説明

付加硬化性シリコーンゴム組成物

【課題】硬化ゴムが高強度、高引裂きでかつ硬化ゴムに亀裂が入ってもその亀裂が大きくなりにくく、特には赤ちゃん用の哺乳瓶用乳首やおしゃぶりに好適な付加硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンをベースポリマーとする付加硬化性シリコーンゴム組成物の架橋剤として、特定の2種類のケイ素結合水素原子(SiH官能基)を有するオルガノポリシロキサンの組み合わせ、即ち一分子あたり3〜5個のSiH官能基を有するオルガノポリシロキサンと、一分子あたり6個以上のSiH官能基を有するオルガノポリシロキサンとを併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後高強度でかつ成形時や使用時に微小な傷がゴムに入っても、その傷が大きくなりにくい成形物を提供する付加硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、電気絶縁性、耐候性などの良さから、コネクターシールやスパークプラグブーツなどの自動車部品、複写機用のロールや電子レンジのパッキンなどの電気・電子用部品、シーラントなどの建築用部品、その他哺乳瓶用乳首やダイビング用品などあらゆる分野に広く使用されている。ところが、シリコーンゴムを形成するシロキサンポリマーは分子間力が非常に小さいため、ポリマーのみを硬化させたのでは、非常に強度のないゴムとなってしまい、成形性においても実用面においても不適当な材料となってしまう。このような問題を解決するために、通常ヒュームドシリカ、沈降シリカなどの補強性シリカというものが配合される。
【0003】
一方、シリコーンゴムは、ミラブルゴムあるいはHCR(High Consistency Rubber)と呼ばれる粘土状のゴムと、液状ゴムあるいはLSR(Liquid Silicone Rubber)と呼ばれる粘性を有する液状タイプのゴムに分類される。近年、液状ゴムは、短時間で量産が可能な射出成形に適することから、急激な需要増大を示している。
【0004】
特に付加硬化タイプと言われるアルケニル基とケイ素原子に直接結合した水素原子、即ちSiH官能基との架橋反応により硬化物が得られる材料は、反応が速く、副生成物も殆ど生じないことから、幅広い分野で利用されている。
【0005】
ところが、シリコーンゴムは、ヒュームドシリカや沈降シリカなどの補強性シリカを配合しても、そのゴム強度は、天然ゴムやその他の有機ゴムに比較して不十分で、特に引裂き強度(クレセントタイプ)については有機ゴムとの差が明白であった。これらを改善すべく、特開平1−249858号公報、特開平6−93185号公報、特開平7−3034号公報、特開平7−268218号公報(特許文献1〜4)において、各種の組成や製造方法が開示されているが、現在でもコンスタントに引裂き強度(クレセントタイプ)が50kN/mを超える材料を提供することは非常に困難である。
【0006】
一方、ゴムの用途においては、ゴムに亀裂が入っても使用中経時で亀裂が成長しにくい特徴があればよいものもあり、この特徴は必ずしも引裂き強度と一致する訳ではない。この性質は、丸穴やクロスカットなど切れ目のある哺乳瓶用乳首に使用されるゴム材料には、特に重要である。このような耐亀裂成長性に優れる材料として、特開2004−256589号公報(特許文献5)にミラブルタイプの材料が紹介されているが、これは有機過酸化物架橋に限定されており、付加硬化の成形性に優れる点を生かせるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−249858号公報
【特許文献2】特開平6−93185号公報
【特許文献3】特開平7−3034号公報
【特許文献4】特開平7−268218号公報
【特許文献5】特開2004−256589号公報
【特許文献6】特開平9−12890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、硬化ゴムが高強度、高引裂きでかつ硬化ゴムに亀裂が入ってもその亀裂が大きくなりにくく、特には赤ちゃん用の哺乳瓶用乳首やおしゃぶりに好適な付加硬化性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンをベースポリマーとする付加硬化性シリコーンゴム組成物の架橋剤として、特定の2種類のケイ素結合水素原子(SiH官能基)を有するオルガノポリシロキサンの組み合わせ、即ち一分子あたり3〜5個のSiH官能基を有するオルガノポリシロキサンと、一分子あたり6個以上のSiH官能基を有するオルガノポリシロキサンとを併用することにより、高強度、高引裂きで、かつ亀裂が入ってもその亀裂が大きくなりにくい硬化物を与える付加硬化性シリコーンゴム組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
なお、特開平9−12890号公報(特許文献6)には、特定のSiH官能基を有するオルガノポリシロキサンとして、一分子中にSiH官能基を3〜6個有するオルガノポリシロキサンを使用する例が示されているが、耐油性向上のため、これは単独で使用されるもので、本文中にもSiH官能基含有量の異なるオルガノポリシロキサンについての記述はなく、実施例、比較例にも併用の例示はない。
【0011】
従って、本発明は、下記の付加硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)分子鎖両末端がジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖され、分子鎖途中のケイ素原子に結合するアルケニル基を有しない、平均重合度が100〜1,000のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン 100質量部
(B)分子中に少なくとも3個のアルケニル基を有し、室温で液状の(A)成分とは異なるオルガノポリシロキサン 0〜50質量部
(C−1)分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り3〜5個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C−2)分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り6個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C−1)成分と(C−2)成分中のそれぞれのケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル比が[SiH基(C−1)]/[SiH基(C−2)]=90/10〜10/90の範囲で、かつ(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計に対する(C−1)成分及び(C−2)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の合計のモル比が[SiH基]/[アルケニル基]=1.1〜3.0となる量
(D)微粉末シリカ 5〜80質量部
(E)付加反応触媒 触媒量
を含有する付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔請求項2〕
