説明

低酸素活性化型プロドラッグを用いるがんの処置

TH−302などの低酸素活性化型プロドラッグを単独あるいは他の抗がん剤および/または放射線療法と併用して投与することによってがんが処置され得る。併用療法では、低酸素活性化型プロドラッグと別の抗がん剤または放射線療法を同じ24時間の期間内に投与してもよく、他の抗がん剤または放射線療法の投与の開始前に低酸素活性化型プロドラッグの投与を終了してもよい。一態様において、本発明は、TH−302または式Iの別の化合物(10mg/mL〜約300mg/mL)、エタノール(70%〜95%)、非イオン界面活性剤(TWEEN 80など)(5%〜10%)、および任意選択で1種類以上の他の薬剤(ジメチルアセトアミドなど)を含む安定な液状組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、以下の米国仮特許出願第61/107,253号(2008年10月21日出願);同第61/118,368号(2008年11月26日出願);同第61/150,700号(2009年2月6日出願);同第61/151,163号(2009年2月9日出願);および同第61/244,172号(2009年9月21日出願)に対して優先権を主張する。前記出願の全体の開示が、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、単独ならびに低酸素活性化型でない抗がん薬と併用して、および/または放射線療法と併用して投与される低酸素活性化型プロドラッグでがんを処置するための方法および組成物を提供する。本発明は、医学、薬理学および医薬品化学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
がんは、ヒトの罹病率および死亡率の主な原因の1つである。がんの処置は、正常細胞を損傷または死滅させることなくがん細胞を死滅させることは困難であるため、難題である。がん処置中の正常細胞の損傷または死滅により、患者に有害な副作用が引き起こされ、がん患者に投与される抗がん薬の量が制限され得る。また、抗がん薬が透過されない血管構造から遠位の領域のがん細胞を死滅させることも困難である。
【0004】
多くのがん細胞は、正常細胞と比べてより低酸素性である。腫瘍の低酸素は、抗がん治療に対する抵抗性、がんの再発および予後不良と関連している。前臨床および臨床開発中の一部薬物は、低酸素がん細胞を標的化するものである。このような薬物は、低酸素活性化型プロドラッグまたは「HAP」と称され、不活性形態またはプロドラッグ形態で投与されるが、低酸素環境で活性化され、毒性となる。特許文献1および特許文献2(各々、引用により本明細書に組み込まれる)には、以下の式I
【0005】
【化1】

(式中、Zは、
【0006】
【化2】

からなる群より選択され、
は、ClまたはBrである)
で規定される構造を有するものなどのHAPが記載されている。TH−302およびTH−281として知られる化合物は、特に有望な治療薬候補である。TH−302は、化学名(2−ブロモエチル)({[(2−ブロモエチル)アミノ][(2−ニトロ−3−メチルイミダゾル−4−イル)メトキシ]ホスホリル})アミンで知られており、下記:
【0007】
【化3】

