説明

位置決め制御システム

【課題】従来のビルの清掃作業手法に比べ、清掃用ゴンドラを上下駆動できる装置を簡単に設置することができ、しかも、作業が終了すれば簡単に撤去することができ、さらに、清掃用作業員が効率的に清掃作業を行うことができ、そして、安全で、安価に提供できる位置決め制御システムを提供することを目的としている。
【解決手段】位置決め制御システムは、複数の支柱1と、該各支柱1に先端部が夫々取り付けられてなる索体8と、該各索体8が夫々巻回されてなる駆動輪7aと、該各駆動輪7aを夫々回転駆動させてなるモータ4と、該各モータ4の回転駆動を夫々制御してなるモータ制御装置3と、該各モータ制御装置3に前記各モータ4の回転駆動量を指令する制御装置2と、前記各駆動輪7aと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3を内部に設け、前記各索体8を少なくとも2本使用して上方向に支持されてなる作業装置16と、を備えてなるものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの清掃等で用いられる作業装置の位置決め制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルの清掃手法としては、ビルの施工時にビル屋上部分に清掃用に用いられる作業装置、つまり、清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを備えており、前記ウインチの上げ下げ駆動操作によって、吊り下げられた清掃用ゴンドラを上下させて、窓清掃等を行う清掃手法が知られている。そして、また、前記ウインチを設けていない建物の窓清掃を行う場合には、清掃用作業員に命綱をつけてビルの窓清掃を実施する手法が知られている。
【0003】
しかし、上述のようなビルの清掃手法では、ビルの施工後に清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを設置することができないため、必ずビルの施工前に、ビル屋上部分に清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを設置しなければならず、しかも設置費用が莫大であるにも関わらず窓清掃以外にはほとんど使用されていないという問題が生じていた。そして、また、清掃用作業員に命綱をつけてビルの窓清掃を行う清掃手法では、横移動が困難であるため、清掃用作業員の横方向に位置する窓を清掃するには、清掃用作業員は、一度地上に降りてから、ビル内に設置されている階段やエレベータ等を利用して屋上に上った後、清掃したい窓が位置する方向に移動して、再度、清掃用作業員は、屋上から命綱をつけてビルの屋上に最も近い窓から順に清掃していくという作業を行っていたため、作業効率が非常に悪く、しかも、命綱をつけているだけであるから、清掃用作業員の生命の危険を伴うという問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑み、ビルの施工後であっても、清掃用ゴンドラを上下駆動できる装置を簡単に設置することができ、しかも、作業が終了すれば簡単に撤去することができ、さらに、清掃用作業員が効率的に清掃作業を行うことができ、そして、安全で、安価に提供できるシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る位置決め制御システムによれば、複数の支柱1と、該各支柱1に先端部が夫々取り付けられてなる索体8と、該各索体8が夫々巻回されてなる駆動輪7aと、該各駆動輪7aを夫々回転駆動させてなるモータ4と、該各モータ4の回転駆動を夫々制御してなるモータ制御装置3と、該各モータ制御装置3に前記各モータ4の回転駆動量を指令する制御装置2と、前記各駆動輪7aと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3を内部に設け、前記各索体8を少なくとも2本使用して上方向に支持されてなる作業装置16と、を備えてなるものとしている。
【0006】
請求項2の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1の位置決め制御システムにおいて、前記各支柱1は、水平方向に配置されてなるものとしている。
【0007】
請求項3の発明に係る位置決め制御システムによれば、複数の支柱1と、該各支柱1に先端部が夫々取り付けられてなる索体8と、該各索体8が夫々巻回されてなる駆動輪7aと、該各駆動輪7aを夫々回転駆動させてなるモータ4と、該各モータ4の回転駆動を夫々制御してなるモータ制御装置3と、該各モータ制御装置3に前記各モータ4の回転駆動量を指令する制御装置2と、前記各駆動輪7aと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3を内部に設け、前記各索体8を少なくとも4本使用して上下方向に支持されてなる作業装置16と、を備えてなるものとしている。
【0008】
請求項4の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項3の位置決め制御システムにおいて、前記各支柱1は、正面視四角状の線状に夫々配置されてなるものとしている。
【0009】
請求項5の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記作業装置16を上方向に支持してなる前記各索体8が夫々取り付けられてなる各支柱1間を架け渡す第2の索体13と、前記支柱1間を移動可能に先端部が該第2の索体13に取り付けられてなる第3の索体14と、前記作業装置16内に設けられ、該第3の索体14の巻き取り及び繰り出しを行い、且つ、該作業装置16が急速に落下する場合に前記第3の索体14の弛みを瞬時に巻き取る巻き取り装置9と、をさらに備えてなるものとしている。
【0010】
請求項6の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項5に記載の位置決め制御システムにおいて、前記第2の索体13が架け渡されてなる各支柱1に夫々脆弱部1cを設けてなるものとしている。
【0011】
請求項7の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項5又は6に記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2と前記各モータ制御装置3を接続するために延長ケーブル12を用い、該延長ケーブル12の一端部を前記制御装置2に接続し、他端部を前記第2の索体13に取り付けられてなる第3の索体14を支点として左方向又は右方向のいずれか一方向に位置する第2の索体13に略螺旋状に巻き付け、さらに、第3の索体14にも略螺旋状に巻きつけて前記各モータ制御装置3に接続してなるものとしている。
【0012】
請求項8の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至7のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記各モータ4には、該各モータ4の回転駆動を夫々減速させる減速機6が連結されてなるものとしている。
【0013】
請求項9の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至8のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記各モータ4は、夫々エンコーダ4aとサーボモータ4bからなるものとしている。
【0014】
請求項10の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至9のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記各索体8、前記第2の索体13、又は、前記第3の索体14は、夫々ワイヤーロープからなるものとしている。
【0015】
請求項11の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至10のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2には、前記作業装置16の移動目標地点を設定することで、前記各モータ4で回転駆動する前記各駆動輪7aに夫々巻回されてなる索体8が前記各モータ4の回転駆動により前記各駆動輪7aから夫々繰り出される量を算出する索体繰り出し量算出手段203cと、前記各索体8繰り出し量を任意に設定した値を保持する手動索体繰り出し量保持手段203dと、前記索体繰り出し量算出手段203cによって算出された各索体8繰り出し量と前記手動索体繰り出し量保持手段203dによって保持された各索体8繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択するセレクト手段203eと、前記セレクト手段203eによって選択された前記各索体8繰り出し量から前記各モータ4の回転駆動量の指令データを生成する移動量解析手段204と、を備えてなるものとしている。
【0016】
請求項12の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至11のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2には、前記作業装置16の移動目標地点を設定することで、前記各モータ4で回転駆動する前記各駆動輪7aに夫々巻回されてなる索体8が前記各モータ4の回転駆動により前記各駆動輪7aから夫々繰り出される量を算出させる処理と、前記各索体8繰り出し量を任意に設定した値を保持させる処理と、前記算出させた各索体8繰り出し量と前記保持させた各索体8繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択させる処理と、該選択させた前記各索体8繰り出し量から前記各モータ4の回転駆動量の指令データを生成させる処理と、を実行させるためのプログラムを格納してなる記憶部201を備えてなるものとしている。
【0017】
