伝送装置、伝送方法、及びプログラム
【課題】遅延を抑制しながら無瞬断切替を実現する。
【解決手段】送信側の伝送装置から受信した複数の伝送路からの信号のうち1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置において、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備える。
【解決手段】送信側の伝送装置から受信した複数の伝送路からの信号のうち1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置において、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路間の切替を無瞬断で行う伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信側伝送装置と受信側伝送装置を備え、これらを複数の伝送路で接続した伝送システムにおいて、無瞬断で伝送路の切り替えを行う無瞬断切替方式が従来からある。図1を参照して従来の無瞬断切替方式について説明する。
【0003】
図1は、送信側伝送装置1と受信側伝送装置2とが複数の伝送路3で接続されている伝送システムを示している。この伝送システムにおいて、送信側伝送装置1は、送信する信号にシーケンス番号等の目印(識別子)を付け、伝送路数分の信号のコピーを生成し、それらを各伝送路に送出する。ここで送信される信号は、例えばSDHフレーム上の仮想コンテナ、イーサネット(登録商標)フレーム、ATMセル、IPパケット等である。
【0004】
受信側伝送装置2には、各伝送路に対応する複数のメモリ4と、複数の伝送路から受信した同一の信号のうちの1つを選択する選択部5が備えられている。受信側伝送装置2は各伝送路から信号を受信し、各信号の目印を参照して信号の同一性を判定するとともに、同一信号間の遅延差を把握する。そして、受信側伝送装置2は、各信号をそれぞれに対応するメモリに格納し、最も遅延が大きい系(最遅延系という)に各信号の位相が揃うように、各系に遅延を挿入してメモリから信号を読み出す。そして、選択部5が、メモリから読み出された複数の系の信号のうちの1つの系の信号を選択し、受信側の装置へ伝送する。
【0005】
ここで、選択されている系の伝送路に故障が発生した場合、選択部5は他の系を選択することにより系を切り替える。このとき、選択部5が受信する各系の信号の位相は揃えられているので、無瞬断で系の切り替えを実行できる。
【0006】
なお、無瞬断切替に関連する先行技術の例として特許文献1に記載された技術がある。また、本明細書において「無瞬断」とは信号の欠落がなく、切替に伴いユーザのアプリケーションに影響が出る程の位相跳躍がないことをいう。
【特許文献1】特開平9−135228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の無瞬断切替方式では、伝送路故障時に備え、全ての系の信号の位相を常に最遅延系の信号の位相に合わせるため、信号の絶対遅延が大きくなるという問題がある。例えば、図2に示すユーザ1からユーザ2へ信号を伝送する場合に上記従来技術を用いると、伝送遅延時間はA+B+Cとなり、最短経路での伝送遅延時間a+b+cに比べて遅延が非常に大きくなってしまう。そのため、音声、映像、ネットゲームのような絶対遅延に敏感なリアルタイム系アプリケーションに上記従来技術を適用するすると、当該アプリケーションに影響が出る可能性があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、遅延を抑制しながら無瞬断切替を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備えることを特徴とする伝送装置により解決される。
【0010】
前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさは、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差より小さくし、前記記憶手段に記憶されている各信号を読み出す際の遅延の増加速度は、前記伝送装置から送出される信号を受信する装置におけるアプリケーションの動作に影響を与えない最大の速度として予め定めた速度であることとすることができる。
【0011】
また、前記事象が発生した後に前記記憶手段に記憶されている信号の読み出しを開始してから読み出しを終了するまでの時間は、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差の時間であり、当該遅延差の時間をかけて前記予め定めた速度で遅延を増加させた場合に、前記所定の伝送路の信号に挿入する遅延の大きさが当該遅延差になるように、前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさを決定することができる。
【0012】
また、前記伝送装置において、前記信号はデジタル同期網で使用される基本フレームに含まれる仮想コンテナ信号であり、前記伝送装置は、複数の伝送路を介して受信した基本フレームの各々から仮想コンテナ信号を抽出する信号抽出手段と、前記選択手段から出力される仮想コンテナ信号の遅延に応じてポインタによる正負スタッフ制御を行うスタッフ制御手段とを更に備えることとしてもよい。
また、本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備えることを特徴とする伝送装置として構成することもできる。
【0013】
更に本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置が実行する伝送方法であって、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加ステップと、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加ステップにより所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップとを有することを特徴とする伝送方法として構成してもよい。
【0014】
また、本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置における伝送方法であって、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップとを有することを特徴とする伝送方法として構成してもよい。
【0015】
また、本発明は、上記伝送方法における各ステップを伝送装置に実行させるプログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の伝送路の信号に初期遅延を与えておき、当該所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、読み出した後に切り替えを行なうこととしたので、初期遅延を小さくして遅延を抑制しながら無瞬断切替を行なうことが可能となる。
【0017】
また、所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、切り替え先の伝送路の信号の遅延と同一になった後に切り替えを行なうことにより、初期遅延を挿入する必要がなくなり、更に遅延を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図3に本発明の第1の実施の形態である伝送装置10の構成を示す。図3に示す伝送装置10は、図2に示した伝送システムにおける各伝送装置として使用可能なものであるが、本実施の形態の伝送装置は信号受信のための構成に特徴があるため、図3には信号受信のための構成を示している。信号送信のための構成としては例えば図1の送信側伝送装置の構成を備えることが可能である。また、当該伝送装置は、信号の方路を選択するためのスイッチ等も備えるがそれらを図示はしていない。
【0020】
以下、図3に示す伝送装置が図2の伝送システムにおける区間2の受信側伝送装置として使用される場合について説明する。また、伝送の対象となる信号はATMセル、イーサネット(登録商標)フレーム、IPパケット等のパケットであるものとする。更に、冗長構成の一例として2経路の伝送路を用いるものとし、経路1の伝送路のほうが経路2の伝送路よりも長く、経路1の伝送路での信号伝送遅延をB、経路2の伝送路での信号伝送遅延をbとした場合に、B>bが成立するものとする。また、以下、経路1に対応する系を系1もしくは長距離系と呼び、経路2に対応する系を系2もしくは短距離系と呼ぶことにする。
【0021】
(伝送装置10の構成について)
図3に示す伝送装置10は、インタフェース部11(IF_a)、インタフェース部12(IF_b)、故障検出部13、遅延差判定部14、メモリ151とメモリ152を備えた遅延差調整部15、系選択部16、制御部17、送出管理部18、及びインタフェース部19(IF_c)を備えている。
【0022】
インタフェース部11(IF_a)は経路1の伝送路から信号を受信するインタフェースである。インタフェース部12(IF_b)は経路2の伝送路から信号を受信するインタフェースである。送信側の伝送装置は背景技術で説明したものと同様の動作を行っており、インタフェース部11(IF_a)とインタフェース部12(IF_b)は目印が付された信号を受信する。
【0023】
