説明

体動検出装置

【課題】体動を正確に検出し、正確な体動のカウントを得ること。
【解決手段】上下方向の加速度の大きさを取得し、その大きさが減少傾向から増加傾向に切り替わる下弦ピーク値と、増加傾向から減少傾向に切り替わる上弦ピーク値を検出する。検出した下弦ピーク値と上弦ピーク値の差分を算出する。算出した差分を閾値と比較し、差分が閾値以上であれば体動を検出したと判定し、体動検出フラグをオンにする。差分が閾値よりも小さければ体動を検出していないと判定し、体動検出フラグをオフのままとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩数計(体動検出装置)は、加速度センサにより歩行者の上下方向の加速度を検出し、その検出値の変化に基づいて歩数(体動)を計数する。図9は、従来の歩数計における加速度の検出値の変化を示す波形図である。図9に示すように、従来の歩数計は、加速度の検出値が閾値を超えるたびに、歩行者が一歩、歩行したと認識して歩行信号を発生する(例えば、特許文献1参照。)。例えば、図9に示す例では、第1のピーク1、第2のピーク2、第3のピーク3、第4のピーク4、第5のピーク5、第6のピーク6および第7のピーク7のうち、閾値を超える第1のピーク1、第4のピーク4、第5のピーク5および第6のピーク6でそれぞれ第1歩目、第2歩目、第3歩目および第4歩目というように、歩数が計数される。なお、図9において、三角印は歩行信号の発生タイミングを示し、その下の数字(1、2、3、4)は歩数を示す。
【0003】
【特許文献1】特許第2675842号公報(第3頁目の左欄の上から第15行目〜第22行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の歩数計では、次のような問題点がある。例えば、図9に示す例では、第4のピーク4と第5のピーク5では、実際には一歩、歩行しただけであるが、歩行時の不規則な動きなどが原因で極めて短時間に2つのピークが発生してしまい、それらのピークがともに閾値を超えてしまったため、二歩、歩行したことになっている。また、第3のピーク3では、実際に一歩、歩行したにもかかわらず、ピークが閾値を超えないため、歩行していないことになっている。このように、加速度の検出値の波形がきれいな正弦曲線にならない場合、歩行していないのに歩行したと誤認識したり、歩行したのに歩行していないと誤認識することがあり、正確な歩数が得られない。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、体動を正確に検出することができ、正確な体動のカウントが得られる体動検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる体動検出装置は、加速度センサの出力する加速度の大きさに基づいて体動の検出を判定する体動検出装置において、加速度の大きさが減少傾向から増加傾向に切り替わる下弦ピーク値、および増加傾向から減少傾向に切り替わる上弦ピーク値を検出し、前記下弦ピーク値および前記上弦ピーク値に基づいて体動の検出を判定することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明にかかる体動検出装置は、請求項1に記載の発明において、前記下弦ピーク値と前記上弦ピーク値の差分を算出し、前記差分を閾値と比較して体動の検出を判定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明にかかる体動検出装置は、請求項2に記載の発明において、前記差分は前記下弦ピーク値の直前または直後の前記上弦ピーク値から算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明にかかる体動検出装置は、請求項2または3に記載の発明において、前記差分が前記閾値よりも大きいときに体動を検出したと判定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明にかかる体動検出装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記体動を検出したと判定された後に、前記加速度の大きさが所定値をまたいで該所定値よりも初めて小さくなったときまたは初めて大きくなったときに体動をカウントすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明にかかる体動検出装置は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記体動を検出したと判定されたときに体動をカウントすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明にかかる体動検出装置は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、前記加速度センサは互いに異なる三方向の加速度