説明

什器システム

【課題】建物等の内壁、床面に対して特殊な加工を施す必要が無く、簡易的、且つ安価に非接触給電装置を組み込むことができる。
【解決手段】テーブル1の所定位置にカート2を組合せた給電位置で、テーブル1に具備した給電装置30からカート2に具備した受電装置40へ非接触給電を行う電源装置10を備えている。固定側天板11の下面11bに給電側コイル31を配置し、テーブル1に対する所定の給電位置Rにおいて給電側コイル31に対向配置される受電側コイル41をカート2に配置し、給電側コイル31と受電側コイル41とを近接させ、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流を発生させることで非接触給電が行われる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定什器から移動什器へ給電を行う什器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等を載置したり収納したりすることができ、かつ移動自在な多目的カートが、病院や介護施設等においてナースカート等として広く利用されており、近年、カルテ等の電子化に伴う情報端末等の電子機器の利用の増加から、バッテリー及び電源コードを配設して、カート上で利用される電子機器への給電を可能とした多目的カートが一般的となってきている。
【0003】
上記のような電源コードを用いるカートによると、バッテリーへの給電時に電源コードをコンセントに差し込む等の手間が掛かり、また、複数のカートに同時に給電する場合には、執務室の内壁に設けられたコンセントとカートとの間に電源コードが多数配されることになって床面上が煩雑になるため、給電作業の簡便化、及び床面上のコードレス化、室内の体裁向上の観点から改良が期待されていた。
【0004】
上記の諸点に鑑み、建物の床面に設けた給電側のコイルと、移動什器に搭載した受電側のコイルとの間に生じる電磁誘導を利用した非接触給電装置によって、移動什器のバッテリーに対して給電する給電方法が、例えば特許文献1に提案されている。
この方法によれば、床面に給電部を設ける一方、カートに受電部を設け、カートを床面上の給電部に配置することにより、電源ケーブルを介在させずに給電するため、給電作業を簡易に行うことができ、また、床面上を電源コードにより煩雑にすることなく、室内の体裁を良好にすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4469290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の給電方法では、以下のような問題があった。
すなわち、上記特許文献1の給電方法によれば、執務空間・居住空間の床面上に給電側コイルを設置する必要があると共に、電磁誘導による給電時に給電側コイルと受電側コイルの左右方向、或いは前後方向のギャップを補正するために案内装置を設ける必要があり、さらに床面への加工が生じて構造が複雑化することから加工コストを要するという問題があった。
また、給電側コイルが床面に配設されているため、給電側コイルと受電側コイルとの間に通電性物品が介在し易く、この物品が介在した状態のままで非接触給電が行われると、通電性物品が電磁誘導によって発熱するおそれがあり、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、建物等の内壁、床面に対して特殊な加工を施す必要が無く、簡易的、且つ安価に非接触給電装置を組み込むことができる什器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る什器システムでは、固定什器と、床面上に移動可能に設けられるとともに電子機器の電源とすることが可能な移動什器とを備えた什器システムであって、固定什器は、給電部を有する給電装置を備え、移動什器は、固定什器に対する所定の給電位置を有しており、給電位置において給電部に対向配置されて、給電部との間で非接触給電を行う受電部を有する受電装置を備えていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、移動什器と固定什器とが所定の給電位置となる状態になることで、固定什器に設けられた給電部に対して移動什器に設けられた受電部が対向配置され、非接触給電が行われるため、移動什器において電源コードをコンセントへ差し込むという手間が省けるとともに、電源ケーブルを多数床面上に配線することをなくすことができる。
また、床面上に載置される固定什器に給電部を設けたため、床面に直接給電部を配設することを回避して、固定什器を室内に載置することにより容易かつ安価に給電部を配備することができる。また、床構造を加工する必要がないため、執務室内の用途が制限されることを回避することができる利点もある。
【0010】
また、本発明に係る什器システムでは、給電部は、固定什器の鉛直方向の側面に取り付けられ、受電部は、給電位置において給電部と対向して配置されることが好ましい。