故障検出部13は、系の故障を検出する機能部である。例えば、ある系の伝送路からの信号が一定時間到来しなくなった場合に当該系が故障であると判定する。また、インタフェース部11(IF_a)、及びインタフェース部12(IF_b)のそれぞれに光断検出機能部を備え、光断検出機能部により光の断が検出された場合に、光断検出機能部がそれを故障検出部13に通知し、その通知を受けることにより故障検出部13が故障を検出するようにしてもよい。また、光断検出機能部が直接、制御部17に故障を通知してもよい。なお、故障検出部13あるいは光断検出機能部が検出する“故障”は、予期せずに起こる一般的な故障のみならず、計画的な伝送路工事に伴って伝送路が断になる事象等を含むものである。このことは他の実施の形態でも同じである。
【0024】
遅延差判定部14は、故障検出部13から受信した両系の信号に関して、それぞれの信号に付された目印を用いて信号の同一性を判定し、同一の信号間での遅延差を判定し、その遅延差の情報を制御部17に通知する機能を備えている。
【0025】
遅延差調整部15におけるメモリ151、メモリ152は、それぞれ経路1の伝送路の信号と経路2の伝送路の信号に対応付けられている。遅延差調整部15は、遅延差判定部14から受信した信号を一旦該当のメモリに蓄積し、蓄積した信号を読み出して系選択部16に供給する機能を備えている。また、遅延差調整部15は制御部17から遅延量制御の指示を受信し、その指示に応じてメモリから信号を読み出すタイミングを遅らせることにより信号に遅延を付加したり、読み出すタイミングを早めることにより遅延を削除したりする機能を備えている。
【0026】
系選択部16は、制御部17からの指示に応じて、遅延差調整部15から受信した2つの系に対応する信号のうちの1つを選択して送出管理部18に向けて送出する機能を備えている。送出管理部18は、信号に付された目印を確認することにより、後段へ送出する信号に重複がないように信号送出の制御を行う機能を備えている。
【0027】
インタフェース部19(IF_c)は、送出管理部18から受信した信号を受信側の装置に向けて送出する機能を備えている。
【0028】
制御部17は、故障のない状態(これを通常状態と呼ぶことにする)において、短距離系を選択するよう系選択部16を制御する。また、制御部17は、通常状態において、長距離系と短距離系の遅延差(B-b)より小さい所定の遅延量(初期遅延とも呼ぶ)Xを短距離系に対応するメモリ152に挿入するよう遅延差調整部15を制御する。
【0029】
また、制御部17は、故障検出部13から短距離系の故障検出情報を受信した場合に、メモリ152に蓄積されている信号の読み出し速度を通常状態時よりも遅くするよう遅延差調整部15に指示をする。そして、制御部17は、メモリ152が空になったら、系選択部16に短距離系から長距離系への系切替指示を送出する。なお、故障発生時の切り替え動作については後により詳細に説明する。
【0030】
上記の伝送装置10は、例えば、CPU等を備えたコンピュータに、伝送路とのインタフェースとなる装置と、上記各機能部の動作を実行するためのプログラムとを搭載することにより実現することが可能である。また、制御部17以外を主にハードウェアで構成し、制御部17の動作をプログラムにより実現する構成とすることも可能である。
【0031】
<伝送装置の動作について>
以下、図4に示すフローチャートに示す処理の手順に沿って伝送装置10の動作を説明する。また、図5は、短距離系に挿入される遅延量を時系列で示した図であり、説明の中で適宜参照する。
【0032】
(切り替え動作)
いずれの系にも故障がない通常状態において(ステップ1)、遅延差判定部14は、経路1の伝送路と経路2の伝送路のそれぞれから受信する信号の目印により信号の同一性を判定し、同一信号間での遅延差を判定し、それを制御部17に通知する。
【0033】
制御部17は遅延の小さいほうの系を決定し、遅延の小さいほうの系に対応するメモリに一定の遅延量X(ただし、X<B-b)を挿入するよう遅延差調整部15に指示する。本実施の形態では、経路2のほうが遅延が小さいので、系2に対応するメモリ152からの信号読み出しを遅くすることにより遅延Xが挿入される。更に、制御部17は、遅延の小さいほうの系を選択するよう系選択部16に対して指示を行う。本実施の形態では、系選択部16はメモリ152から読み出された信号を選択するように動作する。この状態は、図5における故障検出前の状態に相当する。
【0034】
このような動作を行うことにより、故障のない通常状態において区間2の伝送遅延はb+Xとなる(装置内の各機能部の伝送遅延を除く)。この遅延Xの決定方法については後述する。
次に、故障検出部13が、信号が一定時間到来しないことを検出したことにより故障を検出したものとする(図4のステップ2)。故障検出部13は、故障を検出した系の情報を含む故障情報を制御部17に通知する。
【0035】
系選択部16では短距離系である系2が選択されているので、故障が長距離系である系1の伝送路での故障である場合には(ステップ3のNo)、制御部17は切り替え等の動作を行わない。短距離系の伝送路で故障が発生した場合(ステップ3のYes)の動作を次に説明する。
【0036】
制御部17が、故障検出部13から受信した故障情報から短距離系の伝送路で故障が発生したことを検知すると、短距離系に対応するメモリ152に蓄積されている信号の読み出す速度を遅くすることにより、遅延を叙々に挿入するよう遅延差調整部15に指示を出す。この指示に基づき、メモリ152に蓄積されている信号を読み出す速度が遅くなり、遅延が叙々に挿入される(ステップ4)。この状態は、図5におけるTS秒の期間継続する。
【0037】
短距離系の伝送路の故障が発生した後、メモリ152には新たな信号が蓄積されることはないので、故障発生時点においてメモリ152に蓄積されていた信号が全て読み出されるとメモリ152は空になる。その時点で、遅延差調整部15は、メモリ152が空になったことを制御部17に通知する。その通知を受けた制御部17は、メモリ152が空になったことを検知し(ステップ5のYes)、系選択部16に対して系の切り替えを行なうよう指示をする。この指示を受けた系選択部17は、短距離系から長距離系への系切り替えを行なう(図4のステップ6、図5における遅延挿入終了時点)。
【0038】
その後、系選択部16から長距離系の信号が送出されるが、長距離系は短距離系より遅延が大きいため、系選択部16により既に送出した短距離系の信号と同じ信号を長距離系から送出する可能性がある。そこで、送出管理部18が信号の目印を確認し、既に送出した信号を再度送出しないようチェックを行う。
【0039】
(本実施の形態の切り替え動作の効果)
上記のような切り替え動作を行なうことにより、通常時の遅延を従来技術より小さくしながら、系切り替え時の信号の途切れによるアプリケーションへの影響を少なくすることができる。以下、この効果について図6、図7を参照して説明する。
【0040】
図6における(a)は、図3におけるインタフェース部11、12の後段の部分(a)での長距離系及び短距離系それぞれの信号を示し、図6の(b)は、図3における系選択部16の前段の部分(b)での長距離系及び短距離系それぞれの信号を示し、図6の(c)は、図3における系選択部16の後段の部分(c)の信号を示している。図6の(c)の上段は、メモリ152からの読み出し速度を故障前と同じにしたと仮定した場合を示し、(c)の下段は、本実施の形態の場合、つまり、メモリ152からの読み出し速度を故障前の読み出し速度より遅くする場合を示すものである。
【0041】
各図の横軸は時間軸を示し、右方向に進むほど時間的に過去になる。各図において、信号の間隔が広いほど信号の速度が遅いことを示している。なお、“9”の信号に付された印は、遅延の相違を分かり易くするために付したものである。
【0042】
図6の(a)に示すように、“12”の信号が短距離系伝送路から入力された後のT1の時点で、短距離系伝送路の故障が発生したものとする。この場合、T1以降の短距離系伝送路からの信号の入力は途絶える。
【0043】
図6の(b)に示すように、短距離系において、T1までに“9”の信号までメモリ152から読み出され、T1の時点で“10”〜“12”の3つの信号がメモリ152に蓄積されている。ここで、故障発生後も、メモリ152からの信号読み出し速度が、故障発生前の信号読み出し速度と同一であるとすると、(c)の上段に示すように、短距離系の“12”の信号が系選択部16から出力された後、切り替え後の長距離系の信号である“13”の信号が系選択部16から出力されるまでに、大きく間隔が開いてしまい、アプリケーションへの影響が大きくなる。
【0044】
一方、(c)の下段に示すように、故障発生後におけるメモリ152からの信号読み出し速度を、故障発生前の信号読み出し速度より遅くすることにより、信号間の間隔を狭くすることができる。これにより、切り替え時におけるアプリケーションへの影響を小さくすることができる。また、メモリ152に蓄積する信号量(つまり、遅延量X)を、この信号間の間隔がアプリケーションへの影響が出ない間隔になるよう決定すれば、切り替え時にアプリケーションへの影響を無くすことができる。
【0045】
なお、図6において、メモリ152が空になった直後に系の切り替えを行なう場合を点線の上向き矢印で示している。また、メモリ152に蓄積されていた信号のうちの最後の信号の次の長距離系の信号が系選択部16に到達する直前に切り替えを行なう場合を実線の上向き矢印で示している。切り替えはどちらのタイミングで行なってもよいが、実線の上向き矢印のタイミングで切り替えを行なうことにより、系選択部16から出力される信号が重複することは無くなるので、送出管理部18は不要となる。