で表わされる構造を有する。非特許文献1(引用により本明細書に組み込まれる)参照。別の有望なHAPはTH−281であり、これはTH−302と、TH−302に存在する2−ブロモエチル基の代わりに2−クロロエチル基を有する点だけが異なる。
【0008】
依然として、抗がん有効性を改善するためのHAP(TH−302およびTH−281など)の製剤化のための新しい方法、ならびにがん治療を改善するための該HAPおよび他のHAPを単独および他の抗がん剤と併用して投与するための方法の必要性が存在する。本発明は、このような必要性を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第07/002931号
【特許文献2】国際公開第08/083101号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Duanら,2008,“Potent and highly selective hypoxia−activated achiral phosphoramidate mustards as anticancer drugs,”J Med.Chem.51:2412
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
一態様において、本発明は、TH−302または式Iの別の化合物(10mg/mL〜約300mg/mL)、エタノール(70%〜95%)、非イオン界面活性剤(TWEEN 80など)(5%〜10%)、および任意選択で1種類以上の他の薬剤(ジメチルアセトアミドなど)を含む安定な液状組成物を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、がん治療を必要とする患者に、TH−302または式Iの別の化合物を単独薬剤として(すなわち、単独療法で(この場合、TH−302または式Iの他の化合物での治療過程中、他の抗がん剤は投与しない))、240mg/m〜1g/mの範囲の用量で投与することを含む、患者のがんをTH−302または式Iの別の化合物で処置するための方法を提供する。一実施形態では、治療有効用量を1週間に1回、少なくとも3週間投与する。一実施形態では、治療有効用量を1週間に1回で3週間投与し、4週目は投与を行わず(4週間を1「サイクル」とする)、この投与パターンを1回以上のさらなるサイクルで続ける。一実施形態では、治療有効用量を、3週毎に1回投与し、この投与パターンを1回以上のさらなるサイクルで続ける。種々の実施形態において、1週間に1回投与される用量は、480mg/m、575mg/m、または670mg/mである。種々の実施形態において、がんは小細胞肺がん(SCLC)、例えば限定されないが、抗療性のSCLCまたは黒色腫である。一態様において、本発明は、TH−302を単独薬剤として投与することによるがんの処置方法であって、前記TH−302が200mg/m〜700mg/mの範囲の量でがん治療(例えば、小細胞肺がんまたは黒色腫の処置)を必要とする患者に静脈内投与される方法を提供する。
【0013】
一態様において、本発明は、小細胞肺がんを有する患者に対するTH−302単独療法剤の投与を提供する。一部の実施形態では、TH−302を1週間に1回3週間、続いて1週間投与なしで(例えば、28日サイクルの1、8および15日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を小細胞肺がんを有する患者に1週間に1回3週間、続いて1週間投与なしで投与し、用量は約480mg/m〜約670mg/mの範囲とする。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の28日サイクルで投与する。一部の実施形態では、TH−302を3週毎に1回(例えば、21日サイクルの1日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を小細胞肺がんを有する患者に、3週毎に1回、約670mg/m〜940mg/m未満の範囲の用量で投与する。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の21日サイクルで投与する。
【0014】
一態様において、本発明は、転移性黒色腫を有する患者に対するTH−302単独療法剤の投与を提供する。一部の実施形態では、TH−302を1週間に1回3週間、続いて1週間投与なしで(例えば、28日サイクルの1、8および15日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を約480mg/m〜約670mg/m、場合によっては約575mg/m〜約670mg/mの範囲の用量で投与する。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の28日サイクルで投与する。
【0015】
別の態様において、本発明は、患者にTH−302(または式Iの別の化合物)を、粘膜および/または皮膚に対する損傷を低減または予防するための薬剤の経口および/または局所製剤と併用して投与する、がんの処置方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、低酸素活性化型プロドラッグ(HAP)と、HAPでない第2の抗がん剤とを投与するための新しい方法を提供する。このような方法によれば、該2種類の薬物は、HAP投与の終了から指定の時間後に開始される非HAP薬物の投与と非同時発生的に投与される。
【0017】
別の態様において、本発明は、がん治療を必要とする患者に、TH−302または式Iの別の化合物を非HAP抗がん剤と併用して投与する、がんの処置方法を提供する。種々の実施形態において、非HAP抗がん剤は、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセドまたはドキソルビシンである。種々の実施形態において、がんは、膵臓がん、前立腺がん、非SCLC(NSCLC)、または肉腫である。一実施形態では、がんが膵臓がんであり、非HAP抗がん剤がゲムシタビンである。一実施形態では、がんが前立腺がんであり、非HAP抗がん剤がドセタキセルである。一実施形態では、がんがNSCLCであり、非HAP抗がん剤がドセタキセルまたはペメトレキセドである。一実施形態では、がんが肉腫であり、非HAP抗がん剤がドキソルビシンである。
【0018】
一部の態様において、本発明は、治療有効用量のTH−302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬とを、がん治療を必要とする患者に投与することによるがんの処置方法であって、
(a)患者が、NSCLC、前立腺がん、神経内分泌がん、肛門がん、尿膜管がん 尿道がん 乳がん、黒色腫、および腎細胞がん腫の処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がドセタキセルであるか、または
(b)患者が、胆管がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、NSCLC、膨大部がん(ampullary cancer)、神経内分泌がん、軟部組織肉腫、および甲状腺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がゲムシタビンであるか、または
(c)患者が、食道がん、膵臓がん、NSCLC、神経内分泌がん、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、肝細胞がん腫(HCC)、腎がん、および耳下腺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がペメトレキセドである、
方法を提供する。
【0019】
一部の態様において、本発明は、TH−302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬とを、がん治療を必要とする患者に投与することによるがんの処置方法であって、TH−302が200mg/m〜500mg/mの範囲の量で静脈内投与され、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬の投与がTH−302の投与が終了してから30分〜8時間後、任意選択で2時間〜6時間後に開始される方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
この発明の詳細な説明は、読み手の便宜のため、複数のセクションに区切る。セクションIには、本明細書で用いる一部の用語の定義を示す。セクションIIでは、本発明によって提供されるTH−302の医薬製剤、TH−281、および式Iの他の化合物を説明する。セクションIIIでは、本発明によって提供される単独の薬剤での治療(単独療法)においてTH−302、TH−281、および式Iの他の化合物でがんを処置するための方法を説明する。セクションIVでは、HAPと非HAP抗がん剤の併用によりがんを処置するための方法を説明する。セクションVでは、TH−302、TH−281、および式Iの他の化合物を非HAP抗がん剤と併用してがんを処置するための方法を説明する。セクションVの後には、本発明によって提供される方法および組成物の実例としての実施形態を示す実施例を続ける。
【0021】
I 定義
以下の定義は、読み手を補助するために示す。特に規定のない限り、本明細書で用いる技術用語、表記法および他の科学用語または医学用語または用語法はすべて、化学分野および医学分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。一部の場合において、一般的に理解されている意味を有する用語を、明瞭性および/または参照容易性のために本明細書において定義する。かかる定義を本明細書に含めることは、当該技術分野で一般的に理解されている用語の定義と実質的に異なることを示すものと解釈されるべきでない。
【0022】
「a」、「an」および「the」は、本文中に明示していない限り、複数の指示対象物を包含する。したがって、例えば、化合物(a compound)に対する言及は、1つ以上の化合物または少なくとも1つの化合物を示す。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に用いる。
【0023】
「約」は、本明細書で用いる場合、異なる機器、試料および試料調製物間でなされる測定間に見られ得るばらつきを考慮して、所与の値が端点の「少し上」または「少し下」であってもよいことを示すことにより、数値範囲の該端点に対して柔軟性をもたらすために用いる。一態様において、「約」は、ある量の±20%をいい、限定されないが、該量の±15%、±10%、および±5%を含む。
【0024】
「活性薬剤」は、所望の薬理学的効果を有する化合物をいい、記載の活性薬剤のあらゆる薬学的に許容され得る形態を包含し、例えば、活性薬剤は、異性体混合物、イオン交換樹脂に結合された固形複合体などであり得る。また、活性薬剤は、溶媒和物の形態であってもよい。また、活性薬剤は、記載されている活性薬剤のあらゆる薬学的に許容され得る塩、誘導体および類似体ならびにその組合せを包含する。例えば、活性薬剤の薬学的に許容され得る塩としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トロメタミン、L−リシン、L−アルギニン、N−エチルグルカミン、N−メチルグルカミン およびその塩形態、ならびにその組合せなどが挙げられ得る。任意の形態の活性薬剤が、本発明の組成物、例えば、活性薬剤の薬学的に許容され得る塩、活性薬剤の遊離酸もしくは遊離塩基、またはその混合物における使用に適当であり得る。
【0025】
薬物を患者に「投与すること」または「投与」(およびこの語句の文法的相当語句)は、医療専門家による患者への投与であり得る、もしくは自己投与であり得る直接投与および/または薬物を処方する行為であり得る間接投与、をいう。例えば、患者に薬物の自己投与を指示する医師、および/または患者に薬物の処方箋を渡す医師は、薬物を患者に投与している。
【0026】
「進行型充実性腫瘍」は、初期またはファーストライン処置後に再発、進行、転移した、および/または該処置に抗療性である充実性腫瘍をいう。進行型充実性腫瘍としては、限定されないが、骨、脳、肝臓、肺、リンパ節、膵臓、前立腺、および軟部組織(肉腫)内の転移性の腫瘍が挙げられる。
【0027】
「がん」は、白血病、リンパ腫、がん腫、および侵潤によって局所に、および転移によって全身に広がることがあり得る、無制限に増殖する可能性のある他の悪性腫瘍をいう。がんの例としては、限定されないが、副腎、骨、脳、乳房、気管支、結腸および/または直腸、胆嚢、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、神経組織、膵臓、前立腺、副甲状腺、皮膚、胃、ならびに甲状腺のがんが挙げられる。がんの一部の特定の他の例としては、急性および慢性のリンパ球性および顆粒球性の腫瘍、腺がん腫、腺腫、基底細胞がん腫、子宮頚部形成異常および上皮内がん腫(in situ carcinoma)、ユーイング肉腫、類表皮がん腫、巨細胞腫瘍、多形性神経膠芽腫、ヘアリーセル腫瘍、腸の神経節細胞腫、過形成性角膜神経腫瘍、島細胞がん腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性カルチノイド、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン症候群様体質(marfanoid habitus)腫瘍、髄様がん腫、転移性皮膚がん腫、粘膜神経腫、骨髄腫、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性および他の肉腫、卵巣腫瘍、褐色細胞腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、小細胞肺腫瘍、潰瘍形成性および乳頭型両方の扁平上皮細胞がん腫、過形成、精上皮腫、軟部組織肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫、局所皮膚病変、細網肉腫(veticulum)、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0028】
「用量」および「投薬量」は、投与のための活性薬剤または治療用薬剤の特定の量をいう。
【0029】
「投薬形態」は、ヒト被検体および他の哺乳動物に対する投薬ユニットとして適当な物理的に独立した単位をいい、各単位には、所望の発症耐性および治療効果が得られるように計算された所定量の活性薬剤が、1種類以上の適当な医薬用賦形剤(キャリアーなど)とともに含まれる。
【0030】
「賦形剤」としては、簡便な投薬形態を調製するために活性薬剤(TH−302など)と合わされる任意の不活性物質、および活性薬剤を送達するためのビヒクルが挙げられる。
【0031】
「製剤」および「組成物」は互換的に用い、2種類以上の化合物、要素または分子の混合物をいう。一部の態様において、用語「製剤」および「組成物」は、1種類以上の活性薬剤とキャリアーまたは他の賦形剤との混合物をいうために用いていることがあり得る。医薬製剤は、ヒトまたは哺乳動物に対する投与に適したものである。
【0032】
「過剰増殖性疾患」は、細胞の過剰増殖(例えば、異常に増大した速度または量の細胞増殖)を特徴とする疾患をいい、がんならびに他の疾患、例えば、自己免疫障害において起こるような過剰増殖が免疫反応の一部であるものが挙げられる。がん以外の過剰増殖性疾患の例としては、限定されないが、アレルギー性血管炎および肉芽腫症(チャーグ‐ストラウス病)、石綿症、喘息、萎縮性胃炎、良性前立腺増殖症、水疱性類天疱瘡、セリアック病、慢性気管支炎および慢性閉塞性気道疾患、慢性副鼻腔炎、クローン病、脱髄性ニューロパシー、皮膚筋炎、湿疹、例えば、アトピー性皮膚炎、エウスタキオ管の疾患、巨細胞性動脈炎、移植片拒絶、過敏性肺炎、過敏性血管炎(ヘノッホ‐シェーンライン紫斑病)、刺激性皮膚炎、炎症性溶血性貧血、炎症性好中球減少症、炎症性腸疾患、川崎病、多発性硬化症、心筋炎、筋炎、鼻ポリープ、鼻涙管の疾患、新生物性脈管炎、膵炎、尋常性天疱瘡、原発性糸球体腎炎、乾癬、歯周疾患、多嚢胞性腎臓疾患、結節性多発性動脈炎、多発性血管炎重複症候群、原発性硬化性胆管炎、関節リウマチ、血清病、手術による癒着、狭窄症または再狭窄、強膜炎、強皮症、胆管の狭窄、狭窄(十二指腸、小腸および結腸の)、珪肺症および他の形態の塵肺症、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、結合組織の障害に関連する脈管炎、補体系の先天的欠損症に関連する脈管炎、中枢神経系の脈管炎、ならびにヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0033】
「低酸素活性化型プロドラッグ」または「HAP」は、対応する薬物と比べて活性が低いか、または不活性であり、該薬物と1つ以上の生体還元性基で構成されたプロドラッグをいう。HAPとしては、さまざまな還元剤および還元酵素、例えば限定されないが、単一電子伝達酵素(シトクロムP450レダクターゼなど)および二電子伝達(またはヒドリド転移)酵素によって活性化されるプロドラッグが挙げられる。一部の実施形態では、HAPは、2−ニトロイミダゾール誘発性低酸素活性化型プロドラッグである。HAPの例としては、限定されないが、TH−302、TH−281、PR104およびAQ4Nが挙げられる。TH−302の合成方法は、PCT特許出願公開番号WO07/002931およびWO08/083101(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。PR104の合成方法は、米国特許出願公開第2007/0032455号(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。HAPの他の例は、例えば、米国特許出願公開第2005/0256191号、同第2007/0032455号および同第2009/0136521号(これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)ならびにPCT特許出願公開番号WO00/064864、WO05/087075およびWO07/002931(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0034】
「患者」および「被検体」は、がんまたは他の過剰増殖性疾患の処置を必要とする哺乳動物をいうために互換的に用いる。一般的に、患者はヒトである。一般的に、患者は、がんと診断されたヒトである。一部の特定の実施形態では、「患者」または「被検体」は、薬物および治療薬のスクリーニング、キャラクタリゼーションおよび評価に使用される動物などの非ヒト哺乳動物(非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、マウスまたはラットなど)をいうことがあり得る。
【0035】
「薬学的に許容され得るキャリアー、賦形剤または希釈剤」は、医薬製剤の調製に有用であり、かつ一般的に安全で無毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものでないキャリアー、賦形剤または希釈剤をいい、ヒト用薬学的使用および/または獣医学的使用に許容され得るキャリアー、賦形剤または希釈剤が挙げられる。「薬学的に許容され得るキャリアー、賦形剤または希釈剤」は、1種類または1種類より多くのかかるキャリアー、賦形剤または希釈剤をいう場合があり得る。
【0036】
「薬学的に許容され得る塩」は、比較的無毒性の酸を用いて調製される活性薬剤の塩をいう。本発明の化合物は相対的に塩基性の官能基を含み、かかる化合物の中性形態を充分な量の所望の酸と、無希釈または適当な不活性溶媒中のいずれかで接触させることにより酸付加塩が得られ得る。薬学的に許容され得る酸付加塩の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素リン酸硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸など)から誘導されるもの、ならびに比較的無毒性の有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルイルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など)から誘導される塩が挙げられる。また、アミノ酸の塩(例えば、アルギン酸塩など)およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩なども挙げられる(例えば、Berge,S.M.ら,“Pharmaceutical Salts”Journal of Pharmaceutical Science,66:1 19,1977参照)。本発明の一部の特定の具体的な化合物は、塩基性官能基と酸性官能基の両方を含み、該化合物を塩基付加塩または酸付加塩のどちらにも変換させることが可能である。該化合物の中性形態は、その塩を塩基と接触させ、親化合物を慣用的な様式で単離することにより再生され得る。該化合物の親形態は、その種々の塩形態と、一部の物性(極性溶媒への溶解度など)において異なるが、本発明の解釈上、その他の点では、該化合物の塩は親形態と同等である。
【0037】
「プロドラッグ」は、投与されると生物学的に活性な、または少なくとも1つの性質に関してより活性な化合物(または薬物)に代謝あるいは変換される化合物をいう。プロドラッグは、その薬物に対して、該薬物と比べて活性が低くなる、または不活性となるような様式で化学的に修飾されたものであるが、該化学修飾は、プロドラッグが投与された後、代謝的または他の生物学的プロセスによって対応する薬物が生成されるようなものである。プロドラッグは、活性薬物と比べて、代謝安定性もしくは輸送特性が改変されたもの、副作用が少ない、もしくは毒性が低いもの、または風味が改善されたものであり得る(例えば、参考文献Nogrady,1985,Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,第388〜392頁(引用により本明細書に組み込まれる)参照)。プロドラッグは、対応する薬物以外の反応体を用いて合成されたものであってもよい。
【0038】
「QnD」または「qnd」は、n日毎に1回の薬物投与をいう。例えば、QD(またはqd)は、毎日1回すなわち1日1回の投与をいい、Q2D(またはq2d)は、2日毎に1回の投与をいい、Q7Dは、7日毎に1回すなわち週1回の投与をいい、Q5Dは、5日毎に1回の投与をいう。
【0039】
症状(1つまたは複数)の「低減」(およびこの語句の文法的相当語句)は、症状(1つもしくは複数)の重症度または頻度の低下、あるいは症状(1つもしくは複数)の解消をいう。
【0040】
「充実性腫瘍」は、白血病以外のがんをいう。
【0041】
「t1/2」は、薬物の「半減期」;すなわち、例えば、血漿、血清または血液中の薬物の濃度が半分になるのに必要とされる時間量をいう。低酸素活性化型でない抗がん薬のt1/2は、例えば、PHYSICIANS’DESK REFERENCE,Medical Economics Company,Inc.,Oradell,N.J.の最新版;およびGoodman & Gilman’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS”,McGraw−Hill,New Yorkに示されている、および/または医学文献に論考されている。低酸素活性化型プロドラッグのt1/2は、文献から知得され得るか、または常套的な薬物動態的解析法を用いて測定され得る。
【0042】
「治療有効量」の薬物は、がんまたは他の過剰増殖性疾患を有する患者に投与した場合、薬物が、該患者において意図される治療効果(例えば、がんまたは別の過剰増殖性疾患の1つ以上の症状発現の緩和、改善、軽減または解消)を有する量をいう。治療効果は、必ずしも1回の用量の投与ではもたらされず、一連の用量を投与してからようやくもたらされるものであり得る。したがって、治療有効量は、1回以上の投与にて投与され得る。
【0043】
病状または患者を「処置すること」または「処置」は、有益な、または所望の結果(例えば臨床結果)を得るために講じられる措置をいう。本発明の解釈上、有益な、または所望の臨床結果としては、限定されないが、がんもしくは他の過剰増殖性疾患の1つ以上の症状の緩和もしくは改善;疾患の程度の低下;疾患進行の遅延もしくは遅滞;疾患状態の改善、軽減もしくは安定化;または他の有益な結果が挙げられる。がんの処置は、場合によっては、部分寛解(partial response)または疾患安定状態をもたらすものであり得る。
【0044】
本明細書で用いる場合、複数の項目、構造要素、組成物の要素および/または材料を、便宜上、共通のリスト内に提示していることがあり得る。しかしながら、このようなリストは、あたかもリストの各構成員が、別々の特定の構成員として個々に具体的に示されているかのように解釈されたい。したがって、かかるリストの個々の構成員は、共通の群に提示されており、そうでない場合の表示がないことだけに基づいて、同じリスト内の任意の他の構成員と事実上同等と解釈されるべきでない。
【0045】
濃度、量および他の数値データは、本明細書において範囲形式で表示または提示していることがあり得る。かかる範囲形式は、便宜上、簡潔性のために使用しているにすぎず、したがって、該範囲の上下限として明記される数値を含むだけでなく、該範囲内に包含されるあらゆる個々の数値または下位範囲も、あたかも各数値および下位範囲が明記されているかのごとく含むと柔軟に解釈されるべきであることは理解されよう。実例として、「約1〜約5」の数値範囲は、約1〜約5の明記された値を含むだけでなく、表示された範囲内の個々の値および下位範囲も含むと解釈されたい。したがって、この数値範囲には、2、3、4などの個々の値、および1〜3、2〜4、3〜5などの下位範囲など、ならびに1、2、3、4および5が個々に含まれる。この同じ原則は、最小または最大として数値を1つだけ記載している範囲にも適用する。さらに、かかる解釈は、記載している範囲の幅または特質とは無関係に適用されるものとする。
【0046】
本説明で用いる略号としては:
CT − コンピュータ連動断層撮影(CT)
D5W − 5%デキストロースを含む水
DLT − 用量制限毒性
HAP − 低酸素活性化型プロドラッグ
NSCLC − 非小細胞肺がん
PD − 進行性疾患
PR − 一部応答
RECIST − 充実性腫瘍の応答評価基準
SCLC − 小細胞肺がん
SD − 疾患安定状態
SLD − 最長直径の和
TGD − 腫瘍増殖遅滞
TGI − 腫瘍増殖抑止
が挙げられる。
【0047】
II.TH−302および式Iの他の化合物の医薬製剤
TH−302および式Iの他の化合物(例えば、TH−281)は患者に、薬学的に許容され得る任意の製剤にて本発明に従って(in accord with)投与され得る。例えば、PCT特許公開公報WO08/083101およびWO07/002931(ともに、引用により本明細書に組み込まれる)には、TH−302および式Iの他の化合物の液状医薬製剤の調製方法が開示されている。WO07/002931には、TH−302が凍結乾燥粉剤としてバイアル内に提供され、投与直前に、生理食塩水または5%デキストロース含有水(D5W)中で再構成され得ることが開示されている。D5W中で再構成後、このTH−302製剤は8時間以内に使用しなければならない。この凍結乾燥TH−302製剤の貯蔵寿命は、2〜8℃で約1年である。WO08/083101には、TH−302がエタノール中(1mlあたり50mgまでのTH−302を含む)の液状製剤として投与され得ることが開示されている。しかしながら、これらの先行技術製剤は、高い薬物濃度には適さない点ならびにTH−302の長期保存および/または希釈時の安定性(特に、活性薬剤の沈降の防止に関して)最適状態でないという点で制限を有する。
【0048】
本発明者らは、TH−302および式Iの他の化合物などのニトロ−ヘテロアリールホスホルアミド類型の低酸素活性化型制がん薬の不充分な水溶性度は、アルコール環境内に長期保存のための非イオン界面活性剤を供給することにより改善され得ることを見出した。このセクションでは、エタノールと非イオン界面活性剤(TWEEN 80(登録商標)など)を含む一部の特定の好ましい製剤を説明する。TWEEN 80は、ソルビタンモノオレエートポリオキシエチレン(CAS番号9005−65−6)である。好都合には、このような好ましい非経口投与可能な医薬組成物により、TH−302、ならびに溶解度が不充分な他のニトロ−ヘテロアリールホスホルアミド類型の低酸素活性化型制がん薬(例えば、TH−281および式Iの他の化合物)に対して安定性の改善および分解と析出の低減がもたらされる。また、このような好ましい製剤により、先に記載した他の製剤と比べて高い濃度の活性薬物(例えば、TH−302)がもたらされる。このような液状製剤は長期間にわたって安定であるため、該薬物の凍結乾燥は必要とされず、それにより使用前に凍結乾燥物を再構成する必要性が解消される。好ましくは、薬学的に許容され得る製剤は非経口投与に適したものである。
【0049】
本発明者らは、濃縮型の安定な医薬組成物、ならびに長期保存用の溶液中に薬物を可溶化および分散させることにより、可溶性が不充分なニトロ−ヘテロアリールホスホルアミド類型の低酸素活性化型制がん薬(TH−302および式Iの他の化合物など)の安定性が改善され得る方法を開発した。また、このような製剤に非イオン界面活性剤を含めることは、投与前の水性媒体での希釈時に起こり得る低酸素活性化型制がん薬(特に、TH−302およびTH−281)の析出と分解を抑制するに有用である。
【0050】
したがって、本発明によれば、安定なTH−302液状製剤は、非イオン界面活性剤および薬学的に許容され得るアルコールとの混合物として提供される。好ましくは、アルコールはエタノールである。好ましくは、非イオン界面活性剤はTWEEN 80である。
【0051】
エタノールは、好ましくは、容量基準で混合物の少なくとも70%の量で含める。より好ましくは、アルコールの使用量は少なくとも約70%〜約95%(容量基準)、例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも約95%である。
【0052】
一実施形態において、TWEEN 80または他の非イオン界面活性剤は、混合物の少なくとも約5%v/vの量で含める。例えば、非イオン界面活性剤は、容量基準で製剤の約5〜10%の量で含め得る。非イオン界面活性剤は、キャリアー中の溶液からのTH−302の析出の抑止を補助する。また、非イオン界面活性剤により、種々の他の機能および利点、例えば、抗微生物剤または抗菌剤としての作用などがもたらされることがあり得る。
【0053】
本発明における使用に適した他の例示的な無毒性の非イオン界面活性剤としては、限定されないが、ポリソルベート(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートおよびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート);TRITON(登録商標)として知られるアルキル化アリールポリエーテルアルコール;NONIC(登録商標)として入手可能なポリエチレングリコールtert−ドデシルトロエーテル(tertdodecyl throether);脂肪族とアミドの縮合物またはALROSOL(登録商標);芳香族ポリグリコールエーテル縮合物またはNEUTRONYX(登録商標);脂肪酸アルカノールアミンまたはNINOL(登録商標)ソルビタンモノラウレートまたはSPAN(登録商標);ポリオキシエチレンソルビタンエステルまたはTWEEN(登録商標);ソルビタンモノラウレートポリオキシエチレンまたはTWEEN 20(登録商標);ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンまたはPLURONIC(登録商標);ポリグリコール化グリセリド(LABRASOLなど)およびポリオキシエチル化ヒマシ油(CREMOPHORなど)が挙げられる。
【0054】
典型的には、本発明の液状組成物は、約10mg/ml〜約300mg/mlの活性薬剤を含む。当業者には、前述の濃度が、使用される具体的な活性薬剤および最終製剤に所望される活性薬剤の量に応じて調整され得ることが理解されよう。本発明の液状製剤に含めるTH−302の量は、意図される使用によって決定される。一般的に、TH−302の濃度は、10mg/ml〜約300mg/mlまたは30mg/ml〜約300mg/ml、より典型的には50mg/ml〜200mg/ml、より通常には50mg/ml〜約150mg/ml、さらにより通常には50mg/ml〜125mg/ml、最も通常には50mg/mlより多く、例えば、約60mg/ml、60mg/ml〜100mg/ml、100mg/ml〜150mg/ml、100mg/ml〜200mg/ml、または100mg/ml〜約300mg/mlなどの範囲である。これらの濃度は遊離塩基形態のTH−302または他の薬剤のものをいい;TH−302または他の活性薬剤が薬学的に許容され得る塩または他の形態として製剤化または投与される場合、濃度は、遊離塩基に相当する量が使用されるように調整される。
【0055】
一実施形態によれば、キャリアーはエタノールであり、医薬製剤は、少なくとも5%v/vのTWEEN 80を含む。一実施形態において、製剤は、約5〜10%(v/v)のTWEEN 80、90〜95%(v/v)のエタノール、および約50mg/ml〜125mg/mlのTH−302(例えば、約60mg/mlのTH−302)を含む。好ましい一実施形態では、製剤は、約5%のTWEEN 80、約95%のエタノール、および約60mg/mlのTH−302を含む。
【0056】
したがって、一実施形態において、製剤中の活性薬剤はTH−302(薬理学的に許容され得るあらゆる形態を含む)である。一態様において、本発明は、活性薬剤が非塩形態のTH−302である液状組成物を提供する。他の実施形態では、活性薬剤は、TH−281(任意選択でその非塩形態)または式Iの別の化合物である。本発明の該実施形態では、活性薬剤は、本発明の製剤中に任意の適当な形態で溶解されるように提供され得る。例えば、これは、粉剤、ペレット剤または顆粒剤(すなわち、より小さい単位の活性薬剤の凝集塊)の形態であり得る。任意の医薬等級のTH−302または式Iの他の化合物が使用され得る。
【0057】
好都合には、本発明の製剤では化学分解が最小限である。したがって、予期せず、非イオン界面活性剤を含む本発明の製剤により、約−20℃〜約25℃で31日以下の期間にわたるTH−302の分解が15%以下であることを特徴とする長期安定性がもたらされることがわかった。実施例1(後述)参照。典型的には、非イオン界面活性剤(例えば、TWEEN 80)を含む製剤により、約−20℃で31日以下の期間にわたるTH−302の分解が5%以下であることを特徴とする長期安定性がもたらされる。
【0058】
さらに、好都合には、本発明に従って作製されるTH−302液状製剤は卓越した安定性を示し、ここで、安定性はこの場合、TH−302が溶液状のままである(例えば、保存中または解凍時に析出しない)ことを特徴とする。
【0059】
一部の実施形態では、製剤に、任意選択でさらに、本明細書に記載の他の成分を含めてもよい。したがって、本発明の医薬製剤の種々の実施形態において、キャリアー混合物が使用される。第2のキャリアー(エタノールに加えて)が使用される場合、これは、一般的にはN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)である。使用する場合、該アミドキャリアーは、好ましくは容量基準で製剤の約20%までの量で含める。好ましくは、アミドキャリアーの使用量は約10%〜約20%(容量基準)である。一部の実施形態では、製剤は、エタノールとTH−302からなる。一部の実施形態では、製剤は、エタノール、DMAおよびTH−302からなる。
【0060】
本発明の組成物には、さらに、酸化防止剤、保存剤(メチル−、エチル−、およびプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ならびにブチル化ヒドロキシアニソールなど);乳濁剤およびキレート剤が含有され得る。好適な酸化防止剤およびキレート剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)、アスコルビン酸パルミテート、EDTA二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸;エデト酸(edentate)二ナトリウムとしても知られる)、EDTA、酒石酸、クエン酸、クエン酸一水和物、および亜硫酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態において、前述の化合物は、医薬製剤中に約0.01%〜約5%w/wの範囲の量で含まれる。具体的な一実施形態において、医薬製剤は、BHA、BHT、またはPG(約0.02%〜約1%の範囲で使用)およびEDTA二ナトリウム、クエン酸もしくはクエン酸一水和物(約2%〜約5%の範囲で使用)を含む。一実施形態において、医薬製剤は、BHA(約0.05%w/wで使用)を含む。
【0061】
活性薬剤、アルコールキャリアーおよび非イオン界面活性剤を含む製剤の混合には、任意の適当な方法が使用され得る。一実施形態では、活性薬剤、アルコールキャリアーおよび非イオン界面活性剤を合わせ、混合物を患者に、任意選択で希釈後に直接投与する。
【0062】
本発明の液状医薬製剤は、投薬形態で簡便に提供され得る。投薬形態の他の液状製剤の調製方法は既知であり、当業者には、本発明の開示を考慮すると、本発明の医薬製剤の適当な投薬形態をどのようにして調製するかが自明となろう。例えば、本発明の液状投薬形態は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippincott,Williams & Wilkins(2003)および同様の刊行物に示された手順に従って調製され得る。投与される投薬形態は、任意の事象において、本発明の教示に従って投与する場合、処置対象の病状の緩和のための治療有効量の量の活性薬剤を含む。
【0063】
本発明の医薬製剤は、薬物製剤の安定性を助長する任意のパッケージ内にパッケージングされ得る。本発明によって提供される医薬製剤は、種々のサイズおよび収容能の滅菌容器(シリンジ、バイアルまたはアンプルなど)内に収容され得る。滅菌容器には、任意選択で、1〜50ml、1〜25ml、1〜20ml、1〜10mlまたは1〜5mlの製剤が収容され得る。滅菌容器は、医薬製剤の無菌状態を維持する、輸送および保存を容易にする、ならびに事前の滅菌工程なしでの医薬製剤の投与を可能にするものである。
【0064】
また、本発明は、活性薬剤を含む液状製剤を、その必要がある宿主に投与するためのキットを提供する。一実施形態において、キットは、活性薬剤(例えば、TH−302)とキャリアー(例えば、エタノール)を含み、非イオン界面活性剤(例えば、TWEEN 80)を含める。キャリアーと界面活性剤を含む溶液中に活性薬剤を混合することにより、本発明による医薬製剤の形成が好ましくもたらされる。例えば、キットは、固形形態の低酸素活性化型制がん薬を入れた第1の容器と;非イオン界面活性剤を含むキャリアーを入れた容器を備えており;該キャリアーを該固形薬物に添加することにより該薬物の投与のための医薬製剤の形成がもたらされるものであってもよい。固形薬物とキャリアーの混合により、任意選択で、上記の濃度(例えば、約60mg/ml)のTH−302を含む医薬製剤が形成され得る。実例として、30〜300mg/mlキャリアー、任意選択で50〜200mg、100mg〜150mg/mlキャリアーのTH−302と、非イオン界面活性剤が使用され得る。
【0065】
容器またはキット内に提供される医薬製剤は、直接投与に適した形態であってもよく、患者に投与するものに対して希釈が必要とされる濃縮形態であってもよい。例えば、本明細書に記載の医薬製剤は、静脈内投与による直接投与に適した形態であり得るか、または投与前に希釈される濃縮形態であり得る。一実施形態では、約500〜1200mgのTH−302が本発明の製剤にて、D5W中で約500mlの全容量に希釈後、30〜60分間にわたって患者に投与される。
【0066】
本発明の組成物は、治療的適用、例えばがんの処置に有用である。本発明の製剤は種々の投与経路によって送達され得るが、典型的には静脈内投与される(例えば、注入によって)。しかしながら、任意の許容され得る方法が使用され得る(例えば、動脈内、カテーテルまたはステントによる局所送達など)。
【0067】
一実施形態において、低酸素活性化型制がん薬の製剤は、各々がチューブに接続された3つのアームを有するY字型コネクタなどのコネクタを介して注入される。一例として、種々のサイズのBAXTER(登録商標)Y型コネクタが使用され得る。低酸素活性化型制がん薬の製剤を入れた容器をチューブに取り付け、これをさらに、コネクタのアームの1つに取り付ける。0.9%塩化ナトリウム、または5%デキストロース、または5%グルコース、または乳酸加リンゲル液などの注入液を、Y字型コネクタの他方のアームに取り付けたチューブを介して注入する。注入液と低酸素活性化型制がん薬の製剤は、Y字型コネクタ内部で混合される。得られた混合物を患者に、Y字型コネクタの3つ目のアームに接続したチューブを介して注入する。先行技術と比べたこの投与アプローチの利点は、低酸素活性化型制がん薬が、患者の体内に入る前に注入液と混合され、したがって、水分との接触により治療用製剤の分解が起こり得る時間が短くなることである。一部の実施形態では、低酸素活性化型制がん薬は、患者の体内に入れる10分より前、5分、2分または1分前に混合する。一部の実施形態では、低酸素活性化型制がん薬は、患者の体内に入れる8時間より前、6時間、4時間、2時間または1時間前に混合する。
【0068】
上記のように、非イオン界面活性剤/アルコール溶液は水、D5Wまたは生理食塩水と容易に混合され得るため、本発明による医薬製剤により、投与直前に製剤が簡単かつ容易にさらに希釈され得るというさらなる利点がもたらされる。例えば、医薬製剤は、水、生理食塩水またはD5Wで、患者に対する投与前の8時間以内に希釈され得る。
【0069】
一実施形態において、注入投与は、患者の体表面積に処方TH−302用量を乗算することにより患者に対するmg用量を決定した後、行なわれる。TH−302の適切な数のバイアル(例えば、100mg/バイアル)を−20℃の冷凍庫から取り出し、室内周囲条件内に30〜60分間放置し、バイアルを室温まで昇温させる。各100mgのバイアルは25mlの滅菌D5Wで再構成し、充分に振る。必要とされる再構成TH−302のml数は、所望のmg用量に0.25を乗算することにより計算される(例えば、1000mg用量には250mlが必要とされる)。再構成TH−302を500/1000ml容滅菌D5W IVバッグに添加する前に、このバッグに添加すべき相当容量のTH−302を取り出し、再構成薬物をバッグに添加したとき、全容量が500/1000mlとなるようにする。
【0070】
患者には、低酸素活性化型制がん薬の製剤が、任意の治療に適当な時間、例えば、約15、30もしくは45分間、または1、2、3、4、5時間もしくはそれ以上注入され得る。注入の速度および容量は、患者のニーズに応じて調節され得る。低酸素活性化型制がん薬の製剤の注入の調節は、既存のプロトコルに従って行なわれ得る。実例として、表1に、TH−302に関する総投与用量に対する例示的な希釈容量および注入時間の概要を示す(注入容量の投与に必要とされる時間についての医師の判断に基づいて、より長い注入時間が許容される)。
【0071】
【表1】

