説明

低内包エネルギー壁板およびその製造方法

壁板さらには他の建築材料を、石膏壁板の製造に使用されるエネルギーと比較した場合に有意に低減された内包エネルギーを使用して、はるかに少ない温室効果ガスを発生する方法により製造する。一実施形態ではスラグのような産業廃棄物をpH調整剤と組み合わせて構成される新規なセメント質コアは、制御された発熱反応を提供して石膏壁板様コアを形成し、この石膏壁板様は、コアリサイクルペーパーのような選択された材料でラッピング可能であり、かつ石膏壁板の製造に必要な多量のエネルギーを伴うことなく、コンベヤーシステムで製造可能で、石膏壁板に類似した外観、重量、および取扱い性を示す。この製造方法により生じる温室効果ガスの排出は、石膏壁板の製造に使用される方法よりも少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年11月16日出願の米国仮特許出願第60/988,744号および2008年3月31日出願の米国特許出願第12/060,196号(これらの出願は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に基づく優先権の特典を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、壁板コアの新しい組成物およびそのようなコアの製造方法に関する。より特定的には、本発明は、従来の石膏壁板の製造に必要なエネルギーと比較した場合に壁板の製造に必要なエネルギーを削減するコアおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
石膏壁板は、内壁および天井さらには特定の状況下で外壁を形成するために住宅用および商業用の建築物の建設時に使用される。設置が比較的容易でありかつ必要とされる仕上げ処理が最小限に抑えられるので、石膏壁板は、家屋および事務所の建設時にこの目的で使用される好ましい材料である。
【0004】
石膏壁板は、塗料のようなコーティングを受容するのに好適な紙または他の繊維状材料で表面仕上げされた硬化石膏含有コアからなる。主に仮焼石膏で構成された水性コアスラリーを2枚の紙の間に配置してサンドイッチ構造体を形成することにより石膏壁板を製造するのが一般的である。種々のタイプのカバー紙または類似の機能部材が、当技術分野で公知である。水性石膏コアスラリーは、仮焼石膏の再水和を行った後で通常は乾燥機中で熱処理して過剰の水を除去することにより固化または硬化させる必要がある。石膏スラリーが固化し(すなわち、水性スラリー中に存在する水と反応し)かつ乾燥した後、成形シートは、所要のサイズにカットされる。石膏壁板の製造方法は、当技術分野で周知である。
【0005】
石膏壁板のコア組成物の従来の製造方法は、最初に高速連続混合装置中で乾燥成分を予備混合することを含む。乾燥成分は、多くの場合、硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)、促進剤、および乾燥防止剤(たとえばデンプン)を含む。乾燥成分は、混合装置中でコア組成物の「湿潤」(水性)部分と混合一体化される。湿潤部分は、水と紙パルプと任意選択により1種以上の流動性増加剤および固化遅延剤との混合物を含む第1の成分を含みうる。紙パルプ溶液は、コア組成物の石膏スラリーを形成する水の主要部分を提供する。第2の湿潤成分は、上述の強化剤と発泡体と所望により他の従来の添加剤との混合物を含みうる。上述の乾燥部分および湿潤部分は、最終的に石膏壁板コアを形成する水性石膏スラリーを構成する。
【0006】
石膏壁板コアの主要成分は、「仮焼石膏」「スタッコ」、または「焼き石膏」と一般に呼ばれる硫酸カルシウム半水和物である。スタッコは、耐火性、熱寸法安定性および水分寸法安定性(hydrometric dimensional stability)、圧縮強度、ならびに中性pH(ただし、これらに限定されるものではない)を含むいくつかの望ましい物理的性質を有する。典型的には、スタッコは、天然石膏岩(すなわち硫酸カルシウム二水和物)の乾燥、粉砕、および仮焼により調製される。スタッコ製造時の乾燥工程は、たとえば雨または雪に由来する岩石中に存在する水分をすべて除去するために、粗石膏岩を回転炉に通すことを含む。次に、乾燥岩石を所望の微細度に粉砕する。乾燥微粉砕石膏は、その使用目的にかかわらず「ランドプラスター(land plaster)」として参照可能である。ランドプラスターは、スタッコに変換するための仮焼プロセス用の供給原料として使用される。
【0007】
スタッコ製造時の仮焼(または脱水)工程は、ランドプラスターを加熱して硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)および水蒸気を生成することにより行われる。この仮焼プロセス工程は、当業者に公知のいくつかのタイプが存在する「仮焼炉」中で行われる。仮焼プロセス自体は、エネルギー消費量が多い。米国特許第5,954,497号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるように、単段式および多段式の装置を用いて石膏を仮焼するいくつかの方法が報告されている。
【0008】
仮焼石膏は、水と直接反応し、適切な比で水と混合した場合に「固化」可能である。
【0009】
従来の石膏ボード製造時、石膏スラリーは、移動している紙(または繊維ガラスマット)基材上に堆積される。石膏スラリーは、重量を低減しかつ他の性質を付与するためにいくつかの添加剤で構成可能である。移動している紙または基材は、それ自体、移動している長いベルト上に支持される。次に、第2の紙基材をスラリー上に適用して石膏ボードの第2の面を構成し、そしてこのサンドイッチを成形ステーションに通して石膏ボードの幅および厚さを決定する。そのような連続操作時、石膏スラリーは、成形ステーションを通った後、固化し始める。十分な固化が行われた時、ボードは、商業上許容される長さにカットされ、次に、ボード乾燥機中に送られる。その後、ボードは、所望によりトリミングされ、テーピングされ、束ねられ、輸送され、そして販売まで貯蔵される。
【0010】
