低音再生装置
【課題】簡単な構造で、エキサイターを使用して重低音を再生することができる低音再生装置を提供する。
【解決手段】音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイター3と、エキサイター3の振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板5と、を備え、エキサイター3と振動板5との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材12を設けたことを特徴とする。
【解決手段】音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイター3と、エキサイター3の振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板5と、を備え、エキサイター3と振動板5との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材12を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキサイターを使用した車両用の低音再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターを用いて、このエキサイターを車両の内装材に取り付けて、この内装材を振動板としてエキサイターにより振動させ、音を再生するスピーカー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−180368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エキサイターは、入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動及び、低音域成分に応じた振動を生成する。エキサイターで生成された、中高音域成分に応じた振動、及び、低音域成分に応じた振動は、振動板に伝えられるが、人間の耳の特性上、低音域の音は、中高音域の音よりも聞きづらく本来、聞こえているはずの低音域の音が中高音域の音にマスキングされてしまうため、所望する低音域の音を聞き取ることが難しい。すなわち、エキサイターを使用して、例えばウーハーのように低音域の音を積極的に再生する低音再生装置を構成するためには、音声信号の低音域成分のみをエキサイターに入力する必要があり、音声信号の出力側やエキサイターの入力前段にフィルターを設ける等の特別な対応を施さなければならず、構造が複雑になった。
また、エキサイターの振動による振動板の振幅の反動がエキサイターに戻されて、エキサイター自身が振幅できる以上に振幅してしまい、歪感の多い音質で音が再生されてしまうという問題があった。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な構造で、エキサイターを使用して重低音を再生することができる低音再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板と、を備え、前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けた低音再生装置を提供することを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記振動板は、前記エキサイターの振動によって振幅し、前記エキサイターの振動を車両フレームに伝えて共鳴させて低音域成分の音を発する構成としても良い。また、前記エキサイターの振動による前記緩衝材の湾曲を抑制するブラケットを備えた構成としても良い。また、前記エキサイターを前記振動板に取り付ける取付手段を前記緩衝材に一体に形成した構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板と、を備え、前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けたため、エキサイターに入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動と、エキサイターの振動によって振動した振動板からエキサイターに戻される振動とを緩衝材で吸収することができ、簡単な構造で、エキサイターを使用して重低音を再生することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のスピーカー構造を示す図である。
【図2】エキサイターの構造を示す図である。
【図3】2次振動部材を示す図である。
【図4】エキサイターの取付構造を示す図である。
【図5】第2実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図6】第3実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図7】第4実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図8】第5実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図9】第5実施形態のエキサイター取付部分の2次振動部の構造を示す図である。
【図10】第6実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図11】第7実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(A)は本発明を適用した実施形態に係る低音再生装置1を備えた車両2の外観視図であり、図1(B)は、図1(A)に示した車両2のa―aでの断面図である。なお、車両2の前後方向は、図1(A)に示した車両2の前後に基づくものであり、この前後に対する左右を車両2の車幅方向とする。
図1(B)に示すように、低音再生装置1は、エキサイター3と、2次振動部(振動板)5とから構成される。エキサイター3は、2次振動部5の両端点からの等距離付近に取り付けられている。
【0010】
2次振動部5は、車両2の内装材9の裏側、つまり、内装材9と、車両2の屋根である天井パネル4との間に梁状に配設され、車両2の車幅方向に亘って、前部座席の上部辺りに設けられる。2次振動部5は、車両2の天井パネル4に沿って湾曲するように形成され、その両端部5aは、車両2のサイドパネルに沿って垂れ下がるようにフランジ状に形成されている。2次振動部5は、サイドパネル等の車両フレーム6にビス等によって締結される。2次振動部5の両端部5aは、車両2の窓枠上近くで車両フレーム6に固定されている構成であっても良い。この構成によれば、2次振動部5を天井パネル4に沿うように天井パネル4の近くに配設したため、車両2の車室内の頭上スペースを狭めることなく2次振動部5にエキサイター3を取り付けることができる。
【0011】
エキサイター3は、図2に示すように、ポール31、マグネット32、プレート33、フレーム34、ダンパー35から概略構成される。ポール31は、凹状に形成され、エキサイター3の底部と側壁部とを構成する。マグネット32は、円盤形状に形成された永久磁石であり、ポール31の底部に載置されている。プレート33は、マグネット32の上に載置され、マグネット32の直径とほぼ同じか、僅かに大きい円盤状に形成されている。
【0012】
エキサイター3は、ポール31内に、マグネット32と、プレート33とによって磁気回路37が形成される。また、フレーム34には、ダンパー35が固定され、ダンパー35により、不図示のボイスコイルボビンが弾性的に保持されている。
エキサイター3に音声信号が入力されると、ポール31内に、マグネット32とプレート33とによって形成された磁気回路37と、ダンパー35によって保持されたボイスコイルボビンとが相互に作用し、入力された音域成分に応じた振動が生成される。
【0013】
エキサイター3は、図1に示したように、2次振動部5に取り付けられ、2次振動部5は、車両フレーム6に接続されているため、エキサイター3が生成した振動によって2次振動部5は振幅し、この振幅によって、エキサイター3が生成した振動が、2次振動部5を通じて、車両フレーム6伝えられ車両フレーム6を共鳴させる。2次振動部5を弦楽器の弦の部分と見立てると、車両フレーム6が楽器本体の部分、つまり共鳴胴となり、車両フレーム6が共鳴することによって音が増幅される。エキサイター3は、2次振動部5の両端点からの等距離付近に取り付けられているため、2次振動部5を振幅させるのに有利となる。
