説明

低圧損型スターリングエンジン

【課題】スターリングエンジンの死容積を減らし、且つ、流動損失を減少せしめ、高回転でのエンジン出力を確保する。
【解決手段】再生器5と冷却器4をシリンダー3の同心内側に位置するシリンダーライナー7の同一円筒空間内に配置し、該再生器である比較的幅の広い金網を該円筒空間内で円周方向に巻かれた状態で配置し、そして、水冷却器をシリンダーライナーに形成された円筒空間と、同心外側のシリンダー外周壁と、ストップ部材8の延長部で密封的に形成された水冷ジャケット或いはシリンダー外周壁と直接接触する様に巻かれた銅管コイルで冷却する構成とすることで、作動ガスはシリンダーライナーに形成された冷却器および再生器の大径部僅少スキマをストレートで且つ、スムースに往復し、流動損失が低減する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスターリングエンジンをより小型化高出力化するため高速回転が可能となるようにシリンダー内の作動ガスの往復流動損失による圧力損失を大幅に軽減することを狙いとしたスターリングエンジンである。
【背景技術】
【0002】

スターリングエンジンは一種の外燃機関であり、シリンダー内部の作動ガスを外部から加熱器を介して加熱膨張せしめ、冷却器を介して冷却収縮せしめエンジンとして動作させるものである。そして、スターリングエンジンの最大の特徴は再生器を前記加熱器と冷却器の間に設けて、作動ガスが加熱側から冷却側に移動する際に該再生器で一旦蓄熱し、そして、作動ガスが冷却側から加熱側に移動する際には該蓄熱された熱を受熱し、昇温されて加熱器にいたる構成としたことである。
【0003】
しかしながら、シリンダー内を作動ガスが冷却側→再生器→加熱器→再生器→冷却器と往復流するため、作動ガスの流動損失(圧力損失)が発生する。作動ガスが空気の場合は1000rpm、ヘリュームガスの場合は1800rpm、そして、最も粘性の小さい水素ガスでも2500rpm以上の回転でエンジンの出力は顕著に減少する傾向となる。
一方、内燃機関は吸気・排気が一方向で行われるためこのような流動損失が少なく、5000rpmまでも回転し、回転にほぼ比例して出力が増加する。この重量にたいする比出力の大きさが、スターリングエンジンの実用化にブレーキとなっていた。
また、スターリングエンジンではピストン頂隙、冷却器、再生器、加熱器、および通路などで占める所謂無駄な容積(死容積という)がある。該死容積が大きくなるとエンジン出力が低下する傾向がある。従って、冷却器、再生器、加熱器などの熱交換器での流動損失を減らすために、作動ガスの流路断面積を増やすことは、前記死容積を大きくすることは問題の解決にはならない。死容積も減らし、流動損失も同時に減らすことがスターリングエンジンに最も望まれることである。
【0004】
現在のスターリングエンジンの構成において、まず、冷却器はチューブ&シエル型が最も多く、内径およそΦ1mmの数十本細管内を作動ガスが流れ、管外を水が流れ冷却するが、該管内の作動ガスによる流動損失は大きい。また、再生器は100メッシュ〜200メッシュの細かい目のステンレスの金網を流れ方向に直角に数百枚積層しているものが殆ど一般的であり、これが、流動損失の最大の原因となっている。スターリングエンジンの最大の特徴が最大のネックになっているのが現状である。また、加熱器は管長はあるが、管内径も大きくとれるため、流動損失は比較的問題とはならない。
更に、一般的なスターリングエンジンにおいて、冷却器、再生器、および加熱器を一体的に構成するシリンダーは、一般的にフランジ部を有し、該フランジでエンジンケースに固定されている。このためフランジ付きシリンダーの外周にウオータジャケットを設けることは構成上困難である。また、銅管のコイル巻き冷却器をシリンダー外周に構成することは可能であるが、冷却有効長を長く取れないこととフランジの付いたシリンダーでは冷却マスが大きくなるなどで充分な冷却効果が得られないという欠点がある。
【特許文献1】特許公開2005−61330
【特許文献2】特許公開平7−259647
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スターリングエンジンの死容積を減らし、且つ、流動損失を減少せしめ、高回転でのエンジン出力を確保するために、再生器と冷却器をシリンダーの同心内側に位置するシリンダーライナーの同一円筒空間内に配置し、該再生器である比較的幅の広い金網を該円筒空間内で円周方向に巻かれた状態で配置し、そして、前記水冷却器を前記シリンダーライナーに形成された円筒空間と同心外側のシリンダー外周壁とストップ部材の延長部で密封的に形成された水冷ジャケット或いはシリンダー外周壁と直接接触する様に巻かれた銅管コイルで冷却する構成とすることで、作動ガスはシリンダーライナーに形成された冷却器および再生器の大径部僅少スキマをストレートで且つ、スムースに往復し、流動損失を低減する構成とすることが狙いである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、前記再生器と冷却器をシリンダーライナーの同一円筒空間内に配置し、そして、前記水冷却器を前記円筒空間と同心外側に配置されたシリンダーに水冷ジャケット或いは銅管コイルで冷却する構成とするには、該シリンダーに固定用フランジ部を設けなくシリンダーの円筒部を直接固定するが一つのポイントとなる。本発明はシリンダーとエンジンケースの固定を一個のリング部材で行うこととし、該リング部材を一方はフランジ部材或いはエンジンケースで他端はストップ部材で両側から挟んで固定する構成としたことを特徴とする。
そして、ストップ部材の他端はシリンダー外周に2箇所密封状態で軸方向に延長し、ウオータジャケットを形成することを特徴とするスターリングエンジンを提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、最小限の死容積で作動ガスの冷却器および再生器の流動損失(圧力損失)を小さく抑えたエンジンを提供するとともに、確実な水冷却が行え、更に、金網を巻いた長尺再生器により作動ガスの通過パスが長くなり、再生器効率が高くとれるという効果も付随的に出る。
こうしたことで、作動ガスの流動損失が低減され、高回転で出力が得られるスターリングエンジンが提供でき、冷却器および再生器の構成も簡単となり、より安価なスターリングエンジンを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】