本発明では、固定什器における側方を向く取付面に給電部を床面と垂直をなす向き(鉛直方向)に配設するとともに、移動什器における外周側面に受電部を固定什器の給電部と対向するように配設することで、給電部および受電部に通電性物品が置かれることがなく、これにより給電部をなす給電側コイルと受電部をなす受電側コイルとの間に通電性物品が介在した状態で非接触給電が行われ、通電性物品が電磁誘導によって発熱するといった不具合を防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る什器システムでは、給電部は、固定什器の水平面に対して傾斜する斜面に取り付けられ、受電部は、給電位置において給電部と対向して配置されることが好ましい。
本発明では、固定什器の水平面に対して傾斜する斜面に配設するとともに、移動什器における外周側面に受電部を固定什器の給電部と対向するように配設することで、給電部および受電部に通電性物品が置かれることがなく、これにより給電部をなす給電側コイルと受電部をなす受電側コイルとの間に通電性物品が介在した状態で非接触給電が行われ、通電性物品が電磁誘導によって発熱するといった不具合を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る什器システムでは、固定什器は、移動什器の少なくとも一部を収容可能とするとともに、給電部を備えた収容部を有し、移動什器は、収容部に収容される部分に受電部を備えていてもよい。
この場合、移動什器の少なくとも一部を固定什器の収容部に収容した状態のまま給電することが可能となり、什器の占有面積を小さくすることができ、空間を有効に活用することができる利点がある。
【0013】
また、本発明に係る什器システムでは、給電部と受電部との間で給電可能となる給電位置に移動什器を案内するガイド手段を備えることが好ましい。
本発明では、ガイド手段により給電可能となる給電位置に移動什器を案内することができるので、給電部と受電部との位置合わせを容易に行うことができ、非接触給電のための移動什器の移動を効率的に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る什器システムでは、ガイド手段は、収容部の上方から鉛直方向下方に延びる垂下片であることが好ましい。
本発明では、垂下片からなるガイド手段が固定什器の収容部に納まった状態となり、外部に露呈し難く、什器としての体裁を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る什器システムでは、移動什器が給電部と受電部とが近接する給電位置に配設されたことを感知したときに、給電部に対して電流を供給するスイッチ機構を設けていることが好ましい。
本発明では、給電部と受電部とが近接して給電可能となる位置に移動什器が配置された場合にのみ、受電部へ電流の供給が行われるので、給電部における待機電力を無くして消費電力を削減することができる。
【0016】
また、本発明に係る什器システムでは、移動什器を給電位置で保持するストッパー手段が設けられていることが好ましい。
本発明では、ストッパー手段によって移動什器を給電部と受電部とが近接して配設される所定の給電位置に保持することができるので、給電時であっても移動什器に対して意図せぬ外力が加えられ、給電状態が解除されるといった不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の什器システムによれば、移動什器と固定什器とが所定の給電位置となる状態になることで、固定什器に設けられた給電部に対して移動什器に設けられた受電部が対向配置され、非接触給電が行われるため、固定什器を設置することにより給電部を簡易かつ安価に設けることができるとともに、移動什器への給電を簡便に行うことができる。さらに、建物等の内壁、床面に対して特殊な加工を施す必要が無く、簡易的、且つ安価に非接触給電装置を組み込むことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による什器システムの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す什器システムの側断面図である。
【図3】図1に示す什器システムの一部省略した上面図である。
【図4】図1に示す什器システムを前方から見た図である。
【図5】給電装置の構成を示す斜視図である。
【図6】図5に示す給電装置のリミット部の平面図である。
【図7】電源装置の接続構成を模式的に示した図である。
【図8】第2の実施の形態による什器システムを示す斜視図である。
【図9】第3の実施の形態による什器システムを示す斜視図である。
【図10】第4の実施の形態による什器システムにおける受電装置を示す斜視図である。
【図11】図10に示す受電装置による給電状態の側面図である。