【0014】
2次振動部5は、冷間圧延鋼板から形成される。図3(A)は2次振動部5の斜視図であり、図3(B)は、2次振動部5を図3(A)中のb―bで切断した断面の拡大図である。2次振動部5は、図3に示したように、薄板の帯状に形成され、長手方向に亘るビード7が略中央に設けられている。2次振動部5の端部5aは、フランジ状に形成され、端部5aには取付孔8が設けられている。2次振動部5は、この取付孔8を介して車両フレーム6にビスにて締結される。また、2次振動部5の短手方向の両端5bは、補強のために、ビード7と同じ方向に向かって略直角に折り曲げられている。
【0015】
2次振動部5は、エキサイター3の振動によって振幅するが、ビード7を備えるため、2次振動部5にいくつかの腹と節が発生するのが防がれ、エキサイター3の振動を車両フレーム6に十分に伝えることができる。また、2次振動部5は、薄板状に形成されているため、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動を受けて自身で振幅することができ、エキサイター3の振動を車両フレーム6に伝えることができる。このように、2次振動部5は、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動で振幅することができる強度、及び、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動を車両フレーム6に十分に伝えることができる形状に形成されているため、エキサイター3の振動を2次振動部5を通じて車両フレーム6に伝えて共鳴させ、豊かな重低音を再生することができる。
【0016】
2次振動部5は、また、車両パネルで一般的に使用されている冷間圧延鋼板から形成され、車両の車幅方向に亘って設けられるため、車両2の屋根の剛性を高める効果もある。車両2が、車幅方向に亘って、車両フレーム6間で架設された屋根補強用バーを備える場合には、この屋根補強用バーを2次振動部5として用いる構成としても良い。車両2の屋根補強用バーを2次振動部5として用いる場合には、2次振動部5は、車両フレーム6に溶接固定される構成であっても良い。
2次振動部5は、また、車両フレーム6に固定された両端部5a以外の部分は、固定しない構成とすることが望ましいが、強く抑制を受けないように両端部5a以外の部分を保持する構造を車両2側に設ける構成としても良い。
【0017】
これらの構成によれば、入力された音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイター3は、前部座席の上部辺りで、車両2の車幅方向に亘って設けられた2次振動部5の両端部5aからの等距離付近に設けられ、車両2の乗員の耳元に近い位置に配設される。そのため、音圧を大きくしなくても、再生した音が乗員の耳に届き、電力の低消費が可能となる。
【0018】
また、入力された音声信号の音域成分に応じてエキサイター3が生成した振動を、2次振動部5を通じて車両フレーム6に伝え共鳴さて音を増幅し再生するため、小型のエキサイター3を用いても十分な音圧を確保することができる。そのため、小型のエキサイター3を使用できることで、エキサイター3の配設による車両2の乗員スペースの縮小を抑えることができる。
【0019】
次に、2次振動部5へのエキサイター3の取付構造について説明する。
図4はエキサイター3と、エキサイター3を2次振動部5に取り付けるための取付部材10とを示した部分断面図である。取付部材10は、ブラケット11と、緩衝材12と、から構成される。エキサイター3は、取付部材10に接着等によって貼り付けられて固定される。ブラケット11、及び、緩衝材12は、略矩形に形成され、長手方向の両端側中央付近には、取付孔13が設けられている。ブラケット11に固定されたエキサイター3は、この取付孔13に挿入される取付ビス13Aで、2次振動部5に緩衝材12を介して螺合されて取付られる。
【0020】
緩衝材12は、ノイズとして出力されるエキサイター3と2次振動部5の間の不要な音域成分の振動を吸収する。緩衝材12は、弾力性のある素材から形成され、硬度、及び、形状の違いにより吸収する振動成分をコントロールすることができる。緩衝材12の材質としては、材料或いは厚さを変えることで硬度を多様に変えることができるとともに、所望する形状に容易に形成することができるゴム材を好適に用いることができる。
【0021】
緩衝材12で吸収されるエキサイター3と2次振動部5の間の振動成分には、エキサイター3に入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動と、エキサイター3の振動によって振幅した2次振動部からエキサイターに戻される振動とが含まれる。エキサイター3に入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動が2次振動部5に伝えられると、人間の耳は、低音域の音は、高音域の音よりも聞き取りにくいという特性がある為、低音域成分に応じた振動が車両フレーム6に伝わることで発生しているはずの低音域の音が高音域の音にマスキングされて聞き取りにくくなってしまう。また、エキサイター3の振動によって振幅した2次振動部の反動がエキサイターに戻されると、エキサイター3は、自身が振幅できる以上に振幅してしまうことで、歪感の多い音質となってしまう。
【0022】
エキサイター3は、2次振動部5に取り付けるにあたり、緩衝材12をエキサイター3と2次振動部5の間に挟み込んで取り付けられるため、エキサイター3から2次振動部5に伝えられる中高音域の成分に応じた振動が緩衝材12で吸収され、減衰される。また、低音域成分に応じた振動に関しては、エキサイター3の振動が緩衝材12に伝わった際に生じる緩衝材12自身の振動により、低音域の発生から収束までの時間がエキサイター3を2次振動部5に直接固定した場合に対し、緩衝材12を介した場合の方が長くなる。これによってめ、緩衝材12を介してエキサイター3を2次振動部5に固定したことで、再生される低音域の音が奥行きのある、ゆったりとした伸びのある低音として感じられるようになる。
【0023】
またエキサイター3が振動したことで振幅する2次振動部5の反動は、緩衝材12で緩和されるため、エキサイター3が反動を受ける影響で増加してしまう加速度を抑えることができ、エキサイター3は入力される音声信号に対しリニアな振動を生成することが可能となる。
【0024】
緩衝材12を介してエキサイター3を取り付ける効果は、緩衝材12の材質(硬度)、または、形状の違いにより変動する。その為、状況に応じて緩衝材12の材質、或いは、形状を変化させることで緩衝材12で吸収する振動成分を変えることができ、再生する音の音域、及び、音質をコントロールすることが可能となる。
【0025】
取付部材10は、取付ビス13Aの他に、不図示のクリップ等で2次振動部5に取り付けられる構成としても良い。
これらの構成によれば、ブラケット11と2次振動部5の間に緩衝材12を挟み込んでエキサイター3を取り付けたため、エキサイター3に入力された音声信号の高音域の成分に応じた振動が緩衝材12で吸収されて減衰する。しかしながら、取付ビス13Aから高音域成分に応じた振動が2次振動部5へ伝わるため、低音域の音だけではなく、高音域の音を再生させたい場合にも有効的である。
【0026】
また、高音域の音を積極的に再生させたい場合には、緩衝材12を介さずに、ブラケット11を直接車両2側に取り付けることで高温域成分に応じた振動をブラケット11を介して2次振動部5に伝えて、高音域の音を再生することもできる。高音域成分に応じた振動は、微細振動での伝達となるため、2次振動部5を振幅させて、振動を車両フレーム6に伝える必要がなく、例えば、車両側の高強度のパネルにエキサイター3を直接取り付けても高音域の音を再生することができる。例えば、車両2の左右のAピラーパネルの内側に直接エキサイターを取り付けることで、エキサイター3が発生する高音域成分に応じた振動でパネルそのものを振動させて高音域の音を再生させて、ステレオ感を持たせることができるとともに、Aピラーパネルの内側から車両2の全体に音振動を伝えて、音に広がりを持たせることもできる。
【0027】
<第2実施形態>
