上に置かれるミシン装置および玉入れ装置とからなり、それらのうちのシール加工機については、レトルト培地の袋口を次のミシン装置でミシン掛けしやすく拝み合わせ整形に保持できるように構成し、また、玉入れ装置については、前記回送ラインから送られてくる空のコンテナにミシン装置からのレトルト培地を詰め込み得るように構成したことを特徴とする人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置を提供するものである。
【0010】
人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌ライン装置を上記のように構成したから、傾斜送り装置に連続的に載っているコンテナから作業員がレトルト培地を取り出して植菌送りラインに載せると、空となったコンテナが回送ラインに載せられる。そして、植菌送りラインに載って移動する間に、レトルト培地に植菌が施され、袋口がミシン掛けしやすく整えられ、ミシン掛けされたレトルト培地が玉入れ装置で空のコンテナと合流し、コンテナにレトルト培地が詰め込まれる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、この発明の植菌ライン装置によれば、コンテナから一旦抜き取られたレトルト培地と、空になったコンテナとが玉入れ装置において合流するため、空コンテナの運搬に手数を要しなく、また、シール加工機で袋口を閉じに保持した状態でレトルト培地をミシン装置に臨ませるので、ミシン掛けが容易であり、加えて、傾斜送り装置に連続するコンテナから一挙に多数のレトルト培地を植菌送りラインに移し変え得るため、装置が合理的に簡素化でき、人員の配置が少なくて済むために省力化も同時に図り得るという優れた効果がある。加えて、請求項2の如くにシール加工機を構成すると、ミシン掛けが極めて容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、この発明の一実施形態を示した人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌ライン装置Pを平面から見た模式図であるが、左右に(L方向へ)長さを有するため、図示の都合から上下段差に図示したものである。ただし、ここでは、この発明の中心となるレトルト培地2は作られず、前工程で作られたレトルト培地2,2,・・が、コンテナ3に詰めて殺菌してから送られてくる。その搬送には台車5が用いられる。
【0014】
台車5は、コンテナ供給機1に搬入される。植菌送りライン装置Pは、このコンテナ供給機1を出発点として、これからコンテナ3が搬送されるベルトのL字型配列の供給ライン6,6と、これに直列する傾斜送り装置9とが続くが、傾斜送り装置9の横に並列するレトルト培地2のベルトによる植菌送りライン7と、傾斜送り装置9の後端に転送盤17を介して続く空コンテナ3のベルトによる回送ライン19とに経路が分かれている。
【0015】
植菌送りライン7では植菌部所に後続してシール加工機12が設けられる。また、植菌送りライン7の後端にはライン変更機を介してベルトによる縫合送りライン13が後続し、その縫合送りライン13にはミシン装置15と、縫合処理したレトルト培地2を空コンテナ3に収納する玉入れ装置18とが装備される。
【0016】
一方、回送ライン19は、上記空コンテナ3を玉入れ装置18に供給するためのもので、これを傾斜送り装置9から回送ライン19に転送するために、傾斜送り装置9の先端に、コンテナ3,3,・・を連続させる停止板34を設けるとともに、停止板34から転送盤17を介して空コンテナ3を回送ライン19に押し出して転送できるようになっている。そして、玉入れ装置18は、その回送ライン19の後端部に縫合送りライン13と股掛けに装置される。また、ここでレトルト培地2が詰み込まれたコンテナ3は、回送ライン19に直交する排出ライン21から培養室としての自動倉庫等への配給部23に送られるようになっている。次に、以上述べた各部所ないし工程を具体的に説明する。
【0017】
まず、コンテナ供給機1に至る前の工程においては、米糠、ふすま、おが屑、その他栄養素等を混合して水で練ることにより培地を調合し、それが袋としてのレトルト25に定量ずつ詰められてから、円柱形等に培地24が圧縮成形される(図2)。この袋詰めの培地をレトルト培地2ということにした。この状態で前工程では、加熱釜に入れて高温で殺菌したり、培地24の中央部に穴29を設けておく(図3のイ図参照)。そして、この穴29には植菌送りライン7で種菌28を落として植菌(接種)される(図3のロ図参照)。
【0018】
レトルト培地2がこのように殺菌されてから、袋口が閉じられコンテナ3に詰め込まれ、台車5に積載して作業員10aによりコンテナ供給機1に送られる。なお、コンテナ3は、例えば図2に示すような構造であって、底31が網状や格子状等の通気性および通水性を有するもので、前後左右の各側面および上面が開放されている。この形状ないし構造は、レトルト培地2の収納、運搬、保管ばかりでなく、培地(菌床)の熟成管理、茸の育成、収穫等の作業を培地ないし菌床を入れたまま多様な用途に都合良く使用できる。
【0019】
コンテナ供給機1に台車5でコンテナ3が搬入されると、シリンダーによる押出機33で供給ライン6に複数のコンテナ3,3,3が一度に押し出され、供給ライン6,6に載って移送される。なお、供給ライン6のL字型のコーナーにはシリンダーの押出しによる方向転換機35が設けられる。こうして方向転換して供給ライン6から傾斜送り装置9にコンテナ3が送られると、そこでは、作業員10a(工数2)により傾斜送り装置9の上のコンテナ3からレトルト培地2を植菌送りライン7に移しかえられ、そのため、ここでの傾斜送り装置9ではコンテナ3が空になる。
