説明

代掻き作業機

【課題】圃場に盛り上がって高くなった耕土が形成されても、この耕土を整地して均平にすることができる代掻き作業機を提供する。
【解決手段】代掻き作業機1は、作業機本体3に回転自在に支持されたロータリ作業部13の上部を覆うシールドカバー15の後端部に枢結されたエプロン19と、この後端部に枢結されたレベラ21を備える。シールドカバー15に取り付けられた支持板16とレベラ21の上面との間に、エプロン19の上下回動に連動するリンク機構30を設ける。リンク機構30は、第1アーム部31と第2アーム部32を有し、リンク機構30の第1アーム部31の上面と作業機本体3の主フレーム4との間にオイルダンパー40を取り付ける。オイルダンパー40は、レベラ21の上下回動の少なくともいずれかの回動を選択的に減衰可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田圃場を耕耘するとともに、耕耘された圃場の表面を整地して均平にする代掻き作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の代掻き作業機60は、例えば、特許文献1に記載されており、図4(側面図)に示すように、ロータリ作業部13を回転自在に支持する作業機本体61の上部にハンドル64を備えた附勢手段63が設けられ、ロータリ作業部13の上部を覆うシールドカバー15の後端部にロータリ作業部13によって耕耘された耕土を整地する第1整地体65を上下方向に回動可能に設け、第1整地体65の後端部に第1整地体65によって整地された耕土を均平にする第2整地体66を上下方向に回動可能に設け、作業機本体61と第2整地体66との間にリンク機構67を連結し、リンク機構67を介して附勢手段63を第2整地板66に接続し、附勢手段63によってリンク機構67を介して第2整地体66を上方に附勢して第2整地体66の下方への回動を抑える構成が知られている。
【0003】
【特許文献1】特許2972599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の代掻き作業機では、第1整地体が自重で下方に傾き、ロータリ作業部によって耕耘された後の圃場の耕土が盛り上がって高くなると、第1整地体がこの耕土の全てを削り取って整地することが難しくなるのは避けられない。また、第2整地体がこの盛り上がった耕土上を移動しようとすると、第2整地体に上向きの力が作用し、且つ附勢手段によって第2整地体が上方に附勢されているので、第2整地体は忽ち上方へ回動する。その結果、圃場全体を整地して均平にすることができなくなる、という問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ロータリ作業部によって耕耘された後の耕土が盛り上がって高くなっていても、この耕土を整地して均平にすることができる代掻き作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、耕耘作業を行うロータリ作業部を回転自在に支持する作業機本体と、該作業機本体に設けられロータリ作業部の上部を覆うカバー部(例えば、実施形態におけるカバー部15)と、該カバー部の後端部に上下方向に回動可能に支持された第1整地板(例えば、実施形態におけるエプロン19)と、該第1整地板の後端部に上下方向に回動可能に支持された第2整地板(例えば、実施形態におけるレベラ21)とを備える代掻き作業機において、作業機本体と第2整地板との間に接続されて該第2整地板の回動に連動して動作するリンク機構を設け、リンク機構に第2整地板を回動させる力を減衰する減衰手段(例えば、実施形態におけるオイルダンパー40)を接続したことを特徴とする。
【0007】
この特徴によれば、作業機本体と第2整地板との間に設けられたリンク機構に第2整地板を回動させる力を減衰する減衰手段を接続することで、ロータリ作業部によって耕耘された後の圃場の耕土が盛り上がって高くなり、第1整地板及びこれに接続された第2整地板がこの耕土上を上がろうとするときに受ける力によって第1整地板及び第2整地板が上方へ回動しようとしても、減衰手段によってこれら整地板の上方回動が抑制される。このため、第1整地板の斜め姿勢の傾斜角度が維持されるとともに、第2整地板は略水平な状態に維持されて、これら整地板によって盛り上がった耕土を削り取りながら整地し、且つ第2整地板によって耕土表面を均平にすることができる。
【0008】
また、特徴の一つは、減衰手段がダンパーであることを特徴とする。
この特徴によれば、減衰手段をダンパーとすることで、圃場の耕土から受ける力を第1整地板、第2整地板及びリンク機構を介して効果的に減衰することができる。
【0009】
また、特徴の一つは、減衰手段による第2整地板の回動減衰方向が、該第2整地板の上下両方向であることを特徴とする。
この特徴によれば、減衰手段による第2整地板の回動減衰方向を第2整地板の上下両方向にすることで、第2整地板及びこれに接続された第1整地板が上向きの力を受けてもこの力を減衰することができ、また第2整地板及びこれに接続された第1整地板が下方に回動しようとしても、この回動を抑制することができる。このため、第1整地板の斜め姿勢の傾斜角度が維持されるとともに、第2整地板は常に水平状態の姿勢に維持されるので、圃場に凹凸があっても、この凹凸を無くして圃場を均平にすることができる。
【0010】