第1実施形態の取付部材10では、エキサイター3が固定されたブラケット11を、ブラケット11と2次振動部5の間に緩衝材12を挟み込んで、取付ビス13Aでブラケット11を2次振動部5に螺合して取付ける構成としたが、取付ビス13Aを介して、高音域成分に応じた振動が2次振動部5に伝わるため、高音域成分に応じた振動の減衰効果が少ない。また、取付ビス13Aで緩衝材12が固定されることで、緩衝材12の動きに規制がかかり、低音域成分に応じた振動に緩衝材12自身の振動が抑制されるため、緩衝材12を使用した事による低音域の音の伸びが感じられなくなる。また、緩衝材12の厚みを厚くすると、2次振動部5への取り付け部付近の緩衝材12がつぶれてブラケット11が変形してしまうおそれがあるため、緩衝材12の厚さに対する自由度がない。
この、第二実施形態では、緩衝材12の厚さに自由度が取れるエキサイター3の取付部材10Aを提供する。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0028】
図5(A)に示すように、この第2実施形態では、取付部材10Aは、それぞれ略円形に形成された緩衝材12Aと、ブラケット11とから構成されている、エキサイター3は、緩衝材12Aの一方の面に接着などによって貼り付けられて固定される。図5(B)に示すように緩衝材12Aの、エキサイター3が貼り付けられている一方の面とは逆の他方の面は、接着などによってブラケット11に固定されている。ブラケット11には、複数の取付孔13が設けられる。取付孔13は、ブラケット11の緩衝材12Aが固定されている領域の外側に設けられる。取付孔13を介して不図示の取付ビス或いはクリップ等でブラケット11を、2次振動部5に固定して、エキサイター3を、2次振動部5に取り付ける。エキサイター3に入力された音声信号の高音域成分に応じた振動は、緩衝材12Aで吸収されて減衰する。また、取付孔13が設けられたブラケット11の2次振動部5への固定部分には緩衝材12Aが設けられていないため、緩衝材12Aの厚さを厚くしても、取り付け部付で緩衝材12Aがつぶれることがなく、緩衝材12の厚さに自由度がとれる。また、緩衝材12Aは、取付ビス等によって固定されないため、緩衝材12Aの動きに規制がかからず、エキサイター3が生成する低音域成分に応じた振動で緩衝材12自身が振動することができるため、上述したように、伸びのある低音を再生することが可能となる。
【0029】
<第3実施形態>
第2実施形態の取付部材10Aでは、緩衝材12Aに固定されたエキサイター3をブラケット11を介して2次振動部5に取り付けている為、緩衝材12Aのみを介して2次振動部5にエキサイター3を取り付けた場合と比較すると、低音域の2次振動部5への伝わりが間接的となってしまいう。
この第3実施形態では、緩衝材を直接的に2次振動部5に取り付けることができる取付構造を提供する。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0030】
図6(A),(B)に示すように、取付部材10Bは、略矩形に形成された緩衝材12Bと、緩衝材12Bの一方の面に接着等によって固定され、緩衝材12Bと略同じ大きさに形成されたブラケット11とから構成されている。緩衝材12Bには、ブラケット11が接着等によって固定され、ブラケット11の緩衝材12Bに固定されていない方の面には、エキサイター3が貼り付けられている。つまり、緩衝材12Bに、ブラケット11を介して、エキサイター3が固定されている。緩衝材12Bには、複数の取付孔13Bが設けられるとともに、取付孔13Bの周囲には、緩衝材12Bを掘り上げた凹部14が形成されている。凹部14は、取付孔13Bに挿入する取付ビス15の頭部16と略同じ大きさ、或いは若干大きく形成され、取付孔13Bに取付ビス15の軸部17を挿入した際に、頭部16が凹部14に収容されるように構成されている。
【0031】
ブラケット11には、緩衝材12Bの取付孔13Bが設けられている位置に対応して、孔18が設けられる。緩衝材12Bは、ブラケット11の孔18を介して緩衝材12Bの取付孔13Bに挿入した取付ビス15によって2次振動部5に取り付けられる。ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止する役割を果たす。
これらの構成によれば、エキサイター3が固定された緩衝材12Bを直接的に2次振動部5へ取り付けることができるため、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Bで吸収して減衰させることができ、更に、低音域成分に応じた振動を直接的に2次振動部5へ伝えることができ、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0032】
<第4実施形態>
第3実施形態の取付部材10Bでは、緩衝材12B、及び、ブラケット11に設けられた取付孔13B、及び、孔18を介して挿入した取付ビス15で、緩衝材12Bを介してエキサイター3を2次振動部5に取り付ける構成としたが、ビス固定では、取り付け作業性があまり良くない。
この第4実施形態では、取付作業性を考慮して、緩衝材に2次振動部5への取付部(ゴムブッシュ)を一体に形成し、取付作業性を向上させた。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0033】
図7に示すように、取付部材10Cは、略矩形に形成された緩衝材12Cと、緩衝材12Cの一方の面に接着等で固定されたブラケット11とから構成されている。緩衝材12Cの他方の面には、2つのブッシュ部(取付手段)20が緩衝材12と一体に形成されている。ブッシュ部20は、緩衝材12Cの長手方向の両端近くにそれぞれ設けられる。ブッシュ部20は、ブッシュ頭部21と、ブッシュ軸部22とから形成され、ブッシュ頭部21は、首部23が先端部24よりも径が大きくなるように、略円錐形に形成されている。
【0034】
2次振動部5には、ブッシュ部20を圧入し、緩衝材12Bを介してエキサイター3を2次振動部5に取り付けるためのブッシュ挿入孔25が形成されている。ブッシュ部20のブッシュ軸部22は、ブッシュ挿入孔25と略同じ大きさに形成され、ブッシュ頭部21をブッシュ挿入孔25に圧入して貫通させた際に、ブッシュ挿入孔25にブッシュ軸部22が嵌合されて、2次振動部5にブッシュ部20の首部23が引っ掛った状態で保持される。
【0035】
緩衝材12Cと略同じ大きさに形成されたブラケット11の緩衝材12Cに固定された面とは逆の面には、エキサイター3が貼り付けられている。つまり、エキサイター3は、ブラケット11を介して緩衝材12Cに固定されている。ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止する役割を果たす。
【0036】
これらの構成によれば、緩衝材12Cにブッシュ部20を一体に形成し、ブッシュ部20を2次振動部5に形成したブッシュ挿入孔25に圧入することで簡単にエキサイター3を2次振動部5に取り付けることができ、エキサイター3の2次振動部5への取付作業性を向上させることができる。
また、エキサイター3が固定された緩衝材12Cを緩衝材12Cと一体に形成されたブッシュ部20で2次振動部5へ固定することができるため、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Cで吸収して減衰させることができ、更に、低音域成分に応じた振動を緩衝材12C、及び、ブッシュ部20を介して直接的に2次振動部5へ伝えることができるため、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0037】
<第5実施形態>
第3実施形態の取付部材10B、及び、第4実施形態の取付部材10Cでは、ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止するために備える構成としたため、ブラケット11には、所定の強度が必要であり、鉄板や、強度が確保できる板厚の樹脂材を使用する必要があり、エキサイター3の取付部材10B,10Cの軽量化、或いは、薄型化を図るのが困難であった。この第5実施形態は、補強のためのブラケット11を無くすことで、取付部材の軽量化、或いは、薄型化を図るものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0038】
図8(A),(B),(C)に示すように、取付部材(取付手段)10Dは、弾力性のあるゴム材等の緩衝材で形成されたベース部40と、スライド固定部41とを備える。ベース部40と、スライド固定部41は、それぞれ略矩形に形成され、各辺が略平行になるように一体に形成されている。ベース部40とスライド固定部41との間には、スライド溝42が形成され、取付部材10Dは、図8(B)に示すように、断面略I字型に形成される。ベース部40のスライド固定部41が設けられている面と反対の面には、エキサイター3が接着等によって貼り付けられて固定されている。