石膏壁板の大多数は、幅4フィートおよび長さ8フィートのシートの形態で販売される。シートの厚さは、特定のグレードおよび用途に依存して、1/4インチから1インチまでさまざまであるが、1/2インチまたは5/8インチの厚さが一般的である。種々の用途に合わせて、さまざまなシートサイズおよび厚さの石膏壁板が製造される。そのようなボードは、使用しやすく、適宜、切込みを設けてスナップ切断することにより、比較的きれいなラインで切断することが可能である。
【0011】
石膏壁板の製造方法は、いくつかの報告によれば、100年を超える歴史がある。それは、エネルギーが豊富かつ安価でありしかも温室効果ガスの問題が知られていなかった時代に開発された。これは、考慮すべき重要な点である。特定の壁板の属性として耐火性を備えるように長年にわたり石膏壁板技術に改良が加えられ、かつ石膏壁板試験が標準化されてきたが(たとえば、American Society of Testing and Materials標準試験法C1396など)、主要な製造工程は、ほとんど変化しておらず、壁板の大多数は、依然として仮焼石膏から製造される。
【0012】
図1(石膏壁板の典型的な製造方法における主要な工程を表す)に示されるように、石膏壁板は、製造するのにかなりのエネルギーを必要とする。本明細書中で用いられる「内包エネルギー」という用語は、原料の段階から完成品の配送に至るまでの製品の製造に必要な全エネルギーとして定義可能である。図1に示されるように、石膏壁板の製造における図示された工程のうちの3つ(工程102:石膏の乾燥、工程103:石膏の仮焼、工程106:ボードの乾燥)は、かなりのエネルギーを必要とする。したがって、石膏の内包エネルギーおよびその製造から放出される生成温室効果ガスは、非常に多い。しかしながら、石膏壁板に代わる他の建築材料は、現在、わずかに存在するにすぎない。
【0013】
エネルギーは、石膏プロセス全体を通して使用される。石膏岩を地中から取り出した後、典型的にはロータリー乾燥機またはフラッシュ乾燥機で乾燥させなければならない。次に、粉砕し、次に、仮焼しなければならない(ただし、乾燥前に粉砕が行われることが多い)。これらのプロセスはすべて、製造プロセスで使用される石膏を調製するだけでもかなりのエネルギーを必要とする。仮焼した後、石膏は次に、典型的には水と混合されてスラリーを形成し、固化し始める。その後、かなりのエネルギーを用いてボード(固化したスラリーからカットされる)を大型ボード乾燥機で約40〜60分間乾燥させることにより残留水を蒸発させる。多くの場合、梱包前に1平方フィートあたり1ポンド(1lb)までの水を石膏ボードから乾燥させて元の状態に戻す必要がある。したがって、石膏壁板の全内包エネルギーを削減してエネルギーコストおよび温室効果ガスを低減することがきわめて望ましいであろう。
【0014】
温室効果ガスとくにCOは、化石燃料の燃焼から、さらには特定の材料の仮焼の結果として、生成される。したがって、石膏製造プロセスは、プロセス要件に起因してかなりの量の温室効果ガスを発生する。
【0015】
National Institute of Standards and Technology(NIST - US Department of Commerce)とくにNISTIR 6916によれば、石膏壁板の製造は、1ポンドあたり8,196BTUを必要とする。約75ポンドの重量を有する平均5/8インチの厚さの石膏ボードの場合、これは、ボード1枚あたり600,000BTU超の全内包エネルギーに等しい。他の情報源によれば、内包エネルギーは、ボード1枚あたり600,000BTUよりもかなり少なく、ごく最近建設されたプラントでは5/8インチの厚さのボード1枚あたり100,000BTUに近づきうることが示唆される。依然として、これでもきわめて多い。内包エネルギーは、製造コストの30%超を占めると推定されている。エネルギーコストが増大しかつ炭素税が制定された場合、仮焼石膏から壁板を製造するコストは、エネルギーコストに正比例して上昇し続けるであろう。さらに、材料製造業者は、気候変動を抑えるためのグローバルイニシアティブの一部として、広く使用されている製品について、よりエネルギー依存性の少ない他の代替物を探索する責任を負う。
【0016】
石膏壁板の製造時のエネルギー消費は、米国におけるすべての工業エネルギー使用量(BTU単位)の1%以上であると推定されている。米国で毎年使用される300〜400億平方フィートの壁板の場合、その製造時に約200兆BTUが消費される可能性がある。したがって、化石燃料を燃焼させて熱消費量が多いプロセスを維持すると、250億ポンド超の温室効果ガスが大気中に放出されるので、環境が破壊され、地球の気候変動の要因がもたらされる。
【0017】
以上に述べたように、石膏壁板中の主要成分は硫酸カルシウム半水和物(仮焼前は硫酸カルシウム二水和物)であり、これは平均で壁板コアの90〜99%である。硫酸カルシウム二水和物つまり粗石膏岩は、地殻から直接採掘され、採掘エネルギー、粉砕エネルギー、および輸送エネルギーを必要とする。このほかに、環境への関心が高まっていることから、採掘された石膏岩のようなバージン資源の代わりになんらかの産業廃棄物(post-industrial waste)の使用を介した責任ある製造が要求される。多くの製造業界では、たとえば、いくつか例を挙げると、石炭電力業界、種々の金属精製プロセス業界、膨張パーライト製造業界、ならびにセメント炉業界および石灰炉業界では、リサイクル可能な副生成物が存在する。内包エネルギーを削減する重要な側面は、産業廃棄物を壁板コア中に組み込んで、こうした不要な物質の埋立ておよび廃棄処分に伴うエネルギー使用量を削減することである。
【0018】
石膏製造における従来の取組みでは、一般的には、石膏ボードの重量を減少させること、その強度を増大させること、またはエネルギー消費を少し減少させることに重点がおかれた。たとえば、米国特許第6,699,426号には、石膏ボードに添加剤を使用して乾燥時間を短縮することにより乾燥段階でのエネルギー使用量を減少させる方法が記載されている。こうした試みでは、一般的には、明らかに、仮焼石膏(天然もしくは合成のいずれか)の使用が想定されている。なぜなら、材料および採掘手順を最初から設計し直すと、何10億ドルものインフラおよびノウハウが無駄になり、その石膏鉱山が無益なものになる可能性があることは、石膏壁板製造業者であればわかるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、気候変動に関する懸念を考慮して、製造時に必要なエネルギー使用量が劇的により少ない壁板を製造することが望ましいであろう。また、石膏壁板製造に共通したエネルギー消費量が多い仮焼工程および乾燥工程を実質的に軽減または排除することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概要