請求項13の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至10のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記作業装置16に複数の従動輪7bをさらに設け、該各従動輪7bは、夫々帯体7cを介して前記各駆動輪7aの回転に連動して回転し、前記各駆動輪7aに夫々巻回されてなる前記索体8がさらに前記各従動輪7bに夫々巻回されてなり、前記作業装置16は前記各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8で支持され、該作業装置16を支持する索体8と前記作業装置16とが接触しない位置に前記各従動輪7bを前記作業装置16に夫々設けてなるものとしている。
【0018】
請求項14の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項13に記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2には、前記作業装置16の移動目標地点を設定することで、前記各モータ4で回転駆動する前記各駆動輪7aに夫々巻回され、さらに、前記各駆動輪7aの回転に連動して回転する前記各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8が、前記各モータ4の回転駆動により前記各駆動輪7a及び前記各従動輪7bから夫々繰り出される量を算出する索体繰り出し量算出手段203cと、前記各索体8繰り出し量を任意に設定した値を保持する手動索体繰り出し量保持手段203dと、前記索体繰り出し量算出手段203cによって算出された各索体8繰り出し量と前記手動索体繰り出し量保持手段203dによって保持された各索体8繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択するセレクト手段203eと、前記セレクト手段203eによって選択された前記各索体8繰り出し量から前記各モータ4の回転駆動量の指令データを生成する移動量解析手段204と、を備えてなるものとしている。
【0019】
請求項15の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項13又は請求項14に記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2には、前記各モータ4で回転駆動する前記各駆動輪7aに夫々巻回され、さらに、前記各駆動輪7aの回転に連動して
回転する前記各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8が、前記各モータ4の回転駆動により前記各駆動輪7a及び前記各従動輪7bから夫々繰り出される量を算出させる処理と、前記各索体8繰り出し量を任意に設定した値を保持させる処理と、前記算出させた各索体8繰り出し量と前記保持させた各索体8繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択させる処理と、該選択させた前記各索体8繰り出し量から前記各モータ4の回転駆動量の指令データを生成させる処理と、を実行させるためのプログラムを格納してなる記憶部201を備えてなるものとしている。
【0020】
請求項16の発明に係る位置決め制御システムによれば、上記請求項1乃至15のいずれかに記載の位置決め制御システムにおいて、前記制御装置2には、無線操作機器19からの命令を受信することができる受信部205を備えてなるものとしている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る位置決め制御システムによれば、制御装置2から各モータ制御装置3に前記各モータ4の回転駆動量が指令されると、その指令に応じて各モータ制御装置3がモータ4の回転駆動を夫々制御する。そして、その制御された各モータ4の回転駆動によって駆動輪7aが夫々回転することで、該各駆動輪7aに夫々巻回されてなる索体8が各駆動輪7aより夫々繰り出されたり、巻き取られたりすることとなる。さらに、作業装置16内には前記各駆動輪7aと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3が設けられ、前記各索体8の先端部は夫々支柱1に取り付けられてなる。そして、該各駆動輪7aに夫々巻回されてなる索体8を少なくとも2本使用し、作業装置16を上方向に支持してなる。そのため、各索体8の先端部が夫々支柱1に取り付けられ、その先端部以外は各駆動輪7aより夫々繰り出されたり、巻き取られたりすることになるから、それによって、作業装置16を様々な位置に移動させることができる。そのため、清掃用作業員が効率的に清掃作業を行うことができる。
【0022】
そして、少なくとも2本の索体8を使用して上方向に作業装置16を支持しているため、作業装置16の重力と索体8の張力とが釣り合い状態となり作業装置16の安定性を保つことができるため作業員の安全を確保することができる。また、少なくとも2本の索体8で作業装置16を上方向に支持するためには、各索体8が夫々取り付けられてなる支柱1を作業装置16より上方向に配置するだけでよく、モータ制御装置3や制御装置2は延長ケーブル等を使用して任意の位置に配置するこができる。さらに、作業装置16内には前記各駆動輪7aと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3が設けられているから、本発明のシステムを使用する場合は、ビル施工後であっても、簡単に設置することができ、しかも作業が終了すれば簡単に撤去することができる。そのため、ビルの施工時にビル屋上部分に清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを備えておかなくてもよいため、ビルの清掃コストを非常に低く抑えることができる。
【0023】
請求項2の発明に係る位置決め制御システムによれば、作業装置16を支持する各索体8の先端部が取り付けられてなる支柱1を水平方向に配置すればよいため、作業装置16の重力と各索体8の張力を釣り合わせるのが容易となり、作業装置16をより安定した状態に保つことができるため、安全性がさらに向上する。
【0024】
請求項3の発明に係る位置決め制御システムによれば、請求項1の発明と同様の効果が得られると共に、さらに、少なくとも4本の索体8を使用して上下方向に作業装置16を支持しているから、例え、少なくとも4本の索体8のうち一本の索体8が事故によって切れたとしても、少なくとも3本の索体8で作業装置16を支持することとなるため、安全性がさらに向上する。
【0025】
請求項4の発明に係る位置決め制御システムによれば、作業装置16を支持する各索体8の先端部が夫々取り付けられてなる支柱1を正面視四角状に配置すればよいため、作業装置16の重力と各索体8の張力を釣り合わせるのが容易となり、作業装置16をより安定した状態に保つことができるため、安全性がさらに向上する。
【0026】
請求項5の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記作業装置16を上方向に支持してなる前記各索体8が夫々取り付けられてなる各支柱1間を架け渡す第2の索体13に、第3の索体14の先端部が支柱1間を移動可能に取り付けられてなる。そして、該第3の索体14の巻き取り及び繰り出しを行い、且つ、前記作業装置16が急速に落下する場合に前記第3の索体14の弛みを瞬時に巻き取る巻き取り装置9が作業装置16内に設けられている。そのため、何らかの事故等で作業装置16が急速に落下する場合に、第3の索体14が作業装置16を支持することとなり、事故を防止することができるため安全性がさらに向上する。
【0027】
請求項6の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記第2の索体13が架け渡されてなる各支柱1に夫々脆弱部1cを設けてなるものとしているから、前記第2の索体13が切れることを防止することができる。つまり、何らかの事故等で作業装置16が急速に落下する場合に、支柱1間を架け渡している第2の索体13に大きな衝撃荷重が負荷され、その際、支柱1にも衝撃荷重が負荷されるが、支柱1には脆弱部1cを設けていることから、脆弱部1cが積極的に変形することにより第2の索体13の衝撃荷重が緩和されるため、第2の索体13が切れることを防止することができる。
【0028】
請求項7の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記制御装置2と前記各モータ制御装置3を接続するために延長ケーブル12を用い、該延長ケーブル12の一端部を前記制御装置2に接続し、他端部を前記第2の索体13に取り付けられてなる第3の索体14を支点として左方向又は右方向のいずれか一方向に位置する第2の索体13に略螺旋状に巻き付け、さらに、第3の索体14にも略螺旋状に巻きつけて前記各モータ制御装置3に接続してなるものとしている。そのため、延長ケーブル12が、作業装置16の移動に合わせて、前記第2の索体13及び前記第3の索体14に略螺旋状に巻き付きながら、前記第2の索体13及び第3の索体14を移動することとなるから、延長ケーブル12が作業装置16と絡み付いて、延長ケーブル12が切れたりするような事故を防止することができる。
【0029】
請求項8の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記各モータ4には、該各モータ4の回転駆動を夫々減速させる減速機6が連結されてなるものとしているから、回転速度が速いモータ4を使用する場合には、減速機6を使用し回転速度を遅くすることで、急速な回転により各索体8の断線等の事故が起こりにくくなるため、安全性がさらに向上する。
【0030】
請求項9の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記各モータ4は、夫々エンコーダ4aとサーボモータ4bからなるものとしているから、各索体8の繰り出し量を制御する各モータ4の回転数を安定させることができるため、さらに安全性が向上する。
【0031】