【0046】
参考までに、図7に従来技術での信号を示す。図7の(c)の上段は、メモリ152に信号を蓄積せずに短距離系から長距離系への系切り替えを行なった場合の図3(c)部分での信号を示している。当該図に示すように、切り替えに伴って両系の遅延差分の時間間隔が空いてしまう。図7の(c)の下段は、短距離系と長距離系の遅延が同一になるように短距離系に遅延を挿入する従来の無瞬断切替における信号を示している。当該図に示すように、切り替えに伴って、信号間隔の増加等は発生しない。ただし、前述したように、この場合は、短距離系であっても常に長距離系と同じ遅延を有することとなり、通常状態でもアプリケーションへの影響が発生し得る。一方、図6の(c)下段に示したように、本実施の形態の方式を用いることにより、通常状態で遅延を抑制しながら、切り替え時にアプリケーションへの影響を無くすことが可能となる。
【0047】
(遅延量Xの決定方法)
次に、メモリ152に挿入しておく遅延量Xの決定方法について図5を参照して説明する。図5において、TSは遅延を挿入する所用時間である。本実施の形態では、短距離系のメモリ152に蓄積された最後の信号の次の長距離系の信号が系選択部16前段に到着する前までに遅延挿入を完了させる必要がある。従って、この所要時間TSは両経路の遅延差分(B-b)以下である。また、所要時間TSを両経路の遅延差分(B-b)より小さくすると、メモリ152に蓄積された最後の信号が読み出されてから、次の長距離系の信号が系選択部16前段に到着するまでに間が空く可能性があることから、本実施の形態では、所要時間をTS=B-bとする。
【0048】
図5における傾きSは、アプリケーションに影響を与えずに単位時間当たりに挿入できる予め決めておいた最大遅延量である。ここで、Sを1以上としてしまうと、遅延挿入開始からTS(=B-b)が経過した時点で、両系の遅延差より大きな遅延量を短距離系に挿入してしまうことになるので、S<1とする。
【0049】
Sが単位時間当たりに挿入できる最大遅延量であるから、 (B-b-X)/(B-b)≦Sを満たさなければならない。よって、X≧(1-S)(B-b)が成り立つ。Xが(1-S)(B-b)以上であれば、アプリケーションに影響を与えずに切替を行なうことができるが、初期遅延は小さいほどよいので、X=(1-S)(B-b)として決定する。
【0050】
(切り戻し動作)
次に、故障回復後の切り戻し動作について説明する。故障が回復した後、制御部17が、伝送装置10を監視する監視制御装置から系の切り戻し指示を受信すると(図4のステップ7)、伝送装置10は系の切り戻し処理に入る。なお、監視制御装置からの指示を受けてから切り戻し処理を行うことに代えて、故障検出部13が故障回復を検出したことを契機として伝送装置10が自律的に切り戻し動作を開始してもよい。
【0051】
ここで、系1と系2の遅延の大小関係が故障の前と同じであれば系1から系2に切り戻すことになるが、伝送路故障の影響で、回復した伝送路の距離が変化している場合があるため、故障が回復した時点では系1と系2の遅延の大小関係は不明である。そこで、まず、遅延差判定部14が両系の遅延を判定し(図4のステップ8)、制御部17にその情報を通知する。ここで、現在選択されている系である系1のほうが系2よりも短遅延になっていればこのままの状態で運用を続ける。
【0052】
故障前と同様に系2のほうが系1よりも短遅延であれば、現在選択されている系である系1から系2に切り戻す処理を行う(図4のステップ9)。この場合、まず系1における遅延量と系2における遅延量が等しくなるようにメモリ152からの信号読み出しタイミングを調整することにより系2の遅延量を調整する。そして、系2と系1の位相が揃った時点で系選択部16は系1から系2に系を切り戻す。この切り戻しも監視制御装置からの指示で行ってもよいし、制御部17が位相が揃ったことを検知した時点で自律的に切り戻しを行うこととしてもよい。
【0053】
切り戻しが終了した時点では、遅延が大きい系1に位相が揃っているので、系2の短遅延(b+X)になるように徐々に系2の遅延を削減する(図4のステップ10)。ここで、遅延を一気に削除してしまうとパケットがバースト出力されるかパケットの廃棄が発生し、アプリケーションに影響を与える恐れがあるが、遅延を徐々に削除することにより、バーストの発生やパケットの廃棄を防止でき、アプリケーションへの影響を少なくできる。
【0054】
より詳細には図5に示すように、所定の時間TEをかけて、メモリ152から信号を読み出す際に挿入していた遅延を徐々に削減する。図に示す例では、単位時間当たり削除する遅延量がSになるように、TE=(B-b-X)/Sとしている。なお、遅延を削除する場合は、時間に余裕があるので、上記TEより長い時間をかけて遅延を削除することとしてもよい。なお、図5は故障回復後も遅延差がB-bである場合を示している。
【0055】
[第2の実施の形態]
図8に本発明の第2の実施の形態である伝送装置30の構成を示す。第1の実施の形態は、本発明をATM伝送装置等のパケット伝送装置に適用した場合の実施の形態であったが、第2の実施の形態は本発明をSDH(Synchronous Digital Hierarchy)等のデジタル同期網に適用した場合の実施の形態である。
【0056】
第2に実施の形態では、図9に示すSTM−1(155.52Mbps)(基本フレーム)上のVC−4単位(仮想コンテナ単位)で信号間位相を調整し、無瞬断切替を実現している。なお、STM種別及びコンテナ種別はこの例に限られるものでなく、どのようなSTM種別及びコンテナ種別(コンカチネーション/バーチャルコンカチネーションコンテナを含む)でもよい。例えば、STM−1とVC−3×3、STM−1とVC−3−Xv(X=1〜3)、STM−4とVC−4−4c、STM−16とVC−4−16c等を用いることができる。また、SONET(Synchronous Optical Network)規格もSDHと同様に適用できる。
【0057】
図8に示す第2の実施の形態の伝送装置30の基本的な構成は第1の実施の形態の伝送装置10と同じであるが、SOH終端部20、21、22を含む点が異なる。SOH終端部20、21はSTM−1フレームからVC−4信号を抽出し、故障検出部13に挿入する機能を備えている。また、SOH終端部22は、送出管理部18から出力されるVC−4信号の遅延量に応じたAUポインタによるスタッフ制御を行う機能を備えている。第2の実施の形態の故障検出部13、遅延差判定部14、遅延差調整部15、系選択部16、制御部17、送出管理部18の機能は、第1の実施の形態のものと同様である。ただし、第2の実施の形態では位相を調整する対象の信号としてVC−4信号を用いている。また、第2の実施の形態では、信号間(VC−4信号間)の同一性判定のために、VC−4信号のオーバヘッドにおける空きバイトを使用して目印を付している。
【0058】
以下、第2の実施の形態の伝送装置30の動作を、第1の実施の形態の伝送装置10の動作と異なる点を中心に説明する。
【0059】
インタフェース部11(IF_a)とインタフェース部12(IF_b)はそれぞれ系1と系2の伝送路からSTM−1フレームを受信し、それをSOH終端部20、21に送る。各SOH終端部は、STM−1フレームからVC−4信号を抽出し、それを故障検出部13に渡す。故障検出部13は、パスオーバヘッドの所定バイトを監視することにより故障検出を行う。また、第1の実施の形態と同様に、インタフェース部11、12に備えた光断検出機能部からの通知に基づき故障を検出するように構成することもできる。
【0060】
遅延差判定部14はVC−4信号に付された目印により同一信号を識別し、同一信号間の遅延差を判定して遅延差の情報を制御部17に通知する。各系のVC−4信号はメモリに蓄積され、読み出され、系選択部16により選択された系のVC−4信号が送出管理部18を介してSOH制御部22に送られ、そこでスタッフ制御がなされ、STM−1フレームに載せられ、インタフェース部19(IF_c)からSTM−1フレームが次の装置に送られる。
【0061】
通常時には第1の実施の形態と同様に短距離系に初期遅延Xを挿入し、短距離系の故障時には、短距離系に対応するメモリ152からの信号読み出し時に遅延を徐々に挿入する。このとき、図10(b)に示すようにVC−4信号の間隔が広がるが、SOH終端部22においてSTM−1フレームに載せる際に、AUポインタで正スタッフ制御を行う。
【0062】
系を切り戻す際も第1の実施の形態と同様にメモリ152からの読み出し時に遅延を徐々に削除する。このとき、図10(c)に示すように、VC−4信号の間隔が狭まるが、SOH終端部20においてSTM−1フレームに載せる際に、AUポインタで負スタッフ制御を行う。
【0063】
上記のように正負のスタッフ制御を行うことによりVC−4信号間隔を調整するが、スタッフ挿入量にはSDH規定上の上限(H3バイトの3バイト分)があるため、遅延挿入/削除の速度にも制限がある。例えば、STM−1フレームでは、1秒間に最大±8000×3バイト時間分(±約1.23ms/秒)の遅延挿入/削除速度となる。そのため、上記の最大値以上の遅延挿入/削除の速さを要する場合には適用できないが、初期遅延Xを調整すれば、遅延挿入/削除の速さを調整できるので、本方式はほとんどの場合に適用可能である。