本発明は、壁板組成物およびその製造方法を提供する。本明細書に記載の本発明の種々の態様は、以下に示される特定の用途に適用可能であるか、またはさまざまな他の種類の材料に適用可能である。本発明の異なる態様は、個別に、全体として、または互いに組み合わせて、認識可能であると理解されるものとする。
【0021】
本発明の一態様によれば、新規な壁板の新しい製造方法が規定される。この構造体は、環境を破壊せずに利用可能な建築材料および建設材料の増加の一途をたどる需要に対して生態学的解決策を提供しうる低内包エネルギー壁板として記述可能である。本発明のこの態様に従って提供される得られた新規なかつ生態学的な壁板は、ほとんどの用途で石膏壁板(石膏ボードもしくはプラスターボードと呼ばれる)または耐水性セメントボードを代替することが可能である。本明細書中に記載の新しい方法は、壁板の製造と組み合わせることが可能であるが、この方法は、他の建築材料、たとえば、屋根瓦、デッキタイル、床タイル、羽目板、セメントボード、メーソンリーブロック、および他の類似の建築材料の製造に適用および使用することが可能であると理解されるものとする。
【0022】
本発明の一実施形態では、壁板は、少なくとも2種の産業廃棄物生成物を含みうる。ただし、前記産業廃棄物生成物は、製鋼スラグ、高炉スラグ、金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、石灰炉ダスト、またはセメント炉ダストよりなる群から選択される少なくとも2種の廃棄物を含む。壁板は、少なくとも1種のpH調整剤の添加をも含みうる。
【0023】
他の好ましい実施形態では、壁板は、少なくとも1種の産業廃棄物生成物を含む。ただし、前記産業廃棄物生成物は、製鋼スラグ、高炉スラグ、金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、石灰炉ダスト、またはセメント炉ダストよりなる群から選択される少なくとも1種の廃棄物を含み、かつさらに少なくとも1つのpH調整剤の添加を含む。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態は、実質的に石膏を含まない壁板または副生成物壁板を提供する。そのような壁板は、本明細書中に記載の産業廃棄物組成物または副生成物から形成可能である。壁板用の特定の原材料または出発材料は、比較的少量の石膏を含有しうるが、最終混合物および壁板最終製品は、検出可能量の石膏を含有しないこともある。他の実施形態は、X線回折(XRD)および他の技術に基づく測定装置の確度および分解能に依存して変化しうる約1%未満の石膏含有率を含みうる。
【0025】
本発明の各実施形態では、所望により、フライアッシュを産業廃棄物生成物に添加することが可能である。典型的には、フライアッシュは、壁板中の全成分の重量を基準にして50パーセント(50%)未満であろう。
【0026】
本発明に従って提供される壁板および他の建築材料は、壁板または他の建築材料に関連する内包エネルギーを有意に削減して製造されるので、環境を破壊する温室効果ガスの排出を実質的に低減する。
【0027】
本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付の図面と組み合わせて検討すればさらに認識および理解されるであろう。以下の説明は、本発明の特定の実施形態を記述した詳細な具体的内容を含有しうるが、これは、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではなく、好ましい実施形態を例示するものとみなすべきである。本発明の各態様に対して、本明細書中で示唆されるように当業者に公知の多くの変形形態が可能である。本発明の範囲内でその趣旨から逸脱することなくさまざまな変更および修正を行うことが可能である。
【0028】
本発明は、図面とともに以下の詳細な説明に照らせば十分に理解されるであろう。
【0029】
参照による組入れ
本明細書に挙げた出版物、特許、および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み入れられたものとして、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面の簡単な説明
【図1】特定の標準的な石膏乾式壁製造工程、とくにかなりの量のエネルギーを消費するものを示している。
【図2】ほとんどエネルギーを必要としないかまたは従来の石膏乾式壁と比較して必要とするエネルギーがかなり少ない、本発明に従って提供される低内包エネルギー壁板の製造工程の概要を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、例示的なものにすぎず、限定的なものではない。他の実施形態は、この説明を考慮すれば当業者には自明であろう。
【0032】
壁板および/または他の建築材料を製造するための本明細書に記載の新規な方法を用いれば、石膏壁板または他の建築材料の製造における最もエネルギー消費量が多い先行技術の方法および材料、たとえば、石膏の採掘、乾燥、仮焼、およびボードまたは完成品の乾燥が不要になる。この新しい方法を用いれば、豊富に存在しかつ安全でありしかも自然に反応して耐火性でもある強力なボードを形成しうる産業廃棄物材料および未仮焼材料から壁板および他の建築材料を形成することが可能になる。壁板は、内装要件および外装要件の両方を満たすように製造可能である。また、上述の方法を用いることにより、建築物またはインフラの建設で使用するためのさまざまな形状の他の建築材料を製造することも可能である。本発明の好ましい実施形態は、壁板との関連で一般的に以下に記載されている。