【0039】
エキサイター3は、取付部材10Dを車両2の車両フレーム6に固定された2次振動部5に固定することで、取付られる。取付部材10Dのベース部40の幅W1は、2次振動部5の幅W3と略同じ幅に形成される。これによって、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Bで吸収して減衰させ、更に、低音域成分に応じた振動を直接的に2次振動部5へ伝えることができるため、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0040】
2次振動部5には、図9(A)に示すように、取付部材10Dを2次振動部5にスライド挿入して固定するための切抜孔36が形成される。切抜孔36は、挿入部43とスライド部44とを備える。スライド部44の挿入部43が設けられている端部とは反対側の端部付近には、ストッパー45が設けられる。
【0041】
図9(B)は、図9(A)のb―bでの断面図である。2次振動部5は、図9(B)に示すように、挿入部43が設けられている部分で、斜めに折り曲げられ、折り曲げられた部分の高さH2は、取付部材10Dのスライド固定部41の高さH1と略同じか、若干高く形成されている。
また、2次振動部5のスライド部44の幅W4は、取付部材10Dのスライド溝42の幅W2と略同じか、若干小さく形成される。取付部材10Dのスライド固定部41は、図8中の矢印方向から、挿入部43を介して切抜孔36の上方に挿入される。取付部材10Dは、スライド溝42で切抜孔36の両辺を挟み込んだ状態でストッパー45までスライド挿入される。これによって、図8(C)に示すように、取付部材10Dは、スライド固定部41とベース部40との間に2次振動部5を挟み込んだ状態で、2次振動部5に取付られる。
【0042】
この構成によれば、2次振動部5が、弾力性のあるゴム材等の緩衝材で形成された取付部材10Dの補強板の役割を果たすため、エキサイター3の振動によって緩衝材で形成された取付部材10Dの湾曲を防止することができ、補強板としてのブラケットを無くすことで、取付部材の軽量化や薄型化を図ることができる。また、取付部材10Dを切抜孔36にスライド挿入させてエキサイター3を2次振動部5に取り付けることができるため、エキサイター3の取付作業性の向上を図ることができる。
【0043】
<第6実施形態>
第4実施形態では、緩衝材12Cに、2つのブッシュ部20を一体に形成して、ブッシュ部20を2次振動部5に形成したブッシュ挿入孔25に圧入し、エキサイター3を2次振動部5に固定する構成とした。第6実施形態は、ブッシュ部を1つにすることで、取付部材の小型化を図るものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0044】
図10に示すように、取付部材10Eは、緩衝材12Dと、ブラケット11Dとから構成される。図10(A)に示すように、緩衝材12D、及び、ブラケット11Dは、エキサイター3の径寸法と略同じ径の大きさの略円盤形状に形成される。エキサイター3は、ブラケット11Dに貼り付けられて、ブラケット11Dを介して緩衝材12Dに固定される。緩衝材12D、ブラケット11D、エキサイター3はそれぞれ接着などによって互いに固定される。
【0045】
図10(B)に示すように、円盤形状の緩衝材12Dの略中心には、ブッシュ部(取付手段)20Dが設けられる。ブッシュ部20Dは、ブッシュ頭部21Dと、ブッシュ軸部22Dとから形成され、ブッシュ頭部21Dは、首部23Dが先端部24Dよりも径が大きくなるように、略円錐形に形成されている。
2次振動部5には、ブッシュ部20Dを挿入し、緩衝材12Dを間に挟み込んでエキサイター3を2次振動部5に取り付けるための不図示のブッシュ挿入孔が形成されている。エキサイター3を2次振動部5に取り付ける際には、図9中の点Xでブラケット11Dを持って、ブッシュ頭部21Dを、ブッシュ挿入孔に押し込んで貫通させる。ブッシュ頭部21Dがブッシュ挿入孔を貫通すると、ブッシュ挿入孔にブッシュ軸部22Dが嵌合され、2次振動部5にブッシュ部20Dの首部23Dが引っ掛った状態で保持される。
【0046】
ブッシュ部20Dは、2次振動部5の不図示のブッシュ挿入孔に押し込まれる構成の他に、例えば上述の第5実施形態のように、2次振動部5に適宜の形状で形成された切抜孔にスライド挿入する構成であっても良い。
【0047】
また、図10(C)に示すように、緩衝材12Dの、ブッシュ部20Dが設けられている面とは反対側の面は、エキサイター3の内周に嵌合する凸部46が設けられ、凸部46がエキサイター3に挿入されて設けられている構成としても良い。ブラケット11Dには、凸部46が貫通する孔が設けられる。凸部46は、ポール31を押したときに、エキサイター3の内部に設けられた不図示のボイスコイルボビンにポール31が当たる前に、緩衝材12Dがエキサイター3の内部のプレート33に先に当たるように構成されている。この構成によれば、エキサイター3を2次振動部5に取付ようとした際に、取付作業が煩雑に行われ、ブラケット11Dの点X部分ではなく、エキサイター3のポール31を押してしまった場合でも、ボイスコイルボビンがポール31に当たってエキサイター3に不具合が発生してしまう可能性を防ぐことができる。
【0048】
<第7実施形態>
第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態では、2次振動部5の奥側、つまり、天井パネル4側に取付部材を挿入して、エキサイター3を2次振動部5に取り付ける構成としたが、車両のスペース的に取付部材を2次振動部5より奥側に設けることができない場合がある。第7実施形態では、取付部材を2次振動部5より天井パネル4側に設けることができない場合のエキサイター3の取付構造を提供するものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0049】
図11に示すように、取付部材10Fは、緩衝材12Eと、ブラケット11Eとから構成される。図11(A)に示すように、緩衝材12Eと、ブラケット11Eは、それぞれ略同じ寸法の略矩形に形成され、長手方向の両端側中央付近には、取付孔47が設けられている。エキサイター3は、ブラケット11Eの略中央に接着などによって貼り付けられて固定される。
図11(B)に示すように、2次振動部5には、エキサイター3の取付位置に応じて、取付部材10Fの取付孔47に対応する位置に、ダボ48が形成されている。ダボ48は、2次振動部5と一体に形成されている構成であっても良い。
【0050】
エキサイター3は、ブラケット11Eと2次振動部5の間に緩衝材12Eを間に挟み込んだ状態で取付部材10Fの取付孔47をダボ48に挿入させて固定し、2次振動部5に取り付けられる。この構成によれば、エキサイター3が生成した高音域成分に応じた振動を緩衝材12Eで減衰させるとともに、エキサイター3の生成した低音域成分に応じた振動を緩衝材12Eを介して直接的に2次振動部5に伝えることができ、伸びのある低音域の音を再生することができる。また、緩衝材12Eの材質(硬度)、及び、形状を自由に変化させて、様々な音質の調整をすることが可能となる。
また、ダボ48を車両2の内装材9に設けることで、内装材9に同様の固定方法でエキサイター3を取り付け、内装材9を振動板として用いて、内装材9を振動させることで所望する音域成分の音を再生することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 低音再生装置
2 車両
3 エキサイター
5 2次振動部(振動板)
6 車両フレーム
10D 取付部材(取付手段)
11 ブラケット
12 緩衝材
20、20D ブッシュ部(取付手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキサイターを使用した車両用の低音再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターを用いて、このエキサイターを車両の内装材に取り付けて、この内装材を振動板としてエキサイターにより振動させ、音を再生するスピーカー装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−180368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エキサイターは、入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動及び、低音域成分に応じた振動を生成する。エキサイターで生成された、中高音域成分に応じた振動、及び、低音域成分に応じた振動は、振動板に伝えられるが、人間の耳の特性上、低音域の音は、中高音域の音よりも聞きづらく本来、聞こえているはずの低音域の音が中高音域の音にマスキングされてしまうため、所望する低音域の音を聞き取ることが難しい。すなわち、エキサイターを使用して、例えばウーハーのように低音域の音を積極的に再生する低音再生装置を構成するためには、音声信号の低音域成分のみをエキサイターに入力する必要があり、音声信号の出力側やエキサイターの入力前段にフィルターを設ける等の特別な対応を施さなければならず、構造が複雑になった。