個々の患者の表面積は、がん専門医および他の医療施術者に知られている常套的な方法を用いて求めることができる。成人ヒトでは、1mg/mの用量の活性薬剤(薬物)=約1.7mgの該薬剤または薬物/患者(すなわち、基本的な成人ヒトは、1.7mの表面積を有する)。したがって、例えば、100mg/mの薬物=約170mgの該薬物/患者。
【0072】
以下により詳細に記載するように、本発明の医薬製剤は、他の薬剤とともに共投与され得る。共投与は、本発明との関連において、1種類より多くの治療用薬剤を、臨床転帰の改善が得られるように、コーディネートされた処置過程で投与することを意味すると定義する。また、かかる共投与は、同延的(coextensive)に投与してもよい、すなわち、重複する期間中に行なってもよい。さらなる投与される薬剤は、任意の慣用的な形態であり得、注入液、治療用化合物、栄養液、抗微生物液、緩衝剤および安定化剤が挙げられ得る。治療用化合物としては、これとの関連において、限定されないが、抗新生物剤、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーの構成員である薬剤、抗生物質剤、ホルモン剤、植物由来の薬剤、生物製剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、およびモノクローナル抗体が挙げられる。セクションIVで詳細に論考するように、さらなる薬剤が好ましい実施形態における抗新生物薬である場合、2つの薬剤の投与は非同時発生的である。
【0073】
任意選択で、本発明のTH−302製剤は、非低酸素活性化型抗がん剤とともに局所送達によって投与または共投与され得る。セクションIII〜V(後述)および実施例参照。本発明の方法に従って投与されるTH−302以外の種々の抗がん剤、例えば、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビンおよびペメトレキセドの製剤、用量、投与経路、頻度およびかかる他の投与様式は、本明細書に開示している、医学文献で入手可能である、および/または当業者にわかる。本発明の医薬製剤の局所送達は、医薬製剤が所望の部位またはその付近に投与されるさまざまな手法および構造によるものであり得る。局所送達の手法および構造の例は、利用可能な手法および構造の限定ではなく実例を意図する。例としては、局所送達カテーテル、部位特異的キャリアー、埋入物、直接注射または直接適用が挙げられる。
【0074】
カテーテルによる局所送達により、治療用薬剤および/または組成物の逐次的併用を、所望の部位に直接、本発明の方法により施与することが可能になる。バルーンカテーテルを用いた局所送達の例は、EP 383 492 A2および米国特許第4,636,195号に記載されている。カテーテルによる局所的手法および構造のさらなる例は、米国特許第5,049,132号および米国特許第5,286,254号に開示されている。一般的に、カテーテルは、治療用薬剤が所望の部位またはその付近に送達され得るように配置される。カテーテルを介して送達される投薬量は、当業者によって行なわれる決定に応じて種々であり得るが、多くの場合、所望の部位で細胞傷害効果または細胞増殖抑制効果がもたらされるのに有効な量である。好ましくは、この総量は本発明の医薬品の全身投与の総量より少なく、最大耐用量より少ない。カテーテルを介した本発明の医薬製剤の送達は、好ましくは、小型の処置用カテーテルを介した送達が可能な粘度に製剤化するのがよく、薬学的に許容され得るさらなる成分(活性および不活性)を用いて製剤化され得る。
【0075】
埋入物による局所送達は、本発明の医薬製剤を含むマトリックスを所望の部位内に配置することを示す。埋入物は、外科処置または他の手段によって配置され得る。埋入されたマトリックスは、本発明の治療用薬剤および/または組成物の組合せを、拡散、化学反応、溶媒活性化剤または他の同等の機構によって放出する。例は、Langer,1990,Science 249:1527−33に示されている。多くの場合、埋入物は、本発明の治療用薬剤および/または組成物の組合せを経時的に放出する形態であり得る;このような埋入物は、時限的放出型埋入物と称される。埋入物の構築物質は、埋入物の性質および具体的な用途に応じて種々である。例えば、生体安定性の埋入物は、剛性または半剛性の支持構造を有するものであり得、本発明の治療用薬剤および/または組成物の組合せの送達は、コーティングまたは多孔質支持構造により行なわれる。他の埋入物は、埋入された後に硬化する液体で作製されたものであってもよく、ゲルで作製されたものであってもよい。埋入物内または埋入物上に存在させる本発明の治療用薬剤および/または組成物の組合せの量は、一般的に細胞増殖一般または特定の増殖適応症(本明細書において論考している適応症など)を処置するための有効量であり得る。
【0076】
本発明の製剤は、被検体の任意の型のがん、特に、低酸素組織を相当な面積で含むがんを処置するために使用され得る。かかるがんとしては、限定されないが、肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む)、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、軟部組織肉腫、ならびに前立腺がんが挙げられる。また、本発明の製剤は、非がん過剰増殖性疾患を処置するために使用され得る。
【0077】
上記において論考したようにして製剤化されるTH−302は、単独療法として投与してもよく、別の抗がん剤(1種類または複数種)の投与と併用して投与してもよい。該製剤は、治療的がん処置と併せて、例えば限定されないが、外科処置(例えば、補助療法もしくは新補助療法の状況の)または放射線と併せて投与され得る。
【0078】
III. がんの単独療法におけるTH−302の投与
TH−302は、単独療法として、すなわち、任意の他の抗がん剤との併用ではなく単独で、がんを処置するために投与され得る。好ましい実施形態では、TH−302は、単独療法として、黒色腫(例えば転移性黒色腫)またはSCLC(例えば抗療性SCLC)の処置のために投与される。以下および実施例2で論考しているように、TH−302は、黒色腫またはSCLCと診断された患者に投与すると注目に値する抗がん活性を示した。
【0079】
TH−302は、通常、単独療法では静脈内投与される(例えば、注入により)。一部の実施形態では、上記で論考したTH−302/エタノール/TWEEN 80製剤は、注射用のD5Wまたは生理食塩水中に希釈する。さまざまな投薬スケジュールが可能であるが、典型的には、TH−302は、(a)週1回を連続3週間 続いて1週間TH−302投与なし(例えば、28日サイクルの1、8および15日目に投与)(「4週間サイクル」と称する);(b)1週間に1回;(c)3週毎に1回、または(d)3週毎に2回(例えば、21日サイクルの1日目と8日目に投与)を1回以上のサイクルで投与される。「4週間サイクル」を含む投与レジメンでは、TH−302は、例えば、480mg/m〜670mg/m、最も好ましくは480mg/m〜575mg/m、好ましくは約575mg/mの用量で投与され得る。毎週投与では、TH−302は、575mg/mまでの用量で週1回投与され得る。3週毎に1回の投与では、用量は670mg/mまでであり得る。一部の患者では、940mg/mまでまたはそれより高い用量が、3週毎に1回投与され得る。患者の年齢、健康状態および他の要素に基づいて、他の用量を選択してもよい。
【0080】
本発明の種々の実施形態において、投与されるTH−302の量は、TH−302を静脈内投与する場合(例えば、注入により)、約670mg/m、575mg/m、560mg/m、480mg/m、360mg/m、240mg/m、および120mg/mである。
【0081】
他の抗がん剤と同様、TH−302は、通常、多数回サイクルで投与される。例えば限定されないが、TH−302は、「4週間サイクル」を用いて1〜13回のサイクル、1〜7回のサイクル、または1〜4回のサイクルで投与され得る。第2の例として、TH−302は、毎週1回の頻度で3〜52、3〜28、3〜6、または3〜8回のサイクル(週間)投与され得る。第3の例として、TH−302は、3週毎に1回の頻度で3〜52、3〜28、3〜6、または3〜8週間投与され得る。一部の特定のこのようなTH−302投与期間には、TH−302を投与しない休薬期間を1週間以上含めることは、医療専門家に認識されよう。
【0082】
記載のように、TH−302は、転移性黒色腫を有する患者において便益を示した。ファーストライン転移性黒色腫の従来の応答率は約10%であり、そのため、TH−302での処置の結果は、かなり注目に値する。転移性黒色腫を有する11例の被検体を、4週毎に反復する3週連続投与レジメンの一部として、575mg/m〜670mg/mの初期用量のTH−302単独療法で処置した。8例の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行なった。評価した8例の被検体のうち3例は一部応答を有し、8例の被検体のうち3例は疾患安定状態を有した。8例の被検体のうち4例は、さらなる投与サイクルの試験進行を継続した。一部応答を有した3例の被検体のうち2例は、少なくとも第3サイクルから第7サイクルまで試験進行を継続した。その他の被検体は、脳転移による神経の衰弱に関連する臨床症状の悪化により中止した。
【0083】
SCLCを有する8例の被検体を、4週毎に反復する3週連続投与レジメンの一部として480mg/m〜670mg/mの初期用量のTH−302単独療法で処置した(ここでは、初期用量段階的増大時に60mg/mで投与した1例の被検体を除外する)。まず、7例の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行なった。7例の被検体のうち2例は一部応答を有し、この同じ7例の被検体の別の3例は疾患安定状態を有した。抗療性SCLCの従来の応答率は10%未満であり、そのため、この場合も、この結果はかなり注目に値する。7例の被検体のうち1例は、さらなる処置サイクルの試験進行を継続した。
【0084】
4週間サイクルの3週間に1週間に1回施与されるTH−302単独療法のMTDを575mg/mに確立した後、3週毎に1回のTH−302投与レジメンを開始した。6例の被検体に940mg/mで投与し、6例の被検体のうち2例が用量制限毒性を有した。3週毎に1回の投与のMTDは670mg/mである(ただし(unless)670mg/m〜940mg/mの用量を検査)。
【0085】
単独療法での他の治療有効用量のTH−302は、本発明によって提供される。種々の実施形態において、がんの処置方法における治療有効用量のTH−302は、約100mg/m〜約700mg/m、200mg/m〜約700mg/m、約300mg/m〜約600mg/m、約350mg/m〜約550mg/m、約400mg/m〜約500mg/m、約400mg/m〜約600mg/m、約450mg/m〜約550mg/m、約450mg/m〜約575mg/m、約480mg/m〜約670mg/m、および約670mg/m〜<940mg/mの範囲の量である。別の態様において、本発明は、特に毒性に対する予防を提供する場合に(例えば、以下に論考)、TH−302を約700mg/m〜約1200mg/mまたは約800mg/m〜約1000mg/mの範囲の量で投与することを含むがんの処置方法を提供する。一部の実施形態では、単独療法での治療有効用量のTH−302は約200mg/m〜約500mg/mである。
【0086】
一態様において、本発明は、小細胞肺がんを有する患者に対するTH−302単独療法剤の投与を提供する。一部の実施形態では、TH−302を1週間に1回3週間、続いて1週間投与なしで(例えば、28日サイクルの1、8および15日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を小細胞肺がんを有する患者に、1週間に1回3週間投与した後、1週間投与なしとし、用量は約480mg/m〜約670mg/mの範囲とする。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の28日サイクルで投与する。一部の実施形態では、TH−302を3週毎に1回(例えば、21日サイクルの1日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を小細胞肺がんを有する患者に、3週毎に1回、約670mg/m〜940mg未満/mの範囲の用量で投与する。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の21日サイクルで投与する。
【0087】
一態様において、本発明は、転移性黒色腫を有する患者に対するTH−302単独療法剤の投与を提供する。一部の実施形態では、TH−302を1週間に1回3週間、続いて1週間投与なしで(例えば、28日サイクルの1、8および15日目に)投与する。一部の実施形態では、TH−302を約480mg/m〜約670mg/m、場合によっては約575mg/m〜約670mg/mの範囲の用量で投与する。一部の実施形態では、TH−302を少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、または少なくとも6回の28日サイクルで投与する。
【0088】
TH−302は、単独療法として魅力的な安全性プロフィールを有する。これは、比較的高い用量で耐容性が良好であり、有意な用量制限骨髄抑制を誘発しない。用量段階的増大試験における用量制限毒性は粘膜炎であり、1例は、口腔粘膜に関するグレード3の事象であり、1例は、胃腸粘膜に関するグレード3の事象であった。また、TH−302により、用量比例的で可逆的な予測可能な皮膚発疹が生じる。発疹は、典型的には、用量に応じてグレード1またはグレード2であり、毎週単独療法用量480mg/mで開始すると発生率が高い。正常皮膚および表面粘膜はどちらも有意な低酸素領域を含むため、臨床試験で観察された皮膚発疹および粘膜毒性は、低酸素活性化型プロドラッグの根本的な薬理学特性と整合する。TH−302(575mg/m)を受けた患者の臨床試験では、発疹は、個人の衛生(例えば、皮膚衛生)の重要性を強調する、皮膚の乾燥を維持する、ならびに皮膚領域に対して、酸化亜鉛、抗真菌剤および抗菌剤を含有する局所薬剤の長期間高圧力を回避するという被検体の教育により、前行的に対処された。臨床現場からの逸話的報告では、重症度および皮膚毒性持続期間の明白な低減が示されている。同様に、「Miracle Mouth Wash」(デキサメタゾン、ジフェンヒドラミン、ナイスタチン、およびテトラサイクリンを含む)の予防的使用により、経口病変の発生率および重症度が低減されるようである。したがって、一実施形態において、本発明は、患者にTH−302(または式Iの別の化合物)を、粘膜および/または皮膚に対する損傷を予防するための薬物または他の薬剤の経口および/または局所製剤と併用して投与する、がんの処置方法を提供する。好ましくは、該薬物または薬剤は、予防的に(粘膜または皮膚に対する有意な損傷が発生する前に)投与される。例えば限定されないが、好適な局所薬剤には、以下:酸化亜鉛、抗真菌剤、酸化防止剤および/または抗菌剤の1種類または組合せを含む局所用薬剤が含まれる。ヒトにおける使用に利用可能な局所用酸化防止剤としては、局所用ビタミンC、局所用ビタミンE、局所用メラトニンおよびその組合せが挙げられる。(DreherおよびMaiback,2001,“Protective Effects of Topical Antioxidants in Humans”Oxidants and Antioxidants in Cutaneous Biology. Current Problems in Dermatology. Basel,Karger 29:157−164参照)。局所用DMSOを使用してもよい(米国特許6,060,083(引用により本明細書に組み込まれる)参照)。他の薬剤としては、例えば、ビタミンK類似体(米国出願特許公開公報US2009/0239952(引用により本明細書に組み込まれる)参照)、局所ビタミンC、局所ビタミンE 局所コルチコステロイド、メントールクリーム剤、局所ミノサイクリン;クリンダマイシン2%/ヒドロコルチゾン1%などのローション剤、グルタミン溶液およびメラトニンが挙げられる。抗真菌剤(例えば、ナイスタチン)および抗菌剤(例えば、テトラサイクリン)を含む全身用薬剤を使用してもよい。
【0089】
がんの処置のために、TH−302の投与以外に、TH−281などの式Iの他の化合物も単独療法で、TH−302に関して本明細書に記載の方法、用量、スケジュールおよび予防に従って投与され得る。
【0090】
IV. 併用療法におけるHAP抗がん剤と非HAP抗がん剤の投与
また、本発明は、低酸素活性化型プロドラッグ(例えば、TH−302)をがん患者に、別の抗がん薬と併用して投与することによる、がんを処置するための方法を提供し、この場合、該低酸素活性化型プロドラッグ(「HAP」)と他方の抗がん薬を非同時発生的に投与することにより、該併用処置の治療有効性を最大にし、該併用処置の毒性を最小限にする。実施例3(後述)参照。2種類の薬物を、本発明に従って一定時間離して投与することを、2種類の薬物の「非同時発生的投与」と称する。2種類の薬物を一緒に、または一方を他方の直後に(第1の薬物の投与終了と第2の薬物の投与開始との間に遅れ(delay)がない、もしくは30分未満で)投与することを、2種類の薬物の「同時発生的(contemporaneous)投与」と称する。
【0091】
したがって、一態様において、本発明は、低酸素活性化型プロドラッグと低酸素活性化型でない抗がん薬の2種類の抗がん薬を、かかる処置を必要とする患者に投与することによるがんの処置方法であって、該非HAP抗がん薬が、低酸素活性化型プロドラッグの直前の投与を終了してから少なくとも約30分後に投与される方法を提供する。一実施形態において、第2の薬物は、HAP薬物の投与を終了してから30分〜8時間後に投与される。別の実施形態では、第2の薬物は、HAP薬物の投与を終了してから1〜6時間後に投与される(例えば、HAP薬物の投与の約2時間、約3時間または約4時間後)。一部の実施形態では、TH−302の投与と非HAP薬物(例えば、ドセタキセル)の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。例示的な実施形態では、非HAP抗がん薬は、HAPの投与を終了してから1時間以上(例えば、1、2、4または6時間)後に投与される。典型的には、少なくとも2時間遅れが使用される。したがって、一般的に、非HAP薬物の投与時点は、HAPの投与の少なくとも30分〜1時間後、典型的には少なくとも2時間後、場合によっては少なくとも4時間後であり、いかなる事象においても24時間を超えない。種々の実施形態において、HAPの投与終了と第2の薬剤の投与との間の遅れは8時間より短い;例えば、該遅れは、6時間未満、6時間未満、または4時間未満であり得る。
【0092】
別の態様において、本発明は、低酸素活性化型プロドラッグを別の抗がん薬と併用して投与することを含む、患者のがんの処置方法であって、HAPを最初に投与し、HAPの投与終了と他方の抗がん薬の投与開始との間の遅れが、ほぼHAPのt1/2であるか、または少なくともHAPのt1/2であるか、またはHAPのt1/2のほぼ2倍であるか、またはHAPのt1/2の少なくとも2倍である方法を提供する。一実施形態において、該遅れは、HAPのt1/2とHAPのt1/2の2倍とで限定される範囲である。
【0093】
一実施形態において、HAPは、TH−302、TH−281または式Iの別の化合物である。別の実施形態では、低酸素活性化型プロドラッグはAQ4Nである。一実施形態において、HAPは、以下に示す式:
【0094】
【化4】