しかし、他の建築材料を製造するように記載の方法に変更を加えることも可能であり、したがって、以下の説明は、限定的なものではないことを理解すべきである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態は、50%超の産業廃棄物とpH調整剤とを含有するコアを含有する低内包エネルギー壁板を提供する。好ましい実施形態では、産業廃棄物の量は、リサイクル材料の含有率が100%に近づくにつれて省エネルギーが向上することに留意して、50%よりもかなり多いであろう。産業廃棄物は、タイプCフライアッシュ(FAC)、タイプFフライアッシュ、未分類フライアッシュ、製鋼スラグ、高炉スラグ(BFS)、他の金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、煙道ガス脱硫物、石灰炉ダスト(LKD)、セメント炉ダスト、またはそれらの任意の組合せを含みうるか、またはそれらから誘導可能である。しかしながら、リサイクル廃棄物の含有率が増大した場合、タイプCフライアッシュの含有率を50%未満に保持することが好ましい。なぜなら、より高濃度のフライアッシュは、壁板用途に必要とされる物理的性質を劣化させる可能性があるからである。本明細書中の本発明の種々の実施形態に対して、さまざまな1種以上のpH調整剤を選択することが可能であり、たとえば、以下のもの:酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、またはアルミン酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
産業廃棄物様材料のさまざまな用途および使用
いくつかの米国特許には、セメント質用途の開発における上述の産業廃棄物の一部の使用が記載されている。以下の特許(それらの全体が参照により組み入れられるものとする)に開示されている廃棄物成分はいずれも、本明細書中の本発明の種々の態様で利用可能であると理解されるものとする。たとえば、米国特許第5,435,843号には、モルタル用途およびコンクリート用途のためのタイプCフライアッシュとアルカリ金属活性化剤とで構成されたセメントが論じられている。米国特許第4,997,484号では、同上のものに加えてクエン酸の添加が必要とされる。両特許には、タイプCフライアッシュ以外の産業廃棄物の壁板用途や壁板要件が挙げられていない。米国特許第5,714,003号では、任意の亜瀝青質フライアッシュの使用に範囲が拡大され、一般的セメント用途のために炭酸カリウムとクエン酸と遅延剤とが必要とされるが、この場合も、壁板用途についての言及は含まれていない。米国特許第5,084,102号では、水と組み合わせた場合にコンクリートの建設物、製造物、または部品に使用しうる即使用可能な乾燥粉末用の成分として、他の産業廃棄物である高炉スラグが考慮の対象になっている。ほとんどの場合、重量制限および実際的要件に起因して大きいもしくは小さい骨材を壁板に組み込むことが不可能であるかまたはその必要がないため、コンクリート用途は、壁板用途との整合性がとれない。
【0035】
さらに、米国特許第3,700,470号には、固体造形物を製造すべく、粉末状金属と組み合わせて、セラミック充填材、とくに、粉末ステーションフライアッシュ、高炉スラグ、軽石、赤泥廃棄物、または砂微粉を含む類似の混合物が記載されている。これは、壁板タイプの用途に拡張可能である。しかしながら、この特許では、硬化させるために水性ケイ酸ナトリウムおよび熱をさらに必要とする。以上に述べたように、本発明に従って提供される壁板は、いかなる硬化用の熱をも必要とせずにしかもそうした熱を許容することもなく、低内包エネルギーを有することに成功している。さらに、本明細書中に提供される低内包エネルギー壁板は、好ましくは、ケイ酸ナトリウムを含まない。なぜなら、そのような材料を含む製造方法は、炭酸ナトリウムと二酸化シリコンとを組み合わせることにより二酸化炭素(温室効果ガス)を放出するからである。
【0036】
セメントボードは、ポルトランドセメントを使用するとともに仮焼マグネシアをも部分的に使用する先行技術(たとえば米国特許第4,003,752号)に記載されているが、このボードは、壁板と比較して、重量、加工、および切込み/スナップ切断能力をはじめとするいくつかの重要な差異を有する。このボードは、自然に起こる発熱反応を使用して製造されない。
【0037】
米国特許第6,716,293号には、他の産業廃棄物生成物を必要とすることなく60%〜66%のフライアッシュを含む壁板が記載されている。しかしながら、そのような壁板は、現在入手可能な標準的壁板と比較してあまりにも重すぎることがあり、標準的壁板の要件のすべてを満たしているとはかぎらない可能性がある。本発明に従って提供される低内包エネルギー壁板は、かなり高い全パーセントのリサイクル内容物(典型的にはほぼ>85重量%)を含有するので、収容可能なフライアッシュの量は、かなり少なく、典型的には約50%未満、多くの場合約30%未満である。壁板の製造で使用される産業廃棄物材料を組み合わせるとともに、フライアッシュ含有率を約30%未満、いくつかの実施形態では約0%に保持することにより、本明細書中に提供される新しい壁板で最適な性質を達成しうることを見いだした。すなわち、壁板中のフライアッシュが重量基準で実質的にゼロパーセント(0%)である場合、時間の関数としての壁板中の産業廃棄物の性質の変化に起因する壁板の膨張は、1パーセントの約1/10(0.1%)以下である。
【0038】
本発明に従って提供される低内包エネルギー壁板のいくつかの性質は、フライアッシュの充填率の増大により変更されうる。このことは、ASTM試験法に準拠して以下に示すことが可能である。たとえば、フライアッシュ(フライアッシュタイプC(FAC)/NRG, Buffalo, NY)含有率が0%に近づくにつれて、エッジ硬度、コア硬度、曲げ強度、および圧縮強度は、特定の用途に最適なものまたはより好ましいものとなりうる。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
本発明の他の実施形態に従って提供される他の低内包エネルギー壁板のいくつかの性質は、スラグ(高炉スラグ)の充填率の増大により変更されうる。たとえば、スラグ(BFS/Baltimore, MD)含有率が0%に近づくにつれて、エッジ硬度、コア硬度、曲げ強度、および圧縮強度は、特定の用途に最適なものまたはより好ましいものとなりうる。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