また、エキサイターの振動による振動板の振幅の反動がエキサイターに戻されて、エキサイター自身が振幅できる以上に振幅してしまい、歪感の多い音質で音が再生されてしまうという問題があった。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な構造で、エキサイターを使用して重低音を再生することができる低音再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板と、を備え、前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けた低音再生装置を提供することを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記振動板は、前記エキサイターの振動によって振幅し、前記エキサイターの振動を車両フレームに伝えて共鳴させて低音域成分の音を発する構成としても良い。また、前記エキサイターの振動による前記緩衝材の湾曲を抑制するブラケットを備えた構成としても良い。また、前記エキサイターを前記振動板に取り付ける取付手段を前記緩衝材に一体に形成した構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板と、を備え、前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けたため、エキサイターに入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動と、エキサイターの振動によって振動した振動板からエキサイターに戻される振動とを緩衝材で吸収することができ、簡単な構造で、エキサイターを使用して重低音を再生することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のスピーカー構造を示す図である。
【図2】エキサイターの構造を示す図である。
【図3】2次振動部材を示す図である。
【図4】エキサイターの取付構造を示す図である。
【図5】第2実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図6】第3実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図7】第4実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図8】第5実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図9】第5実施形態のエキサイター取付部分の2次振動部の構造を示す図である。
【図10】第6実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【図11】第7実施形態のエキサイターの取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(A)は本発明を適用した実施形態に係る低音再生装置1を備えた車両2の外観視図であり、図1(B)は、図1(A)に示した車両2のa―aでの断面図である。なお、車両2の前後方向は、図1(A)に示した車両2の前後に基づくものであり、この前後に対する左右を車両2の車幅方向とする。
図1(B)に示すように、低音再生装置1は、エキサイター3と、2次振動部(振動板)5とから構成される。エキサイター3は、2次振動部5の両端点からの等距離付近に取り付けられている。
【0010】
2次振動部5は、車両2の内装材9の裏側、つまり、内装材9と、車両2の屋根である天井パネル4との間に梁状に配設され、車両2の車幅方向に亘って、前部座席の上部辺りに設けられる。2次振動部5は、車両2の天井パネル4に沿って湾曲するように形成され、その両端部5aは、車両2のサイドパネルに沿って垂れ下がるようにフランジ状に形成されている。2次振動部5は、サイドパネル等の車両フレーム6にビス等によって締結される。2次振動部5の両端部5aは、車両2の窓枠上近くで車両フレーム6に固定されている構成であっても良い。この構成によれば、2次振動部5を天井パネル4に沿うように天井パネル4の近くに配設したため、車両2の車室内の頭上スペースを狭めることなく2次振動部5にエキサイター3を取り付けることができる。
【0011】
エキサイター3は、図2に示すように、ポール31、マグネット32、プレート33、フレーム34、ダンパー35から概略構成される。ポール31は、凹状に形成され、エキサイター3の底部と側壁部とを構成する。マグネット32は、円盤形状に形成された永久磁石であり、ポール31の底部に載置されている。プレート33は、マグネット32の上に載置され、マグネット32の直径とほぼ同じか、僅かに大きい円盤状に形成されている。
【0012】
エキサイター3は、ポール31内に、マグネット32と、プレート33とによって磁気回路37が形成される。また、フレーム34には、ダンパー35が固定され、ダンパー35により、不図示のボイスコイルボビンが弾性的に保持されている。
エキサイター3に音声信号が入力されると、ポール31内に、マグネット32とプレート33とによって形成された磁気回路37と、ダンパー35によって保持されたボイスコイルボビンとが相互に作用し、入力された音域成分に応じた振動が生成される。
【0013】
エキサイター3は、図1に示したように、2次振動部5に取り付けられ、2次振動部5は、車両フレーム6に接続されているため、エキサイター3が生成した振動によって2次振動部5は振幅し、この振幅によって、エキサイター3が生成した振動が、2次振動部5を通じて、車両フレーム6伝えられ車両フレーム6を共鳴させる。2次振動部5を弦楽器の弦の部分と見立てると、車両フレーム6が楽器本体の部分、つまり共鳴胴となり、車両フレーム6が共鳴することによって音が増幅される。エキサイター3は、2次振動部5の両端点からの等距離付近に取り付けられているため、2次振動部5を振幅させるのに有利となる。
【0014】
2次振動部5は、冷間圧延鋼板から形成される。図3(A)は2次振動部5の斜視図であり、図3(B)は、2次振動部5を図3(A)中のb―bで切断した断面の拡大図である。2次振動部5は、図3に示したように、薄板の帯状に形成され、長手方向に亘るビード7が略中央に設けられている。2次振動部5の端部5aは、フランジ状に形成され、端部5aには取付孔8が設けられている。2次振動部5は、この取付孔8を介して車両フレーム6にビスにて締結される。また、2次振動部5の短手方向の両端5bは、補強のために、ビード7と同じ方向に向かって略直角に折り曲げられている。
【0015】
2次振動部5は、エキサイター3の振動によって振幅するが、ビード7を備えるため、2次振動部5にいくつかの腹と節が発生するのが防がれ、エキサイター3の振動を車両フレーム6に十分に伝えることができる。また、2次振動部5は、薄板状に形成されているため、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動を受けて自身で振幅することができ、エキサイター3の振動を車両フレーム6に伝えることができる。このように、2次振動部5は、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動で振幅することができる強度、及び、エキサイター3が生成した低音域成分に応じた振動を車両フレーム6に十分に伝えることができる形状に形成されているため、エキサイター3の振動を2次振動部5を通じて車両フレーム6に伝えて共鳴させ、豊かな重低音を再生することができる。
【0016】
2次振動部5は、また、車両パネルで一般的に使用されている冷間圧延鋼板から形成され、車両の車幅方向に亘って設けられるため、車両2の屋根の剛性を高める効果もある。車両2が、車幅方向に亘って、車両フレーム6間で架設された屋根補強用バーを備える場合には、この屋根補強用バーを2次振動部5として用いる構成としても良い。車両2の屋根補強用バーを2次振動部5として用いる場合には、2次振動部5は、車両フレーム6に溶接固定される構成であっても良い。