の構造を有するPR104である。
【0095】
また、PR104の医薬活性な塩も、本発明の方法に従って有用である。PR104は、最大耐用量(MTD)および推奨用量がフェーズI試験後、1,100mg/mであると決定されたHAPである。Jamesonら,J. Clin. Oncol.,26:2008(5月20日号別冊;アブストラクト2562;引用により本明細書に組み込まれる)参照。PR104のフェーズII試験は、PR104を200〜275mg/mで投与することにより開始された。Tchekmedyianら,J Clin Oncol 26:2008(5月20日号別冊;アブストラクト 3575;引用により本明細書に組み込まれる)参照。しかしながら、ゲムシタビンまたはドセタキセルと併用して投与した場合、PR104+ゲムシタビンまたはドセタキセルのMTDは、PR104+ゲムシタビンで140mg/m、およびPR104+ドセタキセルで<200mg/mであった。本発明の方法により、HAP(TH−302、TH−281、PR104およびAQ4Nなど)を含むかかる併用療法において、より高い用量のHAPを投与することがが可能になる(例えば、PCT特許公開公報番号WO00/064864、WO04/087075、WO07/002931、およびWO08/083101、ならびに米国出願特許公開公報第2007/0032455号(各々、引用により本明細書に組み込まれる)参照)。
【0096】
別の実施形態では、低酸素活性化型プロドラッグは、ビンカアルカロイド類のN−オキシドからなる群より選択される。本発明の方法に有用なビンカアルカロイド類の一部の特定のN−オキシドは、PCT特許公開公報番号WO07/098091(引用により本明細書に組み込まれる)に示されている。一実施形態において、HAPは、PCT公開公報番号WO2000/064864;2004/087075;2005/086951;2005/087075;2006/057946;2007/002931;2008/083101;2008/151253;2009/018163;および2009/033165;PCT出願US09/044038号;US特許出願公開公報第20050256191号および同第20070032455;ならびにUS特許仮出願第61/218,043号(各々、引用により本明細書に組み込まれる)のいずれかに記載された化合物である。治療有効量のHAPの投与の経路、頻度およびかかる他のパラメータも、これらの刊行物に記載されている(また、Jamesonら,J. Clin. Oncol.,26:2008(5月20日号別冊,アブストラクト2562)およびTchekmedyianら,J. Clin. Oncol. 26:2008(5月20日号別冊,アブストラクト3575)も参照のこと)。他の例示的な低酸素活性化型プロドラッグとしては、ベンゾトリアジン(チラパザミン(TPZ;SR4233;1,2,4−ベンゾトリアジン−3−アミン1,4−ジオキシド)など)、ニトロ芳香族化合物(例えば、ミソニダゾール;1−メチル−3−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)−2−プロパノールおよびRB 6145;2−ニトロイミダゾール)(例えば、Adamsら,1994,Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.29 231−38参照)、アントラキノン(例えば、AQ4N;1,4−ビス−[[2−(ジメチルアミノ−N−オキシド)エチル]アミノ]5,8−ジヒドロキシアントラセン−9,−10−ジオン)(例えば、Patterson,1993,Cancer Metastasis Rev.12 119−34;Patterson,2002,Drug Metab.Rev.34 581−92,Pattersonら,2000,Br.J.Cancer 82 1984−90参照)、2−ニトロイミダゾールに対するクロロキノリンDNA標的化単位(例えば、NLCQ−1;4−[3−(2−ニトロ−1−イミダゾリル)−プロピルアミノ]−7−クロロキノリン塩酸)(例えば、Papadopoulouら 2003,Clin.Cancer Res.9:5714−20参照)、ジニトロベンズアミドマスタード(例えば、SN 23862;5−(N,N−ビス(2−クロロエチル)アミノ)−2,4−ジニトロベンズアミドおよびSN 28343)(例えば、Sumら,1997,Oncol.Res.9:357−69;Helsbyら,2003,Chem.Res.Toxicol.16:469−78参照)、ニトロベンジルホスホルアミデートマスタード(ニトロ複素環式ホスホルアミデート)(例えば、Borchら,2000,J.Med.Chem.43:2258−65参照)、ニトロ複素環式(beterocyclic)メチル第4級塩(ニトロアリールメチル第4級塩)(例えば、Tercelら 2001,J.Med.Chem.44:3511−22参照)、コバルト(III)錯体(例えば、Wilsonら,1994,Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.29 323−27参照)、ならびにインドロキノン(例えば、Everettら,2002,Biochem.Pharmacol.63:1629−39参照)(各々、引用により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。一実施形態において、HAPはチラパザミンまたはチラパザミン類似体でない。
【0097】
がん治療は、典型的には多数回サイクルの薬物投与を伴い、多くのがんでは、複数の薬物が投与される。実例として限定されないが、AとBの2種類の抗がん薬が、以下に例示する種々の投与シーケンスで投与され得る。
【0098】
【化5】

任意のこれらの(および他の)サイクルの投与が、本発明の方法に従って使用され得る。例えば、ABAAABAAABAAのシーケンスは、「A」が28日サイクルの1、8および15日目に投与されるTH−302であり、「B」が該サイクルの1日目にAと非同時発生的に投与されるゲムシタビンである3サイクルを示し得る。1サイクル内に薬物(1種類または複数種)の多数回サイクルおよび/または反復投与がある場合、HAPの投与終了と非HAP薬物の投与開始との間の遅れは、HAPと非HAPの逐次投与の期間をいうことは理解されよう。例えば、ABのサイクルにおいて、Aの投与終了とBの投与開始との間の期間が測定される(例えば、Aの投与終了とBの投与開始との間の期間ではなく)。
【0099】
また、がん以外の過剰増殖性疾患も、本発明の方法を用いて処置され得る。
【0100】
一部の実施形態では、低酸素活性化型でない抗がん薬は、白金系アルキル化剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、およびサトラプラチン)、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ならびにペメトレキセドからなる群より選択される。
【0101】
本発明に従って投与される抗がん薬は、さまざまな経路、例えば限定されないが、IVおよび経口経路によって投与され得る。低酸素活性化型でない抗がん薬の投与の経路、頻度および治療有効量は、例えば、PHYSICIANS’DESK REFERENCE,Medical Economics Company,Inc.,Oradell,N.J. の最新版;およびGoodman & Gilman’s “THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS”,McGraw−Hill,New York,Brownら,Cancer Lett,1978,5::291−97(引用により本明細書に組み込まれる)、Yamadaら,Cancer Lett,2001,172:17−25(引用により本明細書に組み込まれる)に示されている、および/または米食品医薬品局から入手可能である、および/または医学文献に論考されている。
【0102】
別の態様において、本発明は、低酸素活性化型プロドラッグと放射線療法を、かかる処置を必要とする患者に施与することを含む、がんおよび他の過剰増殖性疾患の処置方法であって、HAP(例えば、TH−302)を、放射線療法を開始する約1時間〜約48時間前、より典型的には約1〜24時間前に投与する方法を提供する。一実施形態では、HAP処置および放射線処置を、どちらも24時間の期間以内に投与し、HAPを最初に投与し、放射線は、HAPの投与を停止してから少なくとも約30分後、24時間を超えずに投与する。一実施形態において、HAPの投与と放射線処置とのずれは、2〜4時間(約2時間または約4時間など)である。
【0103】
V. 他の抗がん剤と併用したTH−302での併用療法
本発明は、TH−302を第2の抗がん剤(HAP以外)と併用して、かかる処置を必要とする患者に投与することによる、がんの処置方法を提供する。
【0104】
以下に論考するように、多種多様な充実性腫瘍および進行型充実性腫瘍は、かかる併用療法を用いて処置され得、多種多様な抗がん剤が、治療便益のためにTH−302と併用して投与され得る。例えば、臨床データにより、TH−302とゲムシタビンの併用は、ファーストライン膵臓がんにおいて注目に値する活性を有し、TH−302とドセタキセルまたはペメトレキセドの併用は、抗療性の非小細胞肺がん(NSCLC)において注目に値する活性を有することが示されている。TH−302とドキソルビシンの併用は、軟部組織肉腫において非常に有望である。
【0105】
TH−302と併用して使用され得る抗がん剤は、よく知られている。一部の特定の実施形態では、TH−302以外の抗がん剤は、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、およびペメトレキセドからなる群より選択される。表2および3(後述)参照。一部の特定の実施形態では、TH−302以外の抗がん剤は、白金系アルキル化剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、およびサトラプラチン)、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、ならびにペメトレキセドからなる群より選択される。
【0106】
これまでの臨床観察結果により、以下の結論が支持される。本発明の方法により、TH−302は、一般的に使用されている標準的な化学療法剤と、特に例えば、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセド、およびドキソルビシンと広く併用することができる。各併用におけるTH−302のMTDは、おそらく、毎週TH−302単独療法のMTDの50%よりも高い。広範な活性が、TH−302と、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセドおよびドキソルビシンとの併用の4例すべてのRECIST応答で観察されている。一部応答は、併用して試験したTH−302の最低用量(240mg/m)を含むTH−302のすべての用量レベルで観察された。応答率は、同様の治験でのこれまでの試験または特定の腫瘍(膵臓がん、再発性NSCLC、および軟部組織肉腫など)の同様の治験に基づいて予測され得るものよりもかなり高い。また、応答の多くは持続可能である、したがって、被検体に対して明確な臨床便益がもたらされる。また、処置において疾患安定状態を有する被検体の割合も注目すべきであり、一部応答(28%)と疾患安定状態(51%)の和によって示される臨床便益の尺度はほぼ80%である。
【0107】
併用療法のためのTH−302投与
TH−302の製剤、用量、投与経路、頻度、およびかかる他の投与様式としては、本明細書において以下に記載のもの、およびセクションII(上記)(単独療法でのTH−302の投与について論考)に記載のものが挙げられる。当業者には、本開示を読めば、本発明の一部の特定の実施形態において、がんの併用処置の一部として投与した場合、TH−302は、典型的には、TH−302単独療法で投与される量より少ない量で投与されることが認識されよう。好ましい実施形態では、TH−302と第2の化学療法剤の投与は、セクションIV(上記)に記載の方法に従って行なわれる。すなわち、両薬物は非同時発生的に投与され、非HAPの投与はTH−302の投与後に開始される。典型的には、非HAPの投与は、TH−302の投与終了から30分〜6時間後に開始される(例えば、約1、約2、約3、約4、約5、または約6時間遅れ)。一部の実施形態では、非HAPの投与は、TH−302の投与終了の約2時間後に開始される。
【0108】
本発明の併用療法の好ましい実施形態において、TH−302は、通常、IV注入によって、200mg/m〜500mg/mの用量で投与される。例えば、一部の特定の実施形態では、別の抗がん剤と併用して投与される場合、TH−302は、約120mg/m、240mg/m、340mg/m、400mg/m、480mg/m、および560mg/mの量で投与される。用量は、一部において、どのようなTH−302以外の化学療法剤が使用されるか、ならびに患者の病状および処置対象のがんに依存する。TH−302+ゲムシタビンのMTDは340〜400mg/mであると予想され;TH−302+ドセタキセルのMTDは340mg/mであり、TH−302+ペメトレキセドのMTDは480mg/mであり;TH−302+ドキソルビシンのMTDは300mg/mであると予想される(各々、非HAP薬物が、例えば後述する慣用的な用量で非同時発生的に投与される場合)。
【0109】
種々の実施形態において、TH−302は、別の薬剤と併用して、約100mg/m〜約700mg/m、約300mg/m〜約600mg/m、約350mg/m〜約550mg/m、約400mg/m〜約500mg/m、約400mg/m〜約600mg/m、約450mg/m〜約550mg/m、約200mg/m〜約500mg/m、または約200mg/m −575mg/mの範囲の量で投与され得る。
【0110】
がんの併用処置では、TH−302は、さまざまなスケジュール従って投与され得、例えば、TH−302単独療法について上記の1回以上の4週間サイクル(すなわち、1週間に1回3週間、続いて1週間TH−302の投与なし)での投与が挙げられる。本発明の他の実施形態では、がんの併用処置のために、TH−302は1回以上の3週間サイクルで投与される。3週間投与サイクルでは、TH−302は、週1回で連続2週間、続いて1週間TH−302なしで投与され得るか、あるいはまた、3週毎に1回投与され得る。本発明の一部の特定の実施形態では、がんの併用処置のために、TH−302は毎週投与される。TH−302は、週1回で7週間、続いて1週間投与なし、続いて1回以上の28日サイクルで投与され得る。
【0111】
TH−302は、通常、典型的には注入によって静脈内投与される。一部の実施形態では、TH−302は、エタノールおよびTWEEN 80を用いて、セクションII(上記)で論考(単独療法でのTH−302の投与について論考)したようにして製剤化される。好ましい実施形態では、TH−302は第2の非HAP抗がん剤の投与前に投与され、
TH−302の投与は、第2の非HAP抗がん剤の投与を開始する少なくとも30分〜1時間(または少なくとも2〜6時間)前に(すなわち、セクションIII(上記)に記載のとおりに)終了する。一実施形態において、本発明は、TH−302を別の抗がん剤と併用して、かかる処置を必要とする患者に静脈内投与することを含むがんの処置方法であって、TH−302が約1000mg/mまでの量で投与される方法を提供する。一部の実施形態では、具体的な併用療法および投与スケジュールで使用されるTH−302の用量は、該具体的なスケジュールおよび併用のMTDと、MTD−100mg/mの用量とで限定される範囲内である(すなわち、一部の実施形態では、具体的な併用療法および投与スケジュールで使用されるTH−302の用量は、MTDより100mg/m少ない用量までである)。
【0112】
処置可能ながん
さまざまな充実性腫瘍および進行型充実性腫瘍が、TH−302との併用療法のための本発明の方法に従って処置され得る。TH−302は、初期またはファーストライン処置剤としての、抗療性または転移性のがんの処置のための、および補助療法剤または新補助療法剤としての1種類(またはそれ以上の)さらなる化学療法剤と併用して投与され得る。
【0113】
したがって、本発明の一実施形態において、がんは、診断後、新補助療法の現場において処置される(化学療法は患者に対し、外科処置の前に、原発性腫瘍を縮小させ、原発性腫瘍の除去を容易にするために施与される)。別の実施形態では、併用療法が、診断後、補助療法処置として施与される(化学療法は、腫瘍を除去し、患者の病期分類をした後、施与される;再発の尤度が高い場合、再発を遅延させ、延命を向上させるために、予防的化学療法が施与される)。別の実施形態では、併用療法が、抗療性または転移性のがんの処置のために投与される(化学療法は、がんの再発(1回もしくは複数回)または拡延に対して施与される)。
【0114】
したがって、本明細書における方法に従って処置可能ながんとしては、これまで未処置のがん、抗療性のがん、および転移性のがんが挙げられる。本発明の別の実施形態では、処置対象の再発したがん、抗療性のがんまたは転移性のがんは、肺がん、肝臓がん、前立腺がんおよび皮膚がんからなる群より選択される。
【0115】
これまでに処置したヒト患者の適応間および用量群間のデータを、以下の表2および3に示す。全用量群間および全組合せ間で報告された腫瘍応答により、TH−302が、広範な腫瘍亜型において、一例の標準的な化学療法剤との併用で活性を有することが示唆される。重要なことには、相当な用量のTH−302が、本発明の方法によるすべての標準的な化学療法剤の承認された全用量および全スケジュールと併用することが可能である。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