【0064】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。図11に第3の実施の形態における伝送装置40の構成を示す。この伝送装置40は、誤り訂正機能部34を含む。また、故障検出部33の機能は第1の実施の形態の故障検出部13の機能と異なる。それ以外の構成は、基本的に第1の実施の形態の伝送装置10と同様である。
【0065】
本実施の形態の故障検出部33は、故障の前兆を検知する機能を有している。故障の前兆を検出する機能としては、例えば信号誤り率測定機能がある。この場合、故障の前兆となる信号誤り率を予め決めておき、故障検出部33は、その信号誤り率になったときに故障の前兆であると判断する。また、インタフェース部11、12のそれぞれに光入力パワー測定機能を備え、入力される光のパワーが、予め決めた光入力パワー以下になったときに故障の前兆であると判定してもよい。以下、図12に示す遅延挿入時系列図を適宜参照して本実施の形態の伝送装置40における系切り替え動作について説明する。以下の例では、信号誤り率測定により故障の前兆を検出するものとする。
【0066】
通常状態では、短距離系を選択するが、初期遅延Xは挿入しない。故障検出部33が、短距離系の伝送路からの信号の誤り率が予め決めた誤り率以上になったことを検知すると、それを故障の前兆情報として制御部17に通知する。その通知を受けた制御部17は、メモリ152に遅延を叙々に挿入するよう遅延差調整部15に指示を送る。この指示を受けた遅延差調整部15は、図12に示すように、単位時間当たりS(アプリケーションに影響を与えない単位時間当たりに挿入できる最大遅延量)の遅延量を、遅延量が長距離系と短距離系の遅延差B-bになるまで短距離系に遅延を挿入する。
【0067】
そして、B-bになるまで遅延を挿入し終えた時点で、制御部17は系選択部16に対して系切り替えの指示を出し、系選択部16が短距離系から長距離系への系切り替えを行なう。なお、誤り率が増加した時点から、系切り替えまでの間に入力される誤りのある信号がメモリ152に蓄積されるのを回避するために、誤り訂正機能部34が、誤りのある信号の誤り訂正を行なう。
【0068】
ここで、故障の前兆が発生してから、実際に伝送路が断(誤り訂正不能)となるまでに遅延の挿入を終了する必要がある。そこで、本実施の形態では、故障の前兆が発生してから伝送路が断となるまでの予想時間TRを故障の前兆の種類(光パワー減衰、誤り率増加等)に応じて決めておく。そして、故障の前兆が発生した時点で、遅延挿入開始時点から遅延挿入終了時点までの時間(B-b)/SとTRとの比較を行い、(B-b)/S<TRであれば、図12に示したようにB-bになるまで遅延を挿入し、遅延挿入後に切り替えを行なう。
【0069】
(B-b)/S≧TRの場合は、遅延挿入開始時点からTRまで傾きSで遅延を挿入し、挿入後は、第1の実施の形態の方法と同様にメモリ152に蓄積された信号の読み出し速度を遅くして切り替えを行なう。もしくは、実際に断を検出してから第1の実施の形態の方法と同様に切り替えを行なう。
【0070】
また、B-b及びTRの変動が少ない場合は、(B-b-X)/S<TRとなるように、予め初期遅延Xを短距離系に挿入しておき、故障の前兆発生時には、挿入遅延量がB-bになるまで遅延を挿入し、遅延を挿入し終えてから切り替えを行なうこととしてもよい。
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に、遅延を抑制しながら無瞬断切替を行なうことが可能となる。
【0071】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来の無瞬断切替方式を説明するための図である。
【図2】伝送システムの一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図4】伝送装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】遅延挿入動作を時系列で示した図である。
【図6】第1の実施の形態の効果を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態の効果を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図9】SDHのフレーム構成の一例を示す図である。
【図10】スタッフ制御を説明するための図である。
【図11】第3の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図12】第3の実施の形態における遅延挿入動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
10、30、40 伝送装置
11、12、17、19 インタフェース部
13、33 故障検出部
14 遅延差判定部
15 遅延差調整部
16 系選択部
17 制御部
18 送出管理部
20、21、22 SOH終端部
34 誤り訂正機能部
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路間の切替を無瞬断で行う伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信側伝送装置と受信側伝送装置を備え、これらを複数の伝送路で接続した伝送システムにおいて、無瞬断で伝送路の切り替えを行う無瞬断切替方式が従来からある。図1を参照して従来の無瞬断切替方式について説明する。
【0003】
図1は、送信側伝送装置1と受信側伝送装置2とが複数の伝送路3で接続されている伝送システムを示している。この伝送システムにおいて、送信側伝送装置1は、送信する信号にシーケンス番号等の目印(識別子)を付け、伝送路数分の信号のコピーを生成し、それらを各伝送路に送出する。ここで送信される信号は、例えばSDHフレーム上の仮想コンテナ、イーサネット(登録商標)フレーム、ATMセル、IPパケット等である。
【0004】
受信側伝送装置2には、各伝送路に対応する複数のメモリ4と、複数の伝送路から受信した同一の信号のうちの1つを選択する選択部5が備えられている。受信側伝送装置2は各伝送路から信号を受信し、各信号の目印を参照して信号の同一性を判定するとともに、同一信号間の遅延差を把握する。そして、受信側伝送装置2は、各信号をそれぞれに対応するメモリに格納し、最も遅延が大きい系(最遅延系という)に各信号の位相が揃うように、各系に遅延を挿入してメモリから信号を読み出す。そして、選択部5が、メモリから読み出された複数の系の信号のうちの1つの系の信号を選択し、受信側の装置へ伝送する。
【0005】
ここで、選択されている系の伝送路に故障が発生した場合、選択部5は他の系を選択することにより系を切り替える。このとき、選択部5が受信する各系の信号の位相は揃えられているので、無瞬断で系の切り替えを実行できる。
【0006】
なお、無瞬断切替に関連する先行技術の例として特許文献1に記載された技術がある。また、本明細書において「無瞬断」とは信号の欠落がなく、切替に伴いユーザのアプリケーションに影響が出る程の位相跳躍がないことをいう。
【特許文献1】特開平9−135228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の無瞬断切替方式では、伝送路故障時に備え、全ての系の信号の位相を常に最遅延系の信号の位相に合わせるため、信号の絶対遅延が大きくなるという問題がある。例えば、図2に示すユーザ1からユーザ2へ信号を伝送する場合に上記従来技術を用いると、伝送遅延時間はA+B+Cとなり、最短経路での伝送遅延時間a+b+cに比べて遅延が非常に大きくなってしまう。そのため、音声、映像、ネットゲームのような絶対遅延に敏感なリアルタイム系アプリケーションに上記従来技術を適用するすると、当該アプリケーションに影響が出る可能性があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、遅延を抑制しながら無瞬断切替を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備えることを特徴とする伝送装置により解決される。
【0010】
前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさは、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差より小さくし、前記記憶手段に記憶されている各信号を読み出す際の遅延の増加速度は、前記伝送装置から送出される信号を受信する装置におけるアプリケーションの動作に影響を与えない最大の速度として予め定めた速度であることとすることができる。
【0011】
また、前記事象が発生した後に前記記憶手段に記憶されている信号の読み出しを開始してから読み出しを終了するまでの時間は、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差の時間であり、当該遅延差の時間をかけて前記予め定めた速度で遅延を増加させた場合に、前記所定の伝送路の信号に挿入する遅延の大きさが当該遅延差になるように、前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさを決定することができる。
【0012】