この構成は高速回転が要求されるフリーピストンのスターリングエンジンで最も優れた効果を発揮する。勿論、キネマチック型のスターリングエンジンにおいても小型化と安価なエンジンという効果が期待できる。
【実施例1】
【0009】
図1はスターリングエンジンの一般的構成を示したものである1はキネマチック型のスターリングエンジン発電機本体を示す。該エンジン本体1は2個の同軸上に配置されたパワーピストン14’とディスプレーサピストン13’に連結されたディスプレーサロッド15’を所定の位相差で駆動するクランク機構16’とフライホイール17’からなる駆動部、および、始動時はモータとして作動し、エンジン自立後は発電機として作動するモータ&発電機部18’、そして、前記ディスプレサピストン13’と同心軸上に配置された熱交換器類である冷却器4’、再生器5’および加熱器6’を有する作動部の3つの部分で構成されている。
前記駆動部であるパワーピストン15’はフランジ部材9’の内径側で軸方向摺動可能に嵌合し、そして、前記ディスプレーサピストン13’はシリンダー3’の内側にあって同心軸上に配置されたシリンダーライナー7’の内径側で摺動可能に嵌合している。そして、前記パワーピストン14’の上端部と前記ディスプレーサピストン13’に設けられたピストンシール19’で形成された低温空間12’と前記ディスプレーサピストン13’の上端部とシリンダー3’の内径側上端部で形成される高温空間11’があり、該2つの空間を繋ぐ作動ガス経路に冷却器4’、再生器5’、通路22’、および加熱器6’が配置される構成となっている。
該冷却器4’は一般的なチューブ&シェルであり、前記シリンダー3’に密封されて同軸上で嵌合し、水入り口と出口を有し、水冷却され、そして、フランジ部材9’で一端を軸方向で固定され他端はシリンダー3’の肩部で固定されている。また、再生器5’は一般的には数百枚の金網を軸方向に積層したタイプのものであり、シリンダー3’の内径側と前記シリンダーライナー7’の間にドウナツ状に配置されている。更に、前記シリンダー3’は通路22’と加熱器6’を有し、全体はフランジ部でエンジンケース2’に固定される構成となっている。
【0010】
図2は本発明の全体構成と拡大図を示したものである。図1の構成と異なるところのみ以下説明する。
冷却器4は一般的なチューブ&シェルではなく、シリンダー3の内径側と該シリンダー3に同軸上で嵌合しているシリンダーライナー7の外周部に形成された狭い通路が作動ガス側の冷却空間となり、そして、ストップ部材8の延長した内径側とシリンダー3の外周壁と密封的に形成された水入り口と出口を有するウオータジャケット部で水冷却される構成となっている。また、再生器5は一般的な数百枚の金網を軸方向に積層したタイプのものでなく、前記冷却器と同じ延長空間上に配置され、シリンダー3の内径側と前記シリンダーライナー7の間に長い幅で円周巻き状に配置されており、そして、前記図1の通路22’が省略され無駄な死容積空間がなくなっている。更に、前記シリンダー3全体は該シリンダー3の一端に設けられた溝に嵌ったリング部材10をフランジ部材9の肩部とストップ部材8の一端で挟んでエンジンケース2に固定する構成となっている。
【0011】
図3は本発明の他の実施例を示したものである。図1の構成と異なるところのみ以下説明する。
冷却器4”は一般的なチューブ&シェルではなく、シリンダー3の内径側と該シリンダー3に同軸上で嵌合しているシリンダーライナー7の外周部に形成された狭い通路が作動ガス側の冷却空間となり、そして、シリンダー3の外周壁に密着的に巻かれた熱伝導性に優れた銅管で水冷却される構成となっている。できれば、該銅管を巻く際に放熱効果のあがるシリコン熱伝導剤を使用すると冷却効率がより向上する。また、再生器5は一般的な数百枚の金網を軸方向に積層したタイプのものでなく、前記冷却器と同じ延長空間上に配置され、シリンダー3の内径側と前記シリンダーライナー7の間に長い幅で円周巻き状に配置されており、そして、前記通路22’が省略され無駄な死容積空間がなくなっている。更に、図2と同様、前記シリンダー3全体は該シリンダー3の一端に設けられた溝に嵌ったリング部材10をエンジンケース2の肩部とストップ部材8の一端で挟んでエンジンケース2に固定する構成となっている。