表2および3に示すデータは、本発明の併用療法が多種多様ながんの処置に有効であることを示す。したがって、本発明の方法は:
(a)NSCLC、前立腺がん、神経内分泌がん、肛門がん、尿膜管がん、尿道がん、乳がん、黒色腫、および腎細胞がん腫を、TH−302とドセタキセルで;
(b)胆管がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、NSCLC、膨大部がん、神経内分泌がん、軟部組織肉腫、および甲状腺がんを、TH−302とゲムシタビンで;ならびに
(c)食道がん、膵臓がん、NSCLC、神経内分泌がん、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、肝細胞がん腫(HCC)、腎がん、および耳下腺がんを、TH−302とペメトレキセドで
処置することを含む。
【0118】
本発明の一実施形態において、TH−302はドセタキセルと併用して投与され、処置対象のがんは前立腺がんであり、TH−302は、約200mg/m〜500mg/m、通常、約340mg/mの範囲の量で投与される。本発明の別の実施形態では、TH−302はドキソルビシンと併用して投与され、処置対象のがんは軟部組織肉腫であり、TH−302は、約200mg/m〜500mg/m、例えば、240mg/m〜340mg/mの範囲の量で投与される。本発明の別の実施形態では、TH−302はペメトレキセドと併用して投与され、処置対象のがんは非小細胞肺がん(NSCLC)であり、TH−302は、約200mg/m〜500mg/m、通常、約400mg/mの範囲の量で投与される。本発明の別の実施形態では、TH−302はゲムシタビンと併用して投与され、処置対象のがんは膵臓がんであり、TH−302は、約200mg/m〜500mg/m、通常、約340〜400mg/mの範囲の量で投与される。
【0119】
併用療法では、TH−302(または式Iの他の化合物)は、上記のTH−302単独療法で記載の頻度および持続期間で投与され得る。したがって、本発明の一実施形態において、TH−302は、毎週1回の頻度で投与される。本発明の別の実施形態では、TH 302が多数回サイクルで投与され、各投与サイクルは、TH−302が週1回で連続3週間投与される4週間サイクルである。この実施形態では、各投与サイクルで、週1回で連続3週間で投与されるTH−302は、1、8および15日目に投与され、続いて1週間薬物投与なし、続いて1週間TH−302投与なしである。本発明の一実施形態において、TH−302は、3週間〜52週間、3週間〜28週間、3週間〜16週間、および3週間〜8週間の範囲の期間投与される。したがって、本発明の方法によれば、TH−302は、例えば限定されないが、1〜13、1〜7、または1〜4サイクルで投与され得る。このようなTH−302投与期間の一部では、TH−302を投与しない休薬期間を1週間以上を含む。
【0120】
TH−302以外の抗がん剤の投与
本発明の方法に従って投与されるTH−302以外の種々の抗がん剤の製剤および用量、経路、頻度、ならびにかかる他の投与様式は、本明細書に開示されている、医学文献で入手可能である、および/または当業者にわかる。したがって、非TH−302化学療法剤(例えば、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセド、ドキソルビシン、および他の抗がん剤)の用量は、そのそれぞれの製品ラベル表示に示された承認用量である。本発明の方法に従って投与されるTH−302以外の治療有効量の抗がん剤(少なくとも既知および承認された抗がん剤)は、医師にわかり、例えば限定されないが、PHYSICIANS’DESK REFERENCE,2003,第57版,Medical Economics Company,Inc.,Oradell,N.J;Goodman & Gilman’s THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS”2001,第10版,McGraw−Hill,New Yorkに見られる製品説明に示されている;および/または米食品医薬品局から入手可能である、および/または医学文献に論考されている。種々のがんの実例としての本発明の方法による投与の量およびスケジュールは、本明細書に記載している。
【0121】
実例であって限定されないが、以下の投薬量およびスケジュールが使用され得る:
・ ゲムシタビンは、1,000mg/m IVで30分間にわたってIV投与され得る。例えば、ゲムシタビンは、1,000mg/m IVで30分間にわたって各28日サイクルの1、8および15日目にIV投与され得、TH−302は、各28日サイクルの1、8および15日目に投与され得る。
他の一例では、ゲムシタビンとTH−302を週1回で7週間投与し、続いて1週間投与なし、続いて、TH−302とゲムシタビンを各28日サイクルの1、8および15日目に投与する1回以上の28日サイクルを行なう。
・ ドセタキセルは、75mg/mで60分間にわたってIV投与され得る。例えば、ドセタキセルは、75mg/mで60分間にわたって各21日サイクルの1日目にIV投与され得、TH−302は、各21日サイクルの1日目と8日目にに投与され得る。
・ ペメトレキセドは、500mg/mで10分間にわたってIV投与され得る。例えば、ペメトレキセドは、500mg/mで10分間にわたって各21日サイクルの1日目にIV投与され得、TH−302は、各21日サイクルの1日目と8日目にに投与され得る。
・ ドキソルビシンは、ボーラス注射として75mg/mで21日サイクルの1日目に投与され得、TH−302は、各21日サイクルの1日目と8日目にに投与され得る。
【0122】
以下のセクション(A)〜(E)に、他の抗がん剤と併用してTH−302を用いたがんの処置のさらなる論考を示す。実例としての投薬量およびスケジュールを以下に記載するが、がん(例えば、肺、前立腺、膵臓、結腸、および軟部組織肉腫)の処置では、TH−302と他の薬剤の投与の用量およびスケジュールには、本説明の別の個所に記載の用量およびスケジュールが包含され得ることは認識されよう。
【0123】
A.ドセタキセル、ペメトレキセド、白金含有薬物、ドキソルビシン、またはゲムシタビンとの併用療法においてTH−302を用いた肺がんの処置
本発明は、TH−302をペメトレキセド、ドセタキセル、ゲムシタビン、白金含有薬物、またはドキソルビシンと併用して投与することにより、組織学的に扁平上皮細胞のNSCLCを有する被検体を処置するための方法を提供する。
【0124】
例えば実施例4および5(後述)で論考しているように、TH−302は、肺がん(例えば、SCLC、NSCLC、および組織学的に扁平上皮細胞のNSCLC)を有する患者に他の抗がん剤と併用して投与され得る。
【0125】
臨床試験において、再発または抗療性のNSCLCを有し、TH−302+ペメトレキセドまたはTH−302+ドセタキセルの組合せで処置した10例のヒト被検体において解析を行なった。8例の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行なった。8例の被検体のうち3例は一部応答を有し、一方、この同じ8例の被検体のうち4例は疾患安定状態を有した。セカンドラインNSCLCの従来の応答率は、いくつかの大規模枢要試験では10%未満である。この8例の被検体は、中央値2.5回の全身化学療法歴を有した。8例の被検体のうち2例は試験を継続した(例えば、第5サイクル〜第16サイクルまで受けた)。一部応答を有した3例の被検体のうち2例は、進行がみられないため該試験の終了後、継続しなかった;一方は10回のサイクルで終了し、他方は16回のサイクルを受けた。
【0126】
再発性/抗療性のNSCLCを有する2例の被検体を、ゲムシタビンとTH−302で処置した。2例の被検体のうち一方はRECIST一部応答を有し、試験進行を継続した(第5サイクルを受けた)。
【0127】
上記の2例の一部応答(一例はドセタキセルと併用および一例はゲムシタビンと併用)は、組織学的に扁平上皮細胞のNSCLCを有する被検体で見られた。組織学的に扁平上皮細胞のNSCLCは、化学療法に対して特に抗療性である。ペメトレキセドが承認されたNSCLCにおける適応には、組織学的に扁平上皮細胞のNSCLCを有する被検体は除外される。TH−302と併用してペメトレキセドで処置した組織学的に扁平上皮細胞のNSCLCを有する1名の患者は試験進行を継続し、第5サイクルで疾患安定状態を有した。
【0128】
i)ドセタキセル
本発明は、治療有効用量のTH−302を治療有効用量のドセタキセルと併用して投与することを含む、肺がん(例えば、NSCLC)と診断された患者の処置方法を提供する。実施例4(後述)において論考するように、TH−302とドセタキセルの投与により、ヒト患者において抗腫瘍活性が示された。実施例6(後述)に示すように、単回用量のTH−302と単回用量のドセタキセルの投与により、H460異所性肺がんモデルにおいて腫瘍増殖が抑止された。また、一連の異所性肺がんモデル(一部ではH460細胞を使用し、一部ではCalu−6細胞を使用)において、一連の用量のTH−302とさまざまな化学療法剤の投与により、腫瘍増殖が抑止された。腫瘍増殖抑止は、TH−302または他の化学療法剤いずれか単独の場合よりも大きかった。
【0129】
治療有効用量のドセタキセル(例えば、Taxotere;Sanofi−Aventis)は、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、1時間の静脈内注入として投与される75mg/mである。実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0130】
一部の実施形態では、ドセタキセルの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からドセタキセル投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とドセタキセル投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からドセタキセル投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0131】
ii)ペメトレキセド
また、本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のペメトレキセドの投与と併用して投与することを含む、肺がん、他NSCLCと診断された患者の処置方法を提供する。実施例4(後述)において論考するように、TH−302とペメトレキセドの投与により、ヒト患者において抗腫瘍活性が示された。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とペメトレキセドの投与により、NSCLCモデルにおいて腫瘍増殖が劇的に抑止された。
【0132】
治療有効用量のペメトレキセドは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、3週毎に1回10分間にわたってIV投与される500mg/mである。実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0133】
一部の実施形態では、ペメトレキセドの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からペメトレキセド投与の開始までの間隔は、少なくとも1時間であり24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とペメトレキセド投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からペメトレキセド投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0134】
iii)白金含有薬物
また、本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のプラチン(例えば、シスプラチンまたはカルボプラチンなど)の投与と併用して投与することを含む、肺がん(例えば、NSCLC)と診断された患者の処置方法を提供する。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とシスプラチンの投与により、2つの肺がんモデル(1つはH460細胞を使用、1つはCalu−6細胞を使用)において腫瘍増殖が抑止された。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とカルボプラチンの投与により、H460肺がんモデルにおいて腫瘍増殖が抑止された。
【0135】
治療有効用量のシスプラチンおよびカルボプラチンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。シスプラチンの例示的な用量は、実例であって限定されないが、100mg/mを4週毎に1回である。治療有効用量のカルボプラチンは医療専門家により、Calvert式(Calvertら,1989,J. Clin. Oncol. 7:1748−56)を用いて決定され得る。実例としての治療有効用量のTH−302は、実例として上記に記載している。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0136】
一部の実施形態では、白金含有薬物の投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了から白金含有薬物の投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与と白金含有薬物の投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了から白金含有薬物の投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0137】
iv)ドキソルビシン
また、本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のドキソルビシンの投与と併用して投与することを含む、肺がんと診断された患者の処置方法を提供する。実施例5(後述)において論考するように、TH−302とドキソルビシンの投与により、ヒト患者において抗腫瘍活性が示された。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とドキソルビシンの投与により、Calu−6肺がんモデルにおいて腫瘍増殖が抑止された。
【0138】
治療有効用量のドキソルビシンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、単独静脈内注射で21〜28日毎に施与される40〜75mg/mである。治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0139】
一部の実施形態では、ドキソルビシンの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からドキソルビシン投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とドキソルビシン投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からドキソルビシン投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0140】
v. ゲムシタビン
また、本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のゲムシタビンの投与と併用して投与することを含む、肺がんと診断された患者の処置方法を提供する。実施例4(後述)において論考するように、TH−302とゲムシタビンの投与は、例えば膵臓がんを有する患者において有益な効果を有した。
【0141】
治療有効用量のゲムシタビンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、28日サイクルの1、8および15日目に30分間にわたってi.v.施与される1000mg/mである。治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0142】
一部の実施形態では、ドキソルビシンの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からゲムシタビン投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とゲムシタビン投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からゲムシタビン投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0143】
B.タキサンとの併用療法においてTH−302を用いた前立腺がんの処置
本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセルなど)の投与と併用して投与することを含む、前立腺がんと診断された患者の処置方法を提供する。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とドセタキセルまたはパクリタキセルの投与により、前立腺がんモデルにおいて腫瘍増殖が劇的に抑止された。
【0144】
治療有効用量のタキサンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。実例であって限定されないが、例示的な用量は、ドセタキセルでは静脈内注入として21日毎に1回施与される75〜100mg/m、パクリタキセルでは静脈内注入として21日毎に施与される175mg/mである。実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0145】
精巣摘出抵抗性前立腺がんを有する2例のヒト被検体を、TH−302+ドセタキセルの組合せで処置した。両方の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行ない、どちらの被検体も疾患安定状態を有した。どちらの被検体も、ベースライン値から50%より大きいPSAの減少を有した。2例のうち1例は、腰椎棘が関与する重度の痛みを有し、これは、処置すると消散した。5回のサイクル後、2例の被検体のうち1例は、PSAの>90%減少(861ng/mlから45ng/mlに減少)を有した;他方の被検体は、28ng/mlのベースラインPSAから>50%のPSA減少を有した。
【0146】
一部の実施形態では、パクリタキセルまたはドセタキセルの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からパクリタキセルまたはドセタキセル投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とパクリタキセルまたはドセタキセル投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からパクリタキセルまたはドセタキセル投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0147】
C. ゲムシタビンとの併用療法においてTH−302を用いた膵臓がんの処置
本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のゲムシタビンの投与と併用して投与することを含む、膵臓がんと診断された患者の処置方法を提供する。TH−302とゲムシタビンの投与により、ファーストライン膵臓がんを有する患者に対して便益がもたらされた(実施例4(後述)参照)。さらに、TH−302とゲムシタビンの投与により、膵臓がんモデルにおいて腫瘍増殖が劇的に抑止された(実施例6(後述)参照)。ゲムシタビンとの併用でのTH−302の最大耐用量は確立していないが、少なくとも340mg/m2であると予想される。この用量は、ファーストライン膵臓がんを有する被検体の処置に有効である。
【0148】
治療有効用量のゲムシタビンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、1週間に1回30分間にわたってIV投与される1,000mg/mである。実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0149】
一部の実施形態では、ゲムシタビンの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からゲムシタビン投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とゲムシタビン投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からゲムシタビン投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0150】
D. ドキソルビシンとの併用療法においてTH−302を用いた軟部組織肉腫の処置
本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のドキソルビシンの投与と併用して投与することを含む、軟部組織肉腫と診断された患者の処置方法を提供する。TH−302とドキソルビシンの投与により、軟部組織肉腫を有する患者に対して便益がもたらされた(実施例5(後述)参照)。さらに、TH−302とドキソルビシンの投与により、肉腫モデルにおいて腫瘍増殖が抑止された(実施例6(後述)参照)。
【0151】
治療有効用量のドキソルビシンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、単独静脈内注射で21〜28日毎に施与される40〜60mg/mである。実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。ドキソルビシンレジメンとの併用でのTH−302の最大耐用量は確立していないが、被検体は、承認されたドキソルビシン用量75mg/mと併用して少なくとも240mg/mのTH−302用量で、本発明の方法に従って処置され得る。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0152】
一部の実施形態では、ドキソルビシン投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了からドキソルビシン投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与とドキソルビシン投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了からドキソルビシン投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0153】
E. シスプラチン(CDDP)または5−フルオロウラシル(5FU)との併用療法においてTH−302を用いた結腸がんの処置
本発明は、治療有効用量のTH−302を、治療有効用量のシスプラチンの投与と併用して投与することを含む、結腸がんと診断された患者の処置方法を提供する。実施例6(後述)において論考するように、TH−302とシスプラチンの投与により、HT−29結腸がんモデルにおいて腫瘍増殖が抑止された。
【0154】
一態様において、本発明は、治療有効用量のTH−302を投与すること、および治療有効用量の5−フルオロウラシル(5FU)を投与することを含む、結腸がんと診断された患者を提供する。実施例6(後述)において論考するように、TH−302と5FUの投与により、HT−29結腸がんモデルにおいて腫瘍増殖が抑止された。
【0155】
治療有効用量のシスプラチンは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、100mg/mを3〜4週間毎に1回である。
【0156】
治療有効用量の5FUは、医療専門家により、FDAおよび/または医学文献から入手可能な資料を参照することによって決定され得る。例示的な用量は、実例であって限定されないが、毎日150mg/mである。
【0157】
実例としての治療有効用量のTH−302は上記のとおりである。医療専門家によって適切と判断される、および/またはFDAによって承認された他の用量を使用してもよい。
【0158】
一部の実施形態では、5FUまたはCDDPの投与の前にTH−302の投与が行なわれ、TH−302の投与終了から5FUまたはCDDPの投与の開始までの間隔は少なくとも30分〜1時間、典型的には少なくとも2時間であり、いかなる事象においても24時間を超えない。一部の実施形態では、TH−302投与と5FUまたはCDDPの投与の間の時間は1〜10時間、2〜6時間または3〜5時間である。一部の実施形態では、TH−302の投与終了から5FUまたはCDDPの投与の開始までの間隔は約2時間である。
【0159】
F.式Iの他の化合物での併用療法
上記の併用療法はTH−302に関して説明したが、本発明の方法は、式Iの他の化合物、例えば限定されないがTH−281での併用療法も包含する。治療有効用量は、どの式Iの化合物が選択されるかに応じて異なり得るが、用量は、典型的には、約200mg/m〜約700mg/m、約300mg/m〜約600mg/m、約350mg/m〜約550mg/m、約400mg/m〜約500mg/m、約400mg/m〜約600mg/m、および約450mg/m〜約550mg/mの範囲の量である。本発明の種々の実施形態において、投与される用量は、約560mg/m、480mg/m、400mg/m、340mg/m、240mg/m、または120mg/mである。他の実施形態では、投与される用量は、約700mg/m〜約1200mg/mまたは約800mg/m〜約1000mg/mの範囲の量である。
【実施例】
【0160】
実施例
以下の実施例は、例示を意図したものにすぎず、本発明の範囲を制限するものであると解釈されるべきでない。実施例1では本発明の製剤を説明する。実施例2ではTH−302単独療法を説明する。実施例3では、別の抗がん剤を投与する前にHAPを投与すること、および各投与間に遅れ期間を組み込むことの利点を示す。実施例4および5では、ヒト患者でのヒトのがんの処置におけるTH−302併用療法の有効性を示す。ヒトでの治験において、患者に対する投与のため、凍結乾燥TH−302をD5Wに再懸濁させた。実施例6では、動物モデルでのヒトのがんの処置におけるTH−302併用療法の有効性を示す。
【0161】
実施例1:TH−302の医薬製剤
この実施例では、TH−302の医薬製剤を説明するとともに、一部の製剤の利点を実証する実験結果を記載する。以下に記載するように、TH−302、エタノールおよびTWEEN 80を含む製剤で、他の製剤を超える利点、例えば、TH−302の溶解度が高くなること、溶液のさらなる濃縮が可能になること、保存に対して安定性がより高いこと、および濃縮製剤をD5Wまたは生理食塩水中で希釈したとき析出がないことが示された。
【0162】
実験は、以下のシステム(または同等物):Alltech,Alltima C18,50×4.6,3μMまたは5μm HPLCカラム、HP1090ポンプ、Diode−Array Detector、およびChemstationバージョンA.08.01データ収集システムを有するHP 1090 Series IIにおいて行なった。以下の逆相HPLC条件を実験研究に使用した:カラム温度は室温とした;試料サーモスタットは無しとした;検出器の波長は325nm、254nmとした;ポンプ構成は勾配型とした;流速は0.8ml/分とした;インジェクション容量は10μLとした;実行時間は11分とした;針の洗浄はエチルアルコールで行なった;希釈剤およびブランクは水とした。勾配テーブルは以下のとおりとした。
【0163】
【表4】