【図12】第5の実施の形態による什器システムを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による什器システムについて、図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1乃至図4に示すように、本第1の実施の形態による什器システムは、例えば病院や介護施設等のナースステーションに設けられるテーブル1(固定什器)と、テーブル1と組み合せて使用可能であり、そのテーブル1から離れて床面F上を走行させて使用することが可能なカート2(移動什器)とを備えるとともに、テーブル1の所定位置にカート2を組合せた状態(以下、この位置を「給電位置R」という)で、テーブル1に具備した給電装置30からカート2に具備した受電装置40へ非接触給電を行う電源装置10を備えている。
ここで、以下の説明では、図2でテーブル1に対してカート2が近接離反する方向となる紙面左右方向を「前後方向X」とし、また紙面左側(テーブル1に対するカート2側)を「前方」とし、同じく紙面右側を「後方」とする。
【0021】
テーブル1は、床面Fに載置された状態で固定位置に配置され、一対の逆T字形の脚部12、12により下方より支持された前記固定側天板11を具備し、その固定側天板11の下方にカート2の一部を収容可能な収容部13を有している。つまり、図2に示す側面視で、固定側天板11が脚部12、12の上端支持部12aから略水平方向に張り出した構成となっている。
【0022】
固定側天板11は、平面視で略長方形状をなし、その中央部には電源用開口11cを有し、そこに上面が開いた電源収容ボックス14が嵌合されている。電源収容ボックス14は、外部に接続可能なコンセント(図示省略)が収容され、このコンセントから給電装置30の電源が取れるようになっている。なお、一対の脚部12、12は、それぞれ固定側天板11の対向する短辺側に寄った位置に設けられている。
【0023】
また、固定側天板11の下面11bには、電源収容ボックス14内に収容されているコンセントから電気が供給されるとともに、カート2側に備えた受電装置40へ非接触給電を行うためのボックス形状の給電装置30が固定されている。なお、給電装置30については、受電装置40とともに後述する。
【0024】
カート2は、床面F上を走行可能な走行手段であるキャスター25を備えた架台21と、架台21の上に設置されて物品を収容可能な収納部22と、収納部22の上方に設けられて上面20aに情報端末などの電子機器を載置可能な移動側天板20とを備えて概略構成されている。
【0025】
収納部22は、架台21上の左右側縁に立設した側面視倒立U字形をなす左右1対の側面枠23、23により構成されている。各側面枠23は、前側に設けられた前部支柱231と、後側に設けられた後部支柱232と、前部支柱231の上端から後側に向けて水平に延び、かつ後部支柱232に連結された横桟233とにより枠組みされている。
上下方向を向く前部支柱231、後部支柱232は、カート2の操作時に、障害物等との衝突による収容物の破損を防止する保護部材となる。前後両支柱231、232間には、複数のワイヤー部材234が上下に所望の間隔をもって前後方向Xに沿って架設されている。
【0026】
左右の側面枠23、23は、その前側上部間が、左右方向を向く連結杆24により連結されている。
また、左右の側面枠23、23間には、横桟233と略同じ高さに、移動側天板20に載置された電子機器用としてのバッテリーを収容可能なボックス形状の受電装置40(詳しくは後述する)が設けられている。
【0027】
収納部22内における左右の側面枠23、23間には、収容物を収容可能な上下2段のトレイ26、26が配設されており、各トレイ26は、各側面枠23における前後両支柱231、232間に架設されたワイヤー部材234によって着脱自在に支持されている。
【0028】
左右の前部支柱231、231における各々の上部には、収納部22の上面より上方に離間する位置において、円弧状をなして前側に折曲させることにより、円弧状の折曲部と、前向部とが形成され、この折曲部により、カート操作用のハンドル部27、27が、また前向部により、天板支持部28、28がそれぞれ形成されている。左右の両天板支持部28、28上には、移動側天板20が載置され、かつ固定されている。
これにより、収納部22の上部を構成する横桟233と、左右の天板支持部28、28および移動側天板20の下面20bとの間には、前側および前後方向に直交する左右方向両側に開口するとともに、後側がハンドル部27によって閉鎖された凹部29が形成されている。
【0029】
凹部29は、カート2とテーブル1とが近接または当接して前記給電位置Rに位置したときに、テーブル1の固定側天板11が進入するように構成されている。すなわち、高さ方向の位置がテーブル1の固定側天板11と略等しくなるように形成されているとともに、固定側天板11が挿入可能な幅となるように天板支持部28、28と横桟233、233との離間寸法が設定されている。また、凹部29にテーブル1の固定側天板11が挿入された状態で、カート2の収納部22がテーブル1の固定側天板11の下方に潜入し、カート2の移動側天板20および天板支持部28、28がテーブル1の固定側天板11の上方に位置している。これにより、カート2の移動側天板20上に、パソコン等を載置したままの状態で、カート2の収納部22を、テーブル1の固定側天板11の下方に潜入させて使用することができる。