また、前記伝送装置において、前記信号はデジタル同期網で使用される基本フレームに含まれる仮想コンテナ信号であり、前記伝送装置は、複数の伝送路を介して受信した基本フレームの各々から仮想コンテナ信号を抽出する信号抽出手段と、前記選択手段から出力される仮想コンテナ信号の遅延に応じてポインタによる正負スタッフ制御を行うスタッフ制御手段とを更に備えることとしてもよい。
また、本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段とを備えることを特徴とする伝送装置として構成することもできる。
【0013】
更に本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置が実行する伝送方法であって、所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加ステップと、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加ステップにより所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップとを有することを特徴とする伝送方法として構成してもよい。
【0014】
また、本発明は、送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置における伝送方法であって、前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップとを有することを特徴とする伝送方法として構成してもよい。
【0015】
また、本発明は、上記伝送方法における各ステップを伝送装置に実行させるプログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の伝送路の信号に初期遅延を与えておき、当該所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、読み出した後に切り替えを行なうこととしたので、初期遅延を小さくして遅延を抑制しながら無瞬断切替を行なうことが可能となる。
【0017】
また、所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、切り替え先の伝送路の信号の遅延と同一になった後に切り替えを行なうことにより、初期遅延を挿入する必要がなくなり、更に遅延を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図3に本発明の第1の実施の形態である伝送装置10の構成を示す。図3に示す伝送装置10は、図2に示した伝送システムにおける各伝送装置として使用可能なものであるが、本実施の形態の伝送装置は信号受信のための構成に特徴があるため、図3には信号受信のための構成を示している。信号送信のための構成としては例えば図1の送信側伝送装置の構成を備えることが可能である。また、当該伝送装置は、信号の方路を選択するためのスイッチ等も備えるがそれらを図示はしていない。
【0020】
以下、図3に示す伝送装置が図2の伝送システムにおける区間2の受信側伝送装置として使用される場合について説明する。また、伝送の対象となる信号はATMセル、イーサネット(登録商標)フレーム、IPパケット等のパケットであるものとする。更に、冗長構成の一例として2経路の伝送路を用いるものとし、経路1の伝送路のほうが経路2の伝送路よりも長く、経路1の伝送路での信号伝送遅延をB、経路2の伝送路での信号伝送遅延をbとした場合に、B>bが成立するものとする。また、以下、経路1に対応する系を系1もしくは長距離系と呼び、経路2に対応する系を系2もしくは短距離系と呼ぶことにする。
【0021】
(伝送装置10の構成について)
図3に示す伝送装置10は、インタフェース部11(IF_a)、インタフェース部12(IF_b)、故障検出部13、遅延差判定部14、メモリ151とメモリ152を備えた遅延差調整部15、系選択部16、制御部17、送出管理部18、及びインタフェース部19(IF_c)を備えている。
【0022】
インタフェース部11(IF_a)は経路1の伝送路から信号を受信するインタフェースである。インタフェース部12(IF_b)は経路2の伝送路から信号を受信するインタフェースである。送信側の伝送装置は背景技術で説明したものと同様の動作を行っており、インタフェース部11(IF_a)とインタフェース部12(IF_b)は目印が付された信号を受信する。
【0023】
故障検出部13は、系の故障を検出する機能部である。例えば、ある系の伝送路からの信号が一定時間到来しなくなった場合に当該系が故障であると判定する。また、インタフェース部11(IF_a)、及びインタフェース部12(IF_b)のそれぞれに光断検出機能部を備え、光断検出機能部により光の断が検出された場合に、光断検出機能部がそれを故障検出部13に通知し、その通知を受けることにより故障検出部13が故障を検出するようにしてもよい。また、光断検出機能部が直接、制御部17に故障を通知してもよい。なお、故障検出部13あるいは光断検出機能部が検出する“故障”は、予期せずに起こる一般的な故障のみならず、計画的な伝送路工事に伴って伝送路が断になる事象等を含むものである。このことは他の実施の形態でも同じである。
【0024】
遅延差判定部14は、故障検出部13から受信した両系の信号に関して、それぞれの信号に付された目印を用いて信号の同一性を判定し、同一の信号間での遅延差を判定し、その遅延差の情報を制御部17に通知する機能を備えている。
【0025】
遅延差調整部15におけるメモリ151、メモリ152は、それぞれ経路1の伝送路の信号と経路2の伝送路の信号に対応付けられている。遅延差調整部15は、遅延差判定部14から受信した信号を一旦該当のメモリに蓄積し、蓄積した信号を読み出して系選択部16に供給する機能を備えている。また、遅延差調整部15は制御部17から遅延量制御の指示を受信し、その指示に応じてメモリから信号を読み出すタイミングを遅らせることにより信号に遅延を付加したり、読み出すタイミングを早めることにより遅延を削除したりする機能を備えている。
【0026】
系選択部16は、制御部17からの指示に応じて、遅延差調整部15から受信した2つの系に対応する信号のうちの1つを選択して送出管理部18に向けて送出する機能を備えている。送出管理部18は、信号に付された目印を確認することにより、後段へ送出する信号に重複がないように信号送出の制御を行う機能を備えている。
【0027】
インタフェース部19(IF_c)は、送出管理部18から受信した信号を受信側の装置に向けて送出する機能を備えている。
【0028】
制御部17は、故障のない状態(これを通常状態と呼ぶことにする)において、短距離系を選択するよう系選択部16を制御する。また、制御部17は、通常状態において、長距離系と短距離系の遅延差(B-b)より小さい所定の遅延量(初期遅延とも呼ぶ)Xを短距離系に対応するメモリ152に挿入するよう遅延差調整部15を制御する。
【0029】
また、制御部17は、故障検出部13から短距離系の故障検出情報を受信した場合に、メモリ152に蓄積されている信号の読み出し速度を通常状態時よりも遅くするよう遅延差調整部15に指示をする。そして、制御部17は、メモリ152が空になったら、系選択部16に短距離系から長距離系への系切替指示を送出する。なお、故障発生時の切り替え動作については後により詳細に説明する。
【0030】
上記の伝送装置10は、例えば、CPU等を備えたコンピュータに、伝送路とのインタフェースとなる装置と、上記各機能部の動作を実行するためのプログラムとを搭載することにより実現することが可能である。また、制御部17以外を主にハードウェアで構成し、制御部17の動作をプログラムにより実現する構成とすることも可能である。
【0031】
<伝送装置の動作について>
以下、図4に示すフローチャートに示す処理の手順に沿って伝送装置10の動作を説明する。また、図5は、短距離系に挿入される遅延量を時系列で示した図であり、説明の中で適宜参照する。
【0032】
(切り替え動作)
いずれの系にも故障がない通常状態において(ステップ1)、遅延差判定部14は、経路1の伝送路と経路2の伝送路のそれぞれから受信する信号の目印により信号の同一性を判定し、同一信号間での遅延差を判定し、それを制御部17に通知する。
【0033】
制御部17は遅延の小さいほうの系を決定し、遅延の小さいほうの系に対応するメモリに一定の遅延量X(ただし、X<B-b)を挿入するよう遅延差調整部15に指示する。本実施の形態では、経路2のほうが遅延が小さいので、系2に対応するメモリ152からの信号読み出しを遅くすることにより遅延Xが挿入される。更に、制御部17は、遅延の小さいほうの系を選択するよう系選択部16に対して指示を行う。本実施の形態では、系選択部16はメモリ152から読み出された信号を選択するように動作する。この状態は、図5における故障検出前の状態に相当する。
【0034】
このような動作を行うことにより、故障のない通常状態において区間2の伝送遅延はb+Xとなる(装置内の各機能部の伝送遅延を除く)。この遅延Xの決定方法については後述する。
次に、故障検出部13が、信号が一定時間到来しないことを検出したことにより故障を検出したものとする(図4のステップ2)。故障検出部13は、故障を検出した系の情報を含む故障情報を制御部17に通知する。
【0035】
系選択部16では短距離系である系2が選択されているので、故障が長距離系である系1の伝送路での故障である場合には(ステップ3のNo)、制御部17は切り替え等の動作を行わない。短距離系の伝送路で故障が発生した場合(ステップ3のYes)の動作を次に説明する。