さらに、米国特許第6,391,398号には、膨張パーライトと合成バインダーとを含有する壁板が記載されている。この挙げられたパーライトをそのような膨張パーライトの製造時に生成される廃棄物であるパーライト副生成物と混同してはならない。膨張させて本特許に挙げられたような軽量パーライト生成物にするには高温にしなければ真珠岩が耐えるので、本開示の壁板は、有用でないとみなされ、他の場合には埋立て地に廃棄処分されるであろうかなり小さい粒子サイズのパーライトであるパーライト副生成物を使用する。
【0046】
壁板添加剤
本発明に係る低内包エネルギー壁板の製造時、粉末状産業廃棄物を他の粉末状添加剤と組み合わせることが好ましいこともある。こうした添加剤としては、遅延、加速、またはpH調整を行うための作用剤または化合物が挙げられる。さらに、本明細書中の1つもしくは複数の低内包エネルギー壁板を形成するために使用すべく選択された1つもしくは複数の特定の製造プロセスの開始時に、反応性もしくは接着性の成分を一緒に添加または混合することが可能である。水のような液体の添加前、この粉末混合物は、「乾燥混合物」として参照されうるかまたはそのように呼称されうる。
【0047】
本明細書中によって得られる低内包エネルギー壁板製品は、自己硬化(発熱)反応を形成するような、採掘原料の工業プロセスから自然に発生する残りの組成に依存する可能性がある。効果的に利用した場合、水和によりこうした「廃棄」材料内で自己硬化反応が開始されるであろう。低内包エネルギー壁板は、特定の化学組成やさらなる工業的使用のために製造されたものではない副生成物を含みうるので、各供給源は、同一材料の他の供給源と比較した場合、特有の構成を有する可能性がある。したがって、壁板最終製品中の廃棄材料の最良もしくは所望の組合せのために各特有の供給源の特定の化学組成を用いて最適化することが好ましいか、または多くの場合そうすることが必要である。
【0048】
考慮の対象となる産業廃棄物材料の典型的な組成は、以下のとおりであるが、こうした範囲は、低内包エネルギー壁板に有用であるとみなしうるすべての廃棄材料源を代表するものではない。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
【表11】

【0055】
【表12】

【0056】
発熱反応および関連因子
本発明に係る方法では、主要壁板成分(たとえば、産業廃棄物の組合せ、pH調整剤、および水)間の発熱反応は、自然に熱を発生する。結果として、リサイクル材料内で一連の化学反応が開始され、セメント質成分を形成することが可能である。本明細書中で論じられる発熱反応は、当業界で周知のさまざまなpH調整剤さらにはそれらの由来源の鉱物の多くを使用することが可能である。そのようなpH調整剤としては、いくつか例を挙げると、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム(天然トロナ鉱石)、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウムが挙げられる。
【0057】
また、生じる発熱反応の反応時間は、スラリーの全組成、スラリー中の充填材、スラリー中の水もしくは他の液体の量、減水剤の添加、または遅延剤もしくは促進剤の添加をはじめとする多くの因子により制御可能である。遅延剤は、反応の速度を低下させるために添加可能であり、次のもの、すなわち、ホウ酸、ボラックス、トリポリリン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、クエン酸、および当業界で一般的な多くの他の市販の遅延剤のうちのいずれか1つ以上を含みうる。促進剤は、反応の速度を増大させるために添加可能であり、次の材料、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、カルシウムホルメート、トリエタノールアミン、ポルトランドセメント、および当業界で一般的な他の市販の促進剤のうちのいずれか1つ以上を含みうる。理想的には、ポルトランドセメントの添加を回避すべきである。なぜなら、その内包エネルギーが大きいからである。分散剤と呼ばれることもある減水剤は、追加の水を必要とすることなく良好な粒子分布が得られるように粒子の集合を防止しうる液状添加剤である。減水剤はまた、当業界で周知であり、例としては、ポリサッカリド、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、およびポリカルボキシレートが挙げられる。これらのおよび他の因子または添加剤により、本明細書中に提供される建築材料の製造から生じる発熱反応の反応時間を制御したりまたは他の形で影響を及ぼしたりすることが可能である。
【0058】
図2は、本発明の他の態様に従って提供される壁板の製造方法を示す基本的フロー図である。いくつかのこれらのプロセスの単純性は、図2が2つの工程すなわち工程201:乾燥混合物を水と混合する工程および工程202:スラリーから壁板を形成する工程を示していることから認識可能である。壁板は、以上に明記した参考文献の多くに十分に説明されているように、成形型内で形成してからまたは石膏壁板の形成に使用されるタイプのコンベヤーシステムを用いて形成してから、所望のサイズにカットすることが可能である。
【0059】
図2のプロセスに示されるように、スラリーは急速に粘稠化し始めるが、発熱反応が進行してスラリーを加熱することが可能であり、最終的には、スラリーは硬質塊の形態に固化する。典型的には、混合物の含有率およびサイズに依存して発熱反応時に35℃〜55℃の最高温度が観測された。また、得られる硬度は、産業廃棄物中に見いだされる天然に存在する充填材の量により制御可能であり、しかもきわめて硬質かつ強力なものから軟質(ただし乾燥状態)かつ容易に破壊されるものまでさまざまでありうる。他のパラメーターたとえば固化時間(成形型からまたは連続スラリーラインからボードを取り出すのに必要な強度)は、添加剤または充填材に依存して20秒間から数日間までさまざまでありうる。たとえば、ホウ酸は、数秒間から数時間まで固化時間を延長することが可能であり、この場合、粉末状ホウ酸が0%(数秒間)〜4%(数時間)の範囲内でバインダーに添加される。20秒間の固化時間により極限の生産性を得ることが可能であるが、スラリーは、高品質の製造を行うにはあまりにも早く固化し始める可能性があるので、典型的にはホウ酸または他の適切な遅延剤を添加することにより固化時間をより長い時間になるように調整すべきである。本明細書中の他の箇所に記載の他の添加剤および因子を利用して、固化時間を制御または操作することが可能である。