(C−1)成分が、分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子を2個、分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を1〜3個有するものであることを特徴とする請求項1記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔請求項3〕
(D)成分の微粉末シリカが、BET法による比表面積が250m2/g以上のヒュームドシリカである請求項1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔請求項4〕
赤ちゃん用のおしゃぶり、又は哺乳瓶の乳首用である請求項1〜3のいずれか1項記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化ゴムが高強度、高引裂きであるだけでなく、硬化ゴムに亀裂が入っていても、その亀裂が大きく進行しにくい付加硬化性シリコーンゴム組成物が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、本発明のシリコーンゴム組成物の主剤(ベースポリマー)であって、分子鎖両末端がジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖され、分子鎖途中のケイ素原子に結合するアルケニル基を有しない、平均重合度が100〜1,000の、室温(25℃)で液状のオルガノポリシロキサンであり、この(A)成分としては、例えば下記平均組成式(I)で示されるものを用いることができる。
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0014】
ここで、上記R1で示されるケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上、特にはアルケニル基以外の全てのR1がメチル基であることが好ましい。
【0015】
また、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であり、このアルケニル基は、ジオルガノアルケニルシロキシ基中のアルケニル基(即ち、分子鎖末端のケイ素原子に結合するアルケニル基)として分子鎖両末端に位置することが必要である。即ち、(A)成分中には、分子鎖末端に位置するアルケニル基以外には、他のアルケニル基(即ち、分子鎖途中のケイ素原子に結合するアルケニル基)を含有しないものである。
【0016】
従って、(A)成分中のアルケニル基は分子鎖末端にのみ(即ち(A)成分が直鎖状構造である場合には、分子中に2個だけ)存在するため、(A)成分中のアルケニル基の含有量は、その重合度により決定されるが、オルガノポリシロキサン中6.0×10-6mol/g〜3.0×10-4mol/g、特に1.0×10-5mol/g〜2.0×10-4mol/gとすることが好ましい。アルケニル基の量が6.0×10-6mol/gより少ないとゴム硬度が低すぎてゲル状になってしまい、また3.0×10-4mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、硬度の高いゴムになってしまう。
【0017】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基等のジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。なお、分岐がある場合のその分岐鎖の末端は、ジメチルビニルシロキシ基等のジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖されていても、トリメチルシロキシ基等のアルケニルを含有しないトリオルガノシロキシ基で封鎖されていてもよいが、(A)成分中のアルケニル基は平均で3個未満、通常2〜2.2個、特には2〜2.1個程度であることが望ましい。分子量については、平均重合度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算での重量平均重合度、以下同様)が、通常100〜1,000、好ましくは150〜800である。100未満では、十分なゴム感が得られず、1,000より高いと粘度が高くなり、成形が困難になってしまう。
【0018】
(A)成分の具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等の分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン(この場合、オルガノ基にはアルケニル基は含まない)などが挙げられる。
【0019】
次に、(B)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子中に少なくとも3個のアルケニル基を有し、室温で液状の上記(A)成分とは異なるオルガノポリシロキサンであり、必要に応じて任意に配合されるもので、この(B)成分としては、例えば下記平均組成式(II)で示されるものを用いることができる。
2bSiO(4-b)/2 (II)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、bは1.8〜2.5、好ましくは1.9〜2.1の範囲の正数である。)
【0020】
ここで、上記R2で示されるケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、上記R1と同様であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R2の90モル%以上、特にはアルケニル基以外の全てのR2がメチル基であることが好ましい。
【0021】
また、一分子中のR2のうちに、アルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)は、3個以上、好ましくは3〜50個、より好ましくは4〜20個程度有することが必須である。アルケニル基の含有量としては、0.00001mol/g〜0.002mol/g、特に0.00002mol/g〜0.001mol/gの範囲が好ましい。アルケニル基の量が0.002mol/gより多いと、ゴム硬度が高くなり脆いゴムとなってしまう場合がある。0.00001mol/g未満では、十分なゴム強度が得られなくなってしまう場合がある。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、一分子に3個以上のアルケニル基を有するものであることから、(B)成分が直鎖状構造である場合には、分子鎖途中のケイ素原子に結合したアルケニル基を必須に含有するものである。
【0022】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、前記(A)成分と同様に、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。分子量については、平均重合度が、通常50〜1,000、好ましくは100〜500で、室温で液状のものがよい。平均重合度が50未満では、ゴム感が得られなくなってしまい、1,000を超えると、粘度が高すぎて、配合や成形が困難になってしまう場合がある。
【0023】