【0030】
各天板支持部28、28には、ストッパー51が固定されている。このストッパー51の上面は、天板支持部28の上方に突出させることにより、移動側天板20の下面20bを支持する天板受け部材を兼ねている。
ストッパー51の下部は、ハンドル部27より後側、さらに、カート2の移動側天板20の後端20cより前側における天板支持部28の下面より垂下するように設けられており、外上方を向くフック片51aが設けられている。
そして、ストッパー51の下部は、凹部29にテーブル1の固定側天板11が進入したときに、テーブル1の固定側天板11の縁端部11dと当接してテーブル1の固定側天板11が進入する奥行きを規制している。
【0031】
図1乃至図4に示すように、移動側天板20は、テーブル1に対する給電位置Rにおいて、固定側天板11の上面11aに高さ方向の間隔をもった所定位置で重なるようになっている。この移動側天板20は、上面20aにパソコン等の電子機器(図1の符号P)を載せてカート2の前方側から作業を行うことが可能であり、移動側天板20に載置した電子機器が後方側に落下しないように後方側外周部20c(図1)が上方に向けて突出している。
【0032】
そして、移動側天板20の所定位置には挿通孔20dが厚さ方向に貫通して設けられており、これにより受電装置40の出力側のコンセントに接続する電源ケーブル(図示省略)が下面20b側から天板の上方へ向けて挿通されている。
【0033】
さらに、固定側天板11の下面11bには、この下面11bから突出しカート2を移動させて凹部29に固定側天板11を進入させるときにカート2を案内する一対のカートガイド部材16、16(ガイド手段、垂下片)が設けられている。
カートガイド部材16、16は、凹部29に固定側天板11が進入したときにカート2の両側方に配設された一対の棒状の部材で、それぞれ延在方向の途中で屈曲している。一対のカートガイド部材16、16は、図3に示すように、互いの離間寸法が、前側となる基端16aにおいてカート2の左右方向の外幅寸法、すなわち側面枠23、23同士の外幅寸法よりも大きいとともに、後側となる先端16cに向かうに従って次第に小さくなり、屈曲点16bにおいてカート2の左右方向の外幅寸法と略等しくなり、基端16aから先端16cまで延設されている。
【0034】
このため、カート2を移動させて凹部29にテーブル1の固定側天板11を進入させるときにカート2の位置がずれたとしても、カート2の後部支柱232がカートガイド部材16と当接することによって、カート2が左右方向に正しい位置に案内される。また、カート2をテーブル1側へ向けて所定位置まで移動すると、テーブル1の固定側天板11の縁端部11dがストッパー51に当接して移動が規制される。
【0035】
次に、テーブル1に設けられる給電装置30と、カート2に設けられる受電装置40とからなる電源装置10について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、電源装置10は、テーブル1に設けられた給電側コイル31とカート2に設けられた受電側コイル41とを近接させ、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流を発生させることで非接触給電を行うものである。
【0036】
図1、図5および図7に示すように、給電装置30は、周波数変換器35を備えた給電側コイル31(給電部)とスイッチ部32(スイッチ機構)とが薄型箱形状のカバー体33に収納され、給電側コイル31には電源ケーブル34(図1参照)を介してテーブル1の固定側天板11に設けられているコンセント(図示省略)に接続されている。なお、図1において、周波数変換器35は前記カバー体33とは別のカバーに収納されている。
【0037】
カバー体33は、上面が開口になっており、固定側天板11の下面11bの所定位置に固定されている。このカバー体33には、後述するカート2側の受電装置40の凸部48が進入可能な開口33aが設けられている。
給電側コイル31は、そのコイル給電面31aを下向きにした状態でカバー体33の下面に露出するようにして設けられている。このとき、コイル給電面31aの面方向は、水平方向であり、カバー体33の下面に対して面一となっている。
【0038】
図5および図6に示すように、スイッチ部32は、バネ部材321を備えた回転作動板322がそのバネ部材321の付勢に抗して回転したときに、その回転作動板322の作用端322aでスイッチ323をオンにする構成となっている。
回転作動板322は、カバー体33の底面33bに直交する方向の回転軸322cを中心に回転する平面視で略扇形状の回転板322Aを有し、この回転板322Aの周方向の一端(基端322b)には回転板322Aの半径方向外側に突出する張出し片322Bが設けられている。さらに、回転作動板322の円弧を形成する外周部には、張出し片322Bをカバー体33の開口33aの位置、すなわち凸部48の進入路を塞ぐ位置に配置させた状態で、付勢された前記バネ部材321が取り付けられている、つまり、回転作動板322は、開口33aからカバー体33内に進入する凸部48によって張出し片322Bが押圧され、これによりバネ部材321の付勢に抗して回転軸322cを中心にして一方向(図で時計回りと反対方向)に回転し、図6で二点鎖線の位置へ移動する構成となっている。