材料および試薬は:TH−302(SyngeneによりGMPに基づいて調製);無水200標準Sigma−Aldrichカタログ番号459836−2Lエチルアルコール;HPLC等級または同等のアセトニトリルおよび水;ベンジルアルコールSigma−Aldrichカタログ番号108006−100ml、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)Sigma−Aldrichカタログ番号185884−500ml;ならびに2ml容バイアルLabfile AMB Wheatonカタログ番号W224681とした。
【0164】
TH−302製剤を異なる条件に供し、一部分解をもたらした。試験溶液および標準品は、同じ条件下で個々に応力を与えた。評価対象の試験溶液は、後述する手順に従って調製した。
【0165】
以下の一連の比較製剤(1、2Aおよび2B)を調製し、TH−302の安定性を、表示した溶媒の種々の組合せ(エタノール(EtOH)およびDMA/EtOH/ベンジルアルコール)を非イオン界面活性剤なしで用いて評価した。これらの製剤は、促進安定性条件において、種々の温度(4℃、20℃および37℃)で154日間まで試験した。
【0166】
製剤1は、以下のようにして調製した。EtOHでTH−302の50mg/ml溶液を調製した。2.5gのTH−302を計り取り、メスフラスコ(50ml容)内に移した。46mlのEtOHを添加し、混合物を室温で1.5時間攪拌した。固形物がすべて完全に消失したら、溶液を、エタノールの添加によって50mlまで希釈した。この溶液を2ml容バイアル内に移し、各バイアル中の溶液は1mlとした。濃度は50mg/mlであった。バイアルを異なる温度(4℃(冷蔵庫);20℃(作業台);37℃(水浴))で、以下に示す種々の時間保存した。試料を28、65、106および154日目に採取し、LC解析した。50μLのアリコートを50mg/mlのTH 302溶液から採取し、メスフラスコ(50ml容)に添加し、水で50ml容量に希釈し、充分混合した。濃度は50μg/mlであった。
【0167】
この種々の温度および時間における製剤1の安定性を以下の表5〜7に示す。
【0168】
【表5】

【0169】
【表6】

【0170】
【表7】

EtOH中37℃で65日間のTH−302(50mg/ml)およびEtOH中4℃で154日間のTH−302(50mg/ml)のHPLCクロマトグラムで、エタノール中でのTH−302(50mg/ml)は4℃において安定であり、154日目まで分解を示さないことが示された。しかしながら、この製剤中でのTH−302は、より高い温度、例えば37℃で保存すると分解を示す。純エタノール中でのTH−302は低温で比較的安定であるが、エタノール中でのTH−302の最も高い溶解度は、高温ではあるが約80mg/mlである。
【0171】
下記の構造を有する分解生成物[(2−クロロエチル)({[(2−ブロモエチル)アミノ][(2−ニトロ−3−メチルイミダゾル−4−イル)メトキシ]ホスホリル})アミン](「モノクロロ不純物」)(2.4%)が試験開始時にみとめられたが、試験したいずれの安定性条件温度でも、経時的に著しく増加しなかった。
【0172】
【化6】

製剤2Aは、以下のようにして調製した。1.2gのTH−302を計り取り、メスフラスコ(10ml容)内のベンジルアルコール(600mg)とDMA(1200mg)の溶液中に移した。5分間攪拌すると、混合物は透明な溶液になった。この溶液を、エタノールの添加によって10mlまで希釈した。この溶液を2ml容バイアル内に移し、各バイアル中の溶液は0.2mlとした。TH−302濃度は120mg/mlであった。バイアルを異なる温度(4℃(冷蔵庫);20℃(作業台);37℃(水浴))で、以下に示す種々の時間保存した。
【0173】
4℃の製剤2Aを室温(RT)まで昇温させ、この温度で30分間維持した。37℃の製剤2AをRTまで放冷し、この温度で30分間維持した。異なる温度(4℃;20℃;37℃)で保存した各バイアルの120mg/mlのTH 302溶液から20μLを、対応するメスフラスコ(50ml容)内に移した。次いで、この溶液を水で50ml容量に希釈し、充分混合した。TH−302の終濃度は48μg/mlであった。製剤2Bは、DMAの量を1000mgに減らしたこと以外は、溶液2Aの調製の場合と同じ手順を用いて調製した。
【0174】
種々の温度および時間における製剤2Aおよび2Bの安定性を、以下の表に示す。
【0175】
【表8】

【0176】
【表9】

【0177】
【表10】

【0178】
【表11】

【0179】
【表12】

【0180】
【表13】

試料のHPLC解析により、TH−302は、DMA/EtOH/ベンジルアルコール中(120mg/ml)、4℃および室温(RT)で少なくとも10週間(67日間)安定であることが示された。TH−302の結晶を4℃の試料において観察し、RTまで30分間昇温させると溶解した。TH−302を37℃で4週間、DMA/EtOH/ベンジルアルコール中でインキュベートすると、2種類の不純物(合計約3%)が観察された。一方の不純物(0.25%)は、10週間後にRTで観察された。他方の不純物はモノクロロ化合物であり、時間点ゼロで存在していたが、著しく増加しなかった。製剤2Aと2Bに違いは観察されなかった。製剤1、2aおよび2bの比較により、TH−302は、EtOH中とDMA/EtOH/ベンジルアルコール中で、同様の安定性を有することが示された。
【0181】
この試験では、非イオン界面活性剤なしのPEG 400中200mg/mlのTH−302溶液(製剤3)の37℃で4週間の安定性を評価した。製剤3は、PEG−400(10ml)中に移した2gのTH−302を用いて作製した。40℃で15分間攪拌すると、混合物は透明な溶液になった。この溶液を、2ml容バイアル内に移し、各バイアル中の溶液は0.2mlとした。TH−302の濃度は200mg/mlであった。バイアルを異なる温度(2〜8℃(冷蔵庫、すなわち、4℃);37℃(水浴))で、以下に示す種々の時間保存した。このストック溶液をRTまで冷却させ、この温度で30分間維持した。この200mg/mlのTH 302溶液の20μLをメスフラスコ(50ml容)内に移した。次いで、この溶液を水で50ml容量に希釈し、充分混合した。TH−302の終濃度は80μg/mlであった。19mlの水をこの溶液に100ml容バイアル内で注入すると、暗褐色の透明な溶液が得られた。得られた溶液の50μLをメスフラスコ(5ml容)内に移し、水で5mlまで希釈した。TH−302の終濃度は50μg/mlであった。HPLC解析により、製剤3は、製剤1、2Aおよび2Bよりも安定性が低いことが示された。この製剤中でのTH−302の濃度は室温で1ヶ月間にわたって減少し、これは、この製剤ではTH−302が溶液状態で維持されなかった(すなわち、析出が生じた)ことを示す。
【0182】
非イオン界面活性剤なしの凍結乾燥TH−302の水性溶液である製剤4で、別の比較を行なった。以下の手順を用いて製剤4を調製した。19mlの水をTH−302に100ml容バイアル内で注入すると、暗褐色の透明な溶液が得られた。得られた溶液の50μLをメスフラスコ(5ml容)内に移し、水で5mlまで希釈した。TH−302の終濃度は50μg/mlであった。ヒト臨床試験で使用されたTH−302製剤の一例は、−20℃で保存され、患者への投与直前に再構成される凍結乾燥粉剤(再構成凍結乾燥生成物)である。
【0183】
HPLC解析を使用し、28日後の37℃での製剤1〜4の相対安定性を解析した。結果を以下の表に示す。
【0184】
【表14】

37℃で28日目の安定性データに基づき、TH−302は、種々の製剤において、以下の順:エタノール>エタノール/ベンジルアルコール/DMA>PEG−400>>再構成凍結乾燥生成物で安定性を有する。
【0185】
純DMA中のTH−302の製剤は、薬物溶液を生理食塩水またはD5W中で再構成した場合、問題があることが示された。TH−302/DMA溶液を、生理食塩水またはD5Wバッグ中で5mg/mlの終濃度で再構成した場合、TH−302が析出した。
【0186】
DMA/PEG−400中のTH−302の製剤は、薬物溶液を生理食塩水またはD5W中で再構成した場合、問題があることが示された。TH−302/DMA/PEG−400溶液を、生理食塩水またはD5Wバッグ中で5mg/mlの終濃度で再構成した場合、TH−302が析出した。
【0187】
生理食塩水中で再構成後の製剤7A〜L(TH−302は、EtOH/DMA/TWEEN 80またはEtOH/DMA中)の比較試験を、以下のようにして行なった。まず、以下のビヒクルを調製した。
【0188】
ビヒクルAは、以下のようにして調製した:20ml容バイアル内に、EtOH(4ml)、DMA(0.75ml)およびTWEEN 80(0.25ml)の混合物を添加した。次いで、混合物を、5分間攪拌することにより充分混合した。
【0189】
ビヒクルBは、以下のようにして調製した:20ml容バイアル内に、EtOH(3.75ml)、DMA(1.0ml)およびTWEEN 80(0.25ml)の混合物を添加した。次いで、混合物を、5分間攪拌することにより充分混合した。
【0190】
ビヒクルCは、以下のようにして調製した:20ml容バイアル内に、EtOH(3.5ml)、DMA(1.25ml)およびTWEEN 80(0.25ml)の混合物を添加した。次いで、混合物を、5分間攪拌することにより充分混合した。
【0191】
ビヒクルDは、以下のようにして調製した:20ml容バイアル内に、EtOH(4.25ml)、DMA(0.25ml)の混合物を添加した。次いで、混合物を、5分間攪拌することにより充分混合した。
【0192】
以下のTH−302ストック溶液を、上記のビヒクルから調製した。
【0193】
100mg/ml溶液は、以下のとおりに調製した:50mgのTH−302を0.5mlのビヒクルA、B、C、D中に、対応する2ml容バイアル内で溶解させた。各バイアル内の混合物を5分間攪拌すると、すべてのビヒクルで透明な溶液が得られた。
【0194】
150mg/ml溶液は、以下のとおりに調製した:75mgのTH−302を0.5mlのビヒクルA、B、C、D中に、対応する2ml容バイアル内で溶解させた。各バイアル内の混合物を5分間攪拌すると、すべてのビヒクルで透明な溶液が得られた。
【0195】
200mg/ml溶液は、以下のとおりに調製した:100mgのTH−302を0.5mlのビヒクルA、B、C、D中に、対応する2ml容バイアル内で溶解させた。各バイアル内の混合物を10分間攪拌すると、すべてのビヒクルで透明な溶液が得られた。
【0196】
−20℃で保存したTH−302の種々の製剤の安定性を解析した。上記の方法によって調製した各溶液の0.1mlを、対応する2ml容バイアル内に移し、−20℃で24時間溶液を保存し、溶液からのTH−302の析出を、いくつかのビヒクルで観察した。TH−302析出のあったバイアルを室温にし、室温で30分間放置して、TH−302が、この条件下で溶液中に再溶解し得るかどうかを調べた。結果を以下の表に示す。
【0197】
【表15】

各ビヒクルの150mg/ml溶液を選択し、生理食塩水中での再構成を試験した。0.1mlの溶液を3mlの生理食塩水中に、対応する20ml容フラスコ内で再溶解させた。溶液を完全に混合した後、TH−302の析出をいくつかの試験で観察した。試験は4回繰り返した。析出は、ビヒクルA、BおよびC(TWEEN 80を含む)では観察されなかったが、ビヒクルD(TWEEN 80を含まない)では、4回の試験のうち1回で観察された。製剤化されたTH−302溶液の生理食塩水中5mg/mlでの再構成により、TWEEN 80の添加によりTH−302の析出が抑制されることが示された。また、高濃度のTH−302では、エタノール/DMAはエタノールまたはPEG−400よりも良好な溶媒であった。
【0198】
生理食塩水中での溶液の再構成後の製剤8A〜F(TH−302は、EtOH/DMA/TWEEN 80中)の比較試験を行なった。−20℃および2〜8℃での各TH−302溶液の安定性を試験した。各製剤の3つのバイアルを2〜8℃で暗所にて保存し、溶液の安定性を試験した。解析は、0、7、18および31日目に行なった。TH−302は、2〜8℃で31日間にわたって、6種類の製剤のいずれからも析出しなかった。溶液を−20℃で保存した場合は、半数の製剤で、24時間でTH−302結晶が得られたが、結晶は、溶液を室温まで昇温させると1時間未満で再溶解した。結果を以下の表にまとめる(7日目に測定)。
【0199】
【表16】