2次振動部5は、また、車両フレーム6に固定された両端部5a以外の部分は、固定しない構成とすることが望ましいが、強く抑制を受けないように両端部5a以外の部分を保持する構造を車両2側に設ける構成としても良い。
【0017】
これらの構成によれば、入力された音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイター3は、前部座席の上部辺りで、車両2の車幅方向に亘って設けられた2次振動部5の両端部5aからの等距離付近に設けられ、車両2の乗員の耳元に近い位置に配設される。そのため、音圧を大きくしなくても、再生した音が乗員の耳に届き、電力の低消費が可能となる。
【0018】
また、入力された音声信号の音域成分に応じてエキサイター3が生成した振動を、2次振動部5を通じて車両フレーム6に伝え共鳴さて音を増幅し再生するため、小型のエキサイター3を用いても十分な音圧を確保することができる。そのため、小型のエキサイター3を使用できることで、エキサイター3の配設による車両2の乗員スペースの縮小を抑えることができる。
【0019】
次に、2次振動部5へのエキサイター3の取付構造について説明する。
図4はエキサイター3と、エキサイター3を2次振動部5に取り付けるための取付部材10とを示した部分断面図である。取付部材10は、ブラケット11と、緩衝材12と、から構成される。エキサイター3は、取付部材10に接着等によって貼り付けられて固定される。ブラケット11、及び、緩衝材12は、略矩形に形成され、長手方向の両端側中央付近には、取付孔13が設けられている。ブラケット11に固定されたエキサイター3は、この取付孔13に挿入される取付ビス13Aで、2次振動部5に緩衝材12を介して螺合されて取付られる。
【0020】
緩衝材12は、ノイズとして出力されるエキサイター3と2次振動部5の間の不要な音域成分の振動を吸収する。緩衝材12は、弾力性のある素材から形成され、硬度、及び、形状の違いにより吸収する振動成分をコントロールすることができる。緩衝材12の材質としては、材料或いは厚さを変えることで硬度を多様に変えることができるとともに、所望する形状に容易に形成することができるゴム材を好適に用いることができる。
【0021】
緩衝材12で吸収されるエキサイター3と2次振動部5の間の振動成分には、エキサイター3に入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動と、エキサイター3の振動によって振幅した2次振動部からエキサイターに戻される振動とが含まれる。エキサイター3に入力された音声信号の中高音域成分に応じた振動が2次振動部5に伝えられると、人間の耳は、低音域の音は、高音域の音よりも聞き取りにくいという特性がある為、低音域成分に応じた振動が車両フレーム6に伝わることで発生しているはずの低音域の音が高音域の音にマスキングされて聞き取りにくくなってしまう。また、エキサイター3の振動によって振幅した2次振動部の反動がエキサイターに戻されると、エキサイター3は、自身が振幅できる以上に振幅してしまうことで、歪感の多い音質となってしまう。
【0022】
エキサイター3は、2次振動部5に取り付けるにあたり、緩衝材12をエキサイター3と2次振動部5の間に挟み込んで取り付けられるため、エキサイター3から2次振動部5に伝えられる中高音域の成分に応じた振動が緩衝材12で吸収され、減衰される。また、低音域成分に応じた振動に関しては、エキサイター3の振動が緩衝材12に伝わった際に生じる緩衝材12自身の振動により、低音域の発生から収束までの時間がエキサイター3を2次振動部5に直接固定した場合に対し、緩衝材12を介した場合の方が長くなる。これによってめ、緩衝材12を介してエキサイター3を2次振動部5に固定したことで、再生される低音域の音が奥行きのある、ゆったりとした伸びのある低音として感じられるようになる。
【0023】
またエキサイター3が振動したことで振幅する2次振動部5の反動は、緩衝材12で緩和されるため、エキサイター3が反動を受ける影響で増加してしまう加速度を抑えることができ、エキサイター3は入力される音声信号に対しリニアな振動を生成することが可能となる。
【0024】
緩衝材12を介してエキサイター3を取り付ける効果は、緩衝材12の材質(硬度)、または、形状の違いにより変動する。その為、状況に応じて緩衝材12の材質、或いは、形状を変化させることで緩衝材12で吸収する振動成分を変えることができ、再生する音の音域、及び、音質をコントロールすることが可能となる。
【0025】
取付部材10は、取付ビス13Aの他に、不図示のクリップ等で2次振動部5に取り付けられる構成としても良い。
これらの構成によれば、ブラケット11と2次振動部5の間に緩衝材12を挟み込んでエキサイター3を取り付けたため、エキサイター3に入力された音声信号の高音域の成分に応じた振動が緩衝材12で吸収されて減衰する。しかしながら、取付ビス13Aから高音域成分に応じた振動が2次振動部5へ伝わるため、低音域の音だけではなく、高音域の音を再生させたい場合にも有効的である。
【0026】
また、高音域の音を積極的に再生させたい場合には、緩衝材12を介さずに、ブラケット11を直接車両2側に取り付けることで高温域成分に応じた振動をブラケット11を介して2次振動部5に伝えて、高音域の音を再生することもできる。高音域成分に応じた振動は、微細振動での伝達となるため、2次振動部5を振幅させて、振動を車両フレーム6に伝える必要がなく、例えば、車両側の高強度のパネルにエキサイター3を直接取り付けても高音域の音を再生することができる。例えば、車両2の左右のAピラーパネルの内側に直接エキサイターを取り付けることで、エキサイター3が発生する高音域成分に応じた振動でパネルそのものを振動させて高音域の音を再生させて、ステレオ感を持たせることができるとともに、Aピラーパネルの内側から車両2の全体に音振動を伝えて、音に広がりを持たせることもできる。
【0027】
<第2実施形態>
第1実施形態の取付部材10では、エキサイター3が固定されたブラケット11を、ブラケット11と2次振動部5の間に緩衝材12を挟み込んで、取付ビス13Aでブラケット11を2次振動部5に螺合して取付ける構成としたが、取付ビス13Aを介して、高音域成分に応じた振動が2次振動部5に伝わるため、高音域成分に応じた振動の減衰効果が少ない。また、取付ビス13Aで緩衝材12が固定されることで、緩衝材12の動きに規制がかかり、低音域成分に応じた振動に緩衝材12自身の振動が抑制されるため、緩衝材12を使用した事による低音域の音の伸びが感じられなくなる。また、緩衝材12の厚みを厚くすると、2次振動部5への取り付け部付近の緩衝材12がつぶれてブラケット11が変形してしまうおそれがあるため、緩衝材12の厚さに対する自由度がない。
この、第二実施形態では、緩衝材12の厚さに自由度が取れるエキサイター3の取付部材10Aを提供する。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0028】
図5(A)に示すように、この第2実施形態では、取付部材10Aは、それぞれ略円形に形成された緩衝材12Aと、ブラケット11とから構成されている、エキサイター3は、緩衝材12Aの一方の面に接着などによって貼り付けられて固定される。図5(B)に示すように緩衝材12Aの、エキサイター3が貼り付けられている一方の面とは逆の他方の面は、接着などによってブラケット11に固定されている。ブラケット11には、複数の取付孔13が設けられる。取付孔13は、ブラケット11の緩衝材12Aが固定されている領域の外側に設けられる。取付孔13を介して不図示の取付ビス或いはクリップ等でブラケット11を、2次振動部5に固定して、エキサイター3を、2次振動部5に取り付ける。エキサイター3に入力された音声信号の高音域成分に応じた振動は、緩衝材12Aで吸収されて減衰する。また、取付孔13が設けられたブラケット11の2次振動部5への固定部分には緩衝材12Aが設けられていないため、緩衝材12Aの厚さを厚くしても、取り付け部付で緩衝材12Aがつぶれることがなく、緩衝材12の厚さに自由度がとれる。また、緩衝材12Aは、取付ビス等によって固定されないため、緩衝材12Aの動きに規制がかからず、エキサイター3が生成する低音域成分に応じた振動で緩衝材12自身が振動することができるため、上述したように、伸びのある低音を再生することが可能となる。