【0039】
スイッチ323は、レバー式のスイッチであり、レバー部323aが回転作動板322の作用端322aの位置によってオンオフの位置を選択的に取り得るものである。つまり、スイッチ323は、回転作動板322が回転していないときにはオフ状態であり、回転作動板322の回転により作用端322aによってレバー部323aが押圧されてオン状態となって給電側コイル31に電流が流れるようになっている。
【0040】
次に、受電装置40は、図4および図7に示すように、整流器41bを備えた受電側コイル41(受電部)と、受電側コイル41に電圧変換器43を介して接続されたバッテリー42とが薄型箱形状のカバー体44に収納され、バッテリー42の出力側には移動側天板20上で使用される電子機器用の電源ケーブル(図示省略)が接続されている。
【0041】
受電側コイル41は、そのコイル受電面41aを上向きにしてカバー体44の上面44bに露出した状態で、カート2がテーブル1に対して給電位置Rに位置する状態で、給電側コイル31のコイル給電面31aに間隔をもって対向する位置に配置されている。
【0042】
図8に示すように、バッテリー42は、バッテリー本体421と、受電側コイル41より入力される電気を充電制御する充電制御部422と、バッテリー本体421から出力される電圧を制御する出力制御部423とを備えている。
【0043】
また、カバー体44の前方側面44bには、非接触給電状態を表示する給電表示部(図示省略)と、バッテリー42に対する充電状態を表示する充電表示部(図示省略)とを備えた表示板46が設けられている。前記給電表示部および充電表示部は、発光ダイオード(LED)が使用され、それぞれ電圧変換器43と充電制御部422に接続されて受信した信号に応じて点灯するようになっている。
【0044】
このように構成される電源装置10では、給電側コイル31と受電側コイル41とを近接させると、給電装置30においてスイッチ部32のスイッチ323がオンになり、例えば交流100Vの電気が直流電源により直流24Vに変換されて給電側コイル31に流れる。そして、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流が発生して非接触給電が行われる。さらに、受電装置40において、受電側コイル41で給電された電圧が電圧変換器43で直流17Vに変換されてバッテリー本体421に充電され、出力時には出力制御部423より直流15Vに変換されて電源ケーブルを介して出力されることになる。
【0045】
次に、カート2の受電装置40に給電を行う動作と上述した什器システムの作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図4に示すように、カート2に搭載したバッテリー42を充電する場合、すなわち受電装置40に電気を供給する場合、カート2をテーブル1における所定の給電位置Rへ配置する。具体的には、カート2をテーブル1に近接するようにして移動させ、テーブル1の収容部13に進入させる。このとき、カート2を一対のカートガイド部材16、16の間へ進入させることで、カートガイド部材16、16に沿ってカート2が所定の給電位置Rに案内されることになる。
【0046】
そして、カート2が給電位置Rに配置されたとき、テーブル1の給電装置30の給電側コイル31にカート2の受電装置40の受電側コイル41が近接するとともに、給電装置30に電気が流れる。つまり、図5および図6に示すように、カート2が給電位置Rに配置される際、カート2の受電装置40のカバー体44上に設けられている凸部48が給電装置30のカバー体33の開口33aに進入する。そして、その凸部48によってスイッチ部32の張出し片322Bが押圧され、これにより回転作動板322がバネ部材321の付勢に抗して回転軸322cを中心にして一方向(図で時計回りと反対方向)に回転し、回転作動板322の回転により作用端322aによってレバー部323aが押圧されてオン状態となって給電側コイル31に電流が流れる。
【0047】
次に、給電側コイル31と受電側コイル41とが近接しているので、給電側コイル31に電流が流れると、給電側コイル31の電流により生じる電磁誘導によって受電側コイル41に電流が発生して非接触給電が行われる。さらに、受電装置40において、受電側コイル41で給電された電圧が電圧変換器43を介して適宜な電圧に変換されてバッテリー本体421に充電され、出力時には出力制御部423より直流電圧に変換されてコンセント側に出力され、これによりカート2の受電装置40に電源を供給する非接触給電が行われる。
このように、非接触給電によりカート2の移動側天板20上へ配線された電源ケーブルから使用する電子機器などの電源を確保することができるうえ、バッテリー42の充電後には、カート2をテーブル1から離れた場所へ移動させ、その移動側天板20上で電子機器をバッテリー42に接続して長時間にわたって使用することができる。