【0060】
本発明に従って多種多様な構成の材料を提供することが可能である。そのような材料は、強度、硬度、切込み/スナップ切断能力、紙接着性、耐熱性、重量、および耐火性の改良をもたらしうる。本明細書中の得られた産業廃棄物混合物は、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、合成デンプン、天然産鉱物、セラミックスマイクロスフェア、発泡体、繊維、および他の低内包エネルギー材料をはじめとする多種多様な添加剤と相溶可能である。また、未仮焼石膏は、充填材として使用することも可能であるが、セメント質壁板コアを形成するために必要とされるものではない。以上に列挙したような低エネルギーの豊富に存在する生分解性材料を添加剤として注意深く選択することにより、石膏壁板の特性を呈するようになる好ましい壁板を製造することが可能である。こうした特性(重量、搬送可能になるような構造強度、切込みを設けてから切込み線に沿って破壊される能力、耐火能力、およびスタッドのような他の材料に釘付けまたは他の形で装着される能力)は、市場に重要であり、製品が石膏壁板代替物として商業的成功を収めるために必要とされる。
【0061】
トウモロコシデンプン(トウモロコシ胚乳から作製される)、コムギデンプン(コムギグルテン製造の副生成物)、タピオカデンプン(タピオカ植物の根から抽出される)、およびジャガイモデンプン(ジャガイモ植物の根から抽出される)は、豊富に存在しかつ非毒性であり、しかも紙接着性を向上させることが可能である。合成デンプンは、ポリビニルアルコールのような類似のポリマー接着剤の代替物となりうるポリサッカリド(糖系ポリマー)である。セラミックスマイクロスフェアは、材料の重量を減少させることが可能であり、さらにはこうした材料が組み込まれた壁板の耐熱性および耐火性を増大させることが可能である。バイオ繊維(すなわち生分解性植物性繊維)は、この実施形態で引張り強度および曲げ強度を増大させるために使用されるが、他の繊維、たとえば、セルロース繊維、ガラス繊維、またはリサイクル材料を使用することも可能である。セメントボードにおける特殊繊維の使用は、米国特許第6,676,744号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されており、当業者に周知である。
【0062】
本発明の好ましい実施形態を以下の実施例により説明するが、そのような実施形態が例示を目的としたものであることは当業者には自明であろう。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形形態、変更形態、および置換形態を行うであろう。こうした実施例のさまざまな態様は、個別に、全体として、または互いに組み合わせてもしくは本明細書中に記載の本発明の他の実施形態と組み合わせて認識可能であると理解されるものとする。
【実施例1】
【0063】
実施例1
本発明の一実施形態では、粉砕高炉スラグ、炉ダスト、フライアッシュ、pH調整剤、促進剤、および繊維を混合して乾燥混合物を形成することにより、乾燥粉末混合物を調製する。次に、液状分散剤を含有する水を乾燥混合物に添加し、続いて、発生させた発泡体を添加してパーセント単位のおよその重量で示された以下の材料を得る。
【0064】
【表13】

【0065】
全産業廃棄物含有率が86.4%になるようにスラグ、炉ダスト、およびフライアッシュタイプCを組み合わせると、自己反応硬化プロセスが開始される。この場合、このプロセスは、pH調整剤(天然トロナ鉱石に由来する粉末状セスキ炭酸ナトリウム)により開始される。重量基準で以上の材料の46.2%に等しい水を添加して、スラリーを形成するかまたは発泡体を発生させる。発泡体と一緒になって、未反応成分材料は、スラリー中で充填材を形成する。繊維は、スラリーが硬化した時にコアに曲げ強度を付与する。製造機の製造量を増大させる場合、水酸化アルミニウムは、発熱反応の速度を増大させることによりスラリーの固化の速度を増大させる促進剤である。硬化前に混合物をミキサーから迅速に取り出すことができるのであれば、ピンミキサーや連続ミキサーのような多種多様のミキサーを使用することが可能である。
【0066】
発泡体は、所望の弾性に依存して、起泡剤と水との組合せに対して重量基準で1パーセントの1/10(0.1%)から5%までの濃度の起泡剤(石鹸または界面活性剤)を用いて水と個別に予備混合(典型的には発泡体発生器中で)されたものである。以上の実施形態(実施例1)では、水と起泡剤との得られた組合せの重量を基準にして1パーセントの25/100(0.25%)の起泡剤が使用される。石膏壁板工業では、典型的には、重量基準で1パーセントの2/10(0.2%)の起泡剤が使用される。得られた発泡体は、湿潤混合物に添加される。これは、以上の実施例1に示されるとおりである。この実施例では、発泡体は、全混合物の全重量に対する重量基準で9パーセント(9%)である。発泡体の量は、硬化コアの所望の密度および強度に依存し、重量基準で0.1%〜15%の発泡体が最適である。
【0067】
石膏壁板で使用される発泡体の例としては、米国特許第5,240,639号、米国特許第5,158,612号、米国特許第4,678,515号、米国特許第4,618,380号、および米国特許第4,156,615号(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のものが挙げられる。そのような作用剤の使用は、石膏壁板および他のセメント質製品の製造業者に周知である。
【0068】
スラリーは、ペーパーフェーシング上に注加可能であり、これにより、標準的石膏プロセスに見られるように面の周りをラッピングすることが可能である。しかしながら、片面上または両面上で紙を用いたものまたは用いないものを製造することが可能である。