【0036】
制御部17が、故障検出部13から受信した故障情報から短距離系の伝送路で故障が発生したことを検知すると、短距離系に対応するメモリ152に蓄積されている信号の読み出す速度を遅くすることにより、遅延を叙々に挿入するよう遅延差調整部15に指示を出す。この指示に基づき、メモリ152に蓄積されている信号を読み出す速度が遅くなり、遅延が叙々に挿入される(ステップ4)。この状態は、図5におけるTS秒の期間継続する。
【0037】
短距離系の伝送路の故障が発生した後、メモリ152には新たな信号が蓄積されることはないので、故障発生時点においてメモリ152に蓄積されていた信号が全て読み出されるとメモリ152は空になる。その時点で、遅延差調整部15は、メモリ152が空になったことを制御部17に通知する。その通知を受けた制御部17は、メモリ152が空になったことを検知し(ステップ5のYes)、系選択部16に対して系の切り替えを行なうよう指示をする。この指示を受けた系選択部17は、短距離系から長距離系への系切り替えを行なう(図4のステップ6、図5における遅延挿入終了時点)。
【0038】
その後、系選択部16から長距離系の信号が送出されるが、長距離系は短距離系より遅延が大きいため、系選択部16により既に送出した短距離系の信号と同じ信号を長距離系から送出する可能性がある。そこで、送出管理部18が信号の目印を確認し、既に送出した信号を再度送出しないようチェックを行う。
【0039】
(本実施の形態の切り替え動作の効果)
上記のような切り替え動作を行なうことにより、通常時の遅延を従来技術より小さくしながら、系切り替え時の信号の途切れによるアプリケーションへの影響を少なくすることができる。以下、この効果について図6、図7を参照して説明する。
【0040】
図6における(a)は、図3におけるインタフェース部11、12の後段の部分(a)での長距離系及び短距離系それぞれの信号を示し、図6の(b)は、図3における系選択部16の前段の部分(b)での長距離系及び短距離系それぞれの信号を示し、図6の(c)は、図3における系選択部16の後段の部分(c)の信号を示している。図6の(c)の上段は、メモリ152からの読み出し速度を故障前と同じにしたと仮定した場合を示し、(c)の下段は、本実施の形態の場合、つまり、メモリ152からの読み出し速度を故障前の読み出し速度より遅くする場合を示すものである。
【0041】
各図の横軸は時間軸を示し、右方向に進むほど時間的に過去になる。各図において、信号の間隔が広いほど信号の速度が遅いことを示している。なお、“9”の信号に付された印は、遅延の相違を分かり易くするために付したものである。
【0042】
図6の(a)に示すように、“12”の信号が短距離系伝送路から入力された後のT1の時点で、短距離系伝送路の故障が発生したものとする。この場合、T1以降の短距離系伝送路からの信号の入力は途絶える。
【0043】
図6の(b)に示すように、短距離系において、T1までに“9”の信号までメモリ152から読み出され、T1の時点で“10”〜“12”の3つの信号がメモリ152に蓄積されている。ここで、故障発生後も、メモリ152からの信号読み出し速度が、故障発生前の信号読み出し速度と同一であるとすると、(c)の上段に示すように、短距離系の“12”の信号が系選択部16から出力された後、切り替え後の長距離系の信号である“13”の信号が系選択部16から出力されるまでに、大きく間隔が開いてしまい、アプリケーションへの影響が大きくなる。
【0044】
一方、(c)の下段に示すように、故障発生後におけるメモリ152からの信号読み出し速度を、故障発生前の信号読み出し速度より遅くすることにより、信号間の間隔を狭くすることができる。これにより、切り替え時におけるアプリケーションへの影響を小さくすることができる。また、メモリ152に蓄積する信号量(つまり、遅延量X)を、この信号間の間隔がアプリケーションへの影響が出ない間隔になるよう決定すれば、切り替え時にアプリケーションへの影響を無くすことができる。
【0045】
なお、図6において、メモリ152が空になった直後に系の切り替えを行なう場合を点線の上向き矢印で示している。また、メモリ152に蓄積されていた信号のうちの最後の信号の次の長距離系の信号が系選択部16に到達する直前に切り替えを行なう場合を実線の上向き矢印で示している。切り替えはどちらのタイミングで行なってもよいが、実線の上向き矢印のタイミングで切り替えを行なうことにより、系選択部16から出力される信号が重複することは無くなるので、送出管理部18は不要となる。
【0046】
参考までに、図7に従来技術での信号を示す。図7の(c)の上段は、メモリ152に信号を蓄積せずに短距離系から長距離系への系切り替えを行なった場合の図3(c)部分での信号を示している。当該図に示すように、切り替えに伴って両系の遅延差分の時間間隔が空いてしまう。図7の(c)の下段は、短距離系と長距離系の遅延が同一になるように短距離系に遅延を挿入する従来の無瞬断切替における信号を示している。当該図に示すように、切り替えに伴って、信号間隔の増加等は発生しない。ただし、前述したように、この場合は、短距離系であっても常に長距離系と同じ遅延を有することとなり、通常状態でもアプリケーションへの影響が発生し得る。一方、図6の(c)下段に示したように、本実施の形態の方式を用いることにより、通常状態で遅延を抑制しながら、切り替え時にアプリケーションへの影響を無くすことが可能となる。
【0047】
(遅延量Xの決定方法)
次に、メモリ152に挿入しておく遅延量Xの決定方法について図5を参照して説明する。図5において、TSは遅延を挿入する所用時間である。本実施の形態では、短距離系のメモリ152に蓄積された最後の信号の次の長距離系の信号が系選択部16前段に到着する前までに遅延挿入を完了させる必要がある。従って、この所要時間TSは両経路の遅延差分(B-b)以下である。また、所要時間TSを両経路の遅延差分(B-b)より小さくすると、メモリ152に蓄積された最後の信号が読み出されてから、次の長距離系の信号が系選択部16前段に到着するまでに間が空く可能性があることから、本実施の形態では、所要時間をTS=B-bとする。
【0048】
図5における傾きSは、アプリケーションに影響を与えずに単位時間当たりに挿入できる予め決めておいた最大遅延量である。ここで、Sを1以上としてしまうと、遅延挿入開始からTS(=B-b)が経過した時点で、両系の遅延差より大きな遅延量を短距離系に挿入してしまうことになるので、S<1とする。
【0049】
Sが単位時間当たりに挿入できる最大遅延量であるから、 (B-b-X)/(B-b)≦Sを満たさなければならない。よって、X≧(1-S)(B-b)が成り立つ。Xが(1-S)(B-b)以上であれば、アプリケーションに影響を与えずに切替を行なうことができるが、初期遅延は小さいほどよいので、X=(1-S)(B-b)として決定する。
【0050】
(切り戻し動作)
次に、故障回復後の切り戻し動作について説明する。故障が回復した後、制御部17が、伝送装置10を監視する監視制御装置から系の切り戻し指示を受信すると(図4のステップ7)、伝送装置10は系の切り戻し処理に入る。なお、監視制御装置からの指示を受けてから切り戻し処理を行うことに代えて、故障検出部13が故障回復を検出したことを契機として伝送装置10が自律的に切り戻し動作を開始してもよい。
【0051】
ここで、系1と系2の遅延の大小関係が故障の前と同じであれば系1から系2に切り戻すことになるが、伝送路故障の影響で、回復した伝送路の距離が変化している場合があるため、故障が回復した時点では系1と系2の遅延の大小関係は不明である。そこで、まず、遅延差判定部14が両系の遅延を判定し(図4のステップ8)、制御部17にその情報を通知する。ここで、現在選択されている系である系1のほうが系2よりも短遅延になっていればこのままの状態で運用を続ける。
【0052】
故障前と同様に系2のほうが系1よりも短遅延であれば、現在選択されている系である系1から系2に切り戻す処理を行う(図4のステップ9)。この場合、まず系1における遅延量と系2における遅延量が等しくなるようにメモリ152からの信号読み出しタイミングを調整することにより系2の遅延量を調整する。そして、系2と系1の位相が揃った時点で系選択部16は系1から系2に系を切り戻す。この切り戻しも監視制御装置からの指示で行ってもよいし、制御部17が位相が揃ったことを検知した時点で自律的に切り戻しを行うこととしてもよい。
【0053】
切り戻しが終了した時点では、遅延が大きい系1に位相が揃っているので、系2の短遅延(b+X)になるように徐々に系2の遅延を削減する(図4のステップ10)。ここで、遅延を一気に削除してしまうとパケットがバースト出力されるかパケットの廃棄が発生し、アプリケーションに影響を与える恐れがあるが、遅延を徐々に削除することにより、バーストの発生やパケットの廃棄を防止でき、アプリケーションへの影響を少なくできる。
【0054】
より詳細には図5に示すように、所定の時間TEをかけて、メモリ152から信号を読み出す際に挿入していた遅延を徐々に削減する。図に示す例では、単位時間当たり削除する遅延量がSになるように、TE=(B-b-X)/Sとしている。なお、遅延を削除する場合は、時間に余裕があるので、上記TEより長い時間をかけて遅延を削除することとしてもよい。なお、図5は故障回復後も遅延差がB-bである場合を示している。
【0055】
[第2の実施の形態]