【0048】
なお、カート2とテーブル1とが所定の給電位置Rとなる状態になることで、テーブル1に設けられた給電側コイル31に対してカート2に設けられた受電側コイル41が対向配置され、非接触給電が行われるため、カート2において電源コードをコンセントへ差し込むという手間が省けるとともに、電源ケーブルを多数床面上に配線することをなくすことができる。
また、床面F上に載置されるテーブル1に給電側コイル31を設けたため、床面Fに直接給電部を配設することを回避して、テーブル1を室内に載置することにより容易かつ安価に給電部を配備することができる。また、床構造を加工する必要がないため、執務室内の用途が制限されることを回避することができる利点もある。
さらに、カート2の少なくとも一部をテーブル1の収容部13に収容した状態のまま給電することが可能となり、什器の占有面積を小さくすることができ、空間を有効に活用することができる。
【0049】
さらにまた、カートガイド部材16、16により給電可能となる給電位置Rにカート2を案内することができるので、給電側コイル31と受電側コイル41との位置合わせを容易に行うことができ、非接触給電のためのカート2の移動を効率的に行うことができる。そのうえ、垂下片からなるカートガイド部材16がテーブル1の収容部13に納まった状態となり、外部に露呈し難く、什器としての体裁を向上させることができる。
【0050】
また、給電側コイル31と受電側コイル41とが近接して給電可能となる位置にカート2が配置された場合にのみ、受電側コイル41へ電流の供給が行われるので、給電側コイル31における待機電力を無くして消費電力を削減することができる。
さらに、ストッパー51によってカート2を給電側コイル31と受電側コイル41とが近接して配設される所定の給電位置Rに保持することができるので、給電時であってもカート2に対して意図せぬ外力が加えられ、給電状態が解除されるといった不具合を防止することができる。
【0051】
上述のように本実施の形態による什器システムでは、カート2とテーブル1とが所定の給電位置Rとなる状態になることで、テーブル1に設けられた給電側コイル31に対してカート2に設けられた受電側コイル41が対向配置され、非接触給電が行われるため、テーブル1を設置することにより給電側コイル31を簡易かつ安価に設けることができるとともに、カート2への給電を簡便に行うことができる。
さらに、建物等の内壁、床面に対して特殊な加工を施す必要が無く、簡易的、且つ安価に非接触給電装置を組み込むことができる利点がある。
【0052】
次に、本発明の什器システムによる他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0053】
(第2の実施の形態)
図8に示すように、第2の実施の形態による什器システムは、上述したテーブル1に代えて給電ステーション6(固定什器)を設けたものであり、この給電ステーション6に設けられる鉛直方向の側面に複数(ここでは3つ)の給電側コイル31(給電部)を備え、これら給電側コイル31に対応する受電側コイル41(受電部)をカート2(移動什器)に備えたものである。
給電ステーション6は、面方向を鉛直方向に向けた平板部材61の左右両端が脚部62、62によって支持されており、その一方の面(給電面61a)側の所定の給電位置R(R1、R2、R3)にカート2が位置決めされ、その給電位置Rにおいて非接触給電が行われる構成となっている。
【0054】
平板部材61は、床面Fから所定高さ寸法だけ上方に配置され、その給電面61aには3台のカート2に同時に給電が行えるように3箇所の給電位置(給電位置R1、R2、R3)が設けられている。各給電位置R1、R2、R3は、給電面61aより前方へ向けて突出する平板状のガイド部材63(ガイド手段)によってカート2が位置決めされ、平板部材61の給電面61aの下端側の所定位置には給電側コイル31が固定されている。そして、給電側コイル31のコイル給電面31aは、平板部材61の給電面61aに平行となる鉛直方向となっている。
【0055】
ガイド部材63は、その板面方向を平板部材61の給電面61aに対して直交する方向に張り出した状態で固定されている。隣り合うガイド部材63、63同士の間の間隔は、カート2の左右方向の幅寸法と同寸法、或いは僅かに大きい寸法である。
また、平板部材61の給電面61aには、給電側コイル31よりも上方の位置で、前方に張り出し、カート2の前後方向Xの位置を規定する凸状面64が設けられている。この凸状面64にカート2の後部(カート2の後部支柱232や移動側天板20の後端)を当接させて停止させることで、カート2が給電位置Rに位置決めされることになる。
なお、第2の実施の形態による給電装置30では、上述した第1の実施の形態のスイッチ部32やカバー体33(図1参照)が省略されており、各給電位置R1、R2、R3における給電側コイル31は図示しない電源ケーブルによって電気が供給される。
【0056】