請求項10の発明に係る位置決め制御システムによれば、前記各索体8、前記第2の索体13、又は、前記第3の索体14は、夫々ワイヤーロープからなるものとしているから、ワイヤーロープは取り扱いが容易で引張強度があるため、本発明のシステムの取り扱い性と安全性がさらに向上する。
【0032】
請求項11の発明に係る位置決め制御システムによれば、本発明のシステムの使用者は、各索体8の繰り出し量を自由に設定することができ、さらに、各索体8の繰り出し量を自動で算出させたい場合には、作業装置16の移動目標地点を設定するだけで、本発明のシステムを使用することができるから、本発明のシステムの取り扱い性が容易となる。
【0033】
請求項12の発明に係る位置決め制御システムによれば、本発明のシステムの使用者は、記憶部201に格納されているプログラムに応じて、パソコン等を使用して、各索体8の繰り出し量を設定したり、作業装置16の移動目標地点を設定したりするだけで、本発明のシステムを使用することができるため、本発明のシステムの取り扱い性がさらに容易となる。
【0034】
請求項13の発明に係る位置決め制御システムによれば、作業装置16と従動輪7bに夫々巻回されている索体8が接触しない位置に、夫々従動輪7bを作業装置16に設けている。そのため、作業装置16の移動の度に各索体8が作業装置16に擦れてしまうようなことがなくなり、各索体8の寿命がさらに延びるため、安全性がさらに向上する。
【0035】
請求項14の発明に係る位置決め制御システムによれば、本発明のシステムの使用者は、各駆動輪7a及び各従動輪7bに夫々巻回されている索体8の繰り出し量を自由に設定することができ、さらに、各索体8の繰り出し量を自動で算出させたい場合には、作業装置16の移動目標地点を設定するだけで、本発明のシステムを使用することができるから、本発明のシステムの取り扱い性が容易となる。
【0036】
請求項15の発明に係る位置決め制御システムによれば、本発明のシステムの使用者は、記憶部201に格納されているプログラムに応じて、パソコン等を使用して、各駆動輪7a及び各従動輪7bに夫々巻回されている索体8の繰り出し量を設定したり、作業装置16の移動目標地点を設定したりするだけで、本発明のシステムを使用することができるため、本発明のシステムの取り扱い性がさらに容易となる。
【0037】
請求項16の発明に係る位置決め制御システムによれば、作業装置16に作業員が乗り込んでビルの清掃等の作業を行っていた場合に、無線操作機器19を使用して作業員が一人で本発明を使用することができ、さらに、作業員に緊急の事態が発生した場合に直ちにモータ4の制御を停止させる処理を行うことができるため、取り扱い性と安全性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明の一実施形態を表す斜視図であり、図2は図1のイ部分の拡大図、図3(a)は図1のロ部分の拡大図、図3(b)は、図3(a)の左側面図、図3(c)は図3(a)のA−A断面図である。図において、位置決め制御システムは、正面視略矩形状に4本の支柱1が設けられ、該支柱1夫々に、フック8aが取り付けられている。そして、該各フック8aの端部には夫々索体8が設けられ、作業装置16を両側面から支持している。さらに、作業装置16の上側に位置する2本の支柱1には、一方の支柱1に第2の索体13の一端部に設けられているフック13aが取り付けられ、そしてさらに、他方の支柱1にも第2の索体13の他端部に設けられているフック13aが取り付けられ、第2の索体13が緊張状態となっている。その緊張状態となっている第2の索体13にフック14aが移動可能に取り付けられ、該フック14aの端部に設けられている第3の索体14が、作業装置16内に設けられている巻き取り装置9まで弛んだ状態で伸びている。また、制御装置2と接続されている延長ケーブル12が、第3の索体14を支点として左方向に位置する第2の索体13及び第3の索体14に略螺旋状に巻き付けられ、作業装置16内に設けられている4つのモータ制御装置3に夫々接続されている。そして、制御装置2は、ノート型パソコン10とケーブル11を介して接続されている。さらに、各モータ制御装置3は、夫々モータ4と接続され、該各モータ4は夫々カップリング5を介して減速機6と連結され、該各減速機6は夫々駆動輪7aと連結されている。そして、該各駆動輪7aには、作業装置16の
側面部の枠体16aに設けられている各従動輪7bとの間に、夫々、帯体7cが架け渡されている。また、該各駆動輪7aには夫々索体8が巻回され、そしてその各索体8が夫々従動輪7bに巻回され、作業装置16を両側面から支持している。
【0039】
支柱1は、頭頂部に第2の索体13の端部に設けられているフック13aを取り付けるためのフック係止部1aが設けられ、側面部に索体8の端部に設けられているフック8aを取り付けるためのフック係止部1bが設けられている。さらに、作業装置16の上部側に設けられている支柱1には脆弱部1cが設けられている。この脆弱部1cは支柱1に小径部位を設けて形成されている。なお、図示はしないが、支柱1は横転しないよう、固定金具等で固定されている。また、本発明の一実施形態では、作業装置16の下部側に設けられている支柱1には脆弱部1cを設けていないが、脆弱部1cを設けてもよい。
【0040】
制御装置2は、寸法を参考までに例示すれば、幅220mm、高さ130mm、奥行110mmからなるもので、各モータ制御装置3に夫々接続されているモータ4の制御量を指令するものである。なお、図示はしないが、制御装置2は横転しないよう、固定金具等で固定されている。
【0041】
モータ制御装置3は、寸法を参考までに例示すれば、幅45mm、高さ130mm、奥行110mmからなるもので、延長ケーブル12を介して制御装置2と接続されている。そして、モータ制御装置3は、モータ4を駆動させるための指令を出すものである。さらに、モータ制御装置3は作業装置16内のコーナー部近辺に設けられ横転しないように溶接されている。なお、作業装置16内でモータ制御装置3が横転しないようにすればよいため、溶接でなくとも固定金具を用いて固定してもよい。
【0042】
モータ4は、エンコーダ4aとサーボモータ4bとからなるもので、ケーブル15を介してモータ制御装置3と接続されている。エンコーダ4aはサーボモータ4bの回転速度と位置を検出し、その検出情報をモータ制御装置3にフィードバックする。そしてサーボモータ4bは、最大で一秒間に1000回転程度できるものである。さらに、モータ4は、作業装置16内に設けられ、モータ制御装置3に隣接する位置に設けられており、横転しないように溶接されている。なお、作業装置16内でモータ4が横転しないようにすればよいため、溶接でなくとも固定金具を用いて固定してもよい。また、モータとしては、ステッピングモータ等であってもよいが、停止精度が高いエンコーダ付きのサーボモータが好ましい。
【0043】
カップリング5は、減速機6とモータ4を連結するための部材である。減速機6は、前記カップリング5によってモータ4と連結され、該モータ4に備えられているサーボモータ4bの回転速度をおよそ1/10程度減速させるものである。そのため、このような減速機6を用いて、回転速度を減速させることで、高トルクを得ることができる。さらに、減速機6は、作業装置16内に設けられ、且つ、モータ制御装置3に隣接する位置に設けられており、作業装置16内で減速機6が横転しないように溶接されている。なお、作業装置16内で減速機6が横転しないようにすればよいため、溶接でなくとも固定金具を用いて固定してもよい。
【0044】
駆動輪7aは、前記減速機6に軸方向に回転可能に取り付けられ、索体8が巻回されている。そして、従動輪7bは、作業装置16の側面部の枠体16aに溶接により固定され、帯体7cを介して駆動輪7aの回転に連動して回転するようになっている。さらに、駆動輪7aに巻回されている索体8が、従動輪7bにも巻回されている。これがために、前記サーボモータ4bの駆動により減速機6も駆動し、それによって駆動輪7aが軸方向に回転し、さらに、帯体7cを介して従動輪7bも回転する。そのため、駆動輪7a及び従動輪7bに巻回されている索体8が、駆動輪7a及び従動輪7bから繰り出されたり、巻きついたりすることとなる。なお、従動輪7bの固定方法としては、溶接に限らず、固定金具等を用いてもよい。ただし、従動輪7bは回転するため、もちろん回転を妨げないように固定する必要がある。また、駆動輪7a及び従動輪7bとしては、プーリーやスプロケットを使用することができる。ただし、その際、帯体7cとしては、プーリーを使用する際にはベルトを用いた方が好ましく、スプロケットを使用する際には、チェーンを用いた方が好ましい。
【0045】
巻き取り装置9は、寸法を参考までに例示すれば、幅45mm、高さ65mm、奥行110mmからなるもので、ローター9a、ギア9b、ガスジェネレータ9cから構成される。ローター9aは、緊急時以外はギア9bと非係合状態となるように図示しないシェアピン等の仮固定手段で仮止めされている。そして、緊急時、つまり、作業装置16に過大な加速度が作用すると、図示しない加速度センサの信号でガスジェネレータ9cが動作しガスが発生する。その発生したガス圧によってシェアピン等の仮固定手段が外れローター9aとギア9bがかみ合って、図3(b)に記載の矢印方向にローター9aが回転することによりギア9bが回転し、第3の索体14の弛みを瞬時に巻き取り緊張状態となる。通常動作時は、作業装置16の動きに合わせて、第3の索体14を巻き取り装置9内に巻き込む巻き込み力、または、第3の索体14を巻き取り装置9外に繰り出す張力が発生し、それに合わせてギア9bが回転するから第3の索体14が繰り出されたり巻き取られたりする。
【0046】