該エンジンケース2は前述図2のフランジ部材9が一体的に構成されている場合を示したものであり、構造上問題はない。
【0012】
図4は本発明の実施例を他の形式のスターリングエンジンで示したもである。図1の構成と異なるところのみ以下説明する。1”はフリーピストン型のスターリングエンジン発電機本体を示す。
該エンジン本体1”は2個の同軸上に配置されたパワーピストン14とディスプレーサピストン13に連結されたディスプレーサロッド15を複数個のバネ手段により所定の位相差で駆動するリニアー駆動機構16”、および、始動時はリニアーモータとして作動し、エンジン自立後は発電機として作動するリニアーモータ&発電機部18”、そして、前記ディスプレサピスト13と同心軸上に配置された熱交換器類である冷却器4、再生器5および加熱器6を有する作動部の3つの部分で構成されている。
冷却器4、再生器5、およびシリンダー3の固定方法は図2のクランク型スターリングエンジンと全く同じであるため説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はスターリングエンジンの一般的構成を示したものである。
【図2】図2は本発明の全体構成と拡大図を示したものである。
【図3】図3は本発明の他の実施例を示したものである。
【図4】図4は本発明のの実施例を他の形式のスターリングエンジンで示したもである。
【符号の説明】
【0014】
1 スターリングエンジン発電機本体
2 エンジンケース
3 シリンダー
4 冷却器
5 再生器
6 加熱器
7 シリンダーライナー
8 ストップ部材
9 フランジ部材
10リング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】

金網からなる再生器と水冷却器を有するスターリングエンジンに於いて、シリンダーをリング部材で軸方向に固定することにより、再生器と冷却器をシリンダーライナーの同一円筒空間内に配置することが可能となり、該再生器である金網を該円筒空間内で円周方向に巻かれた状態で配置し、そして、前記円筒空間と同心外側に配置されたシリンダー壁に形成された水冷ジャケット或いは直接シリンダーに巻き付けた銅管コイルで冷却する低圧損型スターリングエンジンを提供する。
【請求項2】
請求項1のスターリングエンジンにおいて、前記シリンダーを軸方向に固定するリング部材を一方はフランジ部材或いはエンジンケースで他端はストップ部材で両側から挟んで固定する構成となっていることを特徴とするスターリングエンジンを提供する。
【請求項3】
請求項1のスターリングエンジンにおいて、前記ストップ部材の一端が前記リング部材を軸方向に固定しており、そして、他端はシリンダー外周に2箇所密封状態で軸方向に延長し、シリンダー外周壁との間にウオータジャケットを形成することを特徴とするスターリングエンジンを提供する。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257250(P2009−257250A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108947(P2008−108947)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(301010892)百瀬機械設計株式会社 (16)