第2の実施の形態によるカート2の受電装置40は、受電側コイル41とバッテリー(図示省略)とが上述した第1の実施の形態のようにカバー体44(図1参照)とともに一体的に収容される構成ではなく、それぞれが分離した位置に配置されている。受電側コイル41は、コイル受電面41aの面方向を鉛直方向に向けてカート2の後側の給電側コイル31に対応する位置に固定されている。前記バッテリーは、受電側コイル41に接続され、とくに図示しないが例えば移動側天板20の下面20bなどに設けることができる。
【0057】
本什器システムでは、ガイド部材63、63同士の間にカート2を進入させることで、カート2の右方向が位置決めされて所定の給電位置Rに案内され、給電ステーション6の給電側コイル31とカート2の受電側コイル41とが一定の隙間をもった状態で対向配置され、この給電位置Rで非接触給電を行うことができる。
本第2の実施の形態では、給電ステーション6における側方を向く平板部材61の給電面61aに給電側コイル31を床面Fと垂直をなす向き(鉛直方向)に配設するとともに、カート2における外周側面に受電側コイル41を給電側コイル31と対向するように配設することで、給電側コイル31および受電側コイル41の上面に通電性物品が置かれることがなく、これにより給電側コイル31と受電側コイル41との間に通電性物品が介在した状態で非接触給電が行われ、通電性物品が電磁誘導によって発熱するといった不具合を防止することができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
次に、図9に示すように、第3の実施の形態による什器システムは、上述した第2の実施の形態の給電ステーション6(図8参照)に代えて、棚部72の下方にカート2の一部を収容可能な収容部71を有する給電装置30を備えた固定式棚7(固定什器)としたものである。なお、カート2およびカート2に備えた受電装置40の構成は、図8で示した第2の実施の形態と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0059】
固定式棚7の収容部71は、左右方向の側板73、73と背面板74と棚部72の下面(天面72a)とによって囲まれる空間を構成しており、カート2が進入出する前面が開口となっている。本固定式棚7では、背面板74が上述した第2の実施の形態の平板部材61に相当し、背面板74には2台のカート2に同時に給電が行えるように2箇所の給電位置(給電位置R1、R2)が設けられている。
各給電位置R1、R2は、天面72aより下方へ向けて突出するとともに、その突出部が前後方向Xに延びるガイド部材75(ガイド手段、垂下片)によってカート2が位置決めされ、背面板74の下端側の所定位置には給電側コイル31が固定されている。給電側コイル31のコイル給電面31aは、背面板74の面方向に平行となる鉛直方向となっている。なお、ガイド部材75としては、板状の部材、あるいはパイプ材などを採用することができる。
【0060】
第3の実施の形態による什器システムでは、ガイド部材75、75同士の間にカート2を進入させることで、カート2の左右方向が位置決めされて所定の給電位置Rに案内され、固定式棚7の給電側コイル31とカート2の受電側コイル41とが一定の隙間をもった状態で対向配置され、この給電位置Rで非接触給電を行うことができる。
【0061】
(第4の実施の形態)
次に、図10および図11に示すように、第4の実施の形態による什器システムは、上述した第1の実施の形態においてテーブル1の固定側天板11の下面11bに設けられる給電装置30に対して、カート2側の移動什器に設けられる受電装置40を例えば図1に示すカート2の後端に回転可能に取り付け、受電装置40の受電側コイル41が非接触給電時にのみ固定側コイル31に対して対向配置される構成としたものである。
なお、図10および図11の給電装置30および受電装置40はそれぞれのカバー体33、44の内部にコイル31、41のみを記載している。
【0062】
カート2側の受電装置40は、カバー体44の一端がカート2の左右方向に回転軸Oを設け、この回転軸Oを中心に図10に示す矢印E方向に回転可能に支持されている。すなわち、カバー体44は、その内部に収容されている受電側コイル41のコイル受電面41aの面方向が鉛直方向から給電側コイル31に対して対向配置となる水平方向へ移動させることができるように回転可能となっている。
これにより、受電側コイル41のコイル受電面41aが水平方向となるのは給電時のみであり、給電時外の通常時には鉛直方向に向けておくことができるので、コイル受電面41aに通電性物品が付着するのを防止することができ、これにより給電時であってもコイル給電面31aとコイル受電面41aとの間に通電性物品が介在にくくなる。
【0063】
(第5の実施の形態)
次に、図12に示すように、第5の実施の形態による什器システムは、固定什器8側の給電側コイル31と、この給電側コイル31に対向配置される移動什器9側の受電側コイル41とがそれぞれ水平面に対して傾斜する斜面8a、9aに取り付けた構成となっている。