(B)成分の具体例としては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖オルガノアルケニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノアルケニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体(この場合、オルガノ基にはアルケニル基は含まない)などが挙げられる。
【0024】
このようなオルガノポリシロキサン(B)の配合量は、(A)成分100質量部に対し0〜50質量部、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部の範囲である。(B)成分の配合量が多すぎると硬化物が硬くて脆いゴムになってしまう。
【0025】
次に、(C−1)及び(C−2)成分の組み合わせは、これら(C−1)及び(C−2)成分中のケイ素原子に結合する水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)が前記(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル化付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤(架橋剤)として作用するもので、本発明の主目的をなすのに必須なものである。
【0026】
(C−1)成分の、分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り3〜5個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(III)
3cdSiO(4-c-d)/2 (III)
(式中、R3は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、cは0.7〜2.1、dは0.001〜1.0で、かつc+dは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に3〜5個、好ましくは4個又は5個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有することが必須である。分子中のSiH基の数が2個以下ではゴム強度が低下してしまい、6個以上では(即ち、後述する(C−2)成分を単独で配合する場合には)亀裂の進行抑制効果が得られなくなってしまう。一分子中に3〜5個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いるとゴム強度を低下させることなく、ベースポリマー((A)成分)を効率的に2点架橋により鎖長延長させることができるため、亀裂の進行を有効に抑制できるという効果が得られる。
【0027】
ここで、R3の一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、cは好ましくは0.8〜2.0、dは好ましくは0.01〜1.0、c+dは好ましくは1.0〜2.5であり、(C−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜300個、特に4〜150個、更には5〜100個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。
【0028】
なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよいが、3〜5個、好ましくは4個又は5個のSiH基のうち、2個が分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子(例えば、ジオルガノハイドロジェンシロキシ基中のケイ素原子結合水素原子)として分子鎖両末端に位置することが好ましく、また、残余の1〜3個、特には2個又は3個が分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子(例えば、オルガノハイドロジェンシロキサン単位中のケイ素原子結合水素原子)として分子鎖途中(分子鎖非末端)に位置することが好ましい。
【0029】
上記(C−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0030】
続いて(C−2)成分の、分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り6個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(IV)
4efSiO(4-e-f)/2 (IV)
(式中、R4は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、eは0.7〜2.1、fは0.002〜1.0で、かつe+fは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に6個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有することが必須である。一分子中に6個以上のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いるとシロキサンマトリックス中でポリマーの架橋点が集中(局在化)するため、ゴム強度、特には引裂き強度が顕著に向上するという効果が得られる。
【0031】
ここで、R4の一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、アルケニル基等の脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、eは好ましくは0.8〜2.0、fは好ましくは0.02〜1.0、e+fは好ましくは1.0〜2.5であり、(C−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は6〜300個、特に8〜150個、更には8〜100個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。
【0032】
なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)の数は6個以上であることが必須であり、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上である。ケイ素原子結合水素原子(SiH基)数の上限は、通常、300個以下、好ましくは150個以下、より好ましくは100個以下程度であればよい。このケイ素原子に結合する水素原子は、分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0033】
上記(C−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0034】
この(C−1)成分及び(C−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、合計で、(A)成分100質量部に対して、通常、0.2〜20質量部、特に0.3〜15質量部程度の範囲で配合することが好適であるが、(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計に対する(C−1)成分及び(C−2)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の合計のモル比が[SiH基]/[アルケニル基]=1.1〜3.0、好ましくは1.2〜2.5となる量で配合するものである。このモル比が1.1より小さいと架橋が不十分で、高強度が得られなくなったり、べたついたゴムになってしまう。また、このモル比が、3.0より大きいと、成形物に発泡が見られたり、金型からの離型が困難になったりしてしまう。