を検出し、該三方向の加速度に基づいて前記加速度の大きさを取得することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8の発明にかかる体動検出装置は、請求項7に記載の発明において、前記加速度の大きさは、前記検出した加速度から重力加速度を除いた大きさであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9の発明にかかる体動検出装置は、請求項8に記載の発明において、前記三方向のそれぞれについて、連続する複数の前記加速度の検出値の平均値を前記重力加速度と見なすことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、加速度の大きさが取得され、その加速度の大きさの下弦ピーク値と上弦ピーク値が検出され、連続するそれらのピーク値の差分が算出される。その差分が閾値と比較され、閾値を超える場合に体動を検出したと判定される。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる体動検出装置によれば、体動を正確に検出することができ、正確な体動のカウントが得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる体動検出装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(体動検出装置のハードウェア構成)
図1は、この発明にかかる体動検出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、体動検出装置11は、互いに異なる三方向(X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向とする)の加速度を検出可能な3軸加速度センサを備えている。ここでは、3軸加速度センサを、X軸方向の加速度を検出するX軸加速度センサ12、Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度センサ13、およびZ軸方向の加速度を検出するZ軸加速度センサ14として示す。加速度センサとしては、周知のものを用いることができる。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、体動検出装置11に固有の方向であり、体動検出装置11の姿勢(向きや傾き)の変化に伴って変わる。
【0019】
また、体動検出装置11は、3軸加速度センサの出力信号に基づいて、体動検出装置11を携帯する被験者の体動であるか否かを判断し、体動をカウントする処理装置15を備えている。処理装置15の詳細な構成については、後述する。また、体動検出装置11は、処理装置15でカウントされた体動を表示する表示装置16を備えている。表示装置16は、例えば、液晶パネルと液晶駆動回路を備えている。
【0020】
(処理装置の機能的構成)
図2は、この発明にかかる体動検出装置の処理装置の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、処理装置15は、X軸アナログ/デジタル変換部21、Y軸アナログ/デジタル変換部22、Z軸アナログ/デジタル変換部23、取得手段としての機能を有する加速度取得部24、検出手段としての機能を有する上弦ピーク値検出部25および下弦ピーク値検出部26、算出手段としての機能を有するピーク差検出部27、判定手段としての機能を有する閾値判定部28、フラグ制御部29、並びに計数部30を備えている。これらの機能部については、ハードウェアにより実現されてもよいし、CPU等でプログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0021】
X軸アナログ/デジタル変換部21、Y軸アナログ/デジタル変換部22およびZ軸アナログ/デジタル変換部23は、それぞれ、入力端子31,32,33を介してX軸加速度センサ12、Y軸加速度センサ13およびZ軸加速度センサ14に接続されており、それらのセンサから出力されるアナログ電圧信号を所定の周期でサンプリングしてデジタルデータに変換する。X軸アナログ/デジタル変換部21、Y軸アナログ/デジタル変換部22およびZ軸アナログ/デジタル変換部23は、同一のタイミングでそれぞれのセンサ出力信号をサンプリングするのが望ましい。
【0022】
加速度取得部24は、各軸のアナログ/デジタル変換部21,22,23の出力値に基づいて加速度の大きさを取得する。加速度の大きさは、増減を繰り返す。加速度取得部24の詳細な構成については、後述する。上弦ピーク値検出部25は、加速度取得部24により取得された加速度の大きさが増加傾向から減少傾向に切り替わるときのピーク値(上弦ピーク値とする)を検出する。上弦ピーク値を検出するために、上弦ピーク値検出部25は、例えば、次のような処理を行う。上弦ピーク値検出部25は、加速度取得部24から出力された加速度の値をバッファに格納し、そのバッファの格納値と、その次に加速度取得部24から出力された加速度の値を比較し、大きい方の値でバッファの格納値を更新する。そして、上弦ピーク値検出部25は、加速度取得部24から出力された加速度の値がバッファの格納値よりも小さくなったら、そのときのバッファの格納値を上弦ピーク値とする。