また特徴の一つは、減衰手段が、第2整地板の上方向及び下方向のいずれかの方向の回動を選択的に減衰可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、減衰手段は、第2整地板の上方向及び下方向のいずれかの方向の回動を選択的に減衰可能であることで、第2整地板及びこれに接続された第1整地板の上下方向の回動の追従性を鈍くする方向を選択することができる。このため、圃場の状況に応じて第1整地板及び第2整地板の追従性を鈍くする方向の選択ができ、減衰手段の機能を適切に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる代掻き作業機によれば、上記特徴を有することによって、ロータリ作業部によって耕耘された後の圃場の耕土が盛り上がって高くなっていても、この耕土を整地して均平にすることができる代掻き作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係わる代掻き作業機の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。なお。説明の都合上、図1(a)(側面図)及び図1(b)(部分背面図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0013】
代掻き作業機1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、左右方向に延びる主フレーム4を有した作業機本体3の前部に、走行機体90の後部に設けられた図示しない3点リンク連結機構に連結されるトップマスト7とロアーリンク連結部を設けて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。主フレーム4の左右方向の中央部には前方へ突出する入力軸9aを備えたギアボックス9が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸9aに伝達されるようになっている。
【0014】
主フレーム4の左側端部には、チェーン伝動ケース11が垂設され、主フレーム4の右側端部には側部フレームがチェーン伝動ケース11と対向して垂設されている。チェーン伝動ケース11に接続された主フレーム4の左側部及びチェーン伝動ケース11内には伝動機構が設けられ、チェーン伝動ケース11と側部フレームの下端部間に多数の耕耘爪を取り付けたロータリ作業部13が回転自在に設けられている。そして、入力軸9aに伝達された動力は、ギアボックス9を介して主フレーム4及びチェーン伝動ケース11内の伝動機構に伝達されて、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。
【0015】
ロータリ作業部13の上側は作業機本体3の一部を構成するシールドカバー15により覆われ、このシールドカバー15の左右方向両端部には側部カバー17が設けられている。シールドカバー15の後端部には、エプロン19の前端部が上下方向に回動自在に取り付けられて、エプロン19は斜め下方に延びる。エプロン19の後端部19aは左右方向に略直線状に形成されて、耕土表面を平らに整地する。エプロン19の後端部には、レベラ21が上下方向に回動自在に取り付けられて、レベラ21はその下面が接地して耕土表面を均平にする。レベラ21の左右方向の外側端部には延長レベラ23が回動可能に取り付けられて、レベラ21の作業範囲の拡大が可能である。
【0016】
作業機本体3の左右両端部よりも中央部側のシールドカバー15の上面とレベラ21の上面との間には、エプロン19の上下動に連動して動作するリンク機構30が設けられている。リンク機構30は、シールドカバー15上面に取り付けられた支持板16の後端部に枢結された第1アーム部31と、第1アーム部31の後端部に上端部が枢結されて下端部がレベラ21に枢結された第2アーム部32とを有してなる。なお、リンク機構30の第1アーム部31の前端部は、シールドカバー15上面以外の部分、例えば、作業機本体3の主フレーム4等に取り付けてもよい。またリンク機構30は、土寄せ作業を行うときにレベラ21を下方に垂らした状態にしてロックするためのリンク機構を用いてもよい。
【0017】
このリンク機構30の第1アーム部31の後端部上面と主フレーム4との間には、オイルダンパー40が取り付けられている。このオイルダンパー40は、ロッド側端部が第1アーム部31に枢結され、ボトム側端部が主フレーム4に枢結されて、前後方向に延びた状態で配設されている。このオイルダンパー40は減衰方向の選択が可能に構成され、オイルダンパー40が伸長する方向、オイルダンパー40が縮小する方向、オイルダンパー40が伸縮両方向のいずれかの選択が可能に構成されている。オイルダンパー40の減衰方向の選択は、図示しない操作スイッチの操作よって可能に構成され、操作スイッチは走行機体90の運転席に設けられている。なお、操作スイッチは、運転席に搭乗した作業者の手が届く範囲内であれば、代掻き作業機1側に設けてもよい。また、ダンパーはオイルダンパー40に限るものではなく、ガス圧式のものやガス圧とオイル圧を利用したものでもよい。
【0018】
次に、このように構成された代掻き作業機1によって代掻き作業を行う場合の代掻き作業機1の動作について説明する。なお、オイルダンパー40の減衰方向は伸縮両方向に選択されるものとする。先ず、ロータリ作業部13によって耕耘された後の耕土が盛り上がって高くなる場合について説明する。
【0019】
図2(側面図)に示すように、オイルダンパー40の減衰方向が伸縮両方向になるように操作スイッチを操作し、走行機体90の動力を入力軸9aに伝達して、ロータリ作業部13を所定方向に回転させる。そして、走行機体90を前進走行させて代掻き作業機1を前進させると、ロータリ作業部13によって圃場の耕土が耕耘され、エプロン19によって耕耘された耕土が整地される。ここで、耕耘された耕土Sが盛り上がって高くなると、エプロン19及びこれに接続されたレベラ21はこの耕土Sの盛り上がった部分の全てを削り取ることができず、エプロン19は、後側に向く力を盛り上がった耕土Sから受けて後方側に回動しようとする。