【0035】
また、(C−1)成分と(C−2)成分との配合比率は、(C−1)成分と(C−2)成分中のそれぞれのケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル比が[SiH基(C−1)]/[SiH基(C−2)]=90/10〜10/90の範囲であり、好ましくは[SiH基(C−1)]/[SiH基(C−2)]=80/20〜20/80の範囲、より好ましくは[SiH基(C−1)]/[SiH基(C−2)]=70/30〜30/70の範囲である。この比率が90/10より大きいと十分なゴム強度が得られなくなってしまい、10/90より小さいと、亀裂の進行抑制効果が得られなくなってしまう。
【0036】
次に、(D)成分の微粉末シリカは、シリカの種類に特に限定はなく、通常シリコーンゴムの補強材として使用されるものであればよい。その微粉末シリカとしては、従来のシリコーンゴム組成物に使用されているものを使用できるが、特にはBET法による比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカを用いる。特に50〜400m2/gの沈澱シリカ、ヒュームドシリカなどが好適に使用される。ゴム強度を向上するにはヒュームドシリカが好適であり、特には、BET法による比表面積が250m2/g以上であるものが好ましい。
【0037】
また、上記微粉末シリカは、表面処理された微粉末シリカであってもよい。その場合、これらの微粉末シリカは、予め粉体の状態で直接処理されたものでもよい。通常の処理法として一般的周知の技術により処理でき、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理の微粉末シリカと処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温或いは熱処理にて混合処理する。場合により触媒を使用して処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより処理微粉末シリカを製造し得る。処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。
【0038】
処理剤は、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられ、これらで表面処理し、疎水性微粉末シリカとして用いる。処理剤としては、特にシラン系カップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0039】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して5〜80質量部、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは15〜60質量部である。5質量部より少ないとゴム強度が低すぎて脱型が困難になってしまう場合があり、80質量部を超えると充填が困難となり、作業性、加工性が悪くなる。
【0040】
(E)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属の質量換算で、(A)成分に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0041】
その他の成分として、必要に応じて、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムのような充填剤や、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することは任意とされる。
【0042】
本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物は、上記した(A)〜(E)成分、及び必要により任意成分を常温で均一に混合するだけでも得ることが可能であるが、(D)成分を予め(A)成分の全量又はその一部とプラネタリーミキサーやニーダー等で100〜200℃の範囲で1〜4時間熱処理し、室温に冷却後、その他の成分を添加、混合することが好ましい。
【0043】
成形方法は、混合物の粘度により自由に選択することができ、注入成形、圧縮成形、ディスペンサー成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形等いずれの方法を採用してもよい。その硬化条件は、通常60〜200℃で10秒〜24時間の範囲内で加熱することができる。
【0044】
これらの成形に効果的に使用されるには、本組成物の粘度は、25℃でせん断速度10s-1の時の粘度が、50〜800Pa・sであることが好ましく、より好ましくは80〜600Pa・s、更に好ましくは100〜500Pa・sの範囲である。この粘度が50Pa・s未満でも、800Pa・sを超えても成形が難しくなってしまう。
【0045】
なお、上記粘度とするためには、使用するオルガノポリシロキサン成分(特に、ベースポリマーである(A)成分)の重合度並びに(D)成分の微粉末シリカの種類と配合量の選択によって適宜調整することができる。例えば(A)成分の平均重合度が800以上の時は、(D)成分の微粉末シリカの配合量は、乾式シリカ(ヒュームドシリカ)の場合、(A)成分100質量部に対して40質量部以下、表面活性の低い湿式シリカ(沈澱シリカ)の場合、(A)成分100質量部に対して50質量部以下とすることが好ましい。また、(A)成分の平均重合度が300以上800未満の時には、(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して60質量部以下(特に20〜50質量部)、(A)成分の平均重合度が300未満の時には、(D)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して40質量部以上(特に40〜100質量部)とすることが好ましい。
【0046】
また、このような付加硬化性シリコーンゴム組成物の硬化スピードとしては、上記の成形方法に合うものであれば特に限定はないが、その効率を重視すると硬化性試験機[ローターレスタイプディスクレオメータ、ムービングダイ式レオメーター、又はMDR]による130℃で3分測定時の10%硬化時間をT10(秒)とした時、10秒≦T10≦60秒の範囲であることが好ましく、より好ましくは、15秒≦T10≦40秒の範囲である。10秒未満では硬化が速すぎて成形が困難になる場合があり、60秒を超えると成形サイクルが長くて不経済になる場合がある。
【0047】
なお、10%硬化時間を上記範囲とするためには、(E)成分の付加反応触媒に加えて、アセチレン化合物、リン化合物、窒素含有化合物、ニトリル化合物、カルボキシレートなどの従来公知の付加反応制御剤、特に好ましくは、三重結合を有する炭素上に水酸基を有するアセチレン化合物(アセチレンアルコール)を併用して配合することが好ましい。付加反応制御剤の配合量は、上記のT10が適切な範囲となるように、(E)成分との配合量比で適宜選択し得る。