また、異なる製剤中TH−302の化学安定性も、異なる温度で試験した。結果を以下の表にまとめる。
【0200】
【表17】

【0201】
【表18】

上記のデータは、6種類の製剤中でのTH−302が、溶液を25℃で保存した場合、再構成凍結乾燥薬物生成物製剤(DP;D5W中で再構成した凍結乾燥TH−302)中よりも有意に安定であることを示す。6種類の製剤の3つでは、同様の条件下でのDP製剤中のTH−302(18%を超える分解が示された)と比較した場合、31日間でわずかに最小限のTH−302の分解が示された。上記のデータが示すように、TWEEN 80の使用により、より濃縮されたTH−302の製剤が可能になり、TH−302が、同様の濃度で、他の製剤よりも良好に安定化されることが示された。
【0202】
したがって、エタノールとTWEEN 80の組合せ、またはエタノール、TWEEN 80、およびDMAは、TH−302の優れた製剤である。TH−302は、このような製剤(300mg/mlまで)(DMA/エタノール/TWEEN 80の比率に応じて)中で、良好な溶解度を有する。ビヒクル中のDMAの濃度を増大させると液状製剤中でのTH−302の溶解度が向上するが、製剤中でのTH−302の化学安定性に影響し得る。薬物溶液を生理食塩水またはD5W中で再構成した場合、TWEEN 80によりTH−302析出が抑制された。この結果に基づき、非イオン界面活性剤、エタノールおよび任意選択でDMAの組合せにより、長期保存のための適当な安定性を有するTH−302の濃縮型製剤が得られる。
【0203】
実施例2:TH−302単独療法を用いたヒト患者における肺がんおよび黒色腫の処置
TH−302でのフェーズ1臨床試験を行なった。開始用量は、4週間サイクルのうちの3週間に週1回で30〜60分間にわたって投与される7.5mg/mIVとした。変形型の促進用量設定設計を使用した。670mg/mで投与した5名の患者のうち2名は、用量制限毒性(DLT):単純疱疹肛門周囲/直腸潰瘍および粘膜炎による脱水症を示した。6名の患者を575mg/mの中間用量に登録し、6名の患者のうち5名がこの用量でDLTを示さなかったため、この用量を、この投与スケジュールのMTDとして確立した。
【0204】
最低用量であっても抗がん活性の徴候がみられ、1名のNSCLC患者は、疾患安定状態(SD)を7.3ヶ月間示した。2名の患者(1名はSCLCを有し、480mg/mで処置、別の1名は黒色腫を有し、670mg/mで処置)は、非確認の一部応答を有し(以下により詳細に記載する);16名の患者は疾患安定状態を有した。
【0205】
粘膜毒性は用量制限性であり、皮膚および粘膜毒性は240mg/mより高い用量に共通していたが、これは可逆的であった。本発明の一実施形態において、TH−302は、皮膚および/または粘膜毒性を予防または改善する薬剤とともに共投与される。最も一般的なTH−302関連有害事象(AE)は、悪心、皮膚毒性、嘔吐および疲労感であった。血液系の毒性は軽度で限定的であった。
【0206】
肺がんの処置
この試験では、肝臓に転移した肺がん(抗療性の小細胞肺がん)に苦しむ39歳の男性を、以下のようにして処置した。凍結乾燥TH−302をD5Wで希釈し、患者に480mg/mの量で、以下の4週間投与サイクルに従って投与した:TH−302を、毎週1回で3週間(1、8および15日目)投与し、続いて1週間TH−302投与なしとした。患者には、2回のサイクル(すなわち6回用量)のTH−302を投与し、肺および肝臓のがんを、コンピュータ連動断層撮影(すなわちCT)スキャンによって評価した。CTスキャンにより、肺および肝臓のがんは、面積が50%より多く減少したこと(標的病変の最長直径[SLD]の和の44%の減少)が示された。LDHは72%減少し、肝機能試験では正常であった。また、第2サイクルの腫瘍評価では、外科的介入および22日遅れの第3サイクルの投与が必要とされる大きな蓄膿が示された。第2サイクルスキャンの1ヶ月後のCTスキャンでの確認により、進行性の疾患が示された。
【0207】
この試験の肺がんを有する他の3名の患者(NSCLCを有する1名およびSCLCを有する2名)は、TH−302単独療法に応答し、疾患安定状態であった。
【0208】
この結果は、本発明の方法が、肺がん(例えば、NSCLCおよびSCLC)の処置に有効であることを示す。
【0209】
黒色腫の処置
この試験では、本発明の方法が黒色腫の処置にも有用であることが示された。肝臓と肺に転移した原発性黒色腫(皮膚がん)に苦しむ74歳の男性患者を以下のようにして処置した。TH−302を患者に、670mg/mの量で、4週間(28日)投与サイクルを用いて投与した:TH−302を毎週1回で3週間、1、8および15日目に投与し、続いて1週間TH−302投与なしとした。患者には、2回のサイクルのTH−302を投与し、CTスキャンによって評価した。CTスキャンにより、肺および肝臓のがんは、面積が50%より多く減少したこと(標的病変のSLDの53%の減少)が示された。
【0210】
試験における登録を、転移性黒色腫を有する患者のMTDに拡大した。TH−302は、28日サイクルの1、8および15日目に30〜60分間にわたって静脈内投与した。適格患者は、ECOG≦1、RECISTによる少なくとも1つの標的病変、ならびに許容され得る血液系、肝臓および腎機能を有する患者とした。症候性脳転移を有する患者は、処置歴がなければ除外し、少なくとも3ヶ月間、充分に管理した。9名の転移性黒色腫を有する患者を、この試験で処置した。中央値年齢は70歳であり(23歳〜78歳の範囲)、女性は5名、男性は4名で、ECOGは、4名の患者で1、5名の患者で1であった。4名の患者は、高値のベースラインLDHを有した。転移部位には、7名の患者の肝臓および6名の患者の肺を含めた。患者はすべて、少なくとも1回、以前に全身化学療法レジメンを受けたことがあった。2例の重篤な有害事象、発作および腹水が報告された;いずれも、試験薬物に関連するとみなされなかった。皮膚の有害事象が8名の患者で報告され、粘膜の有害事象が4名の患者で報告され、グレード3の事象が1例含まれた。骨髄抑制は有意ではなく、1例のグレード3/4の好中球減少症および貧血の事象があり、グレード3/4の血小板減少症の事象はなかった。8名の患者にRECIST腫瘍評価を行なった。8名のうち3名(37%)の患者は、RECIST一部応答(1名は確認済、1名は非確認、1名は非確認で試験を継続)を有し、8名のうち3名(38%)の患者は、治療の2ヶ月後、継続して疾患安定状態を有し、8名のうち2名(25%)の患者は進行性の疾患を有した。
【0211】
実施例3:併用療法におけるHAPおよび非HAP化学療法剤の投与スケジュールの有効性
本明細書において示すように(以下の実施例4および5も参照)、HAP抗がん剤と非HAP抗がん剤でのがんの併用療法により、副作用が低減されたより有効な処置がもたらされる。これを示すため、異所性モデルをヌードマウスにおいて使用した。抗腫瘍活性は、腫瘍増殖遅滞(TGD)および腫瘍増殖抑止(TGI)によって評価した。体重の変化、組織変化の肉眼および顕微鏡による評価、ならびに血液学的アッセイにより毒性評価を行なった。このモデルでの試験は、一般的に以下のようにして行なった。1×10(H460ヒト非小細胞肺がんもしくはHT1080ヒト線維肉腫細胞)または3×10(PC−3ヒト前立腺がん細胞)を右側腹部の皮下腔内に移植し、異所性異種移植片モデルを得た。腫瘍が一定の大きさ(100〜150mm)に達したとき、無作為化および投薬を開始した。実験ではすべてAPIグレードのTH−302を使用し、一方、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ペメトレキセドおよびドキソルビシンは、市販品供給元から購入した。
【0212】
試験の1つでは、H460腫瘍増殖(NSCLC)モデルにおける異なるTH−302/ドセタキセル投与レジメンの効果を調べた。H460細胞は、30%Matrigelおよび70%RPMI1640中で調製した。マウスをイソフルランで麻酔し、1×10細胞(200μl中)を該側腹部の位置の皮下に移植した。本発明者らは、同様のサイズの腫瘍(約100mm)を有する110匹のマウスを試験に選択した。同様の腫瘍サイズを有するマウスを、異なる群に無作為に割り当てた。処置は、記載している場合を除き、1日目(腫瘍移植の7日後)に開始した。TH−302は、150mg/kgで腹腔内(IP)投与し、ドセタキセルは、10mg/kgで静脈内(IV)投与した。動物を毎日観察し、腫瘍の測定値および体重を週2回記録した。ビヒクル処置腫瘍と比較した薬物処置腫瘍の500mmおよび1000mmに達するまでの腫瘍増殖遅滞(TGD)、ならびに腫瘍増殖抑止(TGI)(1−T/C)(式中、T/C=(Tn−Ti)/(Cn−Ci)、式中、Tnは、n日目の処置群の腫瘍体積であり、Tiは、処置群の初期腫瘍体積であり、Cnは、n日目のビヒクル対照群の腫瘍体積であり、Ciは、ビヒクル対照群の初期腫瘍体積であり、n日目は、対照群の動物がまだすべて生存していた最後の測定のときである)を表19に示す。異なる用量シーケンスでは異なる抗腫瘍効果が観察された。結果により、一般的に、ドセタキセルの前にTH−302を投与すると卓越した抗腫瘍応答がもたらされることが示され、該化学療法剤の4時間前のTH−302の投与は、試験したその他の時間間隔(例えば、24もしくは48時間前、または同時)よりも良好であった。
【0213】
移植した細胞をPC−3ヒト前立腺がん細胞とし、3×10細胞を移植し、腫瘍が約150mmに達したときにマウスを別々の群に無作為化したこと以外は実質的に上記のようにして行なった試験において、TH−302を最初に提供すると最も良好な結果であった。非HAP薬物(ドセタキセル)をHAP薬物(TH−302)の投与終了の4時間後に投与すると、最も良好な処置有効性が示された。2、4および24時間遅れ試験の結果を、以下の表19に含める。
【0214】
移植した細胞をH460 NSCLC細胞とし、1×10細胞を移植し、腫瘍が約100mmに達したときにマウスを別々の群に無作為化し、使用した化学療法剤を、150mg/kgの用量で週1回(Q7D)で2週間IP投与するペメトレキセドとし、TH−302は、週1回(Q7D)で2週間IP投与する100mg/kgで投与したこと以外は実質的に上記のようにして行なった試験において。非HAP薬物(ペメトレキセド)をHAP薬物(TH−302)の投与の2時後に投与すると、同時投与、または4、8もしくは24時間遅れを用いた場合と比較して、最も良好な処置有効性が示された。試験の結果を表19に含める。
【0215】
移植した細胞をHT1080ヒト線維肉腫細胞とし、1×10細胞を移植し、腫瘍が約100mmに達したときにマウスを別々の群に無作為化し、使用した化学療法剤を、1回IV投与される4mg/kの用量のドキソルビシンとし、TH−302を100mg/kgの用量で1回投与したこと以外は実質的に上記のようにして行なった試験において。非HAP薬物(ドキソルビシン)薬物をHAP薬物(TH−302)の投与の2時間後または4時間後に投与すると、同時投与、または8もしくは24時間遅れを用いた場合、またはドキソルビシンを2時間遅れのHAP薬物より前に投与した場合と比較して、最も良好な処置有効性が示された。試験の結果を以下の表に含める。
【0216】
HAP抗がん剤と非HAP抗がん剤を同時に投与すると、最大の毒性が示された。例えば、同時存在的(co−incident)なTH−302と化学療法剤のの投与では、多くの場合、その他のスケジュールと比べて最も重度の体重(BW)減少が示された。これは、TH−302とドセタキセルを投与したPC−3(前立腺がん腫)モデル、およびTH−302とシスプラチンを投与したPC−3前立腺がんモデルでも観察された。
【0217】
移植した細胞をPC−3ヒト前立腺がん細胞とし、5×10細胞を移植し、腫瘍が約100mmに達したときにマウスを別々の群に無作為化し、使用した化学療法剤を、週1回で2週間(Q7D×2)IV投与される6mg/kの用量のシスプラチンとし、TH−302を50mg/kgの用量で、1日1回で5日間、2週間の1週間投与し、その日は両方の薬剤を投与し、TH−302をシスプラチンの2時間前、同時または2時間後に投与したこと以外は実質的に上記のようにして行なった試験において。非HAP薬物(シスプラチン)薬物をHAP薬物(TH−302)の投与の2時後に投与すると、同時発生的投与、またはシスプラチンをHAP薬物の2時間前に投与した場合と比較して、最も良好な処置有効性が示された。PC−3前立腺がんモデルにおいて、TH−302をドセタキセル(docetaxol)と同時発生的に投与すると、このマウスで毒性副作用が示され、この投与スケジュールで試験した10匹のマウスのうち6匹は、>20%の体重減少のため死亡した。
【0218】
本発明の方法による併用処置により、どのようにして毒性の低減がもたらされるかを、特に血球計数の抑制に関して示すための別の試験を行なった。この試験では、TH−302をCD1マウスに投与し、次いでゲムシタビンを、TH−302の投与終了の0、2、4、8、16または24時間後に投与した。併用投与の安全性は、TH−302の投与の2日間後、血球計数(白血球またはWBC、好中球、リンパ球、単球、赤血球またはRBC、およびヘモグロビンまたはHb)に対するその効果によって測定した(血球計数が多いほど、薬物の併用投与は安全である)。どちらの薬物も腹腔内投与した;TH−302は75mg/kgの用量で投与し、ゲムシタビンは300mg/kgで投与した。結果により、TH−302とゲムシタビンの非同時発生的投与は、例えば、ゲムシタビンをTH−302の投与の2時間後または4時間後に投与した場合、一緒に投与するよりも毒性が低いことが示された。
【0219】
要約すると、この実験では、(i)最大の抗腫瘍有効性は、HAP抗がん剤を最初に投与し、HAPの投与と非HAP抗がん剤の投与の間にいくらかの遅れがあるレジメン(regiment)によって観察されること;および(ii)HAP抗がん剤と非HAP抗がん剤を同時に投与すると最大の毒性が示されることが示された。
【0220】
【表19−1】

【0221】
【表19−2】

実施例4:TH−302とゲムシタビン、ドセタキセル、またはペメトレキセドとの併用療法
この実施例は、がんの処置のためのTH−302と併用したTH−302以外の抗がん剤の非同時発生的投与を示す。ゲムシタビン、ドセタキセルまたはペメトレキセドと併用して投与したときのTH−302の有効性を示すため、およびその安全性を調べるため、フェーズ1/2、3選択肢の多施設用量段階的増大試験を、従来の用量段階的増大設計を用いて行なった。TH−302の初期用量を240mg/mとした。TH−302は、静脈内(IV)注入によって、30分間にわたって28日(4週間)サイクルの1、8および15日目(選択肢A)、または21日(3週間)サイクルの1日目と8日目(選択肢BとC)に、以下に記載するようにして投与した。ゲムシタビン、ドセタキセルまたはペメトレキセドは、TH−302注入を終了してから2時間後に投与した。ゲムシタビン、ドセタキセルまたはペメトレキセドの開始用量は、そのそれぞれの製品ラベル表示に示された承認用量に従って固定したままにした。これらの薬物の処置レジメン、用量、スケジュールおよびサイクル長さは、以下のとおりとした。
【0222】
処置選択肢A:ゲムシタビンを、1,000mg/m IVで、30分間にわたって各28日サイクルの1、8および15日目にIV投与した。TH−302は、各28日サイクルの1、8および15日目に上記のようにして投与した。
【0223】
処置選択肢B:ドセタキセルを、75mg/mで、60分間にわたって各21日サイクルの1日目にIV投与した。TH−302は、各21日サイクルの1日目と8日目にに上記のようにして投与した。
【0224】
処置選択肢C:ペメトレキセドを、500mg/mで、10分間にわたって各21日サイクルの1日目にIV投与した。TH−302は、各21日サイクルの1日目と8日目に上記のようにして投与した。
【0225】
A. 試験薬物曝露および用量制限毒性の測定
240mg/mの用量で開始し、次いで、用量の段階的増大を先の用量レベルから40%増大で継続した;しかしながら、処置の転帰に基づいて20〜40%の低用量増大も適用可能であった。TH−302用量は、3〜6名の患者コホートにおいて段階的に増大した。被検体に用量制限毒性(DLT)が起こった場合、3名のさらなる患者をその用量レベルに登録し、そのコホートを合計6名の患者にした。さらなるDLTが観察されなかった場合は、用量の段階的増大を再開した。しかしながら、コホートの6名の患者のうち2名以上にDLTが起こった場合、その用量を、最大耐用量(MTD)を超えるとみなした。次いで、6名の患者を処置し、DLTが起こった被検体が1名未満であった次に低い用量レベルをMTDと規定した。使用したTH−302の最大用量は、単独薬剤(TH−302単独療法)MTDまたはMTDに達しなかった場合は、その試験で試験した最高用量とした。
【0226】
CTスキャンを2サイクル毎に行なった。この試験の目的は、TH−302のMTDおよびDLTを測定すること、ならびに進行型充実性腫瘍において、ゲムシタビン(G)、ドセタキセル(D)、またはペメトレキセド(P)と併用したTH−302の安全性、薬物動態(PK)および予備的有効性を評価することであった。72名の患者が登録されており、用量の段階的増大のまとめに含められるように充分追跡されている。50名の患者を登録して充分な腫瘍評価の追跡を行なった。患者を米国の7つの施設で、2008年8月から2009年8月まで登録し、試験薬物を受けた。試験薬物の曝露およびDLTを以下にまとめる。
【0227】
【表20】