ここで、上記記載の緊急時を、具体的に図4を用いて説明すると、図4は作業装置16を両側面から支持している索体8が事故等により切れた状態を表す正面図である。作業装置16は通常、索体8が両側面から支持しているが、暴風や地震などの震災等によって各索体8が切れてしまった場合、作業装置16は支持を失って、急速に地面に落下することとなる。作業装置16が、そのような事故によって地面に落下しないよう、作業装置16より上部側に設けられている支柱1,1間を架け渡している第2の索体13にフック14aが移動可能に取り付けられ、そのフック14aの端部に設けられている第3の索体14が巻き取り装置9内まで伸びている。それがために、作業装置16が地面に落下するような場合、作業装置16に過大な加速度が作用することとなり、巻き取り装置9が上述した動作をすることにより第3の索体14の弛みが除去され緊張状態となる。そのため、第3の索体14が作業装置16を支持するため、作業装置16が地面に落下するのを防止することができる。また、落下の際、支柱1,1間を架け渡している第2の索体13に大きな衝撃荷重が負荷されるが、その際、支柱1,1にも大きな衝撃荷重が負荷される。そして、その負荷によって支柱1,1に設けられている脆弱部1cたる小径部位に応力が集中して、脆弱部1cが他の部位に先んじて変形するようになっている。そのため、支柱1,1に設けられている脆弱部1cが積極的に変形することにより衝撃荷重が緩和され、第2の索体13が切れることを防止することができる。なお、脆弱部1cとしては、小径部位とせず他の構成としてもよい。
【0047】
作業装置16は、ステンレス製等からなるもので、複数の索体8(図示では4本)で両側面から支持されている。そして、作業装置16内には、上述のように、複数のモータ制御装置3(図示では4つ)と、該各モータ制御装置3に夫々接続されているモータ4と、該各モータ4にカップリング5を介して夫々連結されている減速機6と、該各減速機6に夫々連結されている駆動輪7aと、帯体7cを介して該駆動輪7aの回転に連動して回転する従動輪7bが設けられている。さらに、各駆動輪7a及び各従動輪7bには、夫々索体8が巻回されているから、各駆動輪7a及び各従動輪7bから繰り出される各索体8の繰り出し量によって、作業装置16は、上下左右方向に移動することができる。また、作業装置16内には、上述のように、作業装置16が地面に急速に落下するのを防止する第3の索体14の巻き取り装置9が設けられている。なお、図示では、従動輪7bは作業装置16の側面部の枠体16aに設けられているが、作業装置16を支持している索体8と作業装置16とが接触しない位置であれば、作業装置16の任意の箇所に設けることができる。
【0048】
ここで、作業装置16内に設けられている複数のモータ制御装置3(図示では4つ)は、延長ケーブル12を介して制御装置2と接続されている。その接続にあたって、延長ケーブル12は、第3の索体14を支点として左方向に位置する第2の索体13及び第3の索体14に略螺旋状に巻きつき、複数のモータ制御装置3(図示では4つ)と接続するために、先端部が枝分かれしている。このように、延長ケーブル12が第3の索体14を支点として左方向に位置する第2の索体13及び第3の索体14に略螺旋状に巻きつくことによって、作業装置16が上下左右方向に移動したとしても、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合い切れてしまうような事故を防止することができる。以下にその理由を記載すると、作業装置16が左側、つまり、制御装置2の傍に設けられている支柱1側に移動した場合、フック14aも制御装置2の傍に設けられている支柱1側に第2の索体13を介して移動することとなる。その移動の際、フック14aの側面部が第2の索体13に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12に接触し、その接触によって、フック14aの押圧力が第2の索体13に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12に作用することとなる。それがために、その押圧力によって、第2の索体13に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12が、第2の索体13に略螺旋状に巻きついたまま制御装置2側に設けられている支柱1側に移動することとなる。そのため、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合うことはない。
【0049】
また、作業装置16が右側、つまり、制御装置2の傍に設けられている支柱1側とは反対方向に位置する支柱1側に移動した場合、フック14aも制御装置2の傍に設けられている支柱1側とは反対方向に位置する支柱1側に第2の索体13を介して移動することとなる。それがために、その移動によって、第3の索体14に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12に張力が働き、制御装置2から伸びている延長ケーブル12が、その張力によって作業装置16の移動前よりもさらに第2の索体13に略螺旋状に巻きついていくこととなる。そのため、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合うことはない。
【0050】
また、作業装置16が下側に移動した場合、作業装置16が右側に移動するのと同様、その移動によって、第3の索体14に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12に張力が働き、制御装置2から伸びている延長ケーブル12が、その張力によって作業装置16の移動前よりもさらに第3の索体14に略螺旋状に巻きついていくこととなる。そのため、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合うことはない。
【0051】
また、作業装置16が上側に移動した場合、その移動の際、作業装置16内に設けられている巻き取り装置9の上面部と第3の索体14に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12とが接触することとなる。そして、その接触によって、巻き取り装置9の上面部の押圧力が第3の索体14に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12に作用することとなる。それがために、その押圧力によって、第3の索体14に略螺旋状に巻きついている延長ケーブル12が、第3の索体14に略螺旋状に巻きついたままフック14a側に移動することとなる。そのため、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合うことはない。
【0052】
以上のような理由により、作業装置16が上下左右方向に移動したとしても、延長ケーブル12が作業装置16と絡み合い切れてしまうというようなことがない。なお、制御装置2を図1に示した方向とは逆方向に設けても、もちろん同様の効果を得ることができる。また、作業装置16の移動に対応できるように、延長ケーブル12は十分な長さを確保しておく必要がある。さらに、各索体8,第2の索体13,又は、第3の索体14としては、取り扱いが容易で引張強度が高いワイヤーロープが好ましい。
【0053】
次に、さらに詳しく、図5〜図7を用いて、本発明の一実施形態の制御方法を説明すると、図5は本発明の一実施形態を表すブロック図、図6は本発明に係る位置制御指令部のブロック図、図7は本発明に係るモータ制御装置のブロック図である。制御装置2は、CPU200、記憶部201、I/F(インターフェース)202、位置制御指令部203、移動量解析部204からなるもので、CPU200によって記憶部201内のROM(リードオンリメモリ)201aに格納されている各モータ4制御用のプログラムが実行され、そのプログラム内容が、I/F(インターフェース)202を介してノート型パソコン10に出力され、ノート型パソコン10のモニターに表示される。そして、該モニターに表示されたプログラム内容に応じて、ノート型パソコン10を用いて、例えば作業員が、各モータ4の制御処理を実行すると、該各モータ4の制御情報がI/F(インターフェース)202を介して記憶部201内のRAM(ランダムアクセスメモリ)201bに格納される。そして、CPU200がRAM(ランダムアクセスメモリ)201bに格納されている各モータ4の制御情報を読み出し、その制御情報を解析したうえで、各モータ4の制御を手動で設定するか否かのデータ203aとモータ制御指令データ203bを、各位置制御指令部203に出力する。
【0054】
位置制御指令部203は、索体繰り出し量算出部203c、手動索体繰り出し量保持部203d、セレクト部203eからなるもので、索体繰り出し量算出部203cはCPU200から出力されたモータ制御指令データ203bから、駆動輪7a及び従動輪7bに巻回されてなる索体8の繰り出し量を算出し、その繰り出し量を、セレクト部203eに出力する。
【0055】
手動索体繰り出し量保持部203dは、モータ制御指令データ203bを保持し、セレクト部203eに出力する。そして、セレクト部203eでは、モータ4の制御を手動で設定するか否かのデータ203aによって、索体繰り出し量算出部203cで算出されて出力されたデータか、手動索体繰り出し量保持部203dから出力されたデータか否かを選択し、移動量解析部204に出力する。
【0056】
移動量解析部204は、前記各位置制御指令部203から出力されたデータをもとに各モータ4の制御量を算出し、その各モータ4の制御量を各モータ4の制御データとして、各モータ制御装置3に出力する。そして、直線補間等の補間処理が必要な場合は、直線補間するように各モータ4の制御を調整する制御データを、モータ制御装置3に出力する。また、移動量解析部204に、非常停止信号204aが、ノート型パソコン10からI/F(インターフェース)202を介してCPU200から送られた場合には、モータ4の移動データをモータ制御装置3に送出するのを停止する。それがために、モータ4の駆動が停止することとなり、駆動輪7a及び従動輪7bに巻回されてなる索体8が繰り出されなくなるから作業装置16が停止することとなる。
【0057】
モータ制御装置3は、図7に示すように、位置偏差カウンタ300、位置制御部301、加減算器302、速度制御部303、加減速器304、電流制御部305、アンプ306とを有している。位置偏差カウンタ300は、前記移動量解析部204から出力されたモータ4の制御データを加算すると共に、エンコーダ4aからフィードバックされるサーボモータ4bの位置情報である位置フィードバック量を減算して位置偏差を求め、位置制御部301に出力する。
【0058】