【0020】
また、レベラ21がこの盛り上がった耕土S上を上がろうとすると、レベラ21の下面に上向きの力が耕土から作用して、レベラ21は上方へ回動しようとする。しかしながら、レベラ21は、リンク機構30を介してオイルダンパー40に接続され、またエプロン19は、レベラ21及びリンク機構30を介してオイルダンパー40に接続されているので、オイルダンパー40はこの縮小方向の動作に対して減衰力が働き、オイルダンパー40によってエプロン19及びレベラ21の上方へ回動を抑制する。従って、エプロン19の斜め姿勢の傾斜角度が維持されるとともに、レベラ21の下面が略水平方向に維持されて、盛り上がった耕土Sはエプロン19及びレベラ21によって削り取られて整地され、レベラ21によって均平にされる。このため、圃場に盛り上がった耕土Sが形成されても、これを削り取ってその表面を均平にすることができる。
【0021】
次に、ロータリ作業部13によって耕耘された後の耕土表面が凹んでいる場合について説明する。図3(側面図)に示すように、ロータリ作業部13が所定方向に回転した状態で代掻き作業機1が前進して、ロータリ作業部13によって圃場の耕土が耕耘された後の圃場に凹部43が形成される場合がある。このような場合、凹部43の前後方向長さが長いと、作業機の前進にともなってエプロン19下部の表面側に滞留する耕土が次第に無くなって、凹部43全体を耕土で埋めることができなくなる場合が生じる。このような場合、作業機がさらに前進してレベラ21が凹部43内に移動して、レベラ21がその自重によって下側に傾くと、レベラ21によって凹部43内の耕土が掘り起こされてしまい、結局、圃場に凹部が残されたままとなって、圃場を均平にすることができなくなってしまう。
【0022】
しかしながら、レベラ21には、リンク機構30を介してオイルダンパー40が接続され、オイルダンパー40はこの伸長方向の延びに対して減衰力が働くので、オイルダンパー40によってレベラ21の下方へ回動を抑制する。従って、レベラ21の下面は略水平方向に維持され、エプロン前端部によって削り取られて凹部43内に埋められた耕土は、レベラ21によって掘り起こされることはなく均平にされる。このため、圃場表面に凹部43が形成されてもこれを埋めてその表面を均平にすることができる。
【0023】
このように、オイルダンパー40の減衰力が作用する方向をシリンダの伸縮両方向にすると、圃場に盛り上がって高くなった耕土Sが形成されても、この耕土を削り取って均平にすることができ、また圃場に凹部43が形成されても、これを埋めて均平にすることができる。このため、圃場全体をあまねく均平にすることができる。
【0024】
なお、前述した実施例では、オイルダンパー40の減衰力が作用する方向をシリンダの伸縮両方向にした場合を説明したが、この減衰力が作用する方向をシリンダの伸長方向又はシリンダの縮小方向に選択してもよい。このように、オイルダンパー40の減衰力が作用する方向を伸縮方向のいずれかに選択すると、レベラ21の回動減衰方向を上下いずれかの方向にすることができる。このため、圃場の状況に応じたオイルダンパー40の使用が可能になり、オイルダンパー40の機能を適切に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係わる代掻き作業機を示し、同図(a)は代掻き作業機の側面図であり、同図(b)は代掻き作業機の左側の部分背面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる代掻き作業機の動作を説明するための代掻き作業機の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる代掻き作業機の動作を説明するための代掻き作業機の側面図である。
【図4】従来の代掻き作業機の側面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 代掻き作業機
3 作業機本体
13 ロータリ作業部
15 シールドカバー(カバー部)
19 エプロン(第1整地体)
21 レベラ(第2整地体)
30 リンク機構
40 オイルダンパー(減衰手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘作業を行うロータリ作業部を回転自在に支持する作業機本体と、該作業機本体に設けられ前記ロータリ作業部の上部を覆うカバー部と、該カバー部の後端部に上下方向に回動可能に支持された第1整地板と、該第1整地板の後端部に上下方向に回動可能に支持された第2整地板とを備える代掻き作業機において、
前記作業機本体と前記第2整地板との間に接続されて該第2整地板の回動に連動して動作するリンク機構を設け、
前記リンク機構に前記第2整地板を回動させる力を減衰する減衰手段を接続したことを特徴とする代掻き作業機。
【請求項2】
前記減衰手段は、ダンパーであることを特徴とする請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項3】
前記減衰手段による前記第2整地板の回動減衰方向は、該第2整地板の上下両方向であることを特徴とする請求項2に記載の代掻き作業機。
【請求項4】
前記減衰手段は、前記第2整地板を上方向及び下方向のいずれかの方向の回動を選択的に減衰可能であることを特徴とする請求項2に記載の代掻き作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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