【0023】
下弦ピーク値検出部26は、加速度取得部24により取得された加速度の大きさが減少傾向から増加傾向に切り替わるときのピーク値(下弦ピーク値とする)を検出する。下弦ピーク値を検出するために、下弦ピーク値検出部26は、例えば、次のような処理を行う。下弦ピーク値検出部26は、加速度取得部24から出力された加速度の値をバッファに格納し、そのバッファの格納値と、その次に加速度取得部24から出力された加速度の値を比較し、小さい方の値でバッファの格納値を更新する。そして、下弦ピーク値検出部26は、加速度取得部24から出力された加速度の値がバッファの格納値よりも大きくなったら、そのときのバッファの格納値を下弦ピーク値とする。
【0024】
ピーク差検出部27は、下弦ピーク値検出部26により検出された下弦ピーク値および上弦ピーク値検出部25により検出された上弦ピーク値の差分を算出する。その際、ピーク差検出部27は、下弦ピーク値とその直後の上弦ピーク値との差分を算出してもよいし、上弦ピーク値とその直後の下弦ピーク値との差分を算出してもよい。閾値判定部28は、ピーク差検出部27により算出された、下弦ピーク値と上弦ピーク値の差分を、あらかじめ設定されている閾値と比較し、その結果に基づいて体動を検出したか否かを判定する。例えば、閾値判定部28は、下弦ピーク値と上弦ピーク値の差分が閾値よりも大きいときに、体動を検出したと判定する。
【0025】
フラグ制御部29は、閾値判定部28により体動を検出したと判定された場合に、所定のタイミングで体動検出フラグをオンにする。所定のタイミングとは、加速度取得部24により取得された加速度の大きさにより決まるタイミングである。このタイミングの例については、後述する。また、フラグ制御部29は、体動検出フラグをオンにした後、所定期間経過した時点で体動検出フラグをオフに切り替える。計数部30は、カウンタにより構成されており、体動検出フラグがオンになった回数をカウントする。計数部30のカウント値のデータは、出力端子34を介して前記表示装置16へ送られる。
【0026】
(加速度取得部の機能的構成)
図3は、この発明にかかる体動検出装置の加速度取得部の機能的構成を示すブロック図である。図3に示すように、加速度取得部24は、X軸加速度データ格納部41、Y軸加速度データ格納部42、Z軸加速度データ格納部43、重力加速度算出部44、重力加速度分散比率決定部45、除重力加速度データ算出部46、垂直偏除重力加速度データ算出部47、垂直方向強調合成加速度データ算出部48、合成加速度データ格納部49および平滑化部50を備えている。
【0027】
X軸加速度データ格納部41、Y軸加速度データ格納部42およびZ軸加速度データ格納部43は、例えば、リングバッファにより構成されている。X軸加速度データ格納部41、Y軸加速度データ格納部42およびZ軸加速度データ格納部43は、それぞれ、入力端子51,52,53を介してX軸アナログ/デジタル変換部21、Y軸アナログ/デジタル変換部22およびZ軸アナログ/デジタル変換部23に接続されており、それらアナログ/デジタル変換部の出力値を加速度データとして格納する。
【0028】
重力加速度算出部44は、X軸加速度データ格納部41から連続する所定個数(例えば、8個)の加速度データを読み出し、それらの移動平均値を算出し、その値を重力加速度の値とする。移動平均値は、nを自然数とするとき、n個の値の加算値をnで割ることにより得られる。Y軸方向およびZ軸方向についても同様にして重力加速度の値を算出する。その際、X軸方向の所定個数の加速度データ、Y軸方向の所定個数の加速度データ、およびZ軸方向の所定個数の加速度データは、同じタイミングでサンプリングされたデータであるのが望ましい。本来、重力加速度を求めるには、被験者が静止している必要がある。しかし、そのために被験者が静止するのは非現実的である。ここでは、比較的長時間分の加速度データの移動平均値を求めることによって、たとえば歩行などの体動により発生する加速度を平滑化することができるので、各軸方向の加速度データの移動平均値を擬似的に各軸方向の重力加速度の値と見なすことができる。
【0029】
重力加速度分散比率決定部45は、重力加速度算出部44により得られたX軸方向の重力加速度の値と、X軸アナログ/デジタル変換部21の出力値の中間値との差を求め、その値をX軸方向の重力加速度分散比率とする。Y軸方向およびZ軸方向についても同様にして重力加速度分散比率を決定する。上述したように、加速度センサの出力信号をアナログ/デジタル変換部でサンプリングする構成の場合、加速度センサで検出された加速度が大きいほど、その加速度をサンプリングした値はアナログ/デジタル変換部の出力値の中間値から離れる。従って、X軸、Y軸およびZ軸のうち重力加速度分散比率が高い軸ほど、上下方向の加速度(重力加速度)の影響が大きいことになる。つまり、重力加速度分散比率が高い軸ほど、上下方向の軸に近いことになる。