【0020】
傾斜送り装置9は、前後両端に傾斜機を設けて水平と傾斜とを選択されるようになっており、先端のストッパー付き停止板34が隣の転送盤17と面一に水平となったときに作業員10aによって空のコンテナ3が回送ライン19に押し出される。一方、植菌送りライン7で移されたレトルト培地2は、ライン変更機14まで送られる間に、植菌機8とシール加工機12とを通過し、作業員10b(工数1)によりレトルト培地2の穴29に種菌28が落とし込まれてから、袋口が閉じるように整形される(図3のハ図の状態)。
【0021】
整形については、図3のロ図に示すように、左右から高温バー38,38で挟むことにより(ロ図)、レトルト培地2の袋口を拝み合わせるとともに、中央を除いて両端部を溶着するか、若しくは溶着しないまでも拝み合わせの口閉じ状態に可塑変形させる。いずれにしてもそうすれば、ミシン装置15においては、作業員10cにより口閉じ位置に沿って容易に縫い合わせることができる(図3のハ図、図4参照)。図4は、予め中央部の溶着を省いたために、縫い合わせの長さ中央部が培地の熟成に要する空気の通気口39となっていることを示している。
【0022】
玉入れ装置18では、ミシン掛けしたレトルト培地2が、合流する空のコンテナ3に横の開放口から底板31の上に自動的に積み込まれ、それからベルトによる排出ライン21に送り出される。40がコンテナ3の押出機である。
【0023】
排出ライン21で配給部23に送られると、そこには大型アームロボット41が配備されているので、それでコンテナ3がパレット43に積み込まれ、培養工程としての自動倉庫へ搬送される。自動倉庫は、温度や湿度等が自動調整されるようになっている。ここにおいて、約40日程度の経過で茸菌が蔓延するので、培地を白く覆いつくすと、破袋して被膜室に移動される。
【0024】
なお、一点鎖線で囲むA,B,C,D,Eは、それぞれ作業員の守備範囲を示し、全て含めても5〜6人である。単純計算では従来の12人(コンテナ洗浄器59の人員64fを除く)に比して6〜7人の省力化となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係る一例のレトルト培地の植菌ライン装置を平面から見た模式図であって、左右長の図示の都合上段差により左右の連続を示す図である。
【図2】この発明の実施に使用するコンテナの構造の一例とともに、それに詰め込むレトルト培地を示す斜視図である。
【図3】レトルト培地について、植菌前(イ図)、袋口の拝み合わせ成形要領(ロ図)、袋口の成形した形態(ハ図)を順に示す断面説明図である。
【図4】ミシン掛けしたレトルト培地の平面図である。
【図5】従来例のレトルト培地の植菌ライン装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
P 人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌ライン装置
1 コンテナ供給機
2 レトルト培地
3 コンテナ
7 植菌送りライン
8 植菌機
9 傾斜送り装置
12 シール加工機
13 縫合送りライン
15 ミシン装置
18 玉入れ装置
28 種菌
38 加熱バー
39 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地を袋詰めして成形したレトルト培地がコンテナに詰め込んで搬入されることにより、それに種菌を接種するとともに、レトルトの袋口を培地が熟成するよう通気可能に袋口の不完全なシール作業をなすための植菌ライン装置であって、コンテナ供給機と、コンテナ供給機から順次送られるコンテナを受け入れる傾斜送り装置と、傾斜送り装置上のコンテナからレトルト培地が移し変えられる植菌送りラインと、傾斜送り装置の上で空になったコンテナが移し変えられる回送ラインと、植菌送りライン上に置かれる植菌機並びにシール加工機と、植菌送りラインに後続する縫合送りラインと、縫合送りライン上に置かれるミシン装置および玉入れ装置とからなり、それらのうちのシール加工機については、レトルト培地の袋口を次のミシン装置でミシン掛けしやすく拝み合わせ整形に保持できるように構成し、また、玉入れ装置については、前記回送ラインから送られてくる空のコンテナにミシン装置からのレトルト培地を詰め込み得るように構成し、次いで培養工程を設けたことを特徴とする人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置。
【請求項2】
シール加工機については、プラスチックフィルム又はシートからなるレトルトの上部を挟む左右一対の加熱バーを備えてなり、レトルトの袋口近くを中央部に通気口が開くように加熱により封じ得るように構成したことを特徴とする請求項1記載の人工茸栽培におけるレトルト培地の植菌送りライン装置。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−136183(P2009−136183A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314137(P2007−314137)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(306009042)上田産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】