【0029】
<第3実施形態>
第2実施形態の取付部材10Aでは、緩衝材12Aに固定されたエキサイター3をブラケット11を介して2次振動部5に取り付けている為、緩衝材12Aのみを介して2次振動部5にエキサイター3を取り付けた場合と比較すると、低音域の2次振動部5への伝わりが間接的となってしまいう。
この第3実施形態では、緩衝材を直接的に2次振動部5に取り付けることができる取付構造を提供する。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0030】
図6(A),(B)に示すように、取付部材10Bは、略矩形に形成された緩衝材12Bと、緩衝材12Bの一方の面に接着等によって固定され、緩衝材12Bと略同じ大きさに形成されたブラケット11とから構成されている。緩衝材12Bには、ブラケット11が接着等によって固定され、ブラケット11の緩衝材12Bに固定されていない方の面には、エキサイター3が貼り付けられている。つまり、緩衝材12Bに、ブラケット11を介して、エキサイター3が固定されている。緩衝材12Bには、複数の取付孔13Bが設けられるとともに、取付孔13Bの周囲には、緩衝材12Bを掘り上げた凹部14が形成されている。凹部14は、取付孔13Bに挿入する取付ビス15の頭部16と略同じ大きさ、或いは若干大きく形成され、取付孔13Bに取付ビス15の軸部17を挿入した際に、頭部16が凹部14に収容されるように構成されている。
【0031】
ブラケット11には、緩衝材12Bの取付孔13Bが設けられている位置に対応して、孔18が設けられる。緩衝材12Bは、ブラケット11の孔18を介して緩衝材12Bの取付孔13Bに挿入した取付ビス15によって2次振動部5に取り付けられる。ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止する役割を果たす。
これらの構成によれば、エキサイター3が固定された緩衝材12Bを直接的に2次振動部5へ取り付けることができるため、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Bで吸収して減衰させることができ、更に、低音域成分に応じた振動を直接的に2次振動部5へ伝えることができ、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0032】
<第4実施形態>
第3実施形態の取付部材10Bでは、緩衝材12B、及び、ブラケット11に設けられた取付孔13B、及び、孔18を介して挿入した取付ビス15で、緩衝材12Bを介してエキサイター3を2次振動部5に取り付ける構成としたが、ビス固定では、取り付け作業性があまり良くない。
この第4実施形態では、取付作業性を考慮して、緩衝材に2次振動部5への取付部(ゴムブッシュ)を一体に形成し、取付作業性を向上させた。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0033】
図7に示すように、取付部材10Cは、略矩形に形成された緩衝材12Cと、緩衝材12Cの一方の面に接着等で固定されたブラケット11とから構成されている。緩衝材12Cの他方の面には、2つのブッシュ部(取付手段)20が緩衝材12と一体に形成されている。ブッシュ部20は、緩衝材12Cの長手方向の両端近くにそれぞれ設けられる。ブッシュ部20は、ブッシュ頭部21と、ブッシュ軸部22とから形成され、ブッシュ頭部21は、首部23が先端部24よりも径が大きくなるように、略円錐形に形成されている。
【0034】
2次振動部5には、ブッシュ部20を圧入し、緩衝材12Bを介してエキサイター3を2次振動部5に取り付けるためのブッシュ挿入孔25が形成されている。ブッシュ部20のブッシュ軸部22は、ブッシュ挿入孔25と略同じ大きさに形成され、ブッシュ頭部21をブッシュ挿入孔25に圧入して貫通させた際に、ブッシュ挿入孔25にブッシュ軸部22が嵌合されて、2次振動部5にブッシュ部20の首部23が引っ掛った状態で保持される。
【0035】
緩衝材12Cと略同じ大きさに形成されたブラケット11の緩衝材12Cに固定された面とは逆の面には、エキサイター3が貼り付けられている。つまり、エキサイター3は、ブラケット11を介して緩衝材12Cに固定されている。ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止する役割を果たす。
【0036】
これらの構成によれば、緩衝材12Cにブッシュ部20を一体に形成し、ブッシュ部20を2次振動部5に形成したブッシュ挿入孔25に圧入することで簡単にエキサイター3を2次振動部5に取り付けることができ、エキサイター3の2次振動部5への取付作業性を向上させることができる。
また、エキサイター3が固定された緩衝材12Cを緩衝材12Cと一体に形成されたブッシュ部20で2次振動部5へ固定することができるため、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Cで吸収して減衰させることができ、更に、低音域成分に応じた振動を緩衝材12C、及び、ブッシュ部20を介して直接的に2次振動部5へ伝えることができるため、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0037】
<第5実施形態>
第3実施形態の取付部材10B、及び、第4実施形態の取付部材10Cでは、ブラケット11は、エキサイター3が振動した際に緩衝材12Bが湾曲して振動を2次振動部5へ十分に伝えることができなくなってしまうのを防止するために備える構成としたため、ブラケット11には、所定の強度が必要であり、鉄板や、強度が確保できる板厚の樹脂材を使用する必要があり、エキサイター3の取付部材10B,10Cの軽量化、或いは、薄型化を図るのが困難であった。この第5実施形態は、補強のためのブラケット11を無くすことで、取付部材の軽量化、或いは、薄型化を図るものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0038】
図8(A),(B),(C)に示すように、取付部材(取付手段)10Dは、弾力性のあるゴム材等の緩衝材で形成されたベース部40と、スライド固定部41とを備える。ベース部40と、スライド固定部41は、それぞれ略矩形に形成され、各辺が略平行になるように一体に形成されている。ベース部40とスライド固定部41との間には、スライド溝42が形成され、取付部材10Dは、図8(B)に示すように、断面略I字型に形成される。ベース部40のスライド固定部41が設けられている面と反対の面には、エキサイター3が接着等によって貼り付けられて固定されている。
【0039】
エキサイター3は、取付部材10Dを車両2の車両フレーム6に固定された2次振動部5に固定することで、取付られる。取付部材10Dのベース部40の幅W1は、2次振動部5の幅W3と略同じ幅に形成される。これによって、エキサイター3が生成する高音域成分に応じた振動を緩衝材12Bで吸収して減衰させ、更に、低音域成分に応じた振動を直接的に2次振動部5へ伝えることができるため、伸びのある低音域の音を再生することができる。
【0040】
2次振動部5には、図9(A)に示すように、取付部材10Dを2次振動部5にスライド挿入して固定するための切抜孔36が形成される。切抜孔36は、挿入部43とスライド部44とを備える。スライド部44の挿入部43が設けられている端部とは反対側の端部付近には、ストッパー45が設けられる。
【0041】
図9(B)は、図9(A)のb―bでの断面図である。2次振動部5は、図9(B)に示すように、挿入部43が設けられている部分で、斜めに折り曲げられ、折り曲げられた部分の高さH2は、取付部材10Dのスライド固定部41の高さH1と略同じか、若干高く形成されている。
また、2次振動部5のスライド部44の幅W4は、取付部材10Dのスライド溝42の幅W2と略同じか、若干小さく形成される。取付部材10Dのスライド固定部41は、図8中の矢印方向から、挿入部43を介して切抜孔36の上方に挿入される。取付部材10Dは、スライド溝42で切抜孔36の両辺を挟み込んだ状態でストッパー45までスライド挿入される。これによって、図8(C)に示すように、取付部材10Dは、スライド固定部41とベース部40との間に2次振動部5を挟み込んだ状態で、2次振動部5に取付られる。
【0042】