【0048】
本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物は、その硬化物が高強度、高引裂きであるだけでなく、亀裂が入っていても、その亀裂が大きく進行しにくいものであり、特に赤ちゃん用のおしゃぶり、哺乳瓶の乳首用、自動車用の防水シール材等として有用である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示す。また、平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算での重量平均重合度を示す。
【0050】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)60部、BET法による比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続けた。冷却後、更にジメチルポリシロキサン(1)を15部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を一分子当たり8個有する平均重合度が200であるジメチルポリシロキサン(2)[ビニル基量0.00052mol/g]15部を添加し、撹拌を30分続けて、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース130部に、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を一分子当たり4個有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(3)[重合度20、SiH基量0.0028mol/g]を2.5部と、側鎖のみにSiH基を一分子当たり10個有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(4)[重合度22、SiH基量0.0066mol/g]を2.5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.07部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのせん断速度10s-1での粘度が289Pa・s、0.9s-1での粘度が856Pa・s。精密回転式粘度計ロトビスコRV1型(英弘精機)により測定、以下同じ。]を得た。
【0051】
この時、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(3)+ポリシロキサン(4)]/[ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(2)]=2.0、ポリシロキサン(3)とポリシロキサン(4)のSiH基のモル比率は、(3)/(4)=30/70である。
【0052】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。亀裂伸長試験は、引裂き強さ(クレセント)測定用の試験片を使用し、1mmの切れ目から10mm離れた部分に印をして、この印間距離が20mmから40mmに広がるまで試験片全体を伸長し、その状態を治具(永久伸測定に使用されるもの)で保持し、180℃のオーブンに入れた後の試験片破断の有無、破断しない場合、切れ目の伸長した長さ(伸長時)を測定した。
【0053】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が800であるジメチルポリシロキサン(5)60部、表面を疎水化処理したBET法による比表面積が230m2/gのヒュームドシリカ(トクヤマ社製、レオロシールDM−30S)40部、ヘキサメチルジシラザン2部、水1部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続けた。冷却後、更にジメチルポリシロキサン(5)を20部加えて30分撹拌し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース120部に、実施例1のジメチルポリシロキサン(1)20部、両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基を一分子当たり10個有する平均重合度が150であるジメチルポリシロキサン(6)[ビニル基量0.00094mol/g]5部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を一分子当たり5個有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(7)[重合度17、SiH基量0.0042mol/g]を1.6部と、実施例(1)のメチルハイドロジェンポリシロキサン(4)を1.0部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.06部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのせん断速度10s-1での粘度が228Pa・s、0.9s-1での粘度が556Pa・s]を得た。
【0054】
この時、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(7)+ポリシロキサン(4)]/[ポリシロキサン(5)+ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(6)]=1.5、ポリシロキサン(7)とポリシロキサン(4)のSiH基のモル比率は、(7)/(4)=50/50である。
【0055】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、実施例(1)と同様にJIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。
【0056】
[実施例3]
実施例1のジメチルポリシロキサン(1)50部、同じく実施例(1)のジメチルポリシロキサン(2)20部、BET法による比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)35部、表面を疎水化処理したBET法による比表面積が125m2/g、DBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)が170ml/100gである沈降シリカ(日本シリカ社製、ニップシールSS−30P)10部、ヘキサメチルジシラザン8部、水1.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続けた。冷却後、実施例1のジメチルポリシロキサン(1)を20部添加し、30分撹拌を続けて、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース135部に、実施例2のジメチルポリシロキサン(5)25部を添加後、30分撹拌を続け、架橋剤として両末端及び側鎖に一分子当たりSiH基を3個有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(8)[重合度18、SiH基量0.0023mol/g]を1.2部、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を一分子当たり20個有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(9)[重合度30、SiH基量0.0102mol/g]を1.5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.07部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのせん断速度10s-1での粘度が289Pa・s、0.9s-1での粘度が672Pa・s]を得た。