【0030】
除重力加速度データ算出部46は、X軸アナログ/デジタル変換部21から出力されるX軸方向の加速度データから、重力加速度算出部44により得られたX軸方向の重力加速度の値を減算し、得られた値をX軸方向の除重力加速度データとする。Y軸方向およびZ軸方向についても同様にして除重力加速度データを算出する。除重力加速度データとは、加速度センサにより取得した加速度から重力加速度を除いたデータという意味である。
【0031】
除重力加速度データを算出する際には、加速度の向きに注意する必要がある。重力加速度算出部44により得られた重力加速度の値がアナログ/デジタル変換部の出力値の中間値以上である場合には、アナログ/デジタル変換部から出力される加速度データの値から、重力加速度の値を引いた値が除重力加速度データの値となる。重力加速度算出部44により得られた重力加速度の値がアナログ/デジタル変換部の出力値の中間値よりも小さい場合には、重力加速度の値から、アナログ/デジタル変換部から出力される加速度データの値を引いた値が除重力加速度データの値となる。
【0032】
垂直偏除重力加速度データ算出部47は、除重力加速度データ算出部46により得られたX軸方向の除重力加速度データの値に、重力加速度分散比率決定部45により得られたX軸方向の重力加速度分散比率を乗算し、得られた値をX軸方向の垂直偏除重力加速度データの値とする。Y軸方向およびZ軸方向についても同様にして垂直偏除重力加速度データの値を算出する。垂直偏除重力加速度データは、除重力加速度データに重力加速度の影響を加味したデータである。重力加速度の影響が強い軸では、除重力加速度データの値により大きな値の重力加速度分散比率が掛けられるので、垂直偏除重力加速度データの値が大きくなる。
【0033】
垂直方向強調合成加速度データ算出部48は、垂直偏除重力加速度データ算出部47によりそれぞれ得られたX軸方向の垂直偏除重力加速度データ、Y軸方向の垂直偏除重力加速度データおよびZ軸方向の垂直偏除重力加速度データを合成する。本来、加速度データを合成する際には、各軸方向の垂直偏除重力加速度データの値を自乗して足し合わせた値の平方根を算出する必要がある。しかし、ここでは、各軸方向の垂直偏除重力加速度データの値を単純に足し合わせることによって、合成した加速度データ(垂直方向強調合成加速度データとする)を求めることとする。その理由は、垂直方向強調合成加速度データ算出処理の負荷を軽減できるという利点や、加速度データの正負の極性を失わずに済むという利点があり、かつ、十分に特徴のあるデータが得られるからである。
【0034】
合成加速度データ格納部49は、例えば、リングバッファにより構成されている。合成加速度データ格納部49は、垂直方向強調合成加速度データ算出部48により得られた垂直方向強調合成加速度データを格納する。平滑化部50は、合成加速度データ格納部49から連続する所定個数(例えば、4個)の垂直方向強調合成加速度データを読み出し、それらの移動平均値を算出する。ここでは、比較的短時間分の垂直方向強調合成加速度データの移動平均値を求めることによって、ノイズや微弱な変動を除去して垂直方向強調合成加速度データを平滑化することができる。平滑化部50の出力データは、出力端子54を介して前記上弦ピーク値検出部25、前記下弦ピーク値検出部26および前記フラグ制御部29へ送られる。
【0035】
(体動検出処理手順)
図4および図5は、この発明にかかる体動検出装置の体動検出方法による体動検知処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、体動検出装置11の電源がオンになり、体動検出処理が開始されると、まず、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれについて、加速度センサ12,13,14およびアナログ/デジタル変換部21,22,23により加速度データを取得する(ステップS1)。そして、X軸、Y軸およびZ軸の各加速度データ格納部41,42,43にそれぞれの軸方向の加速度データを格納する(ステップS2)。ここまでの処理を、各軸の加速度データ格納部41,42,43に所定個数(例えば、8個)の加速度データが格納されるまで繰り返す。
【0036】
各軸の加速度データ格納部41,42,43に所定個数の加速度データが格納されたら、各軸方向について、重力加速度算出部44により重力加速度を算出する(ステップS3)。次いで、各軸方向について、重力加速度分散比率決定部45により重力加速度分散比率を決定する(ステップS4)。また、各軸方向について、除重力加速度データ算出部46により除重力加速度データを算出する(ステップS5)。ステップS5を行ってからステップS4を行ってもよい。次いで、各軸方向について、垂直偏除重力加速度データ算出部47により垂直偏除重力加速度データを算出する(ステップS6)。