位置制御部301は、算出した位置偏差に位置ループゲインを乗じて速度指令を求め加減算器302に出力する。そして、加減算器302は、前記速度指令からエンコーダ4aからフィードバックされるサーボモータ4bの回転速度情報である速度フィードバック量を減じて速度偏差を求め、速度制御部303に出力する。
【0059】
速度制御部303は、算出した速度偏差を用いてPID制御(比例積分微分制御)等の速度ループ制御を行い、トルク指令(電流指令)を求め、加減速器304に出力する。そして、加減速器304は、前記トルク指令を加算すると共に、アンプ306に設けられた電流検出器からフィードバックされてくる電流フィードバック量を減じて電流偏差を求め、電流制御部305で電流ループ制御を行い、アンプ306を介してサーボモータ4bを駆動制御する。
【0060】
サーボモータ4bは、上記のような制御により安定した回転駆動を行うことができ、そして、サーボモータ4bにはカップリング5を介して減速機6が連結されている。そして、さらに、減速機6には駆動輪7aが軸方向に回転可能に取り付けられ、帯体7cが各駆動輪7aと各従動輪7b間に夫々架け渡されている。そのため、サーボモータ4bが回転すると、減速機6と駆動輪7aがともに回転し、さらに、帯体7cを介して従動輪7bが回転する。それがために、駆動輪7a及び従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8が、駆動輪7a及び従動輪7bの回転に応じて支柱1側に繰り出されたり、また、駆動輪7a及び従動輪7bに巻きついたりすることとなる。
【0061】
次に、さらに、図8を用いて本発明に係るモータ4の制御プログラムについて説明すると、図8は本発明に係るモータ4の制御プログラムについて概略的に示したフローチャートである。ステップS1では、モータ4の制御を非常停止するための非常停止信号が設定されたか否かの処理を実行し、非常停止信号が設定された場合は処理を終了させ、非常停止信号が設定されなかった場合は、ステップS2へ進む処理を実行する。この非常停止信号がCPU200から非常停止信号204aとして出力され移動量解析部204に入力され、各モータ4の制御を非常停止することとなる。
【0062】
ステップS2では、各モータ4の制御が手動設定か否かの処理を実行し、手動操作で設定する場合には、ステップS6に進む処理を実行し、そうでない場合にはステップS3に進む処理を実行する。この信号が、CPU200から各モータ4の制御を手動で設定するか否かのデータ203aとして出力され、各位置制御指令部203に入力される。
【0063】
ステップS3では、各モータ4の制御を自動で設定するため、先ず、作業装置16を移動させるための移動地点等の初期値が設定されたか否かの処理を実行し、初期値が設定されていなければ、ステップS4に進む処理を実行し、初期値が設定されていれば、ステップS5に進む処理を実行する。ステップS4では、作業装置16を移動させるための移動地点等の初期値を設定し、初期値の設定が終了すると、ステップS3に戻る処理を実行する。この初期値の値が、I/F(インターフェース)202を介して記憶部201内のRAM(ランダムアクセスメモリ)201bに格納される。
【0064】
ステップS5では、作業装置16が現在いる地点から、移動させたい目標地点を指定させる処理を実行し、ステップS7に進む処理を実行する。つまり、ステップS5の処理を具体的に説明すると、作業装置16の移動地点は上下左右方向、すなわち、2次元の移動しか行わないことから、横方向をX軸、縦方向をY軸とすると、移動地点はすべてX軸、Y軸の座標位置で表せることとなる。そのため、移動させたい目標地点を指定させる処理を実行するとは、作業装置16の移動目標地点におけるX軸、Y軸の座標位置を、作業員にノート型パソコン10を使用させて、移動させたい目標地点の座標位置を入力させる処理を実行することである。このノート型パソコン10を使用して入力された座標位置のデータと、あらかじめ記憶部201内のRAM(ランダムアクセスメモリ)201bに格納された初期値データが、CPU200からモータ制御指令データ203bとして各位置制御指令部203に入力され、索体繰り出し量算出部203cでそのデータをもとに、索体8の繰り出し量を算出し、セレクト部203eを介して移動量解析部204に出力され、各モータ4の制御が実行される。なお、モータ制御指令データ203bは、手動索体繰り出し量保持部203dにも入力されているが、セレクト部203eで、移動量解析部204に出力されるデータが選択されるため、何ら問題はない。
【0065】
ステップS6では、各モータ4の制御を手動で設定するため、ノート型パソコン10を使用して、作業装置16の両側面を支持している各索体8の繰り出し量を入力させる処理を実行し、ステップS7に進む処理を実行する。このノート型パソコン10を使用して入力された各索体8の繰り出し量データが、CPU200からモータ制御指令データ203bとして各位置制御指令部203内の手動索体繰り出し量保持部203dに入力され、セレクト部203eを介して移動量解析部204に出力され、各モータ4の制御が実行される。なお、座標位置のデータと各索体8の繰り出し量データとは異なるデータであるが、索体繰り出し量算出部203cにも同様のデータが入力されている。なぜならば、セレクト部203eで移動量解析部204に出力されるデータが選択されているためであり、座標位置のデータと異なるデータが入力された場合は、索体繰り出し量算出部203cで、例えば、索体繰り出し量を算出する処理を停止させ、不定値(‘0‘でも‘1‘でもないデータ)を避けるため、例えば「0」データをセレクト部203eに出力させておく処理をすればよいため、何ら問題はない。
【0066】
ステップS7では、プログラムの処理を終了するか否かの処理を実行し、プログラムの処理を終了する場合は処理を終了させ、処理を終了させない場合は、ステップS1に戻って再び処理を実行する。
【0067】
次に、図9を用いて、本発明の一使用例について説明すると、図9は本発明の位置決め制御システムをビルの窓清掃に使用した場合の説明図である。まず、本発明を使用するための準備として、図9(a)に示す配置状態とする。具体的には、図9(a)に示すように、ビル17の正面視四角状のコーナー部に夫々支柱1が載置されている。そして、ビル17の屋上に設けられている支柱1,1は、フック係止部1a,1a間に第2の索体13が掛け渡されている。そして、制御装置2は、ノート型パソコン10とケーブル11を介して接続されている。なお、各支柱1、又、制御装置2は、強風や振動によって横転しないように図示はしないが固定金具等で固定されている。また、本発明の使用例として、制御装置2とノート型パソコン10を地上に載置した例を示しているが、屋上に載置してもよい。
【0068】
次に、上述した図9(a)に示す配置状態としたのち、図9(b)に示すような配置状態とする。具体的には、図9(b)に示すように、制御装置2に最も近いビル17のコーナー部に作業装置16が載置され、作業装置16内には、図1及び図2に示すように、複数のモータ制御装置3(図示では4つ)と、該各モータ制御装置3に夫々接続されているモータ4と、該各モータ4にカップリング5を介して夫々連結されている減速機6と、該各減速機6に夫々連結されている駆動輪7aと、作業装置16の側面部の枠体16aに従動輪7bを設け、帯体7cが該各駆動輪7aと各従動輪7b間に夫々架け渡されている。さらに、各駆動輪7aと各従動輪7bには、夫々索体8が巻回されている。そして、図1及び図3に示すように巻き取り装置9が設けられている。この作業装置16内に設けられている各駆動輪7a及び各従動輪7bに夫々巻回されている索体8で作業装置16を両側面から支持するように、各モータ3の回転駆動により、各駆動輪7a及び各従動輪7bから夫々索体8が適当量繰り出され、その適当量繰り出された各索体8の先端部に夫々設けられているフック8aが各支柱1に夫々設けられているフック係止部1bに取り付けられている。さらに、作業装置16内に設けられている巻き取り装置9からは、作業装置16の緊急時に作業装置16を支持するために、第3の索体14が作業員の手によって引き出され、第3の索体14の先端部に設けられているフック14aが、支柱1,1間を掛け渡している第2の索体13に移動可能に取り付けられている。また、制御装置2と作業装置16内に設けられている各モータ制御装置3を接続するに際し、延長ケーブル12は、一端部が制御装置2に接続され、他端部が第3の索体13を支点として左方向に位置する第2の索体13及び第3の索体14に略螺旋状に巻きついて、各モータ制御装置3に接続されている。なお、各モータ4の回転駆動は、ノート型パソコン10を用いて、各モータ4の制御を手動設定にし、各駆動輪7a及び各従動輪7bに巻回されてなる各索体8の繰り出し量を適当量入力すればよい。また、ノート型パソコン10を用いずとも、もちろん作業員が手で各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8を繰り出してもよい。なお、作業員が各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8を繰り出すのは、図2より明らかなように、各索体8は、駆動輪7aに夫々巻回されてから、各従動輪7bに巻回されているためである。
【0069】
そして、次に、図9(b)に示すような配置状態としたのち、図9(c)に示すような状態とする。具体的には、図9(c)に示すように、作業装置16を両側面から支持している各索体8を各モータ4の回転駆動により巻張する。なお、各モータ4の回転駆動は、ノート型パソコン10を用いて、各モータ4の制御を手動設定にし、各駆動輪7a及び各従動輪7bに巻回されてなる各索体8の繰り出し量を設定することで、各索体8を巻張すればよい。
【0070】