【0057】
この時、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(8)+ポリシロキサン(9)]/[ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(2)+ポリシロキサン(5)]=1.2、ポリシロキサン(8)とポリシロキサン(9)のSiH基のモル比率は、(8)/(9)=15/85である。
【0058】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、実施例(1)と同様にJIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。
【0059】
[比較例1]
実施例1においてメチルハイドロジェンポリシロキサン(3)2.5部に替えて、両末端のみにSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(即ち、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)(10)[重合度20、SiH基量0.00136mol/g]を5.2部使用した以外はすべて同様にして、シリコーンゴム組成物を得た。
【0060】
この時、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(10)+ポリシロキサン(4)]/[ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(2)]=2.0、ポリシロキサン(10)とポリシロキサン(4)のSiH基のモル比率は、(10)/(4)=30/70である。
【0061】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、実施例1と同様にJIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。
【0062】
[比較例2]
実施例2において、メチルハイドロジェンポリシロキサン(7)を使用せず、メチルハイドロジェンポリシロキサン(4)のみを2.1部使用した以外はすべて同様にしてシリコーンゴム組成物を得た。ここで、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(4)]/[ポリシロキサン(5)+ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(6)]=1.5で実施例2と同じである。
【0063】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、実施例1と同様にJIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。
【0064】
[比較例3]
実施例3において、メチルハイドロジェンポリシロキサン(8)を使用せず、メチルハイドロジェンポリシロキサン(9)のみを1.8部使用した以外はすべて同様にしてシリコーンゴム組成物を得た。ここで、アルケニル基とSiH基のモル比率は、[ポリシロキサン(9)]/[ポリシロキサン(1)+ポリシロキサン(2)+ポリシロキサン(5)]=1.2で実施例3と同じである。
【0065】
このシリコーンゴム組成物100部に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアを行なった硬化物について、実施例1と同様にJIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強さ(クレセント)及び亀裂伸長試験を行ない、測定結果を表1に示した。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖両末端がジオルガノアルケニルシロキシ基で封鎖され、分子鎖途中のケイ素原子に結合するアルケニル基を有しない、平均重合度が100〜1,000のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン 100質量部
(B)分子中に少なくとも3個のアルケニル基を有し、室温で液状の(A)成分とは異なるオルガノポリシロキサン 0〜50質量部
(C−1)分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り3〜5個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C−2)分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子及び/又は分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を合計で一分子当り6個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C−1)成分と(C−2)成分中のそれぞれのケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル比が[SiH基(C−1)]/[SiH基(C−2)]=90/10〜10/90の範囲で、かつ(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計に対する(C−1)成分及び(C−2)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の合計のモル比が[SiH基]/[アルケニル基]=1.1〜3.0となる量
(D)微粉末シリカ 5〜80質量部
(E)付加反応触媒 触媒量
を含有する付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C−1)成分が、分子鎖末端のケイ素原子と結合する水素原子を2個、分子鎖途中のケイ素原子と結合する水素原子を1〜3個有するものであることを特徴とする請求項1記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(D)成分の微粉末シリカが、BET法による比表面積が250m2/g以上のヒュームドシリカである請求項1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
赤ちゃん用のおしゃぶり、又は哺乳瓶の乳首用である請求項1〜3のいずれか1項記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2011−46826(P2011−46826A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196285(P2009−196285)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】