【0037】
次いで、垂直方向強調合成加速度データ算出部48により各軸方向の垂直偏除重力加速度データを合成することにより、垂直方向強調合成加速度データを算出する(ステップS7)。そして、合成加速度データ格納部49に垂直方向強調合成加速度データを格納する(ステップS8)。ここまでの処理を、合成加速度データ格納部49に所定個数(例えば、4個)の垂直方向強調合成加速度データが格納されるまで繰り返す。
【0038】
合成加速度データ格納部49に所定個数の垂直方向強調合成加速度データが格納されたら、平滑化部50により垂直方向強調合成加速度データを平滑化する(ステップS9)。次いで、上弦ピーク値検出部25および下弦ピーク値検出部26により垂直方向強調合成加速度データの上弦ピーク値および下弦ピーク値を検出する(ステップS10)。次いで、ピーク差検出部27により上弦ピーク値と下弦ピーク値の差分を算出する(ステップS11)。次いで、閾値判定部28により上弦ピーク値と下弦ピーク値の差分を閾値と比較する。そして、その差分の方が閾値よりも大きい場合には体動を検出したと判定し、小さい場合には体動を検出していないと判定する(ステップS12)。
【0039】
閾値判定部28の判定結果に基づいて、体動検出フラグのオン/オフを制御する(ステップS13)。体動を検出したと判定された場合には、フラグ制御部29により体動検出フラグをオンにし、その後オフに切り替える。体動を検出していないと判定された場合には、体動検出フラグはオフのままである。以上の一連の体動検出処理は、体動検出装置11の電源がオフになるまで繰り返される。ステップS3での重力加速度の算出処理、ステップS4での重力加速度分散比率の決定処理、ステップS5での除重力加速度データの算出処理、ステップS6での垂直偏除重力加速度データの算出処理、ステップS7での垂直方向強調合成加速度データの算出処理、ステップS9での平滑化処理およびステップS10でのピーク値検出処理の内容については、それぞれ、各機能部の構成において説明した通りである。
【0040】
(体動検出フラグをオンにするタイミング例1)
図6は、体動検出フラグをオンにするタイミングの第1の例を示す波形図である。なお、図6には、加速度取得部24から出力される垂直方向強調合成加速度データが波形として示されているが、実際には、この垂直方向強調合成加速度データは、連続したデータではなく、所定周期でサンプリングされた離散的なデータである(図7および図8においても同じ)。また、図6において、三角印は、体動検出フラグがオンになるタイミングを示し、その下の数字(1、2、3、4、5)は体動のカウントを示す(図7および図8においても同じ)。
【0041】
図6に示す例では、ピーク差検出部27は下弦ピーク値とその直後の上弦ピーク値との差分を算出している。そして、この例では、閾値判定部28により体動を検出したと判定された後、加速度取得部24から出力された垂直方向強調合成加速度データの値が初めてゼロになった時点で、体動検出フラグがオンにされている。これは、上弦ピーク値および下弦ピーク値の近傍はノイズ等の影響を受けやすいので、そこを避けて体動検出フラグをオンにするためである。
【0042】
具体的には、第1の下弦ピーク61と第1の上弦ピーク62の差分、第3の下弦ピーク65と第3の上弦ピーク66の差分、第4の下弦ピーク67と第4の上弦ピーク68の差分、第6の下弦ピーク71と第6の上弦ピーク72の差分および第7の下弦ピーク73と第7の上弦ピーク74の差分は閾値よりも大きい。従って、第1の上弦ピーク62、第3の上弦ピーク66、第4の上弦ピーク68、第6の上弦ピーク72および第7の上弦ピーク74の後で、垂直方向強調合成加速度データの値が初めてゼロになった時点で、体動検出フラグがオンになり、体動がカウントされる。一方、第2の下弦ピーク63と第2の上弦ピーク64の差分および第5の下弦ピーク69と第5の上弦ピーク70の差分は閾値よりも小さいので、体動検出フラグはオフのままであり、体動はカウントされずにそのままの値である。
【0043】
(体動検出フラグをオンにするタイミング例2)
図7は、体動検出フラグをオンにするタイミングの第2の例を示す波形図である。図7に示す例では、ピーク差検出部27は下弦ピーク値とその直後の上弦ピーク値との差分を算出し、閾値判定部28によりたとえば歩行などの体動を検出したと判定されると、直ちに体動検出フラグがオンにされている。上述した第1のタイミング例に代えて、この第2のタイミング例のようにしてもよい。
【0044】
(体動検出フラグをオンにするタイミング例3)