【0069】
発熱反応は、ミキサーから取り出した後ほぼ即座に開始されて数時間継続し、水の一部は、反応系に吸収されるであろう。ボードは、利用可能な要件およびハンドリング装置に依存して、30分未満で、多くの場合5分未満で、カットして取り出すことが可能である。水のすべてがすでに反応で使用されているとはかぎらず、水のいくらかの吸収が長時間継続するであろう。24〜48時間以内に、水の大部分は吸収されているが、蒸発も起こる。ペーパーフェーシングを使用する場合、ペーパー上に黴が生える可能性を低減するために、ボードを個別に24時間乾燥させることが推奨される。これは、熱を必要とすることなく室温でラック上またはスペーサー上で達成可能である。乾燥時間は、より高い温度で短縮したり氷点超のより低い温度で延長したりすることが可能である。80°F超の温度での試験を行ったが、低エネルギープロセスを目的とした設計であるので、考慮しなかった。残りの乾燥は、より高い温度で継続的に促進されるであろうが、発熱反応は水を利用する必要があるので、熱(室温を超える)を加えることは、水があまりにも急速に蒸発しうるため有益ではない。発熱反応は、氷点未満で起こるであろうが、残留水は、温度が氷点超に上昇するまでコア内に凍結されるであろう。
【0070】
得られたボード(完成品)は、石膏壁板の強度特性に類似したもしくはそれよりも向上した強度特性を有することが可能であり、現場で容易に切込みを設けてスナップ切断することが可能である。タイルバッキング用途および外装用途に使用されることが多い高密度ボードは、低重量、満足すべき切込み・スナップ切断特性、およびペーパーフェーシングのような本発明に従って加工された壁板の多くを呈しない。
【実施例2】
【0071】
実施例2
他の実施形態では、実施例1のときと同一量の乾燥粉末および液体を同一比率で一緒に混合するが、添加される促進剤の量を2倍にする。この場合、反応がかなり急速に起こるので、ボードは、2分以内にカットして取り出すことが可能である。
【0072】
【表14】

【実施例3】
【0073】
実施例3
他の実施形態では、実施例1のときと同一比率の材料を一緒に混合するが、フライアッシュから誘導された中空球であるセラミックスマイクロスフェアで発泡体を代替する。これにより強度および重量が増大されたボードが作製される。このボードは、さらに多くのリサイクル材料を利用するので、United States Green Building Councilにより開発されたLEEDのような全国環境建築評価システムに応えうる。
【0074】
【表15】

【実施例4】
【0075】
実施例4
他の実施形態では、発泡体を除去することにより、つまり未形成の壁板のコア中の発泡体を除去することにより、外装用としてボードを作製する(これはセメントボードまたは高密度石膏ボードの代替物となりうる)。また、より大きい耐環境性および曲げ強度を付与するために、繊維強化材を2倍量にする。これにより得られた低内包エネルギー壁板には、さらなる強度および耐水性が付与される。それに加えて、この実施形態では、壁板が環境に暴露されるので、ペーパーフェーシングやペーパーラップを使用しない。この実施形態の成分は、以下のとおりである。
【0076】
【表16】

【0077】
次に、重量基準で以上の材料の46.2%に等しい水を添加してスラリーを形成する。
【0078】
スラリーの処理は、必要とされるボードの量、製造スペース、およびプロセスに関する現在の技術担当者の熟知度のようないくつかの因子に依存して、いくつかの異なる技術を用いて実施可能である。スラリーをペーパーでラッピングする連続ロングラインのコンベヤーシステムを用いた通常の石膏スラリー法は、本発明に係る低内包エネルギー壁板の製造に許容しうる方法である。この方法は、石膏壁板を製造する当業者に周知である。また、高密度(すなわちセメント)ボードの製造に使用されるHatscheck法は、本発明に係る壁板、とくに、ペーパーフェーシングやペーパーバッキングを必要としないものの製造に許容しうるものであり、セメントボードを製造する当業者に周知である。Hatscheck法を使用する場合、使用される製造装置がより低い粘度のスラリーを必要とすることが多いので、スラリーを希釈するために追加の水が必要とされる。代替的に他の製造方法として、あらかじめサイズが決められた成形型内にスラリーを注加して固化させることが可能である。次に、各ボードを成形型から取り出して、成形型を再利用することが可能である。
【0079】
また、反応性廃棄材料組成物と廃棄物系充填材との比をより大きくして固有の強度を達成しうるので、建設分野またはおそらく他の分野で使用可能な他のセメント質物品を形成することが可能である。こうした物品は、パネルの形態をとらず、ポルトランドセメントを用いて一般に作製される任意のセメント質物品の形態をとることが可能である。そのような物品は、成形型内または現場のいずれかで、注加および迅速乾燥を行って数分以内に固化させることが可能である。
【0080】
上述の各実施例は、成分としてタイプCフライアッシュを含むが、本発明により提供されるさらなる利点は、使用されるフライアッシュの全部または一部を排除してスラグまたは他の廃棄材料で置き換えることにより他の代替的な実施形態を提供しうることである。得られた製品の品質は、あたかも製品がフライアッシュを含有しているのと実質的に同一の状態に保つことが可能である。このことは、ASTM試験法に準拠して以下に示される。石灰炉ダスト含有率(LKD/PA)が増大するにつれて、エッジ硬度、コア硬度、曲げ強度、および圧縮強度は、最適な状態になりうる。各廃棄材料の供給源特有の化学組成に依存して、本明細書中に提供される低内包エネルギー壁板のいくつかで、タイプCフライアッシュを石灰炉ダストで代替することが有利なことがある。
【0081】
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
【表19】

【0084】