【0228】
【表21】

【0229】
【表22】

これまでの結果は、TH−302が、全用量のゲムシタビン、ドセタキセルまたはペメトレキセドと併用して安全に投与され得るが、これらの薬剤の血液系の毒性を上昇させることがあり得ることを示す。
【0230】
TH−302+ゲムシタビンのMTDは、340〜400mg/mであると予想され;TH−302+ドセタキセルのMTDは340mg/mであり、TH−302+ペメトレキセドのMTDは480mg/mである。主な用量制限毒性は血液系のものであった。血液系の毒性に対するTH−302の寄与は、TH−302を骨髄抑制性の化学療法と併用すると、調べるのが困難であるが、血液系の毒性は、単独薬剤での化学療法で予測され得るものより大きいことは、ゲムシタビン選択肢およびペメトレキセド選択肢において明白である。皮膚および粘膜の毒性は240mg/mより上の用量で共通している。その機構は不明であるが、通常低酸素性である上皮領域でのTH−302の活性化によるものであり得る。標準的な化学療法剤に対するTH−302の添加では他の身体系における毒性を促進させないようである。応答率は、単独薬剤での化学療法で予測され得るものより高いことは明白である。
【0231】
B.抗腫瘍活性
抗腫瘍活性は、大部分の患者で観察された。膵臓がん、NSCLCおよび移行上皮がんにおける多重応答が報告された(上記の発明の詳細な説明の表2および3参照)。
【0232】
これまで、45名の患者を応答について評価した。このうち、12名の患者(27%)は、RECIST基準の一部応答(PR)を有し、22名の患者(49%)は疾患安定状態(SD)に達し、11名の患者(24%)は進行性の疾患を有した。一部応答には、確認済の一部応答と非確認の一部応答の両方を含めた。確認済の一部応答では、一部応答は、少なくとも28日後の次の応答評価まで維持され、非確認の一部応答では、一部応答は、評価で1回報告されたが、次の応答評価では維持されなかった。
【0233】
i)ゲムシタビン選択肢
TH−302+ゲムシタビン選択肢では、TH−302を、30〜60分間、28日サイクルの1、8および15日目に静脈内投与した。ゲムシタビンは、28日サイクルの1、8および15日目に、その添付文書に従って投与する。TH−302の最大耐用量(MTD)は、同時に340mg/mに拡大した用量コホートでは確立されていない。2例の用量制限毒性が2つの高TH−302用量レベルの各々で報告された。15名の患者に腫瘍評価を行ない、そのうち、6名は、以下のがん:膵臓(2)、卵巣、食道、非扁平上皮小細胞肺がん(NSCLC)および甲状腺においてPRを有し、7名の患者はSDを有した。
【0234】
膵臓がんを有する8例のヒト被検体を、ゲムシタビンと併用したTH−302で処置した。4例の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行なった。初期腫瘍評価では、4例の被検体のうち2例が一部応答を有し、同じ4例の被検体のその他の2例は疾患安定状態を有した。ファーストライン膵臓がんの従来の応答率は、多くの大規模試験で10%未満である。この4例の被検体のうち2例は試験進行を継続し、第4サイクルまたは第6サイクルを受けている。一部応答を有した被検体のうち1例は感染により中止した;他方は、新たな病変が検出された後、中止した。CA19−9は、いくつかの胃腸のがん(膵臓がんを含む)の腫瘍マーカーとして同定されたタンパク質である。一般的に、CA19−9の値(IU/ml)は、腫瘍負荷の程度と関連している。高レベルCA19−9は低生存率と関連している。また、ベースラインCA19−9からの50%より大きい減少で定義されるCA19−9応答により、より良好な予後が予測されることが示されている。4例の被検体のうち2例は併用療法前は高値のCA19−9を有した。この被検体はともに、78%および98%のCA19−9減少を伴うCA19−9応答を有した。
【0235】
ii)ドセタキセル選択肢
TH−302+ドセタキセル選択肢では、TH−302を、21日サイクルの1日目と8日目に静脈内投与した。ドセタキセルは、21日サイクルの1日目に、その添付文書に従って投与した。TH−302 MTDは340mg/mで確立され、この用量で、精巣摘出抵抗性前立腺がんを有する患者およびセカンドラインNSCLCを有する患者において用量拡大を開始した。11名の患者に腫瘍評価を行ない、そのうち2名ではNSCLCおよび肛門がんにおいてPRが達成され、6名の患者はSDを有した。
【0236】
iii)ペメトレキセド選択肢
TH−302+ペメトレキセド選択肢では、TH−302を、21日サイクルの1日目と8日目に静脈内投与した。ペメトレキセドは、21日サイクルの1日目に、その添付文書に従って投与した。TH−302 MTDは480mg/mで確立され、400mg/mのTH−302用量で、セカンドライン非扁平上皮NSCLCを有する患者において用量拡大を開始した。19名の患者に腫瘍評価を行ない、そのうち4名ではNSCLC(2)および移行上皮がん腫(2)においてPRが達成され、9名の患者はSDを有した。
【0237】
全体として、再発または抗療性のNSCLCを有する8名の患者を、ドセタキセルまたはペメトレキセドのいずれかと併用したTH−302で処置し、応答について評価した。評価した8名の患者のうち、3名の患者でPRが達成され、4名の患者はSDに達し、1名の患者はPDを有した。8名の患者の処置期間の中央値は5.3ヶ月であった。
【0238】
実施例5:TH−302とドキソルビシンでの併用療法
本発明に従ってドキソルビシンと併用して投与したときのTH−302の有効性および安全性を示すため、軟部組織肉腫を有する患者のフェーズ1/2、多施設用量段階的増大試験を、従来の用量段階的増大設計を用いて行なった。TH−302の用量を、3〜6例の被検体コホートにおいて段階的に増大した。TH−302の初期用量を、単独薬剤のフェーズ1試験のサイクル1でグレード2以上の毒性(疲労感、悪心、嘔吐、脱毛および下痢を除く)がなかった用量である240mg/mとした。用量レベル−1を試験に組み込んだ。用量の段階的増大は、先の用量レベルから40%の増大で継続した;しかしながら、20〜39%の低用量増大も投与可能であった。
【0239】
被検体にDLTが起こった場合、3名のさらなる患者をその用量レベルに登録し、そのコホートを合計6名の患者にした。さらなるDLTが観察されなかった場合は、用量の段階的増大を再開した。しかしながら、コホートの6名の患者のうち2名以上にDLTが起こる場合、その用量を、MTDを超えるとみなす。次いで、6名の被検体を処置し、DLTが起こった被検体が≦1である次に低い用量レベルをMTDと規定する。TH−302の最大用量は、単独薬剤のMTD、またはMTDに達しなかった場合は、その試験で試験した最高用量である。MTDは、第1サイクル中に生じる毒性に基づく。さらに12例の被検体を、この試験の用量拡大部のためにMTDに登録する。
【0240】
TH−302は、IV注入によって、30〜60分間にわたって21日サイクルの1日目と8日目に投与した。ドキソルビシンの用量は、21日サイクルの1日目に開始されるボーラス注射によって投与される75mg/mに固定したままにした(血清ビリルビンがULNより上だが≦1.5×ULNである場合、用量を56mg/mに減らした)。ドキソルビシンの投与は、各サイクルの1日目のTH−302注入終了の2時間後に開始した。
【0241】
この試験では、10名の患者をTH−302で処置し、6名の患者は240mg/m、および4名の患者は340mg/mとした。患者の年齢範囲は19〜85歳であった。処置対象肉腫には、脂肪肉腫(3)、平滑筋肉腫(3)、滑膜肉腫(2)および多型性(2)を含めた。240mg/mでの最初の3名の患者は、15日目にG4好中球減少症を有した。次の患者は、本発明の方法に従って8日目に顆粒球刺激因子(GCSF)を受けている。15日目にグレード4の血小板減少症のDLTおよびグレード3の感染のDLTが、340mg/mで処置した2名の患者で起こった。骨髄抑制はDLTであると思われ、その効果は、GCSFの使用によって一部未然に回避される。したがって、本発明の一実施形態において、GCSFは、がんを処置するためにTH−302と共投与される。
【0242】
7例の被検体に対してRECIST腫瘍評価を行なった。7例の被検体のうち3例は一部応答を有し、この同じ7例の被検体の別の3例は疾患安定状態を有した。ファーストライン軟部組織肉腫の従来の応答率は、15%〜25%である。7例の被検体のうち2例は試験進行を継続し、第4サイクルまたは第11サイクルを受けている。一部応答を有した3例の被検体はすべて、この試験のドキソルビシン成分の終了後にTH−302単独を受ける試験進行を継続した。
【0243】
実施例6:がんモデルにおけるTH−302での併用療法
この実施例は、HAP抗がん剤と非HAP抗がん剤でのがん併用療法のための本発明の方法が、いずれかの薬剤単独よりも卓越した抗がん活性ことを示す。これを示すため、異所性、同所性および転移性モデルを、ヌードマウスにおいて使用した。抗腫瘍活性は、腫瘍増殖抑止(TGI)および腫瘍増殖遅滞(TGD)によって評価した。体重の変化、組織変化の肉眼および顕微鏡による評価、ならびに血液学的アッセイにより毒性評価を行なった。
【0244】
a)方法
このモデルでの試験は、一般的に以下のようにして行なった。1×10のH460ヒト非小細胞肺がんまたはHT1080ヒト線維肉腫細胞を右側腹部の皮下腔内に移植し、異所性異種移植片モデルを得た。同所性膵臓モデルでは、赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するMIA PaCa2腫瘍を膵臓の表面上に外科的に移植した。前立腺の転移性モデルは、3×10のルシフェラーゼ発現PC−3細胞の脳室内注射によって作出した。異所性モデルでは腫瘍が一定の大きさ(100〜150mm)に達したとき、または同所性および転移性のモデルでは、画像形成によって一定の疾患の進行が示されたとき、無作為化および投薬を開始した。実験ではすべてAPIグレードのTH−302を使用し、一方、ドセタキセル、ゲムシタビン、ドキソルビシンおよびペメトレキセドは、市販品供給元から購入した。
【0245】
b)肺がんモデルにおけるTH−302とペメトレキセド
TH−302とペメトレキセドの組合せの投与後の腫瘍増殖の阻害は、H460細胞を用いた異所性肺がんモデルにおいて、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。表23参照。
c)肺がんモデルにおけるTH−302とドキソルビシン
TH−302とドキソルビシン薬物の投与後の腫瘍増殖の阻害は、Calu−6細胞を用いた異所性腫瘍モデルにおいて、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。表23参照。
d)肺がんモデルにおけるTH−302とカルボプラチン
TH−302とカルボプラチンの投与後の腫瘍増殖の阻害は、H460細胞を用いた異所性腫瘍モデルにおいて、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。表23参照。
e)結腸がんモデルにおけるTH−302と5FU
TH−302と5FUの投与後の腫瘍増殖の阻害は、HT−29細胞を用いた異所性腫瘍モデルにおいて、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。表23参照。
f)軟部組織肉腫モデルにおけるTH−302とドキソルビシン
TH−302とドキソルビシン薬物の組合せの投与後の腫瘍増殖の阻害は、HT1080細胞を用いた異所性腫瘍モデルにおいて、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。表19参照。
g)前立腺がんモデルにおけるTH−302とパクリタキセル(タキソール)
TH−302を単独療法剤として、およびタキソール(パクリタキセル)と併用して、高度に侵潤性の転移性同所性前立腺がんPC−3細胞を有する動物において試験した。動物を、各々8匹のマウス6つの群に無作為化し、次いで、ビヒクル;タキソール(12mg/kg,IV,週2回で4周連続);TH−302(30または50mg/kg,IP,1日1回で5日間、連続2週間の1週間);またはタキソールのいずれかで、TH−302と併用して処置した(同じ単独薬剤レジメンを使用)。この試験により、いずれの用量のTH−302でも併用療法で有意な応答率が示された(このとき、疾患の進行は腫瘍体積によって追跡)。タキソール単独およびTH−302単独では、30mg/kgまたは50mg/kgのいずれの用量でも、処置期間中、原発性腫瘍の増殖が有意に抑止された。原発性腫瘍増殖の最大の抑止は、TH−302用量とは無関係に、タキソール+TH−302併用療法群で生じ、4/8匹のマウス(タキソール+TH−302を30mg/kg)または3/8匹のマウス(タキソール+TH−302を50mg/kg)では、死亡直後の身体切開蛍光画像化により、完全応答が示された。薬物の組合せの投与後の腫瘍増殖の阻害は、個々の薬物いずれかの場合よりも大きかった。
【0246】
【表23】

本発明を、その具体的な実施形態に関して説明したが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得、同等物が代わりに使用され得ることが理解されよう。また、本発明によって提供される便益が得られるように具体的な状況、材料、組成物、方法、プロセス工程(1つまたは複数)に適合させるために、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変形が行われ得る。かかる変形はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることを意図する。
【0247】
本明細書において挙げた刊行物および特許文献はすべて、引用により、かかる各刊行物または文献が引用により組み込まれて、あたかも具体的に個々に示されているかのごとく、本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文献の引用は、なんら、かかる文献が関連のある先行技術であることを意図せず、内容またはその日付に関してなんらの是認を構成するものでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TH−302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬とを、がん治療を必要とする患者に投与することを含むがんの処置方法であって、
TH−302は200mg/m〜500mg/mの範囲の量で静脈内投与され、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬の投与は、TH−302の投与が終了してから30分〜8時間後に開始される、方法。
【請求項2】
低酸素活性化型プロドラッグでない前記薬が、TH−302の投与が終了してから2時間〜6時間後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬が、ドセタキセル、ペメトレキセド、ドキソルビシン、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチンまたは5−フルオロウラシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が肺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬が、ドセタキセル、パクリタキセル、ペメトレキセド、ドキソルビシン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、シスプラチン、またはカルボプラチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が前立腺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬がドセタキセルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が膵臓がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬がゲムシタビンである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が軟部組織肉腫の処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬がドキソルビシンである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が結腸のがんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない前記抗がん薬がシスプラチンまたは5−フルオロウラシルである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
治療有効用量のTH−302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬とを、がん治療を必要とする患者に投与することを含むがんの処置方法であって、
(a)前記患者が、NSCLC、前立腺がん、神経内分泌がん、肛門がん、尿膜管がん、尿道がん、乳がん、黒色腫または腎細胞がん腫の処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がドセタキセルであるか、または
(b)前記患者が、胆管がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、NSCLC、膨大部がん、神経内分泌がん、軟部組織肉腫または甲状腺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がゲムシタビンであるか、または
(c)前記患者が、食道がん、膵臓がん、NSCLC、神経内分泌がん、軟部組織肉腫、結腸直腸がん、肝細胞がん腫(HCC)、腎がんまたは耳下腺がんの処置を必要とし、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬がペメトレキセドである、
方法。
【請求項10】
TH−302を単独薬剤として投与することを含むがんの処置方法であって、
該TH−302は200mg/m〜700mg/mの範囲の量で、がん治療を必要とする患者に静脈内投与される、方法。
【請求項11】
前記がんが小細胞肺がんである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが黒色腫である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記TH−302が、各サイクルが週1回で連続3週間のTH−302の投与の後、1週間TH−302投与なしで構成される4週間サイクルで2回以上投与されるか、または各サイクルが週1回で連続2週間のTH−302の投与の後、1週間TH−302投与なしで構成される3週間サイクルで2回以上投与される、請求項1〜12いずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、粘膜および/または皮膚に対する損傷を低減するかまたは予防するための局所薬剤で予防的に処置される、請求項1〜12に記載の方法。
【請求項15】
一方が低酸素活性化型プロドラッグ(HAP)であり、他方がHAPでない抗がん薬(非HAP)である2種類の抗がん薬を、がん治療を必要とする患者に投与することを含むがんの処置方法であって、どちらの薬も24時間の期間内に投与され、該HAPが最初に投与され、該非HAPの投与は、該HAPの投与を停止してから後の少なくとも約30分および8時間以内に開始される、方法。
【請求項16】
前記非HAPが、前記HAPの投与を停止してから後の少なくとも約2時間および4時間以内に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記HAPがTH−302、TH−281、PR104およびAQ4Nから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記非HAPが、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、白金含有薬およびタキサンからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
活性成分として約50mg/ml〜約300mg/mlの量のTH−302、安定剤として作用する有効量の非イオン界面活性剤、およびキャリアーとしてエタノールを含む医薬製剤。
【請求項20】
ポリソルベートがソルビタンモノオレエートポリオキシエチレン(TWEEN 80)である、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
60mg/mlのTH−302、95%(v/v)エタノール、および5%TWEEN 80を含む、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
さらにジメチルアセトアミドを含む、請求項21に記載の医薬製剤。

【公表番号】特表2012−506448(P2012−506448A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533309(P2011−533309)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061541
【国際公開番号】WO2010/048330
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(505257121)スレッシュオールド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】