そして、次に、図9(c)の状態とした後、図9(d)の状態とし、両側面を各索体8に支持された作業装置16にビルの清掃用作業員18が乗り込み、ビル17の清掃を行う。具体的には、図9(c)の状態とした後、図示はしないがビルの清掃用作業員18が作業装置16に乗り込み、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)が、作業装置16を窓W00に移動させるために、ノート型パソコン10のモニターに表示された各モータ4の制御プログラム内容に応じて処理内容を入力する。すると、その制御内容に応じて、各索体8の繰り出し量が索体繰り出し量算出部203cで算出される各索体8の繰り出し量か、又は、手動索体繰り出し量保持部203dによる各索体8の繰り出し量かを決定する。そして、その繰り出し量に応じて移動量解析部204及び各モータ制御装置3で夫々モータ4を制御し、その各モータ4の制御により、各駆動輪7a及び各従動輪7bに巻回されてなる各索体8が繰り出されたり、巻き取られたりしながら、作業装置16が窓W00に移動することとなり図9(d)の状態となる。その後の使用は、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)がノート型パソコン10のモニターに表示されたモータ4の制御プログラム内容に応じて処理内容を入力すれば、作業装置16は、窓W00〜窓W23の窓に自由に移動させることができ、どの窓でもビルの清掃用作業員18は自由に窓を清掃することができる。
【0071】
次に、さらに詳しく、図10及び図11を用いて、索体8の繰り出し量を算出する索体繰り出し量算出部203cの算出方法と、各モータ4の制御プログラムを実行して、作業装置16を窓W00〜窓W23に移動させるための方法について説明すると、図10は本発明に係わる索体繰り出し量算出部の説明図であり、図11は、作業装置16を目的地に移動させるためのフローチャートである。
【0072】
図10に示すように、横軸をX軸、縦軸をY軸とし、作業装置16が窓W00にいる地点を原点位置とし、その原点位置より左側に位置する支柱1までの距離をW1とし、原点位置より下側に位置する支柱1までの距離をH1とし、原点位置より左側に位置する支柱1から原点位置より右側に位置する支柱1までの距離をWとし、原点位置より下側に位置する支柱1から原点位置より上側に位置する支柱1までの距離をHとしている。また、窓W21の座標位置として、X座標をX1,Y座標をY1としている。
【0073】
上述のような関係から、原点位置における各索体8の繰り出し量をLA,LB,LC,LDとすると、ピタゴラスの定理より以下のように算出することができる。
【0074】
【数1】

【0075】
さらに、窓W21の位置における各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDもピタゴラスの定理より算出することができる。
【0076】
【数2】

【0077】
数式1、数式2を使用して、作業装置16を原点位置から、窓W21まで移動させる方法を述べると、数式1より原点位置での各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDが算出され、数式2より窓W21での各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDが算出される。すると、原点位置から窓W21まで作業装置16を移動させようとした場合、数式1で算出した各索体8の繰り出し量と数式2で算出した各索体8の繰り出し量の差分をとれば、各索体8の繰り出し量が算出されることとなる。しかして、数式1、数式2より算出された各索体8の繰り出し量が移動量解析部204に出力される。そして、図10より明らかなように原点位置から窓W21までの作業装置16の移動は直線移動であるから、直線補間が必要であるため、移動量解析部204で、直線補間するように各モータ4の制御を調整する制御データを作成し、モータ制御装置3に出力させることで、作業装置16が原点位置から窓W21まで移動することとなる。尚、数式1、2より算出された各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDは、図10より、明らかなように、正確な値ではないものの、作業装置16を寸分の狂いのない位置に移動させるような場所で使用するのではなく、ビルの清掃用など、多少の誤差があっても問題のないところで使用するため、正確な値でなくとも特段問題はない。また、W,W1,H,H1の値についてはビル清掃であれば、ビルの設計図面をみれば簡単に分かるため、その値を設定すればよい。そして、X1,Y1の値については、原点位置を設定した後、ビルの設計図面を参照して設定すればよい。
【0078】
上記説明では、原点位置を、窓W00に設定したが、どの位置を原点位置と設定してもよい。ただし、作業装置16に乗り込むビルの清掃用作業員18の身長が常に一定ではないことから、窓W00〜W23をビルの清掃用作業員18が清掃しやすい位置に作業装置16の位置を調整するためにも、原点位置は、最初の清掃作業位置である窓W00に設定するのが好ましい。最初の清掃作業位置である窓W00を原点とすれば、ビルの清掃用作業員18が清掃しやすい、窓W01〜W23の座標位置をビルの設計図面を参照しながら設定することができるため、より正確な位置に作業装置16を移動させることができるからである。また、各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDの算出方法として、上記説明では、ピタゴラスの定理により算出したが、算出方法はピタゴラスの定理に限らず、各索体8の繰り出し量が算出できる方法であればどのような算出方法であってもよい。
【0079】
より具体的に、図11を用いて、作業装置16を目的地に移動させるための説明をすると、ステップS10では、作業装置16を原点位置まで移動させる処理を行い、ステップS11に進む。原点位置を窓W00とした場合、まず、図9(c)の状態とした後、ビルの清掃用作業員18が作業装置16に乗り込み、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)が、作業装置16を窓W00に移動させるために、各モータ4の制御を手動設定にするように設定し、その後、各索体8の繰り出し量を入力して、作業装置16を窓W00に移動させる。そして、清掃用作業員18が窓W00を清掃しやすい位置まで移動し終わったら、各索体8の繰り出し量を入力するのを停止し、この位置を原点とする。
【0080】
ステップS11では、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)が、各モータ4の制御を自動設定するように設定し、原点位置を設定した後、その原点位置からの各窓W01〜W23の座標位置、そして、W,W1,H,H1の値を設定すれば、ステップS12に進む。WとHの値は、Wはビルの幅、Hはビルの高さであるから、ビルの設計図面を参照してその値を入力する。そして、W1とH1は、作業装置16を窓W00まで移動させたときの各索体8の繰り出し量LA,LB,LC,LDは、手動で設定しているため明らかであるから、その値を数式1に代入して逆算すれば容易に求めることができる。もちろん、算出した値と実際のビルの設計図面を参照して間違いがないか確認するのが好ましい。そして、W1とH1の値とビルの設計図面を参照し、窓W01〜W23の座標位置を例えば、W01=(10,0),W02=(20,0),W03=(30,0),・
・・・・・,W23=(20,30)というように入力する。
【0081】
ステップS12では、目標位置が設定されたか否かを確認し、目標位置が設定されれば
ステップS13に進み、設定されていなければステップS14へ進む。具体的には、まず目標位置として、例えば窓W00から窓W03まで作業装置16を移動させたい場合には
、あらかじめ設定しておいたW03=(30,0)の値を、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)が入力すれば、図10で詳述した算出手段により各索体8の繰り出し量が算出される。もちろん、ステップS11において初期値を入力しているため、入力方法として、W03=(30,0)と入力するのではなく、例えばW03とだけ入力しておくか、もしくは移動したい窓W00〜W23をノート型パソコン10のモニターに一覧表示させ、選択できるようにしておけば効率的に入力することができる。
【0082】
ステップS13では、目標位置、例えばW03に作業装置16が移動すれば、ステップS12に戻って再度処理を行う。そして、ステップS14では、目標位置が設定されてないため、現在位置、例えば窓W00に作業装置16が停止した状態で、次のステップS15に進む。
【0083】
ステップS15では、ビル17の窓W00〜W23を清掃する一連の作業が終了したか否か、つまり、処理を終了するか否かを確認し、処理を終了しなければステップS12に戻って再度処理を行い、処理を終了する場合はステップS16に進む。
【0084】
ステップS16では、処理を終了させ、ビルの清掃用作業員18を乗せた作業装置16を地上に降ろすための処理を行い、作業装置16を目的地に移動させるための処理を終了する。具体的には、ノート型パソコン10を操作する作業員(図示せず)が、作業装置16を地上に移動させるために、各モータ4の制御を手動設定するように設定し、その後、各索体8の繰り出し量を入力して、作業装置16を地上に移動させる。そして、地上に作業装置16が移動すれば、ビルの清掃用作業員18は作業装置16より降り、後は図9(a)〜図9(c)とは逆の手順をふめば、本発明の位置決め制御システムを構成する装置をビル17より撤収することができる。なお、ステップS16の処理は、各モータ4の制御を手動設定しなくとも、あらかじめ、作業装置16を地上に降ろすポイントの座標位置を入力しておけば、自動設定で作業装置16を地上に降ろすことも可能である。