特定の実現形態を例示および説明してきたが、それらに種々の変更を加えることが可能でありかつそうした変更が本発明に包含されることを以上の内容から理解すべきである。また、本発明は、本明細書中に提供される特定の実施例に限定されることが意図されるものではない。上述の明細書を参照しながら本発明を説明してきたが、本明細書中の好ましい実施形態の説明および例示は、限定的な意味で解釈されるものではない。さらに、本発明の態様はすべて、さまざまな条件および変動要因に依存する本明細書中に示された特定の描写、構成、または相対的割合に限定されるものではないと理解されるものとする。本発明の実施形態の形式および細部に関する種々の変更形態は、当業者には明らかであろう。したがって、本発明はまた、そのような修正形態、変更形態、および等価形態のいずれをも包含するものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼スラグ、高炉スラグ、金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、石灰炉ダスト、セメント炉ダストよりなる群から選択される少なくとも1種の産業廃棄物生成物と、
少なくとも1種のpH調整剤と、を含む、
壁板。
【請求項2】
前記pH調整剤が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウムよりなる群から選択される1種以上の材料を含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項3】
水をさらに含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項4】
前記産業廃棄物が、前記壁板の全重量の約60パーセント(60%)以上を構成する、
請求項1に記載の壁板。
【請求項5】
バイオ繊維、ナイロン、繊維ガラス、セルロース、およびリサイクル石油廃棄物よりなる群から選択される繊維をさらに含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項6】
発泡体の充填材をさらに含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項7】
50重量パーセント(50重量%)未満のフライアッシュをさらに含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項8】
片面上または両面上にペーパーをさらに含む、
請求項1に記載の壁板。
【請求項9】
少なくとも1種の産業廃棄物生成物を含有するコアを覆う少なくとも1層のペーパー外側層であって、前記産業廃棄物生成物が、フライアッシュ、製鋼スラグ、高炉スラグ、金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、石灰炉ダスト、およびセメント炉ダストよりなる群から選択され、かつ前記コアが、50重量%未満のフライアッシュ含有率を有するペーパー外側層と、
水と、
少なくとも1種のpH調整剤と、
を含む、
壁板。
【請求項10】
前記pH調整剤が、
酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウム
よりなる群から選択される1種以上の材料を含む、
請求項9に記載の壁板。
【請求項11】
少なくとも5重量%の石灰炉ダストを有する壁板コアを含む、
低内包エネルギー壁板。
【請求項12】
前記面の片面上または両面上にペーパーをさらに含む、
請求項11に記載の壁板。
【請求項13】
発泡体の充填材をさらに含む、
請求項11に記載の壁板。
【請求項14】
高炉スラグをさらに含む、
請求項11に記載の壁板。
【請求項15】
水と、
酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウム
の群から選択される少なくとも1種のpH調整剤と、をさらに含む、
請求項11に記載の壁板。
【請求項16】
フライアッシュが50重量%未満である建築材料の製造方法であって、
少なくとも1種の産業廃棄物生成物を含む初期スラリーを形成する工程であって、前記産業廃棄物生成物が、フライアッシュ、製鋼スラグ、高炉スラグ、金属精製スラグ、膨張パーライト副生成物、石灰炉ダスト、セメント炉ダストよりなる群から選択される工程と、
前記初期スラリーに少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程であって、前記pH調整剤が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、またはアルミン酸カルシウムよりなる群から選択される1種以上の成分を含む工程と、
前記初期スラリーに水を添加する工程と、
前記初期スラリーを固化させる工程と、を含む、
方法。
【請求項17】
固化した前記スラリーを所望の形状にカットする工程をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーに遅延剤材料を添加して前記スラリーが固化するのに要する時間を増加させる工程をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリーに促進剤材料を添加して前記スラリーが固化するのに要する時間を減少させる工程をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記スラリーを所望の形状の成形型内に注加する工程をさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
実質的に石膏を含まない壁板であって、
スラグ、炉ダスト、およびフライアッシュの群から選択される少なくとも1種の産業廃棄副生成物と、
水と、
pH調整剤と、を含む、
壁板。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502944(P2011−502944A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534189(P2010−534189)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/083463
【国際公開番号】WO2009/064929
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(506078334)シリアス・マテリアルズ・インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】