この構成によれば、2次振動部5が、弾力性のあるゴム材等の緩衝材で形成された取付部材10Dの補強板の役割を果たすため、エキサイター3の振動によって緩衝材で形成された取付部材10Dの湾曲を防止することができ、補強板としてのブラケットを無くすことで、取付部材の軽量化や薄型化を図ることができる。また、取付部材10Dを切抜孔36にスライド挿入させてエキサイター3を2次振動部5に取り付けることができるため、エキサイター3の取付作業性の向上を図ることができる。
【0043】
<第6実施形態>
第4実施形態では、緩衝材12Cに、2つのブッシュ部20を一体に形成して、ブッシュ部20を2次振動部5に形成したブッシュ挿入孔25に圧入し、エキサイター3を2次振動部5に固定する構成とした。第6実施形態は、ブッシュ部を1つにすることで、取付部材の小型化を図るものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0044】
図10に示すように、取付部材10Eは、緩衝材12Dと、ブラケット11Dとから構成される。図10(A)に示すように、緩衝材12D、及び、ブラケット11Dは、エキサイター3の径寸法と略同じ径の大きさの略円盤形状に形成される。エキサイター3は、ブラケット11Dに貼り付けられて、ブラケット11Dを介して緩衝材12Dに固定される。緩衝材12D、ブラケット11D、エキサイター3はそれぞれ接着などによって互いに固定される。
【0045】
図10(B)に示すように、円盤形状の緩衝材12Dの略中心には、ブッシュ部(取付手段)20Dが設けられる。ブッシュ部20Dは、ブッシュ頭部21Dと、ブッシュ軸部22Dとから形成され、ブッシュ頭部21Dは、首部23Dが先端部24Dよりも径が大きくなるように、略円錐形に形成されている。
2次振動部5には、ブッシュ部20Dを挿入し、緩衝材12Dを間に挟み込んでエキサイター3を2次振動部5に取り付けるための不図示のブッシュ挿入孔が形成されている。エキサイター3を2次振動部5に取り付ける際には、図9中の点Xでブラケット11Dを持って、ブッシュ頭部21Dを、ブッシュ挿入孔に押し込んで貫通させる。ブッシュ頭部21Dがブッシュ挿入孔を貫通すると、ブッシュ挿入孔にブッシュ軸部22Dが嵌合され、2次振動部5にブッシュ部20Dの首部23Dが引っ掛った状態で保持される。
【0046】
ブッシュ部20Dは、2次振動部5の不図示のブッシュ挿入孔に押し込まれる構成の他に、例えば上述の第5実施形態のように、2次振動部5に適宜の形状で形成された切抜孔にスライド挿入する構成であっても良い。
【0047】
また、図10(C)に示すように、緩衝材12Dの、ブッシュ部20Dが設けられている面とは反対側の面は、エキサイター3の内周に嵌合する凸部46が設けられ、凸部46がエキサイター3に挿入されて設けられている構成としても良い。ブラケット11Dには、凸部46が貫通する孔が設けられる。凸部46は、ポール31を押したときに、エキサイター3の内部に設けられた不図示のボイスコイルボビンにポール31が当たる前に、緩衝材12Dがエキサイター3の内部のプレート33に先に当たるように構成されている。この構成によれば、エキサイター3を2次振動部5に取付ようとした際に、取付作業が煩雑に行われ、ブラケット11Dの点X部分ではなく、エキサイター3のポール31を押してしまった場合でも、ボイスコイルボビンがポール31に当たってエキサイター3に不具合が発生してしまう可能性を防ぐことができる。
【0048】
<第7実施形態>
第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態では、2次振動部5の奥側、つまり、天井パネル4側に取付部材を挿入して、エキサイター3を2次振動部5に取り付ける構成としたが、車両のスペース的に取付部材を2次振動部5より奥側に設けることができない場合がある。第7実施形態では、取付部材を2次振動部5より天井パネル4側に設けることができない場合のエキサイター3の取付構造を提供するものである。なお、2次振動部5の車両2への取付構造、及び、エキサイター3の構成については、第1実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0049】
図11に示すように、取付部材10Fは、緩衝材12Eと、ブラケット11Eとから構成される。図11(A)に示すように、緩衝材12Eと、ブラケット11Eは、それぞれ略同じ寸法の略矩形に形成され、長手方向の両端側中央付近には、取付孔47が設けられている。エキサイター3は、ブラケット11Eの略中央に接着などによって貼り付けられて固定される。
図11(B)に示すように、2次振動部5には、エキサイター3の取付位置に応じて、取付部材10Fの取付孔47に対応する位置に、ダボ48が形成されている。ダボ48は、2次振動部5と一体に形成されている構成であっても良い。
【0050】
エキサイター3は、ブラケット11Eと2次振動部5の間に緩衝材12Eを間に挟み込んだ状態で取付部材10Fの取付孔47をダボ48に挿入させて固定し、2次振動部5に取り付けられる。この構成によれば、エキサイター3が生成した高音域成分に応じた振動を緩衝材12Eで減衰させるとともに、エキサイター3の生成した低音域成分に応じた振動を緩衝材12Eを介して直接的に2次振動部5に伝えることができ、伸びのある低音域の音を再生することができる。また、緩衝材12Eの材質(硬度)、及び、形状を自由に変化させて、様々な音質の調整をすることが可能となる。
また、ダボ48を車両2の内装材9に設けることで、内装材9に同様の固定方法でエキサイター3を取り付け、内装材9を振動板として用いて、内装材9を振動させることで所望する音域成分の音を再生することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 低音再生装置
2 車両
3 エキサイター
5 2次振動部(振動板)
6 車両フレーム
10D 取付部材(取付手段)
11 ブラケット
12 緩衝材
20、20D ブッシュ部(取付手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、
前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板
と、を備え、
前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要
な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けた
ことを特徴とする低音再生装置。
【請求項2】
前記振動板は、前記エキサイターの振動によって振幅し、前記エキサイターの振動を車両フレームに伝えて共鳴させて低音域成分の音を発することを特徴とする請求項1に記載の低音再生装置。
【請求項3】
前記エキサイターの振動による前記緩衝材の湾曲を抑制するブラケットを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の低音再生装置。
【請求項4】
前記エキサイターを前記振動板に取り付ける取付手段を前記緩衝材に一体に形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低音再生装置。
【請求項1】
音声信号の音域成分に応じた振動を生成するエキサイターと、
前記エキサイターの振動によって振動し低音域成分の音を発するための振動板
と、を備え、
前記エキサイターと前記振動板との間に、低音域成分の振動を伝えつつ、不要
な音域成分の振動を減衰する緩衝材を設けた
ことを特徴とする低音再生装置。
【請求項2】
前記振動板は、前記エキサイターの振動によって振幅し、前記エキサイターの振動を車両フレームに伝えて共鳴させて低音域成分の音を発することを特徴とする請求項1に記載の低音再生装置。
【請求項3】
前記エキサイターの振動による前記緩衝材の湾曲を抑制するブラケットを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の低音再生装置。
【請求項4】
前記エキサイターを前記振動板に取り付ける取付手段を前記緩衝材に一体に形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の低音再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−160781(P2012−160781A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17081(P2011−17081)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】
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