図8に本発明の第2の実施の形態である伝送装置30の構成を示す。第1の実施の形態は、本発明をATM伝送装置等のパケット伝送装置に適用した場合の実施の形態であったが、第2の実施の形態は本発明をSDH(Synchronous Digital Hierarchy)等のデジタル同期網に適用した場合の実施の形態である。
【0056】
第2に実施の形態では、図9に示すSTM−1(155.52Mbps)(基本フレーム)上のVC−4単位(仮想コンテナ単位)で信号間位相を調整し、無瞬断切替を実現している。なお、STM種別及びコンテナ種別はこの例に限られるものでなく、どのようなSTM種別及びコンテナ種別(コンカチネーション/バーチャルコンカチネーションコンテナを含む)でもよい。例えば、STM−1とVC−3×3、STM−1とVC−3−Xv(X=1〜3)、STM−4とVC−4−4c、STM−16とVC−4−16c等を用いることができる。また、SONET(Synchronous Optical Network)規格もSDHと同様に適用できる。
【0057】
図8に示す第2の実施の形態の伝送装置30の基本的な構成は第1の実施の形態の伝送装置10と同じであるが、SOH終端部20、21、22を含む点が異なる。SOH終端部20、21はSTM−1フレームからVC−4信号を抽出し、故障検出部13に挿入する機能を備えている。また、SOH終端部22は、送出管理部18から出力されるVC−4信号の遅延量に応じたAUポインタによるスタッフ制御を行う機能を備えている。第2の実施の形態の故障検出部13、遅延差判定部14、遅延差調整部15、系選択部16、制御部17、送出管理部18の機能は、第1の実施の形態のものと同様である。ただし、第2の実施の形態では位相を調整する対象の信号としてVC−4信号を用いている。また、第2の実施の形態では、信号間(VC−4信号間)の同一性判定のために、VC−4信号のオーバヘッドにおける空きバイトを使用して目印を付している。
【0058】
以下、第2の実施の形態の伝送装置30の動作を、第1の実施の形態の伝送装置10の動作と異なる点を中心に説明する。
【0059】
インタフェース部11(IF_a)とインタフェース部12(IF_b)はそれぞれ系1と系2の伝送路からSTM−1フレームを受信し、それをSOH終端部20、21に送る。各SOH終端部は、STM−1フレームからVC−4信号を抽出し、それを故障検出部13に渡す。故障検出部13は、パスオーバヘッドの所定バイトを監視することにより故障検出を行う。また、第1の実施の形態と同様に、インタフェース部11、12に備えた光断検出機能部からの通知に基づき故障を検出するように構成することもできる。
【0060】
遅延差判定部14はVC−4信号に付された目印により同一信号を識別し、同一信号間の遅延差を判定して遅延差の情報を制御部17に通知する。各系のVC−4信号はメモリに蓄積され、読み出され、系選択部16により選択された系のVC−4信号が送出管理部18を介してSOH制御部22に送られ、そこでスタッフ制御がなされ、STM−1フレームに載せられ、インタフェース部19(IF_c)からSTM−1フレームが次の装置に送られる。
【0061】
通常時には第1の実施の形態と同様に短距離系に初期遅延Xを挿入し、短距離系の故障時には、短距離系に対応するメモリ152からの信号読み出し時に遅延を徐々に挿入する。このとき、図10(b)に示すようにVC−4信号の間隔が広がるが、SOH終端部22においてSTM−1フレームに載せる際に、AUポインタで正スタッフ制御を行う。
【0062】
系を切り戻す際も第1の実施の形態と同様にメモリ152からの読み出し時に遅延を徐々に削除する。このとき、図10(c)に示すように、VC−4信号の間隔が狭まるが、SOH終端部20においてSTM−1フレームに載せる際に、AUポインタで負スタッフ制御を行う。
【0063】
上記のように正負のスタッフ制御を行うことによりVC−4信号間隔を調整するが、スタッフ挿入量にはSDH規定上の上限(H3バイトの3バイト分)があるため、遅延挿入/削除の速度にも制限がある。例えば、STM−1フレームでは、1秒間に最大±8000×3バイト時間分(±約1.23ms/秒)の遅延挿入/削除速度となる。そのため、上記の最大値以上の遅延挿入/削除の速さを要する場合には適用できないが、初期遅延Xを調整すれば、遅延挿入/削除の速さを調整できるので、本方式はほとんどの場合に適用可能である。
【0064】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。図11に第3の実施の形態における伝送装置40の構成を示す。この伝送装置40は、誤り訂正機能部34を含む。また、故障検出部33の機能は第1の実施の形態の故障検出部13の機能と異なる。それ以外の構成は、基本的に第1の実施の形態の伝送装置10と同様である。
【0065】
本実施の形態の故障検出部33は、故障の前兆を検知する機能を有している。故障の前兆を検出する機能としては、例えば信号誤り率測定機能がある。この場合、故障の前兆となる信号誤り率を予め決めておき、故障検出部33は、その信号誤り率になったときに故障の前兆であると判断する。また、インタフェース部11、12のそれぞれに光入力パワー測定機能を備え、入力される光のパワーが、予め決めた光入力パワー以下になったときに故障の前兆であると判定してもよい。以下、図12に示す遅延挿入時系列図を適宜参照して本実施の形態の伝送装置40における系切り替え動作について説明する。以下の例では、信号誤り率測定により故障の前兆を検出するものとする。
【0066】
通常状態では、短距離系を選択するが、初期遅延Xは挿入しない。故障検出部33が、短距離系の伝送路からの信号の誤り率が予め決めた誤り率以上になったことを検知すると、それを故障の前兆情報として制御部17に通知する。その通知を受けた制御部17は、メモリ152に遅延を叙々に挿入するよう遅延差調整部15に指示を送る。この指示を受けた遅延差調整部15は、図12に示すように、単位時間当たりS(アプリケーションに影響を与えない単位時間当たりに挿入できる最大遅延量)の遅延量を、遅延量が長距離系と短距離系の遅延差B-bになるまで短距離系に遅延を挿入する。
【0067】
そして、B-bになるまで遅延を挿入し終えた時点で、制御部17は系選択部16に対して系切り替えの指示を出し、系選択部16が短距離系から長距離系への系切り替えを行なう。なお、誤り率が増加した時点から、系切り替えまでの間に入力される誤りのある信号がメモリ152に蓄積されるのを回避するために、誤り訂正機能部34が、誤りのある信号の誤り訂正を行なう。
【0068】
ここで、故障の前兆が発生してから、実際に伝送路が断(誤り訂正不能)となるまでに遅延の挿入を終了する必要がある。そこで、本実施の形態では、故障の前兆が発生してから伝送路が断となるまでの予想時間TRを故障の前兆の種類(光パワー減衰、誤り率増加等)に応じて決めておく。そして、故障の前兆が発生した時点で、遅延挿入開始時点から遅延挿入終了時点までの時間(B-b)/SとTRとの比較を行い、(B-b)/S<TRであれば、図12に示したようにB-bになるまで遅延を挿入し、遅延挿入後に切り替えを行なう。
【0069】
(B-b)/S≧TRの場合は、遅延挿入開始時点からTRまで傾きSで遅延を挿入し、挿入後は、第1の実施の形態の方法と同様にメモリ152に蓄積された信号の読み出し速度を遅くして切り替えを行なう。もしくは、実際に断を検出してから第1の実施の形態の方法と同様に切り替えを行なう。
【0070】
また、B-b及びTRの変動が少ない場合は、(B-b-X)/S<TRとなるように、予め初期遅延Xを短距離系に挿入しておき、故障の前兆発生時には、挿入遅延量がB-bになるまで遅延を挿入し、遅延を挿入し終えてから切り替えを行なうこととしてもよい。
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に、遅延を抑制しながら無瞬断切替を行なうことが可能となる。
【0071】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来の無瞬断切替方式を説明するための図である。
【図2】伝送システムの一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図4】伝送装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】遅延挿入動作を時系列で示した図である。
【図6】第1の実施の形態の効果を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態の効果を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図9】SDHのフレーム構成の一例を示す図である。
【図10】スタッフ制御を説明するための図である。
【図11】第3の実施の形態の伝送装置の構成図である。
【図12】第3の実施の形態における遅延挿入動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
10、30、40 伝送装置
11、12、17、19 インタフェース部
13、33 故障検出部
14 遅延差判定部
15 遅延差調整部
16 系選択部
17 制御部
18 送出管理部
20、21、22 SOH終端部
34 誤り訂正機能部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段と