【0085】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、制御装置2から各モータ制御装置3に前記各モータ4の回転駆動量が指令されると、その指令に応じて各モータ制御装置3がモータ4の回転駆動を夫々制御する。そして、その制御された各モータ4の回転駆動によって駆動輪7aが夫々回転し、各駆動輪7aの回転と連動して帯体7cを夫々介して各従動輪7bが回転するから、該各駆動輪7a及び各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8が各駆動輪7a及び各従動輪7bより夫々繰り出されたり、巻き取られたりすることとなる。さらに、作業装置16内には前記各駆動輪7aと、前記各従動輪7bと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3が設けられ、前記各索体8の先端部に設けられているフック8aが夫々支柱1に取り付けられてなる。そして、該各従動輪7bに夫々巻回されてなる索体8を4本使用し、作業装置16を上下方向に支持してなる。そのため、各索体8の先端部に設けられているフック8aが夫々支柱1に取り付けられ、その先端部以外は各駆動輪7a及び各従動輪7bより夫々繰り出されたり、巻き取られたりすることになるから、作業装置16を様々な位置に移動させることができることとなり、清掃用作業員が効率的に清掃作業を行うことができる。また、4本の索体8を使用して上下方向に作業装置16を支持しているため、作業装置16の安定性を保つことができるから作業員の安全を確保することができる。なお、本発明の一実施形態では、作業装置16の側面部の枠体16aに夫々従動輪7bを設けたが、各従動輪7bを設けずとも各駆動輪7aのみでもよい。その際は、各駆動輪7aに夫々巻回されている索体8で作業装置16を支持すればよい。また、本発明の一実施形態では、索体8の先端部にフック8aを設けたが、フック8aを設けずともよい。
【0086】
また、本発明の一実施形態では、作業装置16の位置決めを行うにあたって、索体8を4本使用して説明したが、2本で行ってもよい。その際、ビル17の屋上に載置された支柱1に取り付けられてなるフック8aの端部に設けられている索体8を使用するのが好ましい。その場合、2本の索体8を使用して上方向に作業装置16を支持しているため、作業装置16の重力と索体8の張力とが釣り合い状態となり作業装置16の安定性を保つことができるため作業員の安全を確保することができる。なお、上方向に作業装置16を支持する索体8として、2本に限定されず複数本の索体8を使用すれば作業装置16の安定性をより保つことができる。
【0087】
また、4本の索体8を使用して上下方向に作業装置16を支持するのとは別の実施形態を図12に示すと、図12は、8本の索体8を使用して上下方向に作業装置16を支持した場合の作業装置16の斜視図である。図12のように8本の索体8を使用して、上下方向に作業装置16を支持すれば、突風が吹く高層ビルでの作業であっても作業装置16が突風によって横に傾くようなことがない。そして、さらに、8本の索体8のうち一本の索体8が事故等によって切れたとしても、7本の索体8で作業装置16を支持することとなるため、安全性がさらに向上する。それがために、作業装置16の安定性を保つことができるため作業員の安全を確保することができる。なお、索体8を使用し上下方向に作業装置16を支持する索体8の本数は、4本又は8本に限定されず、複数本索体8を使用してもよい。なお、図12では、複数の従動輪7b(図示では8個)を用いているが、従動輪7bを用いずとも、各駆動輪7aに夫々巻回されている索体8で作業装置16を支持することもできる。
【0088】
また、4本の索体8で作業装置16を上下方向に支持するためには、各索体8が夫々取り付けられてなる支柱1を作業装置16より上下方向に配置するだけでよく、モータ制御装置3や制御装置2は延長ケーブル等を使用して任意の位置に配置するこができる。さらに、作業装置16内には前記各駆動輪7aと、前記各従動輪7bと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3が設けられているから、本発明のシステムを使用する場合は、ビル施工後であっても、簡単に設置することができ、しかも作業が終了すれば簡単に撤去することができる。そのため、ビルの施工時にビル屋上部分に清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを備えておかなくてもよいため、ビルの清掃コストを非常に低く抑えることができる。なお、索体8の数量は4本に限定されず、複数本の索体8を使用してもよい。そのため、その数量に応じた駆動輪7a、従動輪7b、モータ4、モータ制御装置3が必要である。
【0089】
また、2本の索体8で作業装置16を上方向に支持するためには、各索体8が夫々取り付けられてなる支柱1を作業装置16より上方向に配置するだけでよく、モータ制御装置3や制御装置2は延長ケーブル等を使用して任意の位置に配置するこができる。さらに、作業装置16内には前記各駆動輪7aと、前記各従動輪7bと、前記各モータ4と、前記各モータ制御装置3が設けられているから、本発明のシステムを使用する場合は、ビル施工後であっても、簡単に設置することができ、しかも作業が終了すれば簡単に撤去することができる。そのため、ビルの施工時にビル屋上部分に清掃用ゴンドラの上下駆動用のウインチを備えておかなくてもよいため、ビルの清掃コストを非常に低く抑えることができる。なお、索体8の数量は2本に限定されず、複数本の索体8を使用してもよい。そのため、その数量に応じた駆動輪7a、従動輪7b、モータ4、モータ制御装置3が必要である。
【0090】
また、作業装置16を支持する各索体8が夫々取り付けられてなる支柱1を正面視四角状のコーナー部に配置しているため、作業装置16の重力と各索体8の張力を釣り合わせるのが容易となり、作業装置16をより安定した状態に保つことができるため、安全性がさらに向上する。なお、複数本の索体8を使用する場合は、前記各モータ4を正面視四角状の線状に配置すればよい。また、2本の索体8を使用して作業装置16を支持する場合は、各モータ4を水平方向に配置すれば、作業装置16の重力と各索体8の張力を釣り合わせるのが容易となり、作業装置16をより安定した状態に保つことができるため、安全性がさらに向上する。
【0091】
また、前記各モータ4には、該各モータ4の回転駆動を夫々減速させる減速機6が連結されてなるものとしているから、回転速度が速いモータ4を使用する場合には、減速機6を使用し回転速度を遅くすることで、急速な回転により各索体8の断線等の事故が起こりにくくなるため、安全性がさらに向上する。
【0092】
また、前記各モータ4は、夫々エンコーダ4aとサーボモータ4bからなるものとしているから、各索体8の繰り出し量を制御する各モータ4の回転数を安定させることができるため、さらに安全性が向上する。
【0093】
また、前記各索体8、前記第2の索体13、又は、前記第3の索体14は、ワイヤーロープからなるものとしているから、ワイヤーロープは取り扱いが容易で引張強度があるため、本発明のシステムの取り扱い性と安全性がさらに向上する。
【0094】
また、本発明のシステムの使用者は、各索体8の繰り出し量を自由に設定することができ、さらに、各索体8の繰り出し量を自動で算出させたい場合には、作業装置16の移動目標地点を設定するだけで、本発明のシステムを使用することができるから、本発明のシステムの取り扱い性が容易となる。
【0095】
また、本発明のシステムの使用者は、記憶部201に格納されているプログラムに応じて、ノート型パソコン10を使用して、各索体8の繰り出し量を設定したり、作業装置16の移動目標地点を設定したりするだけで、本発明のシステムを使用することができるため、本発明のシステムの取り扱い性がさらに容易となる。なお、上記一実施形態では、ノート型パソコン10を使用してプログラムを実行させたが、制御装置2に操作盤と、該操作盤の操作情報を表示させるモニターを嵌めこんだものを使用してもよい。
【0096】
また、本発明の一実施形態の一使用例として、作業装置16を支持する各索体8が夫々取り付けられてなる支柱1を正面視四角状のコーナー部に配置してなる例を示したが、正面視四角状のコーナー部に配置せずともよい。つまり、作業装置16を上方向に各索体8が支持している場合は、各支柱1を作業装置16の上側に配置すればよいから、作業装置16の上側の様々な位置に配置することが可能である。さらに、作業装置16を上下方向に各索体8が支持している場合は、各支柱1を作業装置16の上下側に配置すればよいから、作業装置16の上下側の様々な位置に配置することが可能である。なお、支柱1を配置することが可能であれば、索体8を使用して作業装置16を左右から支持してもよい。
【0097】
また、支柱1として、図示した支柱1を用いずとも、本発明のシステムを使用する場所に既に設置されているものを支柱として使用してもよい。例えば、ビル屋上部に設けられている手摺や、地上に設けられている電柱等を使用することができる。なお、作業装置16の上側に位置する支柱としては、脆弱部を設けてなるものを使用するのが好ましい。
【0098】
次に、本発明の他の実施形態について、図13及び図14を用いて説明すると、図13は本発明の他の実施形態に係るブロック図であり、図14は、本発明の他実施形態の使用例を表すビルの清掃に使用した場合の正面図である。
【0099】
図13と、図5を比べると、異なる点は、受信部205を設けた点である。この受信部205を設けることにより、ノート型パソコン10を使用せずとも、ビルの清掃用作業員18が図14に示す無線操作機器19を使用することにより上述した制御を行うことができる。このような構成をとることにより、ビルの清掃用作業員18が一人で制御を行え、また、ビルの清掃用作業員18に緊急の事態が発生した場合に直ちにモータ4の制御を停止させる処理を行うことができる。また、ノート型パソコン10の操作と無線操作機器19の操作が同時に行われた場合は、無線操作機器19の操作内容を受信した受信部205の信号が各位置制御指令部203に入力されるように、CPU200側で処理を行う。後の処理は同様であるため説明は省略する。
【0100】
なお、本発明の実施形態では、ビル17の窓W00〜W23の清掃用として本発明に係る位置決め制御システムを使用した場合の実施形態について説明したが、他の使用例として、外壁清掃やメンテナンス、物資運搬用、ビル火災の避難用等としても使用が可能である。また、エレベータが存在しないビルに対しては、ビルの施工後エレベータの設置が困難であるため、例えば各階のベランダ部に本発明を設置しておけば、エレベータの代用としての使用も可能である。さらに、ビルの建設や再塗装などの改修工事において足場を組み、その足場を利用して改修工事を行い、改修工事後その足場をばらす手間が必要であるため、本発明に係る位置決め制御システムは、このような足場の代用としての使用も可能である。
【0101】
また、ビルの清掃用作業員18が乗らずに、清掃用ロボットを乗せることも可能である。その場合、ノート型パソコン10で作業装置16の位置決めを行えばよい。