図8は、体動検出フラグをオンにするタイミングの第3の例を示す波形図である。図8に示す例では、ピーク差検出部27は上弦ピーク値とその直後の下弦ピーク値との差分を算出し、閾値判定部28により体動を検出したと判定された後、加速度取得部24から出力された垂直方向強調合成加速度データの値が初めてゼロになった時点で、体動検出フラグがオンにされている。なお、上述した第2のタイミング例のように、閾値判定部28により体動を検出したと判定されると、直ちに体動検出フラグがオンになるようにしてもよい。上述した第1または第2のタイミング例に代えて、この第3のタイミング例のようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように、実施の形態によれば、加速度の変動量を閾値と比較することにより、被験者の不規則な動きやノイズなどの影響を排除することができる。従って、実際には体動ではないのに体動であると誤認識したり、実際には体動であるのに体動でないと誤認識してしまうのを防ぐことができる。つまり、体動を正確に検出することができる。従って、正確な体動のカウントが得られる。以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる体動検出方法は、体動検出装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明にかかる体動検出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】この発明にかかる体動検出装置の処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】この発明にかかる体動検出装置の加速度取得部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】この発明にかかる体動検出装置の体動検出方法による体動検知処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【図5】この発明にかかる体動検出装置の体動検出方法による体動検知処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【図6】体動検出フラグをオンにするタイミングの第1の例を示す波形図である。
【図7】体動検出フラグをオンにするタイミングの第2の例を示す波形図である。
【図8】体動検出フラグをオンにするタイミングの第3の例を示す波形図である。
【図9】従来の体動検出装置における加速度の検出値の変化を示す波形図である。
【符号の説明】
【0048】
11 体動検出装置
12,13,14 加速度センサ
24 加速度取得部
25,26 ピーク値検出部
27 ピーク差検出部
28 閾値判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサの出力する加速度の大きさに基づいて体動の検出を判定する体動検出装置において、
加速度の大きさが減少傾向から増加傾向に切り替わる下弦ピーク値、および増加傾向から減少傾向に切り替わる上弦ピーク値を検出し、前記下弦ピーク値および前記上弦ピーク値に基づいて体動の検出を判定することを特徴とする体動検出装置。
【請求項2】
前記下弦ピーク値と前記上弦ピーク値の差分を算出し、前記差分を閾値と比較して体動の検出を判定することを特徴とする請求項1に記載の体動検出装置。
【請求項3】
前記差分は前記下弦ピーク値の直前または直後の前記上弦ピーク値から算出することを特徴とする請求項2に記載の体動検出装置。
【請求項4】
前記差分が前記閾値よりも大きいときに体動を検出したと判定することを特徴とする請求項2または3に記載の体動検出装置。
【請求項5】
前記体動を検出したと判定された後に、前記加速度の大きさが所定値をまたいで該所定値よりも初めて小さくなったときまたは初めて大きくなったときに体動をカウントすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の体動検出装置。
【請求項6】
前記体動を検出したと判定されたときに体動をカウントすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の体動検出装置。
【請求項7】
前記加速度センサは互いに異なる三方向の加速度を検出し、該三方向の加速度に基づいて前記加速度の大きさを取得することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の体動検出装置。
【請求項8】
前記加速度の大きさは、前記検出した加速度から重力加速度を除いた大きさであることを特徴とする請求項7に記載の体動検出装置。
【請求項9】
前記三方向のそれぞれについて、連続する複数の前記加速度の検出値の平均値を前記重力加速度と見なすことを特徴とする請求項8に記載の体動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−116389(P2009−116389A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285217(P2007−285217)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】