を備えることを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記所定の伝送路は、前記複数の伝送路の中で最も信号の遅延が小さい伝送路であることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさは、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている各信号を読み出す際の遅延の増加速度は、前記伝送装置から送出される信号を受信する装置におけるアプリケーションの動作に影響を与えない最大の速度として予め定めた速度であることを特徴とする請求項3に記載の伝送装置。
【請求項5】
前記事象が発生した後に前記記憶手段に記憶されている信号の読み出しを開始してから読み出しを終了するまでの時間は、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差の時間であり、当該遅延差の時間をかけて前記予め定めた速度で遅延を増加させた場合に、前記所定の伝送路の信号に挿入する遅延の大きさが当該遅延差になるように、前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさを決定することを特徴とする請求項4に記載の伝送装置。
【請求項6】
前記信号はデジタル同期網で使用される基本フレームに含まれる仮想コンテナ信号であり、
前記伝送装置は、複数の伝送路を介して受信した基本フレームの各々から仮想コンテナ信号を抽出する信号抽出手段と、
前記選択手段から出力される仮想コンテナ信号の遅延に応じてポインタによる正負スタッフ制御を行うスタッフ制御手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項7】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段と
を備えることを特徴とする伝送装置。
【請求項8】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置が実行する伝送方法であって、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加ステップと、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加ステップにより所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップと
を有することを特徴とする伝送方法。
【請求項9】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置における伝送方法であって、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップと
を有することを特徴とする伝送方法。
【請求項10】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置に、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手順と、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手順と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択する手順と
を実行させるプログラム。
【請求項11】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置に、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する手順と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択する手順と
を実行させるプログラム。
【請求項1】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手段と、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段と
を備えることを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記所定の伝送路は、前記複数の伝送路の中で最も信号の遅延が小さい伝送路であることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさは、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている各信号を読み出す際の遅延の増加速度は、前記伝送装置から送出される信号を受信する装置におけるアプリケーションの動作に影響を与えない最大の速度として予め定めた速度であることを特徴とする請求項3に記載の伝送装置。
【請求項5】
前記事象が発生した後に前記記憶手段に記憶されている信号の読み出しを開始してから読み出しを終了するまでの時間は、前記所定の伝送路の信号と前記他の伝送路の信号との間の遅延差の時間であり、当該遅延差の時間をかけて前記予め定めた速度で遅延を増加させた場合に、前記所定の伝送路の信号に挿入する遅延の大きさが当該遅延差になるように、前記遅延付加手段が付加する前記所定の遅延の大きさを決定することを特徴とする請求項4に記載の伝送装置。
【請求項6】
前記信号はデジタル同期網で使用される基本フレームに含まれる仮想コンテナ信号であり、
前記伝送装置は、複数の伝送路を介して受信した基本フレームの各々から仮想コンテナ信号を抽出する信号抽出手段と、
前記選択手段から出力される仮想コンテナ信号の遅延に応じてポインタによる正負スタッフ制御を行うスタッフ制御手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項7】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置であって、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手段と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御手段と
を備えることを特徴とする伝送装置。
【請求項8】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置が実行する伝送方法であって、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加ステップと、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加ステップにより所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップと
を有することを特徴とする伝送方法。
【請求項9】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置における伝送方法であって、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択ステップと、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択するよう前記選択手段に切り替えを指示する制御ステップと
を有することを特徴とする伝送方法。
【請求項10】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置に、
所定の伝送路から入力された信号を記憶手段に蓄積した後に読み出すことにより、当該信号に所定の遅延を付加する遅延付加手順と、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、前記遅延付加手段により所定の遅延が付加された信号を選択し、受信側の装置に送信する選択手順と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象が発生した場合に、当該事象が発生した時点で前記記憶手段に記憶されている各信号を、遅延を徐々に増加させながら読み出し、当該記憶手段に記憶された信号を全て読み出した後に、前記所定の伝送路の信号に替えて他の伝送路の信号を選択する手順と
を実行させるプログラム。
【請求項11】
送信側の伝送装置から、複数の信号を複数の伝送路を介して受信し、1つの伝送路の信号を選択して受信側の装置に送信する伝送装置に、
前記複数の伝送路から入力された複数の信号の中から、所定の伝送路から入力された信号を選択し、受信側の装置に送信する手順と、
前記所定の伝送路からの正常な信号の入力が途絶える事象の前兆となる事象が発生した場合に、当該前兆となる事象が発生した時点で前記所定の伝送路から入力される信号の遅延を徐々に増加させ始め、当該遅延が、他の所定の伝送路の信号の遅延と同一になった後に、前記所定の伝送路の信号に替えて前記他の所定の伝送路の信号を選択する手順と
を実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−48213(P2008−48213A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222624(P2006−222624)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]