【0102】
さらに、設置場所としては、ビル17等の屋外に限らず、本発明のシステムで使用される装置自体が小型であるため、屋内でも、内壁清掃、物資運搬用、アミューズメント等として使用することも可能である。
【0103】
以上のように、本発明は、他方面での使用が可能であるため、当該作業装置16は、ビルの窓清掃用の清掃用ゴンドラに限定されず、それら他方面で使用される装置すべてを含めた概念である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施形態の位置決め制御システムを表す斜視図である。
【図2】図1のイ部分の拡大図である。
【図3】(a)図1のロ部分の拡大図である。(b)(a)の左側面図である。(c)A−A断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の緊急時を表す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態を表すブロック図である。
【図6】図5に示す位置制御指令部のブロック図である。
【図7】図5に示すモータ制御装置のブロック図である。
【図8】本発明に係るモータの制御プログラムについて概略的に示したフローチャートである。
【図9】(a)〜(d)は本発明の位置決め制御システムの使用例を説明した説明図である。
【図10】本発明に係る索体繰り出し量算出部の説明図である。
【図11】本発明の位置決め制御システムの使用例を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態に係る位置決め制御システムを表す斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る位置決め制御システムのブロック図である。
【図14】本発明の他の実施形態の使用例を表す正面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 支柱
2 制御装置
3 モータ制御装置
4 モータ
4a エンコーダ
4b サーボモータ
6 減速機
7a 駆動輪
7b 従動輪
7c 帯体
8 索体
9 巻き取り装置
13 第2の索体
14 第3の索体
16 作業装置
19 無線操作機器
203c 索体繰り出し量算出部
203d 手動索体繰り出し量保持部
203e セレクト部
204 移動量解析部
205 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱と、
該各支柱に先端部が夫々取り付けられてなる索体と、
該各索体が夫々巻回されてなる駆動輪と、
該各駆動輪を夫々回転駆動させてなるモータと、
該各モータの回転駆動を夫々制御してなるモータ制御装置と、
該各モータ制御装置に前記各モータの回転駆動量を指令する制御装置と、
前記各駆動輪と、前記各モータと、前記各モータ制御装置を内部に設け、前記各索体を少なくとも2本使用して上方向に支持されてなる作業装置と、を備えてなる位置決め制御システム。
【請求項2】
前記各支柱は、水平方向に配置されてなる請求項1に記載の位置決め制御システム。
【請求項3】
複数の支柱と、
該各支柱に先端部が夫々取り付けられてなる索体と、
該各索体が夫々巻回されてなる駆動輪と、
該各駆動輪を夫々回転駆動させてなるモータと、
該各モータの回転駆動を夫々制御してなるモータ制御装置と、
該各モータ制御装置に前記各モータの回転駆動量を指令する制御装置と、
前記各駆動輪と、前記各モータと、前記各モータ制御装置を内部に設け、前記各索体を少なくとも4本使用して上下方向に支持されてなる作業装置と、を備えてなる位置決め制御システム。
【請求項4】
前記各支柱は、正面視四角状の線状に夫々配置されてなる請求項3に記載の位置決め制御システム。
【請求項5】
前記作業装置を上方向に支持してなる前記各索体が夫々取り付けられてなる各支柱間を架け渡す第2の索体と、
前記支柱間を移動可能に先端部が該第2の索体に取り付けられてなる第3の索体と、
前記作業装置内に設けられ、該第3の索体の巻き取り及び繰り出しを行い、且つ、該作業装置が急速に落下する場合に前記第3の索体の弛みを瞬時に巻き取る巻き取り装置と、をさらに備えてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項6】
前記第2の索体が架け渡されてなる各支柱に夫々脆弱部を設けてなる請求項5に記載の位置決め制御システム。
【請求項7】
前記制御装置と前記各モータ制御装置を接続するために延長ケーブルを用い、該延長ケーブルの一端部を前記制御装置に接続し、他端部を前記第2の索体に取り付けられてなる第3の索体を支点として左方向又は右方向のいずれか一方向に位置する第2の索体に略螺旋状に巻き付け、さらに、第3の索体にも略螺旋状に巻きつけて前記各モータ制御装置に接続してなる請求項5又は6に記載の位置決め制御システム。
【請求項8】
前記各モータには、該各モータの回転駆動を夫々減速させる減速機が連結されてなる請求項1乃至7のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項9】
前記各モータは、夫々エンコーダとサーボモータからなる請求項1乃至8のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項10】
前記各索体、前記第2の索体、又は、前記第3の索体は、夫々ワイヤーロープからなる請求項1乃至9のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項11】
前記制御装置には、前記作業装置の移動目標地点を設定することで、前記各モータで回転駆動する前記各駆動輪に夫々巻回されてなる索体が前記各モータの回転駆動により前記各駆動輪から夫々繰り出される量を算出する索体繰り出し量算出手段と、前記各索体繰り出し量を任意に設定した値を保持する手動索体繰り出し量保持手段と、前記索体繰り出し量算出手段によって算出された各索体繰り出し量と前記手動索体繰り出し量保持手段によって保持された各索体繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択するセレクト手段と、前記セレクト手段によって選択された前記各索体繰り出し量から前記各モータの回転駆動量の指令データを生成する移動量解析手段と、を備えてなる請求項1乃至10のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項12】
前記制御装置には、前記作業装置の移動目標地点を設定することで、前記各モータで回転駆動する前記各駆動輪に夫々巻回されてなる索体が前記各モータの回転駆動により前記各駆動輪から夫々繰り出される量を算出させる処理と、前記各索体繰り出し量を任意に設定した値を保持させる処理と、前記算出させた各索体繰り出し量と前記保持させた各索体繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択させる処理と、該選択させた前記各索体繰り出し量から前記各モータの回転駆動量の指令データを生成させる処理と、を実行させるためのプログラムを格納してなる記憶部を備えてなる請求項1乃至11のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項13】
前記作業装置に複数の従動輪をさらに設け、
該各従動輪は、夫々帯体を介して前記各駆動輪の回転に連動して回転し、前記各駆動輪に夫々巻回されてなる前記索体がさらに前記各従動輪に夫々巻回されてなり、
前記作業装置は前記各従動輪に夫々巻回されてなる索体で支持され、該作業装置を支持する索体と前記作業装置とが接触しない位置に前記各従動輪を前記作業装置に夫々設けてなる請求項1乃至10のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項14】
前記制御装置には、前記作業装置の移動目標地点を設定することで、前記各モータで回転駆動する前記各駆動輪に夫々巻回され、さらに、前記各駆動輪の回転に連動して回転する前記各従動輪に夫々巻回されてなる索体が、前記各モータの回転駆動により前記各駆動輪及び前記各従動輪から夫々繰り出される量を算出する索体繰り出し量算出手段と、前記各索体繰り出し量を任意に設定した値を保持する手動索体繰り出し量保持手段と、前記索体繰り出し量算出手段によって算出された各索体繰り出し量と前記手動索体繰り出し量保持手段によって保持された各索体繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択するセレクト手段と、前記セレクト手段によって選択された前記各索体繰り出し量から前記各モータの回転駆動量の指令データを生成する移動量解析手段と、を備えてなる請求項13に記載の位置決め制御システム。
【請求項15】
前記制御装置には、前記各モータで回転駆動する前記各駆動輪に夫々巻回され、さらに、前記各駆動輪の回転に連動して回転する前記各従動輪に夫々巻回されてなる索体が、前記各モータの回転駆動により前記各駆動輪及び前記各従動輪から夫々繰り出される量を算出させる処理と、前記各索体繰り出し量を任意に設定した値を保持させる処理と、前記算出させた各索体繰り出し量と前記保持させた各索体繰り出し量のいずれの繰り出し量を使用するかを選択させる処理と、該選択させた前記各索体繰り出し量から前記各モータの回転駆動量の指令データを生成させる処理と、を実行させるためのプログラムを格納してなる記憶部を備えてなる請求項13又は14のいずれかに記載の位置決め制御システム。
【請求項16】
前記制御装置には、無線操作機器からの命令を受信することができる受信部を備えてなる請求項1乃至15のいずれかに記載の位置決め制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−270321(P2009−270321A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121049(P2008−121049)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(504303458)イオンディライト株式会社 (5)
【Fターム(参考)】