固定什器8は、移動什器9が進入可能な収容部81を有しており、この収容部81の天面82と背面板83との接合角部にテーパー状の第1斜面8aが設けられ、この第1斜面8aの所定位置にコイル給電面31aの面方向を平行に向けて給電側コイル31が固定されている。一方、移動什器9は、カート等であり、固定什器8の第1斜面8aに一致する第2斜面9aが設けられており、この第2斜面9aの所定位置にコイル受電面41aの面方向を平行に向けて受電側コイル41が固定されている。
本第5の実施の形態では、給電側コイル31に受電側コイル41が近接した状態で固定什器8に対して移動什器9を配置することで、給電側コイル31および受電側コイル41に通電性物品が置かれることがなく、これにより給電側コイル31と受電側コイル41との間に通電性物品が介在した状態で非接触給電が行われ、通電性物品が電磁誘導によって発熱するといった不具合を防止することができる。
【0064】
以上、本発明による什器システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではでは非接触給電として給電側コイル31と受電側コイル41を備えた電磁誘導による電源装置10としているが、このような非放射型の電磁誘導による送電方式であることに限定されることはなく、例えば非放射型の磁界共鳴方式や、放射型の電磁波(マイクロ波送電)方式を採用することも可能である。
【0065】
また、テーブル1、給電ステーション6、固定式棚7、カート2の形状、大きさ等の構成、カート2の使用用途、カートガイド部材16、ガイド部材63、75等とくに限定されるものではない。
さらに、電源装置10、給電装置30、受電装置40の位置についても固定什器や移動什器の形状等の条件に応じて適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 テーブル(固定什器)
2 カート(移動什器)
6 給電ステーション(固定什器)
7 固定式棚(固定什器)
10 電源装置
11 固定側天板
16 カートガイド部材(ガイド手段、垂下片)
20 移動側天板
22 収納部
23 側面枠
28 天板支持部
29 凹部
30 給電装置
31 給電側コイル(給電部)
32 スイッチ部(スイッチ機構)
33 カバー体
40 受電装置
41 受電側コイル(受電部)
42 バッテリー
44 カバー体
46 表示板
48 凸部
63 ガイド部材(ガイド手段)
75 ガイド部材(ガイド手段、垂下片)
F 床面
R 給電位置
X 前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定什器と、床面上に移動可能に設けられるとともに電子機器の電源とすることが可能な移動什器とを備えた什器システムであって、
前記固定什器は、給電部を有する給電装置を備え、
前記移動什器は、前記固定什器に対する所定の給電位置を有しており、該給電位置において前記給電部に対向配置されて、該給電部との間で非接触給電を行う受電部を有する受電装置を備えていることを特徴とする什器システム。
【請求項2】
前記給電部は、前記固定什器の鉛直方向の側面に取り付けられ、
前記受電部は、前記給電位置において前記給電部と対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載の什器システム。
【請求項3】
前記給電部は、前記固定什器の水平面に対して傾斜する斜面に取り付けられ、
前記受電部は、前記給電位置において前記給電部と対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載の什器システム。
【請求項4】
前記固定什器は、前記移動什器の少なくとも一部を収容可能とするとともに、前記給電部を備えた収容部を有し、
前記移動什器は、前記収容部に収容される部分に前記受電部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の什器システム。
【請求項5】
前記給電部と前記受電部との間で給電可能となる前記給電位置に前記移動什器を案内するガイド手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の什器システム。
【請求項6】
前記ガイド手段は、前記収容部の上方から鉛直方向下方に延びる垂下片であることを特徴とする請求項5に記載の什器システム。
【請求項7】
前記移動什器が前記給電部と前記受電部とが近接する前記給電位置に配設されたことを感知したときに、前記給電部に対して電流を供給するスイッチ機構を設けていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の什器システム。
【請求項8】
前記移動什器を前記給電位置で保持するストッパー手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の什器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−23841(P2012−23841A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159